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留学生の学習 ・ 研究環境としての大学図書館 (
2)‑ ス ペ イ ンの 大 学図 書 館 にお け る留 学 生 利 用 荊妻 一
浜 口 美 由紀
1.は じめ に
2.EUの エ ラスムス計画
3.スペ イ ンにおける留学生受 け入れ 4.スペ イ ンの大学図 書館対象 調査
4. 1 ス ペ インの大 学お よび大学図書館 の特徴 4.2 調 査 方法
4.3 調 査結果
4. 4 調 査結果の考 察
5.おわ i)に
キー ワー ド :留学 生 大学 図書館 ス ペ イン EU エ ラ スムス
1. は じめ に
留学生 の学習 ・研究活動 を支 える横関である大学図書 館利用 に 関 して、昨年 (1998)長崎 大学 に在籍 す る留 学生 を対象 に対面式 アンケー ト調査 を実施 し大 学図 書館利 用の 現状分 析 を行 った1。 日本 で学ぶ 留学 生 は 日本の教 育研 究機関 をどの ように利 用 してい るのか、特 に留 学生の利 用頻度が 高い と思 われる大学 図書館 利用状況 に関す る研究 は国 内 において は報告が 少 ない。本稿 は 昨年の研 究 テー マ を継続 し、 その第 2部 として海外 の大学 にお ける留学生 の大学図 書館 利用 に 関す る調査 を実施 し、その調 査結果 を比 較 ・考察 した もので ある。
長崎大 学全学部 に籍 を置 く留学生 の6割以上 は大学院 生 であ り、 その多 くは 理系 の工学 ・医 学 ・歯学 ・薬学 ・水 産学部 に所属 して いる。 昨年の 調査前 の予 測 に反 して、調査結 果 は留学 生か らの 現実的 な要望や提言 が反映 された内容 と
なっ た。初め て 日本 の大 学 図書 館 を利 用す るに際 して彼 らを当惑 させ るこ と、
日本 人 学生 を中心 とした 図書館利 用の中では見 えなか った点、留学生 が直面す
174
留学生の学習 ・研究環境 としての大学図書館 ( 2)
る図書館 内の 「日本語」 の壁の 問題 などが浮 き彫 りになった。 同調査 では、留 学生の視点 を通 して、 日本で の大学教 育や研究 活動 に欠 くことので きない大 学 図書館 利用の現状 と今後の 課題 を提示 することが で きた。
メデ ィア環境の進展 は 、留学生 が大学図書館 を利 用する目的にも変化 をもた らして いる。図書館 のパ ソコ ンを利用 してイン ターネ ッ トで自国の新聞や雑 誌 を閲覧 した り、 自国 の大学 や友人 、家族 とE‑mailの交 換 を行 っている。 大学 図 書館 を利用 して生活情報 を収集 し、活用 しているこ とも同調査 で明 らかになっ た。 4年前 に来 日した留学生 の場合、来 日直 後の図書 館利用 と現在 とで は資料 の検索 など利用 方法 を変 えざるを得 ないほ ど、図書館 とそれを取 り巻 く情報環 境 に大 きな変化が あった と報告 してい る。
本稿 の課題 とす るのは次 の3点で ある
。
1つは、海外の大学 にお いて大学 図 書館 を 日常的 に利用 して いる留学 生 を対象 と した図書 館サービスの現状 を知 る こと。
2点 日 は、昨年の 調査結果 と海外の大学 にお ける留学生 の大学図書館刺 用調査 結果 を比 較するこ と。
3点 目 は、昨年の調査で提 示 された課題 を海外では どの ように対応 しているか比較す る ことである。
本稿で比較対象 とするの はスペ イ ンの大学図書館であ る。筆者は‑留学生 と してス ペインの大学 に在 籍 し大学 図書館 を使 用 してい た。留学生 の立場で利用 したス ペ イン大 学図書館 と、 日本の大学図書 館の2ヶ国につい て留学生の視点 か ら比 較するこ とを試み る。 加 えて 、スペ イ ンはEU(欧州連 合)の加盟 国で ある。EUは高等教育 機関間の交換留学 プログラム 「エ ラス ムス計画」 を施行 し、 12年 が経過 した。 言い換 えれば、EU圏 内の大学 機関は留 学生受 け入れ に12年間の実 績がある と言 えよ う。 同プロ グラムの交換留学 生はスペ インに も多数 在籍 して いる。 実績 を考慮 した上でスペ インの留 学生教育 に次の2点 に ついて期待 した。 1つは 、スペ イ ンの大学 は、12年 間の留学 生受入実 績が留 学生教 育 に反映 されてい るのでは ないか。次 に大 学図書館 において 、留学生 の 利用実 績が図書館 サー ビス に反映 して いるのでは ない とい う点である0
加 えて、 ヨーロ ッパ にお ける実践 的な留学 制度の現状 が本調査 の中か ら浮か び上が って くるこ とも概観 する
。
2.EU (欧州連 合)のエラ スムス計画
1999年1月 1日に欧 州の単一 通貨ユーロが謀生 しEU (欧州連 合)の経済 統 合が実 現 された ことによって世界 市場 に新 た な歴史が 刻 まれ始 めた。教育の面
長崎大学留学生 センター紀 要 第
7号
1999年
175におい て も留学 生の交流 が積極的 に図 られて いる ヨー ロッパで は広範 囲な国々 を対象 としたエ ラスムス計 画 (ERASMUS)が知 られている。
