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幼児の描画と遊びの関連性に関する事例研究 井 口

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(1)

長崎大学教育学部教育科学研究報告 第36号 41〜54(1989)

幼児の描画と遊びの関連性に関する事例研究

井  口

A Case Study of the Relationship between  Drawing and Play in Preschool Children

Hitoshi INOKUCHI 1.はじめに

 描くこと,表現することは,方法や技術によって直接引き出されるものではない。表現 そのものは,事実として,生まれおちた時点から自らが行使する活動の一つでもある。そ の表現活動が何故に萎縮し,自己抑制の対象となり,描画活動においては「描けない」と いったことになってしまうのか。最近のケースは深刻な問題を投げかけている。

 保育実践の中で様々な取り組みがなされ,子どもの生活の見直しから食事や遊びの内容 に到るまで,様々な視点から子どもの表現意欲をほり起こす実践を積み重ねてきている。

たとえば,描けない子どもについての発達状態を詳細に調べ,育ちきれていない力への意 図的な取り組みを通して,解決の糸口を見出した実践などがある。また途中まではすぼら しい描画を描いていたが,ある時期から絵が変わらなくなり,集中性も失なったクラスに 対する評価・再検討の取り組みなどもある。その他の様々な実践によって,描画表現活動

における様々な問題を抱えた幼児の指導に対する共通認識が明らかにされてきた。それを 端的にいうならば,描写指導から表現指導への転換ということであろう。表現指導とは,

勿論,表現技術を系統的に教えることに指導の力点を置こうとするものではない。その基 本的立場は,子どもの表現意欲に依処しながら,模倣や試行錯誤を通して自由に表現形態 を創り出すなかで,子ども自身による必要性の自覚を背景にした表現技法の獲得過程を大 事にしょうとするものである。その際,描画以外の表現活動,新しい発見を可能にする自 然環境との触れ合いや仲間との遊び,保育者一子ども関係,保育者集団の形成,そして何

よりも,身体づくりに力点を置く点が主要な特徴であろう。

 こうした実践的取り組みにおいて問題にされた「描ける子}「描けない子」について,描 画と遊びにみられる諸特徴を取り出しながら,両者の関係を事例的に検討することにより,

幼児期における描画表現力と遊び活動との関連性をより具体的にとらえることが本論文の 課題である。その際,描画の特徴を詳細に取り出すことにより,「描ける子」「描けない子」

の描画表現上の相違点を検討することに重点を置く。

 II.方   法 1 観察・調査対象

 長崎市内S保育園年中児2名

  A児(♀)一4歳3ケ月(1985年4月1日当時)

  E児(♂)一4歳6ケ月( 同上 )

 幼児の選択は保育園に一任し,「描ける子」,「描けない子」の一事例として抽出

長崎大学教育学部教育学教室

(2)

2 観察・調査手順および時期

(1)描画分析

  収集期間は1985年4月1日〜1986年2月4日(自由画のみ)

  分析の視点は,描画枚数,表現内容・対象,表現技法

(2)自由遊びの観察

  観察期間は1985年6月初め〜1985年9月12日   観察時;期はam 9:00〜am 10:30

  観察回数はA児,E児ともに5回(6/10,6/17,6/24,7/1,9/12)

  観察方法は観察者による自由記述法

  分析の視点は,遊びのテーマ,継続時間,遊具の種類,集団規模・関係

(3)保育記録の分析

   A児(1歳時入園〜4歳)

   E児(3歳時入園〜4歳)

  分析の視点は,基本的生活習慣,運動,操作性,言語,社会性

III.結

1 描画の分析結果 A,E児について,結果を一覧表にしたのが表1,2であり,その 主な特徴は以下に示す通りである。

表1 描画分析表[A児]

