空 間 識 ・シ リー ズ 教 育 講 座
11.頭 頂 野 の 入 出 力 構 造
有國 富夫.
Connections
of the Parietal
Cortex
Tomio Arikuni
Department of Anatomy, Nihon University, School of Medicine
Recently, many functional areas have been identified in the parietal cortex of the
brain in monkeys, and owing to this, cytoarchitectonic
subdivision has been elaborated
in the monkey parietal cortex. This review deals with sulcal patterns of the parietal lobe
in human and monkey brains, and corticocortical connections of both
neurophysiologi-cally defined regions and cytoarchitectonic
areas of the parietal cortex in monkeys. The
author proposes that the transverse occipital sulcus is a boundary between the parietal
and occipital cortices in the human brain. A brain map of the monkey is presented. The
parietal cortical areas are subdivided into somatosensory,
eye movement related, hand
or upper limb movement
related, vestibular,
and auditory
areas, according to
neu-rophysiologically defined functions of individual cortical areas. The somatosensory
sys-tem contains areas 3a, 3b, 1, 2, 5, 7b, and SII: S1 projects to motor and premotor areas
and somatosensory
association areas project to premotor
areas, the prefrontal,
tem-poral, and limbic cortices, and the hippocampus.
The eye movement system is
com-posed of areas 7a, LIP, and PIP: It receives input from visual and temporal cortices and
sends output to premotor areas, the prefrontal
cortex, and the hippocampus.
Hand
movements are mediated in areas AIP, VIP, CIP, MIP, PEc, and V6A: These areas
receive afferents from somatosensory
areas, visual and temporal cortices and send
efferents to the ventral premotor area. The vestibular functions are executed by
coordi-nation of areas 3aNV, 3aHV, 2NV, Ri, and VPS: These areas reciprocate
with the
cingulate cortex and insula and project to the ventral premotor area, SWA, and frontal
eye field. The auditory system involves areas VIP and LIP: It receives afferents from the
superior temporal sulcal cortex and sends efferents to the premotor area, frontal eye
field, and prefrontal cortex.
Key words: parietal cortex, corticocortical
connections,
vestibular
cortex monkeys,
cerebral sulcus
目
次
1.頭 頂 葉 皮 質 の 入 出 力 構 造
2.ヒ ト脳 2.1.ヒ ト頭 頂 葉 の 位 置 2.2.ヒ ト頭 頂 葉 の 脳 溝 と脳 回 2.3.ヒ ト頭 頂 皮 質 の 細 胞 構 築(脳 地 図)日本大学 医学部 解剖 学講 座
3.マ カ クサ ル脳 3.1.マ カ ク サ ル 脳 の 脳 溝 ・脳 回 と頭 頂 葉 3.2.マ カ クサ ル 大 脳 の 脳 地 図 4.頭 頂 皮 質 の神 経 結 合 4.1.体 性 感 覚 野 4.2.視 運 動 野 4,3.上 肢 運 動 野 4,4.頭 頂 前 庭 野 の 結 合 4,5.頭 頂 聴 覚 野 の 結 合 1.頭 頂 葉 皮 質 の 入 出 力 構 造 現 在,頭 頂 葉 皮 質(頭 頂 野)Parietal cortexは 多 数 の 分 野 に 細 分 さ れ,複 雑 な 脳 地 図 が 提 出 さ れ て い る 。 そ の 背 景 は,サ ル 大 脳 の 機 能 研 究 の 進 歩 に よ り,頭 頂 葉 皮 質 に 多 数 の 機 能 野 が 確 立 さ れ た こ と と,fMRI,PETを 用 い た ヒ ト大 脳 の 機 能 研 究 の 急 速 な 進 捗 に よ り,サ ル 大 脳 に 認 め られ た 諸 機 能 野 が ヒ ト大 脳 に も 存 在 す る こ と が 確 認 さ れ る よ う に な っ た こ と で あ る1)2)。大 脳 に お け る 機 能 局 在 論 の 立 場 か ら 見 る と,従 来 の 細 胞 構 築 野 に よ る分 野 の 数 で は 不 足 す る と い う事 態 が 起 こ っ て い る。 最 近 の 脳 研 究 に お い て は,独 立 し た 皮 質 分 野 あ る い は 機 能 野 と し て 認 め る 基 準 は,当 該 皮 質 の 細 胞 構 築,線 維 構 築,ニ ュ ー ロ ン の 生 理 学 的 特 性, 神 経 結 合(皮 質 一皮 質 結 合,入 出 力),ニ ュ ーロン の 化 学 的 性 質,な ど で あ る 。 こ の よ うに 多 種 多 様 の 基 準 で 大 脳 皮 質 は 多 数 の 小 区 域 に 分 け ら れ て い る の が 現 状 で あ る 。 本 稿 は,頭 頂 葉 皮 質 の こ れ ら 小 区 域 の 解 剖 学 的 基 礎 と入 出 力 す な わ ち 神 経 結 合 を 述 べ る 。 2.ヒ ト脳 2.1.ヒ ト頭 頂 葉 の 位 置 ヒ ト脳 の 頭 頂 葉parietal lobeは,前 方 は 前 頭 葉,後 方 は 後 頭 葉,外 側 方 は 側 頭 葉に 囲 ま れ て い る。 前 頭 葉 と の 境 界 は 中 心 溝central sulcusで あ る(図1A,Bの1)。 側 頭 葉 と の 境 界 は 外 側 溝
lateral sulcusで あ る(図1A)。 後 頭 葉 と の 境 界
は,大 脳 半 球 外 側 面 で は 横 後 頭 溝transverse
occipital sulcus(頭 頂 間 溝intraparietal sulcusの
後 端 に 連 な る 横 走 溝,図1A,B)が 作 り,大 脳 半
球 内 側 面 で は 頭 頂 後 頭 溝parietooccipital sulcus
が 作 る(図lCの6)。 大 脳 半 球 内 側 面 に お け る
頭 頂 葉 の 辺 縁 葉1imbic lobeと の 境 界 は,帯 状 溝
cingulate sulcusと 頭 頂 下 溝subparietal sulcus
で あ る(図1Cの7,10)。
頭 頂 葉 と 後 頭 葉 の 境 界 に つ い て,筆 者 は,
Affenspalte,lunate sulcus,transverse occipital
