Ⅰ.はじめに 筆者は乳児保育Ⅰ・Ⅱを担当しているが,この 教科は保育士を目指す学生にとって必修科目であ り,本学科においては,3年次で履修する科目で ある.乳児保育の学習方法は「演習」という形態 をとるため,「保育実践力の育成」が求められる. つまり,講義と違って「主体的に考え行動する能 力」が求められるのである. 本学科の保育所実習は3年次の5月と9月に実施 されるが,学生にとって演習で学んだ内容が実習 においても活かされ,新たな課題を明確化する事 が重要である.研究で取り上げた「小麦粉粘土の 作品製作」は,本科目のシラバス「乳児の成長発 達とその援助⑥14 ∼ 18か月児の粘土での遊び」 単元の授業内容であり,7月に実施される. 高橋1)は「小麦粉粘土は,子ども達にとって油 粘土や泥粘土などと比べ,やわらかくて扱いやす く,色も楽しめるという特徴があります.感触遊 びを十分に満足した後は,ままごとやごっこ遊び を展開して楽しむことでしょう.」と述べている. 保育内容として「小麦粉粘土遊び」を展開する にあたり,まず学生自身が「体験」をすることに より,様々な視点に気づく事が重要であると考え る. 「粘土遊び」の先行研究では,栄野川2)の「環境 設定の工夫」の視点や,島田3)の「幼児の粘土造 形活動を関係論的な観点から捉えることの意義と 可能性」の視点の研究があるが,いずれも保育者 や児を対象とした研究であり,学生に対する授業 内容を研究したものが少ないのが現状である. 本研究では,乳児保育演習で実践を試みた「小 麦粉粘土作品製作」の「保育実践力育成」に対す る有効性を明確にし,今後の課題を考察したいと 考える. Ⅱ.研究方法 1.対象者 本学科3年生の「乳児保育Ⅰ」を履修した50名 である. 調査報告
乳児保育演習における「保育実践力」育成に関する研究
−小麦粉粘土作品製作を試みて− 工藤 恭子 (2012年12月20日受稿) 抄録: 本研究の目的は,乳児保育演習で実践を試みた「小麦粉粘土作品製作」の「保育実践力育成」 に対する有効性を明確にする事である.乳児保育Ⅰを履修している 3 年生 50 名を対象に,「乳児の成 長発達とその援助」の授業において 10 グループを作り,グループ毎に「4 色の小麦粉粘土」を使用し, 作品を製作した.学生は作品製作において「自分自身が楽しむ」という体験を通して 1.指導案作成に あたり考慮すべき点の発見 2.こどもの想像力を豊かにするための教材作りの重要性 3.仲間と協力す ることの楽しさ 4.見立てながら新しい物を作り出す喜び等の気づきがあった.以上の事から「小麦粉 粘土作品製作」は「保育実践力育成」に有効である事が示唆された. 北海道文教大学人間科学部こども発達学科2.研究期間 平成24年7月である. 3.研究方法・内容 授業中に学生が作品製作をしている様子(表情) を写真撮影し,言動を記録した.また,毎回授業 後に提出する「保育体験レポート」から学生の感 想を抽出した. 4.倫理的配慮 学生に対し,本研究の目的及び研究協力は自由 意志である事,結果は個人が特定されないように 記載し,研究以外には使用しない事を口頭で説明 した.写真撮影に対しても同意を得た. Ⅲ.結 果 1.保育園名・クラス名の決定 筆者は,25名ずつの2クラスの授業を受け持っ ている.各クラス毎に保育園名を決定し,また5 人グループを構成し,組名を決定している.これ は,ほとんどグループワークで進められる授業で あるため,グループメンバーがお互いに団結し, 啓発し合えるように導くためである. 行動の主体は学生である.各グループの組には 出席簿があり,毎週持ち回りで保育士役を体験し, こども役の学生にシールを貼っていく. ここに各クラスの保育園名および組名を紹介す る. Aクラス…ゆめぽっぽ保育園 クリームソーダー組,にょっき組,はと組,てち てち組,アラジン組. Bクラス…にこにこ保育園 えがお組,あかほっぺ組,うふふ組,りんご組, ひよこ組. 2. 