• 検索結果がありません。

振出日より前の日を満期とする手形の効力

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "振出日より前の日を満期とする手形の効力"

Copied!
52
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

振出日より前の日を満期とする手形の効力

その他のタイトル Die widerspruchliche Angabe des Zahlungstages beim Tagwechsel

著者 福瀧 博之

雑誌名 關西大學法學論集

45

2‑3

ページ 411‑461

発行年 1995‑08‑27

URL http://hdl.handle.net/10112/00024605

(2)

日 より

f‑

の日 満

期 と する

(3)

1

2

3

︱︱︱振出日より前の日を満期とする確定日払手形の効力

1無効説の理由付け

2現実に手形を振出した日と満期の関係

3手形を無効としないための法律構成

②現実に手形を振出した日と満期の関係の問題に置き換える法律構成

③振出日の記載の問題としての構成︵有効説︶

4変造類型の特殊性

①変造類型の独自性と振出日の記載の問題としての理論構成

5まとめにかえて

(4)

振出日より前の日を満期とする確定日払手形は︑そのような満期の記載にもかかわらず︑手形としての効力を有す

学説︵通説︶は︑従来︑満期︵支払期日︶が振出日より前の日となっている確定日払手形は︑これを無効と解して

( 1)  

きた︒あるいは︑確定日払手形とは︑特定の日を満期とするものであり︑その日︵満期︶は不合理な日であってはな

( 2 ) ( 3 )  

らないが︑﹁振出の日附前の日も不合理な日の記載として無効と解する﹂といい︑あるいは︑﹁満期は可能な日なるこ

( 4)  

とを要する﹂から︑﹁振出日に先立つ日附は適法なる満期の記載たり得ない﹂とされる︒

これに対して︑﹁定日払手形︹確定日払手形︺につき振出の日付を記載させる意味がないこと﹂および﹁各記載間

の論理的関係にまで細かく注意させることが無理な要求であること﹂を理由に︑通説に﹁疑問がある﹂とする有力な

( 5)  

見解があり︑また︑振出日附より前の日を満期とする場合にも﹁当然に無効と解すべきものではなく︑特に現実に振

り出した日より以前の︵過去の︶日を満期とするときは︑振出当初から期限後裏書によって譲渡されることになり︑

人的抗弁の切断や善意取得が認められない満期経過後の手形として利用することを否定する必要はない﹂と説く見解

( 6)  

本稿においては︑判例の検討を通して︑この問題に多少の考察を加えようとするものである︒以下においては︑先

ず︑この問題に関する諸判決を概観し︵二︑判例の検討︶︑次いで︑これらの判決に現れた﹁理由付け﹂の検討を通

して︑﹁振出日より前の日を満期とする手形の効力﹂に考察を加えることにする︵三︑振出日より前の日を満期とす

う え

︵四

一三

(5)

も︑手形としての効力を有するものとしている 関法第四五巻第ニ・三合併号

(1

)

たとえば︑竹田省・手形法・小切手法︵有斐閣一九五五年︶八四頁︑岩本慧・商法m

社一九六六年︶七七頁︑石井照久・鴻常夫・手形法小切手法︵増補版︶︵勁草書房一九七五年︶一七四頁参照︒さらに︑鈴木竹雄•前田庸・手形法・小切手法〔新版〕(有斐閣一九九二年)一九一頁参照。(2)鈴木•前田・前掲書一九一頁。(3)石井・鴻•前掲書一七四頁。(4)竹田•前掲書八四頁。(5)鈴木•前田・前掲書一九三頁註一六。菱田政宏·手形小切手法(中央経済社

(6

)

平出慶道・手形法小切手法︵有斐閣一九九

0

年︶三

0

一 頁

満期︵支払期日︶が振出日より前の日となっている確定日払手形の効力が問題とされている判決は︑次に見るよう

にいくつか報告されているが︑大審院の判決が一件ある他は︑

ー ニ

0

いずれも下級審の判決である︒また︑

満期が振出日より前の手形は無効であると解しているが︵無効説︶︑

︵有効説︶︒以下においては︑この問題を取扱う諸判決を簡単に検討

することから始める︒事案の簡単な紹介︑判決の結論およびその結論に至る理由付けなどを見ておきたい︒

満期︵支払期日︶が振出日より前の日となっている確定日払手形は︑従来の判例・通説によれば無効と解されてい 一部の判決は︑これと異なり︑このような手形

(6)

けも必ずしも同一ではない︒

る︒ただし︑従来の判例が取扱っている事案は区々であり︑また︑満期日が振出日より前の手形を無効とする理由付 さらに︑基本的には︑無効説を採用しながらも︑具体的事案との関連においては︑あるいは︑無効説に別の理論を

重ね︑あるいは︑別の視点から無効説を修正して︑本来の無効説とは異なる結論を導くものもある︒

①大判昭和九年七月=︱‑日法学三巻︱二号︱二四頁

この判決は︑満期が振出日より前の手形の効力に関するいわゆるリーディング・ケースとして︑よく引用される︒

事案は︑現行の手形法の施行前に振出された手形に関するものである

(l ) 

昭和四年十一月十︳︱‑日に︑振出日を同年十一月二十三日︑満期日を同年十月二十三日とする約束手形が振出された が︑その交付を受けた受取人の代理人が注意したので︑振出人によって︑振出日は︑昭和四年十一月十三日と訂正さ れた︒しかし︑それでも︑この手形は︑まだなお︑﹁振出日と満期日とが前後せる﹂手形であったので︑受取人の代 理人は︑さらに訂正を求めた︒これに対して︑振出人は︑受取人が﹁適宜振出日附を満期日前に遡及して訂正す﹂る ように求め︑手形の﹁欄外に捺印して訂正の権限を附輿した﹂︒この権限にもとづいて︑受取人の代理人は︑振出日

