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Title
ダイナンギンポの生活史
Author(s)
塩垣, 優; 道津, 喜衛
Citation
長崎大学水産学部研究報告, v.33, pp.21-38; 1972
Issue Date
1972-08
URL
http://hdl.handle.net/10069/31071
Right
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
21
ダ イ ナ ン ギ ン ポ の 生 活 史
塩 垣 優 ・道 津 喜 衛
Life
History
of
the
Blennioid
Fish,
Dictyosoma burgeriMasaru SHIOGAKI and Yoshie DOTSU
The blennioid fish, Dictyosoma burgeri Van der Hoeven, growing over 250 mm in total length in full grown size, is distribnted along the coasts of Japan and Korea. It is found in the crevice of rock and under stone in the inter-tidal zone and shallow water at the rocky coast of Nomozaki (Lat. 32° 35.31' N, Long. 129° 45.5' E) near Nagasaki. The food of the fish consists of molluscs, crustaceans, amphipods and small fishes. The spawning season seems to extend from December to April.
Numerous specimens of the blennioid fish, including planktonic larvae, were collected from the coast of Nomozaki during 1968 to 1971. Two adult males and three adult females collected in November 1970 were kept in a table aquarium for the spawning experiment, and they spawned there in January 1971. The male parent fish coiled about the spawned egg mass, which was pyriform and measured about 6 cm across the center.
The egg was spherical, measuring from 2.12 to 2.18 mm in diameter. It was provided with a rather narrow perivitelline space and a light yellow yolk
containing an oil globule in it. The egg membrane, being rather thick and milky white in color, had adhesive prominences with which neighbouring eggs were attached one another. The incubation period of the egg extended from 23 to 29 days at the temperature varying between 12.5 and 13.0℃
The newly hatched larva, being from 8.8 to 9.9mm in total length and elongate in form, could swim freely. The planktonic larvae collected with fish lamp and kept in an aquarium entered into the bottom life at the early juvenes-cent stage, reaching 15 to 19 mm in total length.
The pelvic fins developed to scale-like tiny spines at the juvenescent stage in
* Contributions from the Fisheries Experimental Station of Nagasaki University
