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個人カード方式単語リスト発音指導の効果に関する実証的研究

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(1)

個人 カー ド方式単語 リス ト発音指串の効果 に関す る実証的研究

静 哲 人

関東甲信越英語教育学会 研究紀要 第 9 号 抜刷

(2)

個 人 カ ー ド方 式 単 語 リス ト発 音 指 導 の 効 果 に 関 す る 実 証 的 研 究

静 哲 人 (福島工業高等専門学校 )

Abs t rac t

Thepur pos eoft hi ss t udywast ome as ur et hl ee f f i c i e nc yoft e ac hi ngpr onunc i 泳t i onby t he"I ndi v i dualCa rd Appr oac h"de v e l ope d byt heaut hor. Ⅰ twashypot he s i z e d t hat

(1) t hi sappr oac hi se f f e c t i v ei ni mpr ov i ngl e ar ne r s'pr onunc i at i on,and (2) i m‑

pr ov e me nti npr onunc i at i onf i rs toc c ur si nt hemos tf ormalt as kbe f or ei ti sc a rr i e dov e r t ol e s sf or malt as ks,and (3) t hi sappr oac he nhanc e sl ea rne r s'C onc e r nabo t utt he i r pr onunc i at i on,and (4) i tdoe snothav ea ne gat i v ee f f e c tonl e a rne rs'f l ue nc yi nf r e e s pe e c h. For t yJapane s eEFLl e ar ne r sr e c e i v e dt het r e at me ntbyt hi sappr oac hf ort wo mont hs. Ac c ur ac yr at eofs ubj e c t s'/ r/wasme as ur e dbe f or e,dur i ng,andaf t e rt he t r e at me n t . A que s t i onnai r ewasc onduc t e d t oe xpl or ec hange si n s ubj e c t s'c onc e r n abo utt he i rpr onunc i at i on. Hypot he s e s (1) and (3) we r es uppor t e d , whe r e as hypot hes e s (2) and (4) we r enotc onf i rme d. I mpl i c at i onso ft he s er e s ul t sar edi s ‑ c us s e d.

1 . は じめに

指導要領の改訂に伴い最近関心の集まっている 「 オーラル ・コミュニケーション 」の指導におい ては、メッセージの伝達が最 も大切だということで、発音の指導が話題になることは比較的少ない という印象がある。む しろエスニ ック ・マーカ」として、母語の干渉を強 く受けた発音を積極的に 支持する立場 さえある ( 東 1 9 9 4 ) 。 しか し発音が、発話の内容 とそれがいかにうま く伝わるかに 必ず影響を与え ( Be e be1 9 7 8) 、話 し手の印象を決定するひとつの要素である ( St e v i c k 1 9 7 8) とす るな らば、軽視す るのは危険である。また、筆者が今 日までに直接教室で接触 してきた延べ 2 0 0 0 人 以上の中学生、高校生、高専生、大学生を観察す る限 り、自分の発音を母語話者のそれに少 しで も 近づけたいという願望を持つ日本人学習者は、極めて多いと判断される。この現状を受け、そのよ うな願望を達成する手助けをす ることで、英語学習全般に対す る動機づけを強化すべきである、と いうのが筆者の立場である。本研究では、その目的を達成する手段のひとつとして、 「 個人カー ド 方式発音指導 」 を紹介 し、その効果を検証する。

2. 研究の背景

Shi z uk n ( 1 9 9 3) は、 日本人にとって習得が困難である音素のひとつである / r/ に焦点を しぼ って、

高校生の英語音声習得の状況とその関連要因を研究 した。 自由発話、文章音読、単語 リス ト音読 と、

タスクが変化す ることによる目標 / r/ 音出現率の変化を、被験者の学習経験の長 さおよび発音に対

(3)

する関心 との関わ りにおいて調査 し、次のような結果を得た。

(1)目標 / r/ 音の出現比率は、 自由発話 <文章音読 <単語 リス ト音読の順に高まる0 (2) 目標 / r/ 音の出現比率は、英語の学習経験の長さと有意な相関はない。

(3 )目標 / r/ 音の出現比率は、発音に対する関心の強さと相関がある。

(1)は、個人の発音は、発音に注意を払えば目標音に近づき、注意を払わなければ目標音か ら 離れることを示 していた。また 3つのタスク間の目標音出現比率には有為な相関が存在 した。そこ で、発音に注意を払いやすいタスクでの成績の向上が、より注意を払いに くいタスクでの成練に転 移するか、という点が研究課題 として残 った。