附を満期日前である昭和四年十月十三H

と訂正した︒大審院は︑このような手形は︑﹁訂正前に於ては手形として未

マ マ

だ其の効力を生ずることなく訂正校始めて有効に成立するに至﹂る︑として︑原審が右の訂正の日を確定することな く︑受取人の振出人に対する﹁支払命令送達の翌日⁝⁝以降完済に至るまで﹂の遅延損害金の支払を求める請求を認 容したのは審理不盛理由不備であるとして︑原判決を破毀して原審に差戻した︒

(7)

第四五巻第ニ・三合併号

振出日の記載を訂正して始めて有効な手形が成立するとする理由に関しては︑判決は︑﹁満期日は手形の呈示支払

等に付不能の日たる可からざるや勿論にして其の性質上振出以後なるを要する所右訂正前の手形は此の適正なる満期

日の記載を鋏き前記の如く日附を訂正するに因りて漸く約束手形としての要件を具備するに至りたるものなればな

一度︑振出日が訂正された後︑さらに訂正権限を与えたというものであり︑その点︑分かりにくいが︑要

するに︑振出日を昭和四年十一月十︳︱‑日︵一度訂正された振出日︶とし︑それより前の同年十月二十三日を満期とす

る手形は無効であり︑振出日が満期日前である昭和四年十月十︳︱‑日と訂正された後に始めて有効に成立するに至ると

するものである︒したがって︑また︑手形金請求に伴う遅延損害金も振出日が訂正︵再度の訂正︶された後において

始めて認められるとするものである︵手形の記載事項の権限に基づく訂正に伴う法的問題には︑ここでは立ち入らな

い︶︒このような判断の理由としては︑満期は手形の呈示支払等が不能の日であってはならず︑振出以後の日でなけ

ればならないが︑振出日より前の日を満期とする手形は︑適正なる満期日の記載を欠くものであることが挙げられて

いる︒なお︑この判決の事案は︑手形に記載された満期︵昭和四年十月二十三日︶が現実の振出日︵昭和四年十一月

十三日︶より前であるような場合であったが︑判決においては︑この点は特に問題とされていない︒

②松本区判大正一三年六月一0日新聞ニニ九六号ニ︱頁

この判決も現行の手形法の施行前の事案であるが︑判決①と同旨の下級審判決として︑よく引用される︒

振出人は︑振出日を大正十一年六月十二日︑支払期日︵満期日︶を大正十一年八月十日とする約束手形を売買代金

の支払のために︑他人の白地裏書を得て差入れたが︑後日︑その手形金を支払ってその返戻を受けた︒この振出人は︑

り﹂と判示している︒

(8)

8

この手形を再度交付して︑金円の融通を受けたが︑この手形の再使用に当たっては︑最初振出したときのまま記載を

訂正しないで利用したというのである︒判決は︑このような手形は不適式の手形であって効力がないから︑その交付

を受けた者から振出人に対する手形金の請求は︑これを認容することができないとする︒その理由は︑﹁手形ヲ再度

振出シ使用︹するに当たり︺⁝⁝最初振出ノ儘訂正セス使用シタル為メ右手形ニハ支払期日ヲ﹃大正十一年八月十

日﹄卜記載シアリ︹これは︺右手形ヲ⁝⁝再度振出シ原告二差入レタル大正十一年十月十一日以前ノ日ニシテ右支払

期日ハ振出日ノ前ナル事ヲ認メ得可ク手形ノ満期日ハ振出日ノ以後ナル事ヲ要スルハ論ナキ鹿ニシテ斯ル記載ハ満期

日ノ記載ナキト同様ナレハ結局右手形ハ満期日ノ記載ヲ鋏ク不適式ノ手形ナリト謂ハサルヲ得ス而シテ手形ハ要式証

券ニシテ手形ノ要件ヲ鋏ク以上ハ手形トシテノ効カナキモノ﹂であると説明されている︒

事案は︑売買代金の支払のために交付した約束手形の返戻を受けた振出人が︑最初振出した時のままの記載のある

手形を再使用したというものであり︑その点に特殊性がある︵この点に着目した構成も可能であろうが︑この問題は︑

ここでは取り上げない︶︒再度の使用の結果︑現実に振出した日︵再度の使用のために交付した日︶である大正十一

年十月十一日より前の日である大正十一年八月十日を支払期日︵満期︶とする記載のある手形を振出交付することに

なったものである︒なお︑判決からは︑必ずしも明確ではないが︑振出日の記載も大正十一年六月十二日のままだっ

この判決は︑右の判決①と同旨の判決として引用されることも少なくないが︑判決①のように︑振出日と満期の記

載の前後関係を取り上げるものではなく︑現実に手形を振出した日と満期の前後関係を問題にするものである︒

③東京地判昭和九年︱一月三0日評論二四巻商法一八七頁

(9)