the early bottom life, but the fins disappeared as the fish grew. The lateral line system developed at the body length of about 20 mm and completed its net work at the body length of about 30 mm. From the examiantion of the collected specimens, it seems that the fish grows to about 10 cm in total length in a year, and to at out 17 cm and rnature in 2 years, and the females spawn only once a year. The mature ovarian eggs in 9 unspawned females enumerated from 2,145 to 6,475. 松原1)によるとニシキギンポ科Pholidaeに,また, Makushok2)によるとタウエガジ科 Stichaeidaeに属するとされているダイナンギンポDictyosoma burgeri Van der Hoeven は,画館以南の日本各地および朝鮮沿岸に産することが知られている成魚の全長が25cmを越 える比較的大型のギンポ類の一種である。 筆者は,今回,長崎県西彼杵郡野母崎町沿岸で,本種の仔,稚魚を含む多数の標本を採集 でき,また,同地で採集した成魚を水槽で飼育して産卵させ,その産卵習性,卵内発生を知 ることができたので,それらによってダイナンギンポの生活史の大要を述べる。 はじめに,本研究に当って種々の便宜をはかっていただいた本学部付属水産実験所の尊母 豊教官,および,研究材料の採集に当って助力をいただいた本学部の三浦信男,内田隆信, 田中健治の諸氏に厚くお礼を申し上げる。なお,本研究の一部は,塩垣に対する伊藤留学研 究振興財団の研究助成金によった。この機会に財団の各位に対して深謝する。
成魚について
一種は,Temminck and Schlege13)がSieboldのFauna Japonicaに,長崎県島原産 の叡感によって,Dictyosomaとして図示,記載しているものである。 ダイナンギンポ属Genus Dictツosomaにはダイナソギンポだけが含まれるが,品種の成 魚の形態上の特徴をいくつかあげてみると,体表の皮下には,頭部を除いて覆瓦状に並ぶ微 小円鱗が密に分布し,さらに,この鱗は垂直各鰭の基底部にもみられる。 体側には網目状に発達した側線系があるが,その詳細はあとで述べる。 腹鰭は鱗片状の微小棘として発育初期に一旦は現われるが,成長に伴ってしだいに消失し てゆく。この腹鰭の発生,消失の過程についてもあとで述べる。 胸鰭は小さく,その長さは職長の}/3ほどであり,後鎖骨はない。’ 両出歯は,前部で小面帯をなし,その外露命は肥大し,鋤骨および口蓋骨にも絨毛冷雨歯 面がある。胃はト字状をなし,幽門部に5−6本の幽門垂がある。 卵巣は左右がゆ合して単一型をなすが,このような単一型の卵巣を持つギンポ類の魚とし ては,既にCentronotUS gunnellus4)が知られていたが,今回,新たに,ギンポEnearias nebulOSUS,カズナギZoarchias venefiCUS,タナカゲンゲ五:γcoaes tanakaiにおいても同様 な単一型の卵巣を持つことを確認できたが,これらはいずれも北方系のギンポ類であるとさ れている。塩垣・道津:ダイナンギンポの生活史 23 雄の前頭蓋部の黒色斜走帯,および,上之骨壷の黒色斑点は,共に,雌のそれらよりは大 きく,かつ,はっきりしている。また,雄の吻部および後頭部にみられる冠状隆起と下唇の 黄色斑は,いずれも雌ではみられない。 泌尿生殖孔突起の形態には,ヘビギンポ科Tripterygiidaeやイソギンポ科Blenniidae の魚類で知られているような明瞭な雌雄差は認められなかった。 54尾の標本について,鰭式は,D. LII−LIX,6−13, A. II,38−44, P.9−13, C.12−16 の変異を示し,21尾について,脊椎骨数は,63−71であり,かなりの変異を示した。 Fig. 1. Adults of the blennioid fish, Dictyosoma burgeri. A, female, 214 mm in total length. C, head of A. D, head of B. each scale representing 1 cm B, male, 251 mm, 一 般 生 態 野母崎町の海岸では,本種は,岩礁海岸の潮間帯のうち,陸地からいくらか淡水が流れて きているような所に多く,そこでは,全長10cm以下の未成魚は,干潮時に干出する中,高 位の潮間帯の小石の間によくみられたが,それより大型の個体は,より低位の潮溜内や浅海 の石の間,岩の割目などに潜んでおり,それらの胃内には,ビザラガイ,テンガイ,大型の 端脚類,エビ・ヵ二類,ムラソイの若魚,ヒゲミミズハゼ,セジロハゼなどの小型魚類を認
めた。 筆者が野母崎町野母湾内の採集定点で,1968,1969の両年に毎月,定期的に行なった水中 集魚灯を用いての仔,稚魚の採集では,Table 1に示すように, 1月から5,月の間に全長 6∼19mmの浮遊生活を送る本種の稚仔が多数採集されている。層この三岡の出現期と成熟雌 魚がとれた時期とを合せてみると,野母崎町海岸における二種の産卵期は,12,月より4月に わたると考えられる。なお,野母崎町海岸で周年にわたって採集した本種の未成魚および成 魚合せて三百余尾について,その全長組成を 検討したところ,本種は,生後満1年で全長 10cm前後,満2年で17cm前後に達し,雌雄 共に満2年で成熟するものと考えられた。ま た,工種の産卵初期に当る1971年12月1,3 日の両日に採集した58尾について,その雌雄 別の全長組成をFig.2に示したが,これよ り,雄は雌より大きくなること,産卵に与る 雌魚は,全長170mm前後の満2年魚が多い ことなどが推察される。なお,採集標本のう
ちの最大個体は,雄は全長264mm,雌は
234mmであった。