A

総    数 73枚

枚  数

月日別枚数

5/2②,7①,17①,24⑨,28③;計16枚 6/1③,12①,28④;計8 7/

Q③,6③,22③;計9 8/12②;計2 10/21③;計3 11/6④,29④;

v8 12/2⑦,9④,12②,27②;計15 1/12①,13①,27⑤,31①;計8 Q/3②,4③;計5

対象 人物,雲,太陽,花→家,動物     →山,トンネル,木,車,信号,蝶

@        人物,雲,太陽,花  人物,雲,太陽,花,家,物

内容 不特定な →家庭表現や →友達との遊び活動 l物表現  家族での体験

5/24以降,継続的に出現 空処

ヤ理@ J 視 法

一  一  一  一  冒  一  ,  一  冒  一  一  回  r  r  噌  一  髄  一  一  一  一  一  一  一  一  一  冒  冒  一  冒  ロ    一  曽  一  一  一  一  一  一  一  一  曹  曹  一  冒  冒  冒    冒  一  臼  一  一  P  一  ■  ■  一  曹  一  一  曹  需    F  一  一  一  一  一  一  一  一  一  ロ  冒  一  一  一  一  層  F  r  F  一  幽  一  一  一  一  ■  一

T/7のみ

頭髪なし→輪郭線内に縦線→輪郭線外に曲線→輪郭線外に曲線,ジグザグ

・ィ輪郭線と一体化し,内部を直線→塗り潰し面と直線→頭髪の輪郭線と 頭   劃

黶@ 一  一  一  一  一  一  冒  層  冒  r  噂  胃  糟  噂

@ 眼層  岬  一  縛  一  一  一  一  噛  一  一  一  一  胴  一

@ 鼻r  昌  一  辱  一  一  一  一  噛  一  一  冒  曹  一  冒

@ ロー  一  一  一  一  一  一  一  噛  ロ  ロ  冒  胃  冒  噂

@ 耳

ロ一一→横一本の曲線→丸一  一  9  一  一  一  一  一  冒  一  「  一  一  r  冒  一  幽  一  一  一  一  一  一  一  一  ロ  一  騨  n    }  一  9  9  一  一  一  一  一  一  一  冒  一  冒  胃  一  一  一  一  一  一  一  ■  一  一  一  一  曹  一  胃  一  一  一  曽  一  一  藺  一  一  一  一  曹  曹  一  一  ロ  胃  冒  一  一  縛  曽  一  一  一  髄  一  一  一  一  一  ロ  冒

¥現されず→二重丸一一一→表現されず

  首幽  一  一  一  一  一  一  一  ■  冒  一  一  一  冒  一

@ 胴 l角形的幾何図形→不定形→四角・台形的幾何図形の組合せ→一本化

  腕冒  一  冒  一  冒  胃  一  一  }  一  一 一  一  一  一

閨@  指

斜め下への一本線→一本線が多少湾曲→囲み図形→斜め下への一本線→囲

¥現されず

一本の縦線→囲み図形

(月日別枚数欄内の○中の数字は,その日の描画枚数を示す)

(3)

幼児の描画と遊びの関連性に関する事例研究 43

表2 描画分析表[E児]

E

総    数 18枚

枚 数

月日別枚数

4/3②;計2 5/2②;計2 6/22②:計2,8/17②;計2 10/21 A;計2 11/6①,27①;計2 12/9①,10①;計2 1/27②;計2

Q/5②;計2

対象 幾何図形,飛行機のようなもの,デザイン的なもの,家,ロボット的なも フ,人物,太陽,単線,木

内容 不特定物の→単一の →意味不明な→不特定な→家庭表現

̀き並べ  不特定物場面    人物表現 空処

ヤ理@ ァ 視法

@同上一  一  一  一  ■  一  層  曹  ロ  ロ  曹  一  一  一  一  一  一  一  噛  曹  一  一  曹  曹  冒  胃  謄  騨  一  一  一  一  一  幽  ■  一  一  一  曹  曹  一  層  層  曹  一  一  一  一  一  一  一  曹  一  冒  冒  r  一  一  凹  一  一  曹  一  一  一  曹  冒  辱  一  一  一  曹  一  一  一  一  冒  冒  雪  一  幽  一  一  一  一  一  ロ  曹  一  冒  一  響  一