乳児保育体験レポート 筆者は毎回演習毎にA4版の用紙に授業内容や 学習時の気づき・感想・疑問点等を記入するレポー ト用紙(乳児保育体験レポート)を配布し,学生 に記入させている.現在は学生の意見も反映し, A3版の用紙になっている.本研究の結果に示さ れているのはこのレポートから抜粋した感想であ る. 3.「小麦粉粘土作品製作」の実際 1) 授業準備 小麦粉粘土の作り方及び色の作り方(ピンク・ オレンジ色・黄緑色・黄土色・茶色)の資料を準 備し,当日配布した. 小麦粉粘土作成の準備(必要物品) ・小麦粉 1人300g×50人分…こどもに準備する場合はこ れよりも少なく,出来上がりの時間も考慮し,分 量準備が必要. ・水…少量ずつ入れるのがこつである. 500mlのペットボトルの空きボトルに入れて準備 (各組に一個). ・塩…適量混ぜる事により一週間は冷蔵庫で保存 し遊ぶ事ができる.適量を瓶に入れ準備. ・植物油…適量混ぜる事により粘土が手に付きに くくなると同時に粘土に艶が出る.瓶に適量準備. ・食紅…赤・青・緑・黄の4色を準備. 食紅は小麦粉粘土をこねる前に添加した方が色が 混ざりやすいし,何色も混ぜる事で新たな色合い を楽しむ事ができる. ・発砲スチロールのどんぶり50個 ・ピクニックシート各クラス5枚 ・学生にはエプロン持参し,動きやすい服装で施 行する事を事前に話し,準備させた. 2) 小麦粉粘土作品製作の環境設定 保育演習室において60分間施行.その内訳は, 30分間粘土をこね,20分間で作品作り,10分で 後片づけと時間配分を行った. グループの中には経験者も数名おり,中心と なって活動する事を依頼した. 演習室はフローリングでできており,そこに シートを敷いて開始した.
演習室内の配置は図1の通りである. 図1 演習室内の配置 入口 3) 小麦粉粘土作品製作時の学生の様子 写真1 ∼ 5はゆめぽっぽ保育園,写真6 ∼ 10はに こにこ保育園の様子である. ・ゆめぽっぽ保育園の様子 写真1 はと組 写真2 くりーむそーだー組 写真3 にょっき組 写真4 アラジン組 写真5 てちてち組 どの学生もにこにこしながら本当に楽しそうに 粘土をこねていた.童心に返り,こどもの気持ち になって粘土をこねていた.小麦粉に入れる水の 量が多すぎてべとべとになり手に付いて困ってい る者,色を混ぜ合わせ自分達の好きな色を作る事 に没頭する者,粘土の感触を楽しみ遊ぶ者等様々 な行動の様子が伺えた. 各グループにも特徴があり,おしゃべりを楽し G
みながら製作するグループ,静かに一人一人活動 するグループ,お互いの作品を褒め合いまね合っ ているグループ等様々な活動が展開された. 各作品を決定するまでに,グループメンバーで いろいろ意見を出し合いながら行動している姿か ら徐々に団結力も芽生えてきていた.作品ができ てからは,お互いの作品を比較し他のグループの 作品を褒める姿も見られた. 学生から聞く事ができた言葉は次の通りである. ① 耳たぶみたいに柔らかい. ② 綺麗な色だね∼ ③ 結構時間がかかるな∼ ④ 上手にできたね. ⑤ 手にくっつかないように油を入れるといい. ⑥ 何を作ったかわかってくれるかな∼ ⑦ おいしそうに作れたよ. ⑧ クラス名を活かした作品にしたいね. ・にこにこ保育園の様子 写真6 えがお組 写真7 ひよこ組 写真8 うふふ組 写真9 あかほっぺ組 写真10 りんご組 小麦粉粘土経験者が2名おり,その学生が中心と なり,スムーズに進めていけた.もくもくと小麦 粉をこねる学生が多く,集中して行動していた. どのようなテーマで作品を作るかをメンバー同士 で話し合い,決めていた.
