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(1)

J. H. Williamsの変動予算論 : 1924年の所説から

その他のタイトル J.H. Williams' Flexible Budget

著者 吉城 唯史

雑誌名 關西大學商學論集

巻 46

号 4

ページ 537‑550

発行年 2001‑10‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00018983

(2)

J .   H .  W i l l i a m s の変動予算論

1 9 2 4 年の所説から―

吉 城 唯 史

I .   はじめに

目 次 I .   はじめに

I I .   先行研究における W i l l i a m s の評価

皿 1 9 2 4 年の Williams の論考

N.  まとめ

J .   H .  W i l l i a m s   (以下 W i l l i a m s とする)は K n o e p p e l , R a u t e n s t r a u c h   とともに1920 年代‑1930 年代の米国において損益分岐点分析の発展に大き く寄与した人物として名高い。また, W i l l i a m s はその変動予算論において も著名である。

従来までにも,多くの損益分岐点分析史,予算管理史,管理会計史等の 研究において W i l l i a m s はしばしば取り扱われてきた。しかしながらそれ らは大抵の場合,それぞれに独自の研究目的・意図があるため,その目的・

意図に合致する部分でのみ W i l l i a m s の損益分岐点分析論,変動予算論,高 低点法等を取り扱うものであり,当然のことではあるのだが, W i l l i a m s の 論考を総体的に捉えたうえで彼が考案した様々な技法・概念を議論したも のではなかった。

こういったことから,本稿では W i l l i a m s の議論を総体的に捉え,彼の著

(3)

144 ( 5 3 8 )   第 4 6 巻 第 4 号

名な損益分岐点分析や変動予算が Williams の論考の中でどのような位置 を占めていたかについて検討することを目的としたい。

I I .   先行研究における Williams の評価

1 9 2 1 年から 1 9 3 5 年まで,コンサルティング会社 Day and  Zimmerman  I n c .   のニューヨークのマネージャーを務めていた Williams は , Taylor 協 会の会員であり,彼の論文でしばしば述べられているように, Taylor の科 学的管理法の信奉者であった。このことから, Williams の論考は,当時の 米国の企業実務と直接に関わりあうなかで考案されたものと推測できる。

従来までもにも,特に管理会計の方面から Williams を取り扱う議論は 数多くあった。それら Williams に関する多くの研究

1)

から Williams の特

1) 本文中では直接触れなかったものの,ここではそれらの先行研究の概観を見てお きたい P a r k e r [ 1 9 6 9 ]においては,損益分岐点図表は R a u t e n s t r a u c h ,K n o e p p e l ,   Man などと W i l l i a m s が発展させたものと位置付け, W i l l i a m s に関しては貢献利 益を用いることによって損益分岐点を計算している点が評価されている。 Weber

[ 1 9 6 6 ] では直接原価計算の基礎的技法として W i l l i a m s の高低点法が紹介されて いる。 Weber によれば, W i l l i a m s の高低点法はその重要性が特に技術者に認めら れ,またフランス語やドイツ語にも翻訳され,更にはアメリカ東部の一部の指導的 な大学の企業管理論や科学的管理論のコースでも用いられたとのことである。また,

1 9 3 0 年以代の損益分岐点分析に関するもっとも顕著な研究者の一人であると位置付 けながらも, W i l l i a m s に対する当時の評価があまり高くなかったことに言及してい る 。

W i l l i a m s の損益分岐点分析論を直接的に取り扱った末政 [ 1 9 7 7 ]においては,固

定費・変動費の概念,貢献利益概念とそれを用いた損益分岐点分析,固変分解手段

としての高低点法が取り上げられている。この研究においては W i l l i a m s の損益分

岐点分析論の特徴が,①固変分解を概念的に行ったこと,②貢献利益思考があった

こと,③貢献利益と固定費の関係で損益分岐点を把握できることに気づいた点,④

高低点法を提唱した点にあるとし,それらが「優れた特徴を持つものとして高く評

価しなければならない」とされている(末政 [ 1 9 7 7 ] , p . 2 5 2 ‑ 2 5 3 。)。小林 [ 1 9 8 1 ]に

おいては, W i l l i a m s の1 9 2 2 年の論文をとりあげ,「分岐点を求める算式を示したほ

か,固定費と変動費の分解法としての高低点法,責任に応じた記録の主張,変動予

(4)