(2 )は、 EFL 学習者の発音 は、学習経験が長 くなるだけでは目標音により近づ くことはない ことを示唆 していた。被験者が学んでいた高校は、全学年で ALT との授業と LL での リスニ ング授 業を各週 1 時間実施 していた。よって被験者 は平均的な高校生よりも目標英語音を聞き、発音指導 を受ける機会は多かったと推測 される。それにも拘わ らず このような結果が出たということは、学 習者の発音を目標音に近づけるためには、従来の一斉授業内に行 っていた発音指導以外の指導法が 必要だということを意味 していた。

(3 )は Sut e r ( 1 9 7 6) の結果を追認す るものでヾ因果関係 は不明であるに しろ、発音に対す る関心を高めることが、発音を目標音に近づけることにつながる可能性を示唆 した。

以上を総合すると、発音は、それに注意を向ければ目標音に近づ く、という現象が短期的にも長 期的にも存在す るらしい、ということになる。だとすれば、学習者の音声習得を促進す るためには、

何 らかの形で従来以上に発音に注意を向けさせる方法を考えることが不可欠だと思われた。そのよ うな方法のひとつ として静 ( 1 9 9 2) が考案 したのが、 「 個人カー ド方式の発音指導 」 である。その 概要は次のようなものである。

① B6 判程度の紙に、指導項 目となる語句を 5 つ程度印刷 した ものを配布する。

②指導項 目語句の発音の方法を、授業中に説明 し、 ごく短時間練習する。

③各項目について目標音が産出できた、と教師が判定 した時点で該当棚にチェック を与える、と指示する。

④既にチェックを獲得 した項目に関 して、その後授業内、授業外を問わず、非目標 音を産出 したと教師が判定 した場合は、そのチェックを取 り消す、と指示する。

⑤期限内に獲得 したチェックの数が定期考査の素点の一部となる、と指示する。

⑥学習者は、休み時間や放課後等を利用 して、個別に教師を訪れ、チェックを獲得 するよう努力す る。

この方法には、次のような特徴がある。一斉授業の中での、単なる反復を中心 とした発音指導と 異なり、学習者全員にカー ドが配布 されるので、全員が 「 や らなければならない」という気持ちを 抱 きやすい ( 指導の個別化) 。また、各項 目のチェックの数が直接評価に反映 されるので、関心を 抱かざるを得ない ( 外的動機付け) 。 さらに、いちど獲得 したチェックを失わないために、通常の

‑1 2 ‑

(4)

授業中の発言や音読において も、発音に注意を払い続ける ( 動機付けの維持 ) 0 1項 目の判定に要 するのはわずか数秒なので、実施する時間帯に融通がきき、教師にとって も学習者にとって も取 り 組みやすい ( 実用性) 0

静 ( 1 9 9 2)は、 この方式の効果を調べ るため 、Shi z uka ( 1 9 9 3)の被験者の 1 部2 0 名に、個人 カー ド方式の発音指導を短期間行い、単語 リス ト音読、文章音読のタスクでの目標 / r/ 音の出現率 の変化を探 った。 (自由発話での変化は時間的制約により、測定できなか った。)結果は、指導前 と比較 して リス ト音読で9 3% ( 4 4 . 4%‑8 5 . 5%) 、文章音読で8 8% ( 3 6 . 6%‑6 8 . 8%) の向上が見 られ た。 しか し、 この結果を口頭発表 した際、発音を意識させ過 ぎると、発話の f l ue nc y に悪影響があ るのではないか、 という問題が提起 された。

3. 研究の目的および仮鋭

本研究の目的は、静 ( 1 9 9 2)で示唆された個人カー ド方式の発音指導の効果及び影響を、より詳 しく検証することである。次のような仮説を設定 した。

仮説 1:個人カー ド方式の発音指導は、目標音の出現率を高めるのに効果がある。

仮説 2 :目標音の出現率の上昇は、発音を意識す る程度が高いタスク ( 単語 リス ト音 読など)で もっとも顕著に見 られ、それが時間の経過と共に、発音を意識す

