ウイクセルの分配理論
児 玉 元 平
ウイクセルは︑ベエ!ム・パヴエルクの資本理論を改築し︑待望の限界生産力としての利子を︑労働と土地の限
界生産力としての賃銀と地代と協調するような仕方で︑
陽表的に限界生産力理論を展開した先駆者の一人であっ
た︒ウイクセルは︑ベエlム的な一商品経済の代りに︑複数的な商品経済を想定することによって︑オiスリア学
派とワルラス学派との問に存在したギャップに架橋し︑近代的な資本理論に通ずる独自の新な路線をひいた最初の
人とみなさるべきである︒ウイクセル経済学における彼の貨幣分析が︑現代貨幣理論の端緒をひらいたと同じ意味
で︑彼の資本分析もまた先駆的な価値があたえられるべきである︒私はそれらの点を前稿﹁ウイクセル資本理論の
噌i展開﹂において指摘しておいた︒ところで︑ウイクセルは︑彼の資本分析において︑同時に︑資本蓄積が国民所得
の生産要素問の分配パターンにおよぼす影響についてきわめて理論的精密度の高い水準で考察している︒このよう
な資本蓄積と所得の分配率に関するウイクセルの分析は︑多分に︑リカlドの﹁経済学と課税の原理﹂における機
ウイグセノしの分配理論
械論に展開された考察に刺戟を受けた結果であると考えられるが︑所得分配の問題はつぎのような段階において取
り上げられている︒付技術水準がコンスタントであるが純投資が行われる場合︒同資本は蓄積されないが技術は進
歩しつつある場合︒国資本蓄積と技術進歩が並行的に行われている場合︒ところで︑
資本
蓄積
は︑
マクロ的経済の
水準では所詔ウイクセル効果を誘発する︒乙のウイクセル効果の考察は︑ミクロ的経済の水準で採用される限界
生産力原理を︑マクロ的水準での資本問題に無条件的に適用せんとする場合︑一つの難点を生起せしめる︒個別的
企業の観点では︑資本の価値は所与である︒その限りにおいて限界生産力の理論は適用しうる︒しかし︑全体とし
ての経済にとって︑資本の増加は必然的に賃銀率と利子率とを変化せしめ︑
それ
故に
︑
資本の価値を変化せしめ
る︒これが︑ウイクセル効果である︒乙のウイクセル効果の認識は︑所得分配の限界生産力的説明に重大な意味と
制限をあたえる︒後で指摘したい︒
ウイクセルの資本分析はまた資本構造と生産要素所得との関係を明示的に考察している︒彼は︑資本苔積によっ
て生ずる構造変佑を︑水平的ディメンションの変化と立体的ディメンションの変化とに区別し︑
9 両ディメンションの変佑との関係を体系的に吟味している︒ウイクセルの資本理論は︑ 要素価格の変化と
資本家的生産の理論であ
り︑生産と分配とは不可分的な関係において取り上げられているから︑われわれもまたこの小論において︑ウイク
セルの分析が経過した既述の三つの段階と︑資本構造の変化との関連において︑ウイクセル分配理論の基本的性格
を明らかにしたい︒
所得分配理論の近代的系譜においては︑ウイクセルは︑限界生産力説の中に位置づけられるのが通説である︒ウ
イクセルの限界生産力原理による所得分配の考察が︑まず明示されるのは静学的分析ではあるが︑所謂生産物完全
分配の定理に関する説明においてである︒この定理は︑生産函数の一次の同次性的性格との関係について︑既に︑
ウイクステッド以来長く学界で論争を誘発した問題であり︑その要約的な歴史的考察はステイグラーにあたえられ
引4ており︑まに︑生産物完全分配の経済的意味についてはロビンソンの優れた分析があるから乙こでは︑ウイクセ
ル分配理論の基礎的ツlルとしての限界生産力原理の性格を明らかにするという当面の目的に役立つかぎりにおい
て︑この問題に関説するにとどめる口
