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高等学校看護学科における教科指導に関する研究 ―教員への調査を通して― [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)高等学校看護学科における教科指導に関する研究 ―教員への調査を通して― キーワード:高等学校,看護,教科指導,学校教育,教育方法. 教育システム専攻 鶴田. 百々. 目次. 当する看護科教育法の内容(教科内容と方法・技術)とした。. はじめに. 現在看護学科において教科指導を担当している者は、教. 第 1 章 研究目的と研究方法. 諭・助教諭・講師等が混在している。そのため、すべてを. 第 1 節 問題の所在. 総称して「教員」とした。. 第 2 節 研究目的 第 3 節 研究方法 第 2 章 看護学科の全体傾向 第 1 節 教員の高齢化. 第 1 章 研究目的と研究方法 第 1 節 問題の所在 これまでの看護学科に関する主要な学術的研究として、. 第 2 節 普通免許状への上進. 中島(1973)、日下(2003)、吉本(2010)の 3 つの研究を概観し. 第 3 節 授業準備からみる教科指導の実態. た。これらの研究は、看護学科の発展を多角的に支える重. 第 3 章 自由記述からみえる教員の教育に対する意見. 要な視点を与えている。しかし、これらの先行研究は、 「実. 第 1 節 教育に対する考え. 際にどのような“授業”つまりは教科指導が行われている. 第 2 節 自由記述からみる教科指導の実態. のか」といった、教育の実態については言及していない。. 第 4 章 考察. 文部科学省(2008)も、「高等学校の看護教育に関する検討. 第1節 教員の生徒観. 会報告書」の中で教育内容・方法における課題を挙げている. 第 2 節 教員の教科指導力. が、これらの課題は全て生徒の問題に対する指摘であり、. おわりに. 実際の教科指導がどのように行われているのかといった実 態については言及していない。. はじめに. 今後は、看護高等専門学校の設立やキャリア形成の側面. 高等学校(以下、高校とする)の看護学科は、そこに通う生. からの研究だけでなく、実際の教科指導に関する研究を進. 徒数の高校生総数に占める割合は僅か 0.4%と少ないが、今. めることによって、看護学科の教育の質の向上を内外から. 年で設置 49 年を迎える歴史ある学科である。約半世紀の歴. 押し進めていくことが必要ではなかろうか。そこで本研究. 史があるにも関わらず、看護学科については、どのような. は、教育方法学的視点から看護学科の教育実践についての. 授業が行われているかといった具体的な研究が少なく、こ. 研究、とりわけ、教科指導の実際と方法についての研究を. れまで研究が十分に進められてきたとは言い難い。そして、. 進めていくものである。. 現在でも看護学科に関する研究は、看護学の専門家からも 教育学の専門家からもほとんど取り組まれていない状態で ある。. 第 2 節 研究目的 本研究の目的は、第一に看護学科の教員に対して質問紙. 論述を進めるにあたって、本稿での用語定義を記してお. 調査を行い、現在の教科指導の実態を把握すること、第二. く。本稿は、准看護師養成及び看護師養成について議論す. にはその実態を踏まえて、教科指導上の課題について明ら. るものではない。そのため、准看護師養成・看護師養成の. かにすることである。. 区別をせず「看護職養成」と表記する。学科表記については. 前述した看護学科教員に対する質問紙調査は、全数調査. 教育職員免許法(以下、免許法とする)の定める教科区分をも. として行った。看護学科教員への全数調査の実施は、前述. とに、すべて「看護学科」とした。また、本稿で用いる「教科. した中島(1973)らの研究以来のものである。. 指導」とは、免許法施行規則が規定する各教科の指導法に該.

