システム工学 I 第 13 回
Lyapunov の方法
Small Gain Theorem (1)
• まず, 前回の講義で説明できなかった, 非線 形システムへの BIBO 安定性の拡張につい て述べる. これを与えるのが Small Gain Theorem であり, この定理は線形系および 非線形系の双方に適用可能である.
• 次ページの図のようなフィードバックシステ
ムを考える.
+
−
+
− u
1u
2e
2e
1y
1G
1G
2y
2G
iは線形とは限らない因果的な作用素, u
i(t), e
i(t),
y
i(t) は信号で, dim y
1+ mod (i,2)= dim u
i= dim e
i(i = 1, 2; mod は剰余) とする.
Small Gain Theorem (3)
• y = G[u] により, 作用素 G の出力 y が入力 u から決まることをあらわす.
• 信号 w(t) の時刻 T における打ち切りを, w
T(t) :=
( w(t), 0 ≤ t ≤ T,
0, T < t と定義する.
Small Gain Theorem (4)
• 以前の定義と若干異なるが, k k を有限次元 のベクトルのノルムとし (どんなノルムでも よい), 信号 w の L
pノルムを,
kwk
Lp=
Z
∞0
kw(τ )k
pdτ
1/pと定義する
(1 ≤ p < ∞). 積分は Lebesuge 積分である.
Small Gain Theorem (5)
• w の L
∞ノルムを, kwk
L∞= ess.sup kw(t)k により定義する. ess.sup は零集合を除いた 上限.
• Lebesgue 可測で, L
pノルムが有限な関数全
体からなる集合 (の同値類) を L
pと書く (1 ≤
p ≤ ∞).
Small Gain Theorem (6)
• L
pは数学的には取り扱いやすいが, w(t) = t などといった極めて簡単な関数を含まないた め, 応用上は不都合である. そこで, これを拡 張し, どの正の時刻 T で打ち切っても L
pに属
す Lebesgue 可測な信号の集合を考える. これ
を L
peという. L
pe= {w : ∀T, kw
Tk
Lp< ∞}
である.
Small Gain Theorem (7)
• 1 ≤ p ≤ ∞ とする.
• G が L
p安定であるとは, ∀u ∈ L
p, G[u] ∈ L
pとなることをいう.
• G が L
p安定でゲイン γ を持つとは, ∃γ, β ≥
0, ∀u ∈ L
p, G[u] ∈ L
pかつ kG[u]k
Lp≤
γkuk
Lp+ β となることをいう.
Small Gain Theorem (8)
• 先に述べたフィードバックシステムにおいて,
G
1, G
2がともに L
p安定で, それぞれ有限ゲイ
ン γ
1, γ
2を持ち, γ
1γ
2< 1 であれば, フィード
バックシステムは L
p安定である. この事実
を, Small Gain Theorem という.
以下,記法の簡単のため,kwkLpをkwkと略記する. 仮定より,kyik ≤ γikeik+βiであり(i= 1,2),さらにe1=u1−y2,e2=u2−y1だか ら,ke1k ≤ ku1k+γ2ke2k+β2,ke2k ≤ ku2k+γ1ke1k+β1である. こ れらの不等式を相互に代入すると,
ke1k ≤ ku1k+γ2(ku2k+γ1ke1k+β1) +β2, ke2k ≤ ku2k+γ1(ku1k+γ2ke2k+β2) +β1
となる. これを整理すると
(1−γ1γ2)ke1k ≤ ku1k+γ2(ku2k+β1) +β2
(1−γ1γ2)ke2k ≤ ku2k+γ1(ku1k+β2) +β1
となる. よって,γ1γ2<1なら先に述べたフィードバックシステムはLp
状態方程式と安定性 (1)
• 状態方程式の安定性に関する議論では, 当面, 入力 u を零に固定する.