H .  W i l l i a m s の変動予算論(吉城)

徴をまとめると次のようになるであろう。

①  変動予算の必要性を主張した

②  変動予算との関連で損益分岐点分析の必要性を提唱した

③  損益分岐点は貢献利益と固定費の額を検討することによって算出 されることをかなり早い段階で述べていた

④  固変分解方法に関して高低点法を考案・主張した

つまり変動予算の設定が W i l l i a m s の主張する最たる部分であり,その 変動予算の設定には損益分岐点分析と貢献差益概念が,損益分岐点分析に は固変分解方法としての高低点法が必要であるとし,それらに関しての論 及を行なったというのである。簡略的に先行研究から W i l l i a m s の特徴を 見るとこのように言うことが出来よう。

しかしながら,これらを見るだけでは W i l l i a m s が総体的に何を主張し ようとしていたのかは今ひとつ不明瞭である。つまり,①〜④の関連性を

算の設定,資金予算に関する論考のほか,貢献利益思考を示したことなど,管理会 計上の多くの示唆に富む優れたものである。」とし,「 1 9 3 0 年代の K n o e p p e l や R a u t e n s t r a u c h に相当するに近い水準に達していた」,と,非常に高い評価がなされ ている。小林教授によれば, W i l l i a m s の損益分岐点分析思考並ぴにそれに関連する 貢献概念や固変分解の方法は全て予算管理のための技法であったとし, W i l l i a m a s の主立った関心が予算管理,特に変動予算にあったと断定されている。上継 [ 1 9 8 9 ] においては W i l l i a m a s を 2 つの点において取り上げている。即ち,第一点目は損益 分岐点分析に必要不可欠となる固変分解方法を提唱したこと,第二点目は変動予算 を提唱し,「一勘定ー管理者」の原則により予算統制が下部組織にまで浸透すること を強制したこと,これら二点においてである。一勘定ー管理者とは総勘定元帳のす べての勘定が管理者個人に準備されているものである。これによって予算管理を行 うならば,予算,実績,予算と実績の差異という 3 つの数値が各管理者ごとに計算・

報告されねばならず,こうした予算統制に対して現業管理者は強い抵抗を示すこと

になる。つまり,予算管理に対する現業管理者の抵抗の萌芽が W i l l i a m s の論理の中

にあったとしているのである。これらの他にも, W i l l i a m s の 1 9 3 4 年の著書を弾力性

予算に関する最初のまとまった理論的研究であるとした肱黒 [ 1 9 8 0 ] , W i l l i a m s の

1 9 3 4 年の著書をシンクレアの予算論とともに予算統制研究の代表的な文献として位

置付けた古川 [ 1 9 6 8 ] 等がある。

(5)

1 4 6  ( 5 4 0 )   4 6 巻 第 4 号

見出すことが出来ないのである。また,何故変動予算を必要視したのか,

言い換えれば変動予算をどのような目的で用いようとしたのか,こういっ たことも明確化はされていない。

こういったことから次節では, Williams の上記の特徴の全体像が表れて いる 1 9 2 4 年の論文を解読し,それによって彼の論考全体と,その中での損 益分岐点分析及び変動予算等の位置付けに関して明らかにしたい

2)

2 )   Williams はこの 1924年以外にも数多くの論文•著書を発表している。それらを列 挙すると下記の通りである。なお,これら全ての資料を解読したうえで W i l l i a m s の 議論を整理する必要もあるかと思われるが,それは別の機会に譲りたい。

1 9 1 5  "The I n d e x  a s  a  F a c t o r  i n  I n d u s t r y " ,  B u l l e t i n  o f  t h e  S o c i e t y  t o   P r o m o t e   t h e  S c i e n c e  o f  M a n a g e m e n t ,  May, 1 9 1 5 .  