請求は正当であると判示した︒

第四五巻第ニ・三合併号

やはり︑現行の手形法の施行前に振出された手形に関する事案を取扱うものである

判決から窺う限りでは︑この判決は︑右の判決①とまったく同一の事案︵日付︑当事者など︶に関するもののようで

︵もっとも︑判決①とこの判決の関係は︑文献上は必ずしも明らかではない︶︒

︵四

一八

昭和四年十一月十三日に︑振出日を同年十一月二十三日︑満期Hを同年十月二十三日とする約束手形が振出された

が︑その交付を受けた受取人の代理人が﹁振出日附力満期日ヨリ後ナルヲ以テ﹂振出人に注意したので︑振出日は︑

昭和四年十一月十三日と訂正された︒しかし︑﹁尚振出日卜満期8卜前後スルヲ以テ﹂︑受取人の代理人は︑さらにそ

の訂正を求めた︒これに対して︑振出人は︑受取人が﹁適宜振出日附ヲ満期日前二遡及シテ訂正ス﹂るように求め︑

手形の﹁欄外︹に︺捺印シテ訂正ノ権限ヲ附輿﹂した︒この権限にもとづいて︑受取人の代理人は︑﹁昭和七年七月

二十九日本件口頭辮論期日二於テ﹂振出日附を満期日前である昭和四年十月十三日と訂正した︑というのである︒判

決は︑﹁手形ノ満期日ハ振出ノ後二支払ハルヘキ期日ナレハ振出ノHヨリ以後ナルコトヲ要シ其ノ逆二振出ノ日ヨリ

以前ナルトキハ其ノ手形ハ無効﹂であるが︑﹁本件手形二付テハ既二適法二訂正セラレタルコト右認定ノ如クナレハ

形式上ハ振出日ハ満期日ノ前タル昭和四年十月十三日トナリ手形ノ要件トシテノ記載二鋏クトコロ﹂はない︑ただ

﹁実際ノ振出日ハ昭和四年十一月十三日ナルヲ以テ右訂正記載セラレタル振出日ト一致﹂しないが︑﹁手形ハ其ノ記

載二依リテノミ要件ヲ具備スルヤ否ヤヲ判定﹂すべきものであるから︑﹁其ノ記載力真正ナル事実卜符号スルト否卜

ハ之ヲ問ハサルモノナレハ右不一致ヲ以テ手形ヲ無効﹂とすることはできない︑と説いて︑手形金残額︵手形金の一

部の内入弁済が認定されている︶およびこれに対する昭和七年七月三十日以降完済までの遅延損害金の支払を求める ある 関法

一六

(10)

判決は︑﹁振出日よりも前の日を満期とする約束手形は無効である﹂ことを理由にするが︑それ以上の理由は挙げ

られていない︒すなわち︑﹁被告等は︑

て責任を負うべきところ︑原文言及び適式に補充せられた文言によれば︑本件手形は︑振出日を昭和三五年一二月六日

とし満期を同年二月二0

日とするものとなる﹂︒﹁このような振出日よりも前の日を満期とする約束手形は無効である から︑被告等は振出人としても︑償還義務者として︹も︺責を負うべきいわれはない﹂というのである︒

(2 ) 

⑤大阪地判昭和四一年六月一四日判時四七九号五六頁・金融法務四五五号一三頁 こ ︒

H

介して被融通者に交付された︒この手形の満期は︑昭和三五年二月︱

1 0

日︑振出日は白地であった︒ところが︑この

被融通者は︑約定に反してこの手形を返還せず︑﹁かえってその満期である昭和三五年二月二

0日を同年五月二0

と変造し︑振出日欄に同年一二月六日と補充したうえ︑同年三月原告に対し﹂て裏書譲渡したというのである︒手形所 持人の振出人および第一裏書人︵受取人︶に対する約束手形金請求は︑このような手形は無効であるとして棄却され

問題の約束手形は︑昭和一二四年

④京都地判昭和三八年八月二二日金融法務三五五号一九頁 この判決は︑戦後のものであるが︑事案は︑振出日を白地として振出された融通手形の被融通者が満期を変造し︑

それに対応する振出日を記入した結果︑満期が振出日よりも前の日となったというものである︒この点において︑前 述の判決①乃至判決③が︑あるいは︑振出人の誤記によるものであり︑あるいは︑振出人が手形を再利用したために 満期と振出日の前後関係が逆になったものであるのに対して︑その特徴を有する︒

一月に︑融通手形として︑振出人︵被告︶

から︑受取人・第一裏書人︵被告︶を

いずれも手形文言の変造の場合の変造前の署名者であるから︑原文言に従っ

(11)

Jの判決の事案は︑融通手形として振出日白地で振出交付された︵実際の振出日は不明である︶約束手形の受取人

第四五巻第ニ・三合併号

判決は︑振出日より前の日を満期として記載した約束手形は無効であるとして︑受取人の振出人に対する手形金請

求を棄却した︒振出日より前の日を満期として記載した約束手形は︑呈示や支払が不可能であることを理由とする︒

この手形が実際にいつ振出交付されたのかは不明であるが︑認定されているその原因関係からすれば振出日の頃で

あったと考えられる︒

すなわち︑判決は︑﹁右証券︹手形︺

︵ 四

0 )

の記載によれば振出日が昭和三六年八月一四日であるのに満期がそれより前

の同年五月一五Hとなっているというのであるが︑このような手形の呈示や支払が不可能の日を満期として記載した

手形は無効といわなければならない﹂と判示する︒また︑この手形の満期は誤記によるものであるとの原告︵受取

ものであると主張しているが︑かりに右主張が真実であるとしても︑こうした手形面にあらわれぬ事情を加えて手形

の記載内容ないし手形行為を解釈することは手形の文言証券たる性質上もとより許さるべきでない﹂として︑これを

この判決も︑無効説に立つものであり︑手形所持人︵原告︶が誤記によるものであると主張したのに対して︑手形

行為の文言性︵延いては︑いわゆる手形客観解釈の原則︶を根拠にその主張を斥けたものである︒

(3 ) 

