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でいた そうしたなかで, 丁度良いツアーが見つ かり行ってきた次第である 成田からの飛行機の直行便でユタ州のソルトレイクシティーに着いた後, ツアー専用バスに乗って北上してイエローストーンやグランドティトンを廻って, 再びソルトレイクシティーに戻り, それからは南下してグランドサークルへと向かった

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Academic year: 2021

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訪 問 記

名水を訪ねて(105)

米国西部の水

島野安雄

・藪崎志穗

**

Visit to valuable water springs(105)

Waters in western part of USA

Yasuo SHIMANO

and Shiho YABUSAKI

**

1 .はじめに  今回は,アメリカ合衆国(略して米国)の西部, 南北に走るロッキー山脈より西側の地域を巡って の水と自然景観とに関する事柄を取り上げる(図 1)。日頃の授業では,この地域に広がるイエロー ストーンやグランドキャニオン・モニュメントバ レー・デスバレーなどといった地域の自然景観や 環境の状況などを取り上げたりしてきているが, これまでにまだ実際に行って目にしたことはな かった。これらの地域を廻ろうとすれば,1回の 旅行では済まないと云うことであったが,たまた ま「アメリカ西部の15の絶景周遊15日間」という ツアーがあり,2011年の夏に廻ってきた。  これまでの旅では,東の方はハワイ諸島までで あり,北米大陸は未踏の地であった。特に米国の 西部には,遥か昔に見た西部劇に出てきたモニュ メントバレーの特異な地形群,そして雄大な大峡 谷のグランドキャニオン,熱水現象で知られるイ エローストーン,奇岩のアーチーズやブライス キャニオン,高温・乾燥で知られるデスバレー, あるいは花崗岩の岩壁から成る氷河性U字谷のヨ セミテなどの興味深い地域が多くあり,かねがね 行きたいと思っていたが,なかなか実現できない * 文星芸術大学(〒320-0058 栃木県宇都宮市上戸祭4-8-15) Bunsei University of Art

** 福島大学共生システム理工学類 Fukushima University

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でいた。そうしたなかで,丁度良いツアーが見つ かり行ってきた次第である。  成田からの飛行機の直行便でユタ州のソルト レイクシティーに着いた後,ツアー専用バスに 乗って北上してイエローストーンやグランドティ トンを廻って,再びソルトレイクシティーに戻 り,それからは南下してグランドサークルへと向 かった。グランドサークルとは,コロラド川を堰 き止めてできたパウエル湖を中心とした半径約 230 kmの円内の地域のことで,この中には8つ の国立公園と16の国定公園,ならびに州立公園を 含めると40以上の公園が分布している(地球の歩 き方,2009など)。それらの中で,キャニオンラン ズ・アーチーズ・メサベルデ・モニュメントバレー・ グランドキャニオン・アンテロープキャニオン・ ブライスキャニオン・ザイオンなどの地を巡って きた。その後,ラスベガスを経由してデスバレー とヨセミテを周り,サンフランシスコから帰国の 途に就いたという2週間の旅であった。  この間に廻った10カ所の国立公園内や数カ所の 国定・州立公園内と,途中休憩のために立ち寄っ た町やドライブインなどの場所で,主に水道水を 中心に河川水や湧水など45本あまりのサンプルを 採水してきたので,水環境の現況とともに取り上 げることにした。 2 .米国西部の自然環境等の概要  米国西部は,箱庭的な日本の地形・地体構造と は異なり,大規模な地形・地質景観が展開してい る。この地域の地形・地質状況等に関しては都 城(1979)・都城ほか(1992)・正井(1985)や谷 口・斉藤(2009,2010)などを参照して述べる。 特に,コロラド高原の地質等に関しては谷口・斉 藤(2009,2010)が詳しい。米国西部の地質の概 要を図2に示す。 図 2 地質の概略図(正井,2009 などを基に作成)