sulcusの3脳 溝 は 相 同 で あ る と の 見 解 で あ る 。 理 由 は,ヒ ト脳 以 外 の 霊 長 類 脳 で は 頭 頂 葉 と後 頭 葉 の 境 界 はAffenspalteかlunate sulcus で あ る こ と,サ ル 脳 で は 細 胞 構 築 学 上,視 覚 野 の 前 方 境 界 を 作 る19野(OA野)はlunate sulcus(月 状 溝)に 沿 っ て 存 在 す る こ と,ヒ ト脳 に お い て は,Economo&Koskinas(1925年),Smith(1907 年),Sarkissovら(1955年)の 細 胞 構 築 学 的 脳 地 図6)に よ る と,19野(OA野)はtransverse occipital sulcus(横 後 頭 溝)に 沿 っ て 存 在 す る こ と で あ る 。 2.2.ヒ ト頭 頂 葉 の 脳 溝 と脳 回 ヒ ト脳 の 頭 頂 葉 外 側 面 に,中 心 溝 と そ れ に ほ ぼ 並 行 し て 中 心 後 溝postcentral sulcusが 走 り(図 lA,Bの1,2),こ れ ら2脳 溝 の 間 に 中 心 後 回 postcentral gyrusが 形 成 さ れ る 。 頭 頂 葉 外 側 面 の 残 余 の 領 域 を,中 心 後 溝 か ら後 方 へ 縦 走 す る 頭 頂 間 溝(図1A,Bの3)に よ り上 頭 頂 小
葉su-perior parietal lobuleと 下 頭 頂 小 葉inferior
parietal lobuleに 分 け る 。 上 頭 頂 小 葉 に 上 頭 頂 溝
superior parietal sulcusを 認 め る(図1Bの5)
。 下 頭 頂 小 葉 は,第 一 中 間 溝sulcus
inter-medius primus(ヤ ン セ ン 溝sulcus Jensen,図1
A,Bの4)に よ り吻 側 部 の 縁 上
回supramargi-nal gyrusと 尾 側 部 の 角 回angular gyrusに 分 か
れ る。 大 脳 半 球 内 側 面 に,帯 状 溝 が 脳 梁corpus callo-sumの 周 囲 を 走 る(図1Cの7)。 帯 状 溝 か ら半 球 上 縁 へ 向 か う中 心 傍 枝paracentral ramus(図 1Cの8)と,帯 状 溝 の 終 部 を 作 る 縁 部pars marginalis(図1Cの9)と 半 球 上 縁 と に 囲 ま れ た 領 域 は 中 心 傍 小 葉paracentral lobuleで あ る 。 こ の 中 心 傍 小 葉 の 後 部 は 頭 頂 葉 に 属 す る。 中 心 傍 小 葉 の 後 方 に,帯 状 溝 縁 部,頭 頂 下 溝(図1Cの 10),頭 頂 後 頭 溝 の3脳 溝 と 半 球 上 縁 に 囲 ま れ た 楔 前 部precuneusが あ る 。 2.3.ヒ ト頭 頂 皮 質 の 細 胞 構 築(脳 地 図) 図2A,Bは 細 胞 構 築 に 基 づ く,ヒ ト頭 頂 葉 皮 質(頭 頂 皮 質)のBrodmann(1909年)の 脳 地 図 で あ る 。Brodmannは 中 心 後 回 と 中 心 傍 小 葉 後
図1ヒ ト大 脳 の 脳 溝 と脳 回 日本 人,男 性,75才 の脳 。A:外 方 か ら 見た 左 大 脳 半球 の 外 側 面,B:上 方か ら 見 た左 大 脳 半 球 の 外 側 面, C:右 大 脳半 球 の 内 側 面。 破 線 は 脳 溝 を 示 す 。 この 図 と以下 の 図 に お い て,省 略 語 は 省 略 語 表 を 参照 。 部 を3,1,2野 に 分 け た 。3野 は 中 心 溝 の 後 壁 を 占 め る 。1野 は 中 心 後 回 の 表 面 と こ れ に 連 続 す る 中 心 後 溝 前 壁 の 上 部 と を 占 め る 。2野 は 中 心 後 溝 の 前 壁 下 部 に 位 置 す る 。 中 心 後 回 の 外 下 端 部, す な わ ち 頭 頂 弁 蓋Parietal operculumの 領 域 を
43野 に 分 け た 。Brodmannは
上 頭 頂 小 葉 を 前 方 の
狭 い5野
と後 方の 広 い7野
に分 け た。5野 は 中 心
後 溝 の前 壁 下 端 と後壁 を 占め,さ
らに 半 球 内 側
面 へ 広 が って,中 心 傍 小 葉 の後 部 を 占め る。7野
は 中心 後 溝 の後 壁 か ら始 ま り,上 頭 頂 小 葉 の 楔 前
図2ヒ ト大 脳 の 頭 頂 皮 質 の 脳 地 図 A,B:Brodmann(1909年)の 細 胞 構 築 学 的 脳 地 図(文 献9よ り)。 C,D:Economo&Koskinas(1925年)の 細 胞 構 築 学 的 脳 地 図(文 献6よ り)。 部 の 大 部 分 と を 占 め る 広 い 皮 質 領 域 で あ る 。 下 頭 頂 小 葉 は 角 回 と 縁 上 回 に 分 か れ る が,角 回 は39野 に,縁 上 回 は40野 に 等 し い9)O Brodmannの 脳 地 図 以 外 に,Economo&Kos-kinas(1925年)の ヒ ト脳 の 細 胞 構 築 学 的 脳 地 図 が あ る(図2GD)。 こ れ は 多 数 の 細 胞 構 築 野 を 有 す る 。 し か し,両 脳 地 図 に お い て,Brodmann もEconomo&Koskinasら も 共 に 頭 頂 間 溝 内 の 皮 質 に つ い て 細 胞 構 築 の 記 載 を 十 分 に 行 っ て い な い 。 3.マ カ ク サ ル 脳 3.1.マ カ ク サ ル 脳 の 脳 溝 ・脳 回 と頭 頂 葉 図3は マ カ クサ ル の 大 脳 の 脳 溝 を 示 す 。 マ カ ク サ ル の 頭 頂 葉 は,大 脳 半 球 外 側 面 に お い て は 中 心 溝,外 側 溝,上 側 頭 溝 の 後 端 部,月 状 溝 の 上 端 部 に よ っ て 囲 ま れ た 皮 質 領 域 で あ る 。 頭 頂 葉 の 外 側 面 に,ヒ ト大 脳 と 同 様 に,頭 頂 間 溝 が 存 在 す る。 マ カ ク サ ル 大 脳 に は 中 心 後 溝 は 存 在 せ ず,わ ず か な 窪 み の 上 中 心 後 陥 凹superior postcentral dimpleが 存 在 す る の み で あ る が,ヒ ト脳 の 中 心
図3マ カ クサ ル の大 脳 の脳 溝
後 回 に 相 当 す る 領 域 を 中 心 後 皮 質postcentral
cortexと 呼 び,中
心 溝 に 平 行 す る 帯 状 領 域 で あ
る。 頭 頂 間溝 よ り背 側 方 の 領 域 を,ヒ
ト脳 と同 じ
く,上 頭 頂 小 葉 と名 付 け る が,前
頭 頂 皮
質an-terior parietal cortexの 名 も用 い られ て い る。 頭
頂 間溝 よ り腹 側 方 の 領域 を 下 頭頂 小葉 と名 付 け る
が,後
頭 頂 皮 質posterior parietal cortexの 名 も
用 い られ て い る。 大 脳 半 球 内 側面 に お い て は,頭
頂 葉 は 帯 状 溝 と頭 頂 下 溝 か ら背側 方 へ半 球 上 縁 ま
で と,中 心 溝 の 内側 端 か ら後 方 へ 頭頂 後 頭 溝 まで
の範 囲 の皮 質 領 域 で あ る。
3,2.マ
カ ク サ ル大 脳 の 脳 地 図
図4に,マ
カ クサ ル の 大 脳 の,頭 頂 皮 質 を 詳 解
した 脳 地 図 を 示 す
。 これ は 細 胞 構 築 を基 礎
とす る細 胞 構 築 学 的 脳 地 図 に,当 該 皮 質 の 二ュー
ロ ン活 動 の特 性 や 神 経 結 合 の 特 徴 な どの 基 準 で 同
定 され た皮 質領 域 を 加 え て,完 成 した 脳 地 図 で あ
る 。 した が って,こ れ に は 皮質 野 の境 界 が 明瞭 に
定 ま って い な い皮 質野 が含 まれ て い る。
中 心後 皮 質
中 心 後 皮 質 に,一 次 体 性 感 覚野(SI野)を
構
成 す る3a野,3b野,1野,2野
の4つ の 帯 状 に
走 る細胞 構 築 野 が 吻尾 方 向 に並 ん で存 在 す る。 各
各 の 細胞 構 築 野に 体部 位 が再 現 され て い る。 す な
わ ちSI野
の個 々 の 分 野 が 体 表 面 の 地 図 を 持 って
い る15)0
3a野 は 中 心 溝 の 底(床)を
占 め,主
と して 深
部 感 覚情 報 一 筋 紡 錘 か らの 情報 一 が 視床 の後 復 側
核 を 中 継 して 入 る。3b野 は 中 心溝 の 後 壁 に あ り,
主 と して 皮膚 の機 械 受 容 器 か らの 情 報一 触 覚 な ど
の 情 報一 が 視 床 の後 復 側 核 を 中継 して 入 る。1野
は 中 心 後 皮 質表 面 の 吻 側領 域 を 占め,主
と して順
応 の 速 い 機械 受 容 器 か らの 情報 一 軽 い接 触 と振 動
覚一 が後 復 側 核 を 中 継 して 入 る。2野 は1野
の直
