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医薬品開発における薬物トランスポーター研究の重要性 杉山雄一理化学研究所イノベーション推進センター杉山特別研究室 薬物動態におけるトランスポーターの役割 1) 生体内では多様な輸送担体 ( トランスポーター ;TP) が生体に必要な物質を積極的に取り込み 異物を積極的に排泄する機能を担っている TP

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(1)

”医薬品開発における薬物トランスポーター研究の重要性”

杉山雄一

理化学研究所 イノベーション推進センター 杉山特別研究室

薬物動態におけるトランスポーターの役割1) 生体内では多様な輸送担体(トランスポーター;TP)が生体に必要な物質を積極的に取り込み、 異物を積極的に排泄する機能を担っている。TP は生体に投与された薬物も認識し、薬物の消化管吸 収・組織への分布・排泄過程に関与し、薬物動態に重要な役割を果たしている。TP の分子認識に基 づいた創薬を行うことにより、薬効を維持したまま副作用に関連する組織・細胞への移行を抑える 理想的な動態特性を持つ薬の開発も可能になると期待され、医薬品開発の面からも TP 研究への関心 が高まっている。TP は、薬物代謝酵素と同様に、分子多様性、遺伝子多型、臓器特異性、広範な基 質認識性という特性を持つことがわかってきた。医薬品開発においては、in vitro から in vivo への外 挿法などを確立していくことで、医薬品開発過程での遺伝子発現系の利用、薬物間相互作用の評価、 遺伝子多型による個人間変動の解析など TP 研究を実用段階へと進めていく必要がある。当日はその 実例を示したいと思う。 創薬過程における薬物体内動態の予測 創薬の初期段階では非常に多くの医薬品候補化合物が合成される。これらの候補化合物に対し ては、薬物動態に関わる膜透過性や代謝酵素による代謝速度、薬効に関わるレセプターとの結合親 和性などをin vitro実験系で検討する。この実験で得られる各種パラメータを比較することで、候補 化合物の絞り込みを行い、臨床試験に導入する薬物を決定する。しかし、臨床試験に入った医薬品 候補化合物のうち、ほとんどが市場に出る前に脱落することも事実である。従って、多様なin vitro スクリーニングから得られたパラメータを統合的に組み入れた生理学的薬物速度論モデル(PBPK model)などの数理モデルを構築し、薬物動態や薬効の経時変化を定量的にシミュレーションするこ とにより、臨床試験に入る前に、ヒトに投与したときの各化合物の医薬品としての有効性を正確に 予測することが重要になる2) 。PBPK modelでは、"薬の投与量、投与頻度、投与経路"、"投与される 患者の病態、生理的状態(年齢、性、肝腎機能)"という入力情報から、"血中濃度、組織中濃度推 移"という出力を予測することが可能になる1)。生理的状態の違い(年齢、性、肝腎機能)により生 理解剖学的なパラメータがどのように変化するかについては、十分な情報が集まっている。このよ うな背景下、近年、米国FDAが中心となり、PBPK modelによる薬物動態予測を、臨床試験の必要性 の判断、投与量の設定に活かそうという動きがある2)。今後は、病態、生理的状態に伴う各種代謝酵 素やトランスポーター、創薬標的蛋白質の量、質の変動に関するデータが積算されることにより、 将来的には、薬物間相互作用を避けることのできる医薬品、個人間変動や病態による影響を受けに くい医薬品、治療域の広い医薬品の開発につなげることができるものと期待される。このことを目 的として、私は理研の特別研究室での研究を開始した3) (引用文献)

1) Giacomini KM and Sugiyama Y. Membrane transporters and drug response, in “Goodman & Gilman's The

Pharmacological Basis of Therapeutics 13th Edition”, (Brunton LL, Chabner BA, Knollman B, eds)

Chapter 5, McGraw-Hill Companies, New York, NY, in press (2017).