• 応用上重要なのは入力として状態フィードバ
ックや出力フィードバックを用いることによ
り制御システムを安定にすること (安定化) で
あり, 状態方程式の安定性に関する議論はそ
のための基礎である.
状態方程式と安定性 (2)
• 安定性の正式な定義は後回しにするが・ ・ ・
• 制御システム x ˙ = f (x, u) に状態フィード
バック u = k(x) を施すと, 入力がないシス
テム x ˙ = f (x, k(x)) が得られる. この意味
で, 入力がないシステムの安定性に関する議
論はフィードバックシステムの安定性の基礎
となる.
状態方程式と安定性 (3)
• 制御システム x ˙ = Ax + Bu, y = Cx + Du において u = 0 とすると, 時刻 0 に初期値 x
0を出発する解は, x(t) = e
Atx
0となる.
• x
0= 0 なら解は恒等的に零であり, このよう な場合は検討に値しない. そこで, x
06= 0 の とき, 解が t → ∞ としたときどう動くかを
考える (初期値に依存する).
状態方程式と安定性 (4)
• 平衡点 (後述; 今の状況では原点) の近傍をど のように選んでも, 初期値をうまく選べば解 がその近傍から出ないようにできるとき, こ の平衡点は Lyapunov 安定であるという.
• t → ∞ としたとき解が平衡点に収束すると
き, この平衡点は漸近安定であるという.
状態方程式と安定性 (5)
• 数式を使った (安定性の) 定義は後述.
• 定義から, 平衡点が漸近安定であれば Lya-
punov 安定である. 逆は必ずしも成立しない.
• A の固有値がひとつでも (複素) 右半平面に
あれば, e
Atx
0は発散する初期値があるので,
平衡点 (原点) は Lyapunov 安定でない.
状態方程式と安定性 (6)
• A の固有値がすべて (開) 左半平面にあれば, e
Atx
0→ 0, よって平衡点 (原点) は漸近安定.
• A の固有値がすべて閉左半平面にあり, 虚軸
上に重複度 1 の固有値があれば e
Atx
0は初期
値によって零に収束あるいは停留なので, 平
衡点 (原点) は Lyapunov 安定だが漸近安定
ではない.
状態方程式と安定性 (7)
• A の固有値がすべて閉左半平面にあり, 虚軸 上に重複度 2 以上の固有値があれば e
Atx
0は 初期値によって零に収束あるいは発散. よっ て平衡点 (原点) は Lyapunov 安定でない.
• 以上のように, A の固有値をすべて求めれば,
˙
x = Ax の安定性を判定できる.
状態方程式と安定性 (8)
• 「線形システムは非線形システムの線形近似 したもの」という立場に立つと,
⊲ 線形/非線形にかかわらず, 統一的に使 える「安定性」の定義は何か
⊲ 非線形システムの安定性判定は可能か
ということが問題になる.
状態方程式と安定性 (9)
• 上述の問題に肯定的な解答を与えるのが Lya- punov の方法. これには, 線形近似による方
法 (Lyapunov の第一の方法) と, 状態変数の
「エネルギー」に相当する関数 (Lyapunov 関 数) を使って安定性を判別する Lyapunov の
直接法 (あるいは Lyapunov の第二の方法)
の 2 種類がある.
平衡点 (1)
• 非線形時不変微分方程式 x ˙ = f (x) を考える.
x ∈ R
n, f : R
n→ R
nで, この微分方程式は 解の存在と一意性の条件を満たすものとする.
• 集合 {x : f (x) = 0} の要素を, このシステム
の平衡点という.
平衡点 (2)
• 線形時不変システム x ˙ = Ax の平衡点は, {x : Ax = 0} であり, これは原点のみ (A が正則なとき) か, R
nの部分空間である. x
0が Ax
0= 0 を満たすとき, z = x − x
0とお
くと, ˙ z = ˙ x = Ax = Ax − Ax
0= Az であ
るから, システムの原点を x
0だけ平行移動し
ても, 状態方程式は変わらない.
