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広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24,p1 5,2016 原 著 食中毒起因寄生虫 Kudoa septempunctata の LAMP 法による迅速検出 秋田裕子, 高尾信一 Rapid detection of Kudoa septempunctata by Loop-

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広 島 県 立 総 合 技 術 研 究 所 保 健 環 境 セ ン タ ー 研 究 報 告 第   24   号 平 成 28年 12月   広 島 県 立 総 合 技 術 研 究 所 保 健 環 境 セ ン タ ー

広島県立総合技術研究所

保健環境センター研究報告

第 24 号

2016年12月

広島県立総合技術研究所保健環境センター

ISSN 1882-4250

Hiroshima Kenritsu Sougou Gijutsu Kenkyuusyo Hoken Kankyou Senta Kenkyuu houkoku

目    次

原 著 食中毒起因寄生虫Kudoa septempunctataのLAMP法による迅速検出 秋田 裕子,高尾 信一 ……… 1 資 料 腸管出血性大腸菌O26集団感染事例における分子疫学的解析 秋田 裕子,増田 加奈子,平塚 貴大,高尾 信一 ……… 7 冷却塔水におけるレジオネラ属菌の汚染状況調査 平塚 貴大,秋田 裕子,増田 加奈子,高尾 信一 ……… 11 広島県における2015/16シーズンのノロウイルス流行状況について 谷澤 由枝,重本 直樹,池田 周平,島津 幸枝,高尾 信一 …… 17 広島県におけるヒトパレコウイルス3型の検出状況 池田 周平,谷澤 由枝,島津 幸枝,高尾 信一,重本 直樹 …… 23 日本薬局方「サイコ」の5種サイコサポニン含量の実態調査 伊達 英代,中島 安基江,平本 春絵,井原 紗弥香,新井 清, 高尾 信一,野下 俊朗,甲村 浩之 ……… 27 いわゆる「シバガス」中のN2Oのサンプリング法及びGC-MSを用いた分析法の検討 平本 春絵,伊達 英代,新井 清 ……… 33 フッ素化合物分析における塩化物イオンの影響 竹本 光義,原田 美穂子,濱脇 亮次,花岡 雄哉,大原 俊彦, 寺内 正裕 ……… 39 広島湾北部海域における底質の分布特性 後田 俊直,山本 哲也,寺内 正裕 ……… 43 他誌掲載論文(2015年10月~ 2016年9月) ……… 51

(2)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24,p1−5,2016

原 著

食中毒起因寄生虫 Kudoa septempunctata の LAMP 法による迅速検出

秋田 裕子,高尾 信一

Rapid detection of Kudoa septempunctata by

Loop-Mediated Isothermal Amplification Assay

H

IROKO

A

KITA and

S

HINICHI

T

AKAO (Received October 13, 2016)

  Kudoa septempunctata is the new causative agent of a food-borne disease associated with the consumption of raw olive flounder. A highly sensitivity method is required for the detection of K. septempunctata because it does not multiply in the human body. In this study, we developed a rapid and simple method for detection of K. septempunctata genomes using loop-mediated isothermal amplification (LAMP) assay. This assay could yield results within about 30 min under isothermal conditions at 65°C, and could be detected visually in a tube without any expensive equipment. All samples detected positive by microscopic observation were also detectable by LAMP assay. The detection limits for K. septempunctata genomes in olive flounder samples were about 106 copies/g or 104 spores/g. The sensitivity of this assay meets the criteria for detection limits prescribed in the official analytical method. These findings established that the LAMP assay is potentially useful for a rapid and simple screening for detection of K. septempunctata genomes from olive flounder in outbreaks of food-borne diseases.

Key words:食中毒起因寄生虫,Kudoa septempunctata,LAMP法

緒   言

 Kudoa septempunctata(クドア)は,ヒラメの筋肉に 寄生する粘液胞子虫の一種で,極嚢と呼ばれる構造を6 ~7有するのが特徴であり,ヒトに対して一過性の嘔吐 と下痢を引き起こすことが報告されている[1,2].ク ドアは,平成23年6月の厚生労働省通知(平成23年6月 17日付食安監発0617第3号)により,食中毒の病因物質 として取り扱われることとなり,平成24年12月には,食 中毒統計の対象となる病因物質に追加された.食中毒統 計によると,平成24年以後,クドアを原因とする食中毒 は,毎年20 ~ 40件,200 ~ 500名程度発生している[3].  クドアの検査については,平成23年7月11日付厚生労 働省通知(食安監発0711第1号)で暫定法として示され ている(平成28年4月27日付生食監発0427第3号で改 正).検査法は,定量リアルタイムPCR法によるスクリー ニング検査法と,鏡検によって直接胞子を検出する顕微 鏡検査の2段階からなり,最終判定には顕微鏡検査によ る胞子の確認が必要である.すなわち,リアルタイム PCRでKudoa rDNAのコピー数が1g試料当たり107以上 をPCR陽性とし,かつ顕微鏡検査で6~7つの極嚢を有 する胞子が検出された場合,陽性と判定する.また,こ の方法により検査を実施し,筋肉1グラムあたりのクド アの胞子数が1.0×106個を超えることが確認された場合, 食品衛生法第6条に違反するものとして取り扱うことと されている(平成24年6月7日付食安発0617第3号厚生 労働省通知).  クドアは細菌やウイルスと異なり,人体内での増殖は 認められていないため,高感度な検出法が必要である. 一方,暫定法で定められているリアルタイムPCR法は, 高額な機器を必要とする.これに対して,LAMP法は, 増幅反応過程でピロリン酸マグネシウムが生成され,反 応液の白濁の有無により視覚的に陽性・陰性を判定でき る特徴があることから,種々の微生物の迅速遺伝子検査 に用いられており,操作も簡便である.  そこで,本研究では,LAMP法を用いたヒラメからの 迅速・簡易なクドア検出法を検討した.

(3)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016) 2

材料および方法

1  供試検体  平成23~25年度に当センターに搬入された食中毒事案 等のヒラメ27検体を用いた. 2  方法 ( 1 )顕微鏡検査法  「Kudoa septempunctataの検査法について(暫定版)」 (平成23年7月11日付食安監発0711第1号)に準じた. すなわち,検体を0.5 g秤量し,PBSを加え,軽くつぶ してメッシュを通し,ろ液を遠心分離後,上清を捨て, PBS 0.5 mlに懸濁したもの10 μlにメチレンブルー溶液を 加えて混合し,血球計算板で6~7極嚢を有するクドア 胞子を計測した.本研究では,クドア胞子が観察された 場合を陽性とした. ( 2 )DNA抽出法およびリアルタイムPCR法  「Kudoa septempunctataの検査法について(暫定版)」 (平成23年7月11日付食安監発0711第1号)に準じた. すなわち,ヒラメ検体から50 mgを2ヶ所より採取し, QIAamp DNAMini Kit(QIAGEN) を 用 い,200 μlの Buffer AEで溶出したDNA 4 μlをテンプレートとした. リアルタイムPCR法は, TaqMan Universal Master Mix (Life Technologies)を用いて反応液を調整し,7500 リ アルタイムPCRシステム(Life Technologies)で反応を 行い,陽性コントロールのコピー数からDNA溶液のコ ピー数を求めた.本研究では,クドア遺伝子が検出され た場合を陽性とした. ( 3 )LAMP法

 クドア28S rDNAを標的遺伝子とし, Kudoa septem-punctataに特異的な領域を含む6つのプライマー(Table 1)を設計し,DNA増幅試薬キット(栄研化学)を用 いて,Table 2 に示した組成で,LAMP反応を行った. LAMP反応は,Loopamp濁度測定装置LA-320Cを使用 して, 65℃で90分の条件で行い,Threshold time(Tt) 値(反応液の濁度が0.1を超えるまでの時間)を測定し, 値が得られた場合を陽性とした. ( 4 )LAMP法の検出限界の測定  LAMP法の検出感度を測定するため,顕微鏡検査でク ドア胞子が,それぞれ3.0×107胞子/g,4.6×106胞子/g 確認できたクドア陽性ヒラメ2検体のDNA抽出液を10 倍段階希釈してテンプレートとし,各3回ずつLAMP法 を実施し,検出感度を測定した.また,クドア遺伝子の コピー数は,リアルタイムPCR法により各3回ずつ測定 し,定量した.一部については増幅産物を確認するため, 3%アガロースゲルにより電気泳動を行った.