ウイクセルが︑所得分配の限界生産力的説明を最初にあたえたのは︑ウイザlの帰属理論に対する批判において
いかにしてそして何故に各生産要素が︑そである︒その個処で彼はつぎのように述べている︒
﹁乙
れを
ll
t即
ち︑
の生産に参与することによって正確にかくかくの報酬をうけるかということ
ll
ーを
見出
すた
めに
︑
問題の生産要素
の量自体を見る代りに︑その量の変佑を考察しなければならぬ︒即ち︑われわれは︑その問題を微分学の観点から
アプローチしなければならぬ︒このことは︑もし︑生産売上高が︑生産に参加した生産要素の函数とみなされるな
らば︑明に節約はつぎのようなことを心要とする︒
即ち
︑各
要素
の一
雇用
量は
︑
この要素量のわづかな減少が︑乙の
量に帰属する売上高の分け前にひとしい量だけ︑生産の結果を減少せしめるであろう点できまる口
の条件がみにされないかぎり︑企業にとっては︑問題の生産要素をより多く︑
換言
すれ
ば︑
乙
或いはより少なく雇用することが有
利であろう︒数学的に表現すれば︑各生産要素の売上高にたいする分け前は︑上述の函数を変数としての当該生産
ウ イ グ セ ノLの分配理論
要素について微分した偏導函数に比例的であらねばならぬという乙とを意味する︒乙の単純な公式の中
そし
て︑
に︑もし︑同時に生産の一要素としての資本の特殊な地位が十分に考えられるならば︑
戸川
υ
ので
ある
︒﹂
問題の真の解答が存在する
右においてウイクセルが考察した問題は︑ウイクステッドによってとりあげられたところの所謂生産物完全分配
ウイクステッドよりも一年早くこの問題を取り上げており︑さらに︑彼の問題であった︒しかし︑ウイクセルは︑
四
ワルラスやバロlネのウイクステッド批判に対して︑ウイクステッドを弁護す
ロUる立場で来日かれた論文においても明確に展開されている︒この定理をめぐる長年の論争にはウイクセル自身は直接
司4的には参加しなかったが︑この論争のプロセスの中で︑分配理論としての限界生産力説が確固たる地盤をきづきあ のこの側面における見解は︑後年︑
げていったのである︒乙の定理に関する論争の結果は︑
一般
的に
いっ
て︑
二つの可能な解をあたえた︒その一つ
は︑生産規模に関する収穫不変を仮定する乙とであり︑他は︑
ることである︒ダグラスやステイグラlは前者を選好し︑ 長期平均費用曲線上の最底的における操業を仮定す
︒ ︒
ヒックスは︑後者を選好する︒
既述のととく︑ウイクセルの限界分析的手法は︑
ベエ
iム・パヴエルクによって展開された資本理論の精密化に
利用され︑ウイクセルにとっての直接的な問題は︑賃銀と地代︑利子の限界生産力理論を︑
ベエ
lム的資本理論と
綜合することであった︒資本という困難な概念にとって︑ウイクセルが最初にとった立場は︑資本を︑必要な生産
期間にわたって労働者と地主とを維持するために支払われる賃銀︑地代にたいする前払基金としてはあくする乙と
であった︒資本のもつ多面的な性格のうち︑まず︑流動的な資本︑生存基本的な資本を分析の表面にとりあげ︑
こ
の資本の変佑が︑賃銀地代︑利子にあたえる影響を考察する乙とが︑彼の主たる目的であった︒
﹁消
費財
︑即
ち︑
制限的な使用行為の系列の中で︑その全ての有用性を消尽するような財が︑また︑資本家的に使用しえ︑したがっ
て︑その全価値が所有者にとって貯蔵され︑所得を供しうるという一見逆説的な現象
ll
経済メカニズムのこの恒
n v
より深く考察すると乙ろの資本理論の心髄をなすものなのである己資本は時間久的運動が︑われわれが︑ここで︑
或いは生産期間という概念と代替的に使用され︑産出量は︑三つの生産要素︑即ち︑時間︑労働用役室︑土地用役