写真11 うふふ組 写真12 怪獣に見えるかな〜 写真13 好きな物を作るぞ〜 学生から聞く事ができた言葉は次の通りである. ① 楽しいね∼ ② 綺麗な色にしたいね∼ ③ 怪獣に見えるかな∼ ④ 水の分量って難しいよ. ⑤ 結構時間かかるね. ⑥このくらいの硬さでいいかな? ⑦上手にできたね. ⑧できた∼ 4.小麦粉粘土作品製作で学生が感じた事 (保育体験レポートより) ① 製作時間が思ったよりかかった. 4色(赤・青・緑・黄)の食紅を使用し粘土を こねていくわけであるが,色づけまでに当初所要 時間を30分間と考えていたが,実際にやってみ ると,時間がオーバーし約40分かかってしまっ た.その理由を分析すると,小麦粉に水を入れる 前に食紅を入れた場合,綺麗に色が馴染みやすい が,小麦粉をこねてから食紅を混ぜるとマーブル 状になり,かなり時間がかかる.⇒準備する場合, 小麦粉の量は少なめの方が早く仕上がる.また食 紅の量はこどもだけでは判断できないと思うので 保育者が援助する方が良いのではないか. ② とても楽しい体験であった. 出来上がった粘土は見た事や触れた事はあった が,原材料から初めから作るのは初めてだった. 最初粉だった物が水を加える事で粘土の塊に変化 していく様子がとても楽しかった.また,水の量 によりうまくまとまらなかったり,難しさを感じ た.使用した油や塩の意味(油は小麦粉粘土がこ びりつかないようにしたり,粘土に艶をだすため, 塩は保存のために必要)を知らなかったが,実践 してみて必要性を感じる事ができた. ③ 何歳児に実践できるか考えた. 今回は14 ∼ 18か月のこどもを想定して実践し たが,この年齢で小麦粉をこねるのは難しいかも しれないが,ある程度できた状態でこねる体験を させれば体験できるのではないかと感じた.全部 初めから体験させるなら3歳児からが良いのでは と感じた.障がい児に対しても実習時に「小麦粉 粘土製作」をやっていたのを見た事があり,握力 が弱くても小麦粉粘土なら柔らかいのでこねて遊 ぶ事はできると思う.小麦粉粘土をどの年齢にど のように製作させ体験させるかは,その年齢やそ
の子の成長・発達を良く考えて決定すべきである と感じた. ④ 仲間と一緒にできて楽しかった. どのようなテーマで作品を作るかを仲間で話し 合うのが楽しかった.仲間の作品を見て感動した. 本物そっくりの作品を作る事ができ協力できた. ⑤ 指導案での考慮点を考えさせられた. 何歳に指導するかによって指導案は変わってく る.準備の段階でも細かくなければならないし, 保育者は具体的に何を援助するのか,どのような ねらいでどのような言葉がけをしながら援助する のか,時間配分もしっかり計画し,後片づけの時 間も十分に取らなければならない. ⑥ 小麦粉粘土の感触を楽しんだ. 小麦粉粘土は柔らかく(耳たぶの硬さ),とて も感触が良く,嫌な臭いもしないし,こどもにも 安全であるため,今度の実習で是非活用してみた いと思う. ⑦ 環境設定について考えた. 今回演習室を使用し,シートを引いて自由に行 動し,開放感があった.こねるのにも力が入れや すかった.汚れても良いという気持ちが安心感に つながった.全体を通して,全員が書かれていた 事項は,「楽しかった」という言葉であった. 5. 出来上がった作品 にこにこ保育園の作品(写真14 〜 18) テーマはそれぞれが個性的に決められており, 野菜・果物・ピザ・スパゲティー・きのこ・動物 等が描かれていた.また,色彩にも特徴があり, 暖色系でまとめているもの,寒色系でまとめられ ているもの等様々であった. 写真14 りんご組 写真15 うふふ組 写真16 えがお組 写真17 あかほっぺ組
写真18 ひよこ組 ゆめぽっぽ保育園の作品(写真19 〜 23) テーマは決められている組と,特に決めずに好 きなものを並べて描いた組もあった. お菓子・動物・花・果物・中華饅頭・ラーメン・ 野菜・キャラクター・人間の顔・餃子等が描かれ ており,全体の色彩は明るい原色に近い色を使用 していた組が多かった. 写真19 はと組 写真20 くりーむそーだー組 写真21 てちてち組 写真22 アラジン組 写真23 にょっき組 Ⅳ.考 察 この授業において教員は次のような4点の学生 の到達目標を設定した.