⑥大阪高判昭和四四年︱二月一七日下民集二0巻︱‑.︱二号九二八頁・金融法務五七二号二六頁

︵被融通者︶が満期を変造して︑これを裏書譲渡したところ︑被裏書人︵手形所持人︶が白地の振出日を補充して振

出人に対して手形金を請求したというものである︒その結果︑変造前の原文言である満期と補充された振出日とを比 関法

の主張に対しては︑﹁原告は右手形の満期は本来﹃昭和三七年五月一五日﹂とあるべきを誤記した

一六

(12)

異にする訳ではない﹂としたものである︒ 較すると満期が振出日より前になったというものである︒

すなわち︑本判決は︑問題となった各手形︹六通︺

⁝⁝変造前の署名者として変造前の原文言に従って右各手形上の責任を負担すべきことになるが﹂︑そのうち五通の

各手形は手形所持人によって振出日が右のように﹁補充された結果︑満期欄の原文言に従う限り︑満期日が振出日よ

りも前となるのであって︑確定日払の場合でも振出日を手形要件と解すべき以上︑かかる不合理な手形を無効とすべ

きことは︑当初よりこのように記載された場合と後に振出日または満期日が補充された結果かかる外観を生じた場合

とでその理を異にする訳ではないから︑⁝⁝各手形金請求は︑無効の手形に基く請求として︑その余の争点に関する

この判決は︑判決④と類似の事案に関するものであり︑振出日を白地として振出された融通手形の被融通者が満期

を変造して︑裏書譲渡し︑被裏書人が︑それに対応する振出日を記入した結果︑満期が振出日よりも前の日となった

というものである︒満期の変造があるので︑変造前の手形行為者は︑変造前の原文言に従って責任を負う結果として

︵手形法七七条一項七号・六九条︶︑﹁満期欄の原文言に従う限り︑満期日が振出日よりも前となる﹂のである︒この

場合と︑振出人の誤記などにより振出日と満期の前後関係が逆になった場合︵判決①ー判決③︑判決⑤︶とを区別し

て取扱うことも考えられるが︑この判決は︑両者を区別せず︑このような﹁不合理な手形を無効とすべきことは︑当

初よりこのように記載された場合と後に振出日または満期日が補充された結果かかる外観を生じた場合とでその理を

( 4)  

⑦東京高判昭和六一年二月一九日判例タイムズ六一0号︱二五頁・金融法務︱︱二八号五九頁 判断を加えるまでもなく︑排斥を免れない﹂とするのである︒

︵四 ニ︱ )

(13)

第四五巻第ニ・三合併号

満期が振出日より前の手形の効力が問題となった判決の多くは︑約束手形金の請求に関するものであるが︵判決①

および判決②においては︑直接的には︑遅延損害金の金額との関係で手形の効力が問題となった︶︑この判決におい

ては︑満期と振出日の記載の前後関係が逆になっている手形に対して支払担当者としてその支払をした銀行の責任が

事案は︑昭和五三年四月一九日に︵振出日の記載がどうなっていたのかは︑必ずしも明らかではない︶支払期日の

表示を昭和五二年一

0

月 ︱ ︱

1 0

日として約束手形を振出交付した者が︑その後︑何ぴとかによって満期日が︹振出日よ

り後の日附である昭和五三年一0

0日に︺変造された手形を支払った銀行に対して損害賠償を請求したというも

のである︵損害賠償請求控訴事件︶︒前提として︑この約束手形の効力が問題となったが︑判決は︑﹁支払期Hが現実

に振出された日よりも過去の日付に記載されている﹂から無効であると判示した︒﹁本件手形のように︑支払期日

︵満期日︶が現実に振出された日よりも過去の日付に記載されているような手形は︑当該手形の呈示及び支払を不可

能ならしめるものであるから無効と解するほかなく︑さらに︑約束手形の支払期日が変造された場合においては︑振

出人は原文言︵変造前の文言︶にしたがって責を負うにとどまるものであることからすれば︑控訴人︹振出人︺は︑

本件約束手形につき支払義務はないといわざるをえない﹂というのである︒

この判決は︑右に述べたように︑手形に支払をした銀行の責任が問題とされた事案である点で特殊であるが︑さら

に︑判決②と同じく︑振出日と満期の記載の前後関係ではなく︑現実に手形を振出した日と満期の前後関係を問題に

するものであるものであること︑さらには︑銀行がこの手形に支払をした時には︑すでに満期が変造されており︑外

観上は︑満期と振出日の前後関係に問題はなかったものであることも注目される︒ 関法

一 七

0

(14)

