• 検索結果がありません。

魚介類を用いた伝承的料理に対する幼児の嗜好の変 遷(1991年〜2006年)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "魚介類を用いた伝承的料理に対する幼児の嗜好の変 遷(1991年〜2006年)"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

魚介類を用いた伝承的料理に対する幼児の嗜好の変 遷(1991年〜2006年)

著者 峯木 眞知子, 戸塚 清子

雑誌名 東京家政大学博物館紀要

巻 18

ページ 15‑25

発行年 2013‑02

出版者 東京家政大学博物館

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010339/

(2)

1.緒 言

 魚介類は,日本人の身近なたんぱく質食品として,古くから親しまれ,食文化とのつながりも強 い.しかし,魚離れがいわれ,1日当たりの魚介類の摂取量は,2006年を境に肉類の摂取量より少 なくなった1).国民健康・栄養調査の結果でも,幼児から50歳代までの摂取量は,魚介類より肉類 の摂取量が増加している2).著者は,1991年から2006年の5年ごとに,全国各地にある保育所に通 う幼児を対象に,魚介類およびその料理に対する嗜好についてアンケート調査を行った3, 4, 5, 6). 2001 年の調査より肉類に対する嗜好を調査項目に加え5, 6),2006 年の調査では乳類に対する嗜好も 追加した6).魚介類の嗜好及びその摂取についての研究報告はあるが6 - 11),幼児を対象とした調査 は少ない.保育園児には給食が提供されており,食事に保育士が立ち会うことから,幼児の嗜好状 況を正確に把握できるので,調査の対象を保育園児と限定して調査している.

 この 15 年間に渡る調査では,幼児の魚介類に対する嗜好に大きな変化はみられていない.しか し,幼児の好む魚種,好む調理法には地域差がなくなっており,魚介類が夕食に上がる頻度は確実 に低下している.これらのことから,魚介類を用いた伝承的料理に対する幼児の嗜好は下がってい ると考えられる.2006年の調査において,伝承的料理の解析は報告していない.

 そこで,本研究では,2006 年の魚介類の伝承的料理に対する幼児の嗜好状況を報告し,15 年間 にわたる嗜好の変化を把握することを試みた.

 これまでの調査から幼児が好む伝承的料理をまとめることは,食文化として継承されるための参 考資料になると考えた.

魚介類を用いた伝承的料理に対する幼児の嗜好の変遷

(1991年~2006年)

Food Preference on the Fish Traditional Dishes among the Japanese Children Changes to 2006 from 1991

Machiko  M

ineki

, Kiyoko  T

otsuka

      *       **

峯木 眞知子  ・ 戸塚 清子

*栄養学科 第3調理学研究室 

**生活科学研究所 共同研究員 

(3)

2.調査方法 1)調査対象

 全国の保育所に通園する3歳以上の幼児の保護者にアンケート用紙を配布し,留置法により回収 した.調査年は1991年,1996年,2001年,2006年3, 4, 5, 6)とした.

 調査対象者は,1991 年の調査では,10 地区 1,036 名,1996 年の調査では,16 地区 1,418 名,2001 年の調査では,20 地区 1,966 名,2006 年の調査では 18 地区 1,342 名で,調査 4 回の合計数は 5,762 名

(近年3回分の調査対象者合計は,4,726名)であった.

 対象地区は,各調査により,異なる地区もあるが,4 回の調査の内訳は,函館(215 名)・札幌

(73 名)・旭川(74 名)・秋田(262 名)・気仙沼(260 名)・仙台(130 名)・宇都宮(288 名)・東京

(216 名)・八王子(229 名)・町田(44 名)・横浜近辺(244 名)・所沢(47 名)・茅ヶ崎(90 名)・甲 府(268名)・静岡(186名)・長野(411名)・黒部(453名)(海側・山側)・神戸(19名)・姫路(53 名)・和歌山(311 名)・米子(434 名)・高知(580 名)・太宰府(237 名)・鹿児島(210 名)・那覇

(428名)であった.

