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別添3
厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)
総合研究報告書
神経再生性人工細胞外マトリクスを用いた神経疾患治療法の検討
研究代表者 柿木 佐知朗
独立行政法人国立循環器病研究センター研究所 生体医工学部
A.研究目的
高齢化社会の急速な進展により、パ ーキンソン病などの内因性神経疾患 や糖尿病・脳卒中による神経変性疾患 などの外因性神経疾患は増加傾向に ある。これらに対する治療法として、
神経幹細胞の移植や末梢神経の再生 などの組織再生医工学的なアプロー チが注目されている。
例えば、パーキンソン病はドーパミ ン産生神経細胞の減少によって引き 起こされるが、神経幹細胞の移植によ って患者の運動能力が向上するとい う報告があり、幹細胞移植治療の有用 性が期待されている(Liu W.G. et al., Parkins. Relate. Desord.
13(2007)77; Soldner F. et al., Cell 136(2009)964)。さらに、倫理的問題
の少ない人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells; iPS細胞)か ら神経幹細胞の作製が可能となった ことで、細胞ソースの問題はほぼ解決 した。さらに近年、成人皮膚の線維芽 細胞から iPS 細胞を経由せず神経幹 細胞の迅速かつ高効率に作製する方 法も報告され、神経幹細胞移植の臨床 応用は目前のごとく期待されている
( Matsui T. et al., Stem Cells 30(2012)1109)。しかし実際には、分 化能の不安定な細胞の混入や、神経細 胞以外への分化による癌化などが懸 念されている。神経幹細胞を含む幹細 胞は、その細胞外環境に応答して分化 が誘導されるため、目的の細胞ならび 組織に効率良く分化誘導するために は、それに適切な細胞外環境の構築が 研究要旨
iPS 細胞などより作製される神経幹細胞の内因性・外因性疾患治療へ の応用に期待が寄せられている。幹細胞移植療法や組織工学的治療の 臨床応用を実現するためには、移植した幹細胞の生着や分化の制御、
生体組織再生に適切な細胞外環境の構築が必要となる。そこで本研究 では、神経再生性人工細胞外マトリクスよりなる末梢神経再生誘導管 および神経幹細胞移植用担体の開発を目指した。
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重要である。神経幹細胞の場合、ニュ ーロンやアストロサイト、オリゴデン ドロサイトなどへ分化する能力を有 しており、先に例として挙げたパーキ ンソン病の場合は、移植した神経幹細 胞がドーパミン産生ニューロンへの 優先的に分化誘導されるような細胞 移植用担体が必要となる。神経幹細胞 の移植用担体として、キトサン、ヒア ルロン酸やジェランガム(多糖)など よりなるハイドロゲルの利用が多く 報告されているが、いずれも研究の範 疇を超えるものではない。幹細胞の分 子生物学的な研究が大きく先行して おり、細胞移植用担体の開発など材料 分野の研究は立ち遅れているのが現 状である。
一方、重篤な外因性神経疾患の治療 において、神経再生誘導管が自家神経 移植に代わる治療法として注目され ている。吻合できない重篤な末梢神経 障害が生じた場合、これまでは腓腹神 経などを自家神経移植が適用されて いた。しかし、ドナー神経の確保や摘 出部位の知覚不全、さらに移植後の再 生不良や過誤支配といった合併症が 問題であった。そのため、古くはシリ コーンチューブなど、人工材料からな る神経誘導間の開発が進められてき た。先述の幹細胞移植と同じく、適し た細胞外環境を人工的に構築しなけ れば末梢神経再生は達成されない。日 本では、2013年にポリ乳酸-グリ コール酸共重合体の織布でできたチ ューブ内に動物由来のコラーゲンス ポンジを充填した神経再生誘導管が
認可され、臨床において5cmまでの 神経欠損の治療に用いられている。こ の神経誘導管の臨床成績は良好で、
益々の普及が期待されている。しかし、
高純度とはいえ動物由来のタンパク 質が用いられていることから生物学 的危険性が懸念され、また織布よりな るため周囲および再生される神経と の癒着も強く疼痛が残る可能性があ る。すなわち、内・外因性神経疾患の 治療には、神経再生に特化した細胞外 環境を構築できる、生体安全性に優れ た人工マテリアルの開発が求められ る。
これまでに我々は、神経再生医療へ の応用を志向した神経再生性人工細 胞外マトリクス(人工タンパク質)の 生合成を試みてきた。この人工細胞外 マトリクスは、エラスチン骨格の繰り 返し配列((VPGIG)n)(Yamaoka T.
et al., Biomacromolecules 4(2003)1680) とラミニン-I由来配 列(AG73)(Nomizu M. et al., J. Biol.