@同上

@ 眼ロ層一『一百一

D__異__

@ 耳

頭髪なし一一一→輪郭外に波線またはギザギザ線層一一一F一一一一曹一一曹曹冒冒一一噛一一一一一■曹一一冒冒鴨胃一一一一一一一一■曹一一一需騨F一一一一一■曹曹,冒一一騨一一一曽一一一口曹,一一一一一一一一一■一一冒一F幽一一一一一一

抽ロ→グルグル丸→二重丸→白丸中に黒点または短線→黒点のみ冒冒曹一冒一一一一■一一一■冒一胃一一曽一一璽一一一曹曹一口「需一層一一一一曽一一一墨曹一口冒需一一一一一凹■曹曹曹冒冒ロー一一一一一曹一一一層曹一一一一一一一一一一曹一冒胃一一一一一

¥現されず一一→二重丸一一一→半円に近い輪郭と丸

@ 胴

表現されず一→一本の縦線一  胃  ロ  一  一  一  一  一  曽  一  ■  曹  曹  一  一  一  需  一  層  一  需  一  一  一  一  一  一  一  幽  一  軸  一  曹  一  ■  ロ  謄  F  一  一  一  一  一  一  一  一  ■  曹  曹  一  一  胃  一  一  一  一  一  一  曽  一  幽  一  一  曹  一  胃  一  一  一  一  一  一  一  一  層  曹  冒  響  暫  F  一  一  一  一  一  一  暫  層  曹  冒  響  帰  r

l角形的幾何図形・不定形による表現かまたは表現されず→一本線→四角形的図形

閨@  指 ¥現されず一一→3本線一一→4〜5本の線 一本の縦線一一→囲み図形

 (1)A児について

①描画枚数

 1985年4月1日より1986年2月第1週末までの描画総枚数は73枚で,描画に取り組んだ 総日数(1日に1枚でも描けば,それを1日として計算)は25日となっている。その際,

1日に描く描画枚数の平均は約3枚である。

・15

 12

9

6

3

0

  へ      

      な

  σ 、  「   、  置    、     亀     亀覧  σ      、  f     、  8      、

 r   、 /、

 サ       も ノノ      艦,       覧

1      、 1        、

,       、

一日数

1 1

1

…枚数

,へ

, 、

    、

、、

 、  、

、、  /

4

 図1 各月ごとの描画に取り組んだ日数〔A児〕

2(月)

(4)

 各月ごとの,描画枚数と描画に取り組んだ日数をグラフ化したものが図1である。5月 と12月がともにピークとなっているが,これは園での保育活動と密接に関係している。

 ②描画対象

 加齢にともない,描き込まれる対象の種類が増加している。5月から7月までは人物,

雲,太陽,花が描かれ(a−1),8月から11月初めにかけては家,動物が新たに加わり(a

−2),11月末頃からは山,トンネル,木,車,信号,蝶,キノコ等がさらに加わっている

(a−3)。

 ③ 描画内容

 加齢にともない,対象表現から場面表現へと変化している。5月の中頃までは判別困難 な人物が描かれるが(a−4),5月末頃から11月初め頃にかけては家族のメンバーが新た に描かれ(a−5),11月末以降は友達とのごっこ遊び場面が主として描かれている(a−

6)。

 ④ 空間処理

 基底線による空間処理(a−7)と透視図法(a−8)が各1回ずつ用いられている。

 ⑤人物表現

 加齢にともなって出現する7つの変化パタンを見出すことができた。各変化パタンの特 徴は次の表3に示す通りである。

 A児の場合,次の5つの変化パタンを取り出すことができた。

a−1

蕨嫉1

ソ診

巳り、

Q)\

a−2

と乙㍉

a−4

    a−7

a−5

     a−8

     a−3

     a−6

(5)

