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2017 年度新潟リハビリテーション大学大学院修士論文

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(1)

2017 年度新潟リハビリテーション大学大学院修士論文

ベントン視覚記銘検査を用いた、認知と空間・形態視知覚の関連調査

A study on the relationship between cognition, space, and

Visual form perception using the Benton Visual Retention Test

新潟リハビリテーション大学大学院 リハビリテーション研究科 リハビリテーション医療学専攻

高次脳機能障害コース

学籍番号 G16103 外谷優香理

指導教員 道関 京子 教授

提出日

2018 年 1 月 15 日

(2)

Nigata University of Rehabilitation Gradutate School of Rehabilitation

Master’s thesis in 2017

A study on the relationship between cognition, space, and Visual form perception using the Benton Visual Retention Test

Department of Brain Function Disorder Gradutate School of Rehabilitation Nigata University of Rehabilitation

University Register Number G16103 Yukari Toya

Advisor Keiko Doseki Date of Submission

January 15, 2018

(3)

修士論文の要旨

修士論文課題

「ベントン視覚記銘検査を用いた、認知と空間・形態視知覚の関連調査」

研究目的

認知症患者との関わりでは、様々な視覚刺激を併用することが推奨されているが、

実際はその視覚刺激も有効でないことが多い。その一因には、認知症患者の視空間認 知機能の低下があると推察される。この視空間認知機能に関する研究は、末梢の視覚 機能の探求に留まっており、認知機能の究明までは至っていない。また、認知症患者 が動いている視覚刺激に注意をひかれやすいことはわかっているが、どのような運動 が効果的かは不明なままである。そこで本研究では、ベントン視覚記銘検査からの抜 粋図版で記銘再生試験を行い、認知症患者の誤謬数が、(1)近距離提示と遠距離提示 で差があるか、(2)中心視野に位置する大きな図形と周辺視野に位置する小さな図形 で差があるか、(3)静態としての静止図と動態としての運動図で差があるか、(4)図 形すべてが動く全体運動と図形の一部だけが動く周辺図運動で差があるかの 4 点に ついて調査することとした。本研究の目的は、認知症患者への有効な視覚刺激の提示 方法について、距離や位置、大きさといった量的側面だけでなく、静止図と運動図、

全体運動と周辺図運動という質的側面からも検証し、リハビリテーションや介護・生 活場面での応用について検討することであった。

対象・方法

認知症者群は、MMSE-Jで22点以下、NMスケールで17~30点に該当し、聴覚

的理解力障害、遂行機能障害、半側空間無視、注意・集中力障害がないと認められた 12 名とした。その内訳は、アルツハイマー型認知症7 名、脳血管性認知症5名であ った。健常者群は、MMSE-J 24点以上で脳血管障害のない12名とした。

調査は、ベントン視覚記銘検査図版を1図版につき5秒間ずつパソコン画面に映し 出すことによる記銘再生試験で行った。条件は、遠近の距離条件、中心図形と周辺図 形の位置条件、静止図と運動図の静動条件、全体運動と周辺図運動の運動条件とした。

結果については、記銘再生における誤謬数のスコア分布に差があるかどうかどうか検 証した。統計解析は、被験者間変数である認知症者群と健常者群の認知要因に対応が なく、被験者内変数である提示条件要因に対応がある分散分析を行った。

学位の種類 修士 氏名 外谷優香理

(4)

結果

認知症者群の誤謬数は、すべての条件で健常者群より有意に多かった。認知症者群 の誤謬数は、距離条件では有意な差がなかったが、位置条件では、中心図形に比べて 周辺図形で有意に多かった(p<0.01)。静動条件では、静止図に比べて運動図で有 意に多かった(p<0.001)。運動条件では、全体運動条件に比べて周辺図運動で有意 に少なかった(p<0.001)。周辺図運動条件では、中心図形より周辺図形で有意に少 なくなった(p<0.001)。周辺図形の誤謬数も、近距離提示、遠距離示、全体運動提 示に比し、周辺図運動提示で有意に少なく(p<0.05)、その省略率も全体運動条件よ り周辺図運動条件で有意に低くなっていた(p<0.001)。

考察

すべての条件において、認知症者群の誤謬数は健常者群に比べて有意に多かった。

これは、本検査を今回の条件検証に用いて考察することの信頼性を高めていたと考え られた。図版提示条件別の認知症者群における誤謬数は、距離条件では差がなかった。

認知症者への視覚刺激提示には適切な距離が存在する可能性があると推察されたが、

今回の条件間ではなかった。位置条件では、中心図形に比べて周辺図形において有意 に誤謬数が多かった。よって、認知症者は周辺情報を見落としがちであると言え、小 さな図形を知覚しにくい傾向があることも疑われた。静動条件では、静止図より運動 図で誤謬数が多い結果となった。この原因として、運動要因を調べるために図形全体 を同時に動かしたことが、運動を知覚してもらう目的に合致していなかったことに気 づいた。また、運動図が認知症者にとって大きな負担となっていたために、よく知覚 できなかった可能性もあると推測された。運動条件では、全体運動より周辺図運動で 誤謬数が大幅に減少していた。しかも、周辺図運動においては周辺図形の誤謬数が減 っていただけでなく、その省略率も低下していた。周辺図運動では、注目してほしい 周辺図形が運動によって不連続に際立ったため、認知症者らが意識的に注意できたと 考えられた。

結論

(1)提示距離・刺激の大きさの影響は少なく、また全体運動では負の影響が確認さ れたが、目的要素の運動という不連続性を極めた周辺図運動では有意に良好な影響が 確認できた。

(2)考察の中で新たな精査の必要性も見つかり、認知症者とのコミュニケーション における応用に向けて更なる研究の方向性も示唆された。

(5)