2) Zhao, P. et al. Applications of physiologically based pharmacokinetic (PBPK) modeling and simulation during regulatory review. Clin. Pharmacol. Ther. 89,259–267 (2011)

(2)

1

杉山雄一

理化学研究所 杉山特別研究室

医薬品開発における薬物トランスポーター研究の重要性;

個人間変動解析が重要

財団法人島原科学振興会45周年記念講演会

日時:2017年11月6日(月) 16;00-18;00

場所: 千代田区一ッ橋 如水会館

(3)

2

(4)

新薬の臨床開発中の開発中止理由

Frank, R. and Hargreaves, R., Nat Rev Drug Discov 2: 566-580 (2003)

新薬開発中止事由に占め

る割合

50%

40%

30%

20%

10%

0%

1991年

2000年

ヒトにおける組織内薬物体内動態

の定量的予測の必要性

・多様性

・種差

・遺伝子多型

・広範な基質特異性(相互作用)

薬効・毒性の問題も、体内動態

の問題(組織への分布、反応性

代謝物の生成など)に起因する

可能性が高い

3

NEDO マイクロドース

プロジェクト(2008-2011

)

1991年 から 2000年への変化; IVIVEの成功(血中濃度の改善)

CC, HTS

(5)

Animal Bioavailability

primate

rodents

dog

Difficulty to predict Human BA from animal study

Adv. Drug Deliv. Rev., 54: 433-451, 2002

mainly due to the

difference in

・first pass metabolism in

liver and small intestine

・transporter activity

(6)

医薬品開発における問題点

• 薬効に関与する組織への移行性の評価

• 副作用に関与する組織への移行性の評価

分子イメージング and/or modeling &simulation

(この相互フィードバックが必要)

組織移行性を支配する薬物トランスポーター

5

これまでは、測定が容易な血中フリー濃度を基準に医薬品の開発が

なされてきた。

“血中フリー濃度 ∝ 組織中のフリー濃度 ” は、必ずしも成立しない

(7)

(7)

Role of drug transporters in the disposition of drugs in many tissues

(Giacomini KM and Sugiyama Y. Membrane transporters and drug response, in “Goodman &

Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 13

th

Edition”, (Brunton LL, Chabner

BA, Knollman B, eds) Chapter 5, McGraw-Hill Companies, New York, NY, in press (2017))

ABC transporters

:

Liver, Kidney

;Detoxification

(on the apical

membrane where the final efflux out of thebody takes place)

GI、Brain

Self-defense

(on the apical membrane

where the entry takes place)

(8)

血漿中濃度

組織中濃度

時間

(1) クリアランス臓器(肝臓・腎臓)、吸収臓器(小腸)の能力低下

→血漿・組織中濃度の上昇

低下

低下

(2) 標的臓器(脳、腫瘍など)での取り込み上昇・排泄減少

→組織中濃度の上昇

上昇

低下

時間

組織中濃度

(3) 標的臓器でのトランスポーターの機能変化

→内因性物質の濃度変動

薬物による阻害

(○:胆汁酸)

(例)

血漿中胆汁酸

濃度

control 薬物投与後

薬物の効果、毒性へのトランスポーターの関わり

(9)

セリバスタチン服用患者のうち52人(うち米国で

31人)の

横紋筋融解の副作用による死亡

が報

告された。

また、米国における31人の患者のうち12人で

フィブラート系高脂血症薬ゲムフィブロジルの

併用

が確認されている。

(British Medical Journal 323, 359 (2001)およびBritish

Medical Journal 323, 415 (2001)より)

薬事日報平成13年8月15日号

薬事日報平成13年8月27日号

OATP1B1

他の

トランス

ポーター

CYP2C8

CYP3A4

2C8, 3A4

2C8

N F CH3O OH OH COONa

セリバスタチン

N F O H OH OH COOH

M-1

N F CH3O OH OH COOH O H

M-23

肝取り込み

シクロスポリンA

ゲムフィブロジルグルクロナイド

セリバスタチンによる副作用 ~ゲムフィブロジルとの薬物間相互作

用~

日本では、重篤な副作

用のためメーカー自主

回収へ

肝臓におけるセリバスタチンの解毒メカニズムと相互作用薬の

主な作用点の解明

Shitara, Y. et al.

J Pharmacol Exp Ther,

311(1): 228-36 (2004)

Shitara, Y. et al.

J Pharmacol Exp Ther,

304(2): 610-6 (2003)

Shitara, Y. and Sugiyama Y.

