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木柱材端部の不具合が打撃音に及ぼす影響

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大同大学紀要 第55巻(2019)

木柱材端部の不具合が打撃音に及ぼす影響

Influence of Damaged Part at the Edge of Wooden Column on Impact Sound

藤森 繁* 田代 彬**

Shigeru FUJIMORI Akira TASHIRO

Summary

More than 50% of houses in Japan are wooden house. For the reason, demand of maintaing wooden house will continue to increase more. Most importance of maintaining wooden house is early detecting damage, e.g. termite, decay and so on. In this research, as a first step of damage detection on structural member of wooden house, it was examined that damaged part at the edge of wooden column effects on impacting sound at a distance from damaged part. As a result, it was suggested possibility that damages at the edge of structural member can be detected by the dominant frequency and spectral graph of FFT analysis of impact sound.

キーワード:虫害,不具合検知,打撃音,FFT解析,卓越周波数

Keywordstermite damage, damage detection, impact sound, FFT analysis, dominant frequency

1.はじめに

日本においては、全住宅建物に占める木造建物の割 合が 50%以上を占めており、今後も木造住宅の需要が 急速に減少することはないものと推察される。そのた め、木造住宅の維持管理の需要は今後も増加すると考 えられる。木造住宅の維持管理では、虫害や腐朽などの 生物劣化を可能な限り早期に発見し、必要な補修・部材 交換等を行っていくことが最も重要な事項となるが、

木造住宅における生物劣化の多くは床下や土台などの 直接の検診が難しい箇所に発生することがほとんどで ある。

これまでにも、木材中の虫害、腐朽などの生物劣化や 不具合を非破壊的に検知するための様々な手法が検討 されている1-4)ものの、多くは不具合箇所を直接検診す ることによって得られた情報を健全部と比較し、その 差異から不具合箇所を特定する方法であり、不具合箇 所から離れた位置からの検知を試みた例は非常に少な い。

そこで本研究では、不具合箇所から離れた位置での

打診による不具合箇所の検知方法を検討するために、

その準備段階として、端部に欠損部を有する木造住宅 の柱部材をモデルとした角材を用いて、不具合箇所か ら離れた位置でのハンマー打撃によって得られる打撃 音を分析することで、不具合が打撃音に及ぼす影響に ついて検討した。

2.実験の概要

2.1 試験体の概要

試験体は、シロアリによる食害を想定し、スギ角材の 材端下部に中央・端部・内部を欠損させたもの使用した。

試験体の寸法を表1に示す。また、試験体底面の欠損形 状を図1に示す。また、各試験体の欠陥位置と打撃点を 2に示す。欠損部の深さはすべて100mmとした。

柱は通常、壁・梁・土台と緊結されていることから市 販の L 型アングルで製作した治具によって、構造試験 用鉄骨フレームに底面で固定した。試験体である柱の 底面は土台を想定したスギ角材(長さ:400mm, 幅:

120mm, 厚さ:120mm)上中央部にZ金物で固定した。

大同大学工学部建築学科

** 大同大学工学部建築学科 学生

(2)

また、束柱などを想定し、各欠損材の下部固定の有無に よる打診音に及ぼす影響について検討するため、柱下

部を土台に固定しない場合についても併せて検討した。

2.2 実験方法 表 1 試験体の寸法

試験体名 樹種 長さ(mm) 幅(mm) 厚さ(mm) 欠損部位置 欠損体積(mm²) 打撃面

健全材 なし なし A

中央部欠損材 下部中央 100×50×120 A B

端部欠損材 下部端部 100×50×120 A B C

内部欠損材 下部内部 100×[(80×80)-(20×20)] A

スギ 1000 120 120

図 1 試験体底面の欠損形状 120

120

70 50

20 20 20 30 30 50 35

35

2020203030

健全材 中央部欠損材 端部欠損材 内部欠損材

:A面 :B面 :C面

:欠損部

図 2 試験体立面の概要

120 3550 35 120 120

1005050100〃〃1003040 30

20 20

80

810190 1000

健全材 中央部欠損材端部欠損材 内部欠損材 中央部/端部欠損材 端部欠損材 70 50

:下部固定治具 :頂部固定治具

:欠損部

:打撃点

A面 B面 C面

(3)

実験は、均一な力で打撃するために振り子を用いて、

2に示す各打点を 1回ずつ、打撃棒で打撃した。打 撃面は健全材と内部欠損材はA面のみ、中央部欠損材 A面とB面の2面、端部欠損材はA, BおよびC 3面を打撃した。また、打撃音はICレコーダーを用 いて、打撃点から水平方向に150mm程度離した位置で 採取した。

2.3 実験データの解析方法

採取した打撃音は、FFT アナライザを用いてスペク トル解析を行い、打撃音の卓越周波数・音圧比を算出し た。卓越周波数は、フーリエスペクトル中の60Hz以上 で最も高い周波数とした。また、打撃音のレベルのばら つきを実験結果から除去することを目的に、フーリエ スペクトルの最大値で正規化し音圧比とした。