エ ラス ムス計画 は1987年 に創 設 され 、 ヨーロ ッパ圏内 の大学間 の学生 ・教 員 の交流 を図 り、人材養 成、科学 、技術分 野の質的 な向上、 教育分 野の振興、社 会の発 展 に貢献す ることを 目的 とした教育 プログ ラムであ る2。
1987年以 降エ ラスムス制 度 を利 用 した約500,000人の学生 が留学 経験 を通 し て ヨー ロ ッパの市民権の確立 に貢 献 して きた と言 われ、将来的 にも同制 度 を利 用する学生が ヨーロ ッパ の発展 に何 らか寄与 す ることは明 らか であろう。EU
の高等 教育の中で 同制度 は確実 に影響 を与 えつつ ある。
エ ラス ムス計画 は1995年 に全EUを統 括する教 育 プログラム 「ソクラ テス計 画 (SOCRATES)」に組 み込 まれ た後 、 国 境 を越 え た ヨー ロ ッパ 統 合
(europeanisation)を目指 す高等教育 プログラムの 1部門 としてシス テム化 され、
同プロ グラムは1995年か ら1999年の期 間運用 されている。 参加規 模 は、現在24 ヶ国で その内訳 は、EU加 盟国15ヶ国 (ベルギ ー、デ ンマ ーク、 ドイツ、ギ リ シャ、スペ イ ン、 フランス、 アイル ラン ド、 イタリア、オラン ダ、 オース トリ ア、ポル トガル、 フィンラン ド、スェ‑ デ ン、 イギ リス、 ルクセ ンブルグ、E
U経 済地域 (EuropeanEconomicArea)の3ヶ国 (リヒテ ンシ ュタイ ン、 ノル ウェ ー、アイス ラン ド)、その他 にはEU新規加 盟交渉 を開 始 した 5ヶ国 を加 えた6ヶ国 (ハ ンガ リー、ルーマ ニア 、ポーラ ン ド、スロバ キア、 チェコ、 キ プロス)である。
1998/1999年の ソク ラテス プロ グラム に参 加 して いる大学 は1,600大学 、参 加学生 は200,(X氾人以上 、大学数 月の交流 は35,000人以上 に上 る。
エラスムス交 換留学は 、約1000の高 等教育機 関間で単 位互換制 皮 (European CreditTransferSystem・.ECTS)が提携 され、受入れ大学では上 限60単位 までの単
位互換 が承認 されている。現行の奨学金制 度 は、 留学生 の生活費 の負担軽 減 を 目的 と している。支給金額 はあ くまで生活費 の一部 を賄 うもの として支給 され、
支給 は現 地の物 価 に換算 した金 額が 支払 わ れて いる。1998/1999年の エ ラスム スの年間予算 は、116
億
2,500万エ キュ (ECU)3が計 上 され、 昨年 と比 べ る と18.8%の増加 を示 して いる。 留学 生奨学 金の融 資 には8
億
2,700万エ キュが あて られ てお り、EU におけ る教 育分野 の人材 育成 への取 り組み の高 さが伺 える。 (新通貨 はユーロに切 り替わ り、 1ユー ロは1999年5月現在131円)176
留学生の学習 ・研究環境 としての大学図書館 (
2) 表1 エ ラス ムス 交換留学 生 国別学生 数 1998/19994国 名 交換留 学参加大 学数 留学す る学 生 数 受け入れ留学生 数 圏内学生数ヨーロッの比率
パ
ベ ルギ ー 80 8,477 4.3% 9,175 4.6% 2.6%
デ ンマ ー ク 89 4,593 2.3% 4,687 2.4% 1.2%
ドイツ 240 32,686 16.4% 29,193 14.7% 15.5%
ギ リシ ャ 31 3,855 1.9% 4,533 2.3% 2.4%
スペ イ ン 71 25,778 12.9% 23,501 ll.8% ll.6%
フランス 316 31,707 15.9% 32,368 16.3% 15.2%
アイルランド 29 3,536 1.8% 4,432 2.2% 0.9%
イ タリ ア 93 18,134 9.1% 16,864 8.5% 12.9%
ルクセンプルグ 2 36 0.0% 45 0.0% 0.0%
オ ラン ダ 66 ll,069 5.6% ll,412 5.7% 3.5%
オース トリア 58 4,405 2.2% 4,549 2.3% 1.8%
ポ ル トガル 71 5,449 2.7% 5,116 2.6% 2.2%
フィンランド 77 7,457 3.7% 6,698 3.4% 1.6%
スエ ー デ ン 48 6,999 3.5% 7,299 3.7% 1.9%
イギ リス 190 26,193 13.2% 32,101 16.1% 13.2%
アイスランド 8 262 0.1% 319 0.2% 0.1%
リヒテンシュタイン 2
0 0
ノルウ ェー 41 2,871 1.4% 2,717 1.4% 1.3%
小計 18 1,512 193,507 97.2% 195,009 97.9% 87.9%
キ プロ ス 2 117 0.1% 64 0.0% 0.0%
チ ェコ 22 1,131 0.6% 877 0.4% 1.3%
ハ ンガ リー 36 1,107 0.6% 1.01 0.5% 0.6%
ポー ラ ン ド 49 1,614 0.8% 1.138 0.6% 6.7%
ルーマ ニア 31 1,551 0.8% 889 0.4% 2.7%
ス ロベ ニア 9 75 0.0% 114 0.1% 0.7%
小計 6 149 5.595 2,8% 4,092 2.1% 12.1%
表 1か ら、 エ ラス ム ス制 度 を採 用す る上位 5ヶ国 は、 ドイツ 、 フ ランス 、 イギ リス 、 イ タ リア、 スペ インの順 であ る こ とが 分か る。 上位 3ヶ国はEU
