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独創的技術者教育を目指した基礎科学実験の開発

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Academic year: 2021

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ル・コルビュジエの「建築的プロムナード」における空間体験について

―スロープのある住宅作品を対象として―

c112005 今村凌

キーワード:建築的プロムナード、スロープ、場面、連続性、時間、空間体験 1.序章 1-1.研究対象 ル・コルビュジエの住宅作品、その中でも内部にスロ ープがある以下の 11 作品を研究対象とする。 表 1 研究対象の 11 作品 オートイユの住宅 1922 年 パリ(フランス) ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸 1923 年 パリ(フランス) メイエル邸 1925 年 ヌィイー・シュル・セーヌ(フランス) サヴォア邸 1928 年 ポワッシー(フランス) エラズリス邸 1930 年 チリ ジャウル氏の週末住宅 1937 年 敷地未確定 クラーク邸 1938 年 敷地未確定 クルチェット邸 1949 年 ラ・プラタ(アルゼンチン) チマンバイ邸 1951 年 アメーダバード(インド) ハッスィシング邸 1951 年 アメーダバード(インド) ショーダン邸 1956 年 アメーダバード(インド) 1-2.研究背景 近年の住宅では効率性、合理性が重視される傾向にあ り、特に商品化された住宅における建築体験には大きな がある。豊かな空間をつくるために、コルビュジエの建 築作品を見直すことは意味があるだろう。本研究はモダ ニズム建築の礎を築いた 20 世紀を代表する建築家ル・ コルビュジエの「建築的プロムナード」に着目する。 「建築的プロムナード」は建築空間にいる人間の目に映 る景観の連続性を主題としている。コルビュジエの住宅 作品を研究することで、建築体験の全体性に目を向ける 機会となるだろう。 1-3.既往研究 本研究に最も近い研究としては、千代章一郎「ル・コ ルビュジエの「建築的プロムナード」の成立に関する一 考察 : ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸の制作を通して」 (2002)注1がある。この研究ではひとつの建築作品にお けるスロープの空間構成が分析されている。本研究で は、スロープのある全ての住宅作品を対象とする。 1-4.研究の目的と方法 対称とする11 作品におけるスロープを中心に動線、 視線、開口、内と外の関係など「建築的プロムナード」 の構成要素を平面図、立面図、外観図等から抽出し分析 する。11 作品を建築の形態、年代など分析し比較するこ とで、コルビジュエの考えていた建築体験とは何か考察 する。 2.ル・コルビュジエとその代表作品について ル・コルビュジエ、本名シャルル=エドゥアール・ジ ャンヌレは、1887 年スイスに生まれ、アール・ヌーヴォ ーの影響下に建築を学ぶ。コルビュジエが設計したシュ タイン邸(1926-1928 年)やサヴォア邸(1928-1931 年)、 スイス学生会館(1931-1933 年)などは、近代建築の 「古典」ともいわれるほどの斬新で精妙な美しさを実現 している。晩年にいたるまでマルセイユのユニテ・ダビ タシオン(1945-1952 年)、ロンシャンの礼拝堂(1950- 1952 年)、インドのチャンディガール計画(1950 年)など 大胆で力強い造形を示した。また、コルビジュエに直接 に学んだ弟子たち、前川國男、吉阪隆正、坂倉準三の功 績が日本の近代建築の発達に繋がっている。 3.スロープのある住宅作品の分析 研究対象の作品の解説をしていく。作品の概要は東京大 学工学部建築学科 安藤忠雄研究室編 『ル・コルビュ ジエの全住宅』(TOTO 出版 2001 年)を参考にした注2 3-1.オートイユの住宅(1922 年 フランス) 後述するラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸と同じ地区の敷 地であり、層構成は「シトロアン型住宅」そのままであ る。平面は敷地に対応して長手方向に開き、直階段は螺 旋階段となって中央に移動している。ラ・ロッシュジャ ンヌレ邸と共通する所として、スロープの空間に対する 開かれ方がある。 3-2.ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸(1923 年 フラ ンス) 近代絵画のギャラリーにある独身者の住まいと子供のい る家庭の 2 戸の住宅。機能を有機的に隣接させた総合的 な構成をもつ。2 戸は外観では一体だが、内部では1枚 指導教員記入欄 担当教員 河田智成 印 図 1 オートイユの住宅の 外観図 図 2 オートイユの住宅 2 階 3 階平面図