(2) 第 3 節 研究方法. このことから、私立では、今後普通免許状者が不足する. 1)質問紙調査. と考えられる。. 2011 年 4 月時点で看護職養成を行っている全高校 88 校に勤務する全教員を対象として、全教員に行き渡るだけ の部数を送付した。実施期間は、2012 年 1 月 20 日~2012 年 3 月 31 日末日(当日消印有効)とした。 なお、質問紙の内容は、中島(1973)を参照したが、一. 第 2 節 普通免許状への上進 臨時免許状から普通免許状への上進には、大学に 3 年以 上在籍しかつ 93 単位以上を修得していなければ、最低 11 年間の在職年数が必要となる。上記の条件を満たす教員の. 部時代にそぐわない表記も見られたため、内容と表記を再. 割合を、教員の学位からみた。すると、現在の臨時免許状. 考して作成した。また、本研究の目的である教科指導の実. 者のうち、学位なし(不明を含む)が公立で 46.7%、私立では. 態については筆者が独自に設問を作成した。. 65.0%であった。従って、私立の場合は、教員全体に占める. 結果、予備調査を経て、選択回答形式 31 項目、複数回 答形式 2 項目、自由回答(自由記述)形式 2 項目の計 35 項目を有する質問紙を作成した。 2)分析方法. 臨時免許状者の割合が半数以上おり、そのうちの 65.0%は 11 年以上の在職年数が必要であると考えられる。 しかし、臨時免許状者が多い私立に勤める教員の勤続年 数を見ると、3 年未満が 49.3%と約半数を占め、10 年以上. 選択回答項目及び複数回答項目については、統計的処. 勤務している教員は 13.8%と少ない。この数値から、教員. 理を行った。自由回答項目については、<指導していて感. の定着率が低く、教員の入れ替わりが頻回であると考えら. じる不安の理由>を記述データとし、頻度の高い単語の抽. れる。. 出と記述内容のコーディングを行った。 これらの分析によって把握した実態をもとに、教科指. 以上のことから、私立では臨時免許状者が上進によって 普通免許状を取得することが、困難な状況だといえる。. 導上の課題を考察した。 第 3 節 授業準備からみる教科指導の実態 第 2 章 看護学科の全体傾向. 最も難しいと感じている指導は何かと問うたところ、教. 質問紙調査の結果は、回収率は 56.8%(内公立 30.0%、私 立 70.0%)、選択回答者総数は 436 名(内有効回答 374 名)で. 員全体の 52.0%が教科指導が最も難しいと答えた。 教員が日ごろ行っている教科指導は、授業である。そし. あった。. てその授業は、綿密な授業準備によってつくられているも. 第 1 節 教員の高齢化. のである。そこで、授業を行うための授業準備としては何. 教員の年齢分布をみると、公立・私立ともに教員の 65%. をしているかを問うと、資料検索は 71.7%、教材研究は. 以上が 40 歳以上であった。特に私立では、20 歳代が全体. 72.0%の教員が行っているが、指導案を作成していると答え. の 2.4%と著しく少なく、対して 50 歳以上が 43.4%と著し. た教員は 28.3%、板書計画を立てている教員は 31.6%であ. く多かった。また、教員に占める普通免許状取得者の割合. った(表 2)。つまり、教員は多くの資料等に目を通している. は公立で 52.3%、私立では 37.1%であったことから、看護. ものの、実際の授業の構想である指導案や板書計画を立て. 学科では普通免許状を取得している教員が少ない。. ずに授業を行っていることが、教科指導の実態としてある。. さらに、普通免許状取得者の年齢分布をみると、公立で. このような実態の中、教員全体の 51.4%は教育実践のみ. は、30 歳代以上では各世代が 30%程度ずつ比較的均等な分. では教育に関する十分な知識が得られないと考えており、. 布がみられた。しかし、私立では 50 歳以上が 66.3%と、50. 大学で教育学を学ぶことの必要性を感じている。. 歳以上に明らかな偏りがみられた(表 1)。 内容. 公立. 私立. 全体. 指導案作成. 23.7. 30.5. 28.3. 公立. 私立. 20 歳代. 10.0. 0.0. 板書計画. 30.5. 32.0. 31.6. 30 歳代. 28.3. 10.5. 教材研究. 89.8. 63.7. 72.0. 40 歳代. 31.0. 23.1. 資料検索. 80.5. 67.6. 71.7. 50 歳以上. 31.7. 66.3. プリント作成. 64.4. 51.2. 55.3. 資料コピー. 52.5. 59.0. 57.0. 表1 普通免許状者の年齢分布(%)※小数点以下第2位四捨五入. 表2 日頃行っている授業準備(%)※小数点以下第2 位四捨五入.