結   果

1 .LAMP法の確立と検出限界の測定  顕微鏡検査により確認されたクドア胞子の顕微鏡写真 をFig. 1に示した.LAMP法の検出限界を測定するため, クドア陽性2検体のDNA抽出液を10倍段階希釈してリ アルタイムPCR法およびLAMP法により測定し,比較 した結果をTable 3に示した(n=3).LAMP法では,い ずれも,クドア遺伝子がリアルタイムPCR法による定量 値が,オーダーとして102コピー /反応までは3/3です べて陽性,101コピー /反応は1検体は1/3が陽性,も う1検体はすべて陰性であった.これらのことから,構 築したLAMP法の検出限界は,リアルタイムPCR法での 102コピー /反応であると考えられた.また,LAMP法 が陽性の場合のTt値は16~30分であり, およそ30分以内 に判定が可能であった.一方,リアルタイムPCR法では, 101コピー /反応まで3/3ですべて陽性,それ以下では, Table 1 Primer sets for detection of Kudoa septempunctata

Primer name Sequences(5’-3’) Final concentration(μM)

F3 CGTCAGGGCTATTGGCACTA 0.2 B3 GACTTGTCCGCACGTAGC 0.2 FIP AGCCGCATCCACGCCAACAATATTTGAGGTTAAATGGCCAGCAGT 1.6 BIP ATGTGTGTGTGGAAGCGTTGGTTTTCACTGTGACCAGAACGAACC 1.6 LF TCATTGGCTGTGAAAGCCAAA 0.8 LB GATGTATTGTCGGTTGGTGTCG 0.8

Table 2 Components of reaction mixture for LAMP assay Volume 2× Reaction Mix 12.5 μl Primer FIP (20 μM) 2.0 μl Primer BIP (20 μM) 2.0 μl Primer F3 (10 μM) 0.5 μl Primer B3 (10 μM) 0.5 μl Loop primer LF (10 μM) 1.0 μl Loop primer LB (10 μM) 1.0 μl Bst DNA Polymerase 1.0 μl template DNA 4.0 μl Distilled Water 2.5 μl Total 25 μl

(4)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016)

Table 3 Sensitivity of LAMP and Real-time PCR assay for positive samples of Kudoa septempunctata in olive flounder Sample

Number dilution rateDNA

LAMP Real-time PCR

Positive rate

(n=3) (Ave.)Tt Positive rate(n=3) copies /tube(Ave.)

1 100 3/3 16:06 3/3 1.55×107 101 3/3 17:10 3/3 3.49×106 102 3/3 18:42 3/3 3.61×105 103 3/3 20:46 3/3 3.07×104 104 3/3 23:44 3/3 2.58×103 105 3/3 30:24 3/3 2.53×102 106 0/3 - 3/3 2.15×101 107 0/3 - 1/3 5.69×100 2 100 3/3 16:08 3/3 1.23×106 101 3/3 17:48 3/3 4.00×105 102 3/3 19:24 3/3 1.05×104 103 3/3 22:54 3/3 3.65×103 104 3/3 26:42 3/3 3.23×102 105 1/3 30:24 3/3 3.07×101 106 0/3 - 2/3 1.03×101 107 0/3 - 0/3

-Fig. 1 Kudoa septempunctata.(methylene blue stain)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 M

M

Fig. 2 Agarose gel electrophoresis of LAMP products. LaneM, 100bp ladder; Lane1, 106 copies/tube; Lane2, 105 copies/tube; Lane3, 104 copies/tube; Lane4, 103 copies/ tube; Lane5, 102 copies/tube; Lane6, 101 copies/tube; Lane7, 100 copies/tube; Lane8, 10-1 copies/tube; Lane9, negative control

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

106copies/tube 105copies/tube 104copies/tube 103copies/tube 102copies/tube 101copies/tube 100copies/tube 10-1copies/tube Negative control

A

bs

Time (min)

(5)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016) 4 クドア28S rDNAを標的遺伝子としたLAMP法を構築し た.クドア陽性ヒラメから抽出したDNAを用いてリア ルタイムPCR法とLAMP法の検出限界を比較したとこ ろ,LAMP法の検出限界は102コピー/反応であった.一 方,リアルタイムPCR法の検出限界は101コピー/反応で あり,LAMP法が約1オーダー劣る程度と考えられた.  続いて,食中毒事案等のヒラメ検体を用いてLAMP法 の有用性を検証したところ,顕微鏡検査法によりクドア 陽性であった検体は,リアルタイムPCR法およびLAMP 法によりすべて陽性を示した.LAMP法のヒラメ検体か らのクドアの検出限界は,リアルタイムPCR法の結果か ら算出した値では,106コピー/g,顕微鏡検査の結果か ら算出した値では,104胞子/gであった.105コピー/gに 該当する検体がなく,103胞子/g以下は顕微鏡で観察不 可能なため,正確な検出限界は測定できなかったが,厚 生労働省通知では,クドアrDNAが107コピー/g以上で 遺伝子検査のスクリーニング陽性,クドアの胞子数が 106 個を超えた場合,食品衛生法違反と定められている ことから,構築したLAMP法では,これらの基準に相当 するクドア遺伝子のコピー数または胞子数は検出可能で あり,十分な検出感度を有していると考えられた.  リアルタイムPCR法の結果とLAMP法の結果を比較 すると,リアルタイムPCR法で陽性の2検体がLAMP法 では検出されなかったが,この検体は顕微鏡検査で陰性 であり,コピー数も104/g以下であったため,LAMP法 の検出限界以下であったと考えられる.また,リアルタ イムPCR法およびLAMP法で陽性であったが,顕微鏡 検査では胞子が確認されなかった検体が存在した.これ は,検体に含まれるクドア胞子数が少ないためか,顕微 鏡で通常観察できるのは粘液胞子の段階のクドアのみで あるため[4],顕微鏡で観察できないステージのクド アが存在していた可能性が考えられる.つまり,本研究 で構築した高感度なLAMP法では,顕微鏡検査で検出不 能な場合でも,検出できる可能性が考えられた.また, LAMP法は,およそ30分以内に結果を得ることができ, 迅速性に優れていた. それぞれ,1/3,2/3が陽性であった.  検体番号2のLAMP反応後の反応液の電気泳動像を Fig. 2に,リアルタイム濁度測定による増幅曲線をFig. 3に示した.LAMP法に特徴的な増幅バンドが認められ, 増幅曲線は30分以内に立ち上がり始めた. 2 .ヒラメ検体を用いたクドア検出法の比較  顕微鏡検査法,リアルタイムPCR法,LAMP法による ヒラメ検体からのクドア検出結果をTable 4に示した. 顕微鏡検査により,クドア胞子が検出された10検体と, 検出されなかった17検体のグループについて,それぞれ, リアルタイムPCR法,LAMP法による検出結果を比較し た.その結果,顕微鏡検査でクドア陽性の10検体は,す べてリアルタイムPCR法およびLAMP法においても陽 性であった.一方,顕微鏡検査では陰性であった17検体 は,リアルタイムPCR法では,7検体が陽性(7/17)で, これらのクドア遺伝子のコピー数は2.0×103~8.4×106/ gであった.  次に,顕微鏡検査では陰性,リアルタイムPCR法で陽 性の7検体について,算出したコピー数のオーダーごと にLAMP法の検出感度を比較すると,106コピー/gオー ダーの3検体は,いずれもLAMP法でも陽性(3/3), 104コピー/gおよび103コピー/gでは,いずれも2検体中 1検体(1/2)がLAMP法で陽性であった.LAMP法 で陽性となった検体のTt値は15~31分であった.  これらの結果から,今回構築したLAMP法をヒラメ 検体に応用した場合,リアルタイムPCR法による算出 値からみると,クドア遺伝子が106コピー/g以上,顕微 鏡検査から算出した胞子数でみると,104胞子/g以上で LAMP法により検出可能であると考えられた.なお,リ アルタイムPCR法で陰性の10検体は,LAMP法でもすべ て陰性であった.