る程度が低いタスク (自由発話など)にも見 られるようになってゆ く 。

仮説 3 :個人カー ド方式の発音指導は、学習者の発音に対する関心を高めるo 仮説 4 :個人カー ド方式の発音指導は、発話の f l ue nc y を低めるとは言えない。

仮説 1 は、静 ( 1 9 92)の結果が示唆 した ものである。仮説 2 は 、f ormals pe e c h での目標音出現 率の向上が car e f uls pe e c h での向上につながることを示唆 した先行研究 ( Di c ke rs on 1 9 7 4)および 筆者の非公式な観察に基づ き設定 した。仮説 3は、本研究以前に本方式の発音指導を行 った際の、

学習者の様子の非公式な観察結果に基づ き設定 した。仮説 4 は、発音に対する関心は高まって も、

自由発話の際には、発音を意識する程度が低いと考え られるので、結果的には f l ue c y に影響を与え ない、と予測 した ものである。

なお、本研究で も 、Shi z uka ( 1 9 93 ) ,静 ( 1 9 9 2) と同様、英語音素のサ ンプルとしての / r/ に焦 点を絞 った。 日本人学習者にとり習得が困難な / ∫/ の習得状況 は、ある程度、英語個別音素全休の 習得状況を反映す るであろう、という判断に基づ く 。

4. 方法 4. 1 ##%

本研究の被験者 は高等専門学校 コミュニケーション情報学科 1 年生 40 名 ( 女子 23 名 ・男子1 7 名)であった。被験者の英語学習に対す る動機づけは高い。

4. 2 個人カー ド方式発音指導

(5)

個人カー ド方式の発音指導の項 目として 13 の語句を設定 し、 3 つのカー ドに分けて印刷 した.

1 3 項 目は、様々な音声環境で / r/ が練習できるように設定 したもので、前半はわたり音 としての / r / を、後半 は摩擦音 と しての / r/ を練習す るための ものである。また / r/ は低母音が後続する場合に もっとも正確 に発音 され、高母音が後続す る場合に もっとも正確 さに欠ける ( Di c ke rs on 1 9 7 4 ,

Di c ke r s onandDi c ke r s on 1 9 7 7 ) ことを考慮 し、なるべ く易か ら難に配列するよう試みた。なお この 1 3 項 目には、後に述べる測定項 目である 5 語は含まれていない。

それぞれのカー ドには、全項目チェック獲得の期限を設け、被験者の足並みが、カー ドごとに極 力そろうよう試みた。本方式の指導は、授業外の個人指導を基本とするために、どの程度の指導を 行 ったかを定量的に明 らかにするのは困難であるが、指導期間中は休み時間や放課後などに被験者 が三々五々や って くるという状況であった。筆者に時間的余裕のない時や、多 くの被験者が一度に 来たときには、指導は行わず、判定のみを行 った。時間的に可能な場合にのみ、調音方法のコーチ

ングを行 った。

4. 3 データ収集

4 . 3 .1 目標 / r / 昔の出現比率測定

Shi z uka( 1 9 9 3) で も、 3 つの異 な るタス クでの / r /音 の出現比率 を測定 したが、 その際、

c as uals pe e c h を引き出すため、完全な自由発話を用いたため 、/ r /音を用いるべ き文脈が必ず し も十分出現 しなか った。 この反省にたって、今回は 、/ r / 音を用いるべき文脈の出現回数を統制す るため、すべてのタスクにおいて 「ドレミの歌」の歌詞を、以下のような方法で利用 した。

〔 測定の対象〕歌詞に現れる、次の 5 つの音声環境の/ i ・ / 育

̲ ray 語頭で中前舌母音の前 r un 語頭で中中古母音の前

t hr e ad 語中で、無声舌歯摩擦音 と中前舌母音の間 br e ad 語中で、有声両唇破裂音 と中前舌母音の間 dr i nk 語中で、有声歯茎破裂音 と高前舌母音の間

〔 測定の状況〕タスク 1 :歌詞に関する定型的英問英答 ( 歌詞を見ず答える) Whatdoyo uc al ladr opo rgol de ns un7 ‑‑ ‑Wec al li tray.

Whatdoyo ume anby" f ar' ' 7‑‑I tme ansal ongwayt or un.

Whatdoyo ume anby" s e w"? ‑‑I t ' sane e dl epul l i ngt hr e ad.

