空間相互作用モデルを用いた土地利用の予測ー福岡市を事例として [ PDF
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(2) 上段中:人口密度 (H7-H12) 上段右:従業者密度(H8-H13) 下段左:生産緑地 (H3-H9) 下段中:自然緑地 (H3-H9) 下段右:建物用地 (H3-H9). 20 - 30 % 10 - 20 % 0 - 10 % - 0 %. 30 20 10 0. % - 30 % - 20 % - 10 % - 0 %. 60 40 20 0. % - 60 % - 40 % - 20 %. ※算 出 不 可 はベ ー ス となる 年 の 値 が0で 増減率 を算 出 できないもの. 0. 10. 20. 0 -25 -50 -75. - -0 - -25 - -50 - -75 算出不可. 40km. % % % % %. 0 -25 - -0 -50 - -25 -75 - -50 算出不可. % % % %. 図3 ゾーン別の動向(増減率) 2.3 動向分析. 3. 空間相互作用モデルのパラメーターの推計. 次に, 設定したゾーンに基づいて人口密度, 従業者密. 3.1 前提条件. 度, 土地利用の3つの指標の動態について考察する(図. 42ゾーンを扱い, 福岡市内の22ゾーンの住宅用地面. 3)。 それぞれデータは国勢調査(平成7, 12年), 事業所. 積をアウトプットとして得る。 2000年を初期値として,. 企業統計調査(平成8,13年), 国土数値情報(平成3,9. 2015年を目標年次と設定する。. 年)を基に作成した。. 3.2 エントロピー最大化による空間相互作用モデル. (1) 人口密度. 本研究で用いる始点制約型のエントロピー最大化によ. 人口密度は多くのゾーンが微増の傾向を示している。. る空間相互作用モデルについて以下に説明する。 まず,. 西部の方では若干の減少が確認できる。. 記号を以下のように定義する。. (2) 従業者密度. T :全ゾーンの常住人口. 従業者密度は都心のゾーンや大野城市, 太宰府市, 筑. ゾーンjで働く従業者数 Tij :ゾーンiに住み,. 紫野市といった福岡平野一帯で減少傾向を示している。. Wi :ゾーンiの住宅地としての魅力度. 一方で, 山間部の周辺市町村においては比較的増加して. Cij:ゾーンi−j間の距離. いる。. α :魅力度のパラメーター. (3) 土地利用. β :距離のパラメーター. 注3). 生産緑地と自然緑地は似た傾向を示している。 都心の. n :ゾーンの数. ゾーンでは減少傾向が顕著で, 周辺市町村で若干の減少. E j:ゾーンjで働く従業者数. がみられる。 建物用地については全ゾーンで増加傾向を. 1) モデルの目的関数 は次式(1)で表される 。 F. 示しているが, 都心のゾーンでは周辺に比べてやや増加. n. n. n. n. 率が低い。 このことから都心のゾーンでの開発は一応の. F = log(T!/ ΠTij !) −α ∑∑Tij log(1 Wi ) −β ∑∑TijCij (1). 終息をみせつつあることを窺わせるが, 周辺のゾーンで. ここで, と は十分に大きな値であるため, T Tij 式(1)の. は依然として開発が続いており, 市街地が拡大している. 第一項はスターリング(Stirling)の公式を適用し, 次の. と考えられる。. ように近似できる。. i=1 j=1. 12-2. i=1 j=1.