平衡点 (3)
• したがって, 線形時不変システムでは, 原点に おけるシステムの安定性を議論すれば, すべ ての平衡点について同一の結論が得られる.
• 非線形時不変システムでは, その安定性を平
衡点ごとに分けて論じなければならない.
平衡点 (4)
• 非線形時変システム x ˙ = f (x, t) では, 平衡点
を素直に定義すると {(x, t) : f (x, t) = 0} と
なるが, この集合は時間とともに変わる. 時
間とともに変わる平衡点の取り扱いは繁雑な
ので, {x : ∀t, f (x, t) = 0} を平衡点と定義す
ることも多い.
平衡点 (5)
• 線形時変系 x ˙ = A(t)x では, 少なくとも原点
はつねに平衡点である. また, すべての t に
おいて, A(t) において t を固定した定数行列
のすべての固有値の実部が負であっても, こ
の微分方程式の解が零に漸近することは保証
されない.
平衡点 (6)
• 以上で見てきたように, 安定性という観点か ら言うと, 時変系の取り扱いは繁雑である.
• この講義では, 今後は, 時変系を検討の対象
外とし, 時不変系に限定して議論を進める.
安定性の定義 (1)
• 以下の議論では, ϕ(t, 0, x
0) によって, 時刻 0 において初期値 x
0を出発した微分方程式
˙
x = f (x) の解をあらわす. なお, 解の存在と
一意性を仮定する.
安定性の定義 (2)
• x ˙ = f (x) の平衡点 x
∗が Lyapunov 安定で あるとは, ∀ε > 0, ∃δ(ε) > 0, ∀x
0, kx
0−x
∗k <
δ(ε) ⇒ kϕ(t, 0, x
0) − x
∗k < ε となることを
いう.
安定性の定義 (3)
• x ˙ = f (x) の平衡点 x
∗が (局所的に) 漸近安 定であるとは, ∃δ > 0, ∀x
0, kx
0− x
∗k < δ ⇒ lim
t→∞ϕ(t, 0, x
0) = x
∗となることをいう.
ただし, 暗黙のうちに極限の存在を仮定する.
安定性の定義 (4)
• x ˙ = f (x) の平衡点 x
∗が (局所的に) 指数安 定であるとは, ∃α, β, δ > 0, ∀x
0, kx
0− x
∗k <
δ ⇒ ∀t, kϕ(t, 0, x
0) − x
∗k ≤ αkx
0k exp[−βt]
となることをいう.
• 上記において, kx
0− x
∗k < δ などのような
条件が外せるときには, このシステムは大域
的に安定, 漸近安定, 指数安定であるという.
Lyapunov の直接法 (1)
• 非線形システムの安定性を調べるための方法 の代表格が Lyapunov の方法
• Lyapunov の方法には, Lyapunov の直接法 (Lyapunov の第二の方法) と Lyapunov の線
形化法 (Lyapunov の第一の方法) がある.
Lyapunov の直接法 (2)
• 話の順番が逆のようであるが, Lyapunov の 直接法から議論を始める.
• 状態空間において座標系を並行移動すれば,
平衡点 x
∗を原点に移動することができる. そ
こで, 以下の議論では, はじめから平衡点は
原点であると仮定する. また, 集合 D を, 状
態空間の原点を含む開集合とする.
Lyapunov の直接法 (3)
• D で定義された関数 V (x) が ( ˙ x = f (x) の) Lyapunov 関数であるとは, V が 1 階連続 微分可能で, V (0) = 0 かつ ∀x ∈ D \ {0}, V (x) > 0 で, さらに ∀x ∈ D, ∂V
∂x f (x) ≤ 0
となることをいう.
Lyapunov の直接法 (4)
• V (0) = 0 かつ ∀x ∈ D \ {0}, V (x) > 0 とい う条件のみを満たす関数を Lyapunov 関数 候補と呼ぶことがある.