長崎大学留学生センター紀要 第
7号
1999年
777内にお ける経済 の影響力 とも比例 す るであろ う。 上位3ヶ国の派 遣す る交 換留 学生 数 は 同制 度の留学 生総 数の45%を 占め てお り、 参加 大学 数 も44%に達す る。EU新 規加盟交 渉が開始 されてい るキプロス 、チ ェコ、ハ ンガ リー、ポー ラン ド、 ス ロベ ニアにお ける同プ ログラム の利用比率 は全体 の約2%に とどま ってい る。
留学生 の専攻が多 い分野 は、 ビジネ ス (19%:エ ラス ムスの全留 学生数の 内)、 言語 と哲学 (15%)、工学 とテ クノロジ ー (12%)、社会学 (10%)である。
今後 もプログラム参加の動 向が注 目される ところである。
3.スペ イ ンにおける留学生受 け入れ
スペ イ ンの留学 生の受入 状況 につ いてはソク ラテス計 画の実数 が公表 され て いるに とどま り、EU諸 国 を除いた留学生の 出身国の実 数 を知 るこ とは難 しい。
スペ イ ン統計局(INE)が公 表 している統計 書 に もスペ イン国 内に おける留学 生 総数 に 関す るデー タは見あ た らない。
筆者が 留学 してい た国立 グ ラナダ大学 が毎年刊行 している「大学学 生数統計」
には、学部毎 に出身地 名 とその 出身の学 生数が掲載 され、 留学生 数 はその 中に 混在 した記述 となってい る。 よって留学生単 独の項 目は存在 しない。毎月長 崎 大 学学 務 都留 学 生課 が 公表 して い る 「長 崎大 学 外国 人留学 生 数」 (国別 の学 部 ・大 学院 ・研 究生数) に類す るデー タの リス トはグラナ ダ大学か ら知 ること はで きない。
私立 ナバ ラ大学 は大学の 公式 ホー ムペー ジ上 で留学生 に関す る データの閲 覧 がで きる。 留学生 に支給 されている奨学金の種類や出身 国別 人数 などが詳 細 に 公表 され、当大学 を留学志 望する学 生、特 にラテ ンアメ リカの学 生 に とっては 貴重 な情報捷供 となるで あろ う。 しか し、国立大 学 に関 しては留学 生 に関す る
デー タはホームペ ージ上で は公 開 され ていない。
スペ イ ン国内で留学生 に 関す る唯 一公式 なデ ー タを公 表 してい るのはエ ラス ムス計 画 だけで ある。 以上の 理 由か ら、同デー タを基 に して留学 生受 け入 れ状 況 を考 察す る。
表 1に よる と、1998/1999年 にス ペ イ ンで受 け入れ たエ ラスム ス交換留 学生 数 は23,501人で ある。同様 にスペ イン入 学生 を交換 留学生 として25,778人派 遣 して いる。 スペ イン人は留学生 の受 け入 れ人数 よ り も2,277人多 く派 遣 してい る。 エ ラスムス 参加24ヶ国 中スペ イン入学生 が 占め る割合 は5番 目に位置 し、
178
留学生の学 習 ・研究環境 と しての大学 図書館 (
2)スペ イ ンの71大 学機関が 同制度 を積 極的に活用 し学生 を派遣 してい る
。
表2か ら、受 け入 れ学生数 の多い国 はフランス、デ ンマ ーク、イタリア順で あるこ とが分 か る
。
スペ イ ン入学生 の留学先 として多 い国はフラ ンス、 イギ リ ス、イタリアである。フランス とは2ヶ国間の交 流が最 も活 発 に行 われ ている。両国で はそれぞ れスペ イ ン語 とフ ランス語 を第二外国 語 として、義務教 育期間 中に語 学教育 を行 なって いる。 そ うした影響 を受 けてか 2ヶ国間 の大学生 は文 学 ・言 語学部へ語 学留学す る傾 向が多 い。
表1,2か らは学部生 と院生の区別 は不明で ある
。
表2 スペ イン国 内の国別 エ ラスムス交換留学生 数 (上位10ヶ国)1998/99年
出 身 国 留学生 数
1 フランス 5,297 2 デ ンマ ーク 4,027 3 イタリア 3,833
4 イギ リス 3,351
5 ベルギ ー 1,207
6 オランダ 1,162 7 ポル トガル 1,158
8 スウェーデ ン 607
9 ドイツ 533
10 フィン ラン ド 494
エ ラス ムス交換 留学生 は 、派遣国 の語学試 験合格後 に派遣 されているの で一 定 レベ ルの語学 力 を納め ている と見 なされて いる。 同プロ グラムの留学生は ス ペ インでの授業 を受講す るためス ペ イン人 と同 レベル で理解で きる語学力 が必 須 とな る。留学生 もスペ イン人 と同一 条件で授業 を受 け、レポー トが課せ られ、
当然学 期末 には学科試験 を受 けな ければな らない。単位互 換制度が 施行 され て いるの で、留学生 がスペ イ ンで付与 された単 位 は本国の 大学の単位 に加算 され る
。
スペイ ン語 は、同 じくラテン語 か ら派生 したフラ ンス語、イタリ ア語 、ポル トガル語、ルーマ ニア語 の イタリック語派 に属 している。 この言 語背景 を持つ 国 (アフリカのフランス語圏 も含め)の留学 生 は均質な言語の特 質が発揮 され、
比較的 速 くスペ イ ン語 を修 得 している。
長崎大学留学生 センター紀要 第
7号
1999年
779 4.スペ イ ンの大学図 雷館対象 調査4. 1 スペインの大 学および 大学国雷溝 の特徴