Chem. 273(1998)32491)を組み合わ せた単純な構造であり、エラスチン配 列に特徴的な温度応答性と AG73 の 優れた神経再生促進性を兼備してい る。温度応答性とは、このタンパク質 の水溶液が転移温度以上になると凝 集して不溶化(コアセルベート)する 特性のことで、我々の人工細胞外マト リクスは生理的条件下においては不 溶性である。そのため、長期間の埋入 にも耐えうる末梢神経再生誘導管の 素材として有用と考えられる。また、
この人工細胞外マトリクス水溶液を
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10℃程度に冷却すると均一な溶液 となるため、細胞の懸濁液の調製やシ リンジでの体内への注入が容易であ る。注入後は体温によって不溶化して 凝集体を形成することで移植細胞を その部位に保持し、かつ分化を制御で きるような新たな細胞移植用担体と しての利用も考えられる。そこで本研 究は、この人工細胞外マトリクスの 内・外因性神経疾患治療への応用の可 能性を模索することを目的として、平 成24年度に開始した。
平成24年度に、我々が既に保有し ていた発現用大腸菌クローンからの ラミニン-I 由来神経突起伸長活性配 列(AG73)とエラスチンの繰返し配 列 よ り な る 人 工 タ ン パ ク 質
( Histag-RKRLQVQLSIRT-GRL-(V PGIG)30-VPLE;AG-VP)大量発現系 の確立と、ポリ乳酸との混合マイクロ ファイバーの作製に成功した。また、
AG-VP/ポリ乳酸混合マイクロファイ
バー上で PC12細胞の突起伸長の亢 進が認められた。そこで、さらなるス テップとして、AG-VP/ポリ乳酸混合 マイクロファイバーを内層にもつ神 経誘導管(内径2mm)を作製し、ウ サギ脛骨神経に作製した2cmの欠 損へ移植した。2カ月後、神経誘導管 内部の末梢神経の再生を電気生理学 的に評価したところ、AG-VP を混合 することによる神経再生の亢進作用 はごく僅かなものであった。また、外 観観察で縫合部において神経様組織 がチューブ外に増殖している様子も 一部で確認された。
そこで、平成25年度は AG-VP/ポ リ乳酸混合マイクロファイバー神経 誘導管の内径を2mmから3mmに 拡張して神経組織の外部への増殖を 防止し、かつ移植期間を2カ月から3 ヶ月に延長することで、AG-VP の混 合による末梢神経再生の亢進性をよ り詳細に評価した。その結果、前年度
と同じく AG-VPを混合することによ
る神経再生の亢進作用はごく僅かで あった。すなわち、AG-VP はPC1 2細胞に対しては突起伸長活性を示 したものの、in vitroにおける軸索伸 長を亢進する能力を備えていないと 判断し、新たな人工タンパク質の設計 と生合成に着手した。平成25年度中 に、エラスチン様繰り返し配列の構造 骨格(VPGIG)30−(VPGIG)30 をコード した発現用ベクターの作製まで至っ た。
平成26年度は、その骨格へのラミ
ニン由来 IKVAV 配列の導入を検討し
た。タンパク質1分子あたりの活性配 列数を増加させることで、神経再生活 性の向上を計った。さらに、新たな人 工タンパク質とポリ乳酸とを混合し たマイクロファイバーの配向化を検 討した。初年度のPC12細胞を用いた 評価の結果、突起がファイバーに沿っ て伸長している様子が観察されたこ とを踏まえて、ファイバーを神経の軸 索と平行に配向にすることで、再生神 経の軸索伸長が促進されると考えた。
さらに配向化した人工タンパク質/ポ リ乳酸混合マイクロファイバー上で のラットDRGニューロンの突起伸長
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も評価した。
B.研究方法
1.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)の生合成
ラミニン-I 由来神経突起伸長活性 配列(AG73)とエラスチンの繰返し 配 列 よ り な る 人 工 タ ン パ ク 質
( Histag-RKRLQVQLSIRT-GRL-(V PGIG)30-VPLE;AG-VP)は、大腸菌 発現系を用いて生合成した。AG-VP の発現株は、これまでに我々が作製し たものを用いた。フローズンストック から2xYT 培地で AG-VP 発現株を 5mLのスモールスケールで一晩振盪 培養する。その培養液を Overnight Express™ Autoinduction Systems
(Merck社製)を含有した2xYT培 地500mLに加えて、30℃で一晩 振盪培養することでAG-VP の発現を 誘導した。大腸菌懸濁液を遠心(35 00rpm, 15分, 4℃)し、大腸菌ペ レットを回収した。そこへUrea含有 Tris 緩衝液を大腸菌ペレット1gあ たり5mL加え、充分に懸濁させたの ちに-80℃で凍結した。およそ24 時間後、凍結した大腸菌懸濁液を解凍 し、超音波ホモジナイザーで大腸菌を 破菌した。砕菌後、溶液を遠心(10 000rpm, 15分, 4℃)して上清 を回収し、0.8μmのシリンジフィ ルターで濾過することで残渣を取り 除いた。この溶液とHisタグ精製用カ ラム(His-accept:ナカライ社製)と を3:2(v%)で混合し、4℃で一 晩緩やかに撹拌することでAG-VP を
カラムに吸着させた。その後、0.3 M-NaCl/リン酸緩衝溶液で洗浄し、1 0〜500mM のイミダゾールを含 むリン酸緩衝溶液で順次、AG-VP を 溶出させた。どの溶出液に AG-VPが 含 ま れ て い る か は 、 銀 染 色 に よ る SDS-PAGEで確認した。AG-VPが含 ま れ て い た 溶 液 は 、 4 ℃ に て 透 析
(MwCo: 10000Da)することで混入 したイミダゾールを除去し、凍結乾燥 することで高純度のAG-VPを得た。
2.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)−ポリ乳酸混合マイクロフ ァイバー不織布の作製
まず、ファイバーの作製条件を最適 化するため、市販の水溶性エラスチン
(エラスチンC:和光純薬製)とポリ L-乳酸(Mw:10kDa)との混合マ イクロファイバーを種々の条件で作 成した。エラスチン C とポリ L-乳酸 を100/0、75/25、50/50、
25/75、0/100(質量比)とし、
溶質濃度が20w/v%となるように 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロ パノールで混合溶液を作製した。それ ぞれの溶液を、エレクトロスピニング 法を用いてマイクロファイバー不織 布を作製した。エレクトロスピニング の条件は、印加電圧を±7.5kV(電 位差15kV)、溶液射出速度を4ml /h、ニードル-ターゲット間距離を1 0cmとした。得られたエラスチン C-ポリ L-乳酸混合マイクロファイバ ーのファイバー径ならび純水中での 安定性を走査型電子顕微鏡観察によ
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って評価した。
引続いて、ポリL-乳酸(Mw:10 kDa)とAG-VPとの質量比を4:1 として、溶質濃度が20w/v%となる ように 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイ ソプロパノールで混合溶液を作製し、