2 0 8 6 4 2 切一〇,で一﹀一ηに一 申O ﹂ΦOEコZ [] femate 層mat・ 50 100 ISO ’Qdo ” 260 Totat tength in mm Fig.2. Size frequency of the blennioid fish. specimens collected on Dec. 1 and 3, 1971 in the spaw− nlng season. ダイナンギンポの雌は,あとで述べるように,一産卵期に1回だけの産卵を行なうものと 思われるが,成熟卵巣内の各卵は,ほぼ等しい卵径を示し,その数は,魚体の大きさに従っ て増し,2,146−6.475を数:えた(Table 2)。 Table 1. Collections of the planktonic larvae of the blennioid fish with fish iamp in Nomo Bay near Nagasaki in 1968 and 1969. Coll. Collection No. of Range of T. i Coll. Collection No. of Range of T.no. date spec. L. in mm 1 no. date spec. L, in mm
12nδL4567・
89012nδ
﹁⊥−⊥11⊥ Jan. 29, 1968 Feb. 22 Mar. 20 Mar, 19 Mar. 28 Apr. 5 Apr. 12 Jan. 13, 1969 Jan. 18 Jan. 19 Jan. 28 Feb. 3 Feb. 4 470ρ04⊥OO9臼
2
25 5 32 45 48 100 8.3一 9.5 9.3−12.2 14.5−17.0 16.3−18.0 17.0 15.5−17.0 15.5−16.0 8.0−10.0 8.5一 9.5 8.0−11.0 7.0−13.0 6.0−10.0 7.0−13.0 156789012345678
ーユー1222222222
Feb. 5, 1969 Feb. 17 Feb. 18 Feb. 19 Feb. 25 Mar. 5 Mar. 12 Mar. 18 Mar. 27 Apr. 5 Apr. 10 Apr. 17 Apr. 25May 3
786966988860176081129531114
4
11∩δ 可⊥21⊥ 7.0−12.0 6.5−14.5 7.0−12.0 7.0−14,0 8.0−15.0 9.0−17.0 8.5−17.0 7.5−19.0 7.0−17.0 9.0−16.0 7.0−18.0 8.0−17,0 10.0−17.0 14.0一 15 .0 T. L. : total length of the specimens (spec.)塩垣・道津:ダイナンギンポの生活史 25 Table 2. Measurements and counts of the mature ovarian eggs of the blennioid fish. Fish no. T. L, in
mm
Egg diameter Number ofin micron ovar. eggs123456789
133 154 166 170 179 196 197 200 212 725一 875 1,000−1,450 350一 480 1,200 400一 600 750−1,025 550一 780 500一 700 950−1,450 2,146 2,836 3,342 3,513 3,385 4,528 4,802 6,003 6,475 T. L. : total length 水槽内における産卵 1970年11月 14一 23日に,野母崎町海岸で採集したダイナンギンポの成魚10尾(雄7尾,全 長216−264mm;. 唐R尾,211−234 mm)を同町野母にある本学部付属水産実験所の屋内セ メント水槽(海水流去式,潮型,たて147 cmよこ65 cm,深さ65 cm)内に収容し,カタク チイワシの生肉を餌として飼育を続けたところ,約2か,月を経た1971年1.月11日に,3尾の 雌魚がいずれもその腹部が著しく膨出しているのが認められ,産卵が近いと考えられたので, 同日,3尾の雌魚と大型の雄2尾(全長250mm,264 mm)の計5尾を選び出し,底面に砂 を敷いて底面濾過式とした4面ガラス張りの角型水槽(たて90cm,よこ45cm,深さ45cm) に収容し,人工の産卵巣として同じ形をした素焼の下水用土管(内径5cm,長さ45cm)3 本を底面に並べ,さらに,水槽の採光面を除く他の3側面を暗膜でおおって水槽内の魚にな るべく外部からの刺戟を与えないようにして飼育を続けた(Fig.3. A)。水槽内の魚は,1 −2尾ずつ別れて,それぞれ別々の土管内に潜み,頭部だけをわずかに外にのぞかせてい’た が,3つの土管の間では魚の入れ代りがときどき認められた(Fig.3,B)。この卓上水槽で 上述の成魚の飼育を始めてから5日後の1,月16日午後3時に,はじめて,1つの卵塊が土管 外の砂底上にころがっているのをみつけたが(Fig.4, A),この卵塊は,後述の産卵のよう に,その親旧によって保護されておらず,その表面に起伏の多いかたまりであった。また, この大きな卵塊のほかにも,少数の卵からなる多数の小卵塊が砂礫底上の各所に散在してい たが,これら大,小の卵塊の卵は,いずれも受精していた。このあと,同じ水槽内にいて, 腹部がなおふくれており,産卵前であると思われた雌2尾,および,既に腹部がいしゅくし ていて産卵後と思われた雌1尾を取り出して,魚体調査のために第3アミールアルコールで 麻酔したところ,産卵前であった2尾は,卵塊を吐き出し,また,産卵後の雌の胃内にも卵 群が一杯に詰っていた。これらからみると,前述の水槽底にあった卵塊は,一旦産み出され て受精した卵塊が産卵雌魚を含むこれらの雌魚によって食い散らされたのちのものであった ものと考えられる。なお,同じ水槽内にいた2尾の雄魚も卵を食べていたかどうかについてFig. 