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災害時の住民避難支援機能の構築

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Academic year: 2021

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災害時の住民避難支援機能の構築

-時空間情報処理による危機管理技術の研究開発(3)-

古戸 孝,山田 博幸,佐々木 光明,角本 繁

Development of Evacuation Support System for Disaster Mitigation

- Spatial Temporal Information handling for Risk Management (3) -

Takashi FURUTO,Hiroyuki YAMADA,Mitsuaki SASAKI,Shigeru KAKUMOTO

Abstract: Our studies are intended to assist the municipality and people in disaster areas. We examined transit plan for evacuate residents to safer areas. We covered confirmation of the safety of people in evacuation center. We will establish a system using the spatial temporal GIS "DiMSIS".

Keywords: 避難所(evacuation center),経路検索(path search),

時空間地理情報システム(spatial temporal GIS)

1.はじめに

地震災害を始めとする多くの自然災害時に被災 地の住民は,住居が使用困難になることや,続く 災害への不安などの理由から,身の安全確保のた め避難所へ避難する.一般的に避難所は,事前に 災害時に安全と思われる施設を避難所として予定 しており,例えば震災の場合,予定していた施設 の被害が少ないことや火災の恐れがないことが,

避難所開設の条件になる.その条件は,自治体職 員や支援者が,災害直後に避難所を含む各地の被 害状況を調査し,その情報に基づき災害対策本部

で決定される.しかし, 2007 年 7 月の新潟県中越 沖地震時のように,台風と地震が同時期に発生す ることや余震が続くことなどにより,安全と思わ れていた避難所が,時間経過とともに使用できな くなることも予想される.災害発生時の救援物資 供給が,迅速にかつ適切に行われることは被災地 住民の支援に結びつき,結果として復旧が円滑に 行われるなど被害軽減につながるが,支援物資の 供給は,住民の安全が確保されてから開始するも のであり,住民をより安全な場所に避難させるこ と,住民の命を守ることが第一に優先されること である.

古戸:〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通 1-5-2 本稿では,災害時の自治体および住民支援を目 的とし,地理情報システムを利用した住民避難支 援機能の構築に関して,その詳細を報告する.前 報の「時空間情報処理による~(2)」からの連続発 表である.

独立行政法人 防災科学技術研究所 防災システム研究センター

地震防災フロンティア研究センター

Tel:078-262-5530 Fax:078-262-5527

e-mail:[email protected]

(2)

2.住民避難支援機能

被災地域の住民が最初に避難する場所を 1 次避 難所とし,1 次避難所より安全性の高い場所を 2 次避難所と定義し説明する.

住民避難支援機能は,1 次避難所に避難した住 民を 2 次避難所に避難させる支援のひとつとして,

自治体の有する車両を用いた輸送計画立案を実現 する.現実に即した機能実現のためには,処理対 象情報である,避難住民情報を収集することから 始めることが必要であり,そのため,機能は,

・支援される側の避難所

・支援する側の災害対策本部

の 2 箇所に設ける必要がある.迅速で正確な対応 が求められると共に,状況は時間経過と共に変化 するため,避難者数などの数値情報を地図上に視 覚表現できる地理情報システムの利用や,情報の 時間管理,さらに,実情報に基づく処理結果更新 が必要であると推測される.

著者らがこれまで被災情報の収集に関する研究 などを行ってきた情報システムである DiMSIS

( Disaster Management Spatial Information

System,畑山ほか, 1999)は,時間と空間で情報

が管理できる時空間地理情報システムであるため,

住民避難支援機能は,DiMSIS を基盤システムと して検討および構築を進めることとした.

2.1.データ整備

適切な住民支援を実施するには,事前の関連デ ータ整備が必要である.現在,入手・利用可能で 全国が整備されている地図データとして,国土地 理院の数値地図 2500 および数値地図 25000 や国 土交通省が整備している国土数値情報の地形分類 データは,DiMSIS のデータとして全国的にシー ムレスに整備している(角本ほか,2003).自治 体の管理する詳細データより精度は劣るが,大ま かな状況把握や応援準備には十分利用できると考 える.