 調査対象者の属性を表 1 に示した.年齢別内訳は,3 歳 1183 名(20.5%),4 歳 1,929 名(33.5%),

5 歳 1,994 名(34.6%),6 歳 656 名(11.4%)であった.性別では男児 3,098 名(53.8%),女児 2,661 名(46.2%)であった.答えた幼児は,第1子が2,915名(50.6%)で多かった.家族構成では,核 家族3,830名(66.5%)が最も多く,祖父母同居1,386名(24.1%),父・母子家族523名(9.1%)で

表1 対象者の属性

調査年(年) 1991 1996 2001 2006 合計

項目 人数 人数 人数 人数 人数

年齢

3歳 202 19.4 331 23.3 439 22.3 211 15.7 1,183 20.5

4歳 313 29.9 510 36.0 683 34.7 423 31.5 1,929 33.5

5歳 376 36.3 460 32.4 650 33.1 508 37.9 1,994 34.6

6歳 145 13.9 117 8.3 194 9.9 200 14.9 656 11.4

574 55.4 776 54.7 1,046 53.2 702 52.3 3,098 53.8

459 44.3 642 45.3 920 46.8 640 47.7 2,661 46.2

第何子

第一子 472 45.6 706 49.8 1,017 51.7 720 53.7 2,915 50.6

第二子 351 33.9 465 32.8 674 34.3 477 35.5 1,967 34.1

第三子 176 17.0 205 14.5 234 11.9 117 8.7 732 12.7

第四子以上 31 3.0 42 3.0 39 2.0 26 2.0 138 2.4

未記入 6 0.6 0 0 2 0.1 1 0.1 9 0.2

家族構成

祖父母同居 230 22.2 336 23.7 485 24.7 335 25.0 1,386 24.1

核家族 716 69.1 952 67.1 1,289 65.6 873 65.1 3,830 66.5

父母子 83 8.0 123 8.7 183 9.3 134 10.0 523 9.1

その他 7 0.7 7 0.5 9 0.4 0 0.0 23 0.4

母親の年齢

20歳未満 5 0.5 0 0 3 0.2 5 0.4 13 0.2

20歳以上 192 18.5 347 24.5 350 17.8 233 17.4 1,122 19.5

30歳以上 724 69.9 933 65.8 1,379 70.1 936 69.7 3,972 68.9

40歳以上 106 10.2 138 9.7 214 10.9 156 11.6 614 10.7

未記入 9 0.9 0 0 20 1 12 0.9 41 0.7

合計 1,036 100 1,418 100 1,966 100 1,342 100 5,762 100

(4)

あった. 対象者の保護者の年齢では,30 歳代が 3,972 名(68.9%) で多く,20 歳代は 1,122 名

(19.5%)であった.

2)調査方法

 調査項目は以下の通りである.

  1.幼児の年齢・性および第何子   2.保護者の年齢

  3.家族構成

  4.保育者が夕食に費やす調理時間

  5.幼児,母親および父親の魚介類・肉類・乳類に対する嗜好   6.魚が嫌いな理由

  7.幼児が好んで食べる魚の調理法:複数回答可(①焼く,②煮る,③揚げる,④蒸す・ホイル蒸 し,⑤油焼き・ソテーまたはムニエル,⑥生・刺身,⑦中華風あんかけ,⑧缶詰,⑨その他)

  8.魚介類,肉類,乳類が夕食の食卓に上がる頻度   9.魚種に対する幼児の嗜好

10.魚料理の工夫

11.保育者の魚料理の得意,不得意

12.魚介類を使った伝承的料理14種に対する幼児の嗜好

 干物,照り焼き,みりん漬,甘露煮・佃煮,味噌煮・味噌焼き,かば焼き,立田揚・唐揚,てん ぷら,南蛮漬,寿司,つみれ汁・すりみ汁,貝の汁物,魚や貝の炊きこみご飯,寄せ鍋(2006 年 のみ)に対する幼児の嗜好を4段階尺度(①好き,②どちらでもない,③嫌い,④食べたことがな い)から一つ選択.