考   察

 ヒラメからの迅速,簡易なクドア遺伝子検出法として,

Table 4 Comparison of Microscopy, Real-time PCR and LAMP assays for detection of Kudoa septempunctata in olive flounder

Microscopy Real-time PCR LAMP

Total

sample no. spores /g sample no.* Positive 2 copies /g sample no.* Positive 2 Tt(time) Positive 4 1.4-3.6×107 4/4 2.9×109-1.2×1012 4/4 15:30-17:36 4 1.0-6.5×106 4/4 1.2×108-2.0×1010 4/4 16:42-18:48 1 4.8×105 1/1 2.9×109 1/1 17:42 1 6.5×104 1/1 1.0×108 1/1 19:06 Negative 17 ND*1 3/3 1.2-8.4×106 3/3 21:06-22:12 2/2 1.4-2.2×104 1/2 29:30 2/2 2.0-7.1×103 1/2 31:06 0/10 - 0/10

-*1Spores were not detected

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広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016)

文   献

[1]クドア・セプテンプンクタータ.食品衛生検査指 針 微生物編 2015.公益社団法人日本食品衛生 協会;2005. p. 791-799  [2]国立感染症研究所.クドアとザルコシスティス. 病原微生物検出情報.2012;33(6):147-150. [3]厚生労働省,食中毒統計資料,[Internet],[cited 2016 Sep 8].Available from: http://www.mhlw. go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/ shokuhin/syokuchu/04.html

[4]Ohnishi T, Furusawa H, Yoshinari T, Yamazaki A, Horikawa K, Kamata Y, Sugita-Konishi Y,. Electron Microscopic Study of Kudoa septempunctata Infecting Paralichthys olivaceus(Olive Flounder). Jpn J Infect Dis. 2013;66: 348-350.

[5]Ohnishi T, Lim B, Nojima N, Ogasawara K, Inagaki S, Makitsuru K, Sasaki M, Nakane K, Tsuchioka H, Horikawa K, et al. Inter-laboratory study to validate new rapid screening methods for Kudoa septempunctata. Biocontrol Sci. 2016;21(2): 135-138. [6]Jeon CH, Wi S, Song JY, Choi HS, Kim JH. Development

of loop-mediated isothermal amplification method for detection of Kudoa septempunctata (Myxozoa: Multivalvulida) in olive flounder (Paralichthys olivaceus). Parasitol Res Parasitol Res. 2014;113(5)1759-1767.

[7]Sugita-Konishi Y, Fukuda Y, Mori K, Mekata T, Namba T, Kuroda M, Yamazaki A, Ohnishi T. New validated rapid screening methods for identifying Kudoa septempunctata in olive flounder (Paralichthys olivaceus). Jpn J Infect Dis. 2015;68 (2):145-147.  クドア検査法は,平成28年4月27日付厚生労働省通知 (生食監発0427第3号)で改正され,スクリーニングの迅 速検査法として,リアルタイムPCR法に加えて,イムノ クロマトグラフィー法とLAMP法が収載された.通知で は,キットを使用したLAMP法が記載されているが,こ の方法では,蛍光検出装置またはリアルタイムPCR装置 が必要である.また,検出感度は105胞子/gであるが[5], 本研究で構築したLAMP法では104胞子/gの検体からも検 出されており,検出感度は同等以上と考えられる.  ヒラメのクドア遺伝子を検出するLAMP法は,これ までにも報告があるが[6,7],LAMP反応後にSYBR Green Iの添加あるいは電気泳動,エチジウムブロマイ ド染色を必要とする[6],検出感度が通知に定められ ている値に十分でない[7]などの問題点がある.  今回構築したLAMP法は,試験室間バリデーション試 験の実施,K. lateolabracisやK. thyrsitesなどヒラメに 寄生する他のクドア属粘液胞子虫との交差反応の確認等 の課題が残っているが,リアルタイムPCR装置等の高価 な機器等を必要とせず,迅速に目視による確認ができる ことから,ヒラメ検体からクドアを検出するスクリーニ ング法として有用であると考えられた.

結   語

 ヒラメからのクドア遺伝子検出法として,LAMP法を 構築した.LAMP法により,顕微鏡検査でクドア陽性の ヒラメはすべて約30分以内に検出可能であり,ヒラメ検 体からは,クドア遺伝子106コピー/g,クドア胞子104/g 以上で検出可能であったことから,厚生労働省通知に記 載の方法と同等以上の検出感度を有していると考えられ た.したがって,構築したLAMP法は,ヒラメからクド アを検出するための迅速,簡易なスクリーニング法とし て有用であると考えられる.

(7)
(8)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24,p7−10,2016

緒   言

 腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症は,ベロ毒素(VT) を産生,またはVT遺伝子を保有するEHECの感染によっ て起こる全身性疾病で,主訴は腹痛,水溶性下痢,血便 である.重症例では,溶血性尿毒症症候群(HUS)を 引き起こし,小児や高齢者では脳症などを併発して死に 至ることがある[1,2].  EHEC感染症は,感染症法により三類感染症に指定さ れ,診断した医師は保健所に全数届出を行うこととなっ ている.これにより,国内では毎年3,000~4,000の届出 がされている[1].全国の地方衛生研究所からの報告 によると,EHEC全検出数におけるO血清群の割合は, 2015年はO157が60.9%(1,040/1,709)と最も多く,次い でO26が21.2%(363/1,709)であった [1].過去5年間 の報告数をみても,毎年O157が第1位,O26が第2位を 占めており[3-7],これらは,我が国で検出される腸 管出血性大腸菌の主要な血清群である.  集団感染事例等の発生時には,感染源や感染経路の把 握のために,食品や患者由来の菌株の解析が求められ る.また,散在的集団発生事例の早期探知にも分子疫学 的解析は重要である.EHECの分子疫学的解析法として は,パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法が標準 法として用いられているが,操作が煩雑,解析に時間を 要する等の問題があり,近年,迅速性・簡便性に優れ たMulti-locus variable-number tandem repeat analysis (MLVA)法が導入されている[8].平成26年度よ り,国立感染症研究所においても,EHEC O157,O26, O111のDNA型別解析は,PFGE法に代わり17遺伝子座 を対象としたMLVA法に変更された.当センターでも, 平成26年度よりEHEC O157,O26,O111について,17 遺伝子座を対象としたMLVA法による解析を導入して いる.  今回,平成27年に当県で発生したEHEC O26の集団 感染疑い事例において,関連した菌株による集団感染 であるかを明らかにするため,MLVA法による解析を 行った.さらに,PFGE法による解析を併せて実施し, MLVA法と比較した.