エレクトロスピニング法でマイクロ ファイバー不織布を作製した。エレク トロスピニングの条件は、エラスチン Cの場合と同様、印加電圧を-7.5k V/+7.5kV(電位差15kV)、溶 液射出速度を4ml/h、ニードル-タ ーゲット間距離を10cmとした。併 せて、AG-VPを含まないポリ L-乳酸 マイクロファイバー不織布、ならび AG-VP の代わりに AG73 ペプチド
(RKRLQVQLSIRT)を同組成比でポ リ L-乳酸に混合したマイクロファイ バー不織布も作製した。それぞれのマ イクロファイバー不織布のファイバ ー径、形状、およびリン酸緩衝溶液中 での安定性についてそれぞれ走査型 電子顕微鏡観察によって評価した。
3.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)−ポリ乳酸複合マイクロフ ァイバー不織布上での PC12細胞の 神経突起伸長活性の評価
神経幹細胞のモデルとして広く用 いられているラット副腎褐色腫細胞
(PC12)は、ウシ胎児血清(5v%)
とウマ血清(10v%)を添加した Dulbecco's Modified Eagle Medium
(DMEM;Invitrogen 社製)を用い て、ポリD-リジンコーティングTCPS シ ャ ー レ 中 で 継 代 培 養 を 行 っ た 。
0.05%トリプシン-EDTA(Invitrogen 社製)で細胞を剥離・回収後、神経増 殖因子(NGF)を含有する無血清分化 用 DMEM 培 地 (Apo-Transferrin Human (100μg/mL)、Insulin (4μ g/mL) 、 Progesterone (20nM) 、 Na2SeO3 (30nM)、NGF (100ng/mL)) に細胞を分散し、通常のTCPS上に播 種し、37℃の CO2 インキュベータ内 で 24 時間活性化させた。その後、通 常の培養用培地に交換して 30 分後、
ピペッティングで NGFによって活性 化された PC12細胞を回収し、遠心 後に細胞懸濁液を得た。並行して前項 の方法で作製した AG-VP−ポリL-乳 酸混合マイクロファイバー不織布を 12×12mm程度に裁断し、セルク ラウン(Scaffdex Oy 社製)に固定 し た 。 そ れ を 2 4 ウ ェ ル プ レ ー ト
(IWAKI 社製)に挿入し、各ウェル
に1mLのリン酸緩衝溶液を加えて3 7℃で30分静置した。リン酸緩衝溶 液をアスピレートし、1mL の NGF 含有 DMEM 培地で試料を洗浄した。
そこへ、NGFで活性化したPC12細 胞を 1.0×104 cell/ml/well となるよ うに播種し、CO2インキュベータ内で 24時間培養した。培養後、未接着の 細胞をピペティングで洗浄し、接着細 胞を10v%ホルマリン/リン酸緩衝 溶液で15分間固定した。さらにリン 酸 緩 衝 溶 液 で 洗 浄 後 、 接 着 細 胞 を
0.05%-クリスタルバイオレット溶液
で染色し、光学顕微鏡にて観察した。
4.神経再生性人工細胞外マトリクス
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(AG-VP)−ポリ乳酸混合マイクロフ ァイバーチューブの作製
3層構造よりなるAG-VP−ポリ L- 乳酸混合マイクロファイバーチュー ブをエレクトロスピニング法で作製 した。まず、ステンレス棒(φ2.0 mm)をターゲットとし、AG-VP と ポリ L-乳酸を混合させたマイクロフ ァイバーを内層として紡糸した。その 際、ポリL-乳酸(Mw:10kDa)と
AG-VP との質量比を4:1とし、溶
質 濃 度 が 2 0w/v% と な る よ う に 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロ パノールで作製した混合溶液を、印加 電圧を-7.5kV/+7.5kV(電位 差15kV)、溶液射出速度を0.5m l/h、ニードル-ターゲット間距離を 10cmの条件で、エレクトロスピニ ング法にて5分間紡糸した。次に、内 層として L-ポリ乳酸の 1,1,1,3,3,3-ヘ キサフルオロイソプロパノール溶液 を、印加電圧を-7.5kV/+7.5k V(電位差15kV)、溶液射出速度を 3.0ml/h、ニードル-ターゲット 間距離を10cmの条件でエレクト ロスピニング法にて30分間紡糸し た。最後に、外層としてポリ L-乳酸
(Mw:10kDa)とポリエチレング リコール(Mw:20kDa)との質量 比が9:1の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオ ロイソプロパノール溶液を、中層と同 条件で10分間紡糸した。比較のため に、内層にポリL-乳酸のみ、およびポ リ L-乳酸に AG73 ペプチドを混合さ せたものも同様に作製した。作製さい たマイクロファイバーチューブは、走
査型電子顕微鏡によってそのファイ バー形状などを観察した。
5.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)−ポリ乳酸混合マイクロフ ァイバーチューブのウサギ腓骨神経 欠損部位への移植と評価
前項で作製した AG-VP−ポリL-乳 酸混合マイクロファイバーチューブ
(内径: 2mm, 長さ2cm)を、ウ サギ(NZW 種、2.8-3.0kg、
オス)の脛骨神経に作製した2cmの 欠損部へ両端吻合することによって 移植した(各群3羽ずつ)。その際、
両端いずれも1mmずつ内側へ引き 込むようにして吻合した。麻酔下のウ サギの坐骨神経を露出させ、腓腹神経、
腓骨神経、腓骨神経のそれぞれに分離 後、腓腹および腓骨神経は切除して脛 骨神経のみとしてから2cmの欠損 を作製した。同時に、比較のために自 家神経(欠損作製時に回収した神経)
も移植した。移植2ヵ月後に、チュー ブ移植部の近-遠位間の活動電位を測 定し、チューブ内部の神経再生を評価 した。
内径2mmのチューブを2カ月間 移植した際の神経組織のチューブ外 への増殖を阻止するため、内径3mm のチューブも同様の方法で作製しウ サギ腓骨神経(2cm欠損)に移植し た。この際、再生神経の成熟を評価す るために移植期間を3ヶ月とした。
6 . 新 規 人 工 細 胞 外 マ ト リ ク ス (IKVAV-(VPGIG)60) (IK-VP)の生合成
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エラスチン繰り返し配列(VPGI G配列の30回繰り返し)を制限酵素 認識配列によって連結されたタンパ ク質配列を設計した。それをコードし たDNA配列は、大腸菌の使用頻度の 高いコドンを用いて最適化した。まず、
クローニングベクター(pUC57)のマ ルチクローニングサイトに存在する EcoRIとHindIIIサイドに上述のDN A配列を挿入した。この pUC57((VP GIG)60)(pUC57(VP))をコンピテン トセル(DH5α, TAKARA)にヒー トショック法で導入し、LB 培地寒天 プレート(アンピシリン含有)上でコ ロニーを得て、クローニング用株とし た。続いて、pUC57(VP)を制限酵素N deIおよび Bpu1102Iで切断処理して 切り出したタンパク質をコードする DNA配列を、発現用ベクターであるp ET19bのNdeI-Bpu1102Iサイドにサ ブクローニングした。得られたpET1
9b(VP)をタンパク質発現用のコンピ
