IS‑LMモ デ ル の 大 域 的 安 定 性 と 解 経 路 の 正 値 性
佐 久 間 敬
1.序
2変 数 の 自律 系 の微 分 方 程 式 に お け る大 域 的 安 定 性 を 論 ず る場 合 に しば しば 利 用 され るOlech[1]の 定 理 は,体 系 の解 の初 期 値 と均 衡 点 が 正 象 限 に 存 在 し た と して も,均 衡 点 に 向 う解 経 路 の正 値 性 を保 証 して い な い.Ito[2]はOlech の定 理 を修 正 す る こ とに よ り,解 経 路 の正 値 性 を 保 証 す る条 件 を示 した1).
この 小 論 の 目的 はItoの 示 した 条 件 を用 い てIS‑LMモ デ ル の大 域 的 安 定 性 と解 経 路 の正 値 性 に つ い て論 ず る こ とに あ る.
II.モ デ ル
単 純 なIS‑LMモ デ ル で は,次 の よ うな 仮 定 が な さ れ る.
(1)1財 経 済 で あ る.
(2)短 期 分 析 で あ る.
(3)貨 幣 は 外 生 的 に 与 え られ,一 定 で あ る.
④ 価 格 水 準 は 一 定 で あ る.
(5)閉 鎖 経 済 で あ る.
以 下 で 使 用 さ れ る 記 号 の 意 味 は 次 の と お りで あ る.Y:実 質 国 民 所 得(産 出 量),1:実 質 投 資 需 要,S:実 質 貯 蓄,r:実 質 利 子 率,M:名 目貨 幣 量.
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投 資 を
1=1(r),1。<0 と し,貯 蓄 を
S=S(Y),0<Sr<1
と す れ ぽ,生 産 物 市 場 の 均 衡 条 件 は 1(r)=s(Y)
で 表 わ さ れ る.ま た,貨 幣 需 要 を Md・ ・L(Y,r),Lr>0,L。<0 と す れ ば,貨 幣 市 場 の 均 衡 条 件 は
L(Y・r)一 誓
で 表 わ さ れ る.
III.安 定 分 析
生 産 物 に対 す る需 要 が 供 給 よ り大 き くな れ ば,産 出量 が増 加 し,貨 幣 に 対 す る需 要 が供 給 よ り大 き くな れ ば,利 子 率 が上 昇 す る とす れ ば,調 整 過 程 は次 の 微 分 方 程 式 で示 され る.
γ=ん1[1(r)‑S(Y)]
(HS) 綿[L(Y・r)一 夢]
こ こ で,々 、 と ん2は 正 の 定 数 で あ る.
体 系(HS)の 大 域 的 安 定 性 と解 経 路 の 正 値1生 に つ い て,Itoに よ り示 さ れ た 次 の 定 理 を 用 い て 吟 味 し ょ う2).
定 理 自 律 系 ab==9(x,y) 夕=乃(κ,ツ)
を 考 察 す る.こ こ で(x,y)は 正 象 限R+2に あ り,9とhはC1級 と す る.均
衡 点(x*,y*)∈R"2が 存 在 し,次 の 条 件 が 満 さ れ る な ら ば,(x*,y*)はR+2 に お い て 大 域 的 に 漸 近 安 定 で あ る.
(i)g、,‑gQら.y)/x十hあ 一h(x,.y)/.y<0:∀(x,y)∈R+2,
(ii)[&‑9(x,.y)/x][傷 一1勉(x,y)/夕]一 一9yhx>0:∀(x,ツ)∈R+2, (iii)[&‑9(x,.y)/x][傷 一h(x,.y)/.y]≒0:∀(x,y)∈R+2
ま た は9,h.¥O:∀(x,.y)∈R+2.
い ま,R+2に お い て 体 系(HS)の 均 衡 点(Y*,r*)が 存 在 す る と仮 定 す る.
さ らに 定 理 が 用 い られ る た め に 次 の 仮 定 が 必 要 で あ る.
仮 定1∀(Y,r)∈R+2に つ い て 0<Syく1,1。<0,Ly>0,L。<0
が 成 立 す る.
仮 定2∀(Y,r)∈R+2に つ い て
[(1+η,)一 ÷]<・
が 成 立 す る・こ こ瓠 ≡器 苦 く・ とす るの・
この仮 定 は商 品 市 場 が超 過 需 要 の ときは 常 に成 立 す るが,超 過 供 給 の とき に は ηs≦‑1,す なわ ち貯 蓄 の所 得 弾 力 性 が 一1以 下 の場 合 に成 立 す る.
