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学童保育指導員による性暴力と虐待の発見要因

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52 (52一一59) 小児保健研究 研

学童保育指導員による性暴力と虐待の発見要因

一学童保育指導員へのインタビュー調査を基に一

谷野 宏美1・4),鈴井江三子2),久我原朋子3),池田 理恵3)

〔論文要旨〕

 子どもへの性暴力や虐待を発見した(または疑った)経験がある学童保育指導員(以下,指導員とする)を対象に,

半構造的聞き取り調査を行い,どういつだ状況で発見したのかを明らかにした。その結果,発見した指導員の特徴 として,教員免許や保育下等の資格を有し,経験年数の長い者が多くの事例を発見していた。子どもへの性暴力や 虐待の発見要因としては,『子どもからの直接的な訴え』,『子どもからの間接的な訴え』,『子どもの日常生活状態 の観察』の3つのカテゴリーが抽出された。このうち,性暴力の発見は,『子どもの日常生活状態の観察』のみに よるものであった。被害児童の特徴として,小学校低学年の子どもが多く,男女別の性差はなかった。一方,加害 者の特徴として,虐待の場合は母親や父親または母親の恋人,兄弟等であったが,加害者が単独で虐待をするより

も,複数の家族構成員が加害者となっている場合も多かった。

 以上,性暴力と虐待の発見要因は,指導員の資格取得の有無や経験年数に影響されていることが示唆された。

Key words:学童保育指導員,性暴力,虐待,発見要因

1.謡

 平成12年5月に「児童虐待の防止等に関する法律(以 下,児童虐待防止法)」が制定され,同年11月より施 行された。同法の制定に伴い,児童虐待への関心は高 まり,平成20年度の児童相談所の虐待相談件数は4万 件を超え,児童相談所における養護相談の50.8%を占 めていた。発見される虐待の多くは身体的虐待であり,

最近ではネグレクトの件数も増加している1)。被虐待 児童の37.1%が小学生であり,特に,子どもが死に至る 事例も決して少なくないことから,小学生を対象とし た児童虐待対策が喫緊の課題であると指摘されている。

 一方,子どもへの虐待のなかで,子どもへの性暴力 の占める割合はかなり低く,虐待総数の3%であり,

割合が僅かであることから,その対策は遅れがちであ る。子どもへの性暴力に関する実態調査2)では,約5 割の性暴力被害は学童期の子どもであり,加害者は身 近な存在の年長者であった。そして,加害者による口 止めが性被害を長期化させ,早期発見が難しく,被害 を深刻化させていることが明らかとなっている。さら に性暴力や虐待を体験した女性は自己肯定感が低い傾 向にあり,妊娠,出産,育児に影響があると指摘され ている。すなわち,子どもへの性暴力の早期発見は,

健やかな母子の発育・発達を促すうえでも重要なこと

The Discovery Factors about Child Abuse in the Children of School Period 一 lnterview lnvestigation to the Elementary School Childcare lnstructors 一 Hiromi TANiNo, Emiko Suzui, Tomoko KuGAHARA, Rie IKEDA

1)川崎医療福祉大学医療福祉学研究科保健看護学専攻(博士後期課程)

2)兵庫医療大学看護学部看護学科(助産師/教育職)

3)川崎医療福祉大学医療福祉学部保健看護i学科(助産師/教育職)

4)新見公立大学看護学部看護学科(助産師/教育職)

別刷請求先:谷野宏美 新見公立大学看護学部看護学科 〒718-8585岡山県新見市西方1263-2       Tel:0867-72-0634 Fax:0867-72-1492

   (2254)

受付107.9 採用119.7

(2)

であると考える。

 したがって,本研究では,被害を受けやすい小学生 の子どもたちが受けている性暴力や虐待について,発 見しやすい立場にあると考えられる指導員を対象に聞 き取り調査を行い,子どもへの性暴力および虐待の早 期発見要因を明らかにした。