量の画数として表現せられる︒
いま︑労働者一人当り年産出量を
p
で示し︑労働者一人当り土地を
h
︑生産期間を
t
で示
すと
︑
生産函数は︑
同︼1
同(↓ケ﹃)
(Ml
一 )
とおかれる︒ウイクセルによれば︑問︑(同
) V O T ( 片 )
八 Oが仮定される︒﹁乙の場合︑すべての単一の事業部門内では︑
労働の生産力︑
例えば︑労働者一人当りの年生産は不変的な情況の下では︑生産プロセスの長さの函数と仮定され る ︒
ll
この函数は︑乙の期間の長さとともに増加するが︑
しか
し︑
余剰収益の皮盛は逓滅的なものとなる︒ ︑きわめてかんまんに増加し︑
この結果は全く経験と一致する﹂ウイクセルによれば投資期間は丹
¥Mで示 したがって︑
される︒そしてω式はつぎのごとく示される︒
T(
者 十 町 円 ) ( 宇 中 )
( M l M )
wは年賃銀率︑
HU
この式はウイクセル分析における基本万程式を示すものである︒い
rは
地代
︑
Zは利子率を示す︒
ま
Zとrを一定としてwを極大ならしめる問題をおくと︑
最適生産期間
tとhを決定する問題として︑tとhに
ついてω式を偏微分して零とおけば︑
ウイグセ)1.‑の分配理論
Q)IQ)
M‑1'O
+ 巧
ロ
ー円
NIN
(N
lω
)
ω!ω
ロ
ー1'0
11 円
/ー、
NI~ +
¥‑‑./
( M l み )
ω式の左辺は時間の限界生産物を示し︑
をう
る︒
右辺は前払された賃銀と地代に対する利子を示す︒ω式の左辺
は︑土地の限界生産物を示し︑右辺は︑地代とそれにたいする利子を示す︒問題を︑wとrを一定として︑zを極
五
ノ
、
大化ならしめる問題に変換しても︑ω式とω式で示される同じ条件をうる︒ω
式を
︑
(M l
印 )
とし
て示
すと
︑
これ
はさ
らに
︑
"d 1 1
巧+
ロ
ー同
+ rl‑
Cl)1Cl)
rl‑I司
(M l∞ )
また
︑ω
式よ
り︑
Cl)1Cl)
ロードロ
/ー、
N+
I江
¥‑.‑./
( N 1
吋 )
をうる︒乙れをω式に代入すると︑
T f
︹山内(宇中)︺+ム叩F
( M 1 ∞ )
乙の式で︑もし︑土地が割引いた限界生産物にひとしい報酬を受け︑資本(時間の画数として示されている)が︑
その限界生産物にひとしく支払われるならば︑賃銀はPよりそれらを差引いた残余として示される︒以上は︑ミク
ロ的水準で考察された︒ところで︑考察をマクロ的水準に移行せしめると︑
Z 、
w︑或いはrを一定とする仮定を
おとさねばならぬ︒それらは︑決定さるべき変数と看倣さねばならぬ︒ウイクセルは︑マクロ的分析では︑社会資
本Kを所与とする︒そして︑Kが完全に利用されるという条件をおく︒
同H山l ﹀
( f F
円 )
(Niω)
Aは一定の労働室︑Bは一定の土地の呈を示す︒そして︑
(M l
↓C)
の関係が成立する︒以上五つの方程式から五つの未知数w︑
γ&︑
+Lzの一意的な解が求められる︒h︑︑
乙こ
で︑
一つの問題が派空する︒ウイクセルは既述のととく︑社会資本Kを所与としている︒しかし︑この価値は︑生産期
問︑利子率が既知である場合にのみ計算しうるものである︒即ち︑資本の価値は均衡においてのみ決定されるので
ある︒ルツツはそこで方程式が一つ不足しているという︒﹁生存基本の価値は︑むしろ︑生産基本から生ずる将来
利子と生産期間の長さが要件となる︒し収益の資本佑によってのみ取得しうるものであり︑こうした資本化には︑
生容基本の価値は一つの未知数である︒﹂同様な批判は既にハイエクにおいてもあたえられている︒
﹁ そ
たが
って
︑