テントセル(RosettaTM(DE3)pLysS, Novagen)にヒートショック法で導 入し、LB 培地寒天プレート(アンピ シリン・クロラムフェニコール含有)
上でコロニーを得て、発現用株を作製 した。
続いて、得られたVP発現用ベクタ ー(pET19b(VP))へのラミニンα鎖 ドメイン由来 IKVAV(Ile-Lys-Val-Al a-Val)配列(Tashiro K. et al., J.Bi ol.Chem. 265(1989)16174)の導入を 検討した。pET19b(VP)には2つの(V PGIG)30をコードした DNA の両端お よび中央部に活性配列を導入するた
めの制限酵素切断サイト(NdeI, SalI およびXhoI)を設けてある。まず、Nd eI部分へのIKVAV配列をコードした DNAの挿入を検討した。pET19b(VP) を制限酵素 NdeI(FastDigest; Life technologies)で切断し、アガロース 電気泳動からの切り出しによって精 製後、脱リン酸化(E. coli. Alkaline phosphatase; TOYOBO)した。DN Aをフェノールで抽出、エタノール沈 殿した後に、TNE 緩衝液に溶解させ た。併行して、IKVAV をコードした オリゴDNAをリン酸化(γATP/T4 Polynucleotide kinase; TOYOBO) して精製後、TNE バッファーに溶解 した。アニーリングした IKVAV コー ドオリゴ DNAとNdeI で切断された pET19b(VP)とを混合し、ライゲーシ ョン(Ligation high; TOYOBO)し た。ライゲーション反応後の溶液のD NA 濃度を吸光度計(λ=260nm)で 定量し、所定量のDNAを使用してD H5αコンピテントセルをコールドシ ョック法で形質転換した。その後、大 腸菌の分散液を寒天培地(アンピシン を含む)上に播種した。およそ24時 間、37℃のドライインキュベーター 内で培養し、コロニーの有無を確認し た。数コロニーをピックアップし、ア ンピシリンを含む SOC 培地で培養後、
スピンカラムでプラスミドDNAを精 製した。得られた DNAをNdeI およ び XhoIで切断し、得られるフラグメ ントのアガロースゲル電気泳動の結 果から IKVAV コード DNA の導入を 評価した。
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IKVAV-(VPGIG)60(IK-VP)発現用 ベクター(pET19b(IK-VP))を大腸菌
(RosettaTM(DE3)pLysS, Novagen) にコールドショック法で形質転換し、
その発現用クローン(Rosetta (IK-V P))を得た。RosettaTM(DE3)pLysS (IK-VP)を5mLの2xYT培地で一晩振 盪培養した。それをスターターとして、
Overnight ExpressTM Autoinductio n System(Merck 社製)を含む 500 mLの2xYT培地(アンピシリン・クロ ラムフェニコール含有)に加えて、3 0℃で24時間培養、IK-VPを発現誘導 した。大腸菌懸濁液を遠心(3500 rpm, 15分, 4℃)し、大腸菌ペレ ットを回収した。そこへUrea含有Tr is 緩衝液を大腸菌ペレット1gあた り5mL加え、充分に懸濁させたのち に-80℃で凍結した。およそ24時 間後、凍結した大腸菌懸濁液を解凍し、
超音波ホモジナイザーで大腸菌を破 菌した。砕菌後、溶液を遠心(100 00rpm, 15分, 4℃)して上清を 回収し、0.8μmのシリンジフィル ターで濾過することで残渣を取り除 いた。この溶液とHisタグ精製用カラ ム(His-accept:ナカライ社製)とを 3:2(v%)で混合し、4℃で一晩 緩やかに撹拌することで IK-VP をカ ラムに吸着させた。その後、0.3M
-NaCl/リン酸緩衝溶液で洗浄し、20、
50、250および500mMのイミ ダゾールを含むリン酸緩衝溶液で順 次、IK-VPを溶出させた。溶出した水 溶液をSDS-PAGEで泳動し、CBB染 色および銀染色によって含有タンパ
ク質の分子量を確認した。その後、
4℃にて透析(MwCo: 10000Da)す ることで混入したイミダゾールを除 去し、凍結乾燥した。
7.神経再生性人工細胞外マトリクス
(IK-VP)とポリ乳酸を混合した配向 性マイクロファイバーの作製
マイクロファイバーは、前述と同様 エレクトロスピニング法で作製した。
まず、ポリ L-乳酸(Mw=106000; 武 蔵野化学研究所)のみを用いてマイク ロファイバーの配向化条件を検討し た。円板型ターゲット(直径140m m×厚さ6mm)を高速に回転し、フ ァイバーを巻き取ることで配向の揃 ったマイクロファイバーの作製を検 討した。濃度が10,15および2 0%となるようにポリL−乳酸をの濃 度を 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソ プロパノール(HFIP)で溶解した。
印加電圧を±4.0〜5.0kV(電 位差8.0および10.0kV)、溶液 射出速度を2.0ml/h、ニードル- ターゲット間距離を10cmとし、円 板の回転数を200〜1250rp mと変化させた時のファイバーの配 向性を走査型電子顕顕微鏡で観察し た。また、最適化した条件で内層が配 向マイクロファイバーのチューブを 試作した。
さらに、ポリL−乳酸で配向ファイ バーを作製できた条件で、(VPGIG)60
(VP)およびIK-VPのみでなるファ イバーの作製を検討した。両タンパク 質を10%となるようにHFIPに溶解
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し、円板型ターゲットを用いてマイク ロファイバーを作製した。さらに、マ イクロファイバーをリン酸緩衝溶液
(PBS)に浸漬させ、溶液中での安定 性を確認した。
ポリ L-乳酸と VP もしくは IK-VP を混合したマイクロファイバーの配 向化も検討した。ポリL-乳酸とVPも しくはIK-VPを等量混合し、20%(そ れぞれは10%)のHFIP溶液を調製し た。ニードル-ターゲット間距離やタ ーゲットの回転速度を変化させてエ レクトロスピニングすることで、最も マイクロファイバーの配向が揃う条 件を模索した。さらに、得られた混合 マイクロファイバーを PBS に浸漬さ せ、その安定性も評価した。
8.神経再生性人工細胞外マトリクス
(IK-VP)とポリ乳酸を混合した配向 性マイクロファイバー上でのラット DRG ニューロンの接着と突起伸長挙 動の評価
ポリ L-乳酸と VP もしくは IK-VP を混合した配向性マイクロファイバ ー 不 織 布 上 で の ラ ッ ト 後 根 神 経 節 (DRG)ニューロン(Lonza)の接着お よび突起伸長を評価した。
ポリ L-乳酸と VP もしくは IK-VP を混合した配向性マイクロファイバ ー不織布をCell culture slide (SPL 社)に固定した。各ウェルにラット DRG ニューロンを200個播種し、
SingleQuotsTM を添加した PNGMTM 初 代 神 経 細 胞 増 殖 培 地 ( い ず れ も
Lonza)を用いて72時間培養した。