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 北米大陸の西部には,ジュラ紀~新生代中期に かけてのコルディレラ造山運動によって形成され た地形区であるロッキー山系・山間盆地系・太 平洋山系が南北方向に帯状に配列している(図 1)。ロッキー山系は,一般にロッキー山脈と呼 ばれる総延長4000 km以上,最大幅500 kmの多 数の山地・山脈群から成り,東側は急崖でグレー トプレーンズに臨み,西側はコロンビア高原・グ レートベースン・コロラド高原に接している。こ のロッキー山脈は,先カンブリア紀~古生代の堆 積岩や火成岩などが白亜紀頃の造山運動により山 脈内に褶曲や断層などの変形が盛んに形成され, その後の第三紀以降の造山運動によって地形的に 著しく隆起して形成された山脈である。そして, 山脈の北部では第三紀以降の隆起運動によって, 表面を覆っていた古生代以降の地層が侵食されて なくなり,先カンブリア時代の岩石が広く露出し ている。そして,4000 m級の高峰の山頂部には山 岳氷河が存在し,山頂から山腹にかけては氷河地 形が発達している。なお,ロッキー山脈の火山活 動については,一般的には活発ではないが,北部 のイエローストーン国立公園付近は地下の巨大な マグマ溜まりの存在による活発な熱水現象で知ら れている。  ロッキー山系と太平洋山系との間には,広大な 高原・高地・盆地群が分布する山間盆地系がある。 北部に位置するコロンビア高原では,スネーク川 上流からコロンビア川中流部にかけて,ホットス ポットを起源とする広大な溶岩台地が形成されて いる。その南に位置するグレートベースンでは, 南北方向に走る多数の断層とそれに沿う山地や間 を埋める地溝が連続しており,盆地底でも1000~ 1500 mの標高があって高度は低くはない。そし て,乾燥が激しいために,沙漠になっている所も ある。この南東側に位置するコロラド高原は,北 米大陸の創成を物語る場所として知られ,海抜 1500~3800 mの高原とコロラド川やその支流が 刻む深い峡谷とから成り,周囲は断層で区分さ れ,その境界部には第三紀以降の火山が分布して いる。そして,周囲の地形区は造山運動により大 きく変形したのに対して,このコロラド高原は安 定地塊であって,変形構造はあまり見られない。 しかしながら,この高原の南部では,中生代から 古第三紀に堆積した地層が新第三紀における侵食 で運び去られ,現在では古生層が広く分布してい る。  太平洋山系は,カスケード・シエラネバダ山脈 と海岸部の海岸山脈,その間に広がるセントラル バレーという三列の地形区から成る。北部のカス ケード山脈は,第三紀から現在に至る火山地帯で あり,レーニア山やセントヘレンズ山などの現世 の火山が位置している。シエラネバダ山脈は主と して中生代の花崗岩類から成り,第三紀の断層運 動で上昇した傾動地塊で,標高の高い所には氷 河 地形が発達している。太平洋岸に沿って延びる海 岸山脈は,中生代から新生代の堆積岩類や火成岩 類などから構成されていて,山麓部には有名な活 断層であるサンアンドレアス断層などの断層系も 発達している。  米国西部の気候区分を示したのが図3である。 ロッキー山脈の部分は高山性気候であり,東側の グレートプレーンズはステップ気候,さらに東の プレーリーは冷帯や湿潤温帯気候である。西側に 位置するカスケード・シエラネバダ山脈も高山性 気候であり,その間のコロンビア高原・グレート ベースン・コロラド高原ではステップ気候が広く を占めるが,沙漠気候の所もある。特に,南部の 図 3 気候区分図(世界の気温,2014 などを基に作成)

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コロラド川中流部から下流部にかけての地域は, 降水量が少なく,沙漠気候となっている。太平洋 岸は,北部が西岸海洋性気候,南部が地中海性気 候を呈していて,降水量は内陸部よりはやや多 い。主な地点の月気温と月降水量などを示したの が表1で,それら各地点は図3に記入してある。 いずれの地点も降水量は少なく,最も多いヨセミ テでも年降水量が910 mmと,日本の半分くらい の量であり,その他の地点についてはかなり少な い。そして,標高の高い場所が多いためか,それ らの地点では気温も低い傾向にある。しかしなが ら,南部に位置するデスバレーやラスベガスでは 気温が高い。特に,周りを高い山に囲まれて,海 水面より低い位置にあるデスバレーは北米大陸一 番の高温の地であり,かつ降水量も極端に少ない ことで知られている。  次に水文環境について,米国西部を流れる河川 はロッキー山脈が東西の大分水嶺となっている。 東側のメキシコ湾へはミズーリ川(ミシシッピー 川)とリオグランデ川が,西側の太平洋へはコロ ンビア川とコロラド川が流れ下っている。これら の河川は北米大陸を代表する大河であるが,シエ ラネバダ山脈からも中小の河川が発してセント ラルバレーを潤して太平洋に注いでいる。特に, イエローストーン国立公園内では,ミズーリ川支 流のイエローストーン川やファイアーホール川と コロンビア川支流のスネーク川とが発していて, 大陸分水嶺が複雑に通っている場所として知ら れている。ところで,この地域での水利用に関し ては,河川水を利用できる所は限られていて,ス テップや沙漠気候の地域では涸れ川も多く,地下 水の利用の方が多いようであった。また,南部の 沙漠地域においては,水資源そのものが乏しく, コロラド川でみられるように,遥か遠方のダムに 貯水された水を導水することによって賄われてい るのが現状である。 3 .採水地点の状況  今回は米国西部にある国立公園や国定公園・州 立公園の多くを廻ってきた。それら公園内を流 れる小川の水や河川水,または湧水などもあっ たが,多くは施設内にあった水道水を採取して きた。また,それらの公園を巡る際に休憩のため に立ち寄った町やドライブインでも水道水を採 取してきた。これら採水地点の状況に関しては, 表 1 主な地点の気象データ(国立天文台,2012;世界の気温,2014 など基に作成)

