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雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

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(1)

発達における機能連関に関する研究(4)−精神遅 滞児の運動機能と身体模倣能力−

著者 田辺 正友, 田村 浩子, 桑田 真

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 35

号 1

ページ 201‑211

発行年 1986‑11‑25

その他のタイトル Study of Functional Relations with Development (4) −The Relation between Development of

Motor Functions and Ability on Imitative Expression of Other's Movement in Mentally Retarded Children−

URL http://hdl.handle.net/10105/2142

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奈良教育大学紀要 第35巻 第1号(人文・社会)昭和61年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol.35, No.1 (cult. & soc.), 1無賂

発達における機能連関に関する研究(4)

‑精神遅滞児の運動機能と身体模倣能力‑

田辺 正友・田村 浩子・桑田  真

(奈良教育大学障害児教育教室) (昭和61年4月25日受理)

問   題

精神遅滞児の運動機能に遅れあるいは障害が見られることは、多くの研究で指摘されてはいる が、各種の運動機能や運動能力の実態を把握するとともに、これらの運動機能・能力の発達にど のような要因が関与しているのかが検討され、そこから運動機能の遅れのメカニズムが究明され なければならない。なぜならば、運動機能の発達には肉体的成長や生理的成熟を必要とすること はもちろんであるが、同時に精神発達や自我の発達とも関連し合っているからである。子どもの 運動発達は、言語や社会性の発達などとのかかわりにおいて構造的には土台の部分をなすもので ある。さらに、運動発達は、個人の諸能力の発達との関連の中だけではなく生活実態との関連で

も考えられなければならない。障害をもつ子どもたちのからだにあらわれている状況はきわめて 深刻なものであり、しかもそれは、ひとりひとりの子どもがもっている障害ともかかわりながら 子どもたちをとりまく全生活に原因してあらわれてきている。

田辺(1985)は先に、精神遅滞児の各種の運動機能の発達傾向を把握し、運動機能の発達と視 知覚機能の発達との関連性について検討を試みた。そして、瞬発力・平衡性・敏捷性・巧ち性な どの運動機能は、発達の高次化に伴って伸長し、そこには視知覚機能の発達が一定の役割を果し ていることが示された。さらには、障害や神経学的所見などとの関連性の分析から、精神遅滞児 の運動機能や運動能力にはさまざまな要因が関連していることが示唆された。

ところで、子どもたちが新しい運動動作をつくりあげていく際に、他者の身体活動・運動動作 を意識的に模倣することから始めるが、この際には、まず、他者の身体および身体活動さらには その活動・動作間の関係を知覚・認知することが必要であり、それを運動動作として表現するた めには、知覚・認知したものを自己の身体上に意識的に同定し、一つの運動動作にまとめあげる

ことが要求される。単純な反復動作は巧妙にやることができるが、やや複雑な動作をとり入れる とほとんど動けないといった子どもがいる。その中には、他者の動作を「視る」ということに困 難さをもつ子どももいるが、 「模倣」しようとしないのではなく、その子どもなりに模倣しよう と努力しているのではあるが、うまく表現できない、一つの運動動作にまとめあげることができ ないという場合も多い。その様子をみていると、あたかも他者の動作の一つ一つは「祝え」てい ても、自己の身体のどの部分を、どのように動かせばよいのかがわからないようにみえることが ある。このように運動機能の発達には、他者の身体活動・動作の模倣、自己の身体像の形成や身 体をコントロールする力が深く関係していると考えられる。そこで前報告(田辺・田村・小出、

1986)では、姿勢模倣課題および動作模倣課題を設定して、小学校1年生から6年生の精神遅滞

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(3)

児の姿勢模倣および動作模倣能力の発達傾向を明らかにし、これらの能力と視知覚機能の発達お よび身体意識との関連についての検討を試みた。

そして、 1次元可逆操作期および2次元形成期では、動作模倣課題に比して姿勢模倣課題での 通過率が優位であり、また、項目(上肢、下肢、手指、上肢と手招の協応動作、上肢と下肢の協 応動作)間の難易度に差がみられたが、全体的傾向として発達年齢の上昇とともに姿勢および動 作模倣両課題での通過率が高くなり、 2次元可逆操作期以後の段階では両課題間にほとんど差は