1 9 1 6  "On t h e  I n d e x  a s  a  F a c t o r  i n  I n d u s t r y " ,  B u l l e t i n  o f  t h e   T a y l o r  S o c i e t y ,   J u l y ,  1 9 2 6 .  

1 9 2 1   "The A t t i t u d e  o f  t h e  E n g i n e e r s  t o   C o s t  A c c o u n t i n g " ,  N . A . C . A .   Y e a r   B o o k ,  1 9 2 1 .  

1 9 2 2   "A T e c h i q u e  f o r   t h e   C h i e f  E x e c u t i v e , A  D e f i n i t e   R e s p o n s i b i l i t y   A  D e f i n i t e  Procedure‑A D e f i n i t e  Measure o f  R e s u l t s " ,  B u l l e t i n  o f  t h e  T a y l o r   S o c i e t y ,  V o l . 7  N o . 2 ,  A p r i l ,  1 9 2 2 .  

1 9 2 3  "The Ways and Means o f  The C h i e f  E x e c u t i v e " ,  B u l l e t i n  o f  t h e  T a y l o r   S o c i e t y ,   V o l . 8  N o . 2 ,  A p r i l ,  1 9 2 3 .  

1 9 2 4  "Management a s  an E x e c u t i v e  F u n c t i o n " ,  B u l l e t i n  o f  t h e  T a y l o r  S o c i e t y ,   V o l . 9  N  o . 2 ,  A p r i l ,  1 9 2 4 .  

1 9 2 4  "A T e c h n i q u e  f o r  t h e  C h i e f  E x e c u t i v e " ,  i n  S c i e n t i f i c  Management S i n c e   T a y l o r ,  New Y o r k ;  McGrow‑Hill Book C o . ,  1 9 2 4 .  

1 9 2 6  "Top C o n t r o l " ,  B u l l e t i n  o f  t h e  T a y l o r  S o c i e t y ,  V o l . 1 1  N o . 4 ,  O c t o b e r  1 9 2 6 .   1 9 2 8  "The B u d g e t  As a  Medium o f  t h e  E x e c u t i v e  L e a d e r s h i p " ,  B u l l e t i n  o f  t h e  

T a y l o r  S o c i e t y ,  V o l . 1 3  N o . 4 ,  A u g u s t ,  1 9 2 8 .  

1 9 2 9  " G e n e r a l  A d m i n i s t r a t i v e  C o n t r o l " ,  i n   S c i e n t i f i c   Management i n  Amer‑

i c a n  I n d u s 的 , NewY o r k ;  H a r p e r ,  1 9 2 9 .  

1 9 3 4  The F l e x i b l e  B u d g e t :  How t o   U s e  i t   t o   O r g a n i z e  , t o   C o o r d i n a t e  and t o  

S t i m u l a t e  t h e  A c t i b i t i e s  o f  E x e c u t i v e ,  a s  w e l l  a s  C o n t r o l  E x p e n s e ,  New Y o r k ;  

McGrow‑Hill Book C o . ,  1 9 3 4 .  

(6)

J .   H .  W i l l i a m s の変動予算論(吉城)

i l l .   1 9 2 4 年の W i l l i a m s の論考

ここでは, Williams の議論の中心をなすものと捉えられてきた 1 9 2 4 年の 論文を再考してみたい。 "ATechnique f o r  t h e  C h i e f  E x e c u t i v e " という論 題の通り,この論文は最高経営執行者 ( c h i e fe x e c u t i v e ) が経営管理を行 なううえで有用となる技法を提唱することを目的としたものである

3)

。こ の論文を見ることにより Williams の損益分岐点分析論や変動予算論が,

どういった経緯及び理由で述べられたかが明らかになるであろう。

圃ー (1) 最高経営執行者の職務

この論文ではまず,最高経営執行者の「職能 ( f u n c t i o n ) 」があげられて いる。つまり,これらがどのようにして達成されていくのかが Williams の 関心の中心であり,その後の議論は全てこの職能を達成するための手段で あるといえよう。 Williams が掲げる最高経営執行者の職務は下記の 8 つで ある丸