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現地で得た各種のパンフレット類や地球の歩き 方(2009,2011)などを基に述べることにする。 なお,採水地点の番号付けは,ソルトレイクシ ティーから北上して,イエローストーンやグラ ンドティトンを巡った後,再びソルトレイクシ ティーに戻り,次に南下してグランドサーク内の 各所を廻り,ラスベガスを経てデスバレーやヨセ ミテを巡り,最終地点のサンフランシスコまでの 道筋に沿っておよそラベリングしてある(図4)。  まずはユタ州の首都ソルトレイクシティーか ら,左手にグレートソルトレイクを見ながらイン ターステーツ・ハイウェー15号線を北上した。最 初のバスストップの休憩地であるアイダホ州のマ ラドシティー(No.1)のドライブインで水道水 を採取した。この辺りから北は農業地域であり, 緩やかにうねる畑地ではセンターピボット方式の 灌漑装置が数多く稼働しているのが見られた(写 真1)。ソーダ・スプリングス(No.2)は帰路に 立ち寄った休憩地であるが,かつてはオレゴン街 道の有名地点であり,数多くの炭酸泉の湧水があ る所として知られていたとされ,それが町の名前 になっている。ハイウェー15号線をさらに北上し た所にあるアイダホフォールズ(No.3)は,ア イダホ州東部の中心地であり,町中をコロンビア 図 4 採水地点の位置図

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川の一大支流であるスネーク川が流れている。こ こからはハイウェーを離れて国道20号線に向い北 上すると,やがてマックスインでスネーク川支流 のヘンリーズホーク川(No.4,写真2)を渡る。 この河川水は上流部にある湧水によって賄われて いると云われている。そのまま北上すると,宿泊 地であり,イエローストーン国立公園の西口ゲー トのあるウエストイエローストーン(No.5)の 町に着き,ここに2泊して公園内を巡った。  イエローストーン国立公園は,ワイオミング州 とモンタナ・アイダホ州にあり,1872年に世界で 初めて国立公園になった所で,世界自然遺産の地 でもある。園内は約9000 km2に及ぶ広さで,巨大 なマグマ溜まりが地下の浅い所にあるため,1万 カ所を超す温泉 ・ 間歇泉・泥泉などの熱水現象 があって,北米大陸で最も活動的な地殻変動の場 所として知られている。公園内と周辺地域の略地 図を図5に示すが,このイエローストーン公園の 名前は,東のキャニオン地区を流れるイエロース トーン川の黄色い絶壁に由来するという。基岩の 流紋岩が硫黄を含んだ熱水や蒸気等によって黄色 く変色され,かつ約1万年をかけた川の侵食の影 響により長さ30 kmあまり・深さ300 mほどの大 峡谷となり,上流側には大きな滝(落差93 mの ロウアー滝)が形成されている(写真3)。熱水 現象は,マンモスホットスプリングス・ノリス・ ガイザーベイスン・ウエストサムなどの地域で顕 著であり,特にミッドウエイ・ガイザーベイスン のグランドプリズマティックスプリングは有名 であり,アッパー・ガイザーベイスンのオールド フェイスフルでは数多くの間歇泉が見られる(写 真4)。ここで採水したのは,オールドフェイスフ ル・ビレッジでの水道水(写真5)であるオール ドフェイスフル(No.6)とすぐ近くを流れるファ イアホール川(No.7,写真6),それとイエロー ストン湖の北岸にあるレイクビレッジ(No.8) の水道水の3カ所である。ところで,オールド フェイスフルからウエストサムへ国道を辿ると, 大陸分水嶺を2回横切ることになり,この地の不 思議さに改めて感嘆した。  イエローストーン国立公園の南側には,急峻な 山並みと湖沼群からなるグランドティトン国立 公園が位置している。ティトン山脈は北米大陸で は最も若い山とされ,東側では大きな断層があっ て,今も数千年毎に大地震が起きていて,その度 に山が隆起しているとされるが,山頂部などは氷 河作用の影響で削られている(写真7)。ここで はジャクソンレイクホテル(No.9)・ジェニー湖 (No.10,口絵写真 A)・スネーク川(No.11,写真8)

の3カ所で採水してきた。なお,この公園南部の 各所では,アランラッド主演の西部劇「シェーン (1953年)」の撮影が行われたとされ,開拓時代の 建物などが残っている。  国道89号線を南へと辿って鹿の角を飾ったア ンテロープアーチで知られるジャクソンの町を 通り,州道34号でソーダスプリングスの町を経 て,そして国道30号とハイウェー15号線を通って 再びユタ州に戻ってきた。ソルトレイクシティー 図 5 イエローストーン付近の概要図

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では,ホテルの水道水であるソルトレイクシ ティー(No.12)と過日到着したソルトレイク空 港(No.13)の2カ所で採取してきた。次は南下 して,国道6号線沿いにあるタイホーク(No.14) のドライブインで水道水を採取した。ここは国立 森林公園の南に当たり,鉄道とソルジャー川とに 挟まれた所で,かつて走っていた機関車が飾られ てあった。さらに南下してハイウェー70号線に至 り,グリーン川を渡り,やがて右折して国道191号 線を南に下り,グランドサークル内のキャニオン ランズ国立公園へと向かった(図6)。  キャニオンランズは,コロラド川と支流のグ リーン川が合流する所に作られた河谷と台地から なり,川が大地を侵食している雄大な様子が見ら れるが,その手前にデッドホースポイントという 州立公園があり,180度のカーブを描くコロラド 川の河谷が見える(写真9)。しかしながら,ここ では残念ながら採水は出来なかった。次に,東隣 のアーチーズ国立公園へと向かった。この公園は 主にジュラ紀の地層からなり,穴のあいた岩が集 まる所で(写真10),約300 km2の広さに約2000 アーチ型の岩が点在しているという。その他に, コートハウスタワーズやバランスロックなどの 巨岩もあって,映画「インディジョーンズ最後の 聖戦(1989年)」の冒頭の場面にでてきた場所と して知られる。ここでは入口のビジターセンター に設置してあった水場(写真11)でアーチーズ (No.15)の水として採取してきた。その後,コロ 図 6 グランドサークル付近の概要図