誤記とするもの

⑧飯塚簡裁判昭和三八年七月二二日判時三四五号五一頁

一 七

以上の諸判決は︑満期が振出日より前の手形を無効とするものである︵ただし︑判決②︑判決⑦は︑振出日ではな

くて︑現実に手形の振出交付された日を問題とする︶︒この判決も基本的には︑上記の諸判決と同じく︑﹁振出日より

前の日を支払期日として記載した手形﹂は無効であるとしながら︑しかし︑誤記であることが明らかである場合には︑

事案においては︑被告︵振出人︶は﹁昭和三七年四月二八日︹振出日の記載も同じか︺原告︵受取人・手形所持

人︶に対し⁝⁝約束手形八通を振出﹂しているが︑これは︑修理代金債務の分割支払のために交付されたものであり︑

問題となっている手形も︑その一通であるが︑他の手形とは異なり︑この﹁手形は振出日より前の日を支払期日︹昭

和二七年五月三0日︺として記載したものである﹂︒そこで︑判決は│̲.原則論または一般論としては︑ー﹁支

払期日は手形の呈示支払等の基準となる日であるから︑不能の日であってはならず振出日より前の日を支払期日とし

て記載した手形は一般にこれを無効と解すべきである﹂とする︒しかし︑振出人が﹁振出日より後の日を支払期日と

して記載する意思であったのが︑不注意で振出日より前の日を支払期日として記載してしまったことが他の資料から

明らかな場合には︑振出人と受取人との間では振出人の真意に従って右記載を補充解釈し手形を有効なものとして取

扱う余地もある﹂とする︒判決は︑事案の場合には︑この手形が修理代金の分割支払のために交付された八通のうち

の一通であったこと︑および他の七通の手形の支払期日の記載と当該の手形の支払期日の記載とを対比して考えれば︑

被告︵振出人︶が問題の手形の﹁支払期日を昭和二七年五月一︱

1 0

日と記載したのは昭和三七年五月三0日と記載すべ

無効とすべきではないとするものである︒

(15)

(3) 

る ︒ ない﹂と判示して︑原告の請求を認容した︒

第四五巻第ニ・三合併号

一部の判決は︑基本的には無効説に立ちなが

きところを誤記したものであることが明白である﹂︑したがって︑この手形の﹁支払期日は少なくとも原被告間にお

いてはこれを昭和三七年五月三0日と記載されたものと解して処理すべきものであって︑これを無効と解すべきでは

この判決においては︑1右に引用した判旨から見る限り︑ーー.手形に記載された振出日と満期の前後関係ではな

く︑現実に手形が振出された日と満期の前後関係が問題にされているのではないかとも解されるが︑この点を措くと

すると︑この判決は︑基本的には無効説に立ちながら︑事案の場合には満期の記載は誤記であって︑手形は有効であ

るとするものである点に︑その特徴を有する︒判決⑤においては︑誤記の主張が︑手形行為の文言性︵延いては︑い

わゆる手形客観解釈の原則︶を根拠に斥けられたのに対して︑この判決においては︑満期の誤記が﹁他の資料﹂から

明らかな場合には︑﹁振出人と受取人との間では振出人の真意に従って右記載を補充解釈し手形を有効なものとして

取扱う余地もある﹂とするものであり︑具体的には︑事案の場合には︑手形振出の事情︵手形が修理代金の分割支払

のために交付された八通のうちの一通であったことおよび他の七通の手形の支払期日の記載との対比︶を根拠に満期

の誤記を認定したものである︒

なお︑振出日が誤記によるものであることを認定して手形は有効であると判示するものに︑さらに次の判決⑨があ

このように︑比較的多数の判決は︑無効説によるが︑これに対して︑

ら別の理論を重ね︑あるいは︑別個の視点から無効説の修正を試みる︒右の誤記による判決もこのような試みの一と 関法

一 七

(16)

判決である︶︑問題とされている約束手形は︑

一通は昭和五二年五月六日︑他の一通は昭和五二年六月五日となっているものであり︑受取人からこれらの

手形の裏書譲渡を受けた手形所持人が振出人に対して手形金の請求をしたという事案である︒

この判決は︑事案の場合には︑﹁振出日の日附が満期より後となっている手形の効力如何﹂が問題であるとしたう

え︑控訴人︵手形振出人︶の主張をまとめて︑﹁これ

控訴人の主張は畢党するところ︑右のような手形振出行為は不合理な満期を記載したもの︑不能の満期を記載したも

のとして︑支払委託の内容に矛盾あるものとして無効に帰するという﹂ものである︑と捉える︒そして︑判決は︑事

一方において︑不能の満期を記載した無効の手形には当たらず︑しかも︑他方では︑振出日の記載は︑

ら︑問題となっている各手形は﹁その手形要件に欠けるところはな﹂<︑﹁有効である﹂とし︑したがって︑手形金

の支払を求める請求は理由があるとして︑これと同旨の手形判決を認可する原判決を支持して控訴を棄却した︒

一七

l

満期より前である昭和五一年︱二月二七日の誤記である︵振出日の日附が満期より後となっている手形ではない︶か

先ず︑この判決においては して︑これを位置付けることもできるが︑さらに次のような判決が報告されている︒

( 5)  

⑨東京高判昭和五︳︱‑年九月四日判時九︱一号一五六頁・金融・商事判例五六六号一七頁

この判決は︑手形に記載された振出日と満期の前後関係が逆になっている手形に関して︑

るとし︑加えて︑現実に手形が振出された日からすれば満期において手形を里示し︑また支払をすることが可能であ

るから不能の満期を記載したものではないと説明するものである︒

︵なお︑この判決は︑後述の手形判決⑫浦和地秩父支判昭和五三年一月一八日の控訴審

いずれも振出日の記載が︑昭和五二年︱二月二七日であり︑

︹振出日の日附が満期より後となっている手形︺を無効とする 一方で振出日が誤記であ

(17)