①  株主と取締役の政策を具体的に解釈し,それを表明する

②  取締役とともに企業の目的及び企業活動の展望と限界について検討す る

③  主要な経営執行者 ( e x e c u t i v e ) を選択・任命する

④  それら経営執行者と企業の目的を決定し,その目的を達成するための 計画を立案する。その計画は,人数,貨幣,物量によって表された予算に

3) この論文は, W i l l i a m s 自身が 1 9 2 4 年の論文の冒頭で述べているのだが,もともと 1 9 2 2 年のテイラー協会の年報に記載されていたものを 1 9 2 4 年の S c i e n t i f i c M a n a g e ‑ m e n t  S i n c e  T a y l o r に再録したものである。省略されている部分等があるものの内 容的には同一のものであることが W i l l i a m s によって述べられている。更に言うな らば,この論文の内容は 1 9 2 1 年 1 2 月に開催されたテーラー協会で発表されたものを もとに作成されたものである。

4)  W i l l i a m s ,  J . H . ,   [ 1 9 2 4 , b ] ,  "A  T e c h n i q u e  f o r  t h e  C h i e f  E x e c u t i v e " ,   p . 7 9 .  

(7)

1 4 8  ( 5 4 2 )   第 4 6 巻 第 4 号

よって確かなものとし,それぞれの責任に応じてその予算を細分化する

⑤  企業活動を追跡調査し,それらの結果と重要性が取締役に常に伝わる ような状態にする

⑥  内情を把握している顧問を経営執行者に任命し,経営執行者間に生じ る食い違いを調整する

⑦  経営執行者にそれぞれがどれだけのことを達成したかについて常に分 かるような状態にし,全体の一部分として,経営執行者自身と彼らの職 務を把握できるようにする

⑧  経営執行者の業績を,それぞれに割当てられた責任と予算の観点から 追跡調査及ぴ評価し,彼らにもそれがわかるような状態にする

これらから明らかなのは, W i l l i a m s の関心の中心は,企業経営の舵取り が最高経営執行者によってどのようになされるべきかという点にあるもの

といえよう。上記8つの最高経営執行者の職務を簡略的にまとめるならば,

①企業目標の設定,②その目標の具体化及び細分化,③実際経営活動の調 査,及び目標との差異分析,それに基く業績評価,これらの 3 つになると

いえよう。

このような最高経営執行者の職務を達成するための具体策として, W i l ‑ I i a m s は「方法 ( m e t h o d s ) 」を提唱するのである。

直ー (2) 最高経営執行者のための方法

W i l l i a m s が言う最高経営執行者のための「方法」とは,即ちその職務を まっとうするための手段とは,①全ての事実が入手可能であること,②政 策と計画が調整されて表明されること,③結果は公正に評価されること,

④原因と責任が跡付けられること,これらの 4 つが可能となるようなもの として定義付けられている

5)

。そしてこれらの 4 つはそれぞれ別個独立的

5 )   I b i d . ,  p . 8 0 .  

(8)

J .   H .  W i l l i a m s の変動予算論(吉城) ( 5 4 3 )   1 4 9  

なものではなく,それぞれが調和化された関係になければならないとされ る。そのためにまず最初に行なわれなければならないのは,責任と責務の 明確な定義付け及び結果を共通の単位で表現することである。また同時に,

企業環境の変化に対応できる「標準値 ( s t a n d a r d ) 」の設定を可能にし,そ れによって結果を判定できるようにしなければならない。このような観点 から, W i l l i a m s は最高経営執行者のための方法を展開していくのである。

即ち,責任及び責務の割当て,標準値の設定,割当てられた責任を標準と 比較することによる業績測定,これらに関して議論を進めていくのであ

る 。

置ー (3) 責任,責務の割当てと標準の設定

W i l l i a m s は責任と責務の割当てに関してまず,図表ー 1 のような組織図 ( o r g a n i z a t i o n  c h a r t ) を掲げる。これによって企業総体とそれを構成する 組織単位の関係を明らかにする。