      幼児の描画と遊びの関連性に関する事例研究

表3 表現上の変化パタン

45

発展ノぐタン 異なる表現形態を用いるとともに,その表現形態がより高次化する場合 結合パタン 複数の形を組合わせてある部位を表現し,後に一体化する場合

回帰パタン 異なる表現形態を用いた表現へと変化するが,結局最初の形態に戻る場合 囲みパタン 一回線で表現されていたものが面による表現へと変化する場合

同一パタン 一貫して同じ形態を用いて表現する場合

表現化パタン 描き込みのない状態から形態表現が出現する場合 末表現パタン その部分の描き込みがなされていない場合  i)発展パタン

 このパタンは頭髪の表現にみられる。a−9に示されているように,様々な形態が次々 と工夫され,用いられている。

 ii)結合パタン

 このパタンは胴の表現にみられる。a−10に示されているように,2種の幾可図形的形 態による組合せ表現となっているのが特徴といえる。

 iii)回帰パタン

 このパタンは鼻,口の表現にみられる。a−11,12に示されているように,それぞれ最 初の用いた表現形態へと再び逆戻りして吟る。

 iv)輪郭化パタン

 このパタンは腕,脚の表現にみられる。a−13,14に示されているように,1回線によ る表現から輪郭線による表現へと変化している。

       a−9

薯→

亀●.o伸¢

)㌔

、.

εr

。⑱

 惣,

芸駕

a−10

a−11

 う

,、、F

乱ノ

(6)

→\③→

,切

a−12

a−13

/「

a−14

鹸一㊥一⑳一

a−15

11{へ、〜吊

 v)同一パタン

 このパタンは眼の表現にみられる。a−15に示されているように,同じ塗りつぶしによ り表現されている。他のパタンと違い,このパタンでは表現上の変化がみられない。

 人物表現においては,頭髪部分の表現に工夫のあとがみられる。直線を用いての表現か ら,曲線やジグザグ線へと変化し,こうした描線の変化と並行して,頭髪の位置が頭部輪 郭線の内側から外側へと以降する。その際,頭髪は,頭部輪郭線によって,頭部との境界

を明確に区切られる。その後,塗りつぶしを契機にして,頭髪と頭部とが融合・一体化す る過程を見出すことができる。

 (2)E児について  ① 描画枚数

 1985年4月1日より1986年2月第1週末までの描画総枚数は18枚で,描画に取り組んだ 総日数は11日となっている。1日に描く描画枚数の平均は大体2枚程度ということになる。

 各月ごとの,描画枚数と取り組んだ日数をグラフ化したものが図2である。描くこと自 体が非常に少ないことを示している。

 ②描画対象

 加齢にともなう傾向は必ずしも顕著ではないが,12月以降の描画に人物が必ず描き込ま れるという点が一つの特徴である。

 また,用いられる表現形態は,e−1に示されているように,象徴期的特徴を示してお り,一義的な同定が困難である。さらに,幾可図形的形態を用いて対象を描く傾向(e−

2)を指摘することができる。

(7)

幼児の描画と遊びの関連性に関する事例研究 47

(15 二12

9

6

3

0

騨 騨 一 鱒 學 一 一 一 一騨㌔

一日数

、 、 , ノ

,AA @   、、

、       

一一一

一 一一一

45 6 7 8 9 101112 1 2(月)

図2 各月ごとの描画枚数と描画に取り組んだ日数:〔E児〕

 園

e−1

 己 乙》、

  ・   ろ、

  、」P

・  ◎  ●  、.

二飼9

e−2

③描画内容

 加齢にともない,羅列的表現や意味不明な場面表現から家族表現へと変化している。ま ず,4月から5月までは羅列的表現(e−3),6月から8月にかけては単一対象表現(e

−4)が出現し,8月頃から12月頃までは意味不明な場面表現(e−5),さらに,1月に は人物表現(e−6)が,2月には家族表現(e−7)が描かれるようになる。

④ 空間処理

 上下・左右・前後関係を表現するための手段が全く用いられていない。

(8)

  e−3 e−4 e−5

     e−6       e−7

 ⑤人物表現

 E児の場合,次の5つの変化パタンを取り出すことができた。

 i)発展パタン

 このパタンは眼の表現にみられる。e−8に示されているように,最初は単純な丸で表 現しているが,グルグル丸から二重丸へ,そして丸の中に点や線を描き込む表現へと変化

している。

 ii)表現化パタン

 このパタンは頭髪,耳,首,手指の表現にみられる。e−9〜12に示されている表現形

e−8

e−9 e−10 e−11 e−12

(9)