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ラド川を渡ってモアブの町に入り,宿泊したホテ ルで水道水(モアブ,No.16)を採取した。  モアブから南下して国道191・491号線を経て コロラド州のコルテスの町へと入り,立ち寄った 街中のインフォーメーションセンターでコルテ ス(No.17)の水道水を採取した。町の東南には, 米国西部で唯一の自然公園以外の国立公園である メサベルデがある。このメサベルデは1906年に国 立公園になった所で,1978年にはアメリカで最初 の世界文化遺産に登録されて地でもあり,緑の台 地と谷とからなる独特の地形を利用して建てられ た断崖住居遺跡があることで知られている(写 真12)。ここでは園内のファービューにあるビジ ターセンターでメサベルデ(No.18)として水道 水を採取してきた。  次に,国道491号線を南下して国道160号線へと 向かい,コロラド・ユタ・アリゾナ・ニューメキ シコの4つの州が十字に交わって境界線をなすと いうフォーコーナーズを見た後,アメリカの原風 景とも云われ,かつて「駅馬車(1939年)」を始 めとする西部劇映画の撮影場所としても知られ るモニュメントバレーに着く。ここはユタ州とア リゾナ州の境に位置し,ナバホ族の居留地であっ て,ナバホの人々が管理・運営する公園である。 園内では赤茶けた荒野にメサやビュート・トーテ ムポールといった残丘がここぞとばかりに聳えて いて(写真13),これまでに映像や写真などで良 く見てきたお馴染みの風景を改めて堪能できた。 ここでは西に位置するグールディグスロッジでの 水道水をモニュメントバレー(No.19)として採 取した。そして,この南に位置するアリゾナ州の カイエンタの町で宿泊し,その際にホテルでカイ エンタ(No.20)の水道水を採取してきた。  国道160号線を西に辿って左折して国道89号線 に入り,キャメロンのドライブインに立ち寄る。 この手前の橋の下をコロラド川の支流であるリト ルコロラド川が濁った色をして流れている。支流 といっても507 kmの長さがあるが,乾燥地を流 れるために水量はかなり少ない(写真14)。この ドライブインで水道水をキャメロン(No.21)の 水として採取した。なお,このキャメロンでは2 日後にも立ち寄ったが,その際は雨が降ってい て,その雨水をキャメロンの雨(No.46)として 採取した。ただし,この雨水は屋根から地表面に 流れ落ちた水であり,かなりの不純物を含んでい た。  キャメロンからは州道64号線に入り,待望のグ ランドキャニオン国立公園へと向かった。グラン ドキャニオンは,コロラド川の数百万年にわたる 河刻作用で侵食された長さ約440 km・深さ1600 m余り・幅13~26 kmの大峡谷で,世界自然遺産 にも登録されている。ここではサウスリムにあ るヤバパイロッジに2泊したので,まるまる1日 自由に散策することができた。そこで,ブライト エンジェル・トレイルを辿り(図7),比高差で 930 m下に位置するインディアンガーデンまで往 復15 kmの道程を下り・上りしてきた。以前に, 徳山(2004)の記事を読んでいたので,サウスリ ムトレイルから眺めるだけではなく,峡谷の岩壁 も見たかったので,やはり実地に歩いてみたいと 思っていた。グランドキャニオンで見られる地層 は,古いもので約18億年前,新しいもので2.6億年 前とされ,およそ7千万年前の造山運動によって 3000 m以上も隆起した後,コロラド川による数 百万年の時をかけた侵食によって削られた結果で ある(図8)。地層はほぼ水平に堆積しているが, 図 7 グランドキャニオンの地形図(USGS, 1967 な どを基に作成)

