論文審査の結果の要旨
氏名:續 英 高
博士の専攻分野の名称:博士(歯学)
論文題名:Influence of reclining position and the bolus consistency on swallowing dynamics:
kinematic analysis using 320-row area detector computed tomography
(リクライニング姿勢と食塊の稠度が嚥下動態に与える影響: 320-ADCTを用いた運動学的 分析)
審査委員:(主 査) 教授 川 戸 貴 行
(副 査) 教授 植 田 耕一郎 教授 本 田 和 也 教授 松 村 英 雄
嚥下運動中は喉頭を完全に閉鎖することにより誤嚥と喉頭侵入を防ぐことができる。喉頭閉鎖を構 成する要素は喉頭前庭,喉頭蓋および声帯の3器官の運動である。これらの嚥下中の運動を正確に診 断することは摂食嚥下リハビリテーションの治療方針を立案するうえで重要である。臨床においてよ く用いられる嚥下評価法として嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査がある。嚥下造影検査では喉頭前庭お よび喉頭蓋の動きは評価できるが,声門閉鎖の有無を診断することはできない。一方で,嚥下内視鏡 検査では嚥下中は視野全体が消失してしまうため,喉頭前庭,喉頭蓋,声帯のいずれの動きもわから ない。近年,320列面検出器型CT(以下320-ADCT)が摂食嚥下の研究に導入され,3次元的な運動学 的分析が可能となった。320-ADCTを用いた先行研究においては,とろみのない液体を嚥下する時はと ろみ付きの液体時に比べて,声帯のみが早期に閉鎖していることが明らかになった。その後,320-ADCT 装置の改良によって撮影姿勢をリクライニング45度から60度まで調整できるようになった。そこで 本研究では,これまで検討することができなかったリクライニング姿勢と食塊の稠度が嚥下動態に及 ぼす影響について検討を行った。
被験者は健常成人14人(男性4名,女性10名,平均年齢42±19歳)とした。被験者を320-ADCT 用のリクライニング椅子に着座させ,とろみ付きバリウム溶液(以下thick, 5%w / v, 1700 mPa・s)
およびとろみなしバリウム溶液(以下thin, 5%w / v, 2 mPa・s)を45度もしくは60度リクライニ ング位で各10 mL嚥下させ320-ADCTにて撮影した。CT撮影は各試行で3.3秒間にわたって実施した。
施行数は3回とし,60度thick・60度thin・45度thinを無作為順に撮影し,各被験者に対して盲検 化した。
撮影後CT画像は,ハーフ再構成法を用いて0.1秒間隔(10画像/秒)で33段階に再構成し,多断 面再構成像(MPR)および3次元ボリュームレンダリング像(3D)を作成した。MPR画像を用いて,鼻 咽腔閉鎖,舌骨挙上,喉頭蓋反転,喉頭前庭閉鎖,声帯閉鎖,食道入口部開大,および口腔から咽頭 へ移送される食塊の先端位置についてフレーム単位で時間計測を行った。各事象の開始時間および終 了時間をこの基準時間に関連して計算し,事象の生じる順序について分析した。また食道入口部(UES)
開大面積についてもMPR画像より計測し評価を行った。
その結果,以下の結論を得た。
1. 声帯の閉鎖開始時間は,リクライニング角度によらず食塊の咽頭への流入時間の影響を受けた。
2. 声帯の早期閉鎖は,喉頭前庭の閉鎖や喉頭蓋の反転などの喉頭閉鎖を構成する他の器官とは独 立して認められた。
3. リクライニング姿勢の傾斜角度が増加すると,鼻咽腔閉鎖,喉頭蓋反転と声帯閉鎖の終了時間 の延長が認められた。
4. 嚥下中のUESの断面積は,リクライニング角度や食塊の稠度で変化しなかった。
以上のことから,リクライニング姿勢と食塊の稠度が嚥下動態に及ぼす影響が明らかになり,歯科 臨床医学とくに摂食機能療法学の発展に寄与するところが大きいものと考えられた。
よって本論文は,博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。
以 上 平成31年3月12日