れが与件として存在する形態における非耐久的資源のストックは一定量の資本ではない︒なんとなれば︑資本は︑
ウ イ グ セ ノLの分配理論
それを構成する諸要素の相対価値が決定された後においてのみ︑単一の大きさとして表現しうるからである︒そし
て︑乙のような相対価値は︑明らかに︑投資期間を決定すると同じ均衡をもたらす諸力の結果なのである︒われわ
れが︑出発点としなければならぬ最初の与件は︑端的にいって︑乙の非耐久的資源ストックを構成する要素の目録
一つの価値量としての資本の量は︑投資期間と全く同様であり︑且つそのすべての技術的特性の目録なのである︒
決定せられるべき未知数に属する︒﹂以上における計算は勿論単利計算である︒ウイクセルはさらに︑与件でなく︑
七
ji、
に﹁経済学講義﹂で複利計算の場合を考察しており︑また︑生産要素が異なった時点で投入される場合における限
この小論では省略しよう︒界生産力の問題を取扱っている︒これは︑既に別稿で考察したから︑
ウイクセルは︑右に展開した分析から推論して︑リカi
ドやチュ
lネンの地代理論が︑一般的な限界生産力理論
の特別なケlスとみなしうることを証明しようと乙乙ろみた︒
まず
︑
Zを
零と
おき
︑
tをコンスタントと仮定して
︑既述の基本方程式を︑
HM目当+﹃円
(M l二 )
とおく︒極大条件として︑
(M l雨 )
をう
る︒
土地の投入による産出物の増分が地代にひとしい水準まで生産を拡張した場合が最も有利であるととを示
す︒
とこ
ろで
︑
いま︑土地一単位当りの労働一雇用量を
(M l一
ω )
とお
くと
︑
これ
は︑
(M l手 )
さらに︑単位土地の全労働者の産出量をq
とお
くと
︑
HV
Hρ
ロ¥
(M l
↓印)
以上の関係から︑
をうる︒さらに︑
よ り
ω式
より
︑
E l f
A¥
ロリ 者十 回同 門
円同
日ロ
当+
ロ日
目
H
ロ当
+円
..a
ロ ロ ーロぃ。Ip..
円E
1 2
円 四 ロ :
ω式は︑単位土地の産出量は賃銀と地代の和にひとしいことを示し︑ω
式は
︑
ウ イ グ セ71.‑の分配理論
( M l
↓∞)
( M
コ ) l (
M l一 ∞ )
( M
一 ∞ l
)
(MlMO)
労働の最適配分は︑各単位土地に原
る︒ウイクセルによれば︑上述の二つの方程式の意味するところは︑ 各労働者の限界生産物がその年賃銀率にひとしい場合に成立する乙とを示すものであ
リカlドの地代理論 用される労働量において︑
チュ!ネン的な形式で︑
右の
分析
では
︑
を数学的に表現したものにほかならないのである︒
Zは零とおいているが︑乙こで資本利子を導入しよう︒
九
O
fg
十 円 ) ( 二 や )
(NIM‑)
乙の式をtとnについて微分して︑つぎの結果をうる︒
ωI<J) .‑1‑1ρ
ロ毛
+ 円
NIN
(NlMM)
ね 目 当 ( 一 + や )
(MlMω)
さらにつぎの式を付加する︒
( M l S
︑ )
同日町ト(言+切る(MINA)
ウイクセルの分析はここで中断され︑彼は︑ワルラスの批判に転ずる︒
乙の
点で
︑
ステイグラlはつぎのことを指
不幸にも︑彼が︑分配の限界生産力理論の最初の完全な
数学的公式化を提供しつつあるという事実をあいまいにしているよそのあいまいな点をステイグラl
は ︑
ル的分析構造の上で補修しているから︑以下において︑ステイグラlの説明を要約的にあたえよう︒
摘す
る︒
﹁H価値︑資本及び地代Hにおける表現様式は︑
ウイクセ
m w 式を再び利用する︒
1 1
<J)I<J) t:l"i"d f ¥
NI+ 丘
、‑""
(Ml吋︑)
倒式より
当
Cl)1Cl)
ロ1.0