• d
dt V (ϕ(t, 0, x
0)) = ∂V
∂x
x
=ϕ
(t,0,x
0)f (ϕ(t, 0, x
0))
である (微分方程式の解に沿った微分).
Lyapunov の直接法 (5)
• Lyapunov 関数が存在すれば, ˙ x = f (x) は平 衡点 x
∗= 0 において (局所的に)Lyapunov 安 定である.
• 上記に加えて, 原点以外の点で ∂V
∂ x f (x) < 0 となれば, ˙ x = f (x) は平衡点 x
∗= 0 におい
て (局所的に) 漸近安定である.
Lyapunov の直接法 (6)
• 上記に加えて, ∃a, b > 0, ∃p ≥ 1, ∀x, akxk
p≤ V (x) ≤ bkxk
pかつ ∃c > 0, ∀x, ∂V
∂x f (x) ≤
−cV (x) であれば, ˙ x = f (x) は平衡点 x
∗= 0
において (局所的に) 指数安定である.
Lyapunov の直接法 (7)
• このように V (x) によってシステムの安定性 を調べる方法を Lyapunov の直接法という.
• 続いて, 先に述べた定理の証明を述べる.
• 以下では, 記号 dV /dt により, V (t) の, 微分
方程式 x ˙ = f (x) の解 ϕ(t, 0, x
0) に沿った微
分をあらわす.
dV dt = d
dt V (ϕ(t, 0, x
0))
= ∂V
∂x
ϕ
(t,0,x
0)d
dt ϕ(t, 0, x
0)
= ∂V
∂x
ϕ
(t,0,x
0)f (ϕ(t, 0, x
0))
Lyapunov
関数が存在すれば, x ˙ = f (x)
は平衡点x
∗= 0
において局所的にLyapunov
安定:
•
平衡点がすでに原点に移されていることに注意す る. B(r) = {x : kxk < r}, B(r) = {x : kxk ≤ r}
とおく. ∀ε > 0, ∃δ > 0, ∀x
0, kx
0k < δ ⇒ kϕ(t, 0, x
0)k < ε
を示したい.
•
必要なら, B(ε)
がD
に含まれるようにε
を小さ く取り直し, α = max
{x:kxk=ε}V (x)
とする.
• 0 < β < α
とし, C(β)
を{x ∈ D : V (x) ≤ β}
の 原点を含む極大連結集合とする.
• dV /dt ≤ 0
であったから, C(β)
の点を初期値と するx ˙ = f (x)
の解はt ≥ 0
においてC(β)
から 出ない.
• β < α
であったから, C(β) ⊂ B(ε)
である.
• C(β)
は原点を内点として含むから, B (δ) ⊂ C(β)
となるようδ
を取れば主張が示される.
さらに平衡点以外で
dV /dt < 0
であればx ˙ = f (x)
は 平衡点x
∗= 0
において局所的に漸近安定:
• Lyapunov
安定の条件を満たすε
とδ
がすでに取られているものとする
.
原点以外でdV /dt < 0
と なるときV (ϕ(t, 0, x
0)) → 0 (t → ∞)
となるこ とを示したい.
•
有限の時刻T
でϕ(T, 0, x
0) = 0
となった場合に は,
原点は平衡点なので,
証明すべきことは何も ない.
よって, ∀t > 0, ϕ(t, 0, x
0) 6= 0
の場合を考 える.
• V (ϕ(t, 0, x
0))
はt
の関数として非負で,
単調減少 だから,
あるL ≥ 0
に収束する.
よって, L = 0
で あることが示せればよい.
背理法でこれを示す.
• L > 0
と仮定する. x
0∈ B(δ/2)
とし, R = {x ∈ B(0, ε/2) : L ≤ V (x)}
とする. R
はコンパクト で,
原点を含まない.
∂V∂x f (x)
はR
において負の 連続関数だから, R
において負の最大値−µ
を取 る.