(3) 表1 パラメーター推計の入力データ. START STEP 1 ゾーン 別初期値データ 作成. ゾーン 別初期値データ 入 力. 記号. データ作成方法. Cij. ゾーンの重心をノードとするネットワークモデルから算出 ゾーン内距離はゾーンを円形と仮定したときの半径の2/ 3 H12国勢調査「一世帯あたり住宅延床面積」から算出(一部補正) H13事業所企業統計「 従業者数」から算出. Wi Ej. パラメータの入力. 2000年ゾーン別人口の 推計. 300,000. パラメータ の決定. 実績値によるチェック 平均誤差率5%未満 OK. 人口推計値(人). 200,000. STEP 2 ゾーン 別目標年データ 作成. 2015年ゾーン 別人口の 推計. 2015年ゾーン別住宅用地算出. ゾーン別宅地可能用地 によるチェック. y =1.028x - 641.575 R2=0.9951. 250,000. NG. 150,000. 100,000. NG. 50,000. OK. 0. 2015年住宅用地面積確定. 0. 50,000. 100,000. 図4 土地利用予測のフロー n. 図5 実績値と推計値の回帰分析 従業者数のデータを用いて土地利用を予測する。. n. log(T!/ ΠTij! ) = logT! − ∑∑logTij!. 3.4 パラメーター推計. i=1 j=1. n. 初期値データを用いて, 2000年人口の実績値に推計. n. ≈ T log T − T − ∑∑ (Tij logTij − Tij ). 値が最も近くなるパラメーターを求めるために繰り返し. i=1 j=1. n. n. = T log T − ∑ ∑Tij logTij. 計算を行った注 4) 。 なお, 周辺市町村を含む全42ゾーン. (2). で実績値と推計値の挙動を観察し, パラメーターを決定. i =1 j =1. よって, 目的関数 は次のようになる。 F n. した。 パラメーター推計に用いたデータを表1に示す。 その結果, α=1.025, β=0.009のときに概ね妥当な. n. F = T logT − ∑ ∑ Tij log Tij. 結果が得られたと判断し, この値を解として採用した。. i =1 j=1. n. −α. n. n. ∑∑T. ij. i =1 j =1. 150,000 200,000 250,000 300,000. 人口実績値(人). END. n. log (1 Wi ) − β ∑ ∑ Tij C ij. そのときの推計値と実績値の関係を図5に示す。 実績値. (3). と推計値の回帰分析では決定係数0.9951と高い数値を. i =1 j =1. 始点制約, 非負条件を考慮して, モデルの制約条件は. 示していることから本モデルの再現性は高いと考える。. 次のようになる。 . 4. 空間相互作用モデルによる土地利用の予測. n. ∑T. ij. = Ej. j = 1, … , n. (4). 4.1 許容値によるチェック. i =1. Tij ≥ 0. i = 1, …, n. j = 1,… , n. 推計された住宅用地の増分が立地可能かどうか検討す. (5). る必要がある。 本モデルでは宅地化可能用地の面積によ. 従って, 式(4), (5)のもとで式(3)の を最大にする Tij F. るチェックを行う。 宅地化可能用地として, 利用空地,. を求める非線形計画問題に帰着する。. 未利用空地,田,畑,樹園地,採草地の面積 注 5) を用い. 3.3 予測のフロー. る。 許容値を越える場合には, 許容値による部分制約を. 土地利用予測のフローを図4に示す。 予測は大きく二. 行い, 再度推計した。. 段階に分かれており, 第一段階として, 初期値データを. 4.2 単純予測. 用いて魅力度と距離のパラメーターを推計する。 次に第. はじめに, プロジェクトを考慮しない単純予測を行っ. 二段階として, 求めたパラメーター及び目標年次の予測. た。 表2に入力データ を示す。 図6は全ゾーンの2000年. 12-3.