図4マ カ クサ ル 大 脳 の 脳 地 図 頭 頂 皮 質 の み が 詳 細 に 描 い て あ る。 破 線 は 分 野 の 境 界 を 示 す 。 こ の脳 地 図 の 分 野 は 細 胞 構 築,線 維 構 築, 神 経 結 合,あ るい は 神 経 生 理 機 能 に 基 づ い て 定 義 され た 。 した が っ て,分 野 の境 界 が 明 白で な い もの が あ る。*はVPS野 を 示 す 。 脳 溝 は 開 かれ 脳 溝 壁 が描 か れ て い る 。長 方 形 で 囲 まれ た 文 字 は 脳 溝 名 で あ る。
後 に位 置 し,中 心 後 皮 質 の 尾 側 領 域 を 占 め る。2
野 へ は 順 応 の 速 い機 械 受 容器 と順 応 の 遅 い機 械 受
容 器 か らの 情 報一 皮膚 の圧 迫 感 覚 な ど一 と,筋 紡
錘 か らの 情 報 が後 復 側核 を 中 継 して 入 る。
上 頭 頂 小 葉
こ こに5野
が あ る 。5野 はPE野
と も 呼 ば れ
る 。5野 は 頭 頂 問 溝 内 側 壁 へ と広 が り,頭 頂 間
溝 の 内側 壁 の前 半 部 を 占め る。 この部 分 をPEip
野(5V野,PEa野)と
名 付 け る
。PEip
野 は 上 肢に 関す る体 性 感 覚 情 報 を 扱 う。5野 は,
さ らに,半 球 内 側 面 に 広 が り帯状 溝 に達 す る。 こ
の 帯 状 溝 内 の5野 をPEci野
と名 付 け る。 上 頭 頂
小 葉 の 尾 側 端 附 近 の5野 は 細 胞構 築 がPE野
と少
し 異 な る と こ ろ が あ る の で,PEc野(caudal
part of area PE)と 名 付 け られ,こ れ も 半 球 内 側 面 へ 広 が る 。
頭 頂 間 溝 の 皮 質
頭 頂 間 溝 は,そ の 背 側 壁(上 壁)を 内 側 頭 頂間
溝 壁medial intraparieta bank,そ の 腹 側 壁(下
壁)を 外 側 頭 頂 間 溝 壁1ateral intraparietal bank,
そ の 最 深 部(床)を 頭 頂 問 溝 底fundus of the
in-traparietal sulcusと に 分 け て 研 究 さ れ て い る 。 図4に 示 す ご と く,現 在 多 数 の 皮 質 野 が 頭 頂 間 溝 内 に 同 定 さ れ て い る 。 そ の 多 く は,当 該 皮 質 野 の ニ ュ ー ロ ン の 生 理 学 的 応 答 特 性 と 当 該 皮 質 野 の 神 経 結 合 を 根 拠 に 同 定 さ れ た 。 頭 頂 間 溝 の 内 側 壁 は 吻 側 半 と 尾 側 半 に 区 分 さ れ る 。 頭 頂 間 溝 の 内 側 壁 の 吻 側 半 は5野 の 続 き で あ る 。 こ こ は 背 側 運 動 前 野 のF2野 のpre-CD(上 中 心 前 陥 凹)へ 強 い 投 射 を す る の で,頭 頂 間 溝
PE野intraparietal part of area PE(PEip野)
と 名 付 け ら れ た 。 頭 頂 間 溝 の 内 側 壁 の 尾 側 半 は
内 側 頭 頂間 溝 野medial intraparietal area(MIP
野)と 呼 ぼ れ て い る 。MIP野 の 尾 側 端 はV6A野
(19野 の1部)に 続 く。MIP野 に は 体 性 感 覚 入 力
と視 覚 入 力 が あ る17)0
頭 頂 間 溝 底 は,そ の 吻 側 部 と 中 間 部 を 占 め る 腹
側 頭 頂 間 溝 野ventral intraparietal area(VIP野)
と,そ の 尾 側 部 を 占 め る 後 頭 頂 間 溝 野posterior
parietal area(PIP野)に 分 か れ る 。VIP野 は 側
頭 皮 質 のMT野(V5野)と 後 頭 皮 質 のV2野(18 野)か ら 投 射 を 受 け て い る 領 域 と し て 同 定 さ れ た。VIP野 に,体 性 感 覚 刺 激 と視 覚 刺 激 の 両 方 に 応 答 す る ニ ュ ー ロ ンが 存 在 す る。PIP野 の ニ ュ ー ロ ン は 視 覚 入 力に 応 答 す る。 頭 頂 間 溝 の 外 側 壁 は,そ の 吻 側 部 に 位 置 す る 前
頭 頂 間 溝 野anterior intraparietal area(AIP野), そ の 中 間 部 に 位 置 す る 外 側 頭 頂 間 溝 野1ateral
in-traparietal area(LIP野)と そ の 尾 側 部 に 位 置 す
る 外 側 後 頭 頭 頂 野1ateral occipitoparietal area
(LOP野,別 名 は 尾 側 頭 頂 間 溝 野caudal
intra-parietal area,CIP野)に 分 か れ る 。AIP野 は 手
で 物 体 を 握 る 際,最 も 適 切 な 手 の形 を 決 め る の に 関 与 す る 。LIP野 は 眼 球 運 動,特 にsaccadesに 関 与 す る 。LOP野 は 髄 鞘 染 色 性 の 違 い に よ り LIP野 か ら 分 離 さ れ た 領 域 で あ る。CIP(LOP) 野 の ニ ュ ー ロ ン は 見 て い る 物 体 の 面 と軸 の 傾 き の 認 識 に 関 わ る 。 下 頭 頂 小 葉 こ こ に7野 が 存 在 す る 。7野 は さ ら に,Vogt 夫 妻(1919年)に よ っ て 下 頭 頂 小 葉 の 吻 側 領 域 を 占 め る7b野(PF野)と 尾 側 領 域 を 占 め る7a野 (PG野)に 分 け られ た。 しか し7a野 と7b野 の 境 界 は 定 か で な く,移 行 野 のPFG野 を 設 け る 分 類 も あ る 。 外 側 溝 の 皮 質 外 側 溝 の 底(床)に 大 き な 島insula(島 皮 質in-sular cortex)が あ る 。 島 を 背 側 方 か ら 被 う前 頭 弁 蓋 と 頭 頂 弁 蓋(こ れ ら は 外 側 溝 の 上 壁 を 作 る)の 内 面 に,2次 体 性 感 覚 野(SII野)が 存 在 す る。 SII野 の 吻 側 方 に 味 覚 野(G野)が あ る 。 島 皮 質 の 後 端 に 続 く外 側 溝 の 両 壁,す な わ ち,上 壁 を 作 る 頭 頂 皮 質 と下 壁 を 作 る側 頭 皮 質 の 両 領 域 は,島 後 野retroinsular area(Ri野)と い う名 の 細 胞 構 築 野 を 作 る 。Ri野 に 三 半 規 管 の 刺 激 に 応 答 す る ニ ュRン が 多 数 存 在 す る の で,Ri野 は 神 経 生 理 学 的 に 同 定 さ れ て い る 頭 頂 島 前 庭 皮
質pari-etoinsular vestibular cortex(PIVC)と 同 じ で あ
る。 島 後 野 か ら さ ら に 後 方 へ と続 く外 側 溝 底 の 領 域 を シ ル ヴ ィ ウ ス 後 視 覚 野(visual posterior sylvian area,VPS野,図4に*で 示 す)と い う。VPS野 に は 三 半 規 管 刺 激 に 応 答 す る ニ ュ ー ロ ン と,追 跡 眼 球 運 動 に 応 答 す る ニ ュ ー ロ ン が 存 在 す る20)21)。た だ しVPS野 はMST野 の 一 部 で あ る と い う研 究 が あ る 。 半 球 内 側 面 の 頭 頂 皮 質(内 側 頭 頂 皮 質medial parietal cortex) 帯 状 溝,帯 状 溝 縁 部,半 球 上 縁 に 囲 ま れ た 皮 質 に3a野,3b野,1野,2野,5野,PEci野 が 存 在 す る 。 帯 状 溝 縁 部 の 後 方 に,PEc野 が 楔 前 回 の 背 部 を 作 る 。 頭 頂 後 頭 溝 の 前 壁 と こ れ に 連 続 し て い る 楔 前 回 の1部 は,V6A野 とV6野 を 形 成 す る 。V6A野 とV6野 は 細 胞 構 築 上 は19野 に 属 し,ま た 両 者 を 合 わ せ た 領 域 はPO野parietooc-cipital areaと も 称 さ れ る 。 帯 状 溝 と そ の 縁 部 と 頭 頂 下 溝 に 囲 ま れ る 領 域 は7m野(PGm野)で あ る 。 こ こ は7a野(PG野)の 細 胞 構 築 に 似 た 細 胞 構 築 を 有 す る 半 球 内 側 面 領 域medial region と い う意 味 で,こ の 名 が 付 い た 。MDP野
medial dorsal parietal areaは7m野 の 別 名 で あ
4.頭
頂 皮 質 の神 経 結 合
本 論 文 の 目的 は,頭 頂 皮 質 の多 様 な 分 野 の神 経
結 合 を 要 約 す る こ と で あ る。 こ こで は 頭 頂 皮 質