本調査 を実施す るにあた り、調査対 象 とした のは留学 生ではな く、スペ イ ン の大 学図書 館で ある。 大学 図書館 は大 学施設 の中で留学 生 の利 用頻度 が高 く、
学部や 出身国の違 いに関わ らず留学生 との 日常的 な接点が ある。
スペ イ ンの大学 は、社会的 背景や大 学創立の歴史が 日本 とは異 な っている点 が多 く、 一様 に比較がで きない。そのためスペイ ンの大学 と大学図書館の特徴
を簡潔 に補足す る。
スペ イ ンの国立 大学の多 くは数世 紀 に渡 る古 い歴史が ある。 その中 で最 も歴 史のあ る大学 は1255年 に創 立 されたサ ラマ ンカ大学で ある。 ローマ教皇か らボ ローニ ヤー、パ リに次いで3番 目に認可 された大学 である。
スペ イ ンは地域 性が強い 国であ り、加 えて大学 にお いては伝 統 と大学 自治の 意識が 高 く、その点 では昨今の 開かれた大学 とはまだ距難があ る。
当然 なが ら大学 に附属す る大学図書館の歴史 も長 く、歴史的 な価値が 認め ら れる写 本や インキュナブ ラなどの資料が多数 蓄積 され ている。 これ らの貴重資 料 を収集す る 「公文 書館」(Archiyo)は大 学図書館 内に併 設 され、また は単独 の 「公文書館」が大学 内に設置 されてい る。 図書館 は資料の保存 とそ の継承 を 重点 的 に行 って きたた め、図書 館利用 サー ビスは図書館 の課 罵 とな ってい た。
大学図書館 は中央図書館に加 えて多数の学部 ・学科図書館から構成 されている。
EU圏 内の留学 生 は、既述の通 り文系 に分類 される言語 ・哲学 ・経 済 などの 学部 や学科 に多 く所属 していろ 。 スペ インにおい て も同様 の傾 向が 見 られ る。
その点 において留学生が 大学図書 館の資料 を利用する頻度が高 くなることが容 易 に想 像がつ く。
一般 にスペ インの大学図 書館 は日本 と比べて資料の貸 出冊数が 少な く、雑誌 の貸出 をしない等 の若干の 利用制限が あるC
スペ イ ンの大学数 は、国立大 学
44
校、 私立大 学6
校であ る。グラナ ダ大学 中央 図書館
スペ イ ンの大学 図書館の 一例 として、筆者が 利用 した グラナダ大学 中央 図書 館 を説 明する。当大学 の図書館 システム は中央図書 館、公文書 館、21の学部 ・ 学科 図書館か ら構成 され る。 学科付 設の小規 模図書室 も同大学 の図書館数 に数
え られ ている。対象 となる利用者 は大学 に登録 してい る学生、教職員 、卒業生 、
180
留学生の学習 ・研究環境 と しての大学 図書館 (
2)一般、他の大 学図書館で ある。
学生は 中央図書 館及び利 用 を希望 する学部図書館 に出 向 き、各館毎 に自ら登 録手続 きを申請 しなけ らばならな い。 申請者 は図書館 利用 カー ドに添付 す る証 明写真 を持参後 、申請料 を図書館 に支払 う。 カー ドが交付 されるのは 1週 間か ら10日後で ある。 日本の場合、入学後 に交付 される学生 証 は図書館 利用 カー ド として兼用で使用 されるケ ースが多 く、手続 きは無料であ る。
資料の貸出は、学生 は3冊 まで 1週 間、卒業生 と教月は 7冊 まで30日間借 り ることがで きる。 貸出期 間中、図書館 は学生の 図書館利 用 カー ドを保管 し、返 却 と同時に学生 へ戻す システムに なっている。 夏休み期間は図書館 は約 1ケ月 間閉館 となる。
新年度 の9月か ら10月には 図書館 に関 するガイ ダンス、オ リエ ンテーシ ョン、
説明会 な どは実 施 されなかった。 入学時 には学生 用小冊子 「キャンパス ライ フ ガイ ド」が配布 される。 掲載内容 はグラナダ大学 や市内の生活 に関す る情報で ある。 同誌が 紹介す る大学図書 館案内には、 図書館 の所在地 と開館時 間の情報 が掲載 されてい るだけで ある。 同誌の配布 は不 定期 に行 われるた め入手が難 し
い 。
大学図書鍔 の利 用 に際 しては、 図書館 全体の情 報、 例 えば大学図書 館サー ビ スの内容、各学部 図書館が 所蔵する資料の種 類 などを知 る手段が な く、 効率良 くB]書 館 を利用 で きるまでに時間 を無駄 に費 やす ことになる。 利用者 は図書館 に慣れ るまで頻 繁 に図書 館職月 に尋ねる結果 となる。 留学生 への対応 も一般学 生 と同様であ り、特別 に図書館案 内が催 されることはな く、スペイ ン語 また は その他 の言語で書かれた 図書館パ ンフレッ トは存在 しなかった。 大学院 に所属 してい る留学生 は、 自国の大学図書 館 システ ムに慣れ ている為 に、当初 グ ラナ ダ大学 図書館 システムの違いにと まどい利用 に慣 れる までの時 間を無為 に して
しまう傾向が見 られた。
しか し、現在 は グラナダ大学のホ ームペー ジ上で中央 図書館 を 中心 とした図 書館案 内 と図書 館サー ビスの詳細 が公開 され てお り、 英語バ ージ ョンへ切 り換 え もで きる。 また図書館への 質問 ・意 見 を受 け付けるメー ルア ドレス も公表 さ れてい る。加 えて 図書館案 内パ ンフ レッ トも館内で配布 されてい る。 この数 年 の間に図書館サ ービスは 、利用者 の利便性 を考慮 したサービスの改善が行 われ て きて お り、留学生 も使い易い サー ビス環境が整備 されて きて いる。