幼児の描画と遊びの関連性に関する事例研究 49

40 ←→

  〜

馬ρ肋

e−13

態を新たに獲得するが,耳と手指の部分を除き,表現形態のその後の変化はみられなかっ

た。

 iii)未表現と同一パタンの併存

 このパタンは鼻,口の表現にみられる。e−13に示されているように,もともと表現さ れないことが多く,たとえ表現されたとしても同じ表現形態のみを用いる傾向がある。

 iv)輪郭化パタン

 このパタンは,A児と同様,腕と脚の表現にみられる。

 (3)A児,E児の描画の主な特徴

 A児の描画の特徴は,第1に,表現される対象や場面が多様性をもっている点である。

第2は,それらの対象や場面を表現するための形態や手段に工夫がなされている点である。

第3は,人物表現が多く,後半は友達との遊び体験が描画として表現されている点などを 指摘することができる。

 E児の描画の特徴は,第1に,表現される対象や場面が比較的に固定化されている点で ある。第2は,表現形態が多義的性格を有しており,客観的な同定が必ずしも容易ではな いという点である。第3は,表現されている対象間の関係や場面としての意味内容が不明 瞭で,まだ分散的傾向を脱しきれていない点などを指摘することができる。

2 遊びの観察結果  (1)A児について

 遊びのテーマ(図3)では,全身を使って遊ぶ集団的活動,ごっこ遊び,運動遊びがほ とんどを占めている,当然のことだが,集団の規模(図4)は3人以上の場合が2/3と なっている。同様に,用いられる遊具等(図5)も遊びのテーマを反映したものとなって いる,持続時間(図6)は10分以内の場合と11分以上の場合とがほぼ同じ頻度で出現して

いる。

 持続時間が長いケースについてみると,縄とびでは5人の集団で約37分間近く続けられ ており,鬼ごっこは12〜15人の集団で約39分間,ドーン・ジャンケンでは8〜10人の集団 で約40分間も続けられた。

 A児の遊びへの取り組み方は,自分の好きな遊びに参加した後に,飽きて途中で抜ける か,最初に他児の様子を見た後に,後半になってからどれかの遊びに参加するか,または 最初から最後まで分散的な活動を行うことになるか,そのうちのどれかである。その際一 貫していることは,自分の思い通りに遊びを展開させようとするために,時折り一方的対 応がみられることである。ただし,必ずしもリーダーシップをとれる訳ではないため,思

(10)

3 2 1

8 6 4 2

ジド鉄相綱木まタと縄鬼動ご泥あ積輪シ

封棒撲旧き廻赫齪暮木三

図3

 りと  こ   釜

遊びのテーマ別出現頻度

6 4 2

10 8 6 4 2

3人未満  3〜5  6〜10 11以上  (刈

 図4 集団規模と出現頻度

蕃難郵蒋喜慧1妻韓

ε

図7

ぴ,投‡・書回,箸画・話   げ       しル 遊びのテーマ別出現頻度

8 6 4 2

饗驚泥織詰

 図5 遊具の種類と使用頻度

・[翅  輪石

ン   け ボ   ん  i  箱

6 4 2

12

10 8 6

4 2

1     2     3     凶

図8 集団規模と出現頻度

8 6 4 2

6〜1011〜15 16〜20 21=曲

〜5

図6 遊びの持続時間と出現頻度

   コ     デ  ル グ        ル      ル

図9 遊具の種類と使用頻度

f層

〜5    6〜10  11〜15   16〜20   21〜 6予}

図10遊びの持続時間と出現頻度 い通りにいかなくなったりすると,途中でその遊びから抜けて別の遊びを行う傾向がある。

 (2) E児について

 遊びのテーマ(図7)では,ごっこ的な遊び,感触を楽しんだり,探索をしたりといっ た活動が多い。しかも,集団の規模(図8)は1人か2人の場合がほとんどで,遊具(図

9)も,多義的に利用可能な素材を用いる傾向がある。持続時間(図10)は10分以内が約

(11)

幼児の描画と遊びの関連性に関する事例研究 51

2/3となっている。

 E児の遊びへの取り組み方は,同じ遊びが断続的に繰り返されるか,興味の赴くままに 次々と活動が変化し,結果的として,遊びが分散的なものになってしまうかのどちらかで ある。より頻繁にみられるのは前者である。その特徴は,まずベースとなる遊びがあり,