を,主
と して 体性 感 覚 情 報 の処 理 に 当 た る領
域-3a,3b,1,2,5,7b,SII野,眼
球 運 動 の遂 行 に
関わ る領 域-7a,LIP,PIP野,手
と上 肢 の 運 動
の 実 行 に 関 わ る領 域-AIP,VIP,CIP,MIP,
PEc,V6A野,前
庭 機 能 す な わ ち 平 衡 感 覚 情 報
の 処 理に 関 わ る領 域-3aNV,3aHV,2NV,Ri,
VPS野,さ
らに 聴 覚 系 の 情 報 の処 理 に関 わ る領
域-VIP,LIP野
に 分 類 して そ れ ぞ れ が 大 脳 の ど
こか ら入 力 情 報 を 受 け取 り,そ の 出力 情 報 を前 頭
皮 質 の ど こに送 るか を,マ
カ クサ ル脳 の神 経 回路
網 の知 識 か ら記 述 す る。
4.1.体 性 感 覚野
一 次体 性 感 覚 野(SI野)の
結 合
図5Aは
一 次 体 性 感 覚 野(SI野)の
入 力 と出
力 を示 す 。 触 覚 な どの 皮 膚感 覚,筋 紡 錘 な どを受
容 器 とす る深 部 感 覚 は 体 性感 覚 で あ る。 体 性感 覚
情 報 は,視 床 の後 腹 側 核 を 中 継 して,頭 頂 皮 質 の
中 心 後 回 に あ る一 次 体 性 感 覚 野(SI野)に
入 る。
一 次体 性 感 覚 野 は ,上 頭頂 小葉 と半球 内側 面に
あ る5野(PE野),頭
頂 間 溝 内側 壁 に あ る5野
のPEip野(PEa野,5V野),帯
状 溝 に あ る5
野 のPEci野,頭
頂 間 溝 底 に あ るVIP野
と 島 を
覆 う外 側 溝 上 壁 に あ る2次 体 性 感 覚 野(SII野)
とへ 投 射 し て体 性 感 覚 情 報 を 送 る
。 現 在
まで,SI野
とPEc野
の 間に 結 合 が あ る との研 究
はな い 。 一 次体 性 感 覚 野 は 前 頭 皮 質 の 運動 野(4
野),運
動 前 野(6野)と
補 足 運 動 野(SMA)と
双 方 向結 合 して い る
。
5野 の結 合
図5Aは5野
の 入 力 と出 力 を 示 す 。5野 と細 胞
構 築 学 上 は5野 のPEip野
・PEci野 は,sI野
の
3a野,3b野,1野,2野
か ら体 性 感 覚 情 報 を 受
け,そ の 出力 を7b野,AIP野,島
後 野(頭 頂 島
視 覚 皮 質PIVCと
同 じ)へ 送 る。
さ らに,5
野 は 補 足 運 動 野(SMA,F3野)へ
投 射 す る 。
PEip野
は 背 側 運 動 前 野 のF2野
のpre-CDへ
投
射 す る こ とが 知 られ て い る。
2次 体 性 感 覚 野(SII野)の
結 合
図5BはSII野
の 入 力 と出 力 を 示 す 。SII野
は,SI野
の3aNV野,3b野,1野
か ら体 性 感 覚
入 力 を受 け 取 る。7b野
か らSII野
へ 入 力 が
あ る 。SII野 は,頭 頂 皮 質 のAIP野,VIP野,7 m野 と前 頭 皮 質 の 補 足 運 動 野 へ 投 射 す る 。 7b野 の 結 合 図5C,Dは7b野 の 入 力 と 出 力 を 示 す 。7b野 は ヒ ト脳 で は 上 頭 頂 小 葉 の 後 部 を 占 め(図2A, B),von Economo&Koskinasの ヒ ト脳 地 図 で はPEp野 に 相 当 す る(図2C,D)。 サ ル 脳 で は,7b野 は 下 頭 頂 小 葉 の 前 部 を 占 め(図4), von Bonin&Baileyの サ ル の 脳 地 図 で はPF野 に 相 当 す る。 7b野 の 入 力 7b野 は 頭 頂 皮 質,側 頭 皮 質,前 頭 皮 質 と辺 縁 皮 質 か ら 入 力 を 受 け 取 る 。 視 覚 野 か ら の 直 接 入 力 は な い 。 頭 頂 皮 質 か ら7b野 へ の 入 力 は,5野 の 他 に,下 頭 頂 小 葉 の 後 部 を 占 め る7a 野(PG野),頭 頂 間 溝 の 外 側 壁 に あ るAIP野 と LIP野,頭 頂 間 溝 の 底 に あ るVIP野,半 球 内 側 面 に あ る7m野(PGm野),SI野 の2野 と3aNV 野,外 側 溝 の 上 壁 に あ る 味 覚 野 とSII野,外 側 溝 の 深 部に あ る 島 の 顆 粒 細 胞 部(Ig)・ 乏 顆 粒 細 胞 部(Id)と 島 後 野(Ri野)と シ ル ヴ ィ ウ ス 後 視 覚 野(VPS野)か ら く る 。 側 頭 皮 質 か ら7b野 へ の 入 力 は,上 側 頭 溝 の TAa野,TPO野,IPa野,TEa野 か ら 来 る 。 前 頭 皮 質 か ら7b野 へ の 入 力 は,腹 側 運 動 前 野 のF 4野 とF5野,前 頭 前 野 の46野,前 頭 眼 野(8野) か ら 来 る 。 帯 状 回 の24野 と23野 か ら7b野 へ 辺 縁 系 入 力 が あ る 。 上 記 の 多 様 な 入 力 源 が 示 す よ う に,7b野 は 多 感 覚 形 式 野 で あ る 。 7b野 の 出 力 7b野 は 次 の 領 域 へ 投 射 し て,そ の 情 報 を 出 力 す る 。 頭 頂 皮 質 へ は,7b野 はSII野,外 側 溝 内 の 島 のIg野 とRi野 へ 投 射 す る 。 側 頭 皮 質 へ は,7b野 は 形 態 視 のTEO野 と 多 感 覚 形 式 野 のTPO野,IPa野,TEa野 へ 投 射 す る 。 海 馬 傍 回 へ は,7b野 はTF野,CAI野,海 馬 前 台 presubiculum,嗅 内 野(28野),嗅 周 野(36野) へ 投 射 す る 。 前 頭 皮 質 へ は,7b野 は 背 側 運 動 前 野 のF7野,腹 側 運 動 前 野 のF4野 とF5野 の 上 肢 ・顔 ・口 の 領 域,補 足 運 動 野,前 頭 前 野 の 45野,46野,12野 へ 投 射 す る。 辺 縁 系 皮 質 へ は, 7b野 は 帯 状 回 の23野 と24野 へ 投 射 す る 。 4.2.視 運 動 野 視 覚 情 報 を 行 動 の た め の 運 動 情 報 に 変 換 す るニ図5頭 頂 皮 質 の 各 分 野 の 入 力 源 と 出 力 先
A:3a,3b,1,2野(SI野),B:SII野 ,C:7b野 の 入 力 源,D:7b野 の 出 力 先,E:7a野,F:LIP野,G:
V6A野,H:PEc野 。 太 い 矢 印 は 投 射 あ る い は 結 合 が 強 力 で あ る と報 告 され て い る 神 経 回 路 の あ る こ と を 表 す 。
ユ ー ロ ンを 視 運 動 ニ ュ ー ロ ン と定 義 し,視 運 動 ニ ュ ー ロ ンの 集 ま っ た 領 域 を 視 運 動 野 と 呼 ぶ 。 頭 頂 皮 質 の7a野 とLIP野(外 側 頭 頂 間 溝 野)は 眼 球 の サ ッ ケ ー ドに 関 与 す る 視 運 動 野 で あ る 。 サ ッ ケ ー ド とは,外 界 の 静 止 対 象 を 網 膜 の 中 心 窩に 投 影 す る た め に 視 線 を 動 か す 際 の 眼 球 運 動 を 指 す 。 こ の 眼 球 運 動 は,7a野 とLIP野 が 視 覚 皮 質 か ら の 空 間 視 情 報 と側 頭 皮 質 か ら の 形 態 視 情 報 を 統 合 し て,対 象 の 空 間 的 位 置 の 情 報 を 前 頭 皮 質 の 前 頭
眼 野frontal eye field,FEF(8野)へ 送 る こ と
に よ り実 行 さ れ る 。PIP野 はLIP野 へ 投 射 す る の で 視 運 動 野 で あ ろ う。 7a野 の 結 合 図5Eは7a野 の 入 力 と 出 力 を 示 す 。 サ ル 脳 で は,7a野 は 下 頭 頂 小 葉 の 後 部 を 占 め る 。 ヒ ト脳 で は,7a野 は 上 頭 頂 小 葉 の 前 部 を 占 め る領 域 で,
von Economo&Koskinasの 脳 地 図 のPEm野
に 相 当 す る(図2)10)。 ヒ ト脳にお い て,7a野 (PEm野)と7b野(PEp野)の 境 界 は 上 頭 頂 溝 (図1Bの5)で あ る。 7a野 の 入 力 7a野 は 視 床 か ら は 主 と し て 内 側 枕 核 か ら 投 射 を 受 け る 。 こ の 他に,前 核,背 側 外 側 核 群,後 腹 側 核,下 後 腹 側 核(VPI),髄 板 内 核 が7a野 へ 投 射 す る 。 空 間 視 情 報 が,後 頭 視 覚 皮 質 のV2野 (18野,OB野),V3野(19野,OA野),V4野 (19野 の1部),と 半 球 内 側 面 の 頭 頂 皮 質 の7m 野,PO野 か ら7a野 に 入 る 。 運 動 視 情 報 が 上 側 頭 溝 のMT野 とMST野 か ら,体 性 感 覚 情 報 と 形 態 視 情 報 が 上 側 頭 溝 のIPa野 とTEa野 か ら, 聴 覚 情 報 と 形 態 視 情 報 が 上 側 頭 溝 のTPO野 と PGa野 か ら,7a野 に 入 る 。 海 馬 傍 回 のTH野 と TF野,辺 縁 皮 質 の 帯 状 回 の23野,24野,脳 梁 膨 大 後 皮 質 が7a野 へ 投 射 す る 。 脳 梁 膨 大 後 皮 質retrosplenial cortex(RSC)は
