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空間相互作用モデルを用いた土地利用の予測ー福岡市を事例として [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)空間相互作用モデルを用いた土地利用の予測 −福岡市を事例として− 渡邊 大輔 1. 研究の背景と目的 3.  将来の土地利用は都市構造を論じる上で最も基礎的な 情報の一つである。 特に都市プロジェクトによる効果や. 1 5. 4. 2. 影響を予測する政策シミュレーションに対する計画サイ. 6. ドの期待は大きい。 8.  従来の土地利用予測モデルの多くはトレンド推計によ. 7. 22 12. るものが主であり, トレンド通りに土地利用が推移して. 9. 14 15. 21. いく場合には威力を発揮してきた。 しかしながら, 直近. 13. 20. 11 18. のトレンドとして考慮せざるを得ない90年代にはバブ. 推計単位(丸数字は ID) クラスター 1 クラスター 2 クラスター 3 クラスター 4 クラスター 5 クラスター 6 クラスター 7 クラスター 8 クラスター 9 クラスター 10 クラスター 11 クラスター 12 クラスター 13 欠損値を有するサンプル. ル崩壊という社会的転機があり, トレンドとしての有効 性に疑問を残している。 また, これまで増加の一途を 辿ってきた人口は減少傾向に転じつつあり, 現在の社会 状況は著しい変化をみせている。  一方, トレンドベースではない予測手法として空間相 互作用モデルを用いる方法がある。 空間相互作用モデル. 10. 16. 17. 19. 0. 5. 10. 20km. 図1 クラスター分析結果によるグルーピング. は任意の一時点のデータを基に推計単位間の相互作用を 1∼22 :福岡市ゾーン 1∼ 22. 求め, 配分を決定するものであり, 過去の多時点のデー. 23:大野城市 24:春日市 25:古賀市 26:太宰府市 27:筑紫野市 28:前原市 29:宗像市 30:宇美町 31:粕屋町 32:玄海町. タを必要としない。 政策に関しても様々な方法で容易に 組み込むことができる特徴がある。 このように空間相互 作用モデルはシミュレーションしやすくかつ現在の社会. 33:篠栗町 34:志摩町 35:志免町 36:新宮町 37:須恵町 38:津屋崎町 39:那珂川町 40:二丈町 41:久山町 42:福間町. 32. 38. 29. 42. 状況に適したモデルといえる。. 25.  そこで本研究では, 空間相互作用モデルを用いて土地. 36 3. 1. 利用の定量的な将来予測を行うことを目的とする。 具体. 5. 2. 4. 41. 6. 8. 的には, 福岡市注1) を対象として , 2015年時点の住宅用. 13. 33. 31. 7. 22. 地面積を推計する。. 34. 12. 14 21. 20. 15. 28. 16. 23 24. 17. 40. 10. 37 30. 11 18. 2. 研究の対象. 9 35. 26. 19. 2.1 対象地域. 39. 27.  本研究で対象とする福岡市は, 都市機能が高度に集積 0. した九州の中枢都市である。 福岡市とその周辺市町村は. 10. 20. 40km. 図2 推計単位. 空間的にも経済的にもつながりが深く, 自立的都市圏を 形成している。 そこで本研究では, 福岡都市圏注 2)を圏. 主成分分析を行い, 第4主成分まで採用した。. 内と圏外の間の移動や直接的影響がない完結したエリア.  続いて, 第1∼第4主成分得点によるクラスター分析. であると仮定し, 福岡都市圏内の地域間の空間相互作用. を行い, 13クラスターに分類した(図1)。 さらに, クラ. を考えることで福岡市の土地利用を予測することとす. スター分析の結果を地図上に表示し, その分布から類似. る。. する特性を持つ近隣の町丁目をグルーピングすることで. 2.2 推計単位の設定. 推計単位として福岡市において22ゾーンを設定した。.  まず, 福岡市内の1,100の町丁目について, 人口密度. これに福岡都市圏の他の20市町村を市町村単位で加え. (人/ha), 容積率(%), 土地利用別面積(㎡), 建物用途. た計42ゾーン(図2)を空間相互作用モデルの推計ゾー. 構成比(%)のデータ(計9項目)を基に相関行列を用いた. ンとして扱う。. 12-1.