目次

1.緒言---76 2.方法---77 2-1 対象---77 2-2 実験手順---78 2-3 使用機器---78 2-4 図版提示条件---79 2-4-1)距離に関する遠近2条件--- 79 2-4-2) 位置に関する中心図形と周辺図形の2条件--- 79 2-4-3)静動に関する静止図と運動図の2条件---79 2-4-4)運動に関する全体運動と周辺図運動の2条件---79 2-5 提示図版---79 2-6 採点---80 2-7 統計解析---81 2-8 実験期間および環境---81 2-9 倫理的配慮---81 3.結果

3-1 視覚刺激提示における量的側面

3-1-1)距離に関する遠近2条件の差 ---81 3-1-2)位置に関する中心図形と周辺図形の2条件の差---81 3-2 視覚刺激提示における運動の質的側面

3-2-1)静動に関する静止図と運動図の2条件の差---82 3-2-2) 運動に関する全体運動と周辺図運動の2条件の差 ---82 3-2-3)周辺図運動における中心図形と周辺図形の形較 ---83 3-2-4)周辺図形の誤謬数 ---83 3-2-5)周辺図形の省略率 ---84 4.考察

4-1 視覚刺激提示における量的側面

4-1-1)距離に関する遠近2条件 ---85 4-1-2)位置に関する中心図形と周辺図形の2条件---85 4-2 視覚刺激提示における運動の質的側面

4-2-1)静動に関する静止図と運動図の2条件 ---86 4-2-2)運動に関する全体運動と周辺図運動の2条件---86 5.今後の課題と展望---87 6.結論 ---88 引用文献 ---89 謝辞 ---92 図表 ---93 Abstract ---107

(6)

1.緒言

認知症患者との関わりでは、リハビリテーション、介護、日常生活場面の別を問わ ず、様々な視覚刺激を併用することが推奨されている 1-4)。ところが実際は、そ の視覚刺激も有効でないことが多い5)。筆者も、話しことばの知覚に必要な「緊張 や弛緩、空間感覚、速さ、方向などの心理言語学的な要素特徴を統合して構成した運 動」である身体リズム運動6)を認知症患者への訓練で提示している。しかし、その 運動を十分に見てもらえているとは感じられない。

視覚刺激を効果的に知覚してもらえない原因の一つには、認知症患者の視空間認知 機能の低下があると推察される7)。視空間認知機能は、静視機能と運動視機能の2 つに分類できる8)。このうち、静視研究はカメラやパソコンを用いた実験結果から 得られた末梢の視覚機能に関する考察に留まっており、認知機能についてまでは言及 されていない 9-12)。運動視研究でも、動いている対象に注意をひかれやすいとい う特徴は指摘されているが 13-16)、どのような運動が効果的かは不明なままであ る。ただし、視空間認知能力についてはベントン視覚記銘検査 17)を用いて調べた 報告があり、認知症者の成績は健常者より有意に不良18)であると認められている。

また、アルツハイマー型認知症の診断には記銘再生の正確数よりも誤謬数が重要であ るとも言われている19)。

このように、視空間認知能力はベントン視覚記銘検査で測れることが明らかになっ ているが、その機能についての詳細はまだ究明されていない。つまり、認知症患者に 視覚刺激を適切に知覚してもらうにはどのくらいの距離から、どの視野位置で提示し たらよいのか、視覚刺激はどのようなものが有効なのかはわかっていないのである。

そこで本研究では、ベントン視覚記銘検査から抜粋した図版で記銘再生試験を行い、

以下の4点について調査することとした。その4点とは、認知症患者および健常者の 誤謬数が、(1)刺激の近距離提示と遠距離提示で差があるか、(2)一般と同じく認知 症者でも、中心視野に位置する大きな図形と周辺視野に位置する小さな図形で差があ るか、(3)静態としての静止図と動態としての運動図で差があるか、(4)図形すべて が動く全体運動と図形の一部だけが動く周辺図運動で差があるかということである。

本研究の目的は、認知症患者への有効な視覚刺激の提示方法について、距離や位置、

大きさといった量的側面だけでなく、静止と運動、全体運動と周辺運動という運動の

(7)

質的側面からも検証し、リハビリテーションや介護・生活場面での応用について検討 することとした。

2.方法 2-1 対象

被験者は、視力障害や利き手に麻痺のない者およびその家族とし、認知症者群と健 常 者 群 の 2 群 に 分 け た 。 認 知 症 者 群 の 判 定 は Mini Mental State

Examination-Japanese (以下、MMSE-J)と行動観察で高齢者の認知機能を評価

するN式老年者用精神状態尺度(以下、NMスケール)20)で行った。まず、MMSE

-Jで30点満点中22点以下の者を認知力低下者群とした。本来、MMSE-Jのcut-off 設定値は 23 点であるが、本調査では被験者基準を明確にするため 22 点以下を採用 し、23点の者は被験者から除外した。続いて認知力低下群へNMスケールを実施し、

家事・身辺整理、関心・意欲・交流、会話、記銘・記憶、見当識の 5 項目において 50 点満点中 17 点~30 点に該当する中等度認知症患者を選出した。さらに、今回の 研究目的である視空間認知の検討に影響を及ぼす可能性を排除するため、中等度認知 症患者の中から以下の3検査要件をクリアした12名を選定した。その3検査要件と は、(1)Standard Language Test of Aphasia (SLTA)標準失語症検査の聴覚的理 解課題の「歯ブラシと鉛筆を持ってください。」、「鋏と歯ブラシを入れ替えてくださ い。」という口頭命令に従う 2課題で理解力障害および遂行機能障害が認められない こと、(2)Behavioral Inattention Test (BIT)行動性無視検査で半側空間無視が 認められないこと、(3)注意・集中力に関する問題行動6項目を各0~3点で観察評 価できるBehavioral Assessment for Attentional Disturbance(以下、BAAD)21)