 なお,虐待防止法では暴力の加害者である虐待者は,

保護i者(親権を行うもの・未成年後見人など)に限定 している。一方性暴力の加害者は,統計上保護者以外 からの暴力が多いため本研究では,性暴力と虐待と区 別して用いることにした。

皿.研究方法 1.調査対象施設

 A県内にある全国学童保育連絡協議会加盟施設のな かで,協力の同意が得られた12施設とした。

2.調査対象者

 同意の得られた12施設において,性暴力または虐待 を発見した経験があると答えた指導員で,本研究への 協力が得られた16名とした。

3.調査方法

 インタビューガイドを用いた半構造的インタビュー 調査とした。この際調査対象者の同意を得て,録音

とフィールドノートへの記載を行った。

4.調査内容

 性暴力または虐待を発見した際の子どもの状態,状 況,および対応方法等であった。

5 調査期間

平成21年5月から同年12月まで。

6.分析方法

 質的帰納的分析方法を用い,調査内容をすべて逐語 録とし,それを基に分析基礎表を作成し,カテゴリー 別に分類した。

7.倫理的配慮’

 A県学童保育連絡協議会事務局長に電話連絡し,調 査内容について口頭と書面により説明を行った。その 際紹介された学童保育施設の施設長に面談を申し入

れ,研究内容について口頭と書面により説明を行った。

同意後保護者を対象に本研究目的と内容について書 面により説明し,同意をとった。そして,調査対象者 からはインタビュー開始前に口頭で説明し,「研究協 力同意書」への署名・捺印を得た。インタビューは指 導員や被害児童のプライバシー保護のため第三者の入 らない個室で行い,調査に登場した子どもや家族お よび指導者等の個人が特定されないように,調査内容 をすべてデータ化した。また,同意撤回書とデータ管 理およびデータ処理の方法についても説明を行った。

 なお,本研究は川崎医療福祉大学倫理委員会(審査 番号134)の承認を得て実施した。

8.用語の定義

 性暴力とは保護者と保護者以外の者が,性的暴力を 行った場合をいい,虐待とは虐待防止法による虐待者 からの暴力をいう。

皿.結

1.対象者の属性(表1)

 対象者は全員女性で,年齢幅は34歳から58歳であり,

主任的立場であった。経験年数幅は3~30年で,取得 資格は教員免許のみ9名,保育士のみ4名,教員免許

表1 インタビュー対象者の属性

経験年数 年齢 資格 指導員数

1 14年目 49歳 保育士 6名

2 10年目 43歳 保育士 11名

3 8年目 52歳 小・中学校教諭 6名 4 5年目 47歳 小学校教諭・養護教諭 8名

5 10年目 43歳 保育士・幼稚園教諭2級 8名

6 9年目 47歳 なし 4名

7 6年目 50歳 小学校教諭 8 6年目 34歳 小学校教諭

5名

9 6年半 58歳 中学校教諭(音楽) 4名

10 8年目 51歳 保育士・幼稚園教諭 11 3年目 54歳 小学校教諭

E高校教諭 7名

12 5年目 36歳 保育士

13 4年目 48歳 中・高校教諭

14 23年目 57歳 小・中学校教諭 8名

15 30年目 51歳 中学校教諭(美術) 7名

16 7年目 47歳 保育士 2名

(3)

54 小児保健研究

と保育士2名,無資格者1名であった。

2.発見者である指導員の特徴(表2)

 性暴力・虐待を発見した指導員は,小中学校教諭・

高校教諭の教員免許や保育士,幼稚園教諭など子ども の教育に関わる資格を有する者であった。さらに主任 的立場にある者が多く,指導員としての経験年数が3 年以上の者であった。

3.虐待の実態と被害児童,および加害者の特徴(表3)

 虐待の事例は発見された23件であり,このうち身体 的虐待は10件と最も多く,次いでネグレクト6件,心

理的虐待3件,性暴力3件,身体的虐待とネグレクト 1件であった。被害児童は女児11名,男児9名,不明 3名であり,学年は1年生6名,2年生5名,3~4 年生1名,5年生1名,6年生2名,不明8名であっ た。一方,加害者は母親のみ9件,両親と兄弟,母親 とその恋人等複数の家族構成員によるもの7件,父親 のみ2件,中学生男子1件,不明4件であった。