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コロラド川のこの辺りでは造山運動の影響により 少し南側に傾斜しているという。  朝7時にロッジを出発し,シャトルバスに乗り サウスリムビレッジに至り,標高2091 mのトレ イルヘッドから下りて行った(写真15)。途中の 1.5マイル地点(1743 m)と3マイル地点(1439 m)にはレストハウスがあり(写真16),水場と トイレが設置されている。そこまではジグザグの 坂道であり,やがて緩やかな山道となる手前の標 高1300 mほどの所で鉄管を目にした(写真17)。 これはノースリムの標高1585 mの所に大量に湧 き出したローリング湧水を,サウスリムで水道水 として利用するための送水管とのことで,あちこ ちに説明板がある(写真18)。この辺りから少し ずつ緑が増えてきて,やがて大木の茂る標高1158 mのインディアンガーデンに着く(写真19)。こ のインディアンガーデンには湧水が流れ出してい て(口絵写真 B),緑あふれるオアシスとなって いる。湧水の出ている地層はブライトエンジェル 頁岩の上部であり,上には水を透し易い石灰岩層 が乗っている。なお,ノースリムのローリング湧 水も同じ頁岩の地層から湧出しているが,これは ノースリムの方が全体的に300 mあまり標高が高 くなっているからでもある(合衆国国立公園管理 局,2011)。さて,この先はコロラド川の河畔(740 m)へ下りる道とコロラド川を見下ろすプラトー ポイントへの道とに分かれるが,残念ながらイン ディアンガーデンで1時間ほど休憩して引き返し てきた。下りに2時間ほど,上りには2倍の5時 間ほど,計8時間余りかかって午後3時半過ぎに 戻ってきたが,山登りとは逆の下りて上るという 「谷下り」は実にハードでしんどいハイキングで あった。なお,このグランドキャニオンでは,サ ウスリム(No.22)での水道水,つまりローリン グ湧水とインディアンガーデン(No.23)での湧 水を採水してきた。  来た道を戻り,国道89号線を北上してペイジの 町へと向かった。町の北には,コロラド川を堰き 止めたグレンキャニオンダムとパウエル湖が広が り(写真20),グランドキャニオンの下流側にあ るフーバーダムとミード湖とともに,コロラド川 の環境問題では有名となっている場所でもある。 町の東にはアンテロープキャニオンという小さな 峡谷が2カ所あり,鉄砲水が砂岩を刻んでできた もので,水平の層理の岩肌で狭くて薄暗いクネク ネとした空間を歩くと,その幻想的な造形に魅惑 される(写真21)。ここではペイジ(No.24)の街 中のレストランとグレンキャニオンダム(No.25) の右岸側にあるビジターセンターの水道水を採取 した。  ペイジから国道89号線を西に進むと,ナバホ砂 岩が造り出した“ザ・ウエーブ”という超絶景を 含むコヨーテビューのあるバーミリオンクリフ国 定公園があるが,ここは入場制限があって見学は 難しく,残念ながら通過する。再びユタ州に入り カナブの町を経て北上し,ブライスキャニオン国 立公園へと至る。ブライスキャニオンは,この辺 りでは新しい古第三紀の地層から構成されている (図9)。その中心となっているのはクラロン層 で,始新世初期にあった巨大な湖に堆積した石灰 を多く含む砂や泥からなる層であり,1千万年前 頃から隆起した後,川や雨と地層の縦方向の割れ 目や節理に入り込んだ水や氷によって侵食されて 図 8 グランドキャニオンでの地質層序(地球の歩き 方,2011 などを基に作成)

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現在見られるようなピンク色の尖塔群である数千 もの土柱は「フードゥー」と呼ばれている(写真 22)。ここでは宿泊したホテルでブライスキャニ オン(No.26)として水道水を採取した。  次は,また来た道を戻り,ザイオン国立公園へ と向かう。途中のマウント・カーメルジャンク ションで休憩した際に,近くを流れる東バージン 川の支流(No.27,写真23)と水道水(No.28)を 採取する。国道89号線を西に折れて州道9号線を 進み,ザイオン国立公園の東口ゲートを過ぎる と,チェカーボードメサや白色を基調としたカラ フルな山肌が目につく様になる(写真24)。この 公園内では,ザイオン渓谷と云われる西バージン 川に沿って高さ600~1000 mに及ぶ巨岩や岩壁が 並び,シャトルバスで渓谷を廻ることになる。ザ イオンの地質は2.5億年前以降の岩石からなり,一 番古いグランドキャニオン上部のカイバブ石灰 岩層は地下にあって,下部にモエンコピ層やチン リー層があり,上部はアーチーズ下部のナバホ砂 岩やカーメル石灰岩層が,そして最上部には白亜 紀のダコタ砂岩が乗っているとのことである(図 10)。先のブライスキャニオンでは,アーチーズよ りもさらに上位の地層から構成されていることに なる。ここではナローズという峡谷の奥を流れる 西バージン川(No.29,写真25)とビジターセン ターでザイオン(No.30)の水を採取してきた。 なお,ザイオンの水のもとは渓谷内の湧水であ り,そのことが説明板に記されている(写真26)。  ザイオンを後にして,ハイウェー15号線をネバ ダ州の州都ラスベガスへと向かうが,途中のメス キート(No.31)で休憩した際に,水道水を採取 する。ラスベガス(No.32)では,やはり宿泊した ホテルで水道水を採取した。ここからは州道160 号線を通ってデスバレーへと向かうが,途中の パーランプでワイン農園に立ち寄り,その際に水 道水をパーランプ(No.33)の水として採取した。 さらに西へ州道190号線を進みカリフォルニア州 へと入り,デスバレーの盆地に入る手前のザブリ スキーポイントで,黄色や黄金色を主にカラフル な奇岩の山肌を見学する(写真27)。 図 9 コロラド高原の地質層序の概要図(地球の歩き方,2011 などを基に作成) 図 10 コロラド高原北部での地質層序(Macy et al., 2012 などを基に作成)