において注意・集中力障害が認められないことであった。全般性注意の評価には Clinical Assessment for Attention(CAT)やTrail-Making Test(TMT)などの各 種検査が知られている 22)が、今回は本検査での集中力維持を重視し、これらの検 査は実施しなかった。被験者のBAAD指標は、標準偏差も考慮すると0.5~2.5点に 収まっていたため、本調査では18 点中2.5点以下であれば注意・集中力障害がない ものと判断した。以上の検査要件をクリアした 75~89 歳の認知症者群 12 名の疾患

(8)

別内訳は、アルツハイマー型認知症者7名、脳血管性認知症者5名であった(表1)。 対照群である健常者群は、 MMSE -J 24点以上で、かつ脳血管障害がない71~89 歳の 12名であった(表1)。なお、MMSE -J が23点の者は認知症者群と同じ理由 で対象から除外した。

MMSE -J の得点に関しては、認知症者群と健常者群における有意差が wilcoxom

の順位和検定において認められた(p<0.01)。

2-2 実験手順

被験者には、机上に置いたパソコン画面の正面に座ってもらった。そして、常に視 点を一定の高さと正中位に定めるため、顎を顎台の上に乗せてもらった。1回目の検 査としては、遠・近距離、中心・周辺位置、静・動態の調査用に選んだベントン視覚 記銘検査図版18枚で記銘再生試験を行った。その際はまず、ベントン視覚記銘検査 の施行方式Bに従い、1枚につき5秒間ずつパソコン画面で図版を提示し、大きい図 形も小さい図形もすべて覚えるよう指示した。その直後に検査図版と同じA5サイズ の白紙へ、何も見ずに描画再生してもらった。その2週間後には2回目の検査として、

運動の全体・部分関係検査を1回目の検査と同じ5秒間提示、直後再生方式で行った。

このときは、1回目とは別の6図版を用いた。

本実験は、Sohlberg(2000)によって転換性(alternating attention)、持続性

(sustained attention)、選択性(selective attention)、分配性(divided attention)

の 4 つに分類されるような 23)注意・集中力の持続を必要とした。そのため、実験 中は各被験者の状況をよく観察しながら十分な休憩を入れ、日を変えて実施する配慮 も行い、集中力の影響を極力軽減させた。

また実験前には、試験で使用しない図版を用いて十分に練習を行い、実施方法の理 解を得た。

2-3 使用機器

被験者へ図版を提示する際に用いたパソコンは、15.6 インチの Hewlett-Packard 製ノート型パソコン(584037-001)であった。OS は Microsoft Windows7、ソフ トはMicrosoft Office PowerPoint 2010を使用した。

(9)

2-4 図版提示条件

量的条件として、距離に関する近距離と遠距離の2条件、位置に関する中心図形と 周辺図形の2条件を設定した。

質的条件としては、静動に関する静止図と運動図の2条件、運動に関する全体運動 と周辺図運動の2条件を設定した。

2-4-1)距離に関する遠近2条件

近距離条件の基点は、老眼や近眼の有無などを考慮し、各被験者から見やすいと申 告された個々の場所とした(図 1)。遠距離条件の提示箇所は、近距離の各基点から 90cm離れた地点とした(図2)。

2-4-2)位置に関する中心図形と周辺図形の2条件

ベントン視覚記銘検査の規定に従い、大きな図形の右あるいは左側にある小さな図 形を周辺図形として提示した。また、各図版の中央にある大きな図形を中心図形とし て提示した(図3)。位置条件は、近距離条件の結果を用いた。

2-4-3)静動に関する静止図と運動図の2条件

静止図条件は、近距離条件の結果を用いた。運動図条件では、図形全体が上下に動 くよう設定した図版をスライドショー機能で提示した(図4)。

2-4-4)運動に関する全体運動と周辺図運動の2条件

全体運動条件は、運動図条件の結果を用いた。周辺図運動条件では、PowerPoint ソフトのアニメーションのスライドイン機能を用いて周辺図形だけが下から上へ上 がってくるようにした図版をスライドショー機能で提示した(図5)。

2-5 提示図版

ベントン視覚記銘検査の形式Ⅰ・Ⅱそれぞれから No.3・4・5・6・7・9の 6枚を 抜粋した。それらは、周辺図形が中央より右側にある 3 図版(No3・6・7)と左側

(10)

にある3図版(No.4・5・9)であった。形式Ⅰから抜粋した6図版は遠・近距離条 件、中心・周辺位置条件で使用した。形式Ⅱから抜粋した 6 図版は静止図・運動図 の静動条件、全体運動・周辺図運動の運動条件で使用した。

1回目の検査では、健常者6名と認知症者6名に近距離条件(形式Ⅰ)-運動図条 件(形式Ⅱ)-遠距離条件(形式Ⅰ)の順、別の健常者6名と認知症者6名に遠距離 条件(形式Ⅰ)-運動図条件(形式Ⅱ)-近距離条件(形式Ⅰ)の順で提示し、提示 順序の結果への影響を排除した(図 6、7、8)。周辺図運動条件(形式Ⅱ)は、被験 者の疲労と学習による効果を避けるため、1回目検査施行から2週間後に行った(図 9)。

2-6 採点

ベントン視覚記銘検査の誤謬数採点方式に従い、ゆがみ・保続・回転・置き違い・

大きさ・省略の6つの型(表2)で誤謬数を採点した。たとえば、(1)ゆがみは、正 方形の代わりに円を描画するなど、簡単な置き換えによって不正確に再生された場合 の誤りであった。(2)保続は、前に提示された正三角形に影響されて円の代わりに正 三角形を描画再生してしまうなどの単純な置き換えや追加反応であった。(3)回転は、