 つまり今回の調査では,子どもへの性暴力や虐待の 被害児童は小学校の低学年が多く,加害者は単独とい うよりも,複数の家族構成員で虐待をしている場合の 多いことが明らかになった。

表2 虐待事例と発見した指導員

被害児童

 発 見 要 因

宦≠閨C×=なし 発見した指導員 虐待の

嵭゙

事例番号

加害者

子どもからの

シ接的訴え

子どもからの

ヤ接的訴え

子どもの日 岦カ活状態

@の観察

指導員

ヤ号

経験

N数 資格

学 年 性別

1 5年前 女児 実母・兄

× 3 8年目 小・中学校教諭

5 不明 女児 母親 × 7 6年目 小学校教諭

9 2年生 女児 母親 ×

×

15 30年目 中学校教諭(美術)

20 6年生 女児 母親・弟

× 1 14年目 保育士

2 1年生 男児 父親・祖父 × 3 8年目 小・中学校教諭

身体的虐待

@(10) 6 不明 男児 父親

× × 7 6年目 小学校教諭

7 3~4年生 男児 両親 × 2 10年目 保育士

15 不明 男児 父親 × ×

10~13 3~8年 保育士・幼稚園教諭・

ャ・中・高校教諭

11 1年生 不明 不明 × × 4 5年目 小学校教諭・養護教諭

17 不明 不明 父親・母親の彼氏

× 14 23年目 小・中学校教諭 身体的虐待+

lグレクト

@ (1)

18 1年生 女児 母親 ×

1 14年目 保育士

3 不明 女児 母親 ×

3 8年目 小・中学校教諭

10 2年生 女児 母親

15 30年目 中学校教諭(美術)

19 1年生 女児 母親

1 14年目 保育士

ネグレクト

@(6) 14 1年生 男児 母親・同居男性 × 4 5年目 小学校教諭・養護教諭

16 不明 男児 母親 × ×

14 23年目 小・中学校教諭

8 不明 不明 母親

× 2 10年目 保育士

4 6年生 女児 母親 × 3 8年目 小・中学校教諭

心理的虐待

@ (3) 12 2年生 女児 不明 × × 4 5年目 小学校教諭・養護教諭

23 不明 男児 母親・祖父母 ×

× 2 10年目 保育士

13 1年生 男児 不明 × × 4 5年目 小学校教諭・養護教諭

性暴力

@(3) 21 2年生 男児 不明 ×

4 5年目 小学校教諭・養護教諭 22 2年生 女児 中学生男子 × × × 4 5年目 小学校教諭・養護教諭

(4)

表3 虐待事例と発見要因

 

発 見 要 因 被害児童

子どもからの直接的な訴え 子どもからの間接的な訴え 子どもの日常生活状態の観察

虐待の種類 事例番号

学年 性別

加害者       1qどもからのi

@ 発話 iO=あり, ;ごまかす内容x=なし, i△=ごまかすi      闘

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体的虐待(10)

年生 親・祖父  i 言・暴力i   i    i   i   i

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@        l         l         ll

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5  明

 i   旨       ll

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@         l

      i      i      iお迎え時の兄i

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1 年生  i 言・暴力i   i    i   i   i

7  明 父親・母eの彼氏

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体的虐待+ネグレクト(1)

8 年生

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@    l      l      i      l 

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グレクト(6)

9 年生

 i   ;     ;         ;暴

セ・暴力i    i     l         l

えたようにi     l     i     i食べる  i    i    i    i

4 年生 薯j性親・同

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暴力(3)

1 年生

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2 年生 学生男子  1    l    i   i   l

.子どもへの性暴力および虐待の発見要因(表4)