3. The aquarium and nests used for the spawning experiment of the blennioid fish. A, the aquarium, the inside darkened with cover. B, the adult fish in an earthenware pipe set on the aquarium bottom for the spawning nest. は調べていない。上記の大卵塊を一時水槽から取り出してその大きさを測定し,卵内発生の 状態を観察したのち,最大の雄魚が頭をのぞかせていた土管の口の近くに再びもどしたとこ ろ,その雄魚は土管から出てきて,尾部を卵塊に巻きつけ,一旦はそれを土管内に引きこん だが,数分後には再び土管外に押し出してしまった。この大卵塊は径5cmほどのかたまりで 発見時における閣内発生の段階は,4−8細胞期であった。なお,前述の産卵後と考えられ た雌魚を開腹して調べたところ,その卵巣内には,少数の完熟卵が残っているにすぎず,本 種が全部の卵巣内卵を一回で放出する1回産卵魚であることを示していた。 上述の第1回目の産卵から8日後の1月24日に,その産卵の不首尾を考慮し,水槽内をよ り暗くして親魚に対する外部からの刺戟を和らげること,および,産卵巣をそのなかで親魚
塩垣・田津:ダイナンギンポの生活史 Fig. 4. Spawnings of the blennioid fish in the aquarium. A, the mass of eggs casted by the parent fish. B, fish coils about the egg mass. C, the same fish. the male parent 27
が自由に行動できるようなより広いものにすることを目的として,水槽の4側面の暗幕を更 に広げ,加えて,水槽上面の一部も暗幕でおおった。また,水槽底に2個の石をおき,その 上にそれまで人工産卵巣として用いてきた土管を積みかさね,土管と砂礫底との間に暗い空 室ができるように設置した。この状態で,水槽に残っていた雌雄各2尾の成魚の飼育を続け たところ,水槽修正後4日経った1月28日午前10時に,2組の雌雄がそれぞれに産卵前行動 と思われる状態を示しているのがみられた。この時には1組の雌雄は,水槽のおくまった暗 いすみにおり,ほかの1組は土管のしたの空室内にいたが,ともに,雌は体の前半部を直立 させて土管にもたせかけ,雄は体をまるめてこの雌をとりまき,その吻部を雌の腹部におし つけていた。なお,この時たは,雌の泌尿生殖孔が径7mmほどに開いているのが目立った (Fig.5)。これらの雌雄は,観察を始めたのち,すぐにつがいを解いたが,これより約1時 間半後に再び観察したところ,1尾の雌は,それまでふくらんでいた腹が小さくなっており, この個体は産卵を終った直後の状態であると思われたが,水槽内には卵塊はみられなかった ことから,前述の第1回目の産卵におけるように,一旦産み出され卵を水槽内にいた成魚が すく・に食べてしまったものと考えられたが,その確認はしていない。更に,その翌日の1月 29日午前9時に水槽の最:も奥部に当る暗いすみで,最大の雄が卵塊に体を巻きつけて保護し ているのがみいだされた(Fig.4, B, C)。この卵塊の卵は,発見時には16細胞期であり, 卵塊全体の形は,雄親魚がそれを体でしめつけるたびに変化をみせながら,西洋梨形となり, 高さ7cm,上部径3cm,中央部径6cmほどの大きさになった。雄親魚は,ときどき尾鰭をゆ っくりと振ったり,卵塊を吻端でつっついてころがしたりしていたが,水槽外面の暗幕をは
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II::r“=一l− 8{ Fig. 5. Posture of the pairing blennioid fish in the prespawning behavior. gp : opened genital pore of the female fish塩垣・道津:ダイナンギンポの生活史 29 ずして水槽内をきゅうに明るくすると,二親魚は,卵塊に体を押しつけたり,吻端でつっつ いたりしていそいで卵塊を暗い方へ移動させようとしたが,うまくできなかった。また,こ の卵保護中の雄気魚は,もう1尾の雄が近ずくと,口を大きく開き,咬みついて追っ払って いた。この雄魚が卵塊を抱いて留っていた水槽内の位置は,その後の20日間ほどのあいだほ とんど変りがなかった。また,この雄島魚は,魚肉片を与えるとよく食べた。 この卵塊は,産卵後20日あまりを経た2月19日に,丸丸発生の観察を行なうためにその一 部を取り出すという作業をしたところ,その翌日の2月20日には,雄島魚,および別の雄魚 によって食べられてしまっていた。なお,同日,卵保護の雄親魚ともう1尾の雄とを取り出 して胃を開いてみたところ,両者共に,その胃内には多数の卵がみられたが,その記数は, 雄親魚の方がはるかに少なかった。雌2尾は,これよりさきに取り上げていたので,この時 には水槽内には既にいなかった。 以上,ダイナンギンポの水槽内における産卵の経過を述べたが,今回は,産卵行動そのも のを直接には観察できなかった。しかし,これらの経過を通じて本種でも,産卵魚が外部の 刺戟に対して敏感であり,両親魚が自らその卵を食べること,受精卵はこれまでにCentro− notus gunnellUS5)やギンポ6)など北方系のギンポ類の産卵で知られているように,隣接す る卵が互に接着して大きな卵塊をなし,これを糠喜魚が体で巻いて保護する習性があること を明らかにできた。