脳 梁 膨 大splenium of the corpus callosumに 近
接 す る 帯 状 回 皮 質 の 領 域 で あ る(図2B)。 そ の 細 胞 構 築 は,Brodmannに よ る と,ヒ ト脳 で は 26野,29野,30野 に 分 類 さ れ る 。 サ ル 脳 で は29野 と30野 の み が 脳 梁 膨 大 後 皮 質 に 存 在 す る 。 7a野 の 出 力22)28)30) 7a野 は,下 側 頭 皮 質 の 形 態 視 情 報 を 処 理 す る
TEO野 とTE野,海 馬 傍 回 のCA1野,海 馬 前
台,嗅 内 野(28野),嗅 周 野(36野)へ 投 射 す る 。
前 頭 皮 質 へ は,7a野
は 前 頭 眼 野(8野)と
前 頭
前 野 の45野 ・46野 ・前 頭 眼 窩 面 へ 投 射 す る。7a
野 は 大脳 基 底 核 の尾 状 核 と被 殻,中 脳 の上 丘,橋
の橋 核 へ投 射 して い る。
LIP野
の 結 合
図5FはLIP野
の 入 力 と出 力 を 示 す 。LIP野
は,サ ル脳にお い て は,頭 頂 間 溝外 側 壁 の 中 間部
に存 在 す るが,ヒ
ト脳 に お い て は,fMRIの
研 究
に よ る と,LIP野
は 頭 頂 間 溝 内 側 壁 の 中 間 部 と
後部 に存 在 す る1)O
LIP野
の入 力
LIP野
へ,空 間 視 情 報 は後 頭 皮 質 のV2野,V
3野,V3A野,V4野
と頭 頂 皮 質 のPO野(V6A
野 とV6野),LOP野(CIA野)か
ら,体 性 感 覚
情 報 は 頭 頂 皮 質 のPEip野(5V野,PEa野),
AIP野
か ら入 る。
LIP野
は,頭 頂 皮 質 の多 感 覚形 式 野 のMIP野
(内 側 頭頂 間 溝 野)とVIP野(腹
側 頭頂 間 溝 野)
か ら も空 間 情 報 を 得 て い る
。MIP野
に 手 の届
く範 囲 の 自己 周 辺 空 間 が 表 現 され て お り,そ の空
間 情 報 はLIP野
へ 送 られ る。VIP野に
は 自己 の
頭 と顔 の 周 りの空 間が 表 現 され て い て,そ の 空 間
情 報 はLIP野
へ 送 られ る。
LIP野
へ,上
側 頭 溝 の 運 動 視 に 関 わ るMST
野,MT野,FST野
か ら と上 側 頭 溝 の 多 感 覚形
式 野 のTPO野,IPa野,TEa野,TEm野
か ら
入 力 が あ る。 辺縁 皮質 の帯 状 回 の23野,24野,脳
梁 膨 大 後 皮 質(29野
と30野)か
ら もLIP野
へ 投
射 が あ る。
LIP野
の 出 力
LIP野
は 前 頭 眼 野(8野)へ
強 力 な 投 射 を し
て い る 。 これ に 加 え て,LIP野
は 前 頭 前 野 の45
野,46野,前
頭 眼 窩 面 へ 投 射 す る
。LIP野
は,背
側 運 動 前 野 のF7野,腹
側 運 動 前 野 のF4
野,F5野
と海 馬 傍 回 のTF野,海
馬前 台 へ 投 射
す る。LIP野
は,大 脳 基 底 核 の 尾 状 核 と被 殻,
中 脳 の 上 丘,橋 の 橋 核 へ投 射 して い る。
後 頭 頂 間 溝 野(PIP野)の
結 合
後 頭 頂 間 溝 野(PIP野)はVIP野
に 連 続 して
頭 頂 間 溝 底(床)の
後 端 に あ る 。PIP野
へ 頭 頂
皮 質 のPO野,VIP野,LIP野
と上 側 頭 溝 の
MST野,MT野
か ら 投 射 が あ る(図6E)。
PIP野
は頭 頂 間溝 のLIP野
へ 投 射 して い る。
4.3.上 肢 運 動 野 PO野(V6A野 十V6野)とPEc野 の 結 合 PO野 とPEc野 は,手 を 対 象 に 向 け て 伸 ば す 動 作 に お い て,手 と 眼 の 協 調 運 動 に 関 わ っ て い る 。PO野 は,半 球 内 側 面 に お い て 頭 頂 後 頭 溝 の 吻 側 壁 と こ れ に 連 続 し て い る 半 球 内 側 面 の 楔 前 部 に 広 が る。PO野 の 細 胞 構 築 はBrodmannの サ ル 脳 地 図9)で は19野 に 属 し,Bonin&Baileyの 脳 地 図3)で はOA野 の 一 部 で あ る 。 最 近 の 研 究 で は,PO野 はV6A野 とV6野 に 分 け ら れ て い るOPEc野 は 上 頭 頂 小 葉 の 後 端 部 を 占 め,細 胞 構 築 上 は5野 の1部 で あ る 。 しか しPEc野 と SI野 間 の 神 経 結 合,あ る い はPEc野 へ の 体 性 感 覚 入 力 は 不 明 で あ る 。Marconiら(2001年)の 研 究 に よ る と,PEc野 は 体 性 感 覚 連 合 野 で は な く,視 運 動 野 で あ る。 V6A野 の 結 合 図5GはV6A野 の 入 力 と 出 力 を 示 す。 V6A野 の 入 力 V6A野 の 視 覚 入 力 はV1野 か ら 送 られ る 。 運 動 視 情 報 は 上 側 頭 溝 のMST野 か ら 入 る 。 体 性 感 覚 情 報 は 頭 頂 皮 質 のPE野 とPEip野 か ら 入 る 。 V6A野 は 頭 頂 皮 質 の 多 感 覚 形 式 野 のMIP野 か ら 強 入 力 を,7m野 か ら 中 程 度 強 の 入 力 を,PEc 野,PEci野,VIP野,LIP野 か ら 弱 い 入 力 を 受 け て い る 。V6A野 は,そ の 出 力 情 報 を 修 正 す る 回 路 と 見 な さ れ る フ ィ ー ドバ ッ ク投 射feedback projectionを,背 側 運 動 前 野 のF7野 とF2野 か ら 強 力 に,腹 側 運 動 前 野 のF5野 か ら 弱 く受 け て い る 。 V6A野 の 出 力 V6A野 は 背 側 運 動 前 野 のF7野 とF2野 の 弓 状 溝 周 部(pa)と へ 出 力 す る 。 PEc野 の 結 合 図5HはPEc野 の 入 力 と 出 力 を 示 す。 PEc野 の 入 力 PEc野 の 視 覚 入 力 はV4野(19野,OA野 の1 部)か ら 入 る 。 運 動 視 情 報 は 上 側 頭 溝 のMST野 か ら 入 る 。 体 性 感 覚 情 報 は,主 と してPEip野 か ら 入 り,PE野 か ら の 入 力 は 弱 い 。 頭 頂 皮 質 の 多 感 覚 形 式 野 の7m野,V6A野,MIP野,7a野 , PFG野(7a野 と7b野 の 間 に あ る 移 行 領 域)か ら 中 程 度 強 の 入 力 が あ る。 さ ら に,背 側 運 動 前 野 のF2野 の 上 中 心 前 陥 凹 前 部(pre-CD)と 弓 状 溝
周 部(pa)か
ら,強 度 の フ ィ ー ドバ ッ ク投 射 が
PEc野
に対 して あ る。 これ はPEc野
の 出力 情 報
を,修 正 す る た め の 回 路 と考え られ る 。 この 他
に,前 頭 前 野 の46野,腹
側 運 動 前 野 のF4野
とF
5野,補
足運 動 前 野(pre-SMA,F6野),帯
状 回
運 動 野 か ら中 程 度 強 の 投 射 がPEc野
に 対 して あ
る。
PEc野
の 出力
PEc野
は,背 側 運 動 前 野 のF2野
の上 中心 前 陥
凹 前 部(pre-CD)へ
強 度 の 投 射 を,F2野
の 弓 状
溝 周 部(pa)とF7野
へ 弱 い投 射 を す る。
LOP野(CIP野)の
結 合
CIP野(LOP野)の
ニ ュ ー ロ ンは,対 象 を手
で握 る動 作 に お い て,対 象 の 形,対 象 の 面 と軸 の
傾 きな どを 認 識 して い る。LOP野(CIP野)は
LIP野に
連 続 して 始 ま り,頭 頂 間 溝 外 側 壁 の 尾
側 部 を 占め,頭 頂 間溝 と月状 溝 が合 流す る と ころ
に 位 置 す る(図4)。LOP野
は視 覚 情 報 をV3A
野 か ら受 け 取 り,頭 頂 間溝 のLIP野,VIP野,
MIP野
へ投 射 して い る(図6A)。
MIP野
の結 合
図6BはMIP野
の 入 力 と出 力 を 示す 。MIP野
(内 側 頭 頂 間 溝 野)は,頭
頂 間 溝 の 内 側 壁 の後 部
を 占 め,そ
の細 胞 構 築 は5野
で あ る。MIP野
の
浅 層 に は 反 対側 手 とか上 肢 の体 性 感 覚 に の み応 答
す る ニ ュ ー ロ ンが 存 在 す る。MIP野