Pharmacol Ther,

112(1): 71-105 (2006)

8

(10)

トログリタゾン(ノスカール)の肝障害による発売中止

○1997.3 日本でノスカール発売開始

○1998年

・日本:

約20万人

に処方

→重症肝障害例(入院or入院相当)が

74人(2700人に1人)

→死亡が

4人(50000人に1人)

・アメリカ:

約60万人

に処方

→肝障害

165例(約3600人に1人)

○1997.12 イギリス自主的に販売中止

厚生省緊急安全性情報配布

○1999.5

・アメリカ:

約160万人

に処方

→死亡が

155人(約10000人に1人)

→重症肝障害が

1200-1800人に1人

○2000.3.21 アメリカで販売中止

○2000.3.22 三共が自主回収

1997.12.1 厚生労働省発表

2000.3.22 三共(株)発表

原因の一部にBSEPトランスポーター

の阻害が関与

(11)

トログリタゾンはBSEPを強力に阻害

トログリタゾン

BSEPを阻害する化合物は多い

toxicological sciences 136(1), 216–241 2013 doi:10.1093/toxsci/kft176

Advance Access publication August 16, 2013

(12)

1)Watanabe I et al./Clin Pharmacol Ther. 2003 ,73 435-55

2)Simon T et al./Clin Pharmacol Ther 2000 ,67 432-437

例. Troglitazone

1)

臨床報告

白人

アジア人

GST M1欠損

53%

GST M1欠損

53%

GST M1

その他

47%

その他

47%

GST T1

GST T1欠損

20%

GST T1欠損

47%

その他

53%

その他

80%

GST M1

GST T1

+

GST M1欠損 +

GST T1欠損

25%

その他

75%

GST M1欠損 +

GST T1欠損

10%

その他

90%

5)Bolt HM et al./Curr Drug Metab. 2006 7 613-628

3)Ueda K et al./Pharmacogenomics. 2007 8 435-442

4)Fukushima Y et al./Clinica Chimica Acta. 2008 389 98-102)

GSTM1 欠損型,T1 欠損型の

頻度

5)

Glutathione-S-transferase(GST)M1/T1の重要性と変異の頻度

GSTM1欠損/T1欠損の割合

Control

13/85

(15%)

肝障害患者

10/25

(40%)

GSTM1とGSTT1の遺伝子欠損

troglitazoneにより誘起される肝障害のリスク

上昇を示唆する臨床報告がある。

 Carbamazepine、tacrine、valproic acidに

より誘起される肝障害でも同様の傾向が臨

床で報告されている。

2-4)

GSTM1/T1の遺伝子欠損が薬物誘起性肝障害の発症に影響を与える

ことが報告されている。

(Odds ratio = 3.692)

(13)

副作用の確率(XX万人に一人)

• F(Tox) = Fmdr1 x Fother trans x Fces

• 0.001 0.1 0.1 0.1

• 0.00001 0.05 0.01 0.02

• 0.000001 0.01 0.01 0.01

12

その他の要因によるばらつきも多く見られる(食事、併用薬、年齢、性差などなど)

稀な副作用には個人差を決める複数の支配要因があり、その重複度合いにより副作用の

頻度が決まってくる

(14)

PWC: Pharma 2020

現在の臨床フェーズ単位の

研究開発プロセスは、

探索試験研究、上市後の

追加検討を前提とした承認

などにとって代わられる

(15)

血中濃度

血中濃度

標的近傍の

濃度

薬効

副作用

代謝酵素

トランスポーター

トランスポーター

受容体・酵素

ヒト・動物の種差

標的臓器・組織への分布

動物

ヒト

ラット

イヌ

分子イメージング研究は真の橋渡し研究

臨床試験

基礎研究

Phase1

Phase2

Phase3

前臨床試験

承認審査

薬効薬理研究 一般薬理研究 薬物動態研究 一般毒性・特殊毒性研究

マイクロドージング(ヒトに投与)

薬物動態の測定により、新薬の

スクリーニングが可能になる

分子イメージング技術を用いた

ターゲット受容体占有率の測定

薬効薬理(POM、POC)の測定、

臨床投与量の推定が可能になる。

分子イメージング技術を用いた

疾患診断法の確立

客観的・定量的な臨床評価判定

(Surrogate Endpoint) が可能になる。

杉山雄一,前田和哉.前臨床から臨床試験へのブリッジング.