1. 学生が小麦粉粘土作品製作を心から楽しむ事 ができる. 2. 指導案立案のための考慮点に気づく事ができ る. 3. 保育実践のための配慮点に気づく事ができ る. 4. グループメンバーの相互理解ができる. 山田4)は,「保育実践力」を「指導計画を作成 する力・保育を展開する力・保育実践を省察し今 後の課題をもつ力」の3つの力であると定義して いる.そこで,教員が設定した到達目標の達成度 を評価しながら,「小麦粉粘土作品製作」の「保 育実践力育成」に対する有効性を考察していきた い. 1.到達目標1の達成度 学生は撮影した写真の表情や「保育体験レポー ト」の感想にも表現されている通り,小麦粉粘土 作品製作を楽しんでいた.そこには教員の「環境 構成」に関する意図があった.机と椅子という限 局された環境ではなく,保育演習室というフロー リングの部屋で自由な姿勢で身体全体を使用して 活動できるように設定した結果,心理的にも心の 開放感につながっていったと考えられる. 研他5)の研究では,「保育のねらい・実践記録」 「評価」の中で「楽しむ」という表現が記載され ている.学生は教員の意図以上に「自然発生的」 に「楽しむ」という行為を行っていたように考え られる.保育を展開するにあたり,効果的な環境 設定を行う事によって「楽しむ」という事を実感 できる事を学生も感じていたようである.以上の 事から,この目標は達成されたと考えて良いと考 える. 2.到達目標2の達成度 生後14 ∼ 18か月の児にとって,手の運動機能 の発達からみると,田中6)は,「粘土も,たたい たり,ちぎったりして遊ぶことができるようにな る.」と述べており,中西7)は,大切にしたい遊び̶ 手を使っての遊び̶において,「手を使っての遊 びは,子どもが,砂,土,泥,水,小麦粉,片栗 粉などの感触を楽しみ,押すと形が変わることを 発見して喜ぶ.これらの素材に触れることによっ て,形がどのようにでも変化し,可塑性があるの で,物を操作し,つくり出す手指の育ちを豊かに する.」と述べている.このような年齢における「小 麦粉粘土作品製作」による達成課題を意識し,学 生は指導案を立案しなければならない.そこで学 生のレポートの感想から考慮点として重要な視点 をまとめてみたい. 1) 小麦粉の量の確認の必要性 研他5) の研究では,「2kg(幼児一人約15g)の 小麦粉粘土」を作成していた.学生は一人300g の小麦粉で作成したが,量が多すぎてこねるの に当初予定していた時間を10分間もオーバーし, その後の作業進行に影響を与えてしまった.大人 でもこのようなアクシデントがあるとすれば,初 めから量を少なめに設定する必要がある事がわ かった. 年齢設定によってどのくらいの操作が可能であ るかを予測しながら,どの部分で関わりが必要で あるかを指導計画に提示する必要がある. つまり,保育者が事前に小麦粉粘土を作成して しまうのか,児の前でやって見せるか,あるいは 児が直接作成するのかを決定しなければならな い. 2)小麦粉の色付けの体験の必要性 当初は赤・黄・緑・青の4色を用意した.学生 は原色をそのまま楽しむ事の喜びを味わうだけで なく,最初に色の出し方の資料を準備した事で欲 しい色を試し,そのうちに自分達で食紅の量を加 減する事で好みの色彩を自由に作り出していた. 実際に体験する事により,こども達が体験できる であろう色への関心を広げる事ができ,その事に よってこどもの想像力を豊かにする事もできると 考える.展開では,色と色を混ぜる事で新たな色 彩を作り出す楽しみを実際にこどもの前で見せる 事により,創作への関心を引き出す事にもつなが ると考える.