の 中 深 層 に
体 性 感 覚 と視覚 刺 激 の両 方 に応 答 す る ニ ューロ ン
とか 手 の届 く範 囲 内 で 自己 に 向か っ て移 動 す る対
象 に 強 く応 答 す る ニ ュ ー ロ ンな どが 存 在 す る。
そ こ で,MIP野
に 自 己 身 体 に 直 近 の空 間 が 表 現
され て お り,MIP野
は こ の空 間 座 標 に 基 づ く対
象 の位 置 情 報 を 運 動 前 野 へ 送 って い る と見 な され
て い る。
MIP野
の 入 力
体 性 感 覚 情 報 はSI野
か ら入 る。 た だ しMIP
野 に トレ ーサ ー を 注 入 した 研 究 が あ る の で は な
い。 こ この細 胞 構 築 は5野
な ので そ の よ うに 見 な
され て い る。 視 覚 情報 はV3A野(19野
の1部)
か ら入 る32)0頭 頂 皮 質 の 多 感 覚 形 式 野 のV6A野
とLOP野(CIP野)か
らMIP野
へ 入 力 が あ る
。
MIP野
の出 力
MIP野
は,頭
頂 皮 質 の 多 感 覚 形 式 野 のV6A
野,VIP野
とAIP野
へ 投 射 す る 他,背
側 運
図6頭 頂 皮 質 の 各 分 野 の 入 力 源 と 出 力 先
A:LOP(CIP)野,B:MIP野,C:AIP野,D:VIP野,E:PIP野,F:7m野,G:3aNV野,H:Ri野,1: VPS野 。
動 前 野 のF2野 の 弓 状 溝 周 部(pa)へ 投 射 す る 。 AIP野 の 結 合 図6CはAIP野(前 頭 頂 間 溝 野)の 入 力 と 出 力 を 示 す 。AIP野 は 頭 頂 間 溝 の 外 側 壁 の 吻 側 部 を 占 め,LIP野 に 連 続 す る 。AIP野 の ニ ュ ーロ ン は,視 覚 対 象 を 手 で つ か む 動 作 に 応 答 す る が , AIP野 の ニ ュ ー ロ ン は 手 の 位 置 に 応 答 し て い る の で は な く,手 の 形 に 強 く応 答 す る17も ヒ ト脳 の fMRIに よ る 研 究 に よ る と,サ ル 脳 のAIP野 とCIP野 に 見 られ る ニ ュ ー ロ ン 活 動 に 対 応 す る 脳 活 動 が ヒ ト脳 の 頭 頂 問 溝 の 内 側 壁 に 沿 っ て 存 在 す る 。 AIP野 の 入 力25) 体 性 感 覚 情 報 は,頭 頂 皮 質 の5野,PEip野, SII野 か ら 入 る。 頭 頂 皮 質 の 多 感 覚 形 式 野 のMIP 野,VIP野,LIP野,7b野 はAIP野 へ 投 射 す る 。 島 皮 質 と 前 庭 野 の1つ のRi野 もAIP野 へ 投 射 す る 。 聴 覚 情 報 が,上 側 頭 回 の1次 聴 覚 野 (A1野)の 直 後 に 位 置 す る 聴 覚 連 合 野 のToc野 か ら入 る 。 運 動 前 野 のF4野 か ら 強 い フ ィ ー ドバ ッ ク投 射 が,F5野 とF7野 か ら 弱 い フ ィ ー ドバ ッ ク投 射 が,AIP野 に 対 し て あ る 。 こ れ ら の フ ィ ー ドバ ッ ク 投 射 はAIP野 か ら の 出 力 情 報 を 修 正 す る た め の 回 路 と考 え ら れ て い る 。 AIP野 の 出 力 AIP野 は 腹 側 運 動 前 野 のF5野 へ 出 力 す る16)0 こ の 他 に1次 体 性 感 覚 野 の1野 へ 投 射 す る と い う 研 究 が あ る。 VIP野 の 結 合 図6DはVIP野 の 入 力 と 出 力 を 示 す 。VIP野 に 自 己 の 頭 部 と 顔 面 を 中 心 に した 空 間 が 表 現 され て い る17)。VIP野 の ニ ュ ー ロン の 多 くは 光 刺 激 と 頭 部 ・顔 面 の 触 覚 刺 激 の 両 方 に 応 答 す る 。 こ の 種 の 空 間 情 報,視 覚 情 報 を 基 礎 に し て,VIP野 の ニ ュ ー ロ ン の1群 は 自 己 の 頭 部 ・顔 面 に 向 かっ て 近 づ い て 来 る 対 象 に 特 異 的 に 応 答 す る 。 こ の 他 に,頭 の 回 転 な ど の 前 庭 刺 激 に 応 答 す る ニ ュ ーロ ン も 存 在 す る 。 VIP野 の 入 力18)25) 体 性 感 覚 情 報 は,3a野,1野,2野,PEip野, SII野 か ら 入 る 。 視 覚 情 報 は 後 頭 皮 質 のV2野 と V3A野 か ら入 る 。 頭 頂 皮 質 の 多 感 覚 形 式 野 のPO 野,7m野,MIP野,LIP野,7b野 か らVIP 野 へ 投 射 が あ る 。 前 庭 皮 質 のRi野 と 帯 状 回 の24
野 か ら も入 力 が あ る。 側 頭 皮 質 か らは,運 動 視 に
関 お るMST野,MT野,FST野
か ら,聴 覚 連
合 野 のToc野
か ら,聴 覚 連 合 野 と結 合 す るTPO
野 か ら入 力が あ る。 この 他 に,前 頭 皮 質 との 問 に
出力 情 報 を 修 正 す るた め の 回 路 と見 られ る結 合 が
あ る。 す な わ ち,前 頭 皮 質 の 補 足運 動 野,腹 側 運
動 前 野 のF4野,前
頭 眼 野,前
頭 前 野 の46野 が
VIP野
へ 投射 して い る。
VIP野
の 出 力
VIP野
は腹 側 運 動 前 野 のF4野
へ 出力 す る16)0
7m野
の結 合
図6Fは7m野
の入 力 と 出 力 を 示 す。7m野
は
頭 頂 皮 質 の半 球 内 側 面 に 広 が る領 域 で あ る。7m
野 は 視 線 を 手 の 位 置 に 一 致 さ せ る動 作 に 関 与 す
る 。
7m野
の 入力
視 床 の 枕 核,後
背 側 核(LP核),前
核,髄
板
内核 は7m野
へ 入 力す る。 後 頭 皮質 のV2野(18
野)か
ら視 覚 情 報 が,頭 頂 皮 質 の5野(PE野)
とSII野 か ら体 性 感 覚 情 報 が,7m野
に入 る。 頭
頂 皮 質 か ら7m野
へ は,こ の 他 に,多 感 覚形 式 野
のMIP野
と7a野
か ら入 力 が あ る。 島 皮 質 の顆
粒 細 胞 部(Ig)か
ら入 力 が あ る。 島皮 質 は 外 側 溝
の 深 部 に あ り,吻 尾 方 向 に広 が る大 きな構 造 であ
る。 細胞 構 築 に基 づ い て,マ カ クサ ル の 島皮 質 は
顆 粒 細 胞 層 の な い 無 顆 粒 部Agranular
insula
(IA),発
達 の 悪 い 顆 粒 細 胞 層 を 持 つ 乏 顆 粒 部
Dysgranular insaula(Id),顆
粒 細 胞 層 の よ く発
達 した顆 粒 部Granular insula(Ig)の3領
域 に分
か れ る。
無 顆 粒 部 は 島 皮 質 の吻 側1/3の
腹 側 部
を 占め る。 乏顆 粒部 は 島皮 質 の 吻側1/3の
背側 部
と中1/3の
腹 側部 を 占 め る。 顆 粒 部 は 島皮 質 の 中
1/3の 背 側部 と尾 側1/3を
占 め る。 島 皮 質 は 動 物
性 機 能 と植 物 性 機 能 に関 与 す る。 島皮 質 は 前 頭 前
野,帯
状 回,視 床 下 部,扁
桃 体,中
脳 中 心 灰 白
質 と強 い 結 合 を し,脳 幹 の 前 庭 核 へ も投 射 す る
。側 頭 皮 質 か らは,海 馬 傍 回 のTF野
と海
馬 前 台,上
側 頭 溝 のMST野,MTp野,TPO
野,TAa野
か ら入 力 が あ る。 辺 縁 皮 質 か らは,
帯 状 回 の24野 と23野 が強 い投 射 を7m野
へ 行 う。
脳 梁 膨 大 後 皮 質(29野
と30野)か
ら弱 い投 射 が7
m野
へ あ る。
7m野
の 出力
7m野
は,頭 頂 皮 質 のV6A野,前
頭 皮 質 の補
足 運 動 野,背 側 運 動 前 野 のF2野 とF7野,前 頭
前 野 の45野 と46野 へ 投 射 す る 。F7野 に 補 足 眼 野
(supplementary eye field,SEF)が 存 在 す る が,