In:杉山雄一,津谷喜一郎編著.臨床薬理に基づく医薬品開発戦略.廣川書店2006;p.15-36

薬物の作用部位における

受容体や酵素との結合

14

(16)

15

(1) 開発化合物自身を標識して

薬物動態 (MD)

(2) 開発化合物の

作用点

をPETで測定

(MD, e-IND)

● Proof of Mechanism や

用量設定

被験者選択

(3) バイオマーカーをPETによって画像化

● イメージングバイオマーカーによる

有効性・安全性の評価

治療薬の開発(治験)にPETを利用

(MD, e-INDガイダンス設定)

医薬品開発の臨床試験にPETを活用

(16)

(17)

事例 米国のメルク社(M&SD)

M.Bergstrom, et.al., Biol. Psychiatry, 55, 1007 (2004).

がん放射線・化学療法時に併用される制吐剤

の開発候補化合物の

臨床投与量を推定するためPET分子イメージングを活用した事例

Neurokinin (NK)-1受容体拮抗剤アプレピタント

を開発する際に、

脳のNK-1受容体に親和性の高いPET用標識化合物(トレーサー)の

[

18

F]-SPA-RQ

も同時に開発した。

[

18

F]-SPA-RQの取り込み量は、

線条体で最大値、

小脳で最小値、その比を占有率の計算に。

占有率が90%以上となる血中濃度は100ng/mL

以上であり、

投与量100mg以上

に相当する。

薬効薬理POCの確認

臨床投与量の推定

その後、

アプレピタントと共に[

18

F]-SPA-RQのデータもFDAに申請

世界で初めて承認

された。

小脳

線条体

[

18

F]-SPA-RQ投与時のPET画像

アプレピタント

投与前

アプレピタント

100mg投与後

占有率94%

100mg

18

F

矢野恒夫 博士より提供

16

(18)

現状打破のための方法論の基盤となるもの

# モデリング&シミュレーション(M&S)

# バイオマーカー探索(&その方法論の開発)

# バーチャルクリニカルトライアルの実践

(19)

欧米のレギュレーション(ガイダンス)においては、薬

物間相互作用の予測において、in vitro データに基づ

く modeling & simulationが取り入れられ、その結果を

もとに臨床データなしに添付文書に記載することも,

状況によっては可能になっている。

(全ての場合を尽くすDDI試験は不可能)

DDI以外にも、多くの被験者を対象に臨床試験を行う

ことが難しい場合もあり

(小児、臓器機能の変動時(肝

障害、腎障害、 頻度の低い遺伝子多型 など)

modeling & simulationの方法が取り入れられようとし

ている。

(20)

薬物間相互作用(DDI)の予測

19

(21)

医薬品の体内動態予測における生理学的薬物速度

論モデル(PBPKモデル)の重要性

薬物間相互作用ガイダンス(FDA)におい

て、

“PBPKモデルを用いた解析で相互

作用がないと判断されれば、追加の臨床

試験を免除しうる

という明示的な記載が

ある。

→無駄な臨床試験の排除、創薬の

効率化

メリット

Simulation

 あらゆるケース(特定の分子機能

の変動など)を仮想的に作り出し

て血中・組織中濃度を推定可能。

Sensitivity Analysis

 最終的な結果(薬効に関連する

PK推移など)に影響する重要な

パラメータの同定

(Watanabe T et al. JPET, 328, 652-662 (2009))

(22)

医薬品(候補化合物)の誘起する副作用・毒性の

支配因子としてトランスポーターは重要

(代謝酵素同様)

血中曝露の制御から組織中曝露の制御の時代へ!

トランスポーターは、副作用の観点から医薬品開発(成功確率)を

困難(低下)にしている多くの事象

(薬物間相互作用、 個人間変動

(PGx)、人種差、臓器機能の変動時(肝障害、腎障害)における副

作用頻度の違い)

に関与しえる

何がきっかけになって、医薬品開発においてトランスポーターが

注目され始めたのか?