/ 戸 ¥
N+
I立
、‑..‑/
ω式
に代
入し
て︑
匂 目 白
J
一十州j)+F[山内(一+ムヤ)]+市(
r J円
両辺にn
を乗
じて
︑
ロTT
口 前 ( 一 + ー 中 ) + ロ
F [
制 i
(一 十中 )︺
+JF
ム ﹁
ウイクセルの生産画数は一次の同次性が仮定されているから︑
( ロ
FI
↓ )
そこ
で︑
ρ
ロ
Cl)1Q)
ロ1.0
/ 戸 『 ¥
N+
I丘
、 . ‑ /
+宮山叫(一+中)+片山叩
ウ イ グ セJt‑の分配理論
(M1Mω)
(MlMm)
( M l M吋 )
( M l M∞ )
(MlNU)
イグラーはここで︑ 乙の式によって︑各生産要素がその限界生産物に応じて支払われた場合の生産物完全分配の原理が示される︒
ス 一 ア
ロ b
阿国
川 l +
何回b円凶川
l H
件│川崎Iωロ
N ω F N ω
件
の関係式をあたえている︒限界生産物で示された資本の分け前は︑割引しない労働の限界生産物で示された分け前
( M l g )
と︑割引しない土地の限界生産物で示された分け前との和を立¥Mで割引いたものにひとしい︒
ーはこれを証明していない︒ユlルはこれをつぎのように証明する︒
そし
てま
た︑
m w 式に代入して
当
1 1
CllICll
ロ1..0
r‑¥
N+
I丘
、 } ノ
ロ肴
1 1
ロ
CllICll l:ll..o
r‑、、
N+
I丘
、..../
ロ ー CllICll
ロ1..0
〆戸『、
Nj+ 立
、..../
+
tトロユ
lr
ωο
. M ω U
+ ω ρ l
ロ当
N4
け
4 ω
件N
‑ 同
N4
け
︐M
i( ロ
J Jム ヤ+ (: ム﹁ )山
﹁J
Fム
﹁
以上は単利計算によっているが︑誤差は僅少である︒例えば︑
しか
し︑
ステイグラ
(M 12 )
(N
│ω
N)
(M
lω
ω)
(M
11
ω
ム)
(Nlg)
(Mlg)
(Nl
勾)
ロHSP7H
ア 当 日
fo
oo
d
同M
Hf
oo
od
NH
・00?と
おいて計算すると︑帥式の左辺は︑ドω
∞ ∞ ・
3
︑ 右 辺 は ド
・紹ω00となる︒時間の要素を除去して考えると︑ω式は
.0
ロ
Cl)1Cl)
ロ1.0
+ ロ
Cl)1Cl) ::r'I.o
(N
│ω
∞ )
乙の表現は通常オイラーの定理としてあたえられるものである︒ステイグラlは結論していう︒
﹁ウ
イク
セル
は︑
分配の一般的限界生産力理論の創設者の一人として認められねばならぬ︒彼自身の展開はこの理論の基本的な要件
をすべて包含しており︑一般的定理について陽表的な数学的叙述をあたえていないとしても︑提議してい
彼は
︑ る0
﹂側
所得分配の問題に関連する所謂完全分配の定理に関するウイクセルの考察は︑前節で示されたととく︑
﹁価
値︑
資本及び地代﹂においてはじめて展開された︒その後につづく一連の論文と﹁経済学講義﹂においても︑ウイクス
ウイグセノレの分配理論
テッドとワルラス︑パロlネの証明を中心としてウイクセルの見解が述べられている︒以下において簡単にこれら
について関説しよう︒
生産物の完全分配の定理を証明するために用いた生産画数は︑ウイクステッドが︑一次の同次性が仮定された︒
乙の
仮定
が︑
ワルラスやパロiネによる批判を誘発せしめた︒
同切
ウイクステッドの問題に論及している︒この場合に使用したモデルは︑ ウイクセルは︑
一九
O
lO年のスエデン語の論文で
非資本家的生産のモデルであった︒
そし
四
て︑
その
まま
︑
﹁経済学講義﹂にひきつづき使用されている︒前掲論文で︑ウイクセルは︑つぎのごとく述べてい