長崎 大学留学 生 セン ター紀 要 第
7号
1999年
181 4. 2調 査方法
スペ イ ンの
43大学 の大 学図書館、 主 に中 央図書館 を調査対 象 とした
。大学 が公 開 して いる大学公 式 ホー ムペ ー ジ上 の図書 館電子 メー ルア ドレス ま たは、
利用 サ ー ビス担 当職月 の メールア ドレス ( 公 開 されている ア ドレス )宛 に本 調 査 の趣 旨 と添付 したア ンケー ト調 査 票 を直接 送信 して協 力 を求 めた。大部分 の 大学 中央 図書館 は専用 メ ールア ドレス を公 開 していた が、 メール ア ドレス が な い場合 には、当該大 学 の情報 サー ビス 部や学部 図書館 の メ ールア ドレス宛 に送 信 を行 った。 しか し、担 当が 異 なる部 署 に送付 して しま った時 には 、該 当す る 部署 の メールア ドレスが 表示 され メールが返 送 された ので、再度該 当部署‑ ア
ンケー ト調査 票 を送信 した。
ア ンケ ー ト調査 票 は
10項 目の質 問項 目を設 定 して 自 由記述方 式 とした
。調 査 票 の 言語 はスペ イ ン語 を使用 した。
4.3 調査結果
43
大 学 にア ンケー ト調 査 を依頼 して回答 を得 たのは
6大学
7図書館 であ っ た。以下 は 回答 を得 た大学名 である
。ナバ ラ大学 は回答 中唯一 の私立大 学であ り、その他 は国立大 学である
。スペ イ ンの私立 大学 は
6大学 しか 設置 されて い ない。私立大 学 は国立 大学 と比 較す る と非常 に学費 が高 く、入学希 望者 はか な り限定 され る、一方大 学施設 な どの教育 環境 は整 備 されてい る
.その点 におい て ナバ ラ大 学や その 大学 図書 館 は 国立 大学 とは 条件 的 に異 な るか もしれ な い が、本調査 ではその 違 いは明 確 に現 れ てい な い 。 本調査 で は中央 図書館 を対象 としていた が、エス トレマ ドゥーラ大学 か らは 中央図 書館 と看護 ・商学 学科 図 書館 の
2館 か ら回答があ った。 しか し、中央 図 書館 は全 学 の情報 を競合 して回 答 して いたため 中央館 の回答 を採用 した。
回答が あ った
6大 学図書館
・エス トレマ ドゥ‑ ラ大学
(Extremadura)・カルロ ス
3世大学
(CarlosⅢ )
・バ レン シア大学
(Valencia)・コル ドバ大学
(Cbrdoba)・オ ビエ ド大学
(Oviedo)・ナバ ラ大学
(Navam :私立 大学)
182
留学生の学習 ・研究環境 と しての大学図書館 (
2)大学 の 学生 数 に対 して留 学 生 の割 合 は
1%前 後 で あ る。
表
3回答 大 学 に 関す る情 報
大 学 名 教授 数 学 生数
理系 文系留学 生
エラスムス中
央学 部 学部 学部 総 数
交換留牡図書館 図書館
エ ス トレマ ド ゥ‑ ラ大学
1,308 23,352 8 10 111 1(X)あ り
2館
16オ ビエ ド大 学
2,025 43,189 15 ll 486 294あ り
21カル ロス Ⅲ 世
大 学
1,531 17,870 1 2 268な し
3バ レ ン シ ア
大 学
2,990 64,552 6 13 560な し
3コル ドバ大 学
1,112 22,070 7 4 (1293907) 2(19397)0あ り
ll以 下、 調査 項 目に沿 って
6大学 の 回答 を列記 してい く
。(1
)留 学生 の出身国
回答 が あ った大 学 の留 学 生 の大半 はエ ラス ム ス交換留 学生 であ るので 、 出身 国 はほ ほ
EUの 国 々で あ る。特 に ドイツ、 フラ ンス、 オラ ン ダ、 イギ リス 、 イ
タ リア か らの留 学 生 が多 く記載 され て い る
。一方 、 ナバ ラ大 学 で は エ ラス ム ス交換 留 学生総 数 よ りもそれ 以外 の留 学 生が 多 い
。エ ラス ムス を除 いた留学 生 の 中で 最 も多 いの は、 ラテ ン ア メ リカ 出身の 留 学生 で あ る
。ナバ ラ大学 は、 ラテ ン ア メ リカ の大学生 で ジ ャー ナ リス ト志 望 者 を対 象 とした 奨 学金制 度 を独 自 に設定 して お り、 ラテ ン ア メ リカ か らの留 学 生 が
339人 と最 も多 い。 ナバ ラ大学 で は 他 に ア ジアか らの留 学生 は
84人、 ア フ
リカか らの留 学生 は
42人報 告 され ている 。
エ ス トレマ ドゥ‑ ラ大学 にはエ ラ スムス以外 に ラテ ン ア メ リカ 出身の留 学 生
が 「大学交 換 制度 」 を利用 して 同校 に在 籍 して い る
。長 崎 大学 留学 生 セン ター紀 要 第
7号
1999年
183 (2) 留学生 の所属学部留学生 が所属す る主 な学 部 は、哲学 、経済、法律 、社会法 律学、 神 学、文献 学 であ る。 これ らの学部 は いわゆる文系学部 に分類 され る。 エ ラス ムス交換 留 学生が 多 い学部 は 文系学部 と前述 した が、回答大 学で も同様 の傾 向が 見 られる。