(23)

セリバスタチン服用患者のうち52人(うち米国で

31人)の

横紋筋融解の副作用による死亡

が報

告された。

また、米国における31人の患者のうち12人で

フィブラート系高脂血症薬ゲムフィブロジルの

併用

が確認されている。

(British Medical Journal 323, 359 (2001)およびBritish

Medical Journal 323, 415 (2001)より)

薬事日報平成13年8月15日号

薬事日報平成13年8月27日号

OATP1B1

他の

トランス

ポーター

CYP2C8

CYP3A4

2C8, 3A4

2C8

N F CH3O OH OH COONa

セリバスタチン

N F O H OH OH COOH

M-1

N F CH3O OH OH COOH O H

M-23

肝取り込み

シクロスポリンA

ゲムフィブロジルグルクロナイド

セリバスタチンによる副作用 ~ゲムフィブロジルとの薬物間相互作

用~

日本では、重篤な副作

用のためメーカー自主

回収へ

肝臓におけるセリバスタチンの解毒メカニズムと相互作用薬の

主な作用点の解明

Shitara, Y. et al.

J Pharmacol Exp Ther,

311(1): 228-36 (2004)

Shitara, Y. et al.

J Pharmacol Exp Ther,

304(2): 610-6 (2003)

Shitara, Y. and Sugiyama Y.

Pharmacol Ther,

112(1): 71-105 (2006)

22

(24)

B

loo

d

Lung

Rapidly perfused organs Slowly perfused organs

Kidney

Liver

Intestines

B

loo

d

Elimination

Dosing

ADME, PK, PD and

MOA

Metabolism

Active transport

Passive diffusion

Protein binding

Drug-drug interactions

Receptor binding

System component

(drug-independent)

PBPK Model

Predict,

Learn, Confirm

Drug-dependent

component

A. Intrinsic/extrinsic Factors

B. PBPK Model components

Huang and Temple, 2008

Individual or combined effects

on human physiology

Zhao P, et al Clin Pharmacol Ther 2011

EXTRINSIC

INTRINSIC

DDI

Environment

Medical Practice

Regulatory

Alcohol

Smoking

Diet

Age Race Disease Gender Genetics Pregnancy Obesity Organ Dysfunction

規制当局の審査におけるPBPKモデリング&シミュレーションの適用

(25)

FDAでの医薬品審査過程におけるPBPKモデリングの活用

(Huang S-M et al., J Pharm Sci, 102, 2912-23 (2013))

・PBPKモデリングデータが医薬

品の承認審査過程にも登場

・現状では、

DDIの予測

への活

用が大部分

(26)

米国FDAでの医薬品審査過程におけるPBPKモデリング

の活用

(Huang S-M et al., J Pharm Sci, 102, 2912-23 (2013))

・PBPKモデリングのデータ

が医薬品の承認審査過

程にも登場し始めている。

・現状では、

DDIの予測

の活用が大部分を占めて

いる。

公的文書である添付文書にもPBPKモデルによる相互作用

予測の結果が掲載されている。既に多くの実例がある!!

例:iburutinib (ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬)

(27)

Ibrutinib example – DDI prediction

26

(28)

スタチンの効果、副作用をPBPKモデリングで予測する

(29)

28

OATP1B1の遺伝子多型と医薬品の薬理効果・有害作用と

の関連

Odds ratio of this SNPs for

simvastatin-induced myopathy

521

C

/

T

vs

T

/

T

4.5 fold

521

C

/

C

vs

T

/

T

16.9 fold

(SEARCH Collaborative Group et al., New Engl J Med,

359, 789-99 (2008))

a.シンバスタチンを服用している患者さん

で筋障害の発現と関連する遺伝子を調べ

たところ、OATP1B1のSNPsが検出された。

★有害作用との関連

★薬理効果との関連

OATP1B1の遺伝子変異による肝取り込み能

力の変化は、プラバスタチンのコレステロール

低下作用に影響を与えなかった。

(Igel M et al.,Clin Pharmacol Ther, 79, 419-26 (2006))

b.イリノテカンを服用している患者さんでは

好中球減少の発症頻度が、OATP1B1の

SNPにより有意に異なる。

521

T

/

T

→ 10/55

521

C

/

C

and

C

/

T

→ 12/26

Insidence of neutropenia

(30)

JUPITER Trial: ロスバスタチンのLDL-Cholesterol低下

作用に関連する遺伝子を検出

JUPITER Trial: 6989名をロスバスタチン20mg/日群

(3523名)またはプラセボ群に割り付け

Circ Cardiovasc Genet 2012;5:257-264

ABCG2 (BCRP)LDL-C低下作用を増強

RS2199936: ABCG2のイントロンの変異421C>Aの変異と相関(r

2

=0.81)