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- 2 - の壁ではっきり分かれている。内部では、吹き抜け、見 通し、ブリッジ、階段、スロープなどの建築的要素の組 立てが「建築的プロムナード」を形成している。 3-3.メイヤー邸(1925 年 フランス) メイヤー邸は「自由な平面」への到達を示すプロジェク トである。「自由な平面」はドミノ型の自立した構造体 の中に自由に要素を配置するもので、壁の中は柱を取り 込む必要が無くなり、柱や煙突や階段は部屋の真ん中に 現れる。独立した構造体は建築全体にリズムを与え、透 明な空間感覚を作り出す。この単純な包皮の中に複雑な 機構をもつ建築を、コルビュジエは自動車のようだと考 えた。正面左にはスロープのヴォリュームが示される注 1 5 3-4.サヴォア邸(1928 年 フランス) 四方を森に囲まれた丘に計画された。「シトロアン型 住宅」の住むための理念、「ドミノ型住宅」の構造とシ ステム、近代建築 5 原則といったコルビュジエが 1920 年代までに試行、獲得してきた成果の総合である。地上 階からスロープや階段を使い 2 階に上り、2 階のテラ ス、庭園、ホール等を回遊していく経路は「建築的プロ ムナード」をそのまま体現している。 3-5.エラズリス邸(1930 年 チリ) 白の時代を終え、ヴァナキュラーな方向を打ち出した住 宅である。バタフライ屋根は平行するスロープに関係づ けられている。階数は 1 階のみでスロープを登った先に ロフトになっており寝室がある。コルビュジエのこのエ ラズリス邸はアントニン・レーモンドが日本において 「夏の家」として建設している(図16)。 3-6.ジャウル氏の週末住宅(1937 年) ほぼ正方形の平面でピロティがあり、中央にスロー プ、螺旋階段がある構成はサヴォア邸と共通する。1 階 のピロティは家事用、2 階はスロープを中心に 2 つの部 分に分かれており、それぞれ両親と 4 人の子供部屋であ る。 3-7.クラーク邸(1938 年) エラズリス邸の屋根に平行なスロープはこのクラーク 邸では折り返して、螺旋状に部屋が展開する。下からガ レージ、玄関、台所、居間、テラス、屋上庭園、寝室と 順にプライバシーが高くなる。部屋の入口はスロープに 面してとられ、通常の1階 2 階といった概念はなくなっ ている。 3-8.クルチェット邸(1949 年 アルゼンチン) 住宅と診療所を切り離してピロティで浮かせ、壁とス ロープで繋げた構成である。建築と外部空間をスロープ で繋いでいる複雑かつ巧妙なもので、住宅と診療所を分 離し、住宅と屋上庭園、公園との視覚的一体感をもたせ ている。 図 3 ラ・ロッシュ=ジ ャンヌレ邸 外観図 図 4 ラ・ロッシュ=ジャンヌ レ邸 2 階 3 階 平面図 図 8 ジャウル氏の週末住宅 1 階 2 階 平面図 図 6 サヴォア邸 2 階 3 階 平面図 図 7 エラズリス邸 平面図 図 5 メイヤー邸 2 階 3 階 平面図 図 9 クラーク邸 2 階 平面図 図 10 クラーク邸 断面図