(3) 第 3 章 自由記述からみえる教員の教育に対する意見. くて不安になる。」等の記述があり、授業研究や互いの教科. 本章では、自由回答<項目:指導していて感じる不安の理. 指導について話し合うという関わりが極めて少ないことが. 由>記述者 208 名の結果を分析し、教員の教育に対する意見. わかる。それ以外にも、「看護科の先生方の入れ替わりが激. と共通点を捉える。. しい。それだけ多忙。」等、教員の定着率が低く、指導力の. 第 1 節 教育に対する考え. 向上を図る以前に退職してしまうことも多い状態がある。. 208 名の記述に頻回に使用された単語は、「学力」「適性」. 3 点目、カリキュラムが未整備な状態である。「高校には. であった。これらの単語は、平均して約 7 人に 1 人の教. カリキュラムもしっかりしたシラバスもなく」等の記述か. 員が記述した。. ら、教員たちは学校側から各科目に関する明確な年間指導. 「生徒の基礎学力低下があり。教授方法に困難をきたして. 計画を明示されていないことが読み取れる。年間指導計画. いる。」という記述から、教科指導の内容を理解するために. が無いために、教員たちは教科指導の単元設計や指導案の. は、生徒には一定程度の計算能力や文章読解力が必要であ. 作成の指標がない状態である。. り、これらが生徒には不足していると教員は考えている。. また「学校独自のやりかたがあり、一貫性・連続性が乏し. また、「看護師適性検査があったほうがよいと思うときが. く基礎知識の定着になっていない。」という記述から、学校. ある」といった意見もみられ、教員の中には、看護職の資格. の教育課程に「一貫性・連続性」が乏しく、カリキュラムが. を得る者には、知識・技能の有無だけではなく内面的性格. 未整備であるため、教員は教科指導を難しいと感じている. や気質にも一定の基準が必要であると考えている者もいる. のではないだろうか。. ようである。このように、多くの教員が「適性」を意識して いるということは、教員の中に共通認識されている理想的 な「看護職者像」があると考えられる。 つまり、教員の多くは、生徒に対して既習知識だけでは. 第 4 章 考察 大学数が 780 校を超えている現代でも、高校教諭一種免 許状(看護)の課程認定大学は僅か 17 校しかない状況である。. なく看護職者としての理想像をも潜在的に求めており、そ. 従って、「大学での教員養成」の原則は、当面看護学科では. れらの期待が現実と合致しないことで教科指導にも不安を. 期待できない状況であるといわざるをえない。今、看護学. 感じているのである。. 科の教科指導上最も改善すべきことは、教員が教科指導力 を向上させ、生徒に対してより理解しやすい教科指導を実. 第 2 節 自由記述からみる教科指導の実態 208 名の記述内容を、①教科指導 ②教育課程・同僚 ③. 践していくことである。そのためには、学歴や所有教員免 許状といった形式以上に、指導の内実の向上が最も必要で. 高校教育制度 ④自己 ⑤生徒 ⑥生徒指導の 6 つの大コ. ある。この点を焦点にし、以下考察を進める。. ードに分類し、更に記述内容から 17 つの小コードに分類し. 第 1 節 教員の生徒観. た。コーディングの結果、以下の 3 点が言えるだろう。. 「大学での教員養成」の原則によって、教員免許がその. 1 点目、 教員の教科指導に関する知識が不足している。 「教. 取得者に保障しているものは、教育者としての生徒の捉え. 材の使い方・教材研究の仕方がわからない。」という内容の. 方と指導力ではないだろうか。この教育者としての生徒の. 記述が多くあり、教員は何をすることが教材研究なのかが. 捉え方を、本稿では「生徒観」としたい。. わからないまま、選択回答項目では「教材研究を行ってい る」と答えていたということがわかる。. 第 3 章第 1 節より、教員は生徒に対して「学力」や「適性」 を前提条件的に生徒に求めていることがわかった。教員の. また、「担当する教科が毎年変わる」「いろいろな教科を教. 多くは看護職としての「経験」を中心に、看護職者として生. える」等の記述も多くみられた。これらの記述から、教員の. 徒を見ていると考えられる。この時生徒が、「生徒」である. 中には教科と科目の区別をつけられない者が少なくないこ. 以上に「看護学生」として捉えられているとすれば、教員が. とがわかる。これは教員の多くは、大学における教職課程. 生徒に求めている条件は、病院にいる看護職者が実習に来. を履修していないため、教科と科目の違いを知らないので. ている「看護学生」に求める条件と言い換えることができる. ある。そして、多くの教員にとって教科指導は、 「授業の展. だろう。. 開や教授方法等、見よう見まね」や、「授業展開や授業の仕. 「看護学生」とは、高校卒業後に入学する専門学校や大学. 方など何もわからないまま」行っていることが自由記述か. で看護について学んでいる学生のことである。従って、学. ら推察された。. 生は高校での普通科目の履修を終えている。この「看護学. 2 点目、学校及び教員間の連携・支援体制に不備がある。 「お手本となる先輩教員はいなかった」「誰に聞きようもな. 生」に対して、「経験」を通して学ぶ機会を与えることが看護 職として教える者の役割である。対して「生徒」は、既習知.