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 デスバレーは,比較的最近(1994年)に国立公 園になったもので,長さ200 km以上,幅は広い所 で75 kmほどと広大な面積からなり,北米大陸で は最も低い土地(海抜-86 m),最も暑い所(57℃) であり,年間降水量がわずか54 mmと,まさに 夏期は灼熱の谷である。最も低い場所はバッド ウォーターと呼ばれ,塩の結晶からなる水溜まり ができていた(写真28)。盆地内のファーニスク リークにあるホテルに泊まったが,乾燥した熱風 は夜になっても吹き止まず,気温も下がらず,室 内ではクーラーを止めることは出来なかった。こ のホテルで水道水をデスバレー(No.34)の水と して採水したが,水源は周辺の山地部にある湧水 とのことであった。  この後は最後の見学地であるヨセミテ国立公園 へと州道190号線と国道395号線などを通って西側 にシエラネバダ山脈(写真29)を眺めながら向 かうが,途中の休憩地であるロンパイン(No.35) とクレストビュー(No.36)で水道水を採取した。 なお,ロンパインの北に位置するマンザナール は,第2次世界大戦中に1万人以上の日系アメリ カ人が収容所生活を送った場所として知られ,現 在は国定史蹟となっている。  ヨセミテ国立公園は,シエラネバダ山脈のほぼ 中央に位置して,氷河に削られた東西の長さ約11 km・幅1.6 km・深さ1000 mの U 字谷が中心をな し(図11),世界自然遺産にも登録されている。こ のヨセミテ渓谷は,西側にあるトンネル付近から 見ると一望できる(写真30)。その渓谷内には,入 口の左手に谷底から1000m以上の高さで垂直に 聳える花崗岩の一枚岩であるエルキャピタン,ビ レッジ入口の右手には巨大な一枚岩のセンチネル ロック,その先にはパノラマ展望台でもあるグレ シャーポイント(写真31),そして左手奥には有 名な岩壁であるハーフドームなどがあり,またリ ボン滝・ブライダルベール滝(口絵写真 C)・ヨ セミテ滝など多くの滝も懸かっている。少し離れ た南にあるマリポサグローブでは,巨木のセコイ アの森が広がっている(写真32)。ここでは,渓 谷内のビジターセンターで水道水をヨセミテ公 園(No.37)として,ブライダルベール滝(No.38) の渓流水,ヨセミテの氷河台(No.39)やワウォ ナ(No.40)の水道水,マリポサグローブ(No.41) の渓流水,および宿泊した公園南側に位置する オークハースト(No.42)で水道水を採取した。  その後は,州道140号線で中央低地の農業地で あるマーセッドへ出て,さらに州道99号線やハ イウェー580号線などを経て最終地のサンフラン シスコに到着した。途中で休憩したマーセッド (No.43)とリポン(No.44),およびサンフランシ スコ(No.45)で水道水を採取してきた。 4 .水質の特徴  今回採水してきたのは,主に水道水を中心とし た46地点・47サンプルであり,現地では電気伝導 度・水温・pH を計測し,帰国してから主要溶存 成分について実験室で分析を行った。それらの水 質分析の結果を示したのが表2である。  電気伝導度に関しては34~1490μS/cm と幅広 く,全体的には300μS/cm 以上がほぼ半数を占め てやや高めである。水温は11.0~35.0℃とやはり 幅広いが,大部分は15~25℃の範囲に入ってい る。pH については6.4~8.0とやはり幅広いが,7.0 未満の酸性が8カ所,中性の7.0が5カ所であり, 残りの33カ所はアルカリ性であった。  水質分析結果を元にトリリニアダイアグラム表 示とヘキサダイアグラム表示で水質組成を表し 図 11 ヨセミテ付近の概要図

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たのが図12であり,溶存成分濃度の高いものにつ いてはヘキサダイアグラム表示で,×2・×5・ ×10とスケールを変えて表してある。およそ半数 の地点では Ca-HCO3型を示しているが,残りはか なりバラエティーに富んだ水質型を示している。  まずは個々の地点についてみると,マラドシ ティー(No.1)とソーダ・スプリングス(No.2) は 高 濃 度 の Mg-HCO3型,ア イ ダ ホ フ ォ ー ル ズ (No.3)は高濃度の Ca-HCO3型,ヘンリーズホー ク川(No.4)・ウエストイエローストーン(No.5) およびレイクビレッジ(No.8)は成分量の少な い Ca-HCO3型,オールドフェイスフル(No.6) とファイアホール川(No.7)は成分量の少ない Na-HCO3型と Na-Cl 型との混合型,ジャクソンレ イクホテル(No.9)はやや高濃度で極端な Na-HCO3型,ジェニー湖(No.10)は極めて低濃度の Ca-HCO3型,スネーク川(No.11)は適度な成分 のある Ca-HCO3型を示している。ソルトレイクシ ティー(No.12)は高濃度の Na-HCO3型,すぐ近 くのソルトレイク空港(No.13)はやや高濃度の Ca-HCO3型を示し異なったが,Baskin ほか(2002) によれば,この地域の地下水の多くは Ca-HCO3 型とされており,Na-HCO3型は見掛けない型であ る。タイホーク(No.14)は高濃度の Na-HCO3型 であった。   グ ラ ン ド サ ー ク ル に つ い て,ア ー チ ー ズ (No.15)はやや高濃度の Na-Cl 型と Mg-SO4型と

の混合型,モアブ(No.16)・コルテス(No.17)・

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写真 5 オールドフェイスフル② ロッジの飲水場 写真 3 イエローストーン大峡谷 写真 7 グランドティトン山脈 写真 6 オールドフェイスフル③ ファイアホール川 写真 4 オールドフェイスフル① 間歇泉 写真 8 スネーク川 写真 1 アイダホ州での畑地の灌漑施設 写真 2 ヘンリーズホーク川