3)統計処理

 調査の集計には,統計用ソフト SPSS 14.0 を用いた.統計処理は,スピアマン積算相関係数およ びχ2検定を行い,多変量解析はクラスター分析を用いた.有意水準は5%とした.

3.調査結果および考察 1. 幼児の好む伝承的料理

 2006 年の調査で,幼児の好きな割合が高い伝承的料理は,立田揚・唐揚 79.7%で,寿司 68.4%,

貝の汁物67.8%,照り焼き66.5%,てんぷら60.5%が次いでいた.

 1996 年,2001 年,2006 年の 3 回の調査の合計(対象者 4,726 名)では,貝類の汁物 72.7%,立田 揚・唐揚 71.3%,照り焼き 67.2%,寿司 65.1%,てんぷら 58.0%,干物 53.2%であった(図 1).

2006 年の調査では,立田揚・唐揚や寿司を好む割合が多くなり,貝の汁物,干物を好む割合が少 なくなっていた.嫌いとした割合が高かったのは,南蛮漬 25.2%,つみれ汁・すりみ汁 12.3%で あった(図 1).「食べたことがない」あるいは「知らない」とした回答(食経験なしと表示)が多 かった料理は,南蛮漬23.2%,魚や貝の炊きこみご飯14.7%,甘露煮・佃煮11.1%,みりん漬9.6%

(5)

であった.

2. 幼児の伝承的料理に対する嗜好の推移

 伝承的料理の好まれる割合を調査年ごとにみると,貝の汁物は 1991 年 79.0%で高く,2006 年 67.8%で低くなった.このように,調査年に従い,幼児に好まれる割合が下降傾向を示した料理 は,貝の汁物のほかに照り焼き,てんぷら,かば焼きであった.

 逆に立田揚・ 唐揚を好むとした幼児の割合は 1991 年 52.0%,1996 年 73.6%,2001 年 66.2%,

2006 年 79.3%で,調査年が増えるに従い,好きな割合が高くなった(p<0.05).しかし,調理法別 に「揚げる」を好きとした幼児の割合は,1991 年 51.7%から,2006 年 36.5%と低下している.同 じ揚げ物のてんぷらでは,1991 年 70.0%,2006 年 60.5%で,好きな割合は低下している.このこ とから,立田揚・唐揚は「揚げる」調理法の中で,特に幼児に好まれる調理法といえる.

 幼児の好む割合が調査年で変化がなかったのは,寿司,南蛮漬,甘露煮・佃煮,つみれ汁・すり み汁であった.寿司を除くこれらの料理は幼児に好まれる割合が低い料理であったので,幼児に とって身近で親しまれている料理ではないと考える(図 2). 幼児が寿司を好む割合は 1991 年 71.0%,2006年68.4%でほとんど変化がみられなかった.調理法別の「生・刺身」を好きとした幼 児の割合は,1991 年 62.1%,2006 年 62.8%で高く,その割合は一定している.寿司はこれからも 幼児に好まれる料理といえる.

 また,幼児の魚介類に対する好きな割合が 1991 年の調査で最も高い割合を示した料理は 13 品中 8品であった.このことから,1991年の調査の時点では,幼児が魚料理を食べていた量は多いと考 えられ,その後幼児の嗜好も摂取量も低下傾向であると考える.