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図 11 クルチェット邸 1 階 2 階 平面図 3-9.チマンバイ邸(1951 年 インド) インドの気候に適応した住宅。陰をつくり風を通す、 屋根付き屋上庭園とブリーズ・ソレイユのあるコンクリ ートの打ち放しの建築である。住宅の中心にスロープが あり階段よりもスロープで上下階を移動するようになっ ている。このチマンバイ邸と後述するハッスィシング邸 は実際には建てられていない。 3-10.ハッスィシング邸(1951 年 インド) 「チマンバイ邸」と同時期にと同時期の同様の計画で ある。1 階の玄関ホール、居間、食堂と配膳室、2 階の 書斎、客室用寝室、3 階の屋上庭園、3 つの寝室など各 階がスロープによって結ばれている。 3-11.ショーダン邸(1956 年 インド) 後期コルビュジエの総合的住宅。この住宅は前述のハ ッスィシング邸とは施主が変わりショーダン邸として実 現した。この住宅は「ドミノ」のフレームと「シトロア ン」の空間、インドという国での気候への対処「クルチ ェット邸」の複雑な断面構成の総合であり、後期ル・コ ルビュジエの「サヴォア邸」ともいえる建築である。打 ち放しのコンクリートの単純な骨組みの中に日陰の外部 空間、個室群、斜路、ブリーズ・ソレイユ、傘状の屋根 が配置され複雑な空間をつくっている。 4.比較と考察 4-1.スロープと空間構成についての考察 スロープを組み込んだ住宅で重要なのは、場面の連続 性である。その基となるスロープの使われ方として、階 段的役割、上下の概念を無くす役割、内部空間を拡張さ せる役割、外部環境と繋がる役割の 4 つに分けることが できる。これら4つをそれぞれ上下方向、水平方向、内 部環境、外部環境とし、記述する。 4-1-1.上下方向 スロープが上下方向、主に階段的役割をしているのは メイヤー邸、サヴォア邸、ジャウル氏の週末住宅、チマ ンバイ邸、ハッスィシング邸、ショーダン邸である。垂 直方向にスロープを使用する建築の場合、多くが 1 階を 玄関ホール、使用人の部屋など、2 階以上が生活空間と していることが多い。スロープによって視線が遮られる ことなく場面の連続性が生まれる。 4-1-2.水平方向 スロープが水平方向に構成されているものは、サヴォ ア邸、エラズリス邸、クラーク邸、クルチェット邸であ る。サヴォア邸は 2 階のテラスから 3 階を結び付け同じ 階のような印象を受ける。エラズリス邸は一階のホール からロフトに上がるためにスロープを用いる。クラーク 邸はスロープを中心に玄関から階が少しずつ上がるごと にプライバシーが高くなる。クルチェット邸では診療所 と住宅を繋ぐようにスロープが配置されている。このよ うにスロープが水平方向にあったとしても構成はどれも 違うが、スロープが水平方向に廊下のような役割をする ことで上下階の概念がなくなる。 4-1-3.内部環境 建築内部にスロープが配置されているものは、オート イユの住宅、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸、サヴォア 邸、エラズリス邸である。建物内部と分類したのは、建 物の内部にありかつスロープのある内部空間を拡張させ る構成されているものである。部屋単位の中にスロープ が組み込まれているのは、空間からスロープへ、スロー プからまた次の空間へと移動するときに連続性が感じら れるようにするためである。 4-1-4.外部環境 建物外部と関係を持つのは、ラ・ロッシュ=ジャンヌ レ邸、メイヤー邸、サヴォア邸、クラーク邸、クルチェ ット邸である。外部に視線をおくるように構成されるこ とで、外部との境界を曖昧にし、建築と周辺環境の一体 図 14 ショーダン邸 2 階 3 階 平面図 図 13 ハッスイシング邸 平面図 図 12 チマンバイ邸 2階3階 平面図