る
即ち
︑
自由競争がおこなわれ︑大規模生産と小規模生産とがほぼ同一の収穫をあたえるような領域が存在す
ザ ︒ ︒
﹁わ
れわ
れの
理論
は︑
この領域に完全に適用しうる︒真の企業者利潤は︑理論的には存在しない︒資本のない
生産においては︑賃銀と地代とは︑全生産物をその分け前として取得する︒それらが受取る額は︑企業者として行
動するものが労働者としてであるか︑地主としてであるか︑また第三者であるかにかかわらず︑それぞれ︑労働と
土地の限界生産力によって決定せられる︒そして︑かかる領域が存在するかぎり︑限界生産力は︑生産の全分野に
おいて︑賃銀と地代の基準をおくであろう︒もっとも︑労働者或は地主が︑彼自身︑企業者の場合︑賃銀と地代は
勿論概念的にのみ企業者利潤と区別されるが︒﹂
ウイ
クセ
ルは
︑
この見解は︑ウイクステッドによって最初に展開されたといっているが︑既述のごとく︑ウイク
セルは︑ウイクステッドよりも一年早く﹁価値︑資本及び地代﹂の中で展開しているのである︒ワルラスは彼の著
﹁巴
O B O E ω
円︒
︒︒
ロ︒
自由
︒℃
︒ロ
片山
内七
百 H E j
円︒
﹂の
第三
版で
︑
ウイクステッドに言及しているが︑それについて︑ウイ
クセ
ルは
︑
つぎのような批判的な言葉をあたえている︒﹁ウイクステッド理論の根本的な特徴は︑ワルラス自身の
経済生産の理論に見出さるべきだと主張し且私もそのことは正しいと思うのだが︑ワルラスは更にすすんで︑自分
の理
論は
︑
ウイクステッド理論よりももっと一般的に妥当すると主張する︒ウイクステッドは︑総生産物が生産要
素の一次の同次画数である場合にのみ限界生産力の法則を確立したといわれ︑
ワル
ラス
は︑
なんらの制限をおくこ
とな
く︑
一般
的な
基礎
の上
で︑
その命題を証明したと考える︒
しか
し︑
乙の
点で
︑
ワルラスはまちがっている︒事
実︑自明的と考える仮定︑即ち︑企業者間の競争は︑独占がないかぎり︑利潤を着実に零ならしめる傾向をもっと
いう仮定をおく︒しかし︑乙の仮定が︑われわれがおいた条件そのもの︑即ち︑生産物は︑生産規模とは独立的で
あるという条件そのものを含むものであることを知ることは困難なことではない︒
もし
︑
そう
でな
く︑
大規模企
業が︑小規模企業よりも有利であるならば︑企業利潤は消失せず︑或いは零になる傾向さえ存在しない︒なんとな
れば︑小規模企業の経営はたんに損失を生ぜしめ︑大規模企業は生産費︑即ち︑賃銀と地代(利子を含む)以上の
正の余剰をえているかいづれかであるからである︒ウイクステッドのその問題にたいする取扱いは︑特に推奨さる
品川岬ワルラスによってあたえられたような冷笑的な棄却には全く値するものではないのであるoサところ
的MWで︑二年後に書かれた論文で︑ウイクセルは︑ べ
きで
あり
︑
ウイクステッド命題に対するワルラスやパロlネの批判に再び言及
し︑そ乙で︑従来の見解につき一つの変佑を示していることは注意さるべきである︒そこでは︑彼はつぎのように
述べている︒﹁私はさらに反省することによって
l
│
l│乙の点で私はワルラスとその協力者パロネを誤解していた
事実︑ウイクステッドや私がいままで考えていたよりも︑もっと広い理論的に妥当する
ハ 匂
向n w
領域があることを発見したこウイクセルは︑生産は現実にはじめの段階では収穫逓増的であるが︑ ーーー限界生産力の法則が︑
後の段階では収
穫逓減の傾向を示すにいたり︑この収穫逓増から収穫逓減に転ずる点で平均産出量が極大
に達
(平均費用極小)
ウイグセノLの分配理論
し︑
そこ
で︑
パロ