36 25 3

40 15 3

41 12 2

46 5 4

45 8 3

32 10 3

39 6 3

37 6 4

36 5 2

32 4 4

20 19 2

28 2 2

22 2 2

16 7 2

73  71  67  65  58  53  47  43  42  38  37  36  30  13 

0 20 40 60 80 100%

貝の汁物 立田揚・唐揚 照り焼き 寿  司 てんぷら 干  物 かば焼き みりん漬 魚や貝の炊きこみご飯 味噌煮・味噌焼き 魚の寄せ鍋 つみれ汁・すりみ汁 甘露煮・佃煮 南蛮漬

好き 普通 嫌い 食経験なし 未回答

(n=4,726)

36 25 23 3

40 15 11 3

41 12 9 2

46 5 8 4

45 8 7 3

32 10 15 3

39 6 10 3

37 6 6 4

36 5 4 2

32 4 3 4

20 19 4 2

28 2 2

22 2 2

16 7 2

図1 幼児の魚介類を用いた伝承的料理に対する嗜好      1)データは,1996年,2001年,2006年の調査の合計

(6)

3. 幼児の伝承的料理の嗜好に影響する要因 1)幼児の年齢

 2006 年の調査では,幼児の年齢が高くなる と好きな割合が増加した伝承的料理は,寿司お よび貝の汁物であった.寿司では,3歳59.7%,

4 歳 65.0%,5 歳 72.8%,6 歳 73.5%で,貝の汁 物では,3 歳 59.7%,4 歳 67.1%,5 歳 68.5%,

6歳76.0%であった(p<0.05).

 3 回の調査の合計でみると, 寿司は,3 歳 57.8%,4 歳 63.8%,5 歳 70.6%,6 歳 72.8%で 年齢の増加とともに好まれ,立田揚・唐揚では

80 73 74 66 72 65 66 63 64 55 52 58

53 47 45 42 48 35 39 36 36 33 31 30

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

3歳 4歳 5歳 6歳

てんぷら 寿司 立田揚・唐揚

図2-2 幼児の魚介類を用いた伝承的料理に対する好きの割合の推移 図2-1 幼児の魚介類を用いた伝承的料理に対する好きの割合の推移

図3 幼児の年齢別伝承的料理に対する好きの割合 データは,3回の調査の合計       

(7)

3 歳 70.3%,6 歳 74.3%で,てんぷらでは 3 歳 56.0%,6 歳 60.6%で、いずれも年齢が高くなるとと もに, 好きな割合は増加した(図 3,p<0.05). 幼児の好む魚介類の調理法を年齢別にみると,

「生・刺身」は3歳55.6%,6歳65.8%で年齢とともに好きな割合が増えていた(p<0.01).

 志垣らは,大学生を対象に調査し,魚介類を好きになった時期を質問しているが,「幼稚園以下」

が,42.7%で最も多く,次いで「小学校低学年」が 24.9%であった.また,魚が好きな理由は「小 さい頃から食べていた」46.4%,「おいしい」39.4%,「母が作ってくれた」7.6%と報告している7). このことからも,保育者が幼児期に調理して,食卓に出すことが必要であり,食体験の重要性も考 えられる.

 魚介類に対する幼児の嗜好は,年齢が増加すると低下する傾向である3, 4, 5)ことを報告した.しか し,好まれている伝承的料理は,幼児の年齢の増加に伴い好きな割合が上がっている.幼児期に伝 承的料理を食べさせることが,食の伝承にも重要であることを示している.

2)幼児の性

 2006年の調査では,好きな割合に性による違いがみられた伝承的料理はなかった.

 3 回の調査より,伝承的料理を好む割合は,かば焼きでは男児 50.0%,女児 45.7%で男児に好ま れた(p<0.01).2001 年の調査では,干物,貝の汁物が女児に好まれ,かば焼き,てんぷらは男児 に好まれていた5).魚種では,男児でうなぎ,女児でさわらを好んだ3, 4, 5).うなぎとかば焼きが男 児に好まれることより,うなぎはかば焼きとして男児に好まれていると考えた.

 しかし,このような性別による好みも,調 査が進んだ2006年の調査では,みられなかっ た.