ナバ ラ大学が5大学 と異 なるのは、神 学部 に所属す る神学生 の留学生 が多数在 籍す る こ とであ る。 理系学 部 に所属 す る留学 生数が多 いの はオ ビェ ド大学 の医 学部 で あ った。
(3) 図書館 利用 に関す る質問
a.図書館 利用登録 申請 に必要 な条件
大学 図 書館利用 者 の基本 要件 は次 の2点 であ る。 当該大 学 に在籍 して いるこ と、留学生 とスペ イ ン入学生 は同一条 件 で利用 申請 を行 う こ とで ある d6大学 すべ て に共 通す る要 件 であった。
b.留学生 を対象 とした図書館 利用案 内 (ガイダ ンス)の実施 6大学 図書館すべ て行 って いない 。
C .留学生 用 の図書館 案 内 (パ ンフ レッ ト等) の作成
オ ビエ ド大学 は スペ イン語 と英語 の2ケ国語 のパ ンフ レッ トを作成 し ている。 コル ドバ大学 は スペ イ ン語の案 内 が配布 され ているが 、大学図 書館利 用者 一般 を対象 と した案 内 と思 われ る。 ナバ ラ大学 では 図書館 の 蔵書検 索用端末画 面 は英語 バ ー ジ ョンの選択がで きる。
4大学 は 作成 してい な
い。
d.図書館 内の案 内表 示 につい て
6大学 は館 内の 案 内表示 をスペ イ ン語で行 っ てい る。 スペ イ ン語以外 の言語 は館 内表示 やサ イン表示 には使 用 されてい ない。
(4) 大学 図 書館月 に関 す る質問
a.留学生 専用 コーナ ーの設置 と担 当職月 の有無
6大学 はい ず れ も留学生 専用 コーナ ー を設 置 してお らず 、当然 なが ら 担 当職 月 も配置 されていな い。
b.利用者 担 当の図書 館職員 は外 国語 を話 すか
バ レン シア大学 で は利用者 担 当の職員 は英語 を話 す こ とが で きる 。
184
留学生の学習 ・研究環境 と しての大学図書館 (
2)(5
)図書館 の資料a.留学生 用資料 コー ナーを設 置 している か
長 崎大 学附属図 書館 内に は留 学生 コー ナーが設 置 されて お り、 日本 を紹介 する英文 資料 や 日本語 学習 用テ キス ト、 長 崎関連の 情報 誌 な ど を輸 え てい る。同様 にスペ インの大 学図書館 内 に も留 学生 用資 料 コ ー ナ ーが 設け られ てい るか確認 す る設問 であ った が、 6大学 いず れ も設 置 され ていなかっ た。
b.留学生 用の資料購 入費の計 上
6大学 すべ て留学 生用の資 料購入費予 算 は配分 されていない0
(6) インターネッ ト
a.図書館 内で留学生 が利用で きるコンピュータは何 台設置 しているか 長 崎大 学図書館 の場 合、 一般学 生用 とは区別 して留学 生 コーナ ーに 隣接 して彼 らの利便性 を考 慮 し留 学 生専 用 端末 を6台 設 置 して い る。
同 じ趣 旨で この設 問を設定 した。
5大学 は、 図書館 利用 者の コン ピュ ー タ利用 は自由で あ り、利 用者 の制限 は ない。所 有台 数 には格 差が あ り、ナバ ラ大 学が 少 な く12台 、 最 も多いの はコ ル ドバ 大学 で500台で あった。 これ は学部 図書 館 を含 め
た大学 図書 館内 の総 数 と思 わ れる
。
1大学 図書 館の みが 、利 用者 用 コ ンピュ ータを設置 していな い。b.コンピ ューターの使用時の手続 き
特 別 な手続 きは ない が、 ナバ ラ大学 は学 生証 が必 要 とあ り、利 用時 には学生証 の提 示 を求 めるの であろ う。 エス トレマ ドゥ‑ラ大学 は 図書 館利用 カー ドを必 要 として いる。
C.留学生 のE‑mailア ドレスの取得
4大学 はメール ア ドレス の取 得が 可能 であ り、 1大学 が取 得で きな い。エス トレマ ドゥ‑ラ大学で はメ ールア ドレス の申請 は大 学の情 報 セ
ンター で 申請手続 きを行 う。
d.図書館 内の留学生 のインターネ ッ ト利 用法
ナバ ラ大学 か ら、留 学生 はイ ンターネ ッ ト上で 出身 国の 新聞 を閲 覧 した り、E‑mailを利 用 してメ ールの交換 を行 ってい る と報告が あっ た。 エ ス トレマ ドゥ‑ラ大学 では イン ター ネ ッ トの 利用状況 に 関す る記 録
長 崎大学留学 生 センター紀 要 第
7号
1999年
185は取 っ てい ない と記 され てい た。 残 念 な が ら留学 生 の イ ン ター ネ ッ ト 利用状 況 に関 して の記述 は ナバ ラ大学 1校 であ っ た。
以下 (7) (8) (9) は留 学生 の図 書館 利用 と直 接 に は関 係 しない が 、 広 義 に留 学生 の図書 館利用 を含 んだ設問 である。
(7) 外 国語 資料 の所蔵
図書 館 で 所蔵 す る外 国 語資 料 は どの 言語 の資 料 が 多 く収集 さて い る か を 問 う た設 問 であ る。 6大学 に共通 して 収 集 して い る外 国 語 資料 の 多 くは 英語 、 フラ ンス 語 、 ドイ ツ語、 イ タ リア 語 の 4ケ 国語 の資 料 で あ る 。次 に多 い のは ポ ル トガル 語資料 で あ っ た。エス トレマ ドゥ‑ ラ大学 で は外 国 語資料 はス ペ イ
ン語資 料 と区別 す る ことな く収集 して い る。