iネの極一時的に収穫不変の傾向を示すものであることを明らかにした︒乙乙でウイクセルは︑
小平均費用条件乃至最適生産条件が︑ウイクステッドの生産函数と同じものでないことを︑初期の論文では注意し
なかったことを素直に認めているのである︒
そし
て︑
ワルラスやバロlネの使用したような複雑な数学的公式を使
その関係の重要性を証明しているのである︒生産要素を労働と土地のみとし用することなく︑初等的な数学で︑
て︑賃銀w︑地代rを所与として︑企業者は利潤を極大化すると想定しよう︒総生産費は︑
一 五
一六
の1ω
当 + げ 円
( ω
ー 一
)
乙乙
で︑
aは
投入
労働
豆︑
bは投入土地用役を示す︒産出量をQで示すと︑平均費用は︑
凶当 +ず 円
︒
(ω
lM
)
つぎに︑生産函数をおく︒︒H
同 (
? ヴ )
(ω
lω
)
土地をコンスタントとして︑労働を増加すると︑その限界生産物は︑
。)1Q)
ω1.0
1 1
A
(ω
lA
)
で示し︑平均費用
(k
で示そう)の変化をみるためにa
で微
分し
て︑
ω }
円
ω ω
︒当
lA
KM
凶4 4 + ゲ 円 )
︒ 凶
(ω│
印 )
ω w
︐︑
内ω }
守
︑
ω目円
ー
ω ω
ー
とこ
で︑
ω釦ーの符号は分子の符号に依在する
0 4
司¥
P V
} 円であれま
││
VO
反対乙︑当
¥P
八日
向で
ある
と
U配 l
八︒
である︒平均費用極小の条件は︑
当¥門何回
1 1 宍
(ω
lm
)
同じ仕方で︑労働をコンスタントとして︑ ω昨
土地のみを変化せしめた易合の10の心要条件は︑
j u司
円
¥ A r H W
(ωl
吋 )
Pは土地の限界生産物を示す︒
ω式と川式をω式に代入すると︑︒
H m
凶ρ"+tA
﹃
(ω l∞ )
が成立する︒平均費用極小の状態では︑総生産物は︑
内切
月 い
ひと
しい
︒
各生産要素の限界生産物に︑その投入室を乗じたものの和に
以上はwとrとを一定と仮定した︒いま︑企業者聞の完全競争を仮定すれば︑企業利潤の存在は︑
w と
しか
し︑
rとを上昇せしめる︒そこで︑企業利潤零の完全競争均衡では︑
当日
︒"
︑同
H u g
の条件が成立しなければならぬ︒
乙の場合︑明らかにkは1
にひ
とし
い︒
ω式が成立する︒ウイクセルは﹁経済学講義﹂の第二版以後の版では︑限
界生産力の命題を︑ウイクステッドの生産函数とパロlネの最適生産条件とを並行的に基礎として証明している︒
四
考察の焦点を︑資本蓄積と所得分配にあたえる効果の吟味に限定しても︑なお︑ウイクセル資本理論に含まれる
ウイグセノLの分配理論
特徴的な分析について若干の付言すべき点があるQ
その
一つ
は︑
ウイクセル効果であり︑その二つは︑資本構造と
いう概念である︒これらの概念とそれに関連する問題については︑別稿において詳述したから︑この小論では︑当
面の目的に関連するかぎりにおいて︑上述の二つの特徴的な概念について若干の説明を補足してお乙う︒
完全雇用を仮定すれば
ll
ウイクセル分析では︑定常経済が仮定されている︒li資本は︑実質貯蓄の投資によ
って創造されるが︑実質賃銀と地代とがあたえられているとすれば︑実質貯蓄率が労働の増加率をこえる場合にの
七
Ji、
み︑新資本の形成は可能である︒新しい資本の形成には︑完全雇用の定常経済では︑従来︑直接消費財の生産に一雇
用されていた労働と土地の若干を︑資本財生産に転用する乙とが必要となる︒そ乙で︑消費財生産と資本財生産と
の聞に労働と土地とにたいする競争が生じ︑賃銀と地代とが上昇するであろう口その結果として︑賃銀と地代との