3)小麦粉の硬さの体験の必要性 学生は「耳たぶくらいの柔らかさ」を目安に粘 土をこねていくわけであるが,自分でなかなか判 断できない時,自然と仲間に相談する姿があった. 14 ∼ 18か月の児においては他人との比較は無理 だとしても,自分の身体との比較は感触として体 験する事ができると考える.例えば「お耳さわっ てみて,同じだね,柔らかいね」等と,粘土遊び を通して自分の身体に気づくという学習もなされ ていくであろう. 3.到達目標3の達成度 1) グループ構成を考える必要性 グループを意図的に組む事により,様々な効果 を期待できる.例えば,他の子ができない部分を 手伝う,お友達の良さを認める,自分だけで解決 できない問題を仲間と解決しようとする,譲り あって物を使う等である.学生は実体験で得られ た効果を指導案のねらいとして設定する事もでき る.この効果をねらえるのは,2歳以降かと考え る.学生の感想の中にも仲間と感情を共有できる 利点が述べられていた. 2)見立てながら作品を製作する必要性 高橋1)は「感触遊びを十分に満足した後は,ま まごとやごっこ遊びを展開して楽しむ事でしょ う.」と述べているとおり,14 ∼ 18か月のこど もにとっては小麦粉粘土の感触を楽しむ事はごっ こ遊びやままごと遊びのきっかけ作りとなるであ ろうから,十分な関連するおもちゃの準備やこど もへの「言葉がけ」の設定が必要になると考える. 学生は,グループで決定した場合はそのテーマ に添って自分の好きな作品を製作し,テーマが決 められていないグループは自由な発想で作品を製 作していった.どちらにしても学生は「やらされ ている」という感情ではなく,「主体的に行動し ている」という感情を体験する事ができた.しか し,関わる年齢によっては,意図的にテーマを設 定した方が良いのか,こどもの主体性にまかせた 方が良いのかは,保育者の判断にまかされる部分 がある.いずれにしても,実践し評価をしながら 次回に活かしていく事は重要である. また,見立てたい物が上手に製作できない場合 は,色の選択や,形を作る時にどの程度関わるか によって保育の質が変わってくるはずである. 4.到達目標4の達成度 学生はグループを構成する事で,仲間意識が向 上し,また,他のグループのメンバーとも交流し 作品の良さを認め合ったりしていた.その内容は 作品のテーマであったり,色彩への感動であった り,活動への熱心さであったり,作品製作の器用 さ等であった.このように相互理解を深める事で, 仲間と協力する事の楽しさを感じ,こども達の社 会性が育っていくものと考える. 14 ∼ 18か月の児にとっては,まだ仲間意識が 芽生える時期ではないが,保育者から「ほめられ る」「認められる」という体験がのちの「自己肯 定感」につながり,良い意味での「競争心」を体 験する事で社会性を身につけていけると考える. 以上の様に,学生は「小麦粉粘土作品製作」を 体験する事で様々な学びがあったが,この学びに より次の4点の気づきがあった. 1. 指導案作成にあたり考慮すべき点の発見 2. こどもの想像性を豊かにするための教材作り の重要性 3. 仲間と協力する事の楽しさ 4. 見立てながら新しい物を作り出す喜び これらの気づきは,いずれも「保育実践力」に 結びつく体験であり,乳児保育Ⅰの授業における 「小麦粉粘土作品製作」は,「保育実践力育成」に 有効であると考える. 5.本研究の限界および今後の課題 研他5)の研究では,「幼児たちは,小麦粉粘土 の感触や粘る特徴を学ぶことで,将来のパンや ケーキ作りの基本的材料やその作り方,そして蛋 白質のグルテンの特性を学ぶための基本的な学習 を遊びを通して学んだと言って良い.」と述べて