みられず、両課題とも高い通過率を示す。そして、 3次元形成期の段階ですべての課題をほぼ達 成するに至っている。さらには、姿勢模倣・動作模倣能力と視知覚発達および身体意識との関連

についての分析から、他者の身体活動・運動動作を模倣する能力の獲得には、視知覚機能や自己 の身体像の形成の要因もまた重要な役割を果たしていることが示唆された。

本研究は、これまでの報告と同様に精神遅滞児の運動機能の遅れのメカニズムを明らかにして いく基礎資料をつみ上げるといった目的をもってなされているが、今回の報告では、前報告での 結果をふまえて、 ① 姿勢模倣・動作模倣課題を設定し、身体模倣・身体コントロール能力の発 達傾向を明らかにし、 ④ これらの能力と運動機能因子のうちの調整力を構成する瞬発力、敏捷 性、平衡性および柔軟性との関連についての検討を試みるものである。

方   法

対象児 本研究は、筆者らが参加している障害児体育教室における活動の一環としてなされた ものであるが、本稿での対象児は、課題の性質上とくに四肢に顕著な麻痔のある生徒を除いた奈 良県下の中学校障害児学級および養護学校中学部・高等部に在籍する16名である。その構成は、

Table 2中に示す通りである。なお、操作特性は、新版K式発達検査資料を主に、田中(1977, 1985)の可逆操作特性の高次化における「階層一段階」理論に依拠して決定された。

検査課題および実施,評価手続

(1)姿勢模倣・動作模倣課題 模倣課題は、 Fig.1に示すl 姿勢模倣課題19項目と Ⅱ 動 作模倣課題19項目とから成り、両課題にはそれぞれ1.立位姿勢、 2.伏臥姿勢、 3.仰臥姿勢、 4.片 足立ちの課題が含まれている。これらの全課題のプレテストが、上記体育教室の活動の中で行な われた(1985年5月〜9月)後に、本検査が実施された。課題の実施に際しては、 「模倣」する という方法に関する説明の後に、検査者が各項目の姿勢・動作を演示した。 3秒間の演示の後 に、対象児はこれを模倣再生することが求められた。第1試行で後述するA評価が得られなか った場合には、上記手続に従って第2試行が実施された。なお、これらの課題は、すべての対象 児に対して一定の順序(Fig.1中の課題No.1‑38の服)で実施された。

評価は、各項目ともA, B, C, Dの4段階で行なった。 4段階の評価基準は、 Table lに示す 通りである。なお、評価は、検査者と観察者1名との合議によって行なったが、評価に際して両 者間に大きな差異は認められなかった。

(2)運動機能検査課題 全対象児の運動機能の実態の把握にあたって、今回は調整力を構成す る瞬発力、敏捷性、平衡性および柔軟性の検査課題が実施された。実施および測定方法は前報告

(田辺、 1985)に準じて行なわれた。なお、前報告では平衡性、柔軟性の測定課題がそれぞれ閉 眼片足立ちと立位体前屈であったが、今回は開眼片足立ちと長座体前屈の課題が実施された。

(4)

体til. NQL 姿 勢 模 倣 体位 ※0. 動 作 模 倣 立

位 餐 勢

1 冒 両手をlLに伸ばしてlffl 立する′ 立

位 餐 勢

2〔) g 一 骨 No.1‑ No.2 ‑ N0.1をジャンプによって手足同時で交互に変化するO 2 ft 両手を腰に当て, 足を前後に開くノ 21 # t ‑ Na2 ‑サNa3 →Na2 をジャンプによって手矧"1時で交互に変化するr.