(8) 外 国語 雑誌 の タイ トル数
オ ビエ ド大 学 は3,500タイ トル、バ レ ンシア大学 は3,809タイ トルの 外 国語 雑 誌 を所蔵 してい る。 ナバ ラ大 学 は5,000タイ トル を所蔵 して お り、雑誌 の主 な
ジ ャン ルは科学分 野 と調査 研究 を主題 とす る もの であ る。
(9) 外 国語 新 聞数
カル ロス Ⅲ世 大学 は5タイ トル 、ナバ ラ大 学 は20タイ トル の外 国語 新 聞 を 所蔵 してい る。 4大学 は記載が ない 。
(10)意見
a.留学生 を対象 とした大学 図 書館 におけ る利用者 サ ー ビス に 関 して
ナバ ラ大学 は、「一般 の利用 者 と等 し く対応 す べ きで 、留学 生 を対 象 と した 図書 館 サ ー ビス は必 要 で は ない 。 しか し、 図 書館 は留 学生 に対 して利 用方 法 の 説明 や彼 らを支 え る こ とが 必 要 であ る。 ま た留 学生 の 多 い国 に関 す る資料 (新 開や イ ン ター ネ ッ ト) を 図書 館 で 揃 え 、情 報 提供 す る ことは図 書館 の課 題 であ ろ う」と述べ てい る。
エ ス トレマ ドゥ‑ ラ大 学 は、 「大 学 図 書館 はス ペ イ ン入 学生 と同様 に 図 書館 利用 者 と して のサ ー ビス を行 うべ きであ る 。 しか し、留 学生 が 図 書館 利用 に支 障が ない よう に特 に言 葉 に 関 して援 助 して い く必 要 が
186
留学生の学習 ・研究環境 としての大学図書館 (
2)ある」 と記述 している。
b.他 の大 学図書館 と留学生 対象の図 書館サー ビスに関 して協力 を行 ってい るか
6大学 すべ て、 他 の大 学図書館 との協力 を行 って いない と回答があ っ たこ
4. 4 調 査結果の考 察
回答 は6大学7大学図書 館か ら得 られた。 スペ イ ンにおけ る留学生 の大学 図 書館利 用状況 を知 る実数 として少 なか った こ とは残念 であった。 しか し、6大 学 と言 え ども現 状 を知 る上で貴重 な回答であ った ことは確 かで ある。 本調査 の 回答 の 中で期待 していた のは、スペ イ ン国内で スペ イン語 と併用 して使用 され ている3言語 圏 の大学図 書館か らの回答であ った。 ガ リシ ア語 、バ ス ク語、 カ タル一 二 ヤ語 は3つの 自治州がス ペ イン語 と共 に公用 語 として使用す る言 語 で あ る。 この地 域 の大学 図書館 の対留学生 サー ビスは他 の 自治 州 と異 な るのか興 味 のあ る ところで あ ったが 、回答が 得 られなか った。
本調 査 は電 子 メ ールを利用 して実 施 した点 は有 効であ った と思 う。 それ は 、 調査 の 趣 旨を直 接担 当者 へ説明 した り、担 当者 か らの質 問に対す る返答 を瞬時
に送信 す るこ とがで きた。 電子 メ ールを活 用 した調 査方法の メリッ トは、回答 の レス ポ ンス及 び返送時 間が短縮 される点、 時差 に関係 な く海外 との情報交換 を可能 にす る点 、 アンケ ー ト協力者 の返送手 段 の負担 Sを軽減 す る点であ った。
当調査 対象 の留 学生の出 身国に
EU
圏内の国 が多い理 由は、 エ ラス ムス交換 留学生 が多数 を 占めてお り、その上 エ ラスム スの公式 なデ‑ タが公表 され てい るか らである。 同 じス ペ イン語 圏である ラテ ンア メリカ諸国 か らの留 学生 は少 ない 。今 回の 調査結果 には顕 れ ていないが、 スペ イ ンの大学 に在籍す るモ ロ ッ コ人留学生 は相 当数 に上 る6。 しか しなが ら、国立 大学 は 国別 留学生 総数 を公 表 して いないた めに、スペ イ ンの留学 生総数 に 占めるエ ラスムス留 学生の比 率 は明確 には分 か らない。長崎大 学の留学 生 と6大 学の留学 生の最 も異 なる点 は 、双方の専攻分野 が重 な らな い ことで ある。長崎大 学 は既述 の通 り半 数以上理 系の学部 に所属 して い るが 、スペ イ ンの留学 生 は哲学、 文学、法律 な ど文系の 学部 に多 数所属 してい る。 一般 に文系 と理 系の学生 では図書 館の利用方 法 に違 い がある。文系の 学生 は図書 館 の資料 (公文書 館 も含 む ) を使 っ て研究す る割合が 理系 の学 生 よ り大
長崎 大学 留 学 生 セン ター紀 要 第
7号
1999年
]87き
い 。スペ イ ンの場合 文系学部 の留学生 が多 い上 に 図書館 の 貸 出冊 数 が少 ない ので、館 内で 図書館資料 を閲覧 して図書館 を利用す る学 生が多 い
。6
大学 すべ て、留学生 向 けの図 書館案 内 パ ンフ レ ッ トや ガイ ダンス 、館 内で のスペ イ ン語以 外 の言語 に よる表 示 は行 って い ない。
2大学 で はスペ イン語 の 案 内パ ンフ レッ トが作 成 されてい る
。新年度 に図書館 ガ イダ ンス を実施 してい
るか不 明である が、 これは スペ イン入学生 を対象 としたガイダンス も実施 され てい るか不 確定 である ので留 学生 に限 っ て行 わ れてい ない とは断 定 で き ない。
