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雑誌名 北海道医療大学歯学雑誌

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Academic year: 2021

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北海道医療大学学術リポジトリ

薬物性歯肉増殖症におけるTGF‑βの関与

著者 蓑輪 映里佳, 谷村 明彦, 齊藤 正人

雑誌名 北海道医療大学歯学雑誌

巻 37

号 1

ページ 55

発行年 2018‑06‑30

URL http://id.nii.ac.jp/1145/00064613/

(2)

[最近のトピックス]

薬物性歯肉増殖症におけるTGF­βの関与

蓑輪映里佳,谷村 明彦,齊藤 正人

)北海道医療大学歯学部口腔構造・機能発育学系小児歯科学分野

)北海道医療大学歯学部口腔生物学系薬理学分野

抗てんかん薬であるフェニトイン(PHT)服用者の約

%,高血圧治療薬のニフェジピン(NP)服用者の約

− %に歯肉増殖症を起こすことが知られている.こ れは薬物性歯肉増殖症(Drug−induced gingival enlarge-

ment:DIGE)と呼ばれ,I型コラーゲンを中心とした細

胞外マトリクス(ECM)の沈着が主体であり,歯肉線 維芽細胞(HGF)の増殖や,コラーゲン代謝の不均衡な どの要因が複合して生じるものと考えられている.しか しながら,未だその原因の特定は明らかにされていな い.

最近の研究で,DIGEに炎症性サイトカインのひとつ であるTransforming growth factor(TGF)−βが関与する ことが報告されている.TGF−βは,上皮細胞をはじめと して,多くの細胞の増殖を抑制する一方,組織の線維化 を促進する因子としても知られている.TGF−βは,

TypeⅠとTypeⅡの

種類の受容体に結合してシグナル

伝達された後,受容体の下流でSMADと呼ばれるシグナ ル分子を活性化する.活性化されたSMAD とSMAD は,SMAD と結合してリン酸化され,複合体となって 核内へ移行し,種々の標的遺伝子の転写を調整する

(Heldinら, ).

Kimらは,健常者から採取した歯肉片をPHTやNP存在

下で 週間培養するex vivo培養系を確立し,フィブロ ネクチン,コラーゲン,ペリオスチンなどのECMの沈 着やConnective tissue growth factorであるCCN ,そして

SMAD

/ のリン酸化が亢進されることを明らかにし た(Kimら, ).CCN やペリオスチンは,線維化 をきたす疾患におけるマトリクス産生の重要なモジュ レーターとされており,PHTやNP処理を行った歯肉結 合組織においても発現が増加した.特にペリオスチン は,歯根膜や骨膜に特異的に発現する細胞外分泌タンパ ク質として全身の組織に存在し,細胞接着や組織の線維 化に密接に関与している.最近の研究で, 型サイトカ インであるIL− , やTGF−β,CCN などの液性因子 によって,ペリオスチンの発現が誘導されることがわか っている(出原, ).また,SMAD は,TGF−

βの活性化によってリン酸化される転写因子である.

これらの結果から,PHTやNPによるDIGEは,TGF−β を介した反応である可能性が示唆される.先行研究で

も,ヒト歯肉線維芽細胞におけるNPの添加によって,

TGF−

βレベルの増加やSMAD のリン酸化が亢進するこ とが報告されている(Kimら, ).TGF−βは,N末端 側の部分(LAP)と,それに結合しているタンパク質の 部分(LTBP)から成る複合体であり,LAPにはインテ グリンが,LTBPにはECMが結合し,なんらかの機械的 な力が加わることで全体の構造に歪みが生じて活性化さ れる.そのため,ペリオスチンをはじめとするECM,

およびインテグリンなどの接着因子とTGF−βの間には相 互作用が存在し,互いに発現や活性に関与している可能 性も示唆されている.

歯肉増殖症は口腔清掃不良によって重症化するとされ ており,プラークの蓄積による慢性炎症歯肉には,TGF

βをはじめとした炎症性サイトカインが誘導される.

従来の培養ディッシュを使った細胞培養ではECMの沈 着があまり認められないことからも,プラーク蓄積の関 与が示唆されていた.しかしex vivo培養系では,健常 者由来の歯肉片への薬物添加によって細胞外マトリクス の沈着が起こったことから,PHTやNPなど薬物の直接 作用によって起こる可能性が示唆される.HGFの増殖や コラーゲン代謝に対する炎症性サイトカインやマクロフ ァージ等の免疫細胞の関与は,今後も検討を重ねる必要 がある.

文献

Heldin CH, Miyazono K, ten Dijke P. TGF −

β

signalling from cell membrane to nucleus through SMAD proteins. Na- ture 390(6659) : 465−471, 1997.

Kim SS, Jackson−Boeters L, Darling MR, Rieder MJ, Ham- ilton DW. Nifedipine induces periostin expression in gingi- val fibroblasts through TGF−

β

. J Dent Res 92(11) : 1022−

1028, 2013.

Kim SS, Michelsons S, Creber K, Rieder MJ, Hamilton DW. Nifedipine and phenytoin induce matrix synthesis, but not proliferation, in intact human gingival connective tissue ex vivo. J Cell Commun Signal 9(4) : 361−375, 2015.

出原賢治.アレルギー疾患とペリオスチン.アレルギー

( ): 北海道医療大学歯学雑誌 ! 平成 年

( )

第37巻1号   4C150 1C133/本文 ※31‐1から組体裁変更 OTF/055     トピックス 蓑輪  2018.06.05 16.36.01  Page 55 

参照

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