3 ☆ 両手をu.右に伸ばLJ. 足を左右に開くC 22 守 一 サ Na1 ‑>Na3 ‑Na1をジャンプによって手足同時で交互に変化するrj

伏 臥 餐 勢

4 鍋 四つんばい (頭部よりも腰がL になった状態) になるC 伏 臥 餐 勢

M dR ◆→ c耐 Nu4→Nn5 →N0.4 を両足同時にジャンプして交lTiに変化するつ 5 疏 四つんばいで.片足を前にと,1す 24 粛 一 項省 、 Nn5→Nu6 一‑N0.5を両足同時にジャンプして交互に変化するrJ 6 C紺 \ 四つんばいで. 足を/rIィ.‑に開く 25 鍋 ー q件 Na4 ‑>Na6 ‑ Na4を両足同時にジャンプして交.蛙に変化するぐ 7 軒 \ 、 腕tIJて姿勢 (好j部よりも腰がトにfiL′,た状態) になる0 26 恥 ■→粗 、、 Na7 サN68 ‑N0.7を両足同時にジャンプして吏f).に変化するQ 8 舞 \ 、 帆(rlて姿勢でl 片足を前に出すF 27帯 群 →宇 ミ No.8 →Na9‑‑N0 8を両肘"]時にジャンプして交.fiに変化する0

9 〜 腕立て姿勢で,足を左右に開く 28蛸 Na7 >Na9 ‑NaT‑fe両足同時にジャンプして交止に変化するG 仰

臥 姿 勢

10 軒 「 L 逆Vlqつんはい(堤が伸びずに足の榛関節が90へ以l二の状態)になる:

仰 臥 餐 勢

29 柵 NalO‑Nall‑NalOをIJij足トi】畔こジャンプして交立に変化するr) ll 帯=7 逆PLlつんはいで,足の膝関節が90C未満の状態になるコ 30 守守 一 しNnlいNal2‑Nallをm足In]時にジャンプして交互に変化する.V 12 守=̀㌔し 逆Pqつんはいで,足を左′iに開く(膝関節は900以Lの状態)rJ 31 千、 一 NalO ‑Nal2>NalOを[蝣iijjin司時にジャンプして'2<iに変化する(I 13 帯 ゝ、 逆腕立て姿勢(足が伸びて.頭l腰‑足が・iff線の状態)になる 32柵 、 N0.ー3 ‑Nal4>Nq13を,L雌間時にジャンプして交lLiに変化するrフ 14 帆 逆腕立て姿勢で,片足をFH1げろ. 3:ラ帯 声七一年≒こ Nq14 >No15、Neil4をiM足同時にジャンプLて交互に変化する0 15 育こく 二 逆腕立て姿勢でlhlをfcfiに開くl 3L1軒 輔 Nal3>Nat5>Nal3を両足同時にジャンプして交互に変化するrj 片

」 ち止

16 せ ‑ 開眼で▼片妃,r上け.1.tif‑を′1三右に開く (5秒以蝣.) 片 足 立 ち

3Fl + 〜 手を左√)Jに開いてI前方へケンケンする、 (5匝以上) 17 n . 片足を伸ばして前に上げ,両TAをi抑こ伸はす (5秒以上) 36 骨 一 食 T.を左イ)‑に開き,片足を伸ばしたl順で前後に振る.(5往復以上) 18 甘 I1,‑足を横に伸ばして上げ,∫ii.V.を./蝣・:右に開く (5秒以1二) 37甘 → 骨 手を左右に開き.片足を伸ばしたlj源で前後に振る,15往復以上)

19 皐 一 片足及び両手を前に伸ばしてかがんでいる (5秒以L) 38 軒 ー 峯 ト叶・i^'iiiM‑前に柵寸した寸∴叶.たこ*''>.'.;*十十 一輔 Fig.1姿 勢 模 倣・動 作 模 倣 課 題

IC fc B il cB Ut 4)

q濫

(5)

Tablel.身体模倣課題の評価基準

結果と考察

1 身体模倣・身体コントロールの発達傾向

全対象児の生活年齢(CA)、発達年齢(DA)および身体模倣課題、運動機能検査課題におけ る得点を、 Table 2に示した。なお、 Table 2中の身体模倣課題の姿勢および動作模倣課題にお ける得点は、前記の手続に従って評価したA、 B、C、 Dをそれぞれ3、 2、 1、 0、と得点化 して処理した。また、その通過率は各課題における得点の、それぞれの満点に対する比率である。