おり,現在のこどもに対する保育だけでなく,今 後のこどもの発達にどう影響を与えていくのかと いう長期的見通しを持ちながら「乳児保育演習」 を企画していかなければならない.今回の授業で は前もって学生に意識づけを行わずに授業を展開 した.しかし,来年度に向けては,「小麦粉粘土 作品製作」の保育にとっての意味を学生に浸透さ せた上で授業展開していけるよう配慮していきた い.その事により,学生の「保育実践力」を高い レベルで育成する事ができ,しいては保育の質を 高める事にもつながると考える. Ⅴ.まとめ 「保育実践力育成」に対する有効性を明確にす る事を目的に,「小麦粉粘土作品製作」を行った. 学生は「自分自身が楽しむ」という体験を通し て次の4点の気づきがあった. 1. 指導案作成にあたり考慮すべき点の発見 2. こどもの想像性を豊かにするための教材作り の重要性 3. 仲間と協力する事の楽しさ 4. 見立てながら新しい物を作り出す喜び 以上の気づきは「保育実践力育成」に有効であ る事が示唆された. 今後の授業においても,教員の学生に対する到 達目標を明確にし,特に「保育実践力育成」を意 識し展開すべき授業である事を忘れず,授業計画 の内容を充実させていきたいと考える. 文 献 1) 高橋かほる:新版遊びの指導乳・幼児編. 165,東京,同文書院,2009. 2) 栄野川公恵:温かな人間関係を育むための援 助の工夫−思いを伝え合う生活を通して−, 那 覇 市 立 教 育 研 究 所 研 究 報 告 書:1−12, 2006. 3) 島田佳枝:幼児の粘土造形の研究方法をめ ぐって−関係論的観点の意義と可能性につ いて−.埼玉学園大学紀要,11:235−242, 2011. 4) 山田秀江:幼稚園教育実習における保育実践 力の学びに関する一考察−責任実習の実践 報告から−.四条畷学園短期大学紀要,45: 53,2012. 5) 研政一,祐成かおり,伊藤伊代,井上阿沙 美:幼小連携に寄与する保育教材の開発と実 践の検討(1)−小麦粉粘土教材の効果につ いて−.羽陽学園短期大学紀要,9(1):17 −25,2011. 6) 田中昌子:実践・乳児保育子どもたちの健 やかな未来のために.65,東京,同文書院, 2008. 7) 中西京子:新時代の保育双書乳児保育.139, 岐阜県,みらい,2010.
Cultivation of 'Practical Nursing Skills' in Infant Nursing Exercises
KUDO Kyoko
Abstract: This study clarifies the effectiveness of 'creating flour-clay artwork', attempted in infant nursing
exercises, with regards to the 'cultivation of practical nursing skills'. The participants were 50 third-year students majoring in Infant Nursing I, enrolled in a 'Growth development of infants and its support' class.The50 participants were divided into ten groups, and each group created a piece of artwork utilizing 'flour-clay in four colours'. The participants discovered the following through the enjoyable experience of personally creating the artwork: 1) the points to be considered in producing a teaching plan; 2) the importance of creating teaching materials that enrich the imagination skills of children; 3) pleasure in collaborating with their colleagues; and 4) the joy of creating something new while evaluating it. The results suggested that creating flour-clay artwork is effective in cultivating practical nursing skills.