仮 定3∀(Y,r)∈R+2に つ い て
[(・+717・)一(誓)/L]〉 ・
鍼 立 す る・ こ こ一(fNlopL≡‑1妊 〉 ・ とす る・
この仮 定 は貨 幣 市 場 が超 過 需 要 の ときは 常 に成 立 す るが,超 過 供 給 の とき に は ηLが 十 分 大 きい こ と,す なわ ち貨 幣 に対 す る需 要 の利 子 弾 力 性 が 十 分 大 き い 場 合 に成 立 す る.
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命 題 仮 定1,2,3の も と で は 均 衡 点(Y*,r*)はR'2に お い て 大 域 的 に 漸 近 安 定 で あ る.
証 明 い ま
T(Y,r)≡k,[1(r)‑S(Y)]
Q(Y・r)≡k・[L(Y・r)一 夢]
とすれぽ
Tr‑T(Y,r)/T‑一 々・Sr一 争(・‑s)
=・k・(s
Y)[(・+OPs)一 ÷]<・7 Q・‑Q(Y・r)/7一 島 ム ー 争(五 一 誓)
一一k・(の[(・+z?L)一(勢/L]<・ ・ T。・(}r・=ん、k21,Lγ<0
と な る.そ こ で,定 理(i),(ii)そ し て(iii)を 満 す.(証 明 終 り)
す な わ ち,体 系(HS)が 仮 定1,2,3を 満 足 す る な ら ば,均 衡 点(Y*,r*) は 大 域 的 に 漸 近 安 定 で あ り,均 衡 点 に 向 う解 経 路 の 正 値 性 も保 証 さ れ る.
IV.解 の 経 路
体 系(HS)を 満 す(Y,r)の 経 路 を 調 べ て み よ う.ま ず, F(Y,r)… ≡1(r)一一s(Y)
とす れ ば,
F(Y,r)=0(1)
を 満 す 曲 線 はIS曲 線 と 呼 ば れ る.(1)式 の 全 微 分 を 求 め る と 一SrdY十lrdr=O
と な る.こ れ よ り,IS曲 線 の 傾 き は
7
0
第1図
多 劃識<・
と な り,IS曲 線 は 第1図 の よ うな 右 下 が りの 曲 線 で あ る.
つ ぎ に,
x㈲ ミL働 一夢
と す れ ば
X(Y,r)=0(2)
を 満 す 曲 線 はLM曲 線 と呼 ば れ る.(2)式 の 全 微 分 を 求 め れ ば LydY十Lrdr=・0
と な る.こ れ よ り,LM曲 線 の 傾 き は
糺 一一 会 〉・
と な り,LM曲 線 は第1図 の よ うに 右 上 が りの 曲線 で あ る.
IS曲 線 とLM曲 線 に よ る4個 の領 域 に お け る,Yと7の 変 動 方 向 を 調 べ て み よ う.IS曲 線 の上 方 の領 域 で はyは 負,下 方 の領 域 で はYは 正 で あ
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る.LM曲 線 の上 方 の領 域 で は7は 負,下 方 の領 域 で は0は 正 で あ る.し た が って,変 動 方 向 は第1図 の よ うな 矢 印 で示 され る.
解 経 路 の正 値 性 と変 動 方 向 に よ り,解 経 路 は 図 の よ うに描 くこ と が で き よ う.
注
1)こ の 点 に つ い て は 三 野[2]122ペ ー ジ を 参 照.
2)Ito[1]p.313を 参 照.
3)S>・ と し て 論 じ て い る ・S〈 ・ の と き は[(・+ifs)‑9]〉 ・・Ts>・ と ㈱ ㍉ この場 合 は常 に成 立 す る.
参 考 文 献
[1]Ito,T.,"ANoteonthePositivityConstrainti1101ech'sTheorem", ノbzcrnalofEconomicTheory,Vo1.17,1978,PP.312‑318.
[2]三 野 和 雄 「 ケ イ ソ ズ 体 系 の 『準 均 衡 』 へ の 覚 書 」 『経 済 論 叢 』 第3巻1号,1979,
119‑138ペ ー ジ.
[3]Olech,C.,"OntheGlobalStabilityofanAutonomousSystemonthe
Plane",ContributionsloDifferentions,Vo1.1,No.3,1963,PP.389‑400.遡 [4]Tumovsky,S.J.,MacroeconomieAnalysisandSlabiligationPolicy,Cam‑
bridgeU.P.,1977■