そして企業全体の成功もしくは失敗の要因である組織単位の責任と責務 を明らかにするためには,それぞれの組織単位に勘定及び費用が割当てら れなければならないとする。更に言うならば,最終的に全ての費用はそれ に直接的に責任がある個々人に割当てられなければならないとするのであ る。しかし,同時に,レント,保険料,支払利息等の責任の所在を求める ことのできない費用に関しては割当てが行なわれるべきでないと言及して いる。ともかく,責任と責務の所在を追求することのできる勘定と費用に 関しては,組織単位,最終的には個々人に割当てて,企業の成功・失敗の 源泉の管理を行なうことを提唱したわけである。

このように責任と責務の観点から,勘定及び費用が組織単位並びに個々

人に割当てられたならば,次の段階では,最高経営執行者はそれらにも基

いて責任の達成度合を判別することになる。つまり,責任が達成されたか

どうかを判断する必要が生じるのである。当然のことながらその場合,何

らかの合理的な判断基準が必要となり, もしその判断基準がない場合は最

(9)

1 5 0  ( 5 4 4 )  

社長

及び ジェネ ラル・

マネー ジャー

第 4 6 巻 第 4 号 図表ー 1 組織図

マネージャー(流通)

マネージャー(製品 A 調整)

マネージャー(製品B調整)

マネージャー(開発)

マネージャー(人事)

マネージャー(内部関係)

マネージャー(購買)

マネージャー(財務)

マネージャー(経理)

マネージャー(信用)

マネージャー(生産)

マネージャー(支店)

マネージャー(製品 A 調整)「 1 マネージャー(仲買人)

マネージャー(輸出)

マネージャー(支店)

マネージャー(製品 B 調整)「 1 マネージャー(仲買人)

マネージャー(輸出)

マネージャー(販売情報)

マネージャー(広告宣伝)

マネージャー(マーケティング)

マネージャー(工場)

マネージャー(ルーティン)

マネージャー(原価)

マネージャー(倉庫)

マネージャー(メンテナンス)

( W i l l i a m s  [ 1 9 2 4 , b ] ,   p . 8 8 . )  

高経営執行者は正確な責任達成度合の測定が不可能となる丸

こういったことから組織単位ごとの予算もしくは標準が,組織単位ごと の責任達成度合の判断基準として必要となるのである。そしてそれら予算 及ぴ標準という語は責任を言い換えた表現でもある。

6 ) これに関して W i l l i a m s は,「ここ近年においても最高経営責任者は自身のエネル ギーの大半を,結果に悩み苦しむことに費やしている ( I b i d .p . 8 9 ) 」とし,判断碁準 が存在しないことの問題を指摘している。また大抵の場合,ある月の業績は前月も

しくは前年の同月もしくは前年の一月平均値と比較されるとし,その不合理性に関

して論及している ( I b i d .p . 1 0 2 ) 。

(10)

J .   の変動予算論(吉城)

この予算及び標準に関して, Williams は「予算もしくは標準は変化する 状況に対応可能なものでなければならない。何故ならば,将来の操業度,

販売価格,原材料価格を量り知ることは不可能だからである。」とする 。 即ちどのような状況にも対応できる予算と標準を設定し,それらと実際額

とを比較することにより,組織単位並ぴに個々人の責任及ぴ責務の達成度 合を判別するのである。

皿ー (4) 変動予算と標準の設定

こういったことから Williams は下記のような標準値が示される図表を 提起するのである(図表ー 2) 。この表は営業標準 ( o p e r a t i n gs t a n d a r d )   という標記がなされており,変動予算という標記はなされていない。しか しながら実質的な内容的からすれば変動予算に他ならない。 Williams はあ くまでも,操業度の変化に対応できる予算並ぴに標準の必要性を説いたの だが,この表がそれに他ならない。以下,この表の意味するところを詳し

く見てゆきたい。

まずこの表の読み方について見ることとする。表の左の覧に記載されて いるのは,先の図表ー 1 の組織図における組織単位である。そしてその右 側に「範囲 (Range) 」という欄があるが,これは売上高が最大値及ぴ最小 値である時,それぞれの組織単位に生じる費用がどれだけになるかを示し