Whatdoyo ume anby" t e a"?一 一 I t ' sadr i nkwi t hj am andbr ead.

タスク 2 :歌唱 ( 歌詞を見なが ら歌 う)

タスク 3 :単語 リス トの音読 (5 つの語をひとつずっ音読する)

3 つのタスクは、タスク 1 、 2 、 3 の順 に、 mor ef or mals t yl e を引き出すように設定 した も のである。なおタスク 1 は自由発話ではないが、タスク 2 に比べて、視覚情報を与えず、かつ質問 に対 して応答す るという点で 、l e s sf ormals t yl e を引き出すことが期待 された。

実際の測定は次のような手順で行 った。被験者をひとりずつ呼び、タスク 1 、 2 、 3 の順番で発

‑1 4‑

(6)

話を録音 した ものを、筆者が聴いて、目標 / r/ 音が出現 しているか否かを判定 した。判定の基準 は、

日本語のラ行音 p と明 らかに異なる硬口蓋半母音になっているか、 という点に絞 り、円唇の程度は 考慮に入れなかった。 この基準に照 らして目標音 と判定 した場合には 2 点、非 目標音 と判定 した場 合には0 点、中間的変種 と判定 した場合には 1 点を与えた。即ち、各タスク 1 0 点満点で、 3 タスク 合わせて 3 0 点満点での測定になった。判定 ( 採点)は 1 カ月をおいて 2 度行い、その平均値をデー タとした。 2 度の判定 ( 採点)間の相関係数は r ‑. 9 4 であったので、筆者の判定には十分信頼性が あると判断 した。

4 . 3 . 2 被験者の意識調査

仮説 3 、 4の検証のため、また、実験後の考察の補助的資料を得 るため、以下の項 目について被 験者の意識調査を実施 した。回答は 7 (まさにその通 り)‑ 1 ( 全 く当てはまらない)の、 7 ポイ ン トスケールによった。回答は無記名とし、かつ実施に際 して、 「 発音に気を配 る ( 発音を意識す る )」 ことが望 ましいとも望 ましくないとも想定 されていないことを強調 し、筆者の意図や希望を 回答者が推測 して回答に偏 りが生 じるのを防いだ。

1 「 中学時代、私は英語学習で、発音に気を配 っていたo」

2 「 今、私は普段の英語学習で発音に気を配 っている o」

3 「この 4カ月で、私は発音が上達 したと思 う o」

4 「 私は英語で話す時、発音に気を配 る ( 発音を意識する ) ○」

4 . 4 樽導と測定の時期

指導、測定、意識調査の実施期 日は 、1 9 9 4 年 5 月か ら 7 月にかけて以下の通 りである。

5 月 1 1日 第 1 回測定

5 月 1 2 日 〜6 月 6 日 個人カー ドによる指導 ( カー ド 1‑2) 6 月 7 日 第 2 回測定

6 月 8 日 〜7 月 1 9 日 個人カー ドによる指導 ( カー ド 21 ‑3)

5 結果

5.1 目標 / r/ 音の出現比率の変化

3 回の測定での、目標 / r/ 音の出現の比率の平均値および標準偏差を表 1 に示す。測定時を要因 A 、タスクを要因 B として、乱塊要因計画の分散分析を行 ったところ、主効果 A 、主効果 B ともに、

p<. 0 1レベルで有意であったが、交互作用は有意でなかった ( 表 2)

有意であ った主効果A 、圭

(7)

効果 B に関 してテ ユーキーの HSD 検定による多重比較を行 った。 まず測定時に関 しては、出現比 率 は第 1 回 <第 2 回 <第 3 回と有意 に ( p<.01) 向上 した ことが分か った。 よって仮説 1 は支持 された。 タスクに関 しては、出現比率は英問英答 と歌詞音読には有為差がな く、 この 2 つよりもリ ス ト音読 は有意 に ( p<. 01 )高か った ことが分か った。英間英答 と歌詞音読の間に有為差が見 られ なか った原因に関 しては考察で触れる。要因 A と要因 B の交互作用が有意ではなか ったので、出現 比率の向上の度合いは、タスクに拘わ らず一定 していたことになり、まず リス ト音読が向上 し、そ れが歌詞音読、 さらに英間英答‑ と及んでい くことを予測 した仮説 2 は支持 されなか った。