SEFへ の 投 射 は 弱 い 。 前 頭 前 野 の46野 を,地 域 別 に,背 側46野,主 溝46野,腹 側46野 に 分 け る と,7m野 か ら の 投 射 が 最 も 強 い の は 背 側46野 で あ る 。 7m野 は,大 脳 基 底 核 の 尾 状 核 と被 殻,中 脳 の 上 丘,橋 の 橋 核 へ 投 射 して い る 。 4.4.頭 頂 前 庭 野 の 結 合 大 脳 皮 質 に お い て 前 庭 機 能(平 衡 機 能)の 表 現 さ れ て い る領 域,す な わ ち 前 庭 野 は,頭 頂 皮 質 の 3aNV野,3aHV野,2NV野 とVIP野,外 側 溝 内 のRi野(PIvc)とVPS野,帯 状 回 の23野, 腹 側 運 動 前 野 のF4野 に 存 在 す る 。 3aNV野(3a-neck-vestibular region)は,頸 部 と肩 の 骨 格 筋 が 再 現 さ れ て い る3a野 の 領 域 で あ る 。3aHV野(3a-hand-vestibular region)は,手 と手 根 の 骨 格 筋 が 再 現 さ れ て い る3a野 の 領 域 で あ る 。3aNV野 と3aHV野 に は,三 半 規 管 刺 激 に 応 答 す る ニ ューロ ンが10-20%存 在 し,一 次 前 庭 野 で あ る 。 最 高 位 前 庭 野 は,多 数 の 前 庭 皮 質 野 と豊 富 な 結 合 を 持 ち,脳 幹 の 前 庭 核 へ 直 接 投 射 す る こ と か ら,Ri野(PlVC野)で あ る と 見 な され て い る。 3aNV野 の 結 合 図6Gは3aNV野 の 入 力 と 出 力 を 示 す 。 視 床 か ら3aNV野 へ の 投 射 は,主に 後 腹 側 核 か ら起 こ る 。 そ の 他 に,枕 核,後 核 群,髄 板 内 核 の CL核,内 側 膝 状 体 の 大 細 胞 部 が3aNV野 へ 投 射 す る。 な お,内 側 膝 状 体 の 大 細 胞 部 か ら の 投 射 は 聴 覚 入 力 を 意 味 す る と は 解 釈 さ れ て い な い 。 3aNV野 は3aNV野 内 の 他 の 体 部 位 野 と 双 方 向 結 合 す る が,特 に3aHV野 と強 結 合 す る1203aNV 野 は 体 性 感 覚 野 の3b野,1野,2野,5野,SII 野 と 双 方 向 結 合 を,多 感 覚 形 式 野 の7b野 と 強 い 双 方 向 結 合 を す る 。3aNV野 は 多 感 覚 形 式 野 の VIP野 へ 投 射 す る 。3aNV野 は 前 庭 野 の 島 後 野 (Ri野,PIvc)か ら 強 力 な 入 力 を 受 け て い る 。3aNV野 は 島 皮 質 の 顆 粒 細 胞 部(Ig)と 帯 状 回 の 23野 と24野 の 帯 状 回 運 動 野 と 双 方 向 結 合 す る 。3 aNV野 は4野 と腹 側 運 動 前 野 のF4野 へ 投 射 す る 。 2NV野 の 結 合 頭 頂 間 溝 の 吻 側 端 部 の 細 胞 構 築 は2野 で,こ こ に 頸 部 の 筋 が 再 現 さ れ て い る 。 こ の 部 か ら 三 半 規 管 刺 激 に 応 答 す る ニ ュ ーロ ン 活 動 が 記 録 さ れ る の で,こ こ は 一 次 前 庭 野 と 見 な さ れ,特 別に2NV 野(2-neck-vestibular region)と 呼 ば れ る 。2 NV野 は 頭 頂 間 溝 のAIP野 ・VIP野,島 後 野, VPS野 へ 投 射 し て い る 。Area7tはArea2 NVと 同 じ で あ る。 島 後 野(Ri野,頭 頂 島 前 庭 皮 質,PIVC)の 結 合 図6Hは 島 後 野 の 入 力 と 出 力 を 示 す 。 島 後 野 は 外 側 溝 の 深 部,島 皮 質 の 後 方 に 位 置 す る 。 島 後 野 の ニ ュ ー ロ ン の50%は 三 半 規 管 刺 激 に 応 答 す る 。 少 数 の ニ ュ ー ロ ンは 移 動 す る 視 覚 刺 激 に 応 答 す る 。 島 後 野 の 入 力 視 床 か ら 島 後 野 へ の 主 な 投 射 は 後 腹 側 核 か ら 起 こ る 。 こ の 他 に,下 後 腹 側 核(VPI),枕 核,後 核 群,髄 板 内 核,内 側 膝 状 体 の 大 細 胞 部 が 島 後 野 へ 投 射 す る 。 島 後 野 へ,前 庭 野 の3aNV野, 3aHV野,2NV野 か ら 入 力 が あ る が,3aNV野 か ら の 入 力 が 最 も 強 い 。5野 か ら も入 力 が あ る 。 島 後 野 は 下 頭 頂 小 葉 の7a野,7b野 と 結 合 す る が,7a野 と の 結 合 は 相 対 的 に 強 い 。 島 後 野 は, 島 皮 質 の 顆 粒 細 胞 部(Ig),VPS野,帯 状 回 の23 野 か ら入 力 を 受 け て い る 。 島 後 野 の 出 力 島 後 野 は,頭 頂 間 溝 のVIP野,補 足 運 動 野, 腹 側 運 動 前 野 のF4野,前 頭 眼 野 へ 投 射 す る。
シ ル ヴ ィ ウ ス 後 視 覚 野(visual posterior
sylvi-anarea,VPS野)の 結 合 図61は シ ル ヴ ィ ウ ス 後 視 覚 野 の 入 力 と 出 力 を 示 す 。VPS野 は 外 側 溝 の 深 部 に 存 在 し,島 後 野 の 後 方 に 位 置 す る 。 シ ル ヴ ィ ウ ス 後 視 覚 野 か ら, 移 動 す る視 覚 刺 激 に 応 答 す るニュ-ロ ンが 記 録 さ れ る。 す な わ ち,こ こ に 追 跡 眼 球 運 動 に 応 答 す る ニ ュ ー ロ ン が 存 在 す る。 VPS野 へ 前 庭 情 報 が3aNV野,2NV野 か ら 送 ら れ る 。7b野 か らVPS野 へ の 入 力 が あ る 。 VPS野 へ,運 動 視 情 報 が 上 側 頭 溝 のMST野 か ら,注 意 情 報 が 帯 状 回 の23野 か ら 入 る 。VPS野 は,外 側 溝 底 に あ るRi野(島 後 野,PIVC)と 腹 側 運 動 前 野 のF4野 へ 投 射 し て い る。
前庭 皮 質 野 か ら脳 幹 前 庭 核 へ の 投 射
前 庭 皮 質 野,す
なわ ち,一
次 前 庭 野 の3aNV
野,3aHV野,2NV野
と前 庭 連 合 野 の 島後 野,
シル ヴ ィ ウス 後 視 覚 野,23野
とF4運
動 前 野 内 の
前 庭 機 能 に 関 わ って い る領 域 は,脳 幹 の前 庭 核 へ
直接 投 射 して い る。
4.5.頭 頂 聴 覚野 の結 合
一 般 に
,頭 頂 皮 質 へ の 聴 覚 情 報 の 入 力 は 少 な
く,頭 頂 間 溝 のVIP野
とLIP野
の み が聴 覚 情 報
を受 け取 って い る。 上 側 頭 回 に あ る聴 覚 連 合 野 の
Toc野
とTpt野,上
側 頭 溝 の 多 感 覚 形 式 野 の
TPO野
がVIP野
へ 投 射 す る25)。TPO野
は 上 側
頭 回 の聴 覚 連 合 野 と結 合 して い る 多感 覚形 式 野 で
あ る39)OLIP野
はTPO野
と結 合 して い るの で25),
聴 覚 情 報 がTPO野
を 介 してLIP野
へ 入 っ て い
る と見 な され て い る。
謝
辞
本 稿 を読 み,数
々 の有 益 な 意見 を お寄 せ 下 さ っ
た 酒 田英 夫 博 士 と山 下 晶 子 博 士 に 感 謝 い た し ま
す 。
省略語表
ヒ ト大 脳 の 脳 溝 1中 心 溝central sulcus 2中 心 後 溝postcentral sulcus 3頭 頂 間 溝intraparietal sulcus4第 一 中 間 溝isulcus intermedius primus, 別 名 ヤン セ ン 溝iSulcus Jensen 5上 頭 頂superior parietal sulcus 6頭 頂 後 頭 溝parieto-occipital sulcus 7帯 状 溝cingulate sulcus
8中 心 傍 枝paracentral ramus
9帯 状 溝 縁 部pars marginalis of the cingu-late sulcus
10頭 頂 下 溝subparietal sulcus 11鳥 距 溝calcarine sulcus
マ カ ク サ ル 大 脳 の 脳 溝 と 構 造
ASD anterior subcentral dimple前 中 心 下 陥 凹 Cal calcarine sulcus鳥 距 溝
CC corpus callosum脳 梁 Ce central sulcus中 心 溝 Ci cingulate sulcus帯 状 溝
E cal external calcarine sulcus外 鳥 距 溝
IA inferior limb of arcuate sulcus弓 状 溝 下 肢
I cal inferior calcarine sulcus下 鳥 距 溝 Insula island of Rei1島
IOS inferior occipital sulcus下 後 頭 溝 IPS intraparietal sulcus頭 頂 間 溝 LF lateral fissure外 側 裂(溝) LU lunate sulcus月 状 溝
m marginal part of cingulate sulcus帯 状 溝 縁 部
OTS occipito-temporal sulcus後 頭 側 頭 溝 POS parieto-occipital sulcus頭 頂 後 頭 溝 PS principal sulcus主 溝