それと分散的活動とが交互に繰り返される点にある。具体例としては,お家ごっこや積木 遊びがベースとなる遊びであり,他児の遊びの傍観他児に対するイタズラ,新奇な遊具 への探索等が分散的活動である。自分なりのイメージをもって遊びに取り組むのだが,展 開性と共有性といった点で不十分性をもっている。そのことは,複数の友達との集団的関 係が成立しにくいところに象徴的に示されている。

3 保育記録の分析結果

 A児,B児の特徴を一覧表にまとめたのが表4,5である。

表4 保育記録のまとめ〔A児〕

1    歳 2    歳 3    歳 4    歳 基本的 ・着脱,排せつに意欲的。 ・食べものの好き嫌い→半 ・排せつが完成する。 ・着脱を自分で調節でき,

生活習慣 年後,何でも食べる。 ・食事量は女子の中で一番 下着の替えも忘れない。

・着脱を手伝おうとすると 多く,おかわりする。 ・偏食はないが,私語のた 嫌がり,一番最後になつ ・睡眠を十分とる。 めに食べ残すこと有り。

てもがんばる。 ・着脱衣が完成(手伝わせ ・メン類が好き。

ない)。

運  動 ・元気よく走り回る。 ・「お休み」といわれてもダ ・リトミック,とびばこ, ・体を動かすことに意欲的 ダをこねて,のぼろうと 平均台に意欲的。 ・太りぎみだが体は柔らか する。何度も挑戦してで ・鉄棒は十八番。 い。

きるようになる。 ・高いところに上って,と ・常に走り回り,リズム感

・平均台の上で手をたたい び降りるのを好む。 のある歩行をする。

たり,歌う。 ・ケンケンを正確なリズム

でできる。

操作性 ・ハサミ1.5センチ幅の紙を ・ボタン,ファスナーは友

切れる。 達の分もしてあげる。

・おにぎりといってマルを ・指遊びに夢中,箸の使用

たくさんかく。 も上手。

・糊付け,ハサミ,折り紙 をうまくできる。

雪    歪五口     口口

・名前を呼ばれると分かる。 ・先生の名前をしきりに言 ・朝,先生に必ず おはよ ・大人からの伝達は正確に

・自己主張が強い。 う。 と言う。 できる。

・簡単な言語指示による行 ・イヤイヤが多い。 ・友達同志のおしゃべり, ・歌詞の覚えは良く,人前

動ができる。 けんかが多い。 で歌う。

・禁止の言葉が分かる。 ・家庭への伝言ができる。 ・眼に涙をためるなど,絵

・好きな歌を大声で歌う。 本へ感情移入をする。

社会性 ・探索活動・大人の模倣遊 ・おもちゃ,ブランコの一 ・仲良し4人組がいるが, ・洋服が汚れても気にせず,

びがさかん。 人占めが多い。 自我が強いために一人置 夢中になって遊ぶ。

・指しゃぶりが多い。 ・頑固で気が強く,思い通 けはずれることがある。 ・自分をおさえきれず,け

・ケンカがよくみられ,髪 りにならないとすぐ手が ・自己主張が強く,友達で んかになることが多い。

の毛をつかんだり,負け でる。 あろうが大人であろうが ・初めは保育園の友達を描 ずに向かっていく。 ・寝るときの指しゃぶり。 主張を曲げない。 くが,後に家庭での友達

・自分より小さい子にはや ・保母の話を集中して聞け ばかり絵にかく。 ,

さしい。 る。 ・ルールのある遊びに興味

・覚えた踊りなどをクラス を示し,友達がルールに の前で披露。 違反すると納得するまで

・集団遊びが大好き(かく 言い通す。

れんぼ,鬼ごっこ)。 。絵本を聞きながら,指しゃ ぶりする。

(12)

 表5 保育記録のまとめ〔E児〕      (1)A児について       年齢別にみると,1歳で        は,生活全般にわたって活        発で意欲的な傾向が顕著で        ある。ことばの理解力があ        ることや自己主張が強いこ        と,さらに探索や模倣活動        の活発さについても記録さ        れている。