表 1 :目標 / r/ 音の出現百分率の平均およびその標準偏差

英間英答 歌詞音読 リス ト音読 平均

第 1回 3 9 . 0( 2 8 . 3 ) 4 0 . 7( 2 8 .1 ) 5 4 . 8( 3 2 . 6 ) 4 4 . 8( 2 5 . 9 ) 第 2回 5 8 . 5( 2 7 . 3 ) 6 3 . 7( 2 6 . 7) 8 0 . 0( 2 6 . 2 ) 6 7 . 4( 2 2 . 6) 第 3回 71 . 3( 2 3 . 5 ) 7 7 . 8( 21 . 5) 91 . 5( 1 0 .1 ) 8 0 . 2( 1 4 . 2) 平 均 5 6 . 6( 2 0 . 4) 6 0 . 9( 1 8 . 0) 7 5 . 5( 1 7 . 5 )

表 2: 2 要因 ( 測定時 Ⅹタスク)分散分析表

変 動 因 SS d ∫ M S F

被 験 者 :S

主 効 果 : A ( Ti me) 誤 差 :AxS 主 効 果 : B ( Tas k) 誤 差 :BxS 交互作用 :AxB 誤 差 :AxBxS

1 01 7 7 3 . 3 3 3 9 2 6 0 9. 5 7

7 41 6 5 . 0 0 2 3 7 0 8 2 . 5 0 4 4 . 4 8* * 6 5 0 3 5 . 0 0 7 8 8 3 3 . 7 8

2 3 5 71 . 5 7 2 1 1 7 8 5 . 8 3 3 9 . 0 2* * 2 3 5 61 . 6 7 7 8 3 0 2 . 0 7

5 7 3 . 3 3 4 1 4 3 . 3 3 0 . 4 7∩. S.

47 3 6 0 . 0 0 1 5 6 3 0 3 . 5 9 全 休 :T 3 3 6 0 4 0 . 0 0 3 5 9

‑p<. 01

5. 2 被験者の意識

被験者の意識調査の回答頻度分布を表 3 に示す。

表 3 :意識調査回答分布一覧 ( N‑4 0)

項 目 7 6 5 4 3 2 1

1 ( 中学) 1 3 8 4 9 9 6

2 ( 現在) 3 1 1 21 3 0 0 2

3 ( 上達) 5 1 2 1 5 6 2 0 0

4 ( 応答) 1 2 6 1 2 1 2 2 5

5 ( 速度) 8 1 3 1 0 6 3 0 0

‑1 6‑

(8)

項 目 1 と項 目 2 の回答分布を Wi c oxonMat c he d‑Pai r sSi gned‑RanksTe s t で検定 した結果、

Z ‑‑4 . 6 3( p<. 0 1 )であ り、中学時代よりも現在の方が、発音に対する関心が強 くな っている被 験者が有意に多いことが確認 された。 この変化が個人カー ド方式発音指導のみによって引き起 こさ れた確証はないが、主要な要因であったことは考え られ、仮説 3は少な くとも弱 く支持 されたと言 える。

項 目 3 の回答分布を、 7‑ 5 、 4 、 3 ‑ 1 にまとめてカイ 2 乗検定を行 った結果、 x

‑3 9 .8 , df ‑2 ( p<. 0 1 )であった。 この実験期間に、発音が上達 したと感 じている被験者の数が、そう感

じていない被験者の数よりも有意に多か ったということであ り、目標音の出現比率の分析結果を、

被験者の意識が裏付けるかたちになった。

項 目 4 の回答分布 を、 7‑ 5 、 4 、 3‑ 1 にまとめてカイ 2 乗検定を行 うと、 x2‑3 . 9 5 , df ‑2 で ns であった.次に項 目 5 に関 して同様にカイ 2 乗検定を行 うと、 x2‑3 5 . 5 , df ‑2 で、 p<. 01 で有意であ った。以上を総合 して、仮説 4 が支持 されたか否かは明 らかではない。

この解釈の詳細 は、次節に示す。

4 考察

個人カー ド発音指導の効果を予測 した仮説 1 は支持された .Shi z uka ( 1 9 9 3) が示 したように、

日本の EFL の環境下で通常の一斉授業を行 っているだけでは、目標 / ∫ / 音の出現比率が学習時間の 経過 とともに向上す ることはない。よって本研究の 2 カ月間で目標 / r / 音の出現比率が有意にかつ 大幅に ( 平均 7 9%) 向上 した ことは、おそ らく個人カー ド方式発音指導の結果であると考え られ、