Ro rostral sulcus吻 溝 RS rhinal sulcus嗅 溝
s spur of arcuate sulcus弓 状 溝 棘
SA superior limb of arcuate sulcus弓 状 溝 上 肢
S cal superior calcarine sulcus上 鳥 距 溝 Sp subparietal sulcus頭 頂 下 溝
SPCD superior precentral dimple上 中 心 前 陥 凹 SPD superior postcentral dimple上 中 心 後 陥
凹
STS superior temporal sulcus上 側 頭 溝
サ ル 脳 の 細 胞 構 築 野 と 機 能 野 1,2somatosensory areas l and 2
2V vestibular zone of area2;別 名area7t, area2NV
3a,3b somatosensory areas 3a and 3b 4 primary motor area;M1,area4
5 somatosensory area 5;別 名areaPE, area5D
5V ventral subdivision of area5;別 名area PEip,area PEa
6 premotor area 7a area7a;別 名area PG 7b area7b;別 名area PF 7aop opercular area 7a 7bop opercula rarea 7b
7m mesial part of area7;別 名areaPGm, areaMDP
7t tip of intraparietal sulcus;別 名area 2V 8 area8;別 名frontal eye field
9 frontal area 9 10 frontal area 10 12 frontal area 12 17 area17;別 名areaV1,area OC 18 area18;別 名areaV2,area OB 19 area19;別 名areaOA 23,24 cingulate areas23and24
28 area28;別 名entorhinal cortex 35,36 perirhinal areas35and36
45 frontal area45 46 frontal area46
Al primary auditory cortex AIP anterior intraparietal area CIP caudal intraparietal area
CMAd dorsal cingulate motor area;別 名area 6c CMAv ventral cingulate motor area;別 名area
24c
Dorsa146 dorsal subdivision of area46 DP dorsal prelunate area;別 名area Opt FI primary motor cortex:別 名M1,area4 F2 caudal part of dorsal premotor area;別
名PMdc,area 6a α F2 paperi-arcuate part of F2
F2pre-CD area F2 around the superior precen-tral dimple
F3 supplementary motor area,SMA
F4 caudal part of ventral premotor area;別 名PMvc,area 6b,area 4c
F5 rostral part of ventral premotor area;別 名PMvr,area 6b
F6 pre-supplementary motor area;pre-SMA
F7 rostal part of dorsal premotor area;別 名 PMdr,area6aβ
FEF frontal eye field;area8
FST floor of superior temporal sulcus G gustatory cortex
Id dysgranular insular cortex Ig granular insular cortex
IPa intraparietal sulcus associated area in STS
LIP lateral intraparietal area LOP lateral occipital parietal area
MDP medial dorsal parietal area;別 名area 7m,
area PGm
MIP medial intraparietal area MST medial superior temporal area MT middle temporal area
PEc caudal part of area PE
PEci area PE within cingulate sulcus PGa PG associated area of STS PIP posterior intraparietal area PIVC parietoinsular vestibular cortex PM premotor area;別 名area 6 PO parietal-occipital area PS46 area 46 in principal sulcus Ri retroinsular area
RS retrosplenial cortex
SI primary somatosensory cortex SII second somatosemsory cortex SMA supplementary motor area;別 名F3 TAa temporal area TAa
TE temporal area TE TEa temporal area TEa
TEm temporal area TE,medial part TEO temporal area TE,occipital part TF,TH temporal areas TF and TH
Toc temporal opercular caudalarea;別 名area PA,areaCM,areapaAC
TPO temporalparietooccipital associated area in STS
V1 visual areal V2 visual area2 V3 visual area3 V3A visual area3A V4 visual area4 V6 visual area6 V6A visual area6A
Ventra146 ventralsubdivision of area46 VIP ventral intraparietal area VPS visual posterior sylvian area
文
献
1) Culham JC, Kanwisher NG: Neuroimaging of
cognitive functions in human parietal cortex.
Curr Opin Neurobiol 11: 157-163, 2001
2) Shikata E, Hamzel F, Glauche V, et al:
caudal and anterior intraparietal
sulcus in
humans: An event-related
fMRI study. J
Neurophysiol 85: 1309-1314, 2001
3) von Bonin G, Bailey P: The neocortex of
macaca mulatta. The Univesity of Illinois
Press, Urbana, Ill. 1947
4) Kappers
CUA, Huber GC, Crossby
EC:
Chapter X. The development of the cortex in
mammals. In "The comparative anatomy of
the nervous system of vertebrates, including
man. Vol 3" . Hafner Publishing Company,
New York, 1960
5) Papez
JW:
Comparative
neurology.
A
manual and text for the study of the
ner-vous system of vertebrates. Hafner
Publish-ing Co, New york, 1929
6) Braak H: Architectonics of the human
telen-cephalic
cortex.
Springer-Verlag,
Berlin,
1980
7) 小 川 鼎 三,細 川 宏:日 本 人 の 脳.金 原 出
版,東 京, 1953