3)都市・地域別

 幼児の居住する都市別に 2006 年の調査を みると,味噌煮・味噌焼きおよび貝の汁物,

炊きこみご飯,寿司,寄せ鍋では北の地域に 住む幼児が好み,てんぷら,照り焼き,南蛮 漬 で は 南 の 地 域 に 住 む 幼 児 に 好 ま れ た

(p<0.05).3 回の各調査でも同じ傾向があっ たのは,味噌煮・味噌焼き,照り焼き,てん ぷら,南蛮漬であった.味噌煮・味噌焼きを 好む幼児の割合は,仙台市および気仙沼市で は 50%以上を示し,同じ東北の秋田市でも 47.9%と高かったが,那覇市 35.9%,高知市 30.4%,和歌山市 22.7%,姫路市 20.8%と関 西以南の地区で低かった(図 4).また,て んぷらを好む幼児の割合を 3 回の調査の合計

51 39 49

51 42 47 28

50 48 48 43 45

38 44

44 40 40 41 45 44

10 7 11 11

8 11

7 6

10 4 8

6 8

9 7 10

7

7 5 8 41

5

44  45  48 

52  50  38 

40  47  39 

46  36 

43  33  33  21 

23  34  30 

42  38  36 

0 20 40 60 80 100%

気 仙 沼 宇 都 宮 東京区外 横浜近辺 和 歌 山 太 宰 府 鹿 児 島

好き 普通 嫌い 食経験なし 未回答

(n=4726)

41 51 39 49

51 42 47 28

50 48 48 43 45

38 44

44 40 40 41 45 44

10 7 11 11

8 11

7 6

10 4 8

6 8

9 7 10

7 5 7 5 8 11

5 10

5 24 28 33

6

8

5 4 6

6

4 4

図4 味噌煮・味噌焼きの都市別嗜好      1996年,2001年,2006年の調査の合計 

(8)

(1996 年,2001 年,2006 年)でみると,那覇市 77.1%,鹿児島市 69.5%で高く,札幌市 52.9%,東 京50.0%で低く,南の地域で好まれた.照り焼きも同様に鹿児島市77.6%,太宰府市73.1%,米子 市72.6%で高く,札幌市57.9%,函館市54.0%で低い傾向を示し,油を用いた伝承的料理は南の地 域で好まれた.

 幼児の居住する地域を海岸部,都市部,内陸部に分けて,2006 年の調査で幼児の嗜好をみると,

海岸部で好まれた伝承的料理は,てんぷら,甘露煮・佃煮,内陸部では寿司,貝の汁物,魚や貝の 炊きこみご飯であった.

 3回の調査(1996年,2001年,2006年)で一致した傾向がみられた伝承的料理は,干物,てんぷ ら,寿司,貝の汁物であった.干物は海岸部に住む幼児の好きな割合が低く,逆にてんぷらは海岸 部に住む幼児が好んで高く,貝の汁物は都市部で好まれる割合が低かった(図5).

 これらのことより,幼児の伝承的料理に対する嗜好には,海からの距離による居住の影響もいま だ大きいと考える.

4)家族構成

 2006 年の調査では,照り焼き,みりん漬は核家族の幼児に好まれ,魚や貝の炊きこみご飯,魚 の寄せ鍋,甘露煮・佃煮は祖父母同居の家族に好まれ,味噌煮・味噌焼き,つみれ汁・すりみ汁は 父母子家族で好まれた.好まれる伝承的料理には,3 回の各調査でも同様に家族構成による影響が みられた.

5) 魚介類が夕食の食卓に上がる頻度との関連

 魚介類が夕食の食卓に上がる頻度は,1996 年では毎日 16.4%,週 2~3 回 67.7%に対し,2006 年 では毎日 13.0%,週 2 ~3 回 65.2%,週 1 回 19.7%,ほとんどない 2.1%で減少している(p<0.05).