よって, dV /dt ≤ −µ
だから, V (ϕ(t, 0, x
0))−
V (x
0) ≤ −µt
となり,
有限時間でV (ϕ(t, 0, x
0))
が零になるので矛盾.
指数安定性について
•
上述の仮定が満たされるとき, dV /dt ≤ −cV
だか ら,
V1 dVdt≤ −c
で,
これを積分すると, ln V (ϕ(t, 0, x
0)) ln V (x
0) ≤ −ct.
よってV (ϕ(t, 0, x
0)) ≤ e
−ctV (x
0).
• akϕ(t, 0, x
0)k
p≤ V (ϕ(t, 0, x
0)) ≤ e
−ctV (x
0) ≤ e
−ctbkx
0k
pだから, kϕ(t, 0, x
0)k ≤
ba1/pe
−cptkx
0k.
よって指数安定
.
線形時不変システムでは (1)
• 線形時不変システム x ˙ = Ax が漸近安定であ るということは, A のすべての固有値の実部 が負であるということであった. (Lyapunov 安定ではないので注意).
• 線形時不変システムの場合は, この条件は, 状
態の 2 次形式の形の Lyapunov 関数が存在す
ることと等価であることが示せる.
線形時不変システムでは (2)
• 正確に述べると: 線形時不変システム x ˙ = Ax が漸近安定であるための必要十分条件 は, 任意の正定対称行列 Q に対し, ある正定 対称行列 P が存在し, P A + A
TP = −Q と なることである.
• 上記の条件が満たされるとき, x
TP x が Lya-
punov 関数となる.
∀Q > 0, ∃P > 0, P A + A
TP = −Q
のとき• P > 0
は,
行列P
が正定対称行列という意味• V (x) = x
TP x
とおくと, dV /dt = x
T(P A + A
TP )x = −x
TQx.
• P > 0, Q > 0
より,
これらの固有値は正の実数• P
の最大固有値をλ
P, Q
の最小固有値をλ
Qと するdV
dt = −x
TQx ≤ −λ
Q|x|
2≤ − λ
Qλ
Px
TP x = − λ
Qλ
PV (x)
•
よって,
初期値x
0をどのように取っても, V (ϕ(t, 0, x
0))
は零に収束する.
•
したがって, A
のすべての固有値の実部は負でな ければならない.
A
のすべての固有値の実部が負であるとき• Q > 0
をひとつ定める.
• P = R
∞0
e
ATtQe
Atdt
と定義する.
• P A + A
TP
= R
∞0
e
ATtQe
AtAdt + R
∞0
A
Te
ATtQe
AtAdt
= R
∞ 0 ddt
e
ATtQe
Atdt = e
ATtQe
At∞
0
= −Q
(A
のすべての固有値の実部が負だから)
線形時不変システムでは (6)
• 次に, A の固有値の実部がすべて正である場 合を考える. τ = −t とすると,
dx
dτ
=
dx
dt dt dτ
=
−Ax である.
• A の固有値の実部がすべて正であるための必
要十分条件は, −Ax の固有値の実部がすべて
負であること.
線形時不変システムでは (7)
• −Ax の固有値の実部がすべて負であるため の必要十分条件は, ∀Q > 0, ∃P > 0, P (−A)+
(−A)
TP = −Q.
• まとめると, A の固有値の実部がすべて正で
あるための必要十分条件は, ∀Q > 0, ∃P > 0,
P A + A
TP = Q.
Chetaev の不安定性判定法 (1)
• Lyapunov 関数の存在は非線形システムが安
定であるための十分条件なのだが, これを変 形して, 非線形システムが不安定であるため の十分条件を導くことができる (Chetaev).
• 先と同様に, 平衡点はすでに座標系の並行移
動によって原点に移されているものと仮定す
る.