スペクトル面積比は、図3に示す、採取した打撃音の 正規化したフーリエスペクトルを、音域(a):1000Hz 下、音域(b)1001Hz以上 2500Hz以下、音域(c)2501Hz

以上 5000Hz以下、および音域(d)5001Hz以上 10000Hz 以下の 4 つの周波数域に分割し、健全材と欠損材それ ぞれでグラフの下部の面積を算出し、健全材に対する 欠損材の面積比と定義した。

3.実験結果と考察

3.1 卓越周波数と欠損部からの距離の関係

4 に、各欠損材の卓越周波数と欠損からの距離の 関係を示す。図 4(a)より、中央部欠損材 A面の卓越周 波数は、欠損からの距離が400mm以上では健全材との 差が大きくなっている。中央部欠損材 B 面の卓越周波 数は、健全材に比べるとほぼすべての値が低い値を示 している。欠損部が打撃方向に対して弱軸方向である ため、健全材に比べて剛性が小さくなり、打撃時の変形 量が大きくなったことに起因すると推察される。欠損 からの距離が 500mm 以上では中央部欠損材 A 面と B 面が同様の値を示している。これは、打撃音が欠損部で 反響することで干渉が起きたため、打ち消しあう箇所 と強調しあう箇所が発生したことで、周波数変動が多 くなったと考えられる。

また、図 4(b)より、端部欠損材B 面と端部欠損材C

面の卓越周波数は、健全材に比べると低い値を示して いる。これは、欠損部の向きが弱軸方向であるため健全 材に比べて剛性が小さくなり、打撃時の変形量が大き くなったため周波数が小さくなったと考えられる。

さらに、図4(c)より、内部欠損材の卓越周波数は、欠 損からの距離が500mm以上では、中央部欠損材と同様 の値を示しているため、打撃音が欠損部で反響するこ とで干渉が起きたために周波数変動が多くなったと考 図 3 音域の分割とスペクトル面積比

(a) (b) (c) (d)

(a)中央部欠損材 (b)端部欠損材 (c)内部欠損材 図 4 各欠損材の卓越周波数と欠損部からの距離の関係

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

周波数(Hz)

欠損からの距離(mm)

健全材 中央部欠損材 A面 中央部欠損材 B面

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

周波(Hz)

欠損からの距離(mm)

健全材 端部欠損材 A面 端部欠損材 B面 端部欠損材 C面

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

周波(Hz)

欠損からの距離(mm)

健全材 内部欠損材

(a)打撃面 A 面 (b)打撃面 B 面 (c)打撃面 C 面 図 5 打撃面が卓越周波数と欠損からの距離との関係に及ぼす影響

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

周波数(Hz)

欠損からの距離(mm) 健全材 中央部欠損材 A面 端部欠損材 A面 内部欠損材

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

周波(Hz)

欠損からの距離(mm) 健全材 中央部欠損材 B面 端部欠損材 B面

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

周波数(Hz)

欠損からの距離(mm) 健全材 端部欠損材 C面

(4)

えられる。

3.2 打撃面が卓越周波数と欠損部からの距離との 関係に及ぼす影響

5は、図 4を打撃面ごとに整理したものである。

5(a)より、欠損からの距離が350mm付近まで各欠損 A面と健全材の卓越周波数はほぼ同様な値を示して いる。しかし、欠損からの距離が400mm以上離れた場 合には、2000Hz から3500Hzの間で健全材と端部欠損 材、中央部欠損材と内部欠損材において、卓越周波数が ほぼ同様の値を示している。中央部欠損材と内部欠損 材では、欠損部で打撃音が反響し周波数が減衰するこ とで若干変化したため、反射した打撃音同士が干渉す ることで、健全材や端部欠損材と異なる卓越周波数に なったものと推察される。

また、図5(b)より、打撃面 B面では中央部欠損材と 端部欠損材ともに、卓越周波数が健全材に比べて低い 値を示している。中心に近い300mmから350mm付近

でどちらの欠損材とも、卓越周波数が低くなる傾向に ある。打撃面に対して欠損の向きが弱軸であるため、打 撃した時の欠損材の変形量が大きくなる。そのため、卓 越周波数が健全材に比べ低い値を示したものと推察さ れる。欠損からの距離が600mm以上では、端部欠損材 B面の卓越周波数が健全材と同様の値を示している。こ れは、柱上部の固定部分に近づき剛性が増したため、打 撃時の変形量の差が小さくなったことに起因するもの と考えられる。しかし、中央部欠損材 B 面では、欠損 からの距離が600mm以上において、端部欠損材B面と は異なり健全材とは逆の値を示した。

また、図5(c)より、打撃面C面では、打撃面B面と

同様の結果となった。健全材よりも端部欠損材の C の方の卓越周波数が低い傾向にある。

3.3 下部固定の有無がスペクトル面積比と欠損部 からの距離との関係に及ぼす影響

6に、各欠損材の打撃面A面における下部固定の

(a)中央部欠損材 A 面 (b)端部欠損材 A 面 (c)内部欠損材 図 6 下部固定の有無による各欠損材のスペクトル面積比と欠損部からの距離の関係

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

スペ(損/)