魚介類を用いた伝承的料理は,魚介類料理と同様に,食卓に上がる頻度は減っていると考える.魚

16 19

17 22 23 19

21 19 18 31 37 30 38 34 31

7 6 12 10 9

11

3 2 6 5 5 5

100% 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0

n = 4726 海 内陸 都市 海 内陸 都市 海 内陸 都市 海 内陸 都市 海 内陸 都市

貝の汁物 立田揚 ・ 唐揚 寿司 てんぷら 干物

好き 普通 嫌い 食経験なし 未回答

16 19

17 22 23 19

21 19 18 31 37 30 38 34 31

7 6 12 10 9

11

3 2 6 5 5 5

74 76

66 72 72 74 65 68 63 62

55 58 50 58 59

図5 海岸部・内陸部・都市部別伝承的料理の嗜好       海:海岸部 内陸:内陸部 都市:都市部           データは,1996年,2001年,2006年の調査の合計

(9)

介類の食卓頻度の減少は,水産庁のwebページでも報告されている1)

 2006 年の調査では,毎日魚介類が食卓に上がる幼児が好む伝承的料理は,貝の汁物,寿司,干 物,みりん漬,かば焼きで,その割合は週1回しか食卓に上がらない幼児より,10%以上高い値を 示した(表2,p<0.05).

 立田揚・唐揚,照り焼き,てんぷらの料理は,食卓頻度による影響が少なかった.これらの料理 は,食卓に上がる頻度が少なくても,好まれる料理と判断され,幼児の嗜好に合った料理といえ る.しかも,週1回程度の食卓頻度にかかわらず,その伝承的料理に対する幼児の好む割合は40%

以上を示していた.家庭では,食卓に提供してほしい料理と考える.

 1996年の調査では,いずれの料理でも毎日魚介類が夕食の食卓に上がる幼児は,週1回しかあが らない幼児より,伝承的料理を好む割合は高い値を示した.1996 年と 2006 年の調査結果を比較す ると,立田揚・唐揚,寿司,魚や貝の炊きこみ飯などを除く8種の料理は,1996年の調査の方が高 い値を示した.2006 年の調査では,食卓頻度は幼児の嗜好に影響するが,その関連性には前の調 査と異なる変化がみられると考えた.

6)保育者の調理の得意度

 2006 年の調査では,保育者が魚料理を得意と答えた幼児は,伝承的料理に対する嗜好が高く,

不得意とした幼児の好きな割合に比較して,3~30%以上高い値で好んだ (表2,p<0.05).伝承的 料理に対する幼児の嗜好と保育者の調理の得意度は関連していた.1996 年の調査と 2006 年の調査 を比較すると,立田揚・唐揚を除いた 11 種の料理では,1996 年の方が保育者が得意とした幼児の 好きな割合は 4%~12%高い値を示した.保育者の得意度に限らず,1996 年の方が伝承的料理の

表2 幼児の伝承的料理におよぼす夕食に上がる食卓頻度と母親の調理状況       (%)