材料および方法

1  供試菌株  平成27年7月中旬から9月中旬に,広島県内の保育所 での集団感染疑い事例において分離されたEHEC O26を 9株,および平成27年に県内で分離された,疫学情報か らは本事例とは無関係と考えられるEHEC O26を2株用 いた.

腸管出血性大腸菌 O26 集団感染事例における分子疫学的解析

秋田 裕子,増田 加奈子,平塚 貴大,高尾 信一

Molecular Epidemiological Analysis in Outbreak of Enterohemorrhagic

Escherichia coli O26 Infection

H

IROKO

A

KITA,

K

ANAKO

M

ASUDA,

T

AKAHIRO

H

IRATSUKA and

S

HINICHI

T

AKAO (Received September 29, 2016)  平成27年に当県で発生した腸管出血性大腸菌O26の集団感染疑い事例において,分離菌株のMLVA法による 解析を実施し,さらに,PFGE法による解析結果と比較した.本事例関連の9株は,MLVA法では2遺伝子座 以内の相違,PFGE法では1バンド以内の相違であり,いずれの結果からも関連する菌株の集団感染である可 能性が高いと判断された.MLVA法とPFGE法は,同等の解析能力を有していたが,MLVA法の方が,PFGE 法に比べて迅速性,簡便性に優れていることから,集団感染事例等の発生時における有用な分子疫学的解析法 であると考えられた. Key words:腸管出血性大腸菌O26,MLVA法,パルスフィールドゲル電気泳動法

資 料

(9)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016) 8

結   果

1 .事例の概要  平成27年7月中旬以降から9月中旬にかけて,県内の 保育所で下痢,腹痛,発熱等の症状を示す患者の発生が 続き,園児6名,家族3名からEHEC (O26 VT1)が 検出された.原因究明のため,濃厚接触者等の検便を行 い,分離された菌株の分子疫学的解析を実施した. 2 .MLVA法による解析結果

 EHEC O26 11株のMLVA法による解析結果を表1, 解析結果を基に作製したMinimum Spanning Treeを図 1に示した.MLVA法では,集団感染事例関連のEHEC O26 9株のうち,7株(菌株番号15-06, -14, -15, -17, -18, -19, -20)は17ヶ所の遺伝子座すべてでリピート数が完全 に一致した.これに対し,菌株番号15-12が1遺伝子座 違い,15-13が2遺伝子座違いであった.一方,本事例 とは無関係の2株(15-04, -16)では,3遺伝子座以上の 相違がみられた. 2  方法 ( 1 )MLVA法  Izumiyaら[9]の方法に従い,O157-10を除いた17ヶ 所 のLocusに つ い て 解 析 し た. す な わ ち,QIAGEN Multiplex PCR Kit(QIAGEN)を用いて各検体2セット のPCR反応を実施し,3500 Genetic Analyzer(Applied biosystems) お よ びGene Mapper Software 5(Applied biosystems) を 用 い て フ ラ グ メ ン ト 解 析 を 行 っ た. Fragment size markerはGeneScan 600 LIZ Size Standard v2.0(Applied biosystems)を使用した.なお,フラグメ ント解析によりピークが認められない場合は,「-2」とし た.また,BioNumerics Ver.6.6(Applied Maths)を用い, Minimum Spanning Tree解析を行った.

( 2 )PFGE法

 国立感染症研究所の方法[10]に準拠した.制限酵素 はXba I(TaKaRa)を用い,電気泳動はBIO-RAD CHEF MAPPER(BioRad)を用いて6V/cm,パルスタイム2.16-63.8秒,14℃の条件で18時間行った.PFGEパターンの 解析は,BioNumerics Ver.6.6(Applied Maths)を用い, DiceおよびUPGMAによりクラスター解析を行った. 表1 腸管出血性大腸菌O26の菌株の概要とMLVAリピート数 菌株 番号 届出日 年齢 性別 疫学情報 血清型 毒素型 各遺伝子座のリピート数 O157

-3 O157-9 O157-25 O157-34 EH157-12 EH111-11 EH111-8 EHC-1 EHC-2 EHC-5 O157-17 O157-19 O157-36 O157-37 EH26-7 EH111-14 EHC-6

集団 事例 15-06 7.16 4 男 園児 O26:H- VT1 -2* 11 2 1 2 2 1 11 13 -2 -2 1 -2 -2 3 1 -2 15-12 8.31 6 男 園児 O26:H- VT1 -2 11 2 1 2 2 1 10** 13 -2 -2 1 -2 -2 3 1 -2 15-13 9.7 1 男 園児 O26:H- VT1 -2 11 2 1 2 2 1 11 13 -2 -2 1 -2 5 3 1 8 15-14 9.10 62 女 園児家族 O26:H- VT1 -2 11 2 1 2 2 1 11 13 -2 -2 1 -2 -2 3 1 -2 15-15 9.11 1 男 園児 O26:H- VT1 -2 11 2 1 2 2 1 11 13 -2 -2 1 -2 -2 3 1 -2 15-17 9.12 4 男 園児家族 O26:H- VT1 -2 11 2 1 2 2 1 11 13 -2 -2 1 -2 -2 3 1 -2 15-18 9.12 1 女 園児 O26:H- VT1 -2 11 2 1 2 2 1 11 13 -2 -2 1 -2 -2 3 1 -2 15-19 9.16 2 男 園児 O26:H- VT1 -2 11 2 1 2 2 1 11 13 -2 -2 1 -2 -2 3 1 -2 15-20 9.17 25 女 園児家族 O26:H- VT1 -2 11 2 1 2 2 1 11 13 -2 -2 1 -2 -2 3 1 -2 散発 事例15-04 6.2315-16 9.3 6215 男女 O26:H11 VT1O26:H- VT1 -2-2 10-2 22 11 22 22 11 813 1417 -2-2 -2-2 11 -2-2 -2-2 23 11 -2-2 *-2:増幅なし

**太字:Single locus variant

図1 腸管出血性大腸菌O26のMLVA Minimum Spanning Tree

(10)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016)  MLVA法とPFGE法を操作性・迅速性の面から比較す ると,MLVA法は,菌株を入手して1~2日で結果が 得られ,操作も簡便であった.また,本事例では,菌 株が分離される度に搬入されたため,その都度菌株の 関連性を調べる必要があったが,MLVA法では,個別 に迅速な対応が可能であった.一方,PFGE法は結果を 出すまでに3~4日を要し,また,個別での実施が困 難なため,MLVA法に比べて迅速性に欠けた.当県で は,一昨年度よりMLVA法を用いているが,進行中の 事案に対応した例は今回が初めてであり,その有用性 を確認できた.一方,本事例において,MLVA法では, 最初に搬入された3株を比較した時点で1~3遺伝子 座での相違がみられたため,どの株を基準とするかに より,DLV以内か否かの判断が異なるという問題点が あった.解析能力については,MLVA法とPFGE法のい ずれからも9株すべてが関係している可能性が高いとい う結果が得られ,同等の解析能力を有していると考えら れた.しかしながら,9株すべてが完全一致ではなく, MLVA法では一致したが,PFGE法では若干の相違がみ られた株,またその逆も存在したため,解析方法によっ て,結果の相違を生じる可能性があると考えられた.そ のため,結果の解釈には,疫学情報を加味した総合的な 判断が必要であると考えられる.  EHEC感染症集団発生のうち,2015年に報告された菌 陽性者10名以上の12事例中7事例が保育施設における人 から人への感染によるものと推定されており[1],そ の他飲食店等を原因とした集団感染も発生していること から,このような集団感染事例発生時には,MLVA法 が集団感染の根拠となる科学的データを示すために,有 用な手段となり得ると考えられる. 3 .PFGE法による解析結果

 EHEC O26 11株のPFGE法による解析結果を図2に 示した.集団感染事例関連のEHEC O26 9株のうち8 株(15-06, -12, -13, -14, -17, -18, -19, -20)はバンドパター ンが完全に一致し,残り1株(15-15)は1バンドのみ の相違であった.また,事例とは無関係の2株(15-04, -16)のバンドの相違数は,7以上であった(図2).