(2) 上段中:人口密度 (H7-H12) 上段右:従業者密度(H8-H13) 下段左:生産緑地 (H3-H9) 下段中:自然緑地 (H3-H9) 下段右:建物用地 (H3-H9). 20 - 30 % 10 - 20 % 0 - 10 % - 0 %. 30 20 10 0. % - 30 % - 20 % - 10 % - 0 %. 60 40 20 0. % - 60 % - 40 % - 20 %. ※算 出 不 可 はベ ー ス となる 年 の 値 が0で  増減率 を算 出 できないもの. 0. 10. 20. 0 -25 -50 -75. - -0 - -25 - -50 - -75 算出不可. 40km. % % % % %. 0 -25 - -0 -50 - -25 -75 - -50 算出不可. % % % %. 図3 ゾーン別の動向(増減率) 2.3 動向分析. 3. 空間相互作用モデルのパラメーターの推計.  次に, 設定したゾーンに基づいて人口密度, 従業者密. 3.1 前提条件. 度, 土地利用の3つの指標の動態について考察する(図.  42ゾーンを扱い, 福岡市内の22ゾーンの住宅用地面. 3)。 それぞれデータは国勢調査(平成7, 12年), 事業所. 積をアウトプットとして得る。 2000年を初期値として,. 企業統計調査(平成8,13年), 国土数値情報(平成3,9. 2015年を目標年次と設定する。. 年)を基に作成した。. 3.2 エントロピー最大化による空間相互作用モデル. (1) 人口密度.  本研究で用いる始点制約型のエントロピー最大化によ.  人口密度は多くのゾーンが微増の傾向を示している。. る空間相互作用モデルについて以下に説明する。 まず,. 西部の方では若干の減少が確認できる。. 記号を以下のように定義する。. (2) 従業者密度. T :全ゾーンの常住人口.  従業者密度は都心のゾーンや大野城市, 太宰府市, 筑. ゾーンjで働く従業者数 Tij :ゾーンiに住み,. 紫野市といった福岡平野一帯で減少傾向を示している。. Wi :ゾーンiの住宅地としての魅力度. 一方で, 山間部の周辺市町村においては比較的増加して. Cij:ゾーンi−j間の距離. いる。. α :魅力度のパラメーター. (3) 土地利用. β :距離のパラメーター. 注3).  生産緑地と自然緑地は似た傾向を示している。 都心の. n :ゾーンの数. ゾーンでは減少傾向が顕著で, 周辺市町村で若干の減少. E j:ゾーンjで働く従業者数. がみられる。 建物用地については全ゾーンで増加傾向を. 1)  モデルの目的関数 は次式(1)で表される 。 F. 示しているが, 都心のゾーンでは周辺に比べてやや増加. n. n. n. n. 率が低い。 このことから都心のゾーンでの開発は一応の. F = log(T!/ ΠTij !) −α ∑∑Tij log(1 Wi ) −β ∑∑TijCij (1). 終息をみせつつあることを窺わせるが, 周辺のゾーンで.  ここで,  と は十分に大きな値であるため, T Tij 式(1)の. は依然として開発が続いており, 市街地が拡大している. 第一項はスターリング(Stirling)の公式を適用し, 次の. と考えられる。. ように近似できる。. i=1 j=1. 12-2. i=1 j=1.