住民避難支援においては,これらに加え,通行

経路算出のための道路ネットワークデータが必要 である.今回の機能構築においては,モデル自治 体の都市計画図から道路中心線を作成し,そこか ら道路ネットワークデータを生成したが,災害対 応のためには,地図データ同様に全国データの整 備が必要となる.

2.2.避難所機能

避難所においては,通常,受付=安否確認が実 施される.また,体調や負傷の確認も同時に実施 される.

これまで,

・情報処理システムを利用した安否確認

(集計が正確かつ容易・迅速)

・地理情報処理システムを利用した安否確認

(地図上で住居を特定し,居住者情報に基づい て確認.確認作業が容易・迅速)

・QR コードを利用した安否確認

(事前に住居位置をコード化した用紙を配布.

QR コードリーダーでコードを読み取り居住 者情報に基づいて確認.確認作業が容易・迅 速)(佐々木ほか,2006)

を行い,防災訓練などでの実験を通じて,その有 効性を確認してきた(佐々木ほか,2006).これ らの情報は住民の情報であり,住民避難支援機能 の支援対象者情報となる.

また,被災地の住民の多くは,被災現場を通っ て避難所に避難するため,道路に関する被害情報 を有していると考えられる.そこで,避難所側の 住民避難支援機能には,道路通行情報登録機能を 加えた.道路通行情報は,直前から数時間前のこ ととはいえ,人の記憶に頼る情報であるため,あ いまいさが残り,同じ道路に対し,通行出来た,

出来なかったの,反する情報が発生する可能性が

高い.この問題解決のためには,情報の時間管理

が有効と考える.多数意見を正確情報とすること

もひとつの方法であるが,時間で情報を整理する

ことにより,途中で土砂災害が発生し通行不可に

(3)

なったなどの,状況変化をつかむことが可能とな ると考える.

2.3.災害対策本部機能

災害対策本部においては,住民の輸送計画立案 を実現する.道路ネットワークデータから輸送経 路を算出し,住民の避難情報や輸送車両情報に基 づき輸送計画を立案する.輸送計画立案処理の流 れを図1に示す.

2.3.1.道路ネットワーク確立処理

道路ネットワークデータには,距離情報に加え,

重み付け情報を持つ.重み付け情報は,道路の通 り易さを表現するもので,本機能では,距離に対 す係数として利用している.即ち,通常を 1 とし て,係数が大きいほど通行困難な道路としている.

また,道路崩壊などの通行不可道路には,99999 を設定し,特殊コードとして通行不可を表現して いる.

この重み付け情報は,平常時では,道路工事情 報であり,災害時は,道路崩壊,橋梁被害,土砂 災害などの情報が加わる.被害調査が行われてい

ない箇所に関しては,被害推定結果を適用する.

本機能構築においては,著者らが参加した研究 プロジェクトの成果を活用し,地震発生時におい ては,気象庁から提供される緊急地震速報や地震 計からの情報に基づき橋梁被害推定など各種の被 害推定を行い(防災科学技術研究所 川崎ラボラト リー,2007),初期条件として,重み付け情報を 設定する.これに対し,避難所で収集された通行 情報や,災害直後から自治体職員などが被災現場 で収集する情報に基づき,重み付けを更新する.

これにより,道路ネットワークデータが確立する.

データの性質上,距離=重み付けであるため,係 数として重み付け格納領域を設けることは,メモ リやファイルの非効率的利用のように感じるが,

道路補修工事などで通行不可道路が通行可能にな るなど,状況=重み付け情報が変化するため,前 の情報を記憶する必要がなく,効率のよい処理に つながると推測される.