その後、4%ホルムアルデヒドで接着 したDRGニューロンを固定化し、メ タノールでの膜透過処理と5%ヤギ 血清/0.3%Triton-Xを含むPBSに よ る ブ ロ ッ キ ン グ を 経 て 、 Neurofilament を免疫染色で可視化 した。免疫染色は、Alexa Fluor® 594 で 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た Neurofilament-L Rabbit mAb (Cell signaling technology 社)を用いて行 った。1次抗体として、を2次抗体と して用いた。各試料上のラット DRG の形態を、共焦点レーザー顕微鏡およ び走査型電子顕微用で観察した。
C.研究結果
1.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)の生合成
AG-VP を500mL スケールで発 現誘導し、砕菌後、His-tag 用アフィ ニティーカラムに吸着させて、低濃度 から高濃度イミダゾール緩衝溶液で 段階的に溶出させ、SDS-PAGE でど のフラクションに AG-VPが含まれて いるかを評価した(図1)。その結果、
イミダゾール濃度が40mM 以上で
多くの AG-VPがカラムから遊離され
てくることが分かり、精製にはイミダ ゾール濃度20mMで洗浄し、100 mM で溶出する条件が最適と判断し た 。 そ の 条 件 で 精 製 し た と こ ろ 、
AG-VPを回収することができた(図
2)。さらに、高分子量の不純物を除 去するために限外ろ過(50kDa) することで高純度の AG-VPを得るこ とができた(図3)。イミダゾールを
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除去するために透析し、凍結乾燥した ところ、約50mg/1Lカルチャーの
AG-VPを得ることができた。
2.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)−ポリ乳酸混合マイクロフ ァイバー不織布の作製
エラスチンCを用いた、タンパク質
‐ポリ L-乳酸混合マイクロファイバ ー作製条件の予備検討を行ったとこ ろ、いずれの組成比においてもファイ バーを作製することができた(図4、
表1)。ファイバー径は、エラスチン C もしくはポリ L-乳酸いずれかの組 成比が大きくなると太くなる傾向が あった。それぞれのマイクロファイバ ーを純粋に浸漬したところ、エラスチ ン C のみでできたファイバーは水に 溶解したものの、ポリL-乳酸と混合し たものは溶解しなくなった(図5、表 2)。エラスチンC の組成比が高いも のは、浸漬後にファイバー径の縮小が 認められたが、溶解や切断は見られず、
エラスチン C がポリ L-乳酸に均一に 混合されていることが示唆された。
ポリ L-乳酸(Mw:10kDa)と
AG-VP との質量比を4:1の条件で
作製したマイクロファイバーを作製 したところ、径が840nm 程度の均 一なファイバーを紡糸することがで きた(図6)。ポリ L-乳酸のみ、およ びポリL-乳酸とAG73ペプチドを混 合させたマイクロファイバーと比較 すると、AG-VP−ポリ L-乳酸混合マ イクロファイバーの径が最も細くな った。エレクトロスピニングで紡糸さ
れるファイバーの物性は、射出する溶 液の電荷および粘度に大きく影響さ れることが知られており、AG-VP を 混合することでそれら溶液特性に変 化が生じたものと考えられる。また、
それぞれのマイクロファイバー不織 布をリン酸緩衝溶液に浸漬させたと ころ、AG73ペプチド−ポリL-乳酸混 合マイクロファイバーのみが浸漬後、
部分的に蛇行するような形状の変化 が認められた。これは、AG73ペプチ ドが溶出したためと考えられる。一方、
AG-VP−ポリ L-乳酸混合マイクロフ ァイバーは一切の形状変化が見られ なかった。この結果より、AG73ペプ チド−ポリ L-乳酸混合マイクロファ イバーでは生理的環境下においてペ プチドの早期溶出が懸念されるが、
AG-VP−ポリ L-乳酸混合マイクロフ ァイバーでは長期間安定に保持され ると考えられる。
3.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)−ポリ乳酸混合マイクロフ ァイバー不織布上での PC12細胞の 神経突起伸長活性の評価
各マイクロファイバー不織布上での PC12細胞の接着および神経突起伸 長を評価した(図7,8)。ところが、
ポリ L-乳酸のみのマイクロファイバ ー不織布上では接着した PC12細胞 の30%ほどしか短い神経突起(20 μm以下)を有する細胞が存在しなか った。しかし、AG73ペプチドを混 合させたものでは、接着数はポリ L- 乳酸のみとほぼ同様であったものの、
11
接着細胞の10%ほどが長い神経突 起(20μm以上)が見られた。これ らと比較して、AG-VP を混合したマ イクロファイバー上では、細胞の接着 数も優位に増加し、そのうちの約7 0%以上が神経突起を有していた。こ れらの結果より、AG-VPをポリ L-乳 酸に安定に混合させることによって 神経突起伸長活性が付与されている ことが示唆された。
4.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)−ポリ乳酸混合マイクロフ ァイバーチューブの作製
作製した各マイクロファイバーチ ューブの走査型電子顕微鏡観察像お よび形状の詳細を図9に示す。いずれ の組成のチューブも、断面は層構造を 形成しており、内層および外層は均一 なファイバーとなっていた。AG-VP
−ポリ L-乳酸混合マイクロファイバ ーチューブのファイバー径は、内層で 約800nm、外層が約1.9μmで あった。各チューブをリン酸緩衝溶液 に24時間浸漬させた後に形状を観 察したところ、AG-VP−ポリ L-乳酸 混合マイクロファイバーチューブで は内層・外層共に溶解など見られずフ ァイバーの形状は保持されていた(図 10)。
5.神経再生性人工細胞外マトリクス
(AG-VP)−ポリ乳酸混合マイクロフ ァイバーチューブのウサギ腓骨神経 欠損部位への移植と評価
作製した各マイクロファイバーチ
ューブを長さ2.2cmに裁断し、ウ サギの脛骨神経に作製した2.0cm の欠損部位に移植した(図11、12)。 いずれのチューブも8−0プロリン 糸で容易に縫合できる強度を有して いた。移植2ヵ月後に移植箇所を露出 させたところ、自家神経は周辺の結合 組織の癒着が激しく、適切な形状で神 経は再生していなかった。一方、マイ クロファイバーチューブを移植した 各群では、周辺組織の癒着も軽微で、
容易に露出させることができた。チュ ーブの内径が細かったためか、部分的 に神経様組織がチューブ外部へ増殖 している様子も見受けられた。チュー ブ両端(近位および遠位)の神経を丁 寧に露出させ、その間の活動電位を測 定した(図13−15、表3)。その 結果、AG-VP−ポリ L-乳酸複合マイ クロファイバーチューブの場合、健常 な脛骨神経には遠く及ばなかったも のの、ポリL-乳酸のみおよびAGペプ チドを複合したマイクロファイバー チューブと比較して活動電位のピー ク強度は大きく、かつその時間も早く なっていた。
内径3mmのチューブ(図16)の 場合、移植3カ月後で周辺組織の癒着 も縫合部での神経様組織の外部増殖 も認められなかった。活動電位を測定 したところ、内層がポリL-乳酸のチ ューブでは、活動電位のピークの平均 時間は0.17msec、平均強度は 0.35mVであった(図17−18、
表4)。また、ポリL乳酸/AG73ペ プチド混合ファイバーが内層のチュ
12
ーブでは、活動電位のピークの平均時 間は0.15msec、平均強度は0.