(3) 表1 パラメーター推計の入力データ. START STEP 1 ゾーン 別初期値データ 作成. ゾーン 別初期値データ 入 力. 記号. データ作成方法. Cij. ゾーンの重心をノードとするネットワークモデルから算出 ゾーン内距離はゾーンを円形と仮定したときの半径の2/ 3 H12国勢調査「一世帯あたり住宅延床面積」から算出(一部補正) H13事業所企業統計「 従業者数」から算出. Wi Ej. パラメータの入力. 2000年ゾーン別人口の 推計. 300,000. パラメータ の決定. 実績値によるチェック 平均誤差率5%未満 OK. 人口推計値(人). 200,000. STEP 2 ゾーン 別目標年データ 作成. 2015年ゾーン 別人口の 推計. 2015年ゾーン別住宅用地算出. ゾーン別宅地可能用地 によるチェック. y =1.028x - 641.575 R2=0.9951. 250,000. NG. 150,000. 100,000. NG. 50,000. OK. 0. 2015年住宅用地面積確定. 0. 50,000. 100,000. 図4 土地利用予測のフロー n. 図5 実績値と推計値の回帰分析 従業者数のデータを用いて土地利用を予測する。. n. log(T!/ ΠTij! ) = logT! − ∑∑logTij!. 3.4 パラメーター推計. i=1 j=1. n.  初期値データを用いて, 2000年人口の実績値に推計. n. ≈ T log T − T − ∑∑ (Tij logTij − Tij ). 値が最も近くなるパラメーターを求めるために繰り返し. i=1 j=1. n. n. = T log T − ∑ ∑Tij logTij. 計算を行った注 4) 。 なお, 周辺市町村を含む全42ゾーン. (2). で実績値と推計値の挙動を観察し, パラメーターを決定. i =1 j =1.  よって, 目的関数 は次のようになる。 F n. した。 パラメーター推計に用いたデータを表1に示す。  その結果, α=1.025, β=0.009のときに概ね妥当な. n. F = T logT − ∑ ∑ Tij log Tij. 結果が得られたと判断し, この値を解として採用した。. i =1 j=1. n. −α. n. n. ∑∑T. ij. i =1 j =1. 150,000 200,000 250,000 300,000. 人口実績値(人). END. n. log (1 Wi ) − β ∑ ∑ Tij C ij. そのときの推計値と実績値の関係を図5に示す。 実績値. (3). と推計値の回帰分析では決定係数0.9951と高い数値を. i =1 j =1.  始点制約, 非負条件を考慮して, モデルの制約条件は. 示していることから本モデルの再現性は高いと考える。. 次のようになる。  . 4. 空間相互作用モデルによる土地利用の予測. n. ∑T. ij. = Ej. j = 1, … , n. (4). 4.1 許容値によるチェック. i =1. Tij ≥ 0. i = 1, …, n. j = 1,… , n.  推計された住宅用地の増分が立地可能かどうか検討す. (5). る必要がある。 本モデルでは宅地化可能用地の面積によ.  従って, 式(4), (5)のもとで式(3)の を最大にする  Tij F. るチェックを行う。 宅地化可能用地として, 利用空地,. を求める非線形計画問題に帰着する。. 未利用空地,田,畑,樹園地,採草地の面積 注 5) を用い. 3.3 予測のフロー. る。 許容値を越える場合には, 許容値による部分制約を.  土地利用予測のフローを図4に示す。 予測は大きく二. 行い, 再度推計した。. 段階に分かれており, 第一段階として, 初期値データを. 4.2 単純予測. 用いて魅力度と距離のパラメーターを推計する。 次に第.  はじめに, プロジェクトを考慮しない単純予測を行っ. 二段階として, 求めたパラメーター及び目標年次の予測. た。 表2に入力データ を示す。 図6は全ゾーンの2000年. 12-3.