道路ネットワーク確立処理

輸送経路算定処理

輸送計画処理

輸送計画

道路ネットワーク

通行情報(橋梁,

道路) 道路ネットワーク

(重み付け)

1次,2次避難所 位置

輸送車両初期位

輸送経路情報

(車両:避難所,避難所間)

輸送計画

(ガントチャート)

避 難 所 情 報 ( 避 難者数)

車両情報(位置,

速度,輸送力)

2.3.2.輸送経路算定処理

住民避難のための輸送は,迅速であることが重 要であるため,輸送経路算定処理の基本は,最短 経路を見つけることである.最適経路検索などの 基本技術は確立されているため,本機能構築にお いても,代表的なダイクストラ法を用いた.構築 した処理は,前述の通り輸送計画立案に用いるた め,重み付けされた道路ネットワークデータから,

1 次と 2 次の避難所間の経路および車両初期位置 と 1 次避難所間の経路を算出する.

図1 輸送計画立案処理

また,大規模な地震が起きた場合など,避難・

救助をはじめ,物資の供給,諸施設の復旧等広範 な応急対策活動を広域的に実施するため,非常事 態に対応した交通の確保を図ることを目的に,重 要な路線は緊急輸送道路として定まっている.

これらの路線は,緊急時において,応急対策活動

のため一般の交通を規制することがあるため,優

先道路としての処理(特殊な重み付け)が行える

工夫が必要になると考える.

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2.3.3.輸送計画処理

本処理は,算出した輸送経路情報,避難所情報 および車両情報から輸送計画を求める.輸送計画 処理の流れを図2に示す.

開始

終了

避難残人数> 0

車両台数 現在地から最も近く 避難者が残る 1次避難所選択

現在地更新 避難所内避難者 残人数更新

1次避難所から最も近く 避難余裕がある 2次避難所選択

厳密に輸送計画を求めると,すべての組み合わせ の解を求める必要があるため膨大な処理時間を要 することが予想されるため,非現実な処理と考え られる.災害対策本部での利用を考えた場合,状 況は時々刻々変化することから,処理速度が重視 され,処理条件を変えて何度も実行されることが 予想される.そこで,本処理では,各時点で最良 のものを選択することを繰り返すことによって全 体として最良のものを求める手法であるグリーデ ィ法を用い,処理速度を優先させた処理を実現し た.輸送計画結果は,世の中で多く利用されてい る表計算ソフトで利用可能な形式でファイル出力 した.

3.まとめ

災害時の住民支援を目的とし,地理情報システ ムを利用した住民避難支援機能を構築した.地理 情報システムを利用することで,空間演算により 道路状況が適切に更新できたとともに,避難者や 道路情報を時間管理することが,現実に即した機

能実現に繋がることが確認できた.

今後は,近傍検索処理を活用し,避難住民が歩 いて移動してからの輸送を考慮することや,必須 情報と付加情報を分析・分類することで,入手情 報に応じた処理を可能とするなど,実用化可能な 処理への拡張を図りたいと考える.また,住民避 難の直後に発生する救援物資供給への応用も検討 していきたい.

参考文献:

防災科学技術研究所 川崎ラボラトリー(2007)

Ⅲ1.震災総合シミュレーションシステムの開発 総括報告書,文部科学省大都市大震災軽減化特別 プロジェクト

山田ほか(2006)減災に資する時空間 GIS による 都道府県と市町村の連携-減災のための時空間情 報処理(2)-,地理情報システム学会講演論文集 Vol.15,123-126.

図2 輸送計画処理

佐々木ほか(2006)QR コードを使用した避難者か ら の 被 災 情 報 収 集 方 式 , 地 域 安 全 学 会 梗 概 集 N0.19(2006),1-4.

古戸ほか(2006)震災時の救援物資供給に関する検 討-減災のための時空間情報処理(4)-,地理 情報システム学会講演論文集 Vol.15,131-134.

山田ほか(2004)自治体の地震防災に貢献する防災 情報システムの構築に関する研究,地域安全学会 論文集,No.6,67-74.

角本ほか(2003)全国統合時空間データベース基盤 の構築-大震災被害軽減化のための時空間情報シ ステム(2)-,地理情報システム学会講演論文 集 Vol.12,145-148.

畑山ほか(1999)時空間地理情報システム DiMSIS

の開発, GIS-理論と応用,Vol.7:No2,25-33

参照

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