平成29年3月8日
論文審査の結果の要旨
氏名:鈴 木 崇 之
博士の専攻分野の名称:博士(歯学)
論文題名:リン酸エッチングがユニバーサルアドヒーシブのエナメル質接着疲労耐久性に及ぼす影響 審査委員:(主 査) 教授 米 山 隆 之
(副 査) 教授 宮 崎 真 至 教授 佐 藤 秀 一 教授 松 村 英 雄
ユニバーサルアドヒーシブは,異なる歯面処理法を応用しても安定した歯質接着性を示すことを特徴と している。一方,このアドヒーシブは,長期接着耐久性に関しての情報が少ないのが現状である。そこで 著者は,アドヒーシブ塗布前のリン酸エッチングの有無がユニバーサルアドヒーシブのエナメル質接着耐 久性に及ぼす影響について,疲労試験を行うとともに試験後の破壊形式の判定,破断面および接合界面の SEM観察を行うことによって検討した。
ユニバーサルアドヒーシブとしては,Scotchbond Universal(SU),Prime&Bond Elect Universal Dental Adhesive(PE)およびAll-Bond Universal Light-cured Dental Adhesive(AU)の3製品を用い た。対照としてシングルステップセルフエッチングアドヒーシブのClearfil Bond SE ONE(SO)および 2ステップセルフエッチングアドヒーシブのOptiBond XTR(OX)を用いた。剪断接着強さの測定は,接 着試片に対して,万能試験機を用いて,接着強さを測定した。また,接着試験後の破断試片については,
その破壊形式を分類評価した。接着疲労耐久強さの測定は,万能試験機を用いてstaircase methodを応用 して行った。すなわち,得られた接着強さの約50~60%の値の荷重を繰り返し試片に負荷し,規定回数に 達する前に試験片が破断した場合と,破断することなく経過した場合で,段階的に荷重負荷を変動させた。
なお,本試験後の試験片についても,その破壊形式を分類評価した。さらに,疲労試験終了後の破断面と 接合界面について,通法に従ってSEMを用いて観察した。
その結果,以下の結論を得ている。
1. ユニバーサルアドヒーシブの接着強さおよび疲労強さは,トータルエッチ群でセルフエッチ群に比較 して有意に高い値を示した。
2. いずれのエッチング条件においても OX は他のアドヒーシブに比較して高い接着強さおよび疲労強さ を示したものの,ユニバーサルアドヒーシブおよびSOとの間に有意差は認められなかった。
3. 疲労試験終了後の破断面のSEM観察からは,低倍率の観察ではOXを除くいずれのアドヒーシブにお いてもセルフエッチ群およびトータルエッチ群における破断面には形態的な違いは認められなかった。
一方,高倍率ではトータルエッチ群でエナメル質の凝集破壊あるいはアドヒーシブ内での波状の亀裂 進展が観察された。
4. 接合界面のSEM観察からは,エッチング条件にかかわらず,いずれのアドヒーシブにおいてもその接 合状態は良好であり,さらにトータルエッチ群ではレジンタグが明瞭に観察された。また,製品によ ってアドヒーシブ層の厚みは異なり,PEでは2~3 µm,AUでは4~5 µm,SU,SOおよびOXでは,
7~10 µm の厚みであった。
以上のように,本研究はリン酸エッチングがユニバーサルアドヒーシブのエナメル質接着耐久性に及ぼ す影響について検討し,エナメル質に対するユニバーサルアドヒーシブの接着性について新たな知見を加 えたものであり,保存修復学ならびに関連する歯科臨床の分野に寄与するところが大きいものと考えられ た。
よって本論文は,博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。
以 上