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写真 13 モニュメントバレー 写真 11 アーチーズ② 入口のビジターセンターにあ る水場 写真 15 グランドキャニオン① ブライトエンジェル トレイルの下り口付近 写真 14 リトルコロラド川 写真 12 メサベルデ 写真 16 グランドキャニオン② ブライトエンジェル トレイルの 3.0ML 地点を臨む 写真 9 デッドホースポイントから見たコロラド川 (遠方にキャニオンランズが見える) 写真 10 アーチーズ① ウインドーズセクション

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写真 21 アンテロープキャニオン(アッパー) 写真 19 グランドキャニオン⑤ インディアンガーデン 写真 23 東バージン川の支流 写真 22 ブライスキャニオン 写真 20 グレンキャニオンダムとパウエル湖 写真 24 ザイオン① 東部の山地 写真 17 グランドキャニオン③ ローリング湧水から の送水管 写真 18 グランドキャニオン④ 飲料水についての説 明板

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写真 29 シエラネバダ山脈 手前はマンザナール国定 史蹟の一部 写真 27 デスバレー① 東側のザブリスキーポイント 写真 31 ヨセミテ② グレイシャーポイントからの眺め 写真 30 ヨセミテ① トンネルビュウーからの眺め 写真 28 デスバレー② 盆地底のバッドウォーター 写真 32 ヨセミテ③ マリポサグローブでのセコイア の巨木 写真 25 ザイオン② 峡谷奥を流れるバージン川 写真 26 ザイオン③ ザイオンの湧水の説明板

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メサベルデ(No.18)はやや高濃度の Ca-HCO3 型,モニュメントバレー(No.19)はやや高濃度 の Ca・Mg-HCO3型,カイエンタ(No.20)はやや 高濃度の Na-HCO3型であり,キャメロン(No.21) は極めて濃度の高い Na-Cl 型を主体に Na-HCO3 型・Na-SO4型の混合型である。そして,キャメロ ンでは雨(No.46)も採取したが,地面に落ちた 後に採取したために,雨としては高濃度であっ て,Na-Cl 型を主体とする混合型であった。グラ ンドキャニオンのサウスリム(No.22)の水は, ノースリムのローリング湧水であってやや高 濃度の Ca・Mg-HCO3型,インディアンガーデン (No.23)の湧水もやや高濃度の Mg-HCO3型であっ

た。ペイジ(No.24)は高濃度の Mg-SO4型と

Na-SO4型の混合型,グレンキャニオンダム(No.25) は高濃度で各種成分の混合型,ブライスキャニオ ン(No.26)は高濃度の Mg-HCO3型,東バージン 川(No.27)は高濃度の Mg-SO4型,カーメルジャ ンクション(No.28)と西バージン川(No.29)は やや高濃度の Mg-HCO3型と Mg-SO4型の混合型, ザイオン(No.30)はやや高濃度の Ca-HCO3型で ある。ところで,コロラド高原における河川水と 地下水等の水質に関しては,Gerner et al.(2006) や Macy et al.(2012,2013)などのレポートがあ るが,河川水(グリーン川)では Ca-SO4型と Na-HCO3型との混合型,カイエンタ周辺の地下水で は Na-HCO3型や Ca-HCO3型,カナブの東での湧 水では Ca-HCO3型が多くみられるとされ,ほぼ同 様な結果が得られている。  そして,メスキート(No.31)は Cl 成分を除 くやや高濃度の各種成分の混合型,ラスベガ ス(No.32) は 高 濃 度 の Na-HCO3型 と Na-SO4型

の混合型,パーランプ(No.33)はやや高濃度の Ca・Mg-HCO3型,デスバレー(No.34)はやや高 濃度の Na-HCO3型,ロンパイン(No.35)はやや 低濃度の Ca-HCO3型と Na-HCO3型の混合型,ク レストビュー(No.36)はやや高濃度の Na-HCO3 型と Mg-HCO3型の混合型である。ところで,ラ スベガスの水道水源はミード湖からの河川水が 90%,地下水が10%とされていて,水質は Ca-HCO3型を示すかと思っていたが,今回採取した ホテルの水道水はかなり異質であった。  ヨセミテではいずれも低濃度で,ヨセミテ公園

(No.37)とブライダルベール滝(No.38)は Ca-HCO3型,ヨセミテの氷河台(No.39)とワウォナ (No.40)は Na-HCO3型であり,マリポサグロー ブ(No.41)はやや低濃度の Ca-HCO3型であるが, 南のオークハースト(No.42)ではやや高濃度の Ca-HCO3型にNa-HCO3型が混合したタイプであっ た。中央低地のマーセッドとリポンはともにやや 高濃度で,マーセッド(No.43)が Na-HCO3型に