育 ( 1 9 9 2) に続いて、改めて本方式の効果が実証 されたものと考える。 この結果は他の音素の指導 にもあてはまるであろう 。

では、個人カー ド方式発音指導の本質は何であろうか。それは、 「 個別化 」 と 「 評価への組み込 み」である。通常の一斉授業内での発音指導や音読指導の際には、目標音をうまく発音できていな い学習者が必ず存在 していると考えて良い。それ らをその場ですべて矯正することは事実上不可能 である。 2‑ 3 度繰 り返 させてなお目標音が発音できない学習者に対 しては、せいぜい自主練習の 指示を与えて終わることが多いだろう。その場合その学習者の産出す る非目標音は化石化する可能 性が高い。なぜな らば、評価 もされない技能の習得のために授業外努力することは極めて希だか ら である。 この状況を変えるには、学習者ひとりひとりを、 「 教師の要求する音が産出できるように ならないとまずい」という気持ちにすることが不可欠である。個人カー ド方式の発音指導において は、全員がカー ドを受け取 ることによって、達成すべき目標を知 り、それが評価に組み入れ られる ことを知 ることで、目標達成の意欲が高まると考え られる。

発音指導の効果が、発音を意識 しやすいタスク ( 単語 リス ト音読)には早 く現れ、発音を意識 し

に くいタスクには遅れて現れることを予測 した仮説 2 は支持 されなか った。原因 としては、本研究

の 3 つのタスクは、発音形態の違いによる発音変異を引き出すための もの としては設定に不備が

あったことが考え られる。最 も cas ual なスピーチを引き出す意図で設定 された歌詞 に関す る英問

英答が、かなり定型的な ものであったことにより、自由発話 とは言えないものになって しまい、結

(9)

果的に歌詞を見なが ら音読 した場合 と差がな くなって しまったようである。目標 / r / 音の出現百分 率において、英問英答 と歌詞音読の間に有意差が見 られなかったの も、 このことが原因であると考 え られる。注意を発音に向けた形態で習得 した調音技能が、注意を発音に向けない状況に、どのよ うに転移 してい くかという点に関 しては、タスク設定 とデータ収集の方法を工夫 して、改めて検証 する必要がある。

個人カー ド方式の発音指導が、学習者の発音‑の関心を高めることを予測 した仮説 3 は強 くでは ないが、支持 された。強 くない理由の第 1は、意識調査の結果に見 られた意識の変化が、本方式の 指導のみによって引き起 こされたという保証がないことである。第 2 は、中学時代の意識に関す る データが、調査時点での回顧的内省に基づいている点である。過去の研究では、目標音の獲得 と発 音 に関す る関心の相関が強い ことが示唆 されているが ( Pur c e l landSut e r ,1 9 8 0; Shi z uka , 1 9 93)、今回の研究では、個人カー ド方式の指導が、学習者の発音に対する関心を強める効果があ るという可能性が示唆されたと考える。個人カー ド方式の発音指導が、 自由発話の f l ue c ny に及ぼ す影響に関 しては必ず しも明らかにならなかった。個人カー ド方式の発音指導は、発音に対する一 般的な意識を高めた。そ して、発音を意識す ると f l ue nc y が落 ちる、 と感 じる被験者 は有意に多 か った。 しか し、では自由発話の際果た して発音を意識するかという点に関 しては、するという回 答 としないという回答の分布に有意な傾向は見 られなかった。以上を総合すると、落ちる場合 も落 ちない場合 もある、ということになる。 この点に関 しては、今後の研究が必要である。

5 おわ りに

静 (1 9 9 2)および本研究によって、個人カー ド方式の発音指導の、個別音素習得の うえでの効果 はある程度実証 されたと考える。 タスク別の効果の現れ方、また f l ue nc y との関わ りについてはさ らに研究が必要である 。f l ue nc y への影響に関 しては、今回のような被験者の内省の調査によるの ではな く、直接測定す ることも必要である。また、本方式の発音指導の超分節音素の指導への応用

も研究する必要がある。

参考文献

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参照

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