両課題における満点は、それぞれ57点であった。

まず、身体模倣・コントロール能力の発達傾向についての検討を試みるが、ここでは1次変換 形成期の該当者は1名であったので、 3次元可逆操作期と合わせて検討したい。全対象児の姿勢、

動作模倣課題およびそれらを合計した身体模倣課題での得点とCA、 DAとの相関係数(Peason の係数)を求めたところ、 CAとの間には有意な相関が認められなかったが、姿勢模倣、動作模 倣、身体模倣とDAとの間に有意な相関が認められた(それぞれ、 r‑.666、 r‑.815、 r‑.776)。

また、姿勢模倣および動作模倣課題における通過率とDAとの関係を図示したものが、 Fig.2 であるが、これらから明らかなように、全体的傾向としてDAが高くなるにつれて両課題にお ける通過率の上昇がみられる。姿勢模倣課題と動作模倣課題とを比較してみると、全操作特性段 階を通して姿勢模倣課題での通過率が優位であるが、とくに1次元可逆操作期および2次元形成 期では、その通過率の差が著しい。

姿勢および動作模倣課題を体位姿勢別にみると、その達成度に難易差がみられるので、課題別 体位姿勢別に分析を試みたい。各体位姿勢・DA別の通過率を示したものが、 Fig.3‑1および Fig.3‑2である。まず、 Table2およびFig.3‑1から明らかなように、姿勢模倣課題について は、 1次元可逆操作期ではすべての体位姿勢の課題で、その通過率が低く、完全に達成されたも

(6)

Table 2.対象児の身体模倣得点および運動機能検査結果

(注) 1可: 1次元可逆操作期 2形; 2次元形成期 2可: 2次元可逆操作期 3形: 3次元形成期 3可: 3次元可逆操作期1変形: 1次変換形成期 H ic H V f 4 )

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Fie.2 姿勢・動作模倣とDA

の(評価A)はなく、どの課題も評価CあるいはDでほとんど達成されていない。しかし、 2 次元形成期ではその通過率が急上昇を示し、立位・伏臥・仰臥姿勢では伏臥姿勢での1名のD 評価(この対象児は、腕立て姿勢をとることが困難であった)を除き、すべてA評価であった。

これら3姿勢での課題は、 2次元可逆操作期から3次元可逆操作期までの全対象児が評価Aで 完全に達成されている。片足立ちの課題では、 2次元形成期の段階でA評価もみられるが、個 人間の通過率に大きなバラツキがみられる。また、項目によって通過率の差が大きく、全体的に みて、 2次元形成期および2次元可逆操作期ではこの課題での通過率は低く、達成することが困 難なようである。しかし、 3次元形成期および3次元可逆操作期では若干のBあるいはC評価 の項目もみられるが、ほとんどがA評価で、この課題がほぼ達成されている。

姿勢模倣課題は、検査者の身体および身体活動を「視」て、演示された姿勢と同じ姿勢をとる ことが要求される課題であるが、この課題に対する対象児のとり組み方について分析を加えたい。

1次元可逆操作期では、検査者の身体活動を注視することが困難で、自己の体や床をみているこ とが多く、おおまかな姿勢しかとることができなかった。 2次元形成から2次元可逆の操作特性 では、このような傾向はあまりみられないものの1回の演示では課題の姿勢を完全には把握でき ず、 2試行目の鏡示が必要とされる場合が多かった。 3次元形成期以後の段階では、検査者の演 示を視てから、対象児が姿勢をとるまでの所要時間も非常に短く、素早い動作での正確な模倣が 可能であった。姿勢模倣課題は、片足立ち姿勢を除く立体・伏臥・仰臥姿勢ではおおよそ2次元

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発達における槻能連関に関する研究(4) 207

0   2   3   4   5   6   7   8   9  10

D A

Fig.3‑1姿勢模倣体位別通過率

形成期の段階でほぼ獲得されるが、片足立ち姿勢は、 2次元形成期あるいは2次元可逆操作期で も達成するものもいるが、全体的にみて3次元形成期以降の課題であると考えられる。