考   察

 県内で発生した集団感染疑い事例において分離された EHEC O26 9株,事例とは無関係の2株,合計11株に ついてMLVA法およびPFGE法により解析した.  国立感染症研究所の示した分類では,MLVA法にお いては,相違する部位数が0の場合は一致,1(SLV) は密接に関係,2(DLV)は関係する可能性がある, 3以上は不一致と解釈することとされている.一方, PFGE法においては,バンドの相違数が0の場合は一致, 2~3は密接に関係,4~6は関係する可能性がある, 7以上は不一致と解釈する[11].今回の集団感染事例 関連株は,MLVA法では,9株のうち7株が完全に一 致し,残り2株も2遺伝子座以内の相違であったことか ら,関係する可能性が高いと判定され,分子疫学的観点 からも集団感染事例であることが裏付けられた.一方, 本事例とは無関係の2株は,3遺伝子座以上の相違で, 不一致と解釈された.  また,PFGE法においても,これら9株は1バンド以 内の相違であり,MLVA法と同様に,集団感染を示唆 する結果が得られた.  MLVA法およびPFGE法による解析結果より,本事例 はEHEC O26を原因とした集団感染であると判断され た. 菌株 番号 類似度(%) PFGEパターン (kbp) 図2 腸管出血性大腸菌O26のPFGE法による解析結果

(11)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016) 10 [5]国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症2013 年4月現在.病原微生物検出情報.2013;34(5):123-124. [6]国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症2012 年4月現在.病原微生物検出情報.2012;33(5):115-116. [7]国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症2011 年4月現在.病原微生物検出情報.2011;35(5):125-126. [8]高橋雅輝,岩渕香織,山中拓哉,高橋知子,齋藤 幸一.Multilocus Variable-Number Tandem-Repeat Analysisによる腸管出血性大腸菌(EHEC)O26遺 伝子型別法の検討.岩手県環境保健研究センター 年報第11号.2011;11:67-69.

[9]Izumiya H, Pei Y, Terajima J, Ohnishi M, Hayashi T, Iyoda S, Watanabe H. New system for multilocus variable-number tandem-repeat analysis of the enterohemorrhagic Escherichia coli strains belonging to three major serogroups: O157, O26, and O111. Microbiol Immunol. 2010;54:569-577. [10]寺嶋淳,泉谷秀昌,伊豫田淳,三戸部治郎.食品

由来感染症の細菌学的疫学指標のデータベース化 に関する研究.平成15年度総括・分担研究報告書 (厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症研究

事業);2004. p. 10-21.

[11]Tenover FC, Arbeit RD, Goering RV, Mickelsen PA, Murray BE, Persing DH, Swaminathan B. Interpreting chromosomal DNA restriction patterns produced by pulsed-field gel electrophoresis: criteria for bacterial strain typing. J Clin Microbiol. 1995;33 (9):2233-2239.

結   語

 本県で発生したEHEC O26集団感染疑い事例におい て,MLVA法およびPFGE法による解析により,集団 感染の根拠となるデータを示した.特に,MLVA法は, PFGE法に比べ,迅速性,簡便性に優れていたことから, 事案発生時の迅速な対応に非常に有用であった.  なお,この研究の一部は,平成27年度厚生労働科学研 究「食品由来感染症の病原体情報の解析及び共有化シス テムの構築に関する研究」において実施した.

謝   辞

 MLVA法についてご指導をいただきました国立感染 症研究所細菌第一部第二室長 泉谷秀昌先生に深謝いた します.

文   献

[1]国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症2016 年4月現在.病原微生物検出情報. 2016;37(5):85-88.

[2]勢戸和子.Escherichia coli, STEC(志賀毒素産生 性大腸菌).仲西寿男,丸山務監修.食品由来感染 症と食品微生物.中央法規出版;2009. p. 281-296. [3]国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症2015 年4月現在.病原微生物検出情報.2015;36(5):73-74. [4]国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症2014 年4月現在.病原微生物検出情報.2014;35(5):117-118.

(12)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24,p11−15,2016 ネラ属菌汚染実態に関する調査は行われておらず,環境 水を介したレジネラ属菌への感染リスクは明らかになっ ていない.今回,環境中のレジオネラ属菌の生息状況を 把握するため,冷却塔水を対象に検査を行った.

材料および方法

1  検体  県内の公共施設4施設(A~D)に設置してある,11 塔の冷却塔から冷却塔水を採取した.また,PFGE法及 びSBT法による解析には,本調査で冷却塔水から分離さ れたL. pneumophilaと,当センターに保管されていたL. pneumophila の菌株を使用した.なお,LE09-1はレジ オネラ症発生時に患者が入浴した浴槽水から,LE13-01 とK14-13018T,及びLE15-01は患者から分離された菌株 である. 2  方法 ( 1 )レジオネラ属菌の培養  検査の流れを図1に示す.県内4施設11塔の冷却塔 (A-01~D-01)から,水を1L~2L採取し,濾過濃縮法に よって5mLに濃縮した.濃縮検体を直接,あるいは熱処 理または酸処理を行った後にGVPC培地に塗沫し,湿潤 条件下において36℃で1週間程度培養を行った.培養開

緒   言

 レジオネラ属菌は土壌や水中等の環境中に生息してい る,好気性のグラム陰性桿菌である.四類全数把握疾患 に指定されているレジオネラ症の原因菌であるが,人か ら分離,あるいは抗体価の上昇が認められているのはレ ジオネラ属菌の一部の種のみであり,すべての菌種が人 に対して病原性を有しているかは明らかにはなっていな い.レジオネラ症は四類全数把握疾患の中で最も報告が 多く,届出数は年々増加傾向にあり,2015年は全国で 1587件,広島県内においても33件の届出があった[1, 2].人には菌体を含むエアロゾルの吸入によって経気 道感染し,発症すると発熱,咳,関節痛などの症状を示 す.感染源として重要なのは,人が直接エアロゾルを吸 入する機会が多いと考えられる設備で,浴槽,シャワー, 冷房設備である冷却塔等の水が具体例として挙げられ る.日本では循環式の浴槽水を原因とした集団感染事例 の報告が多いが,2013年には福岡市で冷却塔水による感 染が疑われる事例も発生している[3].レジオネラ症 は発生数も多く,時に死に至る場合もある疾患のため, 適切な感染防止対策が必要となるが,一般的な環境中に 広く生息する菌であることから,散発例では感染源不明 の場合も多い.また,県内における生活環境中のレジオ

資 料

冷却塔水におけるレジオネラ属菌の汚染状況調査

平塚 貴大,秋田 裕子,増田 加奈子,高尾 信一

Survey of Legionella spp. distribution in cooling tower

T

AKAHIRO

H

IRATSUKA,

H

IROKO

A

KITA,

K

ANAKO

M

ASUDA, and

S

HINICHI

T

AKAO (Received October 21, 2016)

 広島県内の公共施設4棟11塔の冷却塔から冷却塔水を採取し,レジオネラ属菌の検出を行った結果,すべ ての冷却塔水からレジオネラ属菌の遺伝子が検出され,8塔からレジオネラ属菌が分離された.このうち L. pneumophilaが4塔から,L. quinlivaniiが4塔から,L. busanensisが1塔から分離された.すべての冷却 塔からレジオネラ属菌の遺伝子が検出されたことから,冷却塔水が非常に高率に汚染されていることが明ら かとなった.分離したL. pneumophilaについて,当センターで保存していた菌株とともにPulsed-Field Gel Electrophoresis(PFGE)法,Sequence-Based Typing(SBT)法を用いて菌株間の関連性について解析を行っ た.PFGE法の結果,同一の冷却塔から分離された菌株は,それぞれ独立したグループを形成した.SBT法で は3株がST1に分類されたが,これらはPFGE法では異なるグループに分類された.このことから,PFGE法 とSBT法では,株間の関連性について部分的に異なる結果を示すことが考えられた.