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- 4 - 図 16 メイヤー邸 計画案 化に繋がる。 4-2.場面の連続性について 4-1 での上下、水平、内部、外部はそれぞれ組み合わ せて使われている。上下と内部で動線の連続、上下と外 部で視線の連続、水平と内部で上下階の連続、水平と外 部で空間の連続のように組み合わせられている。 この図から分かることは、1920 年代のオートイユの住 宅、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸、メイヤー邸でスロー プによる場面の連続性を試みていて、その後、上下水平 内部外部の 4 つ全てを含ませたサヴォア邸を造ったと考 えられる。白の時代の後、エラズリス邸、クラーク邸、 ジャウル氏の週末住宅のような木造住宅でもスロープを 使い空間構成を試みている。その後も水平外部を強調し たクルチェット邸、上下内部を強調したチマンバイ邸、 ハッスィシング邸、ショーダン邸など空間体験の全体性 を追求していったと考えられる。 4-3 メイヤー邸計画案について メイヤー邸は、パリ 郊外ヌィイー・シュ ル・セーヌに計画さ れたが、実際には建 設されなかった。施 主に宛てた手紙に書 かれた<メイヤー邸 計画案>では、居住 空間のイメージが、 建築の中の散策に沿 った視点の連続的変 化が生み出す場面 (シーン)を描いた 7 枚の図面の連続 (シークエンス)の 中で表現されている (図5)。コルビュ ジエは場面の連続性を表現する手段としてパースを多用 している。ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸で初めて語られ た「建築的プロムナード」をメイヤー邸でパース(場 面)とプロムナード(連続)として表現したかったので はないかと考えられる。 5.結論 5-1.まとめ 建築的プロムナードはコルビュジエが空間の現象を運 動と時間が形成するものとして思考し始めたことから生 まれた。つまり物(建築)に人が関わることで運動と時 間が発生し空間をつくるということである。本研究は、 コルビュジエの言う運動とはコルビュジエ住宅のスロー プにあると考えた所から始まる。先に述べたように、ス ロープには場面という静と連続性という動が組み合わさ る空間であり、建築的プロムナードにおいての運動と時 間の発生を容易にする。 建築的プロムナードはスロープが重要な役割を担って いる。スロープの影響する範囲は、上下方向、水平方 向、建物内部、建物外部の 4 つに分けて考えることが出 来る。さらに上下と内部で動線の連続、上下と外部で視 線の連続、水平と内部で上下階の連続、水平と外部で空 間の連続のように組み合わせられている。1920 年代の ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸、やメイヤー邸などでスロ ープを住宅に組み込みスロープによる場面の連続性を試 みている。その後、上下、水平、内部、外部、の4つす べてを含ませたサヴォア邸で建築的プロムナードの概念 が完成したと考えられる。白の時代の後、木造住宅のエ ラズリス邸やクラーク邸やインドのショーダン邸など 様々な条件で空間体験を追求していったと考えられる。 5-2.問題と展望 コルビュジエの建築的プロムナードについてスロープ を中心に考察したが、スロープのない住宅については考 えることが出来なかった。スロープのない住宅に建築的 プロムナードが無いというわけではないので次があれば 今度は視野を広げて考察してみたい。 【注】1)山田 裕紀 , 千代 章一郎 「ル・コルビュジエの「建築的プロムナ ード」の成立に関する一考察 : ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸の制作を通して」日 本建築学会近畿支部研究報告集. 計画系 (42), 961-964, 2002-05-24 2)東京大学工学部建築学科 安藤忠雄研究室 編 『ル・コルビュジエの全住 宅』 TOTO 出版 2001 年, によった。 【図版出典】

1)、2)『(Oeuvre Complete)』[volume1] Birkhauser、1995年、58頁/3)63 頁/4)64頁/5)90頁/16)91 頁。

6)『Le Corbusier : Complete Works (Oeuvre Complete)』[volume2] Birkhauser、1995年、25頁/7)49頁。

8)『Le Corbusier : Complete Works (Oeuvre Complete)』[volume4] Birkhauser、1995年、12頁9)、10)26頁。

11)『Le Corbusier : Complete Works (Oeuvre Complete)』[volume5] Birkhauser、1995年、163/12)164頁/13)48頁。

14)『Le Corbusier : Complete Works (Oeuvre Complete)』[volume6] Birkhauser、995年、139頁。

15)筆者作成

≪卒業研究発表 (H28.02.12-13)≫ ≪所属研究室: 河田研究室≫ 図 15 場面の連続性

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参照

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