この点 において も、留学生 とスペ イン入学生 を区別す る こ とな く 「 学生利 用者
」として、 図書館 は留学生 へ の特別 な働 きかけ ( ガイダ ンスや説 明会 な ど)は実施 してい ない ようであ る
。長崎大 学 附属図 書館 は昨年
(1998)か ら日本語研修 コー ス受講 生 を対象 とした英 語 に よる 図書館案 内 ガイダンス を開始 した。留学生 を 閲覧室、書架、留学生 コーナー、 コンピュー タルームへ と案 内 し、その場所 で説 明 と利用 の仕方及び入館方法 について英語で説 明する初め ての取 り組みであ った。
図書館 資料 に関 して、長崎大 学 は 「留学生 コーナー」 を設置 している が 、
6大学 で は特別 な コーナー や担 当の 係 りは設 け られてお らず 、予算 も計上 され て いない。 図書館 所蔵 の外 国語資料 や外 国語 雑誌 は、学部 ・学科 に関 連す る主 題 の資料 が収集 され てお り、当然 な が ら留学生 専用 の コ レクシ ョンで はない
。外 国語 新 聞の所 蔵 タイ トル数 は
2大学 か らの 回答であ ったので 平均 的 な所 蔵 タイ トル数 は不 明 で ある。
筆者が 在籍 して いた当時 は インター ネ ッ トが 世界的 に 普及 し始 め た時期 で あ ったが、大学 図 書館 内 には 蔵書検索 剛 二使用 される端末が 2 台 あ る だけだ った。
大学 は学生 にメ ールア ドレスは配 布 してお らず、 教職員 のみが取 得 で きた。 当 時 、 教 職員 の名 刺 に メー ルア ドレス を印刷 す る 習慣 は ま だ一 般 的 で は なか っ
た。現 在
4大学 は、 スペ イ ン入学生 お よび留 学生 は個 人の メー ル ア ドレス の取得 が可能 であ る
。図書館 のパ ソコ ンを使用 す る場合 は図書館利 用 カー ドや学生証 を提 示 す る こ と になって いる
。留学生 のパ ソコ ンや イン ター ネ ッ ト利用状況 に 関 して は まだ充分 な報告が な
い 。この数 年 の間 に飛躍 的 に普 及 して きたホーム ペ ージで あるが
、1997年 の前 半 にスペ イ ンの大 学 の情報 を インター ネ ッ トで 検索 した 時 は、 ホーム ペ ー ジを 開 設 して いた大学 は僅 かで あ った
。本調査 にあた り再度スペ イ ンの大 学 を検索す
る と
9割以上 の 大学が ホ ームペ ー ジを開設 してお り、大学 自 ら情報 を発信 して
188 留学生の学習 ・研究環境としての大学図書館 (
2)
いる
。
ホームページは全 て英語 バージ ョンで閲覧で き、大学 に よっては フラン ス語 や カタル‑ ニヤ語 、バス ク語バ ージ ョンを選択で きる ように なって いる。英語 、 フランス語バー ジ ョンの設定 は留 学生の図書 館利用 を便利 に している上 に、 海外か らのアクセス も可 能である。 但 し、ホーム ページ上 の情報 は、図書 館利用 に際 して必要最低 限の情報 が掲載 され ているものか ら、 当該大 学図書館 の歴史 や各サー ビス にわ たる詳細 な説明文 とイラス トや写真 を取 り入れて 図説 してい る もの まで、掲載内 容の情報 の量 は格 段 の差が ある。 電子 メ デ ィアの発 展 に伴 うインターネ ッ トの普及 とホームペー ジの開設 は、留学生 に映像 と文字 による簡易 な図 書館案内 をもた らす波及効果 を生みだ した。更 に画 面上では ス ペ イン語 に加 え て、英語 またはフラ ンス語の選択肢が 用意 されて お り、 言語の 切 り換 えによっ て留学生 に図書館 の基本的な情報 とそ の利用方 法 をより分 か り 易 く伝 えている。
5.おわ りに
日本の大学、特 に国立大 学 に在籍 して いる留学 生は主 に理工 系や 医学 ・歯 学 ・薬 学 ・農学 ・水産学 系の大学 院で研究活 動 を行 っ ている。 留学生 が高い頻 度で利 用する大 学図書館 には、学習 ・研究 に欠 かせ ない資料が揃 い、最新の機 器や コ ンピュー タが設置 され、専門領 域の情報 収集や情 報検索 、デー タベース が利用 で きる環 境が整 え られてい る。 専攻学 部や分野 によ り資 料の利用 法や情 報収集 方法 に特徴 が見 られ る とはいえ、大学図 書館は必要 な教育施 設である。
留学生 は、 日本語 予備教育 を終了後 に、あるい は 日本語 の習得 を継続 しなが ら、並行 して大学院 で研究活 動 を行 っている。 しか しなが ら、 非漢字 圏出身の 留学生 は、図書館 利用 にお いて漢字 の間葛が 立 ちはだか っている
。
例 えば、漢 字表記 の館内の案内や端 末のマニ ュアルが 日本語 しか ない場合 など、図書館 利 用 を簿 拝 して しま う場面が 報告 されて いる。一方 、均質 な母語 を持 つ ヨー ロッパ の留 学生の大学図 書館利 用 と比較 して、
非漢字 圏の 日本 の留学生 が大学図書館 を利用 す る時 に生 じる間葛 は 「言葉 」 だ けに起 因す るの であろうか。 この課 題 を考察 す る比較 対象 として、今 回の調査 は設問 設定 につ いて より熟慮する必 要があった。 加 えて 回答数が 少 ないこ とに 拠 り、スペイ ンの大学 図書館利 用状況の全般的な把 鐘が難 しい。今後の課蔦 と する と ころである