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ガイドライン作成の経緯

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Academic year: 2021

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Ⅰ章 はじめに

 がん患者の消化器症状は種類も多く原因もさまざまである。今回,「消化器症状の ガイドライン」を作成するにあたっては,緩和ケア領域においてしばしば問題とな る嘔気・嘔吐について病態生理の解説と治療についての推奨を中心にまとめた。一 方,悪性腹水自体は「腹部症状」を生じる独立した病態であるが,本ガイドライン においては,消化管閉塞やそれに伴う嘔気・嘔吐あるいは腹満感などの消化器症状 を合併しやすい病態であることから,関連する特定の病態として治療法を取り上げた。

 嘔気・嘔吐の原因には,手術や化学療法あるいは放射線治療などのがん治療に伴 うもののほか,がん性疼痛に対するオピオイドなどによるものが比較的多くみられ る。早期からの緩和ケアの提供という視点に立てば,がん患者の体験する嘔気・嘔 吐すべてに対する診断から治療法についての考え方を網羅している必要があること はいうまでもない。

 しかし,本ガイドラインの作成過程において,日本癌治療学会編『制吐薬適正使 用ガイドライン』が先行して刊行され,がん治療に起因する悪心・嘔吐についての 整理がなされたことや,昨年本学会より刊行された『がん疼痛の薬物療法に関する ガイドライン 2010 年版』において,オピオイドによる嘔気・嘔吐や便秘について詳 細に取り扱われていることから,これらのガイドラインとの重複を避け,今回は本 ガイドラインの範囲としないとされた経緯がある。このような症状ガイドラインの 編集方針については議論のあるところであるが,早期から終末期までの緩和医療を 包括する「消化器症状のガイドライン」として,がん治療やオピオイドによる副作 用を含めるべきかどうかについては,次回改訂の課題として引き継いでいきたい。

また,症状を取り扱うガイドラインの宿命として,他の領域の病態や治療と大きく 重なることは避けられない。独立した学会としてのガイドラインであると同時に,

がん治療に関わる領域とのコンセンサスを形成しながらガイドラインを作成してい く仕組みづくりが求められていると感じている。

 ガイドライン作成作業は,過去における科学的な根拠を検証し,現段階での標準 的な治療の合意形成を行っていくものである。今回の作業もその手法に従ったが,

消化器症状においても他の症状と同様に科学的根拠は極めて不十分であり,今後の 改訂に向けて基礎および臨床研究の積み重ねを進めることは学会としての責務であ る。この分野に関わるすべての医療者に強く協力を求めたい。

 本ガイドラインの作成にあたって,前ガイドライン委員長の志真泰夫先生や執筆 を担当していただいた先生方,またデルファイ作業や評価に携わってくださった多 くの方々のご協力に深謝したい。原稿の取りまとめに際しては,消化器症状ガイド ライン作業部会長の新城拓也先生の大変な努力と工夫によるところが大きい。この 場を借りて感謝したい。また,短い時間での編集作業にきめ細かく対応していただ いた金原出版株式会社編集部の吉田真美子さん,編集部長の小林一枝さんにも感謝 を伝えたい。

(的場 元弘)

ガイドライン作成の経緯

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