7) 変化する状況に対応可能な標準(予算)の必要性に関して, W i l l i a m s [ 1 9 2 4 ] で はその理由付けの説明はここまでにとどまる ( I b i d . ,p . 9 0 ) 。しかし,これに関して W i l l i a m s   [ 1 9 2 4 ] では次のように述べられている。「企業での予算利用に関する批判 のほとんどはその非弾力性に向けられている。費用,生産星,販売量が季節を問わ ずおよそ一定の企業においては問題はほとんど生じない。しかし,季節によってそ れらが変化する企業で平均値が適用できない企業においては問題が生じるのである ( W i l l i a m s   [ 1 9 2 3 ]   ,  p . 5 7 ) 」。つまり, W i l l i a m s が標準値の状況変化への対応可能 性,言い換えるならば予算の弾力性を提唱した狙いは,季節や月によって変化する

ことが見込まれる操業度への対応にあったといえよう。

(11)

1 5 2  ( 5 4 6 )   4 6 巻 第 4 号

図表ー 2 営 業 標 準 値 (単位:千ドル)

範 囲 原価の標準値

最 小 値 最 大 値 固 定 費 変 動 費 売上 原 価 売上 原 価 年 間 月間 ( % )   管 理 1 5 , 0 0 0   3 , 2 5 0   3 0 , 0 0 0   4 , 0 0 0   2 , 5 0 0   2 0 8 . 3 3 3   0 . 0 5 0 0   製 造 間 接 費 1 5 , 0 0 0   3 , 2 5 0   3 0 , 0 0 0   4 , 0 0 0   2 , 5 0 0   2 0 8 . 3 3 3   0 . 0 5 0 0   原 材 料 1 5 , 0 0 0   3 , 7 5 0   3 0 , 0 0 0   7 , 5 0 0  

0 0 . 2 5 0 0  

直 接 労 務 1 5 , 0 0 0   3 , 0 0 0   3 0 , 0 0 0   6 , 0 0 0  

0 0 . 2 0 0 0  

生 産 1 5 , 0 0 0   1 0 , 0 0 0   3 0 , 0 0 0   1 7 , 5 0 0   2 , 5 0 0   2 0 8 . 3 3 3   0 . 5 0 0 0   流通間接費 ( d i s ‑

6 3 5   1 , 0 7 0   2 0 0   1 6 . 6 6 7   0 . 0 2 9 0   t r i b u t i o n ‑ o v e r h e a d )  

製 品 A 販売 9 , 2 5 0   1 9   1 8 , 5 0 0   2 8   1 0   0 . 8 3 3   0 . 0 0 1 0   製 品 A 支 店 2 , 0 0 0   4 9 0   4 , 0 0 0   7 7 0   2 1 0   1 7 . 5 0 0   0 . 1 4 0 0   製品 A 仲 買 人 7 , 0 0 0   9 0 5   1 4 , 0 0 0   1 , 7 1 0   1 0 0   8 . 3 3 3   0 . 1 1 5 0   製 品 A 輸 出 2 5 0   5 7   5 0 0   9 4   2 0   1 0 , 6 6 7   0 . 1 4 8 0   製 品 B 販売 5 , 7 5 0   1 6   1 1 , 5 0 0   2 2   1 0   0 . 8 3 3   0 . 0 0 1 0   製 品 B 支 店 4 , 0 0 0   8 4 0   8 , 0 0 0   1 , 2 8 0   4 0 0   3 3 . 3 3 3   0 . 1 1 0 0   製 品 B 仲 買 人 1 , 0 0 0   1 7 5   2 , 0 0 0   3 3 0   2 0   1 . 6 6 7   0 . 1 5 5 0   製 品 B 輸 出 7 5 0   1 1 3   1 , 5 0 0   1 9 6   3 0   2 . 5 0 0   0 . 1 1 0 7   流 通 T  3 , 2 5 0   T  5 , 5 0 0   1

0 0 0 8 3 . 3 3 3   0 . 1 5 0 0   1 5 , 0 0 0   1 6 , 5 0 0   3 0 , 0 0 0   2 7 , 0 0 0   6 , 0 0 0   5 0 0   0 . 7 0 0 0   ( W i l l i a m s  [ 1 9 2 4 , b ] ,   p . 9 7 より一部修正)