(13)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016)

12

すべてのPCRにはEx Taq(TaKaRa)を使用した.

( 3 ) Pulsed-Field Gel Electrophoresis(PFGE)法

 複数個のコロニーが確認された冷却塔水検体に関し ては,2から3個のコロニーを単離し,解析に使用し た.病原体検出マニュアル[4]の方法に準拠し,制 限酵素はSfiI(Roche)を使用し,電気泳動はBIO-RAD CHEF MAPPER(Bio-Rad)を用いてパルスタイム5 -50秒,14℃の条件で21時間行った.PFGEパターンは, BioNumerics Ver.6.6(Applied Maths)を用い,Dice及 びUPGMAによりクラスター解析を行った.

( 4 )Sequence-Based Typing(SBT)法

 ESGLI SBT GUIDELINE v5.0[9]に従って,各菌 株の7ヶ所の遺伝子増幅産物のシークエンスを行い, SBT databaseにより各遺伝子のAllele Numberを決定 後,Allele Numberの組み合わせによりSequence Type (ST型)を決定した.検体は一か所の冷却塔につき1株 のみ解析を行った.

結   果

1  レジオネラ属菌による冷却塔水汚染状況  濃縮冷却塔水をテンプレートとしたPCR法の結果,4 施設11塔のすべての冷却塔水でレジオネラ属菌の遺伝子 が検出された(表1). L. pneumophila特異的なプライ マーを用いてPCRを行った結果,6塔が陽性を示した. このうち4塔から菌が分離され,これらの菌株は血清 型別の結果,B-01から分離されたものがL. pneumophila 血 清 群 7,C-01,C-02,D-01か ら 分 離 さ れ た も の がL. pneumophila 血清群1であった.  濃縮冷却塔水検体をテンプレートとしたPCR法でL. pneumophilaが検出されなかった5塔のうち,4塔から L. pneumophila以外のレジオネラ属菌が分離された. これらについてmipの塩基配列を解析した結果,3塔か らL. quinlivaniiが,残りの1塔から,L. quinlivaniiとL. busanensisが検出された. 2  分子系統解析  冷却塔水から分離されたL. pneumophila 4株及び 2009年から2015年に事案等で分離されたL. pneumophila 4株について,PFGE法及びSBT法により分子系統解析 を行った.  PFGE法の結果,同一冷却塔から分離した複数の菌株 のバンドパターンは全て一致し,類似度は100%であっ た(図2). B-01-1ととD-01-1の類似度は90%を示したが, これらの血清群はそれぞれ7群と1群であり,PFGE法 の結果と血清群は一致しなかった.  SBT法の結果,解析した8株は6個のST型に分類さ れた(表2).環境分離株2株(C-01-1,D-01-1)と臨床 始日から4日目以降に確認された白色すりガラス様のレ ジオネラ属菌様コロニーを釣菌し,血液寒天培地,及び BCYE培地に塗沫し培養を行った.BCYE培地のみで発 育が確認された菌をレジオネラ属菌とみなし,血清学的 検査及び遺伝子学的検査において性状を確認した. ( 2 )PCR法  濾過濃縮後の検体及び分離培養後の菌株をテンプ レートとしてPCRを行った.レジオネラ属菌および L. pneumophila同定のためのPCRは病原体検出マニュ アルに基づき行った[4].レジオネラ属菌の同定に は 山 本 ら の 報 告 に よ るLEGプ ラ イ マ ー を[ 5],L. pneumophilaの同定にMahbubaniらの報告によるLmip プライマーを使用した[6].反応条件は熱変性94℃/60 秒,アニーリング61℃/60秒,伸長72℃/60秒,40サイク ルとした.L. pneumophila以外のレジオネラ属菌であっ た株については,塩基配列を決定するため,mipを対象 にして,Ratcliffらの報告に記載のプライマーを用いて PCRを行った[7].反応条件は熱変性94℃/30秒,アニー リング55℃/60秒,伸長72℃/120秒,40サイクルとした. Big Dye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied biosystems)を用いてシークエンスを行い塩基配列を 決定後,解析サイトLegionella species identification by mip similarity.[8]を使用して菌種を特定した.なお,

遺伝子検査

レジオネラ属菌様コロニー

白色・すりガラス様・酸臭 BCYE

培地 発育

血液寒天培地

非発育

濃縮検体

1∼2Lを5mLに濃縮

酸処理

濃縮検体100μL 酸処理液100μL 室温/5分

熱処理

50℃/30分 100μL

血清学的検査

遺伝子検査

BCYE

培地,血液寒天培地に塗沫

36℃/4~7日

直接

100μL GVPC

培地に塗沫

36℃/4~7日 図1 レジオネラ属菌検査の流れ

(14)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016) 法での解析の結果,類似度は40%程度であり,ST型が 一致してもPFGEによって類似性を示すとは限らなかっ た.また,PFGE法ではB-01-1とD-01-1が類似度90%で, 近縁である可能性を示しているが,SBT法ではそれぞれ ST1422とST1に型別された.

考   察

 本調査では,環境水のレジオネラ属菌による汚染実態 調査として,冷却塔水の検査を行った.その結果,検体 分離株1株(LE13-01)は同一のST型(ST1)を示した. B-01-1はST1422に分類されたが,Allele numberをみる とST1とmip及びneuAが異なるのみで,その他のAllele number は一致しており,ST1に近い型であると考えら れた.また,2009年に県内で発生した事案の際に浴槽水 から分離した株である,LE09-01は現在登録されている ST型に分類されなかったため,新規のST型であること が考えられた.  PFGE法とSBT法を比較すると(図2),SBT法によっ てST1に分類されたC-01-1,D-01-1及びLE13-01はPFGE 表1 冷却塔からのレジオネラ属菌検出結果 施設 冷却塔番号 レジオネラPCR(冷却塔水) 菌分離 PCR(菌株) 菌種 血清群 属菌 L. pneumophila レジオネラ属菌 L. pneumophila A 01 + − + + − L. quinlivanii − 02 + − + + − L. quinlivanii − 03 + − + + − L. quinlivanii − 04 + − + + − L. quinlivanii, L. busanensis − B 01 + + + + + L. pneumophila 7 02 + + − NT NT NT NT 03 + + − NT NT NT NT 04 + − − NT NT NT NT C 0102 L. pneumophilaL. pneumophila 11 D 01 + + + + + L. pneumophila 1 NT:Not Tested 表2 SBT法解析結果

菌株名 flaA pilE asd Allele Numbermip mompS proA neuA ST型

B-01-1 1 4 3 19 1 1 215 1422 C-01-1 1 4 3 1 1 1 1 1 C-02-1 3 13 1 10 14 9 11 127 D-01-1 1 4 3 1 1 1 1 1 LE09-01 7 6 17 21 11 11 9 0 LE13-01 1 4 3 1 1 1 1 1 K14-13018T 3 13 1 28 12 9 3 537 LE15-01 27 3 9 15 56 5 6 679 図2 L. pneumophilaにおけるPFGE法の結果及びSBT法との比較

LE15-01-1

LE15-01-2

LE09-01-1

LE13-01-1

LE13-01-2

C-01-1

C-01-2

D-01-1

D-01-2

B-01-1

B-01-2

B-01-3

K14-13018T-1

K14-13018T-2

C-02-1

SBT法

ST679

ST0

ST1

ST1

ST127

ST1

ST1422

ST537

PFGE法

PFGEパターン 類似度(%) 菌株名 ST型 血清群

1

1

1

1

1

7

1

1

(15)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016) 14 め,目的に応じて適切な解析法を使用することが望まし いが,一方で,ひとつの検査方法で解析を行うと近縁性 を示す結果となっても,別の方法を用いると関係性が否 定される可能性が考えられる.このため,可能であれば 複数の検査結果をみて総合的に判断し,最終的な判定結 果を出すことで,より正確な結果を導きだすことができ ると考えられる.