       2歳時では,身辺処理に        関する活動,全身的運動や        用具の操作活動において,

       ますます意欲的となる。し        かしその一方で,自己主張        が強まり,玩具の独占等に        よって友達との衝突が以前        よりも増えてきている。

       3歳時では,身辺処理の        力や運動能力が一層高まり,

       集中力もでてきている。ま        た,我を張りすぎて友達か        ら退け者にされることもあ        るが,仲良し集団も形成さ        れはじめている。

       4歳時では,身辺処理が        ほぼ自立し,複雑な身体運        動や道具の操作も可能と        なっている。言語的理解力・

表現力とともに感情面でも共感できる力を示しており,仲間関係が今一つといったところ であるが,ルール遊びへの興味も強まっている。

 (2) E児について

 3歳時では,発達領域全般にわたる遅れが気になるが,園生活に馴れるにつれ,周囲へ の積極的な関心と働きかけが徐々に示されるようになってきている。ただし,保母の支え がその際不可欠である。

 4歳時では,基本的生活習慣や身辺処理の面で弱さをもっており,身体操作やバランス 面でも相対的遅れを示している。また,集団遊びに興味をもち,参加しようとする意欲は あるが,同じレベルでの参加はまだ不可能である。

3    歳 4    歳 基本的

カ活習慣

・1人で何もできない。ヨダレを 謔ュだす。

E給食は何でも食べるが少食。

E午睡の寝つきが悪い。

E衣服の着脱は1人でできず,前 纓?¥がわからない。

・厚着である。

E給食は食べる。量は増えたが噛 ワずにのみのむので早い。

E午睡ができない。持ちものの整 掾C片付けが出来ない。衣服の

・Eは除々にできるようになり,

栫X裏返しや,後ろ前にきるが xれなくなった。

運  動 ・すべての行動において,理解力,

s動力,思考力に欠け,声かけ ェ必要。

E色白で体が細く,くねくねして

「る。

E7月になっても歩くのも走るの 熬xく,ベタ足。階段も1段ず ツしか登れない。

・ピアノのリズムに合わせて体を ョかすことができない。

E足腰が弱くフラフラしている。

Eケンケンも数歩しか出来ない。

操作性 。ハサミは動かしているが,もた

ツき,切り線もガタガタ。

E絵画でもなかなか自分で描こう

@とせず,線は弱いし,なぐり描 ォもまだ出る。

昔    塁近ロ     ロロ

・おとなしく黙っている。保母の bが理解できず,話しかけても ヤ事をせずに首をふるが,自分 フ名前は小声で言える。挨拶や Vびの時,少し話すようになっ スが,自分から話しかけること ヘない。理解力に欠け,時々オ Eム返しをする。歌を歌おうと

@しない。

・少しずつ明るくなり,お喋り,

蜷コ,笑い声が出せるように ネったが,まだ保母に話しかけ トこない。

社会性 ・4月 生活の流れについて行け クぼんやりしている。

E6月 生活の流れに馴れてきた ェ,行動が遅く声かけが必要。

齔l遊びが多い。集団のなかに ロ母がいれても,すぐに抜けて

@しまう。

・室内遊びでは,座り込んで遊具 ナ遊び,周囲の子と少しは喋れ 驍謔、になった。集団遊びには Q加するが,理解力にかける。

續シで特定の友達が出来,行動 ヘ囲が少し広がる。喧嘩や笑顔 ェ少しつつでてくる。

D(.考

A児とE児の描画を比較した場合,第1の重要な相違点は描画枚数における両児間での

(13)

幼児の描画と遊びの関連性に関する事例研究 53

差である。描画総数,月別最高枚数,1日の最高枚数等のいずれにおいても,A児はE児 のそれをはるかに上回っている。この違いをもたらしているものは何であろうか。まず考 えられることは,描画活動に対する姿勢の違いである。つまり,描きたいという要求をど れだけ強くもっていたかであろう。「子どもは絵の中に,ものや他の人に対する自分のつな がり」1)を表現するのであれば,A児とE児がそれぞれの描画において,表現しようとした