真上に描かれるべき直角三角形の一辺が45°回転して斜めに再生、あるいは90°や

180°回転してしまった場合であった。(4)置き違いは、右側に描かれるべき小さな

円が大きな図形の左側に再生されるなど空間関係における歪曲があった場合であっ た。(5)大きさの誤りは、小さな図形が大きな図形の高さの3/5より大きく描かれた か、大きな図形が正規の高さの 3/5 より小さく再生された場合の誤りであった。(6)

省略は、描くべき図形を完全に描画していないか、目的の図形を描いたとは思われな いような線を描いている場合であった。

以上の誤りが各条件でいくつあったかを数え、その個数を個人ごとの誤謬数とした。

ただし本研究では省略に関してのみ、図形の認識さえしていない最も重大なエラーと 捉え、従来の採点方式とは異なった方式で採点した。つまり、省略があった場合には、

それ以外のゆがみ・保続・回転・置き違い・大きさの誤りも呈したものとみなし、省 略1つにつき誤謬数6個と採点した。

(11)

2-7 統計解析

(1)距離に関する遠近 2 条件、(2)位置に関する中心図形と周辺図形の 2 条件、

(3)静動に関する静止図と運動図の2条件、(4)運動に関する全体運動と周辺図運 動の2条件で記銘再生における誤謬数のスコア分布に差があるかどうか検証した。

分析は、被験者間変数である認知症者群と健常者群の認知要因に対応がなく、被験 者内変数である距離、位置、静動、運動の提示条件要因に対応がある分散分析を行っ た。有意差があった場合には、有意水準5%未満でRyan法による多重比較を行った。

2-8 実験期間および環境

実験は、2017年7月から9月に、関東にある急性期中規模病院の言語聴覚室およ び同病院敷地内にあるデイサービス施設の静かな一室で行った。

2-9 倫理的配慮

被験者、認知症患者の家族に研究目的や方法について説明し、実験実施の同意を得 た。本実験は、新潟リハビリテーション大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認 日:2017年3月3日、受付番号:107)。

3.結果 3-1 視覚刺激提示における量的側面

3-1-1)距離に関する遠近2条件の差

記銘再生成績において、認知症の有無である認知の主効果(F(1,22)=46.858,

p<0.001)が有意に認められ、認知症者群の誤謬数は健常者群より有意に多いこと がわかった。しかし、距離条件の主効果、認知と距離条件の交互作用はみられなかっ た。

つまり、認知症者群は健常者群に比べて有意に誤謬数が多かったが、両群とも距離 条件別で誤謬数に有意な差が出ることはなかった(図10、表3)。

3-1-2)位置に関する中心図形と周辺図形の2条件の差

(12)

認知の主効果(F(1,22)=8.758,p<0.01)が有意にあり、認知症者群の誤謬 数は健常者群より有意に多いことがわかった。また、中心図形と周辺図形の位置条件 の主効果(F(1,22)=4.639,p<0.05)、認知と位置条件の交互作用(F(1,22)

=4.766,p<0.05)も有意にみられた。

認知と位置条件の交互作用の効果を調べるために下位検定を行ったところ、認知の 単純主効果は、中心図形でみられなかったが、周辺図形(F(1,44)=13.366,p<

0.001)では有意に認められた。認知症者群においては、中心図形に有意な単純主効 果がなかったが、周辺図形には有意な単純主効果(F(1,22)=9.405,p<0.01)

がみられた。

以上より、健常者群は認知症者群より有意に誤謬数が少なく、位置条件による誤謬 数の差もないことがわかった。認知症者群では、中心図形に比べて周辺図形で有意(p

<0.01)に誤謬数が多かった(図11、表4)。

3-2 視覚刺激提示における運動の質的側面

3-2-1)静動に関する静止図と運動図の2条件の差

認知の主効果(F(1,22)=45.872,p<0.001)が有意にあり、認知症者群は健 常者群より誤謬数が有意に多いことが認められた。また、静止図と運動図の静動条件 の主効果(F(1,22)=13.550,p<0.005)、認知と静動条件の交互作用(F(1,

22)=12.832,p<0.005)も有意にあった。

下位検定では、認知の主効果が静止図(F(1,44)=22.555,p<0.001)にも、運 動図(F(1,44)=58.411,p<0.001)にも有意にみられた。認知症者群においては、

静止図の有意な単純主効果はなかったが、運動図の有意な単純主効果(F(1,22)

=26.377,p<0.001)がみられた。

よって、健常者群は認知症者群に比し、有意に誤謬数が少なく、位置条件による誤 謬数の有意な差がないこともわかった。認知症者群では静止図に比べて運動図で誤謬 数が有意(p<0.001)に多かった(図12、表5)。

3-2-2)運動に関する全体運動と周辺図運動の2条件の差

認知の主効果(F(1,22)=37.297,p<0.001)が有意にみられ、認知症者群は

(13)

健常者群より有意に誤謬数が多いことがわかった。図版全体を動かした全体運動と周 辺図形だけを動かした周辺図運動の運動条件にも有意な主効果(F(1,22)=26.241,

p<0.001)が認められた。認知と運動条件の交互作用(F(1,22)=22.359,p<

0.001)も有意にみられた。

下位検定を行ったところ、認知の単純主効果が全体運動(F(1,44)=55.975,p

<0.001)および周辺図運動(F(1,44)=13.921,p<0.001)に認められた。認知症 者群においては、全体運動の有意な単純主効果はなかったが、周辺図運動に有意な単 純主効果(F(1,22)=48.522,p<0.001)が認められた。