変異によってLDL-C低下幅が5.23mg/dL増した。

ABCG2 (BCRP) c.421C>A変異でLDL-C低下が増強されるとの報告が別に2報あり

SLCO1B1 (OATP1B1)

LDL-C低下作用を増強しない

RS4149056: SLCO1B1 (OATP1B1)の

521T>C変異:2.7(SE0.8)増加

421C>A変異で胆汁中排泄低下

→肝臓中曝露増大

→LDL-C低下作用増強

521T>C変異で

肝取り込み低下

ともに血漿中曝露を増大させるが、

有効性に対する影響は異なる。

⇒では血漿中曝露の人種差は有効

性にどう影響する

LDL

-C

低下

(mg

/dL)

ABCG2 GG GA AA

(2794) (669) (59)

-53.0 -59.0 -64.0

29

(31)

30

0.001

0.01

0.1

1

10

0

30

60

90

120 150 180

P

las

m

a

co

n

ce

n

tr

at

io

n

M

)

Time (min)

生理学的(PBPK)モデル

生理学的 (PBPK) モデルと血漿中濃度推移の予測

:

i.v. 0.134mg/kg (実測値*)

:

p.o. 0.26mg/kg (実測値*)

ヒトにおける血漿中濃度推移

Lung

Brain

Muscle

GI

Q

Brain

Q

Muscle

Q

Liver

PS

inf

PS

bile

PS

eff

CL

met

Blood

Urine

Q

total

k

a

i.v.

p.o.

Li

v

er

inlet

Li

v

er

Li

v

er

Li

v

er

Li

v

er

inlet inlet inlet inlet

Kidney

Q

Kidney

:

予測値

eff met bile

H,j h j i, inf b j H, j H, j H, eff h j i, inf j i, j b, h j i, j i, b r b i h b b

C

PS

CL

PS

f

C

PS

f

dt

dC

V

C

PS

f

C

PS

f

C

C

Q

dt

dC

V

C

CL

C

C

Q

dt

dC

V

b

血液

毛細血管内

肝実細胞

in vitro試験の結果をin vivoへと外挿したパラメータ

(32)

31

Plasma

Liver

PSinf(OATP1B1)

PSbile (MRP2、BCRP)

トランスポーターの輸送能力の変動が医薬品の血漿中・組織中濃度の時間推移に

与える影響

内輪は火の車(Calm on the surface, but big fire in the core)

0.001 0.01 0.1 0 60 120 180 240 300 360 Time (min) P la s m a c o n c e n tr a ti o n (m g /m l) 0.001 0.01 0.1 0 60 120 180 240 300 360 Time (min) P la s m a c o n c e n tr a ti o n (m g /m l) 0.01 0.1 1 0 60 120 180 240 300 360 Time (min) P la s m a c o n c e n tr a ti o n (m g /m l) 0.01 0.1 1 0 60 120 180 240 300 360 Time (min) P la s m a c o n c e n tr a ti o n (m g /m l)

肝取り込み能力

(OATP1B1, PS

inf

)の

変動は、血中濃度に

(有害作用)大きな影

響を与えるが、組織

中濃度(薬効)の時

間推移はほとんど影

響を受けない。

胆汁排泄能力

(MRP2, BCRP,

PS

bile

)の変動は、肝

臓中濃度(薬効)に影

響を与えるが、血漿

中濃度の時間推移に

与える影響は小さい。

×1/3

×3

×3

×1/3

×1/3

×3

×1/3

×3

(20)

(33)

in vitroスクリーニング

動態パラメータ (膜透過性、蛋白結合、クリアランスなど)

薬効パラメータ (阻害定数など)

連立微分方程式

PET試験導入による有効性・安全性の予測・検証

有効性・安全性を予測

薬物動態(PK)

薬理効果と標的部

位における濃度の

関係(PD)

濃度 効果

PET試験による医薬

品の吸収・臓器移行・

分布の解析

最適化・

検証

予測

標的臓器への暴露

量・暴露時間の測定

PETによるイメージング

PKモデル解析

マイクロドーズ試験

(34)