33mVであった。それらと比較して、
ポリL乳酸/AG-VP 混合ファイバーが 内層のチューブでは、ピークの平均時 間は0.15msec、平均強度は0.
42mVとなり、活動電位の強度が他 の二群の約1.5倍であった。
2カ月および3ヶ月の移植実験の 結果、いずれにおいても AG-VP−ポ リ L-乳酸複合マイクロファイバーチ ューブ内部において神経再生は僅か に亢進されたのみで、顕著な促進は認 められなかった。
6 . 新 規 人 工 細 胞 外 マ ト リ ク ス (IK-VP)の生合成
まず、2つのエラスチン繰り返し配 列ブロック(VPGIG配列の30回 繰り返し)を制限酵素認識配列によっ て連結したタンパク質の配列を設計 した(図19)。pUC57のマルチクロ ーニングサイトに存在する EcoRI と HindIIIサイドに上述のDNA配列を 挿入(pUC57(VP))し、それを導入し たDH5αのクローンを得た。回収し た 5 コ ロ ニ ー か ら QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN社製)でプラ スミドを抽出し、NdeI/XhoIで消化し てフラグメントの長さをアガロース ゲル電気泳動で確認したところ、31 7、937および2487bp付近に バンドが確認され、理論値と一致した
(図20)。シークエンス解析の結果、
設計したDNA配列がpUC57 に導入 されていることを確認した(図21)。
さらに、pUC57(VP)を制限酵素NdeI およびBpu1102Iで切断処理して切り 出したタンパク質をコードする DNA 配 列 を 、 発 現 用 ベ ク タ ー で あ る pET19b の NdeI-Bpu1102I サイドに サブクローニングした(pET19b(VP))。 pET19b(VP) で 形 質 転 換 し た RosettaTM株から5コロニーを回収し た 。 QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN 社製)でプラスミドを抽出 後、NdeI/XhoIで消化してフラグメン トの長さをアガロースゲル電気泳動 で確認したところ、937および56 65bp付近にバンドが確認され、理 論値と一致した(図22)。シークエ ンス解析の結果、設計したDNA配列
が pUC57に導入されていることを確
認した(図23)。
VP を500mLスケールで発現誘 導し、砕菌後、ライセートをSDS−
PAGEで評価した。その結果、VP に帰属される29.6kDaのバンド が確認された(図24)。
続いて、pET19b(VP)への IKVAV 配列をコードしたDNAの挿入を検討 した(図25)。まず、pET19b(VP) の NdeI およびXhoI 切断性をアガロ ース電気泳動で確認した(図26)。
その結果、NdeIおよびXhoIでのみ切 断した場合は僅かにバンドが低分子 側へ移動し、NdeIとXhoIの両方で切 断すると約500bpのフラグメン トが認められた。このことから、NdeI および XhoIでベクターの1か所のみ が切断されることを確認した。続いて、
IKVAVをコードしたオリゴDNA(相
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補鎖)を混合して98℃-15分でア ニール後、30℃まで徐冷することで 二重鎖オリゴDNAを調製した(図2 7)。相補DNAの混合溶液とそのアニ ーリング後のアガロース電気泳動の 結果、混合するのみで一本鎖DNAよ りもバンドが高分子側へ上昇したこ とから、二重鎖の形成にアニーリング を要しないことが分かった。その後、
NdeI で 切 断 さ れ た pET19b(VP)と IKVAVコード二重鎖オリゴDNAとを 混 合 し て ラ イ ゲ ー シ ョ ン 後 、 そ の DNA を用いて大腸菌コンピテントセ ル(DH5α)を形質転換した。寒天培 地(アンピシンを含む)上に播種した ところ、24時間後におよそ10個の コロニーを認めた。全てのコロニーを 回収して5mL の SOC 培地(アンピ シリン含む)で培養後、DNA を回収 した。しかし、NdeI/XhoI切断で生じ るフラグメントの長さは、ライゲーシ ョン前後で同様であったことから、得 られたコロニーにはセルフライゲー ションしたpET19b(VP)が導入されて いることが示唆された。本方法での pET19b(VP)への IKVAV コードオリ ゴDNAの導入が困難であると判断し、
ミ ュ ー テ ー シ ョ ン 法 に よ る pET19b(VP)への IKVAV コードオリ ゴDNAの導入を外部業者へ委託した。
pET19b(IKVAV-(VPGIG)60)
(pET19b(IK-VP))をクローニング用 大腸菌株(DH5α)および発現用大腸 菌株(RosettaTM(DE3)pLysS)にそ れぞれ導入した。いずれも5コロニー をピックアップして培養後、プラスミ
ドベクターを抽出・精製し、NdeI お よび XhoI切断してからアガロース電 気泳動でフラグメント長を確認した
(図28)。その結果、回収したすべ てのプラスミドベクターにおいて1 021bpのフラグメントを確認で きたことから、pET19b(IK-VP)で形質 転換されたクローニングおよび発現 用大腸菌株が得られたことが示され た。
続 い て 、 発 現 用 大 腸 菌 株
(pET19b(IK-VP)で形質転換された RosettaTM(DE3)pLysS)から IK-VP の発現を誘導した。得られた大腸菌の 破砕液を SDS-PAGE で泳動したとこ ろ、IK-VP(Mw=33911 Da)に由来 する濃いバンドが確認された(図2 9)。さらに、His タグ精製用カラム
を用いて IK-VP を吸着・溶出させた
ところ、50および250mMのイミ ダゾールを含むバッファーで溶出し
た区画に IK-VP のみが存在し、高純
度の IK-VP を得ることをできた(図
30)。最終的には、約120mg/1 L培養の大量発現系を確立することが できた。
7.配向性IK-VP−ポリ乳酸混合マイ クロファイバーの作製