であるという主張は当たらない﹂と判示する︒ 第四五巻第ニ・三合併号

判決は︑その理由を次のように説いている︒すなわち︑先ず︑このような手形は︑不能の満期を記載した手形とし

て無効であるとする主張に対しては︑﹁満期が現実に振出された日より過去の日附となっていれば格別︑それ以後の

日附であるならば︑呈示︑支払が不能になるということはあり得ない︒本件各手形は前記認定のように︑満期の翌日

もしくは翌々日に呈示されているのであり︹満期を昭和五二年五月六日とする手形は︑同年五月七日に︑満期を昭和

五二年六月五日とする手形は同年六月七日に支払の呈示が行なわれている︺︑不能の満期を記載した手形として無効

さらに︑他方︑﹁振出日の日附が満期より後となっている手形﹂による﹁手形振出行為は不合理な満期を記載した

もの⁝⁝として︑支払委託の内容に矛盾あるものとして無効に帰する﹂のか︑という問題に関しては︑次のように判

示している︒﹁次に不合理との主張についてであるが︑成程本件の如き手形は一見如何にも不合理である︒しかし合

理的に解釈するならば︑本件の手形にあっては︑振出日の記載が誤記であると見るのが自然であり︑前記のように本

件手形の満期はいずれも呈示可能な日であったことからして︑その現実に振出された日は右満期より以前の日である

ことが明らかであり︑この事実と成立に争いのない甲第一︑二号証の裏面に︑第一裏書の日附としていずれも昭和五

一年︱二月二八日と記載されていることからすれば︑本件手形の記載自体からみても︑本件各手形の振出日欄に昭和

五二年︱二月二七日とある記載は昭和五一年︱二月二七日の誤記であると認めて差支えない︒﹂﹁してみれば本件各手

形は結局においてなんらその手形要件において欠けるところはないことに帰し︑有効であるというべきである﹂︒

この判決においては︑振出日の記載と満期の前後関係が逆になっている点を問題にしながら︑同時に現実に手形が

振出された日と満期の関係をも問題にして︑満期が現実に振出された日以後の日附であるならば︑呈示︑支払が不能 関法

一七

(18)

けて説明することを試みるものである︒

になるということはあり得ず︑不能の満期を記載した手形として無効であるという主張は当たらないとする︒しかし︑

この理由付けのみでは︑振出日の記載と満期の関係が逆になっている問題には答えていないことになるので︑その問

題に関しては︑それは誤記によるものであるとの前述の説明︵判決⑧参照︶をここでも援用している︒本判決の場合

には︑手形外の事情によらず︑手形が現実に満期において呈示されていたことから﹁その現実に振出された日は右満

期より以前の日である﹂としたうえ︑さらに手形の裏面の裏書日附から﹁本件各手形の振出日欄に昭和五二年︱二月

二七日とある記載は昭和五一年︱二月二七日の誤記である﹂と認定したものである︒

⑩大阪高判平成五年︱一月一九日判例タイムズ八四四号二三五頁・金融・商事判例九四一号一︱頁・判時一四八五号

( 6)  

この判決においても︑右の判決⑨におけるのと同様に︑満期が手形に記載された振出日より前になっている手形の

効力が争われた︒右の判決⑨においては︑誤記による説明が用いられているだけでなく︑併せて︑現実に手形が振出

された日と満期の前後関係が問題とされたが︑この判決においても︑現実に手形が振出された日と満期の前後関係が︑

判決の理由付けにおいて問題とされている︒しかも︑﹁手形に記載された振出日と満期の前後関係に関する問題﹂の

処理にあたって︑それを︑それと区別すべき﹁手形が現実に振出された日と満期の前後関係に関する問題﹂に関連付

この判決の事案は︑次のようなものである︒約束手形の振出人である被控訴人株式会社︵被告︶は︑平成三年一〇

月二四日︑訴外A株式会社に対して︑いずれも︑満期を平成三年︱一月二二日とし︑振出日および受取人を白地とす

る約束手形三通を振出した︒しかし︑この会社は︑満期に本件各手形を決済することができず︑平成一︳一年︱一月ニニ

(19)

判決は︑﹁満期は手形の呈示につき不能の日であってはならないとか︑満期が振出日より前であることは不合理な

日を記載した手形であるとして︑満期が振出日より前の手形を無効とする見解もある﹂ことに言及しながら︑それに い﹂として︑これを争った︒ 第四五巻第ニ・三合併号

︵四

二八

日 ︑

A会社に対して︑新手形三通を振出して︑本件各手形の返還を求めたが︑A会社が﹁後で返す﹂というので︑そ

の受戻をしなかった︒A会社は︑金策のため︑本件各手形の満期を平成四年六月二二日と変造して︑これを平成三年

︱一月二五日に訴外有限会社B商店に対し︑割引のため裏書譲渡した︒本件各手形の所持人である控訴人信用金庫

︵原告︶は︑本件各手形をB商店から平成三年︱二月二日に裏書により取得し︑裏書の連続する本件各手形の所持人

控訴審において︑振出人である会社︵被控訴人・被告︶は︑本件各手形は︑﹁A会社が満期を平成四年六月二二日

と変造し︑また︑振出日が平成三年︱一月二五日と補充された﹂ものであり︑﹁被控訴人︵振出人︶は本件各手形に

ついて変造前の文言に従って責任を負うところ︑振出日が同月二五日と補充された結果︑本件各手形は変造前の満期

が振出日より前になるという不合理な手形となった﹂ので﹁このような手形は無効である﹂と主張した︒他方︑所持

人である信用金庫︵控訴人・原告︶は︑﹁本件各手形の変造前の満期による支払呈示期間は平成三年︱一月二六日ま

でであるから︹変造前の満期である一︱月二二日の翌日は勤労感謝の日︑その翌日は日曜日であって︑

日でないから︑変造前の満期による支払呈示期間は同月二六日までとなる︺︑本件各手形の振出日である同月二五日

の後にも支払呈示期間が存在する﹂のであり︑﹁そうすると︑本件各手形はその振出日後︑変造前の満期による支払

呈示期間内に支払呈示が可能である﹂︑﹁このような場合には︑満期が振出日より前であっても︑手形は無効にならな として︑振出人に対して︑本件各手形金の支払を求める︒ 関法