どもへの性暴力または虐待の発見要因は,『子ど からの直接的な訴え』,『子どもからの間接的な訴

』,『子どもの日常生活状態の観察』の3つのカテゴ ーが抽出された。以下に,これら3つのカ.テゴリー

,それぞれのサブカテゴリーおよび具体的な内容に いて説明する。なお,結果の表記について,カテゴ ーを『』,サブカテゴリーを【】,具体的な内容

「」として示す。

(5)

56 小児保健研究

表4 発見要因のカテゴリー分類

カテゴリー サブカテゴリー 具体的内容

叩かれた 子どもからの発話

ご飯をくれなかった

子どもからの直接的な訴え 他の子とぶつかった

ごまかしの内容 箪笥,友人にぶつかった 転んだ

暴言・暴力行為 帰宅拒否 子どもの言動

無断外出

虚言癖・窃盗行為 アザ

身体症状 自傷行為

アザと成長発達の遅滞 子どもからの間接的な訴え

休日明けに発見 不自然な部位にアザ

古いアザと新しいアザが混在 アザの状態 スカートを引き裂く

手や爪を噛む

発 見 要 因

ハサミで腕を切ろうとする 抜髪

異常な空腹状態

床に落ちたものを拾って食べる 不適切な食事摂取の方法

飢餓による腹痛

飢餓状態のような食べ方 毎日同じ服

不衛生な服装

サイズの合わない服 紙おむつや紙パンッ着用 子どもの日常生活状態の観察

不適切な排泄

悪臭がする 性器いじり

マスターベーション 子どもの性的な行動 放尿

性器の露出 女児への性的行為 兄からの情報 送迎時の親・家族からの情報

祖父母からの情報

1)『子どもからの直接的な訴え』

 『子どもからの直接的な訴え』は,【子どもからの発 話】,【ごまかしの内容】の2つのサブカテゴリーが抽 出された。

 【子どもからの発話】は,「叩かれた,ご飯をくれな かった」と直接,子どもが指導員に対して虐待内容を

話すものが7名あった。しかし,その一方で,身体に アザ等の不自然な状態が認められ,それに対して指導 員が質問しても全く原因を言わない子どもが12名であ り,指導員に虐待の事実を訴えた子どもより訴えない 子どもが多かった。

 【ごまかしの内容】は,指導員がアザ等を見つけ,

(6)

その理由を尋ねた際に,「他の子どもとぶつかった」,

「箪笥,友人にぶつかった」,「転んだ」と答え,受け た虐待の事実を隠している子どもが4名いることがわ かった。また,「お母ちゃんには絶対言わないで」と いう事例もあり,子どもが指導員に事実を話したこと を親には絶対知られたくない状況もあった。

 以上,約7割の子どもは,指導員が虐待の事実を尋 ねても何も話をしないか,嘘をついてごまかすことが 明らかになった。

2)『子どもからの間接的な訴え』

 『子どもからの間接的な訴え』は,【子どもの言動】,

【身体症状】,【アザの状態】の3つのサブカテゴリー が抽出された。

 【子どもの言動】は,「てめえ,死ね」,「消えろ」等,

友人たちに向けて益せられる「暴言・暴力行為」6名,

「帰宅拒否」1名,「無断外出」1名,「虚言癖・窃盗行為」

1名であった。このうち「暴言・暴力行為」は,些細 なことでカッとなり,他の子どもを蹴飛ばし,物を投 げつけるものであり,一一旦怒り出すと,指導員が止め に入らないと止まらないぐらい殴り続ける子どももい た。「帰宅拒否」は,親が迎えに来ても学童保育施設 から帰りたがらず,指導員にしがみついて帰ろうとし ない,であった。「無断外出」は,学童保育中,指導員の 許可を得ずに勝手にコンビニ等外へ出かけたり,動物 舎で遊んでいる,であった。「虚言癖・窃盗行為」は,友 だちのお金を取って買い物に行こうとした,であった。