次に、動作模倣課題での遂行について分析を試みる(Table 2およびFig.3‑2参照)。この動 作模倣課題は、姿勢模倣課題での姿勢の連続した動作であって、姿勢模倣課題に比してより時間 的・空間的関係での認知が要求される課題である。さらに、姿勢Aから姿勢Bへジャンプを契 機に同時動作として変化することが要求され、自己の身体をコントロールすることに視点をあて れば、動的な自体のコントロールを必要とする課題である。この課題の通過率は、先にも指摘し たように全操作特性を通して姿勢模倣課題よりも低く、遂行が困難であった。この課題は、 1次 元可逆操作期では姿勢模倣課題の場合よりも困難で、すべての体位姿勢において課題が達成され ていない。そして、姿勢模倣課題の立位・伏臥・仰臥姿勢は、 2次元形成期ではぼ達成されてい たが、動作模倣課題においては、この操作特性段階では全体的にみて約50%の通過率であった。

また、体位姿勢間に通過率の差が大きくみられる。 2次元可逆操作期では若干のC評価もみら れるが、 AあるいはB評価が増加し、 3次元形成期および3次元可逆操作期に至って立位・伏 臥・仰臥姿勢では、すべての項目でAあるいはB評価となっている。動作模倣課題におけるこ れらの3姿勢の課題が不完全ながら達成されるようになるのは、 2次元可逆操作期から3次元形 成期であると考えられる。片足立ち姿勢での課題は、 1次元可逆操作期から2次元可逆操作期で は遂行が困難なようであり、 3次元形成期に至ってはぼ達成されるといった姿勢模倣課題での片

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Fig.3‑2 動作模倣体位別通過率 足立ちの場合とほぼ同様の傾向がみられた。

この動作模倣課題での対象児のとりくみ方をみていると、立位姿勢では、操作特性の高次化に ともなって減少はするが全操作特性段階において、ジャンプと同時に姿勢の変化(とくに手と足 の協応動作)ができなかったり、ジャンプ後に姿勢がくずれ、不十分な姿勢しかとれず、着地後 姿勢をとり直したりする様子がみられた。また、伏臥姿勢、仰臥姿勢での四つばい姿勢(課題 No.23‑25)および逆四つばい姿勢(課題No.29‑31)と腕立て姿勢(課題No.26‑28)およ び逆腕立て姿勢(課題No.32‑34)とを比較してみると、 1次元可逆操作期ではこの課題の遂 行は困難であるが、 2次元形成期および2次元可逆操作期では、腕立て(逆腕立て)姿勢の動作 を遂行しているつもりでも腰が上がってきて結果的には四つばい(逆四つばい)姿勢になってし まうといった傾向がみられた。この傾向は、 3次元形成期や3次元可逆操作期の対象児にも若干 みられるO伏臥姿勢や仰臥姿勢の課題は、調整力のみならず体重を支える腕力や腹筋力、背筋力 といった筋力も必要とされる課題であり、さらなる検討を要するものと考えられる。片足立ち課 題では、 1次元可逆操作期および2次元形成期では基本となる片足立ち姿勢そのものが十分に持 続できなく、課題を遂行することに困難性はみられるものの、 2次元形成期では、何とかやりこ なそうとする「がんばり」がみられるようになる。そして、 2次元可逆操作期ではその傾向が 一層明らかとなり、 3次元形成期以後は、 「〜シツヅケル」といった持続性を伴い、正確度も高 く、とり組む様子にも余裕が感じられるようになる、といった発達的変化がみられる。 3次元形

(10)

発達における機能連関に関する研究(4) 209 成期に至って、動作模倣課題の遂行にみられるように、課題の全過程を見通し各要素動作間の関 係を認知し、それを自己の体で一つの運動にまとめあげる力を、それも片足立ち課題の遂行にみ られるように、自己の体のすみずみまで意図的なコントロールを働かせる力を獲得すると考えら れる。

2 運動機能発達と身体模倣・コントロール能力との関連

まず、 Table 2中に運動機能検査5課題の個人別結果が示されているが、今回の結果の方が前 報告(田辺、 1985)に比して高い値を示している。これについては、今回の対象児のCAが高 く、また、 2年から10年の間、上記体育教室に参加しているといった実態などの要因との関連で も検討しなければならない問題であり、単純な比較はできないものと考えられる。しかし、それ ぞれの運動機能の発達傾向としては、前報告とほぼ一致した結果が得られている。なお、前回、