文   献

[1]国立感染症研究所.感染症発生動向調査感染症週 報.2015;53:6 [2]広 島 県 感 染 症・ 疾 病 管 理 セ ン タ ー. 四 類 感 染 症 の 月 別 発 生 状 況[Internet].[modified 2016 Aug 31; cited 2016 Sep 25]. Available from: http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/hcdc/hidsc-kanzya-zyouhou-tuki-kousin- 4rui.html#40 [3]吉田正法,重村久美子,徳島智子,吉田英弘,佐 藤正雄,廣瀬みよ子,門司慶子,石津尚美,竹中章, 前川純子.病院内冷却塔からのレジオネラ感染疑 い事例−福岡市.病原微生物検出情報. 2013;36(1) [4]国立感染症研究所.レジオネラ症.2011 [5]山本啓之.PCR法によるLegionella属細菌の検出 ・ 同定.日本臨床.1992; 50 特別号: 394-399. [6]Mahbubani MH, Bej AK, Miller R, Haff L, DiCesare

J, and Atlas RM. Detection of Legionella with poly-merase chain reaction and gene probe methods. Mol Cell Probe. 1990;4:175-187.

[7]Ratcliff RM. Sequence-based identification of legio-nella. Methods Mol Biol. 2013;954:57-72.

[8]Legionella species identification by mip similarity. [Internet]. Health Protection Agency. Availabled from: http://bioinformatics.phe.org.uk/cgi-bin/ legionella/mip/mip_MAFFT_NEXUS.cgi

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広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016)

cooling tower water, bath water and soil in Ja-pan. Appl Environ Microbiol. 2012;78:4263-4270 [14]前川純子,倉文明,大西真,渡辺ユウ,渡辺祐子,

磯部順子.レジオネラ臨床分離株の型別―レファ レンスセンター活動報告として―.病原微生物検 出情報.2013;34(6)

[13]Amemura-Maekawa J, Kikukawa K, Helbig JH, Kaneko S, Suzuki-Hashimoto A, Furuhata K, Chang B, Murai M, Ichinose M, Ohnishi M, et al. Distribution of monoclonal antibody subgroups and sequence-based types among Legionella pneumophila serogroup 1 isolates derived from

(17)
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広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24,p17−22,2016 る流行遺伝子型の動向を調べることを目的とし,ノロ ウイルスを原因とする小児散発事例および集団感染事 例での検出遺伝子型について調査した.加えて,GII.17 Kawasaki 2014を特異的に検出できるとして,市販され ているリアリタイムPCRキット(プライマー&プローブ) の有用性についても検討を行った.

材料および方法

1 供試検体  2015/16シーズンにおける流行状況把握のための遺伝 子型別には,2015年10月から2016年7月までに採取され た検体を対象とした.すなわち,小児散発事例の検体に ついては,県内の小児科定点病院より検査依頼のあった 感染性胃腸炎の検体のうち,ノロウイルスの遺伝子が検 出された糞便検体で,かつ遺伝子解析可能であった49検 体を対象とした.また,集団感染事例からの検体につい ては,ノロウイルス起因の18事例から得られた糞便のう ち59検体を対象とし解析を行った.  GII.17 Kawasaki 2014特異的検出キットを用いた遺伝 子型別法の有用性の検討には,2014から2016年に得られ た検体のうち,遺伝子型決定済みのノロウイルス陽性糞 便検体38件及び,アデノウイルス,アストロウイルス, サポウイルス,パレコウイルスの遺伝子がそれぞれ検

緒   言

 ノロウイルスは,人に対し嘔吐・下痢などの症状を引 き起こすウイルスで,特に冬季に流行し感染性胃腸炎 や集団食中毒等を引き起こすことでも知られている[1 -2]. 2014/2015シーズンには広島県のみならず全国的 にもノロウイルスの主要流行株に変化があり,それまで 多く検出されていたGII.4が減少し,新規遺伝子型ノロ ウイルス,GII.17 Kawasaki 2014 がシーズン終わりから 非常に多く検出された[3-5].このGII.17 Kawasaki 2014 は2013/14 冬季シーズンに川崎市内で発生した感染 性胃腸炎患者から検出された遺伝子型で[6],2014/15 冬季シーズンの1月以降に全国的な流行を引き起こし ていたことが明らかになっている[6,7].これを受け て,2015年9月30日付け食安監発0930第2号厚生労働省 通知「ノロウイルスによる食中毒の予防について」によ りGII.17 Kawasaki 2014が2015/16シーズンに大流行する 可能性があるため,流行の立ち上がりに厳重な監視が 必要であるとして注意が呼びかけられた.また,GII.17 Kawasaki 2014は市販のイムノクロマト簡易検査キット の検出感度が低いとの報告があったことから[7,8], キット偽陰性による感染症対策の遅れも懸念された.  そこで今回我々は,2015/16シーズンの広島県におけ

資 料

広島県における 2015/16 シーズンのノロウイルス流行状況について

谷澤 由枝,重本 直樹,池田 周平,島津 幸枝,高尾 信一

Epidemic of Norovirus in Hiroshima prefecture, 2015-2016 season.

Y

UKIE

T

ANIZAWA,

N

AOKI

S

HIGEMOTO,

S

YUHEI

I

KEDA,

Y

UKIE

S

HIMAZU, and

S

HINICHI

T

AKAO (Received October 14, 2016)

 2014/15シーズン末から全国的に,これまでに報告されたことのないノロウイルGII.P17−GII.17 Kawasaki 2014 variant (以下GII.17 Kawasaki 2014と略す.)の検出が相次いだ.そのため2015/16シーズンは,GII.17 Kawasaki 2014の大きな流行が起こる可能性が危惧された.そこで2015/16シーズンの流行状況を把握するた め遺伝子型について調べたところ,集団感染事例,小児散発事例共にGII.4が最も多く検出された.GII.17 Ka-wasaki 2014については集団感染事例ではGII.4と同程度検出されたが,小児散発事例ではその検出数は少なく, 小児散発事例と集団感染症事例では遺伝子型検出内訳が大きく異なるという特徴が認められた.また,遺伝子 型別のスクリーニング法として市販のGII.17 Kawasaki 2014特異的検出キットについて検討を行ったところ, その有用性が確認された.

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広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016) 18 を用い,25μlの反応系でcDNA 2.5μlを供試した.反応条 件は95℃で10分間初期変性後,95℃で15秒間,60℃で1 分間を45サイクル行った.CP(Crossing Point)値が36 未満のものを陽性と判断した.