項  目 夕食に上がる食卓頻度 母親の調理状況

調査年 1996 2006 1996 2006

伝承的料理 毎日 週1回 毎日 週1回 得意 不得意 得意 不得意

貝の汁物 83.6 77.5 77.0 59.5 85.6 74.3 73.1 57.6

立田揚・唐揚 76.2 69.5 78.7 74.6 80.2 70.7 85.7 80.0

照り焼き 75.2 63.6 67.8 63.3 85.6 85.4 73.9 57.6

寿司 69.2 59.4 75.3 64.4 73.9 62.3 73.1 61.9

てんぷら 66.8 59.9 60.3 61.4 70.3 61.8 68.1 55.2

干物 60.7 42.8 61.5 40.9 64.0 39.8 55.5 40.5

かば焼き 53.7 46.5 52.9 36.7 61.3 51.3 57.1 39.5

みりん漬 54.2 32.6 51.1 39.0 58.6 38.2 61.9 31.6

魚や貝の炊きこみ飯 52.3 40.6 56.3 33.7 56.8 42.4 51.3 34.8

味噌煮・味噌焼き 43.5 29.6 48.3 40.2 54.1 38.2 51.3 32.9

つみれ汁・すりみ汁 42.5 37.4 51.7 37.9 50.0 21.2 51.3 33.3

甘露煮・佃煮 29.9 28.3 36.8 26.5 31.5 34.6 29.4 28.6

南蛮漬 22.4 9.1 13.2 13.3 18.9 14.7 13.4 10.0

数値は幼児が伝承料理を好きとした割合(%) 1996年(n = 1418),2006年(n = 1342)

(10)

好きな幼児が多かったことを示している.2006 年の調査で,立田揚・唐揚の料理に対し,調理が 不得意な保育者の幼児の好きな割合は,1996 年の調査より高くなっていた.このことから,立田 揚・唐揚の料理は,中食および外食の利用が考えられる.保育者の調理の得意度は,幼児の嗜好に 関連しているが,食卓頻度同様にその関連性は変化しているといえる.調理をすることが少なく なったといわれる現在,これらの料理の伝承には,中食および外食,保育所給食も貢献しているこ とが推察された.

7)母親の魚介類に対する嗜好

 幼児の魚介類に対する嗜好には,母親の魚介類に対する嗜好が最も大きく影響する3, 4, 5, 6).母親 と嗜好との関連をみると,母親が魚介類に対して「大好き」と答えた幼児では,貝の汁物,立田 揚・唐揚,照り焼き,寿司,てんぷら,干物,かば焼きに対し,好きとした割合が 50~79%の高 率を示した.そのなかでは,貝の汁物,立田揚・唐揚,寿司は,「嫌い」とした母親の幼児にも好 まれた.つみれ汁・すりみ汁,甘露煮・佃煮,南蛮漬では,母親の嗜好と,幼児の嗜好は関与して いなかった.

 以上,伝承的料理に対する幼児の嗜好には,幼児の年齢および性,保育者の調理の得意度,夕食 に魚介類が上がる食卓頻度などが関連していた.しかし,2006 年の調査では,1996 年の調査とは 異なる傾向が見られ,中食などの食環境の影響が考えられた.

 そこで,1996 年,2001 年,2006 年の 3 回の調査から,幼児の伝承的料理に対する嗜好をクラス ター分析すると,伝承的料理 14 種は 8 群に分けられた.第 1 グループは照り焼き,立田揚・唐揚,

てんぷら,貝の汁物,寿司,干物で,第2グループはかば焼き,第3グループはみりん漬,味噌煮・

C A S E Label Num

0 5 10 15 20 25

  2   7   8 12 10   1   6   3   5 11 13 14   4   9 照り焼き

立田揚 ・ 唐揚 てんぷら 貝の汁物 寿司 干物 かば焼き みりん漬 味噌煮 ・ 味噌焼き つみれ汁 ・ すり身汁 寄せ鍋

魚と貝の炊きこみご飯 甘露煮 ・ 佃煮 南蛮漬

図6 クラスター分析による伝承的料理のデンドログラム

(11)

味噌焼き,甘露煮、佃煮、南蛮漬は各グループであった(図 6).この結果は,2006 年の調査と同 様であった.

 第1グループの伝承的料理は幼児に好まれ,伝承される可能性が強いと分析した.

4.まとめ

(1)1996 年,2001 年,2006 年の 3 回の調査の合計(対象者 4,726 名)より,幼児に好まれた伝承的 料理は, 貝の汁物 72.7%, 立田揚・ 唐揚 71.3%, 照り焼き 67.2%, 寿司 65.1%, てんぷら 58.0%,干物53.2%であった.