いずれも取引

(20)

続けて︑手形に記載された振出日は︑必ずしも現実に手形が振出された日と同じではないとして︑現実に手形が振出

された日と満期の関係を検討し︑現実に手形が振出された日より後の日を満期とする手形は︑必ずしも不合理なもの

でないこと︑現実に手形が振出された日が満期より後でも支払呈示期間内であれば︑支払呈示期間内の支払呈示およ

び支払が可能であること︑仮に支払呈示期間内の呈示がなされなくても︑主たる債務者に対しては支払呈示期間経過

後も手形金の請求が可能であること︑さらには︑現実に手形が振出された当時にすでに満期経過後の手形であっても︑

そのような手形も認められるといったことを指摘した後︑このようなことからすれば︑﹁満期が振出日より前の手形

結局︑判決は︑﹁満期が振出日より前の手形であっても︑振出日が支払呈示期間の末日以前であれば︑支払呈示期

間内の支払呈示が可能であり︑表示されている手形要件が不合理な権利関係を表章しているものとはいえない﹂とし

たうえ︑﹁本件各手形の変造前の満期による支払呈示期間は︑前示のとおり平成三年︱一月二六日までであるから︑

本件各手形の振出日である同月二五日の後にも支払呈示期間が残存する︒したがって︑本件各手形は︑振出日後︑変

造前の満期による支払呈示期間内に支払呈示が可能であり︑表示されている手形要件が不合理な権利関係を表章して

いるものとはいえないから︑本件各手形を無効とするいわれはない︒﹂と判示している︒控訴人︵原告︶

の請求は認

この判決においては︑右に紹介したように手形に記載された振出日と満期の前後関係が問題となっているが︑この

問題を考えるに当たって︑現実の振出日と満期の関係が問題とされているのである︒しかも︑少なくとも判決の表現

上は︑満期は手形が現実に振出された日より前になっていてもよいとするもののようであり︑そして︑このことを満

を一律に無効とするのは相当でない﹂とする︒

(21)

以上の判決①から判決⑩の各判決は︑満期が振出日よりも前となっている手形の効力の問題を︑概ね満期の記載の

問題として取扱って︵必ずしも明確でない場合もあるが︶︑そのような手形は無効であるとするものであるが︑少数

ながら︑問題を確定日払手形の振出日の記載の問題︵振出日が満期より後の確定日払手形の効力の問題︶として捉え︑

このような手形も有効であるとする判決も見られる︒

(7 ) 

⑪東京地判昭和四0年九月七日下民集一六巻九号一四0

1 0

号四三頁

記載のある約束手形に関するものであり︵手形が実際にいつ振出されたかは明らかでない︶︑第三取得者の振出人に

対する約束手形金請求事件である︒この判決は︑確定日払手形の振出日は形式的に記載されていれば足り︑振出日が

満期より後となっていても︑その手形を無効とすべきではない︑とする︒

判決によれば︑本件の手形の満期は﹁その振出日より前の日付となっているが︑本件手形の如き確定日払手形の振 2

期と振出日︵振出日附︶

振出日が支払呈示期間の末日以前であれば︑支払呈示期間内の支払呈示が可能であり﹂︑そのような手形を﹁無効と

なお︑この判決の事案も︑振出日を白地として振出された手形の満期が変造され︑それに対応する振出日が補充さ

れたものであることが注目される︒

の事案は︑満期として昭和三九年一月一五日︑振出日として昭和一二九年︱二月一五日という するいわれはない﹂とするのである︒ 関法第四五巻第ニ・三合併号

の前後関係に及ぽして︑少なくとも事案のように﹁満期が振出日より前の手形であっても︑

︵ 四

0 )

(22)

出日は形式的にのみその記載が要求されるものであって︑その記載の実質的な必要性は存在しないものと考えられる︒

したがって︑形式的にその記載がありさえすればそれが満期より後の日付であっても特段両日付の関係が不合理であ

ることを理由に当該手形を無効とすべきいわれはないものと解するのが相当である﹂というのである︒原告の請求は

なお︑原告︵手形所持人︶は︑この﹁手形の満期の記載は昭和四0年一月一五日の誤記である﹂と主張したが︑判

決は︑このような考え方は採用しない︒﹁手形外の事実を調べて満期の誤記を認定し︑真実記載されるべきであった

日付に補充訂正することは︑手形の性質上許されないばかりか︑満期と振出日の日付関係如何が⁝⁝手形の無効をき

たすことがない場合であれば必要のないことである﹂というのである︒

⑫浦和地秩父支判昭和五一二年一月一八日判時八八七号一︱三頁

この判決︵手形判決︶においても︑右の判決︵判決⑪︶と同様に﹁振出日付が満期日よりも後の日となっている確

定日払の手形﹂の効力が問題とされた︒問題の約束手形は︑二通あり︑いずれも振出日の記載が︑昭和五二年ニ︱月

二七日であり︑満期が一通は昭和五二年五月六日︑他の一通は昭和五二年六月五日となっているが︑受取人からこれ

らの手形の裏書譲渡を受けた手形所持人が振出人に対して手形金の請求をしたという事案である︒判決は︑原告︵手

の請求の理由の有無は︑﹁振出日付が満期日よりも後の日となっている確定日払の手形が有効な手形と言

えるか否かによって決せられる﹂としたうえ︑﹁振出日の記載が満期日より後の日となっていても︑そのことの故に

確定日払の手形が無効となるものではない﹂として︑原告の請求を認容した︒

判決は︑その理由を詳しく述べているが︑要するに︑﹁本件二通の手形には︑満期日︑振出日が記載されているの

︵四

三一

(23)