なお,前述のように,産卵前と思われた雌の生殖孔が大きく開いていた ことからみると,雌が卵を産出する時には,卵を1粒ずつ産み出すのではなく,多くの卵が ひも状かたまりとなって出てきて受精し,のち,雄親魚がその地盤を体でまいて動かしなが ら1つの大きな卵塊として作りあげるものと考えられる。なお,あとに述べる人工受精時に おける観察によると,個々の未受精卵の卵膜は,いびつな球形をなし,卵膜の全表面に弱い 粘性が認められ,海水中におかれた卵では,隣接する卵が互に接する部分だけに,卵膜に二 次的に突起を生じ,それでもって互に接着するが,この付着突起以外の部分では卵膜の粘着 性はなくなった。 卵 内 発 生 さきに述べた産卵経過のうち,1971年1月28日に産卵したと思われた雌魚を同日取り出し て卵巣を調べたところ,卵巣内になお少数の完熟卵が残っていたので,これと前述の屋内セ メント水槽に飼育していた雄魚1尾から切り出した精巣とを用いて浅いガラス鉢内で湿導法 によって人工受精を行ない,受精卵を得た。この受精卵では,飼育水温13℃で授精後1時間 20分で胚盤の隆起がみられたが,この間に,卵が互に接する部分の卵膜が隆起して上記のよ うな付着突起が形成される。この人工受精卵のなかには,卵がかたまって小卵塊をなすもの と,1個ずつばらばらになっているものとの両方があったが,後者では卵膜に付着突起は現 われなかった。卵膜の付着突起は,必ず隣接する卵が互に接する部分にだけ形成されるので, 隣接する卵が多い卵塊中央部の卵では突起数も多くて,4−7個を数え,隣接卵の少ない卵 塊表面部の卵では2−3個にすぎなかった(Fig.6)。 卵は沈性卵で,卵膜は厚く,内側にはうすい透明層があり,その外側に厚みのある乳白色 をした不透明層があり,外層は内層との境界部からはげ落ちやすい。卵はほぼ球形をなし, 卵径は,2.12−2.18mm(20卵について)で,囲卵腔は広くなく,卵黄は淡黄色を呈し,そ
灘撃
Fig. 6. Developing egg of the blennioid fish. ap : adhesive prominences of the egg membrane. のなかに淡黄緑色をした径490−550μの大油球1個があるが,この大油球に付随して白色 雲状物がみられる。 1971年1月16日の産卵で得られた卵塊の卵をばらばらにして酸素の給供状態をよくして卵 内発生の経過を観察したが,卵発生中の水温は,12.5−13.5℃であった。 観察当初に8細胞期(Fig.7, A)であった卵は,7時間後には桑実胚期(Fig.7, B) となり,141時間後には眼胞にレンズが形成され,尾部末端は卵黄表面から遊離し始める。 胚体には多数の体節を生じ,卵黄の中央部にはくびれが現われ,卵黄は,胚体の左右にひろ がる2葉形を呈し始める(Fig.7, C)。 11日後には,胚体尾部は長く伸び,眼には黒色素 胞が沈着し始め,胸鰭原基が現われている(Fig.6, D)。 以下の発生経過は,乳白色をした不透明な卵膜のために卵膜外からの観察が困難であった ために卵膜を破って取り出した胚体について観察を行なった。 15日後には,胚体長は4.73−6.45mm(10卵について)となり,個体差が大きい。この胚 体では,心臓がゆるく搏動を始め,頭部下面には既に多数の頼粒状をしたふ化酵素腺がみら れるが,口はまだ開いていない。卵黄の左側部表面には,心臓に向って流れる血液流がみら れるが,この血液流は胚体の左側部にだけみられ,分枝を出していない。尾部の後部体腹面 および体側には少数の黒色素胞がみられる。体節数は65−73を数えた(Fig.7, E)。 19日後には胚体長は7.55−7.85mm(3個体について)となり,口は既に開き,長く伸びた 胚体は卵膜内で2重に折れ曲っており,体の黒色素胞ははっきりしており,卵黄はまだかな り残っている(Fig.7, F)。 胚体はこれよりのち更に発生を続け,体長9・mm前後の大きさ になったところで,23−29日後にふ化した。塩垣・道話:ダイナンギンポの生活史 31
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’’’’’”・・.., ..質 亭鱗.魯掌 Fig.7. Egg development of the blennioid fish. A, 8−cell stage. B, morula stage. 7 hrs. and 10 mins. after A. C, 141 hrs. after. D, 11 days aiter. E, 5.0 mm long embryo, 15 days after, drawn after the egg membrane had been removed. F, 7.6 mm embryo, 19 days after and 7 days before hatching. ap : adhesive prominences, heg : hatching enzyme glands. The water temperature of the incubator varied between 12.5 to 13,50 C.仔 ・ 稚 魚 ふ化直後の前期仔魚は,生時の全長が8.85−9.94nim(14尾について:Fig.8, A)で, まだかなりの量の卵黄を残しており,卵黄は腹腔内でたてに長く伸びており,その先端部に 油球がある。体は細長く,肛門は,体の中央よりやや前方に開いているが,その開口部の体 全体に対する相対的な位置は,その後の発育によってもほとんど変らない。標はなく,黄緑 色の胆のう原基は体の左側にある肝臓原基中央部にみられ,また,淡紅色をした脾臓原基が 憾∵暢 達り\