したがって、健常者は認知症者群より有意に誤謬数が少なく、運動条件の違いによ る誤謬数の有意な差もないことが明らかとなった。認知症者群では全体運動条件に比 べて周辺図運動で有意(p<0.001)に誤謬数が少なくなった(図13、表6)。

3-2-3)周辺図運動条件における中心図形と周辺図形の比較

認知の主効果(F(1,22)=18.512,p<0.001)が有意に認められ、周辺図運動 における誤謬数は、健常者群より認知症者群で有意に多いことがわかった。周辺図運 動条件の主効果(F(1,22)=17.884,p<0.001)、認知と周辺図運動条件の交互作 用(F(1,22)=12.855,p<0.005)も有意にみられた。

下位検定では、認知の単純主効果は周辺図形にはなかったが、中心図形(F(1,

44)=31.364,p<0.001)には有意に認められた。認知症においては、単純主効果 が中心図形にみられなかったが、周辺図形(F(1,22)=30.532,p<0.001)には 有意に認められた。

これらより、健常者群における周辺図運動の誤謬数は認知症者群より有意に少なく、

また中心図形と周辺図形でも誤謬数に有意な差はなかった。ただ認知症者群も、周辺 図運動においては中心図形より周辺図形で有意(p<0.001)に誤謬数が少なくなって

いた(図14、表7)。

3-2-4)周辺図形の誤謬数

認知の主効果(F(1,22)=18.065,p<0.001)が有意にみられ、健常者群は認知症者 群に比し、有意に周辺図形の誤謬数が少なかった。また、近距離、遠距離、全体運動、

(14)

周辺図運動の提示条件の主効果(F(3,66)=7.139 ,p<0.001)も認められた。認知 と提示条件にも有意な交互作用(F(3,66)=5.000,p<0.005)がみられた。

下位検定では、認知の有意な単純主効果が、近距離提示(F(1,88)=22.687,p<

0.001)、遠距離提示(F(1,88)=8.522,p<0.005)、全体運動提(F(1.88)=13.177,p

<0.001)でみられた。認知症者群においては、周辺図運動で有意な単純主効果(F(3,66)

=12.023,p<0.001)がみられた。認知症者における条件間の差を有意水準5%未満に

おけるRyan法で多重比較したところ、周辺図形の誤謬数は、近距離提示、遠距離示、

全体運動提示に比べて周辺図運動提示で有意(p<0.05)に少なくなっていた(図15、

表8)。

3-2-5)周辺図形の省略率

認知の主効果(F(1,22)=8.781,p<0.01)が有意に認められ、健常者群の周辺図 形省略率は認知症者群より有意に少ないことがわかった。周辺図形の主効果(F(1,22)

=18.090 ,p<0.001)、認知と周辺図形の交互作用(F(1,22)=5.355,p<0.05)も有

意に認められた。

下位検定では、認知の有意な単純主効果(F(1,44)=13.932,p<0.001)が全体運 動ではみられたが、周辺図運動にはみられなかった。認知症者群の単純主効果は、全 体運動ではみられなかったが、周辺図運動(F(1,22)=21.565,p<0.001)。で有意に みられた。

健常者群では認知症者群に比べ、周辺図形の省略率が全体運動条件でも周辺図運動 条件でも有意に低かった。ただし、認知症者群も周辺図運動条件における周辺図形の 省略率は、全体運動条件の場合より有意(p<0.001)に低くなっていた(図16、表9)。

4.考察

ベントン視覚記銘検査からの抜粋図版で記銘再生試験を行ったところ、すべての条 件において、認知症者群の誤謬数は対照群に比べて有意に多かった。これは先行研究 17)のとおりであり、今回の条件検証にこの検査を用いて結果考察することの信頼性 を高めていたと考えられる。

(15)

条件別にみた認知症者群の誤謬数は、距離条件においては差が認められなかったが、

位置条件では有意な差が確認できた。この結果から、視覚刺激の量的側面では距離よ り位置の影響が大きいことが示唆された。

また、静動条件では静止図より運動図で誤謬数が多い結果となった。この結果は予 測に反していたのだが、むしろその考察から知覚の性質に合わせた運動条件の検証へ と進めることができたと言える。

4-1)視覚刺激提示における量的側面 4-1-1)距離に関する遠近2条件

今回の90cm距離条件差実験では、健常者群と同様、認知症者群の誤謬数において も距離条件の違いで差が生じることはなかった。しかし、報告には認知症者への情報 提供は近づいて行うことが望ましいとするもの1)もある。認知症者への視覚刺激の 提示においては適切な距離が存在する可能性のあることが推察されたが、今回の条件 設定ではなかった。今後は、適切視覚刺激距離とは単純な物理的距離なのか、本人の 心理的距離なのかを含めてさらに検証を続けていかなければならないと思われた。

4-1-2)位置に関する中心図形と周辺図形の2条件

健常者群では、位置条件による誤謬数の差はみられなかった。それに比し、認知症 者群の誤謬数は中心図形に比べて周辺図形において有意に多かった。認知症者の視知 覚については足立ら(1999)も、中央部に注意が偏りがちで、周辺域の情報を見落 とす傾向があると述べている。本調査の結果も、この先行研究 13)を支持するもの であった。

加えて、今回の調査における中心図形と周辺図形は、位置関係だけではなく、大き さにも相違があったことをも考えなければならない。中心図形は大きい図形、周辺図 形は小さな図形であったことから、認知症者は大きな図形より小さな図形のほうが知 覚しにくい傾向があるのではないかということが疑われた。ただし、図形の大小を中 心・周辺視野で交代させて検討する、つまり大きな図形を周辺図形、小さな図形を中 心図形として追調査を行うなどしなければ、本実験および先行研究9-12)を含めた 解釈は不完全なままであると思われる。したがって、この面の研究継続も自身に残さ

(16)