まず、ポリL-乳酸のみを用い、溶液 濃度を10,15および20w%、タ ーゲット-ニードル間を10cm、印 加電圧を±5.0および±4.0 kV として円盤型ターゲットへ電界紡糸 した(図31)。その結果、ポリ L-乳 酸の濃度が10%ではファイバーに
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ならず、15%ではビーズが混在した ファイバーに、20%で均一なファイ バーが形成された(図32)。その配 向は、印加電圧が±5.0kVではラ ンダムであったが、±4.0kVにす ると溶液濃度が20%のファイバー でターゲットの回転方向に配向した。
さらに、20%のポリL-乳酸溶液を ドラム型および円板型ターゲットを 用いて、様々な回転速度で電界紡糸し た。その結果、ドラム型では1250 rpmで高速回転させると配向が揃 った。一方の円板型では、500rp mでほぼ配向が揃い、より高速に回転 させると均一性が向上した(図33)。 ドラム型ターゲット(1250rp m)で作製した配向性マイクロファイ バー不織布をステンレスチューブに 巻き付け、それをターゲットとニード ルの間に設置してポリ L-乳酸を電界 紡糸することで、長軸方向にファイバ ーが配向した内層を持つチューブの 作製できることも確認した(図34)。 ポリ L-乳酸で最適化した配向性フ ァイバー作製条件を基に、(VPGIG)60
(VP)およびIK-VPのみでの配向性 マイクロファイバーの作製を試みた。
10%のVPもしくはIK-VPのHFIP 溶液を円板型ターゲット(1000r pm)に印加電圧±5.0kVで電界 紡糸したところ、いずれもおおよそ配 向の揃ったマイクロファイバーを作 製することができた(図35)。マイ クロファイバーの直径は、IK-VPの方 が細くなる傾向があった。これは、タ ンパク質中のカチオン性残基数が多
くなったためと考えられる。得られた VPおよびIK-VPマイクロファイバー を室温(25℃)および37℃のPBS に3時間浸漬させ、その安定性を評価 した。その結果、VP では25℃およ び37℃いずれでもファイバーが完 全に溶解していた(図36)。一方の
IK-VPは、25℃では部分的なファイ
バーの溶着が認められた。37℃では ファイバーの形状を保持していたも のの、ファイバーの径が大きくなった。
これは、ファイバーが PBS に浸漬さ れることで膨潤したことを示唆して いる。そこで、アニーリングによるフ ァイバーの構造安定化を図った。VP
および IK-VP マイクロファイバーを
60℃で48時間アニーリル後、3 7℃の PBS に24時間浸漬して安定 性を評価した。その結果、VP マイク ロファイバーでは、アニーリングの有 無に関係なく溶解した。一方のIK-VP もアニールの効果は認められず、アニ ーリングしたものもファイバーの溶 着と膨潤が認められた(図37)。す なわち、VPおよびIK-VPのみで作製 したファイバーは、PBS中で安定に保 持できないことが分かった。
そのため、昨年度と同じく、VP も しくは IK-VP とポリL-乳酸を混合し た配向性マイクロファイバーの作製 を検討した。VPもしくはIK-VPとポ リ L-乳酸をそれぞれ10%とした HFIP溶液を、それぞれの回転速度、
ニードル-ターゲット間距離および印 加電圧で円板型ターゲットへ電界紡 糸した。その結果、VPとポリL-乳酸
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を混合した場合、ターゲット回転速度 1300rpm、印加電圧±6.0kV、 ニードル-ターゲット間距離15cm の条件で配向性ファイバーを作製で きた(図38)。ターゲットの回転速 度が1000rpmではファイバー の配向は揃わず、また1300rpm でも印加電圧が±7.5kVでは配向 が乱れ、±5.0kVではファイバー の噴射量(紡糸量)が少なくなった。
同様に、IK-VP とポリ L-乳酸の混合 マイクロファイバーの作製も検討し た。その結果、VP と同じく、ターゲ ット回転速度1300rpm、印加電 圧±6.0kV、ニードル-ターゲット 間距離15cmで最も配向したマイ クロファイバーが作製された(図3 9)。印加電圧が±7.5kV と大き い場合は、ファイバーの径が細くなり、
配向が乱れた。最適化した条件で作製 したVP もしくはIK-VP とポリL-乳 酸との混合マイクロファイバーを3 7℃の PBS に24時間浸漬させて、
その安定性を評価した(図40)。そ の結果、いずれもファイバーの形状は 変化せず安定に保持されていたこと から、引き続く細胞実験等にはこの混 合マイクロファイバーを用いること とした。
8.配向性IK-VP−ポリ乳酸混合マイ クロファイバー上でのラットDRGニ ューロンの接着と突起伸長挙動 それぞれ最適化した条件で30分 間紡糸することでポリL-乳酸のみ、ポ リL-乳酸と VPもしくは IK-VPを混
合した配向性マイクロファイバーを 作製し、Cell Culture Slideに挟み込 んで固定した(図41)。その上に、
播種したラットDRGニューロンを7 2時間培養後、Neurofilamentを免疫 染色で可視化した(図42)。その結 果、ポリL-乳酸のみおよびVPとポリ L-乳酸を混合したマイクロファイバ ー上では球状に接着したラット DRG ニューロンが僅かに観察されたのみ であった。一方、IK-VP とポリ L-乳 酸を混合したマイクロファイバー上 では、ラットDRGニューロン接着数 が増加し、かつニューロフィラメント 陽性の長い軸索がファイバーの配向 に沿って伸長している様子が見られ た。
また、72時間培養後の試料表面の ラットDRGニューロンの接着形態を 走査型電子顕微鏡で観察したところ、
IK-VP とポリ L-乳酸を混合したマイ ク ロ フ ァ イ バ ー 上 で の み 、 ラ ッ ト DRG ニューロンが一本のファイバー 上に接着し、その配向に沿って軸索を 伸長している様子が認められた(図4 3)。
D.考察
平成24年度に、神経再生性人工細 胞外マトリクス(AG-VP)の最適な発 現条件を設定することができた。一般 的なリコンビナントタンパク質の発 現は、大腸菌の至適温度である37℃
で行われるが、AG-VP の発現は3 0℃が適当であった。これは、AG-VP が生理的環境下でも15℃付近を境