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Fig. 8. Larvae and juveniles of the blennioid fish. A, newly hatched prolarva, 9.8 mm in total length. B, postlarva, 11.8mm, 6 days after hatching. C, 14.1mm postlarva. D, 17.O mm early juvenile in the last planktonic life. E, 15.0 mm juvenile entered into the bottom life. F, 19.3 mm last juvenile. A and B drawn from the living specimens and the others from the fixed speclmens.塩垣・道津:ダイナンギンポの生活史 33 肝臓後端の体腔背部にみられる。黒色素胞は,体腔背部に十数個が1列をなして並び,ほか に,尾部の体側中央線上に樹枝状に伸びているものと腹部の腹正中線上に1本の細い直線状 をなすものとがあり,これらは本仔魚の一つの特徴となっている。さらに,胸鰭基底部およ び鎖骨下端に各1個ずつの黒色素胞が,また,肛門後方の腹正中線上に1列に並ぶ多数の小 黒色素胞群がある。体は,生時には,頭部が淡黄色を呈するほかは無色半透明である。筋節 原基数は66−72(22−23+43−50),14尾について:成魚の脊椎骨数は63−71を数えた。 この仔魚は,水槽内ではその表,中層を活発に泳ぎ,強いすう光性を示した。 ふ化後6日’目の卵黄吸収直後の後期仔魚は,全長11.8fitftt(Fig.8, B)で,下尾山骨原基 が現われ,その腹側には尾鰭原基がみられる。 以下の発育各期の仔,稚魚は,先に述べたように,筆者が野母湾内で行なった水中集魚灯 を用いての採集で得られた多数の稚仔の標本(Table 1)と1970年4月15日に同採集で得た 全長14.5−16.Omm*の浮遊生活末期の稚魚70余尾を小型の卓上水槽でその後70日間飼育し て得た材料によった。 浮遊生活期の全長14.1mmの後期仔魚(固定標本)では尾鰭はよく発達しており,背, 轡両鰭の二条原基もみられる(Fig.8, C)。 全長17.Ommの浮遊生活末期のものでは,多くの黒色素胞が皮下に埋没したり,消失し たりしている。腹鰭以外の各鰭は,既にそれぞれの鰭条定数を備えており,同じ発育期にあ った7尾について,鰭式はD.LIII−LVI,7−11, A. II,38−43, P.11−12, C.12−14の 変異を示した(:Fig.8, D)。 全長15・Ommの稚魚(Fig・8, E)は,前述の集魚灯採集で得た浮遊生活末期のものを水槽 で飼育して4日を経たもので,底陵生活に入ってから既に3目を経たものである。この稚魚 では,黄色素胞と微小黒色素胞が多数現われて体色は淡褐色を呈し,頭部はやや黒味がかっ ている。胸鰭は,相対的な縮小を示し,その長さは頭長の約%である。 集魚灯で採集した浮遊生活末期の仔魚を23日間飼育して全長19.3mmの稚魚に達したも のは(Fig・8, F),水槽底で親魚と同様な体をくねらせる行動を示すようになった。この発 育期のものには,体色に黒味が強いものと,黄白色を呈するものとの両型が現われたが,図 には黒っぽい体色の個体を示した。この個体では,目を通る黒褐色の斜走帯と背鰭外縁部の 黒点が明瞭であり,背,暦両鰭は,共に前方で低く,後方で高くなり,最後部でそれぞれ尾 鰭の上,下葉基底部に連なっているが,それらの境界部には切れこみがある。体側の鱗およ び側線系の形成はまだみられず,これらは,後述のように,全長約30mmの大きさになる までは完成をみない。 腹鰭の発達と消失 成魚で腹鰭がみられない魚類は比較的多いが,発育初期に一旦形成された腹鰭がその後魚 体の成育に従って消えてゆく例はごくまれである。ダイナンギンポの腹鰭は,その一例であ る。 ダイナンギンポでは稚魚期に腹鰭が左右1対の鱗片状の微小棘として現われるが,この腹 鰭の形成は,ほかの鰭と比べて著しく遅れ,稚魚が浮遊生活から底棲生活に移行したのちに *同時に採集された多数の仔,稚魚の一部を5%フォルマリンで固定後に測定した。
初めてみられる。 前述の野母湾内で採集した浮遊生活末期の稚仔を2%の水酸化カリウム溶液で透明化し, 更にアリザニンレツドで染色してそれらの腹鰭について観察した結果では,全長19mmまで の大きさのものでは,腰帯も腹鰭棘もまだ骨化していない。しかし,例外的には,水槽で飼 育中に全長14.6mmという特に小型で既に底棲生活に移っていた1個体では,腰帯と腹鰭 棘が共にみられた。 水槽内で底棲生活に移っていた全長19.4mmの稚魚では,腰帯と腹鰭棘の形成が共にみら れるが,鱗片状の腹鰭棘はその先端部のごく一部が体表外に出ているにすぎない。また,左 右の腹鰭棘の内側にはそれぞれ1本ずつの小骨片がみられたが,これらは退化した軟条のこ んせきではないかと考えられる(Fig.9, A)。 全長48.Ommの若魚では,上記の小骨片はみられず,腹鰭は左右1対の棘よりなり,棘の 先端部は体外に出ている。腰帯の前端部は,鎖骨下部の内面に付着しており,腰帯と腹鰭棘 との関節部はよく発達している(Fig.9, B)。 1970年4,月15日に野母湾で採集した浮遊期の稚仔を水槽で飼育中に底棲生活に移った全長 14.1−31.2mmの55尾について調べたところでは,腹鰭を持ったものが大多数を占めていた が,野母崎町海岸で採集した全長21.4−264mmの発育各期の標本147尾では,全長150 mm までの大きさのものでは個体によって腹鰭がみられるものとみられないものとの両方が混っ ており,150mmを越える大きさのものでは全個体で腹鰭はみられなかった。 Table 3には これらの調査全個体を全長別に分け,腹鰭を持つ個体と持たない個体との出現状態を示した。 なお,これらの個体のうちで,腹鰭がみられないものでも,腰帯は常にみられ,また,腹鰭 を有する個体でも,左右どちらか一方だけしかないもの,腰帯との関節部が退化して,棘の 基部が皮下で遊離しているものなどがあったが,これらのことから考えると,発育初期に生 pg