たものである。最後に,表の右の欄であるが,これはそれぞれの組織単位 に課された標準値であり,言い換えれば課された責任を金額で示した予算 である。

次にこの表の作成方法に関してみてみたい。それによってこの表の本質 的な意味合いを解することができるであろう。

この表の中でまず最初に設定されなければならないのは,売上高の最大 値と最小値である。売上高の最大値は企業の実際的生産能力の最大値によ って求められ,最小値は可能性のある最低売上高として述べられ,ここで は最大値の半分で設定されている。次いで行なわなければならないのは,

材料費と直接労務費の標準値設定である。この設定方法に関して Williams

は時間研究 (timestudy) と材料費研究 (materialstudy) に基いて,無

駄と非効率が排除された形で標準値は設定されなければならないとしてい

(12)

J .   H. W i l l i a m s

8)

。次いで行なわれるのは,売上高が最大化した場合と最小化した場合に それぞれの組織単位に課される費用がそれぞれいくらになるかを記入する ことである。最後に行なわれるのが,右の覧の原価標準の欄を埋めること である。前述した通り,この表の目的は全ての組織単位が果たすべき責任 及び標準値をどのような状況にも対応できる形で,即ち操業度の変化に対 応できる形で示すことにある。即ち,各組織単位ごとに,操業度の変化に 応じて比例的に発生する費用の部分と操業度の変化に関係なく一定である 費用の部分とに分解しなければならない必要性が生じるのである。これに よって売上の変化に対応する組織単位の責任の額が,最高経営執行者にも 組織単位の長にも簡明に解ることになるのである。

この場合に必要となるのが費用の固変分解であるが,その方法として W i l l i a m s は高低点法を提唱するのである

9)

。そして,この表の中央の欄の

「範囲」によって示される売上高及び費用それぞれの最大値と最小値は高 低点法によって固変分解を行なうための伏線でもある。

原価予算という形で責任が課された組織単位ごとに,総費用を固定的な 部分と変動的な部分に分解することを意図して W i l l i a m s は高低点法を考 案•主張したのである。そして,結果的な形で全社的なレペルでの費用の 固変分解にもつながるのである。

こうして作成された表は,もちろんのことその内容から変動予算に他な らないことを意味する。最高経営執行者はこの表によって全社的なレペル でも組織単位レベルにおいても,売上高に占める変動費の割合,売上高に 占める貢献差益の割合

10),

固定費の額,損益分岐するために必要な売上高等 が判るが,それ以上に各責任単位が全体のなかでどのような役割を果たし

8 )   I b i d . ,  p . 9 2 .  

9 ) 「高低点法 ( h i g h ‑ l o wp o i n t  method) 」を考案した W i l l i a m s はこの総称を用いて はいない。

1 0 )   W i l l i a m s は貢献差益という用語は用いておらず,その概念に合致するものを「固

定費• 利益への貢献額 ( C o n t r i b u t i o nt o  F i x e d  C o s t  and P r o f i t ) 」という語を使用

している ( I b i d . ,p . 8 5 . ) 。

(13)

1 5 4  ( 5 4 8 )   第 4 6 巻 第 4 号

ているかが判ることになるになるのである。

直ー (5) 標準値と実際値の比較

各組織単位ごとの予算と標準値,言い換えるならば責任は前述の通り設 定されるのだが,それはあくまでも最高経営執行者が企業を全社的な観点 から効率的に管理するためのものである。つまりこのような標準値を常に 実際値と照らし合わせながら企業を管理していくことが何よりも肝要なこ となのである。ここに標準値と実際値の比較検討の必要性が生じるのであ る 。

W i l l i a m s は標準値と実際値の比較を行なうことを目的として次のよう な表を提示している(図表ー 3) 。それぞれの組織単位ごとに,売上高,総

図表ー 3 営業報告 (単位:千ドル)