結   果

1  小児散発事例から検出されたノロウイルスGIIの遺 伝子型  小児散発事例から検出されたノロウイルスGIIの月別 遺伝子型検出状況を図1に,遺伝子型別の内訳を図2 に示した.2015/16シーズンでは10月にノロウイルスが 初めて検出され11月が検出のピーク(16件)であった. 検出されたノロウイルスの遺伝子型検出割合はGII.4が 36件(74%)と大多数を占めたが,それらは,いずれも GII.4 Sydney 2012であった.GII.4以外ではGII.3が6件 (12%),GII.17 Kawasaki 2014が4件(8%),GII.6が3 件(6%)検出された.なお,GII.17 Kawasaki 2014に ついては,2015年中には検出されず,2016年1月に初め て検出され,3月まで検出が続いた.  小児散発事例におけるノロウイルスGIIの年齢別にみ た検出遺伝子型を表1に示した.GII.3,GII.6,および GII.17 Kawasaki 2014については,2歳以上の児から多 く検出される傾向が見られたが,GII.4については2歳 未満の児から多く検出されていた. 2  集団感染事例から検出されたノロウイルスGIIの遺 伝子型  集団感染事例から検出されたノロウイルスGIIの概要 を図3及び図4に示した.  シーズン初のノロウイルスによる集団感染事例は2015 年11月に保育園で発生し,その後の12月及び1月が集団 感染事例におけるノロウイルス検出のピークであった.  GII.17 Kawasaki 2014は2015年12月に初めて検出さ れ,1月が3件と最も多かった.それらノロウイルス 出された糞便検体各1件から得られた保存cDNAを用い た. 2  塩基配列の決定と遺伝子型別  ノロウイルス検出プライマーとしてGI用にはG1SKF, G1SKRを, GII用にはG2SKF,G2SKRとG2ALSKRを用い た[3,9].これらのプライマーを用いて増幅した特異 的増幅断片は,QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN) またはQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)により 精製した後,BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit (Applied biosystems)及びApplied Biosystems 3500 Genetic Analyzer(Applied biosystems)を用いたダイ レクトシークエンス法により塩基配列を決定した.決定 した塩基配列はWeb上のノロウイルス遺伝子型分類ツー ルであるNorovirus Genotyping Tool Version 1.0(http:// www.rivm.nl/mpf/norovirus/typingtool)を用いてVP1 上流域の遺伝子型別を行った. 3  GII.17 Kawasaki 2014特異的検出キットを用いた遺 伝子型別法の有用性の検討   リアルタイムPCR法にてノロウイルス GII.17を特異的 に検出するキット「Hypercool テクノロジーTMによる新 型ノロウイルス検出用プライマー&プローブ」(日本遺 伝子研究所)を使用し,その有用性について検討を行っ た.リアルタイムPCR反応はLight Cycler 480システム Ⅱ(Roche),Light Cycler 480 Probes Master(Roche)

検出数 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月

GII.3 GII.4 GII.6 GII.17

2015年 2016年 (件) 図1 2015/16シーズンの小児散発事例における月別の遺伝子型検出状況 図2  2015/16シーズンの小児散発事例における遺伝子型別内訳 GII.3 6(12%) GII.4 36(74%) GII.6 3(6%) GII.17 4(8%) n=49 表1  2015/16シーズンの小児散発事例におけるノロウ イルスGIIの年齢別検出状況 年齢 遺伝子型

GII.3 GII.4 GII.6 GII.17

<12 ヶ月 1 5 0 0

1歳 1 20 1 1

2歳 2 6 0 1

(20)

広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告,No. 24(2016) れも陰性と判定され,非特異反応は認められなかった.

考   察

 2015/16シーズンは2013/14シーズンに初めて報告さ れた新規遺伝子型GII.17 Kawasaki 2014の出現により, このGII.17 Kawasaki 2014がこれまで長く主流であっ たGII.4に代わり大流行を引き起こす可能性があるとし て非常に注目されたシーズンであった.そこで我々は 2015/2016シーズンの流行を監視することを目的に,県 内で発生したノロウイルス起因の小児散発事例および集 団感染事例における遺伝子型について調べた.  本県の小児散発事例の遺伝子型内訳を全国(IASR) の報告[10]と比較すると(図5),2015/16シーズンは GII.4が主要流行株で次にGII.17 Kawasaki 2014,GII.3が 多い点は共通であった.一方で本県のGII.4の検出率は, 全国の49%よりも高い74%を占めた点と,GII.6が多く 検出された点で全国の報告とは異なっており,遺伝子型 によっては流行に地域差があると考えられた[11].  小児散発事例では10月に,集団感染事例では11月にノ ロウイルスがシーズンで始めて検出された.ピークは小 児散発事例では11月,集団感染症事例では12月及び1月 であり,集団感染事例は小児散発事例よりも1か月程度 の遺伝子型の割合は,GII.4が7件(39%)と,GII.17 Kawasaki 2014が6件(33%)とほぼ同程度で,検出さ れた遺伝子型の大半を占め,次いでGI.3,とGII.7,GII.6 も少数ながら検出された.なお,GII.4については小児 散発事例と同様に全てGII.4 Sydney 2012であった.  発生施設別にみたノロウイルスの検出遺伝子型を表2 に示した.施設別に見ると,保育園の事例では,検出 されたウイルスはGII.4,GII.6,GII.7,GII.17 Kawasaki 2014と多彩な遺伝子型であったが,18歳以上の成人 層における集団感染事例においては,GII.4及びGII.17 Kawasaki 2014が集中して検出された. 3  GII.17 Kawasaki 2014特異的検出キットを用いた遺 伝子型別法の有用性の検討   リ ア ル タ イ ムPCR法 を 原 理 と す る 市 販 のGII.17 Kawasaki 2014特異的検出キットの検査結果を表3に示 した.ダイレクトシークエンス法にて,GII.17と確認し ている25検体については,本キットにおいても,全て ノロウイルスGII.17 Kawasaki 2014陽性と判定された. 一方,GII.17 Kawasaki 2014以外のノロウイル遺伝子型 (GII.3, GII.4, GII.6, GII.7)が含まれる検体や,アデノウ イルスやアストロウイルスといった,その他の下痢症ウ イルスが陽性であった検体については本キットではいず 表2  2015/16シーズンの集団感染事例における発生施

設別ノロウイルスの遺伝子型

発生施設 GI.3 GII.4 遺伝子型GII.6 GII.7 GII.17

保育園 2 1 1 1 高等学校 1 1 病院等 (18歳以上) 1 2 飲食店(食中毒) (18歳以上) 2 2 高齢者施設 2 1 (数字は事例数) 事例数 0 1 2 3 4 5 6 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月

GI.3

GII.4

GII.6

GII.7

GII.17

2015年 2016年 (件) 図3  2015/16シーズンの集団感染事例における月別の遺伝子型検出状況 GI.3 2(11%) GII.4 7(39%) GII.6 1(6%) GII.7 2(11%) GII.17 6(33%)

n=18

図4  2015/16シーズンの集団感染事例に おける遺伝子型別内訳 表3 GII.17特異的検出キットの特異性の確認 供試ウイルス 遺伝子型 陽性数/検体数 GII.17 Kawasaki 2014 25 / 25 GII.3 0 / 2 ノロウイルス GII.4 Sydney 2012 0 / 6 GII.6 0 / 3 GII.7 0 / 2 アデノウイルス 0 / 1 アストロウイルス 0 / 2 サポウイルス 0 / 3 パレコウイルス 0 / 4

Table 2  Components of reaction mixture for LAMP assay Volume 2× Reaction Mix 12.5 μl Primer FIP (20 μM) 2.0 μl Primer BIP (20 μM) 2.0 μl Primer F3 (10 μM) 0.5 μl Primer B3 (10 μM) 0.5 μl Loop primer LF (10 μM) 1.0 μl Loop primer LB (10 μM) 1.0 μl Bst DNA
Table 3  Sensitivity of LAMP and Real-time PCR assay for positive samples of Kudoa septempunctata in olive flounder Sample
Table 4  Comparison of Microscopy, Real-time PCR and LAMP assays for detection of Kudoa septempunctata in olive flounder

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