(4) 住宅用地実績値に対する2015年住宅用地推計値の平均.  アイランドシティ4)はゾーン4の沖の埋立地に建設中. 増減率を1としたときの各ゾーンの増減率を表してい. の先進的モデル都市であり, 計画人口は18,000人であ. る。. る。 この値をゾーン4の単純推計値 に加え, 固定した。. 4.3 プロジェクトを想定したシミュレーション. 九州大学は福岡市西区に新キャンパス計画を推進中であ.  次に, 福岡市において近年取り組まれているアイラン. る。 ここでは, 移転後の従業者数を予測した資料5)を基. ドシティ(人工島), 九州大学新キャンパス, 福岡空港問. に,21,22,28,34,40 の 5 つのゾーンで従業者数が. 題の3つの都市プロジェクトを想定したシミュレーショ. 計20,000人増加すると仮定して単純推計値に上乗せし. ンを行う。 入力データは表2に示す。. た。 福岡空港は単位時間あたりの離発着数が容量的に限 界を迎えており, その対応策が模索されている。 いくつ. 表2 予測・シミュレーション の入力データ Cij. Wi. Ej2)3). Ri※1. 単純予測. ※2. シミュレーション. ※2. ※2 魅力度増加 (空港). 2015予測値 2015予測値 +従業者数増加(九大). 無制約 人口増加 (人工島). ※1:Riはゾーンiに住む従業者数,※2:表1と同じ. か挙げられている候補の一つに, 新宮沖への空港移転案 がある。 その場合, 現在の空港用地(ゾーン9)の20%が 宅地に転用され, 周辺地域とほぼ同様の容積率30%分の 住宅面積が現在のゾーン9の魅力度に加えられると仮定 した。 このように, 3つのプロジェクト に対して3通り の方法でシナリオをモデルに組み込み, シミュレーショ. 3. 1. ンを行った。. 4. 5.  その結果, 図7に示すように, 単純予測の場合に比べ. 2 6 8. 13. てアイランドシティのゾーン4と空港のゾーン9におけ る住宅用地の増加が目立つ。 その他はいくつか若干の減. 7. 22 21 20. 少を示しているゾーンが確認できる。 新キャンパスの. 12. 14 15. 9 10. 11 16. 18. ゾーン21, 22に変化がみられなかったことについては, 人口が他のプロジェクトによって吸収されたことと, 魅 力度を操作していなかったことが原因にあると考える。. 17 19 1.05 1.00 0.95 0.90 0.85. -. 1.05 1.00 0.95 0.90. 5. 総括  本研究では, 空間相互作用モデルを用いて住宅用地の. 0. 5. 10. 変化の予測を行った。以上のように,アイランドシ. 20km. ティ, 九大新キャンパス, 空港の3つのシナリオを想定 図6 単純予測の結果(平均増減率に対する比率). した場合の住宅用地の変化傾向を示すことができた。 注釈 注 1) 能古島な ど の 離島 は 対 象 か ら除 く 。 注 2) 2000年当時の 市町村区分を 用 いている。 市町村合併が 進 ん だ現 在 の. 3. 1. 4. 区分 と は一 部 異な る 。. 5. 注 3) 生 産 緑 地 は 田 ,畑 の 和 ,自 然 緑 地 は 森 林 ,荒 地 の 和 ,建 物 用 地 は 建. 2. 物 用 地 A,建 物 用 地 Bの 和 で 算 出 し て い る 。. 6 8. 13. 注 4) 計 算 に は 株 式 会 社 数 理 シ ス テ ム の「 NUOPT Ver.7」を 用 い た 。 注 5) 平 成 15年 都 市 計 画 情 報 シ ス テ ム デ ー タ( POSMAP)の 区 分 に よ る 。. 7. 22 12. 14. 21 20. 15. 参考文献. 9 11. 1) 趙 世 晨 ,萩 島 哲 ,出 口 敦 ,坂 井 猛 ,鵤 心 治:空 間 相 互 作 用 モ デ ル を 用. 10. 16. 18. -. 2) 財団法人 福岡都市科学研究所:2010年福岡の 都市像 に 関 す る 研究 (福 岡 市 の 産 業・職 業 構 造 分 析 編 )報 告 書 ,平 成 6年 3月. 19 1.10 1.05 1.00 0.95 0.90. ルに 関 す る基礎的研究 − , 日本建築学会計画系論文集, 第477号, 133-142, 1995 年 11 月. 17 1.10 1.05 1.00 0.95 0.90 0.85. いた住宅立地 モデルの改 善−エントロピー 最大化 による空間相互作用モ デ. 3) 国立社会保障・人口問題研究所 HP http://www.ipss.go.jp/ 4) アイランドシティ HP http://www.island-city.net/. 0. 5. 10. 20km. 5) 財団法人 九州大学学術研究都市推進機構 HP http://www.pkusc.com/ 6) 福岡空港問題(福岡市 HP). 図7 シミュレーション結果(平均増減率に対する比率). http://www.city.fukuoka.jp/. 12-4.

(5)

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