ものがどれだけあったのかという点が問題にされなければならない。要するに,A児は日 常生活において,様々な事物や他者との間に,自分にとって重要な意味をもつ結びつきを,

より確かなものとしてつくりえていたのではなかろうか。E児と比較した場合, A児が描 画において表現している事物や人物の数は明らかに多く,加齢とともに増加する。しかも,

描画内容(テーマ)が遊びの内容や友達関係によって規定されていたことを考慮すると,

遊び活動が果している重要な役割を認識せざるを得ない。A児はルールに基づいた全身運 動的遊びやごっこ遊びに積極的に取り組んでおり,集団関係も一定の拡がりを示していた。

それに対して,E児は,分散的な遊びや同一の遊びを断続的に繰り返す傾向が強く,集団 的な拡がりもほとんど見出すことができなかった。幼児期の子どもたちにとっては,もの や他の人に対する自分のつながりが具体的に形成・展開していく場として,遊び活動は重 要な位置を占めていると考えられる。

 第2の重要な相違点は,空間表現や対象表現にみられるA児とE児における差である。

A児が基底線・人物表現での工夫を行なっているのに対して,E児は羅列表現が主で,表 現形態は不定形あるいは未分化なものである場合が多い。この違いをもたらしているもの

として,まず表現しようとする対象に対する「表現的概念」2)のレベルの問題がある。それ はあらかじめもっている,描画表現に対するイメージの明瞭さと密接に関係している。つ まり,A児の場合は「こういう形に描きたい」というイメージがかなり自覚化されており,

そのために技術的側面とのギャップを埋めるための努力が払われることになる。その際,

個々の表現形態は様々な対象・場面を表現するための手段として活用される。それに対し て,E児は表現形態が有する表示的意味自体に興味が有り,描画表現全体のイメージより は,個々の表現形態に対するイメージと表示的意味性の方が優先される結果となっている ように思われる。この傾向は,両州の遊び活動における道具や遊具の扱い方の違いに同じ 特徴を見出すことができる。A児はそれらをあくまでも手段として用いるが, E児はそれ らを遊びの対象としている。つまり,A児は自分が作りたいもの,実現したいものをあら かじめイメージ化し,その手段として様々な道具や遊具を活用する。しかし,E児は,具 体的な感触,形,色等を属性としてもっている道具や遊具を支えにして,何らかのイメー

ジを引き出しながら遊んでいるといえる。

 このイメージ形成にみられる賢主問の差は,さらにどの斜な発達的側面と関係している と考えられるであろうか。ひとつは言語力の問題であり,もうひとつは運動・操作能力の 問題であろう。A児は描画活動や遊び活動において言語活動が活発で,対象への意味づけ も早い時期に可能となっている。他児への話しかけ,指示,共感,呼びかけ等,頻繁に観 察された。E児の場合は意味づけが遅く,主として独りごととしての発話が観察された。

言語とイメージとは複雑な意味的・機能的関係をもっているが,基本的関係として,発語 はそれに対応するイメージの確立によって可能となること,またイメージは言語によって 喚起されるという2点を指摘することができる。このことから,A児におけるイメージ形

(14)

成が,E児と比較した場合,明らかに高いレベルにあることを示唆している。運動・操作 能力については,イメージに基づいて描画活動を遂行する側面とイメージ自体を運動・操 作的働きかけを通して形成する側面とがある。今回の調査では,具体的資料が得られなかっ たが,描画にみられる線の働き等をみるかぎり,手指や腕のコントロール(制動力,なめ

らかさ等)に不十分性が示されている。E児の場合,イメージ形成の不十分性が,さらに そのコントロールを困難なものにしていると考えられる。

最後に,本調査にご協力頂いた長崎市の住吉保育園に深く感謝の意を表します。

引用文献

1)ローウェンフェルド,子どもの絵,勝見 勝訳 1956 2)波多野誼余夫  児童の芸術行動(児童心理学講座5)

P29〜P30 白揚社

1979 P253〜P256金子書房

       (昭和63年10月31日 受理)

参照

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