(4) 住宅用地実績値に対する2015年住宅用地推計値の平均. アイランドシティ4)はゾーン4の沖の埋立地に建設中. 増減率を1としたときの各ゾーンの増減率を表してい. の先進的モデル都市であり, 計画人口は18,000人であ. る。. る。 この値をゾーン4の単純推計値 に加え, 固定した。. 4.3 プロジェクトを想定したシミュレーション. 九州大学は福岡市西区に新キャンパス計画を推進中であ. 次に, 福岡市において近年取り組まれているアイラン. る。 ここでは, 移転後の従業者数を予測した資料5)を基. ドシティ(人工島), 九州大学新キャンパス, 福岡空港問. に,21,22,28,34,40 の 5 つのゾーンで従業者数が. 題の3つの都市プロジェクトを想定したシミュレーショ. 計20,000人増加すると仮定して単純推計値に上乗せし. ンを行う。 入力データは表2に示す。. た。 福岡空港は単位時間あたりの離発着数が容量的に限 界を迎えており, その対応策が模索されている。 いくつ. 表2 予測・シミュレーション の入力データ Cij. Wi. Ej2)3). Ri※1. 単純予測. ※2. シミュレーション. ※2. ※2 魅力度増加 (空港). 2015予測値 2015予測値 +従業者数増加(九大). 無制約 人口増加 (人工島). ※1:Riはゾーンiに住む従業者数,※2:表1と同じ. か挙げられている候補の一つに, 新宮沖への空港移転案 がある。 その場合, 現在の空港用地(ゾーン9)の20%が 宅地に転用され, 周辺地域とほぼ同様の容積率30%分の 住宅面積が現在のゾーン9の魅力度に加えられると仮定 した。 このように, 3つのプロジェクト に対して3通り の方法でシナリオをモデルに組み込み, シミュレーショ. 3. 1. ンを行った。. 4. 5. その結果, 図7に示すように, 単純予測の場合に比べ. 2 6 8. 13. てアイランドシティのゾーン4と空港のゾーン9におけ る住宅用地の増加が目立つ。 その他はいくつか若干の減. 7. 22 21 20. 少を示しているゾーンが確認できる。 新キャンパスの. 12. 14 15. 9 10. 11 16. 18. ゾーン21, 22に変化がみられなかったことについては, 人口が他のプロジェクトによって吸収されたことと, 魅 力度を操作していなかったことが原因にあると考える。. 17 19 1.05 1.00 0.95 0.90 0.85. -. 1.05 1.00 0.95 0.90. 5. 総括 本研究では, 空間相互作用モデルを用いて住宅用地の. 0. 5. 10. 変化の予測を行った。以上のように,アイランドシ. 20km. ティ, 九大新キャンパス, 空港の3つのシナリオを想定 図6 単純予測の結果(平均増減率に対する比率). した場合の住宅用地の変化傾向を示すことができた。 注釈 注 1) 能古島な ど の 離島 は 対 象 か ら除 く 。 注 2) 2000年当時の 市町村区分を 用 いている。 市町村合併が 進 ん だ現 在 の. 3. 1. 4. 区分 と は一 部 異な る 。. 5. 注 3) 生 産 緑 地 は 田 ,畑 の 和 ,自 然 緑 地 は 森 林 ,荒 地 の 和 ,建 物 用 地 は 建. 2. 物 用 地 A,建 物 用 地 Bの 和 で 算 出 し て い る 。. 6 8. 13. 注 4) 計 算 に は 株 式 会 社 数 理 シ ス テ ム の「 NUOPT Ver.7」を 用 い た 。 注 5) 平 成 15年 都 市 計 画 情 報 シ ス テ ム デ ー タ( POSMAP)の 区 分 に よ る 。. 7. 22 12. 14. 21 20. 15. 参考文献. 9 11. 1) 趙 世 晨 ,萩 島 哲 ,出 口 敦 ,坂 井 猛 ,鵤 心 治:空 間 相 互 作 用 モ デ ル を 用. 10. 16. 18. -. 2) 財団法人 福岡都市科学研究所:2010年福岡の 都市像 に 関 す る 研究 (福 岡 市 の 産 業・職 業 構 造 分 析 編 )報 告 書 ,平 成 6年 3月. 19 1.10 1.05 1.00 0.95 0.90. ルに 関 す る基礎的研究 − , 日本建築学会計画系論文集, 第477号, 133-142, 1995 年 11 月. 17 1.10 1.05 1.00 0.95 0.90 0.85. いた住宅立地 モデルの改 善−エントロピー 最大化 による空間相互作用モ デ. 3) 国立社会保障・人口問題研究所 HP http://www.ipss.go.jp/ 4) アイランドシティ HP http://www.island-city.net/. 0. 5. 10. 20km. 5) 財団法人 九州大学学術研究都市推進機構 HP http://www.pkusc.com/ 6) 福岡空港問題(福岡市 HP). 図7 シミュレーション結果(平均増減率に対する比率). http://www.city.fukuoka.jp/. 12-4.
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