Chetaev の不安定性判定法 (2)
• D を原点を含む開集合, V (x) : D → R を V (0) = 0 を満たす C
1級関数とし, U (r) = B(r) ∩ D ∩ {x : V (x) > 0} とおく.
• ある r に対し, U(r) 6= ∅ で, U(r) 上で
∂∂Vx f (x) >
0 で, ∀ε > 0, ∃x ∈ B (ε) \ {0}, V (x) > 0 で
あれば, 原点は Lyapunov 安定な平衡点では
ない (Chetaev).
先の事実の証明は次の通り
.
•
先の仮定からLyapunov
安定の否定: ∃ε > 0,
∀δ > 0, ∃x
0∈ B (δ), {ϕ(t, 0, x
0) : t ≥ 0} 6⊂ B(ǫ)
を導けばよい.
• ε ≤ r
を, B(ε) ⊂ D
であるように取る.
所与 のδ
に対し, δ
0= min{δ, ε}
とし, x
0∈ B(δ
0) ∩ U (ε)
とする. x
0はU (ε)
の内点で, U (ε)
内ではd
dt
V (ϕ(t, 0, x
0)) > 0
だから, V (ϕ(t, 0, x
0))
はt
に関して単調増加で, V (ϕ(0, 0, x
0)) > 0
である.
• ϕ(t, 0, x
0) ⊂ U (ε)
と仮定して矛盾を導く. W (ε) =
U (ε) ∩ {x : V (x) ≥ V (x
0)}
とおくと, W (ε)
はコンパクトで,
dtdV (ϕ(t, 0, x
0)) > 0
だから,
ϕ(t, 0, x
0)) ⊂ W (ε)
である. W (ε)
で,
∂V∂x f (x)
は連続で,
その値は正だから,
正の最小値µ
を取 る.
したがって,
dtdV (ϕ(t, 0, x
0)) ≥ µ
であり,
よってV (ϕ(t, 0, x
0))
は無限大に発散する.
一方 で, W (ε)
はコンパクトだから, V (x)
はW (ε)
に おいて有限の最大値を取る.
これは矛盾である.
よってϕ(t, 0, x
0) 6⊂ U (ε).
•
次に, ϕ(t, 0, x
0) 6⊂ B(ε)
であることを背理法に より示す. ϕ(t, 0, x
0) ⊂ B(ε)
と仮定し, T = sup{t ≥ 0 : ∀τ ≤ t, ϕ(t, 0, x
0) ⊂ U (ε)}
とお く. x
0 がU (ε)
の内点だから, T > 0
であり, ϕ(t, 0, x
0) 6⊂ U (ε)
だから, T < ∞
である.
さて, 0 ≤ t < T
ならϕ(t, 0, x
0) ⊂ U (ε)
で, V (ϕ(t, 0, x
0)) ≥ V (x
0), ϕ
は連続関数だから, V (ϕ(T, 0, x
0)) ≥ V (x
0).
一方, ν > T
なら, ∃τ ≤ ν, ϕ(t, 0, x
0) 6⊂
U (ε)}
だから, V (ϕ(ν, 0, x
0)) ≤ 0,
よって,
再びϕ
の連続性から, V (ϕ(T, 0, x
0)) ≤ 0 (
矛盾)
Lyapunov の線形化法 (1)
• Lyapunov の線形化法は, システムの平衡点
における線形近似を使ってその安定性を判定 する方法.
• 議論の簡単のために, 平衡点を原点に移す座
標変換がすでに施され, これから原点におけ
るシステムの安定性を判定したい, という状
況を考える.
Lyapunov の線形化法 (2)
• 微分方程式 x ˙ = f (x) の安定性を判定したい.
原点が平衡点であると仮定したから, f (0) = 0 である.
• f (x) が原点において線形近似可能であると 仮定し, A =
∂f
∂
x
x
=0 とする.
Lyapunov の線形化法 (3)
• 線形近似可能であることと原点が平衡点であ ることを組み合わせると, ある g(x) に対し, f (x) = Ax + g(x) で, lim
kxk→0 kg
(x
)kk
x
k= 0
となる.