れた課題と言えた。

4-2)視覚刺激提示における運動の質的側面 4-2-1)静動に関する静止図と運動図の2条件

健常者群の誤謬数は、静動条件別でも有意な差はみられなかった。しかし、認知症 者群の誤謬数は、静止図より運動図において有意に多かった。これは、実験開始時に 期待した効果とは正反対の結果であった。この原因として気づいた点は、運動要因を 調べるために図形全体を同時に動かしたことが、運動を知覚してもらう目的に合致し ていなかったということだった。すなわち、図と地の地全体を動かしても、運動を運 動として知覚してもらうのは不可能だったのである。目的要因の差の検出は、図と地 の分化があってはじめてできる 24)ことであった。ただし、この図と地の分化に関 しては、健常者と認知症者でその程度に違いがあるのかどうかについても今後、詳細 に調査する必要があると思われる。

また仮に図と地の分化ができていたとしても、「脳は知覚に量を必要とせず」、ま た「傷ついた脳は疲労が早く、量にも弱い傾向がある」6)ように、視覚刺激すべて を動かした運動図は認知症者にとって大きな負担となっていたとも考えられる。この ことも、認知症者が運動図をよく知覚できなかった原因の一つに挙げられると推測さ れた。

4-2-2)運動に関する全体運動と周辺図運動の2条件

認知症者群の誤謬数は、全体運動と比べ、周辺図運動で大幅に減少していた。道関

(2016)は、「知覚してもらいたい刺激を量で強調するのではなくて際立たせ、不 連続な刺激にして呈示する」ことの重要性について述べている 6)。本調査からも、

相手に気づいてもらいたい対象だけを動かし、他を運動させない不連続な条件を提示 者側が作り出しさえすれば、目的ターゲットを十分知覚してもらうことができること がわかった。足立ら(1999)も、交差点における信号機や車の方向指示器の点滅に は認知症患者も集中して注視できていたと報告しており 13)、これらの交通刺激も 視覚における不連続な刺激の一例と考えてよいのではないかと思われる。今回も、周 辺図運動条件では注目してほしい周辺図形が運動によって不連続に際立ったために

(17)

認知症者らが意識的に注意でき、結果的に誤謬数が顕著に減少したのだと考えられる。

このように、視覚刺激の提示においては気づいてほしい刺激のみ運動させたとき、

実際に有効な結果を得られた。本調査では、動いている対象に注意をひかれやすい 13-16)という先行研究の知見を掘り下げ、認知症者の視覚刺激の知覚に適してい る運動の一つを確認することができたと言える。その運動とは、先述のとおり、目的 ターゲットのみ不連続に動かすものであり、この提示方法であれば周辺のたとえ小さ な図形でも認知症者によく知覚してもらえることがわかった。

反面、全図形を一同に動かした提示方法は、知覚に不利に働くことが明らかになっ た。これに関しては、数井ら(2015)がアルツハイマー型認知症患者では情報の量 が作動記憶の許容範囲を超えると処理速度の低下、誤りの増加、情報の欠落が起こる 25)と述べているとおりであった。武田(2015)も、目標ターゲットとは無関係の 視覚刺激を抑制する能力は、加齢とともに低下する 26)と言っている。これらの問 題に関し、視覚刺激を一つの目的に絞った運動で提示する方法により解決できる可能 性が本研究で示された意義は大きい。認知症者の視覚刺激の知覚では距離や位置、大 きさといった量的側面よりも運動の質的側面が重要であり、視覚刺激を提示する際に はこの点を考慮することが必要と考えられた。以上はあくまでも図版刺激の提示で得 られた結果で実用化判断に直結することはできないが、認知症者への刺激提示におけ る今後の大きなヒントになるものと考えられた。

5.今後の課題と展望

先行研究の指摘に反し、距離条件別で健常者群および認知症者群の誤謬数に有意な 差が出ることはなかった。これは、認知症者への視覚刺激の提示における適切な距離 の可能性については、今回の90㎝遠近条件だけでは見つけることができなかったこ とを意味した。よって今後は、適切視覚刺激距離とは単純な物理的距離なのか、本人 の心理的距離なのかを含めて検証を続けていかなければならないと思われる。

また、認知症者には大きな図形より小さな図形のほうが知覚しにくい傾向があるこ とが疑われたが、これに関しても推測の域を出ていない。ゆえに、これからは図形の 大小を中心・周辺視野で交代させた検討などもしていきたいと考える。

(18)

静止図と運動図の比較では、予測に反して運動図で有意に誤謬数が多い結果となっ た。その原因の一つは、運動要因を調べるために図形全体、つまり図と地の地全体を 同時に動かしたことであり、そのために運動を運動として知覚する目的要因の差の検 出が不可能になったと考えられた。ただし、この図と地の分化については、小児に関 する先行研究27)はあるが、健常者と認知症者で比較したものは報告されていない。

したがって、両者で図と地の分化の程度に差があるのかどうかも調べていく必要があ ると思われる。

本研究では、周辺図運動による提示が小さな周辺刺激を知覚するうえでの一助とな ることがわかった。しかし、実験結果はあくまでも机上で得られたものに過ぎない。

この結果が実際の臨床場面や日常生活においてそのまま適応できるとは限らないた め、その応用については事例に即して一つ一つ丁寧に検証すべきと考える。

6.結論

認知症者の知覚レベルを調べるため、ベントン視覚記銘検査の抜粋図版を用いた実 験を実施して視覚刺激条件を検討した結果、わかったことは以下の点である。

(1)提示距離・刺激の大きさの影響は少なく、また全体運動では負の影響が確認さ れたが、目的要素の運動という不連続性を極めた周辺図運動では有意に良好な影響が 確認できた。

(2)考察の中で新たな精査の必要性も見つかり、認知症者とのコミュニケーション における応用に向けて更なる研究の方向性も示唆された。

(19)

引用文献

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理学療法の医学的基礎研究会,12(1),6-7,2008.