Ca-HCO3型が混合した型,リポン(No.44)は

Na-HCO3型と Na-Cl 型の混合型であった。サンフラ ンシスコ(No.45)の水道水は,シエラネバダ山 脈からの河川水とのことで,低濃度の Ca-HCO3型 である。  採水地点での水質組成の分布状況についてみ てみると,イエローストーンとヨセミテでは低濃 度の Ca-HCO3型や Na-HCO3型の組成がみられた が,それ以外では高濃度で多種類の水質型が分布 していた。同様な傾向は図13の硬度(米国方式の CaCO3濃度に換算)の分布図でもみられ,硬水の 地点が多いといえるが,逆に軟水の地域も存在す る。  硬度に関しては,1.6~336.1mg/Lとかなり幅広 い値となっているが,その内訳は10mg/L未満が 7カ所,10~25mg/Lが7カ所,26~50mg/Lが4 カ 所,51~100mg/Lが9カ 所,101~200mg/Lが 11カ所,そして200mg/L超が9カ所と,両極端な 結果となっている。高山地域の氷河性の渓流水な どでは,硬度が極端に低いというのはわかるが, ソルトレイクシティーやラスベガスの水道水で も極端に低いというのは理解しがたかった。これ ら2市の水道水は,どこの水源からの水であるの か,水質組成からも不可思議であり,出来ればも う一度採水してみたいと思った。 5 .おわりに  今回は米国西部の憧れの地域を廻ってきたが, 全般的には乾燥した古い時代の地層からなる高原 地域ということで,自然な状態の水の採取は難し かった。採水したサンプルの多くは水道水であっ たが,その水源の多くは地域性を考えると地下水 であったようである。イエローストーンやヨセミ テなどでは低濃度の軟水が多くを占めていたが,

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その他の地域では高濃度の硬水が多く,かつ多彩 な水質組成を呈していた。湧水が大量に湧き出し ていた公園では,その水が水道水として使われて おり,その事が公園内の案内板に明記されてい る。また,水の乏しい公園においては,乾燥した 公園内を見学する際には,ペットボトルに水を詰 めて持ち歩くように指示された案内板もあった。 というように,何よりもまず,水は必須の携帯物 となっている。実際に歩いたグランドキャニオン のブライトエンジェル・トレイルでは,途中のレ ストハウスには水道水の出る蛇口が設置されてい た。この水源はノースリムのローリング湧水であ り,約800 m下ったコロラド川を渡り,そしてサ ウスリムまでの約1400 mの比高差をポンプアッ プして送水するというもので,サウスリムの各施 設やすぐ南のトゥシャンの集落,さらに南のウィ リアムズやフラッグスタッフの町の水道水まで 賄っているとのことであった。しかしながら,こ れらの地域の水需要は増加しつつあり,供給量の 増加でブライトエンジェル渓谷の水量が減って生 態系に影響が生じているとの問題も起こってい る。そして,乾燥地域を流れるコロラド川の水環 図 13 硬度の分布図

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境問題は今に始まったことではないが,今後も続 く大問題でもある。また,北部で見たセンターピ ボット方式の灌漑施設は,米国の至る所で普及し ているが,これも散布される水の大量消費が問題 となっている。特に,地下水の大量揚水による地 下水位の低下は重大である。こうした一面を見な がら米国西部の乾燥地域を廻ってきたが,ラスベ ガスやサンフランシスコなどの一部の大都市とそ の周辺地域を除くと,人家の疎らな原野が広がっ たままであり,まだいくらかは余裕があるのか なぁ~と感じた次第である。 文  献 合衆国国立公園管理局(2011):グランドキャニオン「ザ・ ガイド」日本語版.12p. 国立天文台 編(2012):理科年表.丸善,290-315. 世 界 の 気 温(2014):http://www2m.biglobe.ne.jp/ ~ZenTech(2014.1.30閲覧) 谷口英嗣・斉藤洋輔(2009):コロラド高原の地質層序 -ザイオン国立公園およびその周辺-.城西大学研 究年報,自然科学編,32巻,17-32. 谷口英嗣・斉藤洋輔(2010):コロラド高原の地質層序 -コロラド高原西縁中生界-.城西大学研究年報,自 然科学編,33巻,9-30. 地球の歩き方 編集室(2009):グランドサークル&セ ドナ.ダイヤモンド社,127p. 地球の歩き方 編集室(2011):アメリカの国立公園 ('11~ '12年版).ダイヤモンド社,511p. 徳山 明(2004):東京地学協会海外見学旅行「アメリ カ西部の大峡谷をゆく」参加記.地学雑誌,113(1), 155-163. 正井泰夫(1985):アメリカとカナダの風土.二宮書店, 151p. 正井泰夫 監修(2009):世界大地図.小学館,p.15. 都城秋穂(1979):地球科学16・世界の地質.岩波書店, 431p. 都城秋穂ほか5名(1992):アメリカ大陸の自然誌Ⅰ -アメリカ大陸の誕生-.岩波書店,267p.

Baskin R.L., Waddell K.M., Thiros S.A., Giddings E.M., Hadley H.K., Stephens D.W. and Gerner S.J. (2002): Water-quality assessment of the Great salt lake basins, Utah, Idahi, and Wuoming - environmental setting and study design. USGS Water-Resources Investigations Report 02-4115, 57p.

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Ariz. (1/62500 scale map)

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A グランドティトン国立公園のジェニーレイク

図 1 対象地域の概略図(正井,1985 などを基に作成)
図 12 水質組成図

参照

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