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に高温になると凝集する特徴がある ため、低温培養での緩やかな発現誘導 が大腸菌への負担を軽減したためと 推察される。
収量(約50mg/1L カルチャー)
ではAG-VP のみを担体として用いる
ことは量的に難しいため、生体分解吸 収性高分子材料であるポリ L-乳酸と の混合化が適当と考え、AG-VP−ポリ 乳酸複合マイクロファイバーの作製 とその末梢神経再生誘導管への応用 について検討した。予備的に検討した エラスチン C を用いたポリ L-乳酸と の混合電界紡糸(エレクトロスピニン グ)では、エラスチンCの組成比が7 5w%と高濃度でも、ポリL-乳酸と混 合したマイクロファイバーは水に浸 漬しても径が細くなるのみで溶解せ ずに形状を維持していた。エラスチン C とポリ L-乳酸が均一に分布した場 合は溶解することが予想され、この結 果はエラスチン C がポリ L-乳酸のフ ァイバー周囲に存在していたことを 示唆している。エラスチンC中に存在
するVPGVG配列の繰り返しなど、疎
水性ブロックがポリ L-乳酸と相互作 用しているものと考えられた。ポリ L-乳酸(Mw:10kDa)と AG-VP との質量比を4:1として作製したマ イクロファイバーも、エラスチンCと 同様に、水に浸漬させてもファイバー の形状を保持していた。同組成比で AG73ペプチドを複合せたマイクロフ ァイバーの場合は、水に浸漬されると 部分的な変形や溶解が見られたこと から、AG-VPはポリ L-乳酸と安定に
相 互 作 用 し て い る と 考 え ら れ る 。 AG-VP とポリL-乳酸との複合マイク ロファイバー不織布上で PC12細胞 の接着および神経突起伸長が促進さ れたことと併せて考えると、ポリ L- 乳酸のファイバーをコーティングす
るように AG-VPが固定されているこ
とが示唆された。また、AG73ペプチ ドを複合させたファイバーよりも PC 12細胞に対する活性が高かったこ とから、固定された AG-VPが培地中 でも安定に保持されて機能している ことが示された。
AG-VP が複合されたポリL-乳酸マ イクロファイバーを内層に有するチ ューブをウサギ脛骨神経の欠損部へ 移植した評価では、僅かではあるが移 植2か月後の活動電位の強度および 伝達速度の僅かな向上が認められた これは、神経再生が僅かに促進された ことを示唆している。しかし、AG-VP の添加効果は有意なものではなく、
PC12細胞を用いた in vitro 評価の 結果からの想定とは大きく乖離して いた。移植2カ月後の外観観察で、縫 合部での神経様組織のチューブ外で の増殖が認められた。これは、チュー ブの内径が2mmでは細いためと考 え、内径が3mmのチューブを作製し て移植した。その際、より再生した神 経が成熟するであろう3ヶ月後に電 気生理学的に評価した。内径を2mm から3mmに変更したことで、埋入後 の神経様組織のチューブ外での増殖 を僅かに阻止することができた。これ は、チューブを縫合する際、神経組織
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を確実にチューブ内部へ誘引できた ことによるものと考えられる。移植す る個体に合わせてファイバー径を設 定するのが好ましい。AG-VP を混合 したポリ L-乳酸マイクロファイバー を内層とするチューブをウサギ脛骨 神経の欠損部へ移植して3ヶ月後に 電気生理学的に末梢神経再生を評価 したところ、活動電位のピーク平均時 間は約0.15mV程度と他のチュー ブと同様であったが、平均強度が0.
42mVとなり、他のチューブの約1.
5倍であった。健常な脛骨神経では、
活動電位のピークの平均時間は0.1 4msec、平均強度は0.86mV であることから、いずれのチューブ内 でも有髄神経が中枢-末梢間で形成さ れており、それはポリL乳酸/AG-VP 混合ファイバーが内層のチューブに おいて最も成熟していることが示唆 された。しかしながら、再生した神経 の機能は健常神経には及ばず、既存の 神経誘導管(動物由来コラーゲンを神 経再生誘導分子として使用)の報告例
(2カ月程度)と比較しても再生速度 は 遅 か っ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、
AG-VP の生体内での末梢神経再生促
進能は乏しく、より活性の高い人工細 胞外マトリクスを設計する必要があ ると考えた。
そのため、平成25年度の後半から
AG-VP と同じくエラスチン様繰り返
し配列を構造骨格とする新たな人工 細胞外マトリクスの生合成に着手し た。まず、2つの(VPGIG)30ブロック を制限酵素切断配列で連結した VP
((VPGIG)60)の発現系を構築した。
その際、大腸菌のレアコドンの発現に 適しているRosettaTM(DE3)pLysS株 を選択した。
平成26年度には、VP にラミニン 由来神経突起伸長活性 IKVAV 配列を 6つ導入した IK-VP の大腸菌発現シ ステムを構築し、約120mg/1L培 養の大量発現を実現できた。タンパク 質 1 分 子 あ た り の 活 性 配 列 数 が 、
AG-VP の6倍となり、より高い活性
が期待される。
さらに、配向性の揃った IK-VP/ポリ L-乳酸混合マイクロファイバーの作 製を検討した。ウサギ脛骨神経へ移植 したAG-VP/ポリL-乳酸混合マイクロ ファイバーは配向性がランダムであ った。PC12細胞を用いたin vitro 評価で、突起はファイバーに沿って伸 長している様子が見られた。つまり、
ファイバーの配向を揃える(チューブ の長軸側)ことで、神経軸索の伸長方 向を制御できると考えた。IK-VPのみ でマイクロファイバーを作製するこ とが最も理想的だが、タンパク質のみ では PBS に浸漬させた際に部分的な 溶着やファイバーの膨潤が認められ た。そのため、平成24ならび25年 度と同じく、ポリL-乳酸との混合系を 採用した。VP と IK-VP 共に、ポリ L-乳酸に混合させることで、生理的環 境下における安定性が飛躍的に向上 した。ポリL-乳酸との疎水的な相互作 用や、結晶間の相互作用によるものと