4 )竹田里江,竹田和良,池田望,松山清治,船橋新太郎,石合純夫:半側空

間無視を有する認知症患者に対するコンピュータを用いた認知機能訓練の効果,

老年精神医学雑誌,25(9),1035-1045,2014.

5 )伊藤隆,吉田直樹:健常老人群と痴呆老人群におけるリズムタッピング能 力の比較,日本作業療法士協会,14,247,1995.

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東京,2016,14,16,26,28,58,84,91,97-98.

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2012.

8 )鈴木匡子:視覚性認知の神経心理学-神経心理学コレクション,医学書院,

東京,2012,3,85,99,128-131,139-141.

9 )城山博,下岡正八:トークアイによる術者の視知覚分析(Ⅰ)‐診療室中 央通路を初診用ユニットまで歩行した際の眼球運動‐,歯学,83(3),

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10)池田望,村上新治,山ノ内高洋,斎藤正明,宮沢仁朗:痴呆疾患における 視覚性認知⁻奥行き⁻機能,老年精神医学雑誌,13(6),697,2002.

11)榊間春利,森本典夫,丹羽さよ子,徳久朋子,増満誠:在宅高齢者における運動 視機能と活動能力について,理学療法学,33,494,2006.

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(20)

13)足立啓,荒木兵一郎,赤木徹也,知花弘吉,日部正基,奥俊信:痴呆性老 人と知的障害者の交差点画像に対する視覚情報探索行動に関する研究,老 年社会科学,21(3),317-327,317-328,1999.

14)松井大介,鈴木広幸,下岡正八:歯科治療時における小児の視知覚分析‐歯科医 師、歯科衛生士間の器具受け渡しに対する眼球運動,小児歯科雑誌,36(3),

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16)三瓶伸也,下岡正八:テスト映像化したヒトの動きの視知覚分析-成人の 眼球運動-,小児歯科学雑誌,39(3),679-693,2001 .

17)A.L.Benton,高橋剛夫(訳):日本版 ベントン視覚記銘検査 使用手引き 臨

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18)橋爪敏彦:アルツハイマー病の重症度と痴呆テストバッテリーの意義,慈 恵医大誌,119,41-50,2004.

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西村浩,笠原洋勇:Alzheimer 型老年痴呆の診断補助としての「認知機能検査」

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20)久野真矢,清水一,前川正雄:認知機能と機能年齢の関連(第2報)~NM

スケール(N式老年者用精神状態評価尺度)得点とADL・IADL能力の関 連~,作業療法,31,177-188,2012.

21)豊倉穣:脳外傷と認知リハビリテーション,リハビリテーション医学,43(9),

594-600,2006.

22)小西海香:注意障害の評価とリハビリテーション.老年精神医学雑誌,22,295

-301,2011.

23)M.M,Sohlberg et al:Evaluation of Attention Process Training and Brain Injury Education in Persons with Acquired brain Injury,Journal of Clinical and Experimental Neuropsychology,22(5),656-676,2000.

24)浦上昌則,中村和彦,神谷俊次:心理学第2版,ナカニシヤ出版,東京,

2008,28.

(21)

25)数井裕光,吉山顕次:アルツハイマー病患者の症状からみた自動車運転能 力,老年精神医学雑誌,26(12),1365-1372,2015.

26)武田景敏:複雑性注意―その概念と評価法-,老年精神医学雑誌,26,242

-247,2015.

27)小林雅之:図と地,日本歯学大学歯学会,81(5),1272,1994.

(22)

謝辞

本研究の実施および論文作成にあたり、親身にご指導いただきました新潟リハビリ テーション大学大学院 リハビリテーション研究科 道関京子教授、医療面における貴 重なアドバイスをいただきました同研究科 大澤源吾教授、認知症に関するご指導を いただきました同研究科 伊林克彦教授に厚く御礼申し上げます。

また、調査にご協力くださった被験者、ご家族の方々へ深謝申し上げます。

(23)

図表

表1. 被験者の属性

表2.ベントン視覚記銘検査の誤謬型

(1)ゆがみ 簡単な置き換えによって、不正確に再生された場合

(2)保続 前提示の図形に影響され、単純な置き換えや追加反応が 起こった場合

(3)回転 図形が 45°、90°、180°回転した場合

(4)置き違い 空間関係における歪曲があった場合

(5)大きさの誤り 小さな図形が大きな図形の高さの 3/5 より大きく描かれた 場合や大きな図形が正規の高さの 3/5 より小さく再生され た場合

(6)省略 描くべき図形を完全に描画していないか、目的の図形を描い たとは思われないような線を描いている場合

(24)

図1.近距離からの提示方法

図2.遠距離からの提示方法

顎 台 顎台

90cm

(25)

図3. 中心図形と周辺図形の例

(26)

1 秒目 2 秒目 3 秒目

4 秒目 5 秒目

図4.運動図(全体運動)の例

1 秒目 2 秒目 ・・・5 秒目

図5.周辺図運動の例

(27)

1(No.4) 2(No.3) 3(No.6)

4(No.5) 5(No.7) 6(No.9)

図6. 近距離からの図版提示順序

1(No.5) 2 (No.6) 3(No.9)

4 (No.3) 5 (No.4) 6(No.7)

図7. 遠距離からの図版提示順序

(28)

1(No.7) 2(No.9) 3(No.3)

4(No.6) 5(No.5) 6(No.4)

図 8. 運動図条件として呈示した図版提示順序

(29)

1(No.3) 2 (No.4) 3(No.6)

4 (No.5) 5 (No.9) 6 (No.7)