(4) 識も内容も 18 歳以上の学生と比較すると少なく、必ずしも. 負担感につながっており、ひいては教員としての定着率の. 率先的には学べない。この未熟な対象に、教科内容を体系. 低さにもつながっているのである。しかし、教員の教科指. 的かつ理解しやすいように指導するのが教諭として教える. 導力は教員自身のみによる問題ではなく、教育について何. 者の役割である。教員が生徒を「生徒」として捉えているの. も知らない者を教員に育てていくための対策を充分にとれ. ではなく、「看護学生」として捉えているからこそ、看護職. ていない周囲の支援体制の不整備による所が大きいだろう。. 者として「看護学生」に「適性」や「学力」を求めているのであ. 教員が教育に関する知識が乏しい分、学校が編成する教. る。高校での教科指導において、教員自身が学生への教授. 育課程と年間指導計画はより実用性の高いものであること. と生徒への指導の違いをどこまで認識できているかが重要. が望ましい。それが、教育に関しての素人に臨時免許状や. である。. 特別免許状を付与して採用する上での必要な支援となりう. 本調査の結果を見ると、教員の多くは「生徒」と「看護学. るのではないだろうか。基礎的な教科指導力がない状態の. 生」を混同して認識しており、「看護専門教科を学んでいる. 教員が指針とできるような教育課程の編成は、結果的には. 生徒」という、看護学科のみが有する「看護生徒」という認識. 教員だけではなく、生徒・保護者にとってのよりよい教育. が希薄であった。. の提供につながるのである。従って第 2 の課題は、教員の. そこで第 1 の課題は、教員が生徒を「看護生徒」として捉. 教科指導力向上を中心に、それを支えるための校内外から. えていくために、教員の生徒観を育むことだといえる。. の支援体制を整えることだといえる。. 第 2 節 教員の教科指導力. おわりに. 本節では、教科指導力を「単元設計及び指導案の作成に必. 高校だからこそ、学習指導要領によって教育内容の最低. 要な知識と授業実践力としての指導技術」と定義して、以下. 基準が定められ、教員免許状を取得している教諭によって. 論じる。. 教育が行われている。これらは、教育の質的保障のための. 学校で行っている教科指導に関して、現在すでに多くの. 制度である。しかし、現状看護学科の教科指導は、教育の. 教員が不安を抱えていることが本調査でわかった。この教. 質を保障しているといえるのだろうか。10 年後に懸念され. 科指導に対する不安の原因は、1つは教諭としての経験年数. る深刻な教諭不足、教育学を学んでいない教員による手さ. の不足、もう1つは教諭になるために必要な教科指導に関す. ぐりの教科指導が、看護学科の実態である。この懸念され. る知識や技術を知らないままに授業を行っていることによ. る教員不足をどのように改善していくのかという方策を明. るものである。. 確にしながら、新たな教員を含めた指導力の向上を進めて. 看護の教科指導に関しては、教科指導に関する書籍も無. いく方策を検討し、実行していく必要がある。. く、教科指導法自体が確立していない状態である。また、. 今後は教育方法学的視点から、看護学科の授業研究およ. 教育実習も経験していない教員が多い。そのため教員の多. び授業分析のほか、有用なカリキュラムの開発や校内外研. くは教諭とは異なり、知識も経験も不十分なまま、教員と. 修の在り方に関する研究を進め、教員の指導力向上を実現. しての月日を過ごしているのである。従って、教員として. するための提言をしていくことが必要だろう。. の経験年数という時間からだけでは、充分な教科指導力を 養いにくいといえるだろう。. 主要引用参考文献. 次に教科指導に関する知識や技術とは、単元設計や指導. 1) 中島紀恵子、前原澄子、「高校衛生看護科教員に関する. 案の作成、板書計画など全ての教科に共通した教育に関す. 実態調査」 、『千葉大学教育学部研究紀要 2 部』、. る知識と指導技術である。教員の「高校にはカリキュラムも. pp.321-333、1973 年。. しっかりしたシラバスもなく」「高校での看護教育にモデル がない」といった意見は、担当科目については担当教員が指. 2) 日下修一、「高校衛生看護科を高専に」、『Quality of nursing』8(4)、文光堂、pp.329-349、2002 年。. 導計画を立案するという、教育に関する知識が絶対的に不. 3) 吉本圭一、「高校専門教育の深化としての専攻科とその. 足していることを表している。そしてこの発言は、教える. 制度的可能性」、 『産業と教育』5 月号、実教出版、pp.2-7、. ことを専門とする教諭という職業に、教えるための知識な. 2010 年。. く参入していること自体が、すでに本来の教育のシステム からは大きな矛盾をはらんでいるということを明示してい るのである。 つまり、教員の教科指導力が乏しいことが、教員の過重. 4)文部科学省、 『平成 24 年度学校基本調査報告書(初等中等 教育機関 専修学校・各種学校)』 、2012 年。 5)文部科学省、 『平成 22 年度 学校教員統計調査報告書』 、 2013 年。.

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