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dr 蟻旺 ps O. 1 mrn +一一一一一一一......一.一一一一一t P9B
= =一一…一一一一一一一一一一一一 lo O mm・一・
Fig. 9. Ventral view of the pelvic girdle and pelvic fin of the blennioid fish. A, juvenile 19.4 mm in total length. B, 48.0 mm young. pg : pelvic girdle, ps : spine of the pelvic fin, dr degenerating ray.塩垣・道津:ダィナンギンポの生活史 35 Table 3. Disappearence of the pelvic fins of the blennioid fish as growing. sセ
p飛磁臨鵬翼溜翫
]4−20 20−30 30−40 40−50 50−60 60−70 70−80 80 一 90 40 17 3 1 2 1 o 2 8 5 3 6 5 2 o 2 s血D・温臨撫留翫
90 一 100 100−110 110−120 120−130 130 一 140 140 一 150 150 一 160 160 一 170 6 5 8 3 5 3 o o 4 5 9 4 10 4 4 45 * representing the range of the total length of examined specimens じたダイナンギンポの腹鰭棘は,その後,魚体の成長に伴ってその大きさを増すが,しだい に腰帯との関節部が退化して脱落してゆくものと考えらる。そして,この腹鰭棘の脱落時の 魚体の大きさには著しく個体差がみられるようである。 ダイナンギンポが含まれるとされているタウエガジ上科Stichaeicae2)の魚類のなかに は,胸鰭と腹鰭に退化傾向が認められるものが多く,イザリギンポ亜科Azygopterinaeの 魚ではこの両鰭が退化消失して全くみられないものもある。腹鰭についてみると,種類によ って1棘4軟条を備えているものから,全く腹鰭がみられないものまでの二型がみられるが, Makushok2)によると,タウエガジ科の魚におけるこの腹鰭の有無,棘および条のかずの 多少には系統的な意義はほとんど考えられず,それぞれの分類群(属上属亜科,あるい は科)でそれぞれ別個に獲得された形質であろうとしている。 側線系とその発達 成魚の側線系:ダイナンギンポの体側に網目状に発達している特異な側線系は,体の長軸 沿いに走る4本の主側線とこれらを連結する多数の横列副枝とよりなっている。第1主側線 は,後頭部に始って背鰭基底前端で左右に分れ,それぞれ基底に沿って後方へ伸びる(Fig. 10,C)。第2主側線は,上鎖骨部を起点として体背部を波状をなして後方へ伸び,尾部の後 部で終っている。第3主側線は,体の腹側部を肛門から波状に尾部後部まで伸び,第4主側 線は,胸部の腹正中線上に始まり,正中線上を後方へ伸びて轡鰭基底の始部に達し,そこで 左右に分れ,それぞれ基底沿いに後方に伸び,尾部後部まで達しているが,これら4本の主 側線の後端はいずれも盲管となって終っている。なお,4本の主側線のうち,体背部を走る 第1,第2主側線だけが,その前端で頭部の感覚管系と直接に連絡している。この連絡状態 をみると,頭部で後せつじゅ骨(post temporal),2個の上せつじゆ骨(supra−temporal) およびろ頂骨(parietal)を経て上後頭骨(supraoccipita1)上に達した左右の頭部感覚管は,そこで左右が連合して上せつじゆ連合(supratemporal commissure)をつくり,そこを起 点、として第1主側線が後方へ伸びている.(Fig.11)。また,後せつじゅ骨,上鎖骨(supra一
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@ Fig. 10. Semi−diagrammatic drawings of the development of the lateral line system of the blennioid fish. A, 23.0 mm in total length. B, 24.3 mm. C, 28.5 mm. frontpqrt
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Fig. 11. 愚■) ・ コロ ヘ ロコ コ pter . 、.. .....、㌦●’ ・・ supt ’ 団…・.、Z,り 準P.st.,i,g4cale Connectons between the head sensory canals and the lateral lines at the occipital region of the blennioid fish. epio:epiotic, exoc:exoccipital, front:frontal, opn:oPenings of the lateral line in the ring scale, part:Parietal, Post:Post−temPo「al, pter: pterotic, ring scale: scales supPerting the sensory canal of lateral line, supo:supraoccipital. solid blacks indicating the openings of the head sensory canals, bIack arrows「唐?