33

Summary

1) 規制側がM&Sの重要性を認識し始めている。実際に、

DDIガイダンスなどにそのことが反映され、臨床データなし

でも、信頼できるM&Sの結果を基に添付文書に書かれる

ことが始まっている。

2) 代謝酵素、トランスポーター(TP)の関わる複雑な薬物動態

を示すセリバスタチンが市場から撤退した(横紋筋誘拐)。

最近、この結果をretrospectiveに解析する研究が出始めて

いる(相互作用、遺伝子多型)

3) 稀な副作用については、遺伝子多型、薬物間相互作用、

臓器機能の低下、その他の要因(性、年齢、免疫系の個人差)

を含む多要因の組み合わせが悪い方向に重なったときに生じる

と考えられる。これらのすべての要因を組み入れたM&Sに

(35)

34

Virtual Clinical Studies (VCS)

(36)

Cさん

Cさん

Cさん

Cさん

Bさん

“Real person”

“Virtual person”

臓器血流速度

代謝酵素・トランス

ポーターの発現量

受容体の

発現量

臓器血流速度

代謝酵素・トランスポー

ターの発現量

受容体の発現量

パラメータの分布(mean±SD)を維持して各パラメータを

ランダムサンプリングする(モンテカルロシミュレーション)

分布

B

A

B

A

A

B

時間

A

B

Aさん

パラメータ1 = ○○

パラメータ2 = ××

パラメータ3 = △△

………

→ヒト集団の薬物動態・薬

効のばらつきを臨床試験

を経ることなく、in silicoで

予測することが可能

薬効の個人間のばらつきを予測するための方法論:“

Virtual Clinical Trial”

Ito T, Sugiyama Y et al. : Drug Metab Pharmacokinet 25:243 (2010)

Kato M, Sugiyama Y et al. : Drug Metab Pharmacokinet 25:367 (2010)

Zhao P, Sugiyama Y, Huang SM et al. : J Clin Pharmacol 52:91 (2012)

生理学的、生化学的パラメータ

の個体差データを収集

(ヒト組織などの利用)

様々な“Virtual person”の仮想データ

をモデルに基づき発生

(37)

標的臓器内濃度およびその変動を非臨床段階から予測し

薬効および安全性について個体間変動とともに推定する

Target organ

36

0

50

100

150

200

0

1

2

3

4

time

P

ls

ma

c

o

n

c

.

Toxic

Effective

0 4 8 12 16

200

100

150

50

0

Time (hr)

Or

gan

drug c

onc.

(ng

/mL)

0

20

40

60

80

100

Efficacy

Toxicity

Dose

%

of

ma

ximu

m

valu

e

0

Monte Carlo

simulation

Phase IIb

Phase III

Toleration

Human

PK-PD

Efficacy and Safety

Dose/Exposure-Response

Dose Adjustments

Therapeutic

Index

Covariate Effects

Phase I

Phase IIa

Pre-Clinical

Efficacy

Toxicology

PK-PD

Registration

Labeling

Dosage

Phase IV

Results Relative to Competitors,

Regional Differences, Therapeutic

Index

Learning & Confirming

Uncertainty

CL

int,h

, PS

inf,t

variability data base

PD variability simulation

(38)

Dose

Transport(influx, efflux)

Metabolism

Dose

Virtual Clinical Studyの概念図

AUC

blood

AUC

u,Target

, AUC

u,Tox

1. 各素過程(CL

int

, f

p

, Q

h

等)のパラメータにバラツキを与え

大量の仮想患者を発生させてAUC

blood

を計算

2. 薬効部位および副作用発生部位に

おける非結合型AUCを計算

3. in vitro実験等から暴露量(AUC)と効果・副作用の

関係を導き、効果・副作用それぞれが現れたと

考える閾値を設定

4. 2のAUCと3で設定した閾値を用いて効

果・副作用が現れる確率を投与量ごとに

計算

(39)

• 複雑な代謝経路を有する

• 主な副作用:好中球減少と下痢

– 活性代謝物SN-38の暴露に起因

– 複数の副作用関連因子が種々の臨床試験で報告

• UGT1A1 *6 and *28

• OATP1B1 521T>C

• MDR1 3435C > T

• MRP2 -1774delG

• BCRP 34G>A

• MRP5など

• Biliary index; AUC(CPT,

• SN-38, SN38 glucuronide)

塩酸イリノテカン(CPT-11)

38

(Han JY et al., Lung Cancer, 2009.)