図9. 周辺図運動条件として提示した図版提示順序

(30)

図10.距離に関する遠近2条件別の誤謬数

表3.距離に関する遠近2条件での比較

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

健常者群 認知症者群

誤 謬 数

( 個

距離に関する遠近2条件別の誤謬数

近 遠

認知症者群 n12 p 健常者群 n12 近距離提示における誤謬数 27.8±55.5 7.9±15.8 遠距離提示における誤謬数 31.6±63.2 5.6±11.2

(31)

図11.位置に関する中心図形と周辺図形の2条件別の誤謬数

表4.位置に関する中心図形と周辺図形2条件での比較

**

p<0.01

0 5 10 15 20 25 30 35 40

健常者群 認知症者群

誤 謬 数

( 個

位置に関する中心図形と周辺図形の2条件別の誤謬数

中心図形 周辺図形

認知症者群 n12 p 健常者群 n12 中心図形における誤謬数 11.7±16.4 3.4±4.9 周辺図形における誤謬数 24.0±49.9 ** 0.01 3.3±5.2

(32)

図12.静動に関する静止図と運動図の2条件別の誤謬数

表5. 静動に関する静止図と運動図2条件での比較

**** p<0.001

0 10 20 30 40 50 60

健常者群 認知症者群

静動に関する静止図と運動図の2条件別の誤謬数

静止図 運動図

認知症者群 n12 p 健常者群 n12 静止図における誤謬数 27.8±20.6 7.9±10.3 運動図における誤謬数 40.0±30.4 ****0.001 8.1±8.9

(33)

図13.運動に関する全体運動と周辺図運動の2条件別の誤謬数

表6. 運動に関する全体運動と周辺図運動2条件での比較

****p<0.001

0 10 20 30 40 50 60

健常者群 認知症者群

運動に関する全体運動と周辺図運動の2条件別の誤謬数

全体運動 周辺図運動

認知症者群 n12 p 健常者群 n12 全体運動における誤謬数 40.0±30.4 8.1±9.0 周辺図運動における誤謬数 23.3±20.1 ****0.001 7.4±13.9

(34)

図14. 周辺図運動条件における中心図形と周辺図形の誤謬数

表7. 周辺図運動における中心図形と周辺図形の比較

****p < 0.001

0 2 4 6 8 10 12 14 16

健常者群 認知症者群

誤 謬 数

( 個

周辺図運動条件に関する中心図形と周辺図形の2条件別の誤謬数

中心図形 周辺図形

認知症者群 n12 p 健常者群 n12 周辺図運動における中心図形の誤謬数 9.9±11.4 2.1±4.8 周辺図運動における周辺図形の誤謬数 2.8±4.1 ****0.001 1.5±1.7

(35)

図15. 4条件における周辺図形の誤謬数

表8. 4条件における周辺図形の比較

* p<0.05

0 5 10 15 20 25 30 35 40

健常者群 認知症者群

誤 謬 数

( 個

周辺図形の誤謬数の差

全体運動 周辺図運動

認知症者群 n12 p 健常者群 n12 近距離提示における周辺図形の誤謬数 24.0±49.9 3.3±5.2 遠距離提示における周辺図形の誤謬数 14.3±19.0 1.7±3.2 全体運動における周辺図形の誤謬数 18.3±19.8 2.6±3.3 周辺図運動における周辺図形の誤謬数 2.8±4.1 1.4±1.9

*0.05

(36)

図16. 運動2条件における周辺図形の省略率

表9. 運動2条件における周辺図形省略率の比較

**** p<0.001

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

健常者群 認知症者群

周辺図形の省略率

全体運動 周辺図運動

認知症者群 n12 p 健常者群 n12

全体運動における周辺図形の省略率 11.4 3.1

周辺図運動における周辺図形の省略率 1.0 ****0.001 0.0

(37)

Abstract

A study on the relationship between cognition, space, and Visual form perception using the Benton Visual Retention Test

Yukari Toya

Department of Brain Function Disorder Gradutate School of Rehabilitation Nigata University of Rehabilitation

The purpose of this study was to investigate the condition of the distance, position, and nature that dementia patients are consciously caught in the visual target.

Subjects, auditory comprehension power failure, executive function disorders and unilateral spatial neglect was not observed in 24 men and women aged 71-89, the persons with dementia group was 12 people with less than 22 points of dementia in MMSE-J, healthy person group of 24 or more points were 12 people.

The presentation conditions, (1) distance of the perspective 2 conditions, (2) the position of the center shape and the peripheral shape 2 conditions, (3) static 2 conditions of the stationary figure and the motion diagram, (4) the movement of the entire movement and the peripheral figure movement was 2 conditions. The results were verified whether there was a difference in the score distribution of the number of errors in the notation reproduction by the condition.

(38)

The number of errors in the dementia patients according to the condition was not observed in the (1) distance condition. It is presumed that there is a possibility that some appropriate distance exists in the presentation of visual stimulation to the person with dementia.(2) From the position condition result, it was suspected that the dementia tended to overlook the peripheral information, and it was difficult to perceive small figures. (3) In the static motion conditions, there were many errors in the exercise diagram than the stationary figure. It is thought that having moved the entire shape at the same time was not corresponding to the purpose to perceive the movement as this cause.Moreover, it seemed that the movement figure might have been a big burden for the dementia person, too. (4) In the exercise condition, the peripheral figure movement was effective in perception compared with the whole movement, and attention to a small peripheral shape was improved. It is thought that the conscious attention to the visual stimulation was obtained by the peripheral figure movement because it stood out in the discontinuity by the movement.

図 1 .近距離からの提示方法
図 3.  中心図形と周辺図形の例
図 6.  近距離からの図版提示順序
図 8.  運動図条件として呈示した図版提示順序
+5

参照

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