盾翌奄獅〟@the rUnning directins of the lateral lines.塩 垣 ・道 津:ダイ ナ ンギ ン ポの 生 活 史 37 cleithral)を 経 て き た 左右 の 感 覚管 は,そ こでそ れ ぞれ 第2主 側 線 の前 端 部 と連 絡 して い る。 な お,側 線 鱗 は,そ の形 態 が普 通 の 微 小 円鱗 とは形 態 が著 し く異 な り,環 状 を 呈 して い る。 更 に,側 線 鱗 の うち,側 線 の外 部 へ の 開 口部 を持 つ 鱗 で は,開 口部 が 盃 状 を な して い る。 側 線 系 の 発 達:頭 部 感 覚 管 系 の形 成 は,全 長 約20mmの 稚 魚 で 完成 し,そ れ よ り,ま ず 第 2主 側 線 が 後 方 へ 伸 び始 め る。 全 長23mmの もの で は,第2主 側 線 の 後 端 は,尾 部 の後 部 ま で 達 し(Fig.10,A),こ の第2主 側 線 か ら腹側 へ 向 け て20本 余 りの 横 列 副 枝 が 伸 び て い る が,体 後 部 で はそ の発 達 は よ くな い 。全 長24.3mmの 若 魚 で は,副 枝 は 発 達 し,そ の下 端 部 で 互 に 連 絡 して第3主 側 線 の形 成 が始 ま る(Fig.10,B)。 全 長28.5mmの も ので は,第2 主 側 線 か ら背方 に 伸 びた 副 枝 が 互 に 連 絡 して 第1主 側 線 を 形成 し,そ の 前 端 は,既 に 上 せ つ じゆ 連 合 に つ な が って い る。 第4主 側 線 も臀 鰭 基 底 の 左 右 に は 既 に 現 わ れ て い るが,肛 門 よ り前 方 で は ま だ見 られ な い(Fig.10,C)。 以上 述 べ た よ うに,4本 の 主 側 線 の形 成 順 序 を み る と,第2,3,1,4の 順 で あ り,頭 部 感覚 管 と直接 に連 絡 して い る第1,第2の 主 側 線 の 間に も,そ の形 成 に 遅 速 が み られ る。 要 約 1968年 か ら1971年 に わた る長 崎 市 郊 外 野 母 崎 町 沿 岸 に お け る採 集 で,浮 遊 生 活 期 の稚 仔 を 含 む 多 数 の ダイ ナン ギン ポ を得 た が,そ の うちで,1970年11月 に採 集 して セ メ ン ト水 槽 で 飼 育 中 に 成 熟 した 雄2尾,雌3尾 を一 緒 に卓 上 水槽 で 飼 育 を 続 け た と こ ろ,1971年1月 に 水 槽 内で 産 卵 した 。 産 み 出 さ れた 受精 卵 は,互 に 卵膜 表 面 で接 着 し,径6cmほ どの西 洋 梨 形 を した 卵 塊 をつ く り,雄 親 魚 が この 卵 塊 を 体 で巻 い て 保 護 して い た 。 各 卵 は,球 状 の沈 性 卵 で, 乳 白 色 を して 不透 明 な 厚 い 卵 膜 表 面 に は 付 着 突 起 が あ り,こ の 突 起 で もって 隣 接 す る卵 が互 に 接 着 して い る。 卵 径 は2.12-2.18mmで,囲 卵 腔 は 比 較 的 に 狭 く,淡 黄 色 を した卵 黄 の な か に は,白 色 を した 雲 状 物 を と もな った 淡 黄 緑 色 の 大 油 球1個 が あ る。 水温12.5-13.0℃ で,23-29日 間 で ふ 化 した 。 ふ化 直後 の 仔 魚 は,全 長8.8-9.9mmで,体 各 部 は よ く発 達 した 状 態 で ふ 出す るが,な お か な りの量 の卵 黄 を 持 って い る。 この 仔 魚 は 遊 泳 力 を 備 え,強 い す う光 性 を示 す 。 野母 湾 内 で集 魚 灯 を 用 い て 採 集 した ダイ ナ ンギン ポ の 稚 仔 を 水 槽 で 飼 育 した と ころ,全 長 15-19mmの 初 期 稚 魚 期 に 浮 遊 生 活 か ら底 棲 生 活 へ 移 った 。 本 種 の成 魚 で は 腹 鰭 が み られ な い が,そ の発 育 初 期 の もの で は,腹 鰭 は1対 の鱗 片状 を し た 小 棘 と して 現 わ れ て お り,そ の後,魚 体 の成 長 に 従 が って しだ い に 消 失 してゆ く。 ま た, 体 側 に 網 目状 に 発 達 す る特 異 な側 線 系 は,頭 部 の感 覚 管 系 の形 成 が終 る全 長 約20mmの 若 魚 期 か らそ の 形成 が 始 ま り,全 長 約30㎜ の 大 き さで 完 成 を み る。 野 母 崎 町 海 岸 に お け る採 集 物 を検 討 した と ころ,同 地 に お け る ダ イ ナン ギ ンポ の産 卵 期 は, 12月 か ら4月 に わ た り,雌 で は,全 長17cm前 後 の満2年 魚 が 多 く産 卵 に 与 る こ と,ま た,雌 は そ の 卵 巣 内 卵 を 一 回 に 全 部 産 み 出す1回 産 卵 魚 で あ る こ とな どが 分 った 。 また,成 熟 した 卵 巣 内 卵 数 は,2,146-6,475を 数 えた 。 な お,野 母 崎 町 海 岸 の岩 礁 海 岸 で,潮 間 帯 お よび そ れ に 続 く浅 海 で よ くみ られ る ダイ ナ ン ギ ンポ の 未成 魚,お よび,成 魚 の 胃内 に は 貝 類,エ ビ,カ ニ類,端 脚 類,小 型 魚 類 な どの 小 動 物 を認 め た 。