(Sai K et al., Cancer Chemother Pharmacol., 2010)

(Lara PN Jr et al., J Clin Oncol., 2009)

(Han JY et al., Lung Cancer, 2009)

(Chen S et al., Pharmacogenetics and Genomics., 2015)

イリノテカンとその代謝物のPBPKモデルを構築し、VCSを実

施することにより既存の臨床試験結果を再現できるかを検証

→副作用因子の網羅的な探索への挑戦

(40)

(WT Teft et al., Br J Cancer., 2015.)

Virtual Clinical Trial

No. 1

***

*

***

***

***

*

***

***

***

***

Clinical study

0

1

2

3

0

1

2

3

***

***

***

***

* p < 0.05 ** p < 0.01 *** p < 0.001

• 点滴静脈内投与終了後(90分)

における活性代謝物、

SN-38の

血漿中濃度曝露を再現できた

• 血漿中および消化管細胞内曝

露量に基づいて副作用発生確

率を算出した結果、

2種類の副

作用(Neutropenia, Diarrhea)

に及ぼす遺伝子多型の影響に

ついても再現できた

活性代謝物SN-38の血中曝露に及ぼすUGT1A1(代謝酵素)と

OATP1B1(トランスポーター)の遺伝子多型の影響をVCTで再現

0

1

2

3

Virtual Clinical Trial

No. 3

C

SN -38

/dos

e/BS

A

(10

-4

m

2

mL

-1

)

Number of combined

variant alleles

Virtual Clinical Trial

No. 2

20

上記、Richad Kim らの

論文をターゲット研究と

した

(41)

医薬品開発への貢献

人種差要因の推定

 ロスバスタチンの血漿中曝露の人種差の解析によって、OATP1B1

活性に人種差があることが推察された。

⇒新規化合物がOATP1B1基質の場合に人種差の可能性を

考慮できる。

血漿中・肝臓中濃度の推定

 薬物動態特性の考慮によって、有効性・安全性に関わる肝臓中濃

度も推定でき、血漿中濃度より人種差が少ないと推察された。

⇒効果・副作用発現部位の濃度を使用することで、

有効性・安全性予測精度の向上が期待できる。

有効性・安全性の推定

 効果・副作用発現部位の濃度を使用することで、有効性・安全性の

人種差情報を補完するシミュレーションが可能となる。

⇒臨床試験が行われていない条件についても

シミュレーション試験を実施でき、適正用量推定に利用できる。

40

(42)

• Take Home Message

Virtual Clinical Trial(VCT) は夢物語で

なくなった。

開発のどの段階でも結構です。前向き計算を

行ってみたい化合物があれば声をかけて下さい。

(43)

42

COI

I am a scientific advisory board member of the

following companies.

1) SimCYP

2) SEKISUI Medical

I am and have been a consultant of and

collaborating with 30 domestic and global

(44)

43

Sugiyama Lab Main Members

Takashi Yoshikado(wet +dry, IVIVE DDI)

Kota Toshimoto (dry,VCT(Virtual clinical study)

Kim, Soo-Jin:

(DDI, PGx, IVIVE)

Lee, Kyeong Ryoon(Daewoong) (DDI, IVIVE)

Kim, Sae Hee (Daewoong) (DDI, IVIVE)

Atsuko Tomaru (IVIVE, Bioanalysis wth LC/MS/MS)

Aya Kiriake (IVIVE, transporter expression systems)

Kiyoe Morita (IVIVE, isolated hepatocyte (suspension, plated)

In-Soo Yoon (DDI, isolated hepatocytes (suspension, plated)

Kazuya Maeda, Hiroyuki Kusuhara (Univ of Tokyo)

Azusa Futatsugi (DDI, PGx)

Keiko Ishigame (IVIVE, Bioanalysis)

Hisako Motokawa(IVIVE, Bioanalysis)

RIKEN

Secretaries

Sachie Sato

Chinami Yamada

Rie Abe

Aya Miyamoto

Acknowledgement

参照

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