欠損からの距離(mm)

(a) 0Hz-1000Hz

中央部欠損材(下部固定なし) 中央部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクル面積比(欠損/健全)

欠損からの距離(mm)

(a) 0Hz-1000Hz

端部欠損材(下部固定なし) 端部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクトル面積(欠損/健)

欠損からの距離(mm)

(a) 0Hz-1000Hz

内部欠損材(下部固定なし) 内部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

スペ積比(損/全)

欠損からの距離(mm)

(b) 1001Hz-2500Hz

中央部欠損材(下部固定なし) 中央部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクトル面積比(欠損/健)

欠損からの距離(mm)

(b) 1001Hz-2500Hz

端部欠損材(下部固定なし) 端部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクル面積比(欠損/健全)

欠損からの距離(mm)

(b) 1001Hz-2500Hz

内部欠損材(下部固定なし) 内部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

トル積比(損/)

欠損からの距離(mm)

(c) 2501Hz-5000Hz

中央部欠損材(下部固定なし) 中央部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクトル面積(欠損/健)

欠損からの距離(mm)

(c) 2501Hz-5000Hz

端部欠損材(下部固定なし) 端部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクトル面積(欠損/健)

欠損からの距離(mm)

(c) 2501Hz-5000Hz

内部欠損材(下部固定なし) 内部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクトル面比(欠損/健全)

欠損からの距離(mm)

(d) 5001Hz-10000Hz

中央部欠損材(下部固定なし) 中央部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクトル面比(欠損/健全)

欠損からの距離(mm)

(d) 5001Hz-10000Hz 端部欠損材(下部固定なし) 端部欠損材(下部固定あり)

0 1 2 3 4 5 6

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800

ペクトル面積(欠損/健)

欠損からの距離(mm)

(d) 5001Hz-10000Hz

内部欠損材(下部固定なし) 内部欠損材(下部固定あり)

(5)

違いによるスペクトル面積比と欠損部からの距離の関 係を示す。図より、各欠損材とも欠損からの距離が

200mmから600mmの間で、下部を固定した方が固定し

ない場合に比べてスペクトル面積比が大きい値を示し ている。下部が固定されることにより剛性が増すこと で打撃時の変形量が小さくなったためと考えられる。

端部欠損材では、距離200mm付近で、中央部欠損材 や内部欠損材よりもスペクトル面積比が大きくなって いる。中央部欠損材や内部欠損材では、欠損部で打撃音 が反響することで音が減衰したため、端部欠損材より もスペクトル面積比が小さくなったものと考えられる。

また、中央部欠損材と内部欠損材を比べると、(b), (c)お よび(d)の周波数域で中央部欠損材のスペクトル面積比 が内部欠損材より大きい傾向にある。

4.まとめ

実験結果より、以下の知見が得られた。

1) 中央部欠損材の卓越周波数においては、中央部欠損 A面では、欠損からの距離が近いと健全材に似た 数値を示し、遠くなると異なる数値を示す傾向がみ られた。中央部欠損材B面では、欠損からの距離が 近いと健全材より低い数値を示し、遠くなると中央 部欠損材A面似た数値を示す傾向がみられた。

2) 端部欠損材、内部欠損材も中央部欠損材の卓越周波 数と同様な傾向を示すことが確認された。

3) 下部に欠損ある場合では、健全材と欠損材の卓越周 波数と距離の関係を比べることで、欠損の有無、欠

損が端部などに集中している場合の欠損部の向きの 検知がある程度可能であることが確認できた。

4) 打診音のスペクトル面積比を求めることで、中央部 欠損材では、特定の欠損からの距離でスペクトル面 積比が増加する傾向が確認された。端部欠損材でも 同様な傾向が確認された。

5) スペクトル面積比と欠損からの距離の関係から欠損 部検査の可能性が確認された。

6) 欠損材の下部が固定されていることで、下部が固定 されて無いものより、スペクトル面積比の数値の変 動が明確なり、欠損部の検知が詳細にできる可能性 が確認された。

参考文献

1)有馬孝禮ほか3名:木造住宅の現場劣化診断のため の打撃音の周波数分析, 材料, Vol.34, No.353, pp.85- 90, 1985.8

2)大岡優,伊津野和行:伝統的建築物の耐震性評価を 目的とした電磁波による柱内部欠損の非破壊検査手 法の有効性について, 日本建築学会技術報告集, Vol.17, No.32, pp.133-138, 2011, 2

3)温水章吾ほか 11 名:生物劣化を受けた国産針葉樹

の残存強度性能に関する研究, 日本建築学会九州支 部報告,Vol.50, pp.713-716, 2011.3

4)岡崎泰男ほか2 名:木造住宅における打診による劣 化診断判定の科学的根拠の解明, 住総研 研究論文 , No.40, pp.189-200, 2014.3

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