ての要件﹂を欠き︑無効である旨︑判示している︒

3

第四五巻第ニ・三合併号

であるから︑この点についての手形要件は︑満期日︑振出日の先後関係を問わない限り満たされている﹂というので

あり︑﹁確定日払手形にあっては︑振出日には特別の意味はないものと言えるところ︑特別意味のない記載に影響さ

れて手形の有効性が失われるとするのは相当でない﹂とするものである︒また︑﹁確定日払手形の振出日には特別の

意味がないということを考えると︑確定日払手形の取得者が振出日付に格別注意を払わないという事態︑従って又︑

満期日と振出日の先後関係に格別注意を払わないという事態が一般的に予想できるところであるのに︑満期日よりも

振出日が後である場合には手形は無効であるとして︑このことにより不利益を受ける手形取得者に対し︑日付の先後

関係に注意を払わなかったのが悪いのだと言い捨てて法の保護を与えないのは妥当を欠く﹂とも判示している︒

一︑判例の多数は︑満期︵支払期日︶が振出日より前の日となっている確定日払手形は︑これを無効とする︒この

ような判決には︑古くは現在の手形法施行前に振出された手形に関する事案である前掲大判昭和九年七月三日︵判決

①)︑前掲東京地判昭和九年︱一月三0日︵判決③︶があり︑その後も︑前掲京都地判昭和三八年八月二二日︵判決

④)︑前掲大阪地判昭和四一年六月一四日︵判決⑤︶︑前掲大阪高判昭和四四年︱二月一七日︵判決⑥︶などがある︒

もっとも︑従来の判例が︑このような手形を無効とする理由は︑必ずしも明らかではないが︑前掲大判昭和九年七月

三日︵判決①︶は︑満期は﹁手形の呈示支払等に付不能の日﹂であってはならず︑したがって︑満期は振出日より後

でなければならないから︑振出日より前の満期は﹁適正なる満期日の記載﹂とはいえず︑その手形は﹁約束手形とし

一八

(24)

一八

二︑なお︑右と同旨の判決として︑さらに︑前掲松本区判大正一三年六月一0日︵判決②︶︑前掲東京高判昭和六

一年二月一九日︵判決⑦︶などが引用されることも少なくないが︑これらの判決は︑﹁手形に記載された振出日﹂で

はなく︑﹁現実に手形を振出交付した日﹂と満期との前後関係を問題として︑﹁支払期日が現実に振出された日よりも

過去の日付に記載されている﹂手形は︑その﹁呈示及び支払を不可能ならしめるものであるから﹂無効であるとする

これと同様の考え方は︑前掲東京高判昭和五三年九月四日︵判決⑨︶にも見られる︒この判決は︑﹁満期の記載﹂

︵この点で判決②および判決⑦とは異なる︶︑併せて現実の振

出日と満期の関係をも取り上げ︑振出日︵振出日附︶が満期より後となっていても︑満期が現実に振出された日より

後であるならば︵問題の各手形は︑満期の翌日もしくは翌々日に呈示されていたので︑満期は﹁現実の振出日﹂より

後であると認定された︶︑手形の呈示︑支払が不能になるということはあり得ないから︑﹁不能の満期を記載した手形

として無効であるという主張は当たらない﹂として︑このことを振出日の誤記と並べて判決の理由付けに用いている︒

また︑前掲大阪高判平成五年︱一月一九日︵判決⑩︶も︑満期と振出日の前後関係を問題にするが︑その際︑現実

に振出された日と満期の前後関係との対比において考え︑満期が振出日より前の手形も一律に無効とすべきではない

とする︒前掲東京高判昭和五三年九月四日︵判決⑨︶が︑手形に記載された振出日と満期の関係と並べて現実に手形

が振出された日と満期の関係を問題にしたのに対して︑この判決においては︑右に紹介したように手形に記載された

振出日と満期の前後関係の問題を考えるに当たって︑現実の振出日と満期の関係が問題とされているのであり︑しか

も︑判決の表現上は︑満期は手形が現実に振出された日より前になっていてもよいとするもののようである︒そして︑ と﹁振出日附﹂の前後関係を問題にするものであるが

︵ 四三 ︱

︱ ‑︶

参照

関連したドキュメント

が前スライドの (i)-(iii) を満たすとする.このとき,以下の3つの公理を 満たす整数を に対する degree ( 次数 ) といい, と書く..

譲渡書類到着日 を含む 10 日以 内。ただし、譲 渡書類等、出品 店より提出され たものから判明 する場合は到着 日を含む 5 日以

本番前日、師匠と今回で卒業するリーダーにみん なで手紙を書き、 自分の思いを伝えた。

タービンブレード側ファツリー部 は、運転時の熱応力及び過給機の 回転による遠心力により経年的な

手動のレバーを押して津波がどのようにして起きるかを観察 することができます。シミュレーターの前には、 「地図で見る日本

Dual I/O リードコマンドは、SI/SIO0、SO/SIO1 のピン機能が入出力に切り替わり、アドレス入力 とデータ出力の両方を x2

   手続内容(タスク)の鍵がかかっていること、反映日(完了日)に 日付が入っていることを確認する。また、登録したメールアドレ

 米田陽可里 日本の英語教育改善─よりよい早期英 語教育のために─.  平岡亮人