(2)幼児の伝承的料理の好まれる割合が 15 年間で高くなったものは立田揚・唐揚で,低下したも のは,貝の汁物,照り焼き,てんぷら,かば焼き,みりん漬,魚や貝の炊きこみご飯であっ た.

(3)年齢が高くなるとともに,好きな割合が増加した伝承的料理は, 寿司,立田揚・唐揚,てんぷ らであった.

(4) 干物,貝の汁物は女児に好まれ,かば焼き,てんぷらは男児に好まれていたが,2006年では性 による嗜好の違いはみられなかった.

(5)保育者の魚料理の得意度が高いほど,幼児の伝承的料理の嗜好は高かった.

(6) 立田揚・唐揚,照り焼き,てんぷら,寿司,貝の汁物は,食卓頻度,母親の嗜好,保育者の魚 料理の得意度に関連なく,魚介類が嫌いな幼児にも好まれる料理であった.

(7)クラスター分析の結果,第1グループに分類された料理は(照り焼き,立田揚・唐揚,てんぷ ら,貝の汁物,寿司,干物),幼児に好まれ,伝承される可能性があると判断された.

謝辞

 1991 年,1996 年,2001 年,2006 年にアンケートに御協力いただきました全国 26 地区の保育所お よび通所する幼児の保護者の方々に深謝いたします.それらの保育所をご紹介くださいました市役 所栄養課に在籍する栄養士の皆様方に,感謝いたします.

引用文献

1)水産庁:http ://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h20_h/trend/1/t1_12_1_1.html

2)国民健康・栄養調査のHP:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html 3)峯木真知子.魚介類及びその伝承的料理に対する幼児の嗜好調査.青葉学園短期大学紀要.1993,

Vol.18,p.47-52.

4)戸塚清子,峯木真知子,井戸明美.魚介類およびその料理に対する全国保育園児の嗜好とそれに影 響する要因.日本調理科学誌.2001,vol.34,No.2,p.205-213.

5)峯木真知子,棚橋伸子,戸塚清子.魚介類およびその料理に対する全国保育園児の嗜好(2001年).

日本家政誌.2005,Vol.56,No.12,p.857-865.

6)峯木真知子, 戸塚清子.魚介類及びその料理に対する全国保育園児の嗜好(2006年). 日本家政学 会誌.2011,Vol.62,No.6,p.387-394.

(12)

7)志垣瞳,池内ますみ,小西冨美子,花﨑憲子.大学生の魚介類嗜好と食生活 . 日本調理科学誌.

2004,Vol.37,No.2,p.206-214.

8) 飯島由美子, 関口紀子. 高校生の魚の嗜好と食生活. 東京家政大学研究紀要.2002,Vol.42,

No.2,p.1-10. 

9)田口和子,長野みさを,浅井直美.食生活の中の魚についての一考察(第 2 報).名古屋文理短期 大学紀要.1995,Vol.20,p.99-109.

10)根立恵子他 3 名.女子大学生の日常食における魚類と肉類の利用状況および利用におよぼす要因.

日本調理科学誌.2012,Vol.45,No.3,p.215-222.

11)湯川夏子,小谷由美.家庭の食卓における魚離れの実態と要因.食生活研究誌.2009,Vol.29.

No.6,21-25.

(13)

参照

関連したドキュメント

食)であった。弁当一食あたりの総 PCBs 摂取量 は、主菜とする魚介類の種類により大きな違いが 認められた。総 PCBs 摂取量の中央値が最大で

との関連が注目を集め、平成 15 年には、魚

のもので、このうち、体重の記録のなかった データ(青年 3 件、成人 27 件)を除く、小児 1619 件、学童 3419 件、青年 2539 件、成人 32787

現代の子どもたちの身の周りには,人工的に作られた電

回っていると言う状況からも言えるように,若年層での

有意に多く、140bpm の音刺激を嫌う人が有意に多か

しかし、この SFFQ には、青年期女性の摂取頻度

指標であるbody