原 価 差 異 売上高に占める

売上高 変動費の割合

実 際 値 標 準 値 有 利 不 利 当月 標 準 値 管 理 1 6 , 0 0 0   2 , 4 4 7   2 , 4 6 7   2 0   0 . 0 4 8 7   0 . 0 5 0 0   製 造 間 接 費 1 6 , 0 0 0   2 , 5 1 7   2 , 4 6 7   5 0   0 . 0 5 3 1   0 . 0 5 0 0   原 材 料 1 6 , 0 0 0   3 , 9 5 0   4 , 0 0 0   5 0   0 . 2 4 6 9   0 . 2 5 0 0   直 接 労 務 1 6 , 0 0 0   3 , 3 0 0   3 , 2 0 0   1 0 0   0 . 2 0 6 2   0 . 2 0 0 0   生 産 1 6 , 0 0 0   9 , 7 6 7   9 , 6 6 7   1 5 0   0 . 5 0 6 2   0 . 5 0 0 0   流通間接費 1 6 , 0 0 0   6 1 3   5 9 7   1 6   0 . 0 3 0 0   0 . 0 2 9 0   製 品 A 販売 9 , 2 5 0   2 1   1 6   5  0 . 0 0 1 5   0 . 0 0 1 0   製 品 A 支 店 2 , 0 0 0   4 2 8   4 2 0   8  0 . 1 4 4 0   0 . 1 4 0 0   製 品 A 仲 買 人 7 , 0 0 0   9 1 1   8 7 2   3 9   0 . 1 2 0 6   0 . 1 1 5 0   製 品 A 輸出 2 5 0   5 0   5 1   1  0 . 1 4 2 0   0 . 1 4 8 0   製 品 B 販売 6 , 7 5 0   1 9   1 3   6  0 . 0 0 1 9   0 . 0 0 1 0   製 品 B 支 店 5 , 0 0 0   8 7 7   8 2 7   5 0   0 . 1 2 0 0   0 . 1 1 0 0   製 品 B 仲 買 人 1 , 0 0 0   1 4 8   1 6 8   2 0   0 . 1 3 5 0   0 . 1 5 5 0   製 品 B 輸出 7 5 0   1 0 3   1 0 2   1  0 . 1 1 1 9   0 . 1 1 0 7   流 通 1 6 , 0 0 0   3 , 1 7 0   3 , 0 6 6   2 1   1 2 5   0 . 1 5 6 5   0 . 1 5 0 0   1 6 , 0 0 0   1 5 , 3 8 4   1 5 , 2 0 0   9 1   2 7 1   0 .  7 1 1 4   0 . 7 0 0 0   売上 1 6 , 0 0 0  

原 価 1 5 , 3 8 4   利 益 6 1 6  

(WIiiams [ 1 9 2 4 , b ] ,   p.106 より一部修正)

(14)

H .  W i l l i a m s の変動予算論(吉城)

費用の標準値と実際値,差異,売上高に占める変動費の割合の実際値と標 準値,これらが書き示されている。そして,これらの中で最高経営執行者 が最も注目しなければならないのは「差異」の欄であり,特にそれが「不 利」の部分に関してであるとする。差異が不利の場合,最高経営執行者は その責任を有する組織単位の長と共にその原因を追求すべきことを W i l ‑ Iiams は提唱するのである。実際値と標準との不利の差異が将来的にも発 生する可能性がある場合には,標準値の洗い直しが行なわれるべきである ことにも言及している。

I V .   まとめ

つまるところ, Williams が主張しようとしたところは,企業組織全体的 な観点からの目標をどのように具体的に達成していくかにあったものと言 えよう。そのために最高経営執行者が株主• 取締役から委ねられた責任・

責務を細分化して,組織単位や最終的には個々人に割当て,組織全体が調 和の取れた形で目的達成に進めるような形態を推奨したのである。責任が 全うされたかどうかを判断するには何らかの基準値が必要であり,その基 準値として Williams は標準値として示される変動予算の有用性を提唱し たのである。つまり, Williams の主眼はあくまでも企業全般的な経営管理 にあったのである。そして変動予算を設定する段階で損益分岐点分析,貢 献利益概念,そして固変分解方法としての高低点法が必要であるとしたの

である。

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1 5 6  ( 5 5 0 )   第 4 6 巻 第 4 号 t i o n a l  E d u c a t i o n  and R e s e a r c h  i n  A c c o u n t i n g .  

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参照

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