平衡性の指標とした閉眼片足立ちは、本研究の対象児にとって困難すぎる検査課題であって、妥 当性に欠けるのではないかとの考えから今回は開眼片足立ちをその指標として用いたが、この開 眼片足立ちと DA との問にr‑.919で1%水準で意意な相関が認められている。

全対象児の姿勢および動作模倣課題での得点と運動機能検査結果それぞれとの相関係数を求め て、まとめて示したものがTable 3である。姿勢および動作模倣得点と柔軟性を除く他の運動 機能との問に有意な相関が認められており、全体的に動作模倣得点と各種運動機能との間に高い 相関が示されている。これは、これらの運動機能と身体模倣・コントロール能力との間に一定の 関連があることを示唆するものである。この結果を前報告(田辺・田村・小出、 1986)とも合わ せて考えれば、運動機能の発達には、他者の身体活動・運動動作を認知する力や認知したものを 自己の身体上にコントロールして‑‑一つの運動にまとめあげる力もまた重要な役割を果たしている と考えられる。

Table 3.身体模倣課題とCA, DAおよび運動機能との相関係数

姿勢模倣課題 動作模倣課題 身体模倣課題

** P<.01 * P<.05 さらには、荒木(1979)の報告にもみられるように、自己の体をコントロールする力は、自我 形成の問題とも関連し合っていると考えられる。そして、運動機能の発達に関与するこれらの要

因が個々のものとしてかかわっているだけでなく、それらの要因が相互に複雑に関連し合ってお り運動機能の発達が具体的に他の諸機能とどのように相互関係をもつかについては、方法論的吟 味も加えて今後の実証的研究が必要であろう。

引 用 文 献

荒木穂積1979 幼児期における自己主張と「がまん」の構造について 現代と保育 No.4、 137‑154c

(11)

田辺正友1985 発達における機能連関に関する研究(3)一 精神遅滞児の運動機能と視知覚機能 奈良教育大 学紀要34(1)、 145‑156。

田辺正友・田村浩子・小出一朗1986 精神遅滞児の運動発達 障害者問題研究 46、 46‑55c 田中昌人1977 発達における「階層」の概念の導入について 京都大学教育学部紀要 23、 1‑13。

田中昌人1985 発達における階層間の移行について(Ⅲ)京都大学教育学部紀要 31、 32‑59=

(12)

211

A Study of Functional Relations with Development (4)

‑The Relation between Development of Motor Functions and Ability on Imitative Expression of Other's

Movement in Mentally Retarded Children‑

Masatomo TANABE, Hiroko TAMURA and Makoto KuWATA

{Department of Defectology, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 25, 1986)

Many of handicapped children have difficulties in acquiring the motor abilities, and this is one of the important problems in educational practice for handicapped children.

There are various aspects such as language, movement, emotion and socialization, which are functionally related with each other in the process of child development. Its important for us to grasp the childrens motor development in relation to various other functions.

In the previous research, we examined the motor development of mentally retarded children in relation to the development of visual perception.

In the present research, we attempted to examine the development of motor functions and ability on the imitative expression of others movement, and this attempt was made to

clarify the problems of motor development in mentally retarded children.

Tests of abilities on imitative expression of others movement and motor abilities were given to sixteen mentally retarded children, and Kyoto Child Guidance Clinic Infant Development Test was administered to each subject in order to estimate his developmental age. They ranged at development stages from the 1 dimensional operation to the linear transformation forming.

The results indicated that abilities on imitative expression of others movement ad‑

vanced with progress on developmental ages, and there was the de丘nite trend in their advances, moreover, there were signifcant correlations between development of motor func‑

tions and abilities on imitative expression of others movement.

Table 2.対象児の身体模倣得点および運動機能検査結果 性 別 (注) 1可: 1次元可逆操作期 2形; 2次元形成期 2可: 2次元可逆操作期 3形: 3次元形成期 3可: 3次元可逆操作期1変形: 1次変換形成期 油搬百故耳か藩轟秘HicH叫かVf渦一4)

参照

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