Lyapunov の線形化法 (4)
• 以下の事実が成り立つ.
⊲ A のすべての固有値の実部が負なら, 原
点は Lyapunov 安定な平衡点である.
⊲ A がひとつでも実部が正の固有値を持
てば, 原点は Lyapunov 安定な平衡点で
ない.
Lyapunov の線形化法 (5)
• 非線形システムの安定性を線形近似の固有
値から判定する方法を, Lyapunov の線形化
法という.
A
のすべての固有値の実部が負のときP A + A
TP =
−I
を満たすP > 0
を取り, V (x) = x
TP x
とおくと,
∂V
∂
x f (x) = x
TP (Ax+g(x))
であるが, x
TP Ax
はスカ ラーゆえ転置しても不変だから, x
TP Ax = x
TA
TP x
でもあり,
よってx
TP Ax =
12x
TP Ax +
12x
TP Ax =
1
2
x
TP Ax+
12x
TA
TP x = −
12kxk
2.
ゆえに,
∂V∂x f (x) ≤
−
12kxk
2+ kP kkxkkg(x)k.
よって, kxk
が十分小さけ れば∂V∂x f (x) ≤ 0
となるから, Lyapunov
の直接法より,
平衡点は安定.
Aが実部が正の固有値を持つとき
• まず, Lyapunovの方法は,転置を共役転置に,対称行列をHermite 行列に置き換えれば,複素ベクトル空間で定義された線形システ ムにも適用できることに注意する. そこで,はじめから複素ベク トル空間を前提にして議論を進める.
• Aの固有値のうち実部が正でその値が最小のものをλmとし,ε=
1
2Reλmとすると,A−εIは虚軸上に零点を持たない.
• T−1(A−εI)T= diag(Λ1,Λ2)がA−εIのJordan標準形で,Λ1
とΛ2はそれぞれ実部が正および負の固有値に対応するJordanブ ロックを集めたものとする. このとき, T−1AT = diag(Λ1+ εI,Λ2+εI)である.
• P1およびP2を,P1(Λ1+εI) + (Λ1+εI)∗P1 =I,P2(Λ2+ εI) + (Λ2+εI)∗P2=−Iを満たすHermite行列とする.
• z = T−1xとし, これをdiag(Λ1,Λ2)に適合する形で(z1,z2) のように分割する. この座標系では, もとの微分方程式はz˙ = T−1f(T z)に変わるが,この右辺をλ(z)と書き,さらに(z1,z2) に適合する形で(λ1(z),λ2(z))と書き直す.
• h(z) = T−1g(T x)とすると, ˙z = T−1AT z + h(z)で, limkzk→0kh(z)k
kzk = 0である.
• V(z) =z∗1P1z1−z∗2P2z2とおき,U(r) =B(r)∩D∩{z:V(z)>
0}とする. z∈U(r)ならz∗1P1z1>z∗2P2z2である.
• P= diag(P1,P2)とおく.
∂V
∂zλ(z) =kzk21+ 2εz∗1P1z∗1+kzk22−2εz∗2P2z∗2 + 2z∗1P1h1(z)−2z∗2P2h2(z)
≥ kzk21+kzk22+ 2z∗1P1h1(z)−2z∗2P2h2(z) よって
∂V
∂zh(z)≥ kzk2− kPkkzkkh(z)k=kzk2
1− kPkkh(z)k kzk
• limkzk→0kh(z)k
kzk = 0だったから,rが十分小さいとき,U(r)にお いて∂V∂z λ(z)>0となる. よって, Chetaevの不安定性判別法によ り,このシステムは不安定.
参考文献
• W. M. Haddad and V. Chellaboina, Nonliner Dynamical Systems and Control, Princeton University Press, 2008
• 前田,線形システム,朝倉書店, 2001