上昇がなかった場合に比して︑より少ない実質資本の形成がなされることとなる︒賃銀と地代との上昇が︑実質貯
蓄の一部を吸収するからである︒乙の賃銀と地代の上昇による実質貯蓄の部分的吸収効果をウイクセル効果とよ
的MWぷ︒ウイクセルにあっては︑資本財はさしあたり耐久性の短い流動的な生産財を意味し︑耐久性の長い固定資本財
lま
﹁経済学講義﹂の付録で︑
ア ッ カ
lマンモデルに関説してはじめて導入される︒
もし︑企業者の側において完全な予測を仮定すれば︑乙のウイクセル効果を予期し︑完全な調整を行いえたであ
ろう︒もし︑不完全な予測しか行いえないとすれば︑この効果は重大な意味をもっ︒ハイエクは︑ウイクセル効果
的な現象の発生に対処するために︑
時o
hMW 視する︒しかし︑ 企業者は前もって必要賃銀を蓄積しておくものだとして︑ウイクセル効果を軽
企業者側におけるこのような完全に調整的な予測と計画とは︑動態的な経済では不可能であろ
hq jo
ウイクセル効果の問題は本来的に動態的な現象である︒ところで︑ウイクセルの資本分析は静学的である︒乙乙
l乙、
ロピ
川ン
ソン
の批
判が
生れ
る︒
﹁ウイクセルの分析によって呈示された主たる困難は︑種々異れる資本量をもっ
諸々の静態と︑時間の経過の中で進行する蓄積過程の聞の比較を︑彼は同時に論じているようにみえるということ
である︒われわれが既に知ったように︑彼の根本問題は︑議論の二つの部門でひとしく重要であるが︑ω 十分に理解されえないものであるこロビンソンによれば︑ この二つの
部門が分離されていないかぎり︑ウイクセル効果は︑
運動を暗示するものであり︑比較静学的分析と過程分析との区別はきわめて重要なのである︒ウイクセル効果は︑
ロビンソンによれば︑資本蓄積論のキーポイントを構成し︑彼女の﹁資本蓄積論﹂では資本蓄積の動
その
ため
に︑
態的過程を分析するにあたって︑ウイクセル的静学分析の境界をのりこえているのである︒ロビンソンは︑ウイク
資本財の再生産費が︑その歴史的費用を超えて高くなることだと定義すセル効果を︑実質賃銀率の上昇によって︑
る市もっとも︑利子率の水準も資本価値決定に一役員う︒そこで︑賃銀率の上昇が︑資本価値を上昇せしめるかど
うか︑即ち︑ウイクセル効果が正であるかどうかは︑利子市中の効果が考慮されねばならぬ︒ここに︑ウイクセル効
呆のパズル的性質が伏在する︒﹁資本財の再生産費は︑より高い賃銀率の効果が︑より低い利子率の効果を相殺す
より
小と
もな
りう
る︒
﹂換
一一
目す
れば
︑
る以上のもωでめるかどうかによって︑より大ともなり︑ロビンソンにあって
は︑ウイクセル効果の問題は︑生産力関数上を右に移行してゆくところの︑
含む発展的経済に関連した一種のパズル的性格の問題であった︒ 資本労働比率︑資本産出比率の上昇を
ウイクセルにあっては︑ウイクセル効果の問題は後述するととく︑利子率と社会資本の限界生産物との聞の靖離
の問題であった口そして︑この効果はマクロ的経済に生起する現象であった︒そこに︑限界生産力理論のマクロ経
ウ イ グ セ ノLの分配理論
済的適用において︑ウイクセル効果吟味の重要性が存在するのである︒
賃銀︑地代︑利子の決定に関するチュlネンの所説についてつぎのように述べている︒
﹁も
し︑
ウイクセルは︑
しばらく︑資本の生産力││あるいは価値創造力ーー・の根源の問題をはなれるならば︑
それに帰属する生産物の分け前は︑その要素の限界生 上に展開した理論を資本に
容易に適用する乙とができる︒どの特定の生産要素にしろ︑
チュ
lネンのこころみたものである︒チュ!ネンによれば︑最後の労働産力によって決定される︒事実︑
これ
は︑
九