 以上,虐待を受けている被害児童のうち,約半数の 子どもは暴言・暴力行為を友人に行う,または集団生 活の中で逸脱行為がみられ,友人との関係性を上手に 構築するのが難しかった。そして,それは性別に関係 のないことがわかった。

 【身体症状】は,「アザ」6名,「自傷行為」3名,「ア ザと成長発達の遅滞」1名であった。

 【アザの状態】は,週末や祭日等の「休日明けに発見」

される傾向にあり,アザの部位は足の裏,下腿側面,

眼の周辺,頬背中,腹部側面等,通常転倒や打撲等 では接触しない「不自然な部位」に認められていた。

また「アザ」が絶えない,古い「アザ」の上に新しい「ア ザ」が重なって出現するなど,頻繁に「アザ」が発見

されていた。「自傷行為」は「スカートを引き裂いた」

り,「手や爪を噛む」,または「ハサミで腕を切ろうと する」等であった。この自傷行為は,3名とも女児で あり学年に関係なくみられたものであった。また,自

傷行為をしていた3名は,加害者は母親2名,不明1 名であり,母親から受けた暴力行為について指導員に は何も伝えていなかった。そして,これらのアザや自 傷行為による傷は,服の上からみられる場合もあれば 下校時の更衣時に見つかる場合も多かった。

3)『子どもの日常生活状態の観察』

 『子どもの日常生活状態の観察』では,【不適切な食 事摂取の方法】,【不衛生な服装】,【不適切な排泄】,【子

どもの性的な行動】,【送迎時の親・家族からの情報】

の5つのサブカテゴリーであった。

 【不適切な食事摂取の方法】は,「異常な空腹状態」

を訴える,「床に落ちたものを拾って隠れて食べる」,

「飢餓による腹痛」を訴える,「飢餓状態のような食べ 方」をする等であり,これらの状態がみられる子ども が6名であった。

 【不衛生な服装】は,「毎日同じ服」や「サイズの合 わない服」を着て登校し,衣服の洗濯もみられず,シ ミや汚れが付いたままの服装を何日も着ている子ども が3名であった。

 【不適切な排泄】は,ズボンの下にパンツを着てお らず,「紙おむつや紙パンツをはかされて」おり,何 時間も交換していないために「悪臭を放つ」男児が2 名であった。

 そして,不適切な食事摂取の方法や不衛生な服装,

または不適切な排泄方法等のネグレクトの徴候は,そ れのみが単独で出現するのではなく,アザや自傷行為 等と複合的に出現する場合も多くあり,親が児童虐待 をする際は,多様な方法で暴力を加えていることがわ かった。

 【子どもの性的な行動】は,3名の被害児童にみら

れ,「性器いじり」,「マスターベーション」,「放尿⊥「性 器の露出」,「女児への性的行為」等は,2名の男児に みられた。また,男児2名については,性器への関心 が小学校1年のころから目立ってあり,数名の子ども たちを誘ってトイレの中で性器を露出していた。

 これ以外に,中学生の男子と一緒にトイレから出て きたところを見つかり,女児へのいたずらが発覚した ものが1名であった。これら3名については,指導員 が見つけてようやくわかったものであり,それまでは 子どもたちは全く話をしなかった。

 以上のことから,子どもへの性暴力や虐待は,子ど もからの直接的な発話・訴えや,アザ・外傷や自傷行 為等の間接的な訴えにより,子ども自身の行動を観察

(7)

58

することで発見できるものであることがわかった。ま た,食事,服装,排泄等,子どもの基本的生活動作に 関しても指導員の観察により,児童虐待の徴候が発見 できることがわかった。しかし,性暴力に関しては,

指導員が偶然その場を見つけることにより発見できた ものであり,発見しても子どもはなかなかその事実を 言わず隠す傾向にあった。つまり,性暴力は,他の身体 的虐待,心理的虐待,ネグレクトに比して,子どもは 何も言いたがらないことがらであることがわかった。

 【送迎時の親・家族からの情報】は,子どもを迎え に来た親や「兄弟,祖父母からの情報」により,虐待 の事実や傾向を知ることが可能であった。例えば,兄 が迎えに来た時,弟が父親に必要以上に殴られること や,祖父母の話により食事は母親が作らず毎日子ども がコンビニに買いに行く等,虐待の様子を語っていた。’

また,迎えに来た親を見ると指導員の身体にしがみつ き,帰りたくないと脅える子どももいた。

 子どもと家族との関わりを観察する中で虐待,また はその兆候を発見することがわかった。

 以上のことから,性暴力・虐待を発見する要因には,

子どもに関する何らかの資格を有し,子どもに関する 教育を受けている者がより発見しやすいといえる。ま た指導員としての経験が,子どもの観察や性暴力・虐 待を発見する際に有効に働いていると考えられる。

1V.考

1.複数の家族構成員によって行われる多様な虐待と,

 被害児童の特徴

 今回の調査では,虐待を受ける被害児童は小学校低 学年が多い傾向にあり,加害者の特徴としては単独で は母親が最も多かった。これは,平成20年度の「児童 相談所虐待相談における主たる虐待者の推移」2)によ

ると,虐待の加害者は,実母60.5%,実父24.9%,と いう,これまでの報告にあるように,育児をしている 母親が子どもへの養育を負担に思い,子どもの世話

に対する負担がストレスとなり,それが攻撃となって 虐待につながるものであると考えられる。今回着目す べきは,加害者が親の単独というよりも,親を交えた 複数の家族構成員により虐待が行われているというこ とであり,その数も決して少なくない。また,その暴 力は身体的暴力とネグレクトが最も多く,被害児童に

よっては複合的な暴力を受けていた。

 つまり,子どもに向けられる虐待の特徴として,家族

小児保健研究

の中でより弱い者に対して,強い者たちが多様な暴力 を行う状態であるといえる。そして,小学校低学年だ と非力であるうえに,複数の家族によって虐待が行わ れるということは,本来はくつろげる家庭の中で,下校 以降登校までの問,何らかの暴力が子どもに常に向け られている状態であり,子どもは家庭にいる方が身体 的,精神的苦痛を受けているといっても過言ではない。

 しかし,その一方で,被害児童の傾向として,虐待 を受けている事実を指導員に伝える子どもよりも,虐 待の事実を誰にも伝えない,または尋ねても嘘をつい てごまかす子どもが多かった。つまり,子どもは,自 分が暮らす生活範囲は家庭と学校であり,そのなかで 家庭は自分の帰る居場所であるという認識を持ってい るためではないかと考える。または,自分が虐待の事 実を露呈させることで,家族関係が破綻し,家庭がな くなるという漠然とした不安感を持っているためであ るのかもしれない。そして,こうした家族や家庭生活 を維持したいという子どもの気持ちが,虐待の事実を 潜在化,長期化させていると考えられる。

2.発見が難しい性暴力被害

 これまでの多くの報告において,身体的,心理的虐 待,ネグレクトと性暴力の4つを統合して児童虐待と 定義づけられてきた。そして,そのなかで最も多いの が身体的虐待であり,性暴力は僅かな数字として提示 され,子どもの虐待の中で性暴力は案外少ないものと して認識されやすい状況であったといえる。今回の調 査結果においても,それは同様であり,22件中3件が 性暴力の被害またはそれを疑うものであった。しかし,

明らかに不自然なアザが身体にみられ,そのアザも古 いものから新しいものまで色が変化し継続的な虐待が 疑われる子どもの状態であっても,子どもはその事実 を話さなかった。または,聞かれても嘘の内容を伝え て,虐待の事実を隠そうとする子どもが決して少なく なかった。このことを勘案すると,視覚による確認が 困難である性暴力について第三者が確認しようとして も実際の被害状況は把握しにくい状況であると考えら れる。つまり,子どもは性暴力を受けたとしても,そ の意味がわからない,またはその事実を隠そうとして 聞かれても言わないために,実際はもっと被害の割合 としては多いかもしれないが,表面に提示される数字 は少ないものになっていると考えられる。したがって,

客観的観察が困難な性暴力に関しては,早期発見も重

(8)

要であるが,それ以上に,性暴力の意味を子どもに理 解させ,もしそういった被害を受けた場合は誰かに伝 えると.いう行動につながるような性暴力防止教育が喫 緊の課題であると考える。

3.性暴力・虐待を発見した指導員の特徴

 さらに今回,性暴力・虐待を発見した指導員の特徴 として,子どもの教育に関わる資格を有していたこ と,指導員としての経験年数が長かったことが明らか となった。これらのことから,指導員であるだけでは 性暴力・虐待を発見することは難しいのではないかと 考えられる。今後の研究として,指導員の資格の有無 や経験年数の長さが性暴力・虐待の発見にどのような 影響を及ぼしているのかを検討する必要がある。

 以上が今回の調査で明らかになったことと,その考 察である。もちろん調査地や調査対象者が限定されて いるため,これをもって一般化できるとは考えていな い。しかし,子どもへの性暴力および虐待の早期発見 につながる要因として,学童保育現場において援用で きる内容もあるのではないかと考える。

V.結

ユ.子どもへの性暴力や虐待を発見した経験を持つ指 導員を対象にした聞き取り調査の結果,子どもへの 性暴力や虐待の発見要因は,『子どもからの直接的 な訴え』,『子どもからの間接的な訴え』,『子どもの  日常生活状態の観察』の3つのカテゴリーが抽出さ

 れた。

2.被害児童の特徴として,小学校低学年の子どもが 多く,男女別の差はなかった。加害者の特徴として,

母親や父親または母親の恋人,兄弟等であったが,

加害者が単独で虐待をするよりも,複数の家族構成 員が加害者となっている事例もみられた。そして,

多くの子どもたちはその事実を隠すことが明らかに  なった。

3.今回の調査結果から,児童虐待のなかで身体的,

心理的虐待やネグレクトについては,子どもの身体 や言動を観察することによって発見できた。しかし,

性暴力については注意して子どもたちの行動を観察  していないと発見しにくいことが考えられた。

4.性暴力・虐待を発見した指導員の特徴は,子ども  の教育に関わる資格を有していたこと,指導員とし  ての経験が長かったことが明らかとなった。

 なお,本研究は平成21年度科学研究費補助金〔挑戦的 萌芽〕により行われた研究の一部である。

謝 辞

 本研究にあたり,ご協力賜りました指導員の方々,A 県学童保育連絡協議会様に深く感謝いたします。

 本研究は,第24回日本助産学会学術集会にて発表した。

         文   献

1)日本子ども家庭総合研究所編 日本子ども資料年鑑  KTC中央出版 2010:26.

2)鈴井江三子.子どもへの性的虐待『犯罪統計書』の  分析と聞き取り調査から.ペリネイタルケア 2006:

 25 (5).

(Summary)

 We conducted semi-structured interviews with after一

,school care workers, who have detected cQnfirmed or suspected cases of children that were recipients of sexual

.violence or abuse, in order to・ elucidate factors that led to detection. Results indicated that those workers with longer years of experience and those who have teach-

ing credentials or childcare certificates tended to detect more cases. ln terms of triggers for detection of sexual violence and abuse towards children, three categories were extracted, which were “direct appeal from a child”

“indirect appeal from a child” and “observation of child’s

everyday behavior” . Among these three, detection of sexual violence resulted only from “observation of child’s everyday behavior” . Early grade children were more likely to become victims, and there was no gender dif-

ference. ln terms of characteristics of perpetrators of abuse, it was often mother, father, or siblings or lover of the mother. There were many cases where multiple family members participated, rather than an abuse per-

formed by a single individual .

 In summary, our data suggested that detection of sexual violence and abuse is impacted by qualifications or length of experience of after-school care workers .

(Key words)

the elementary school childcare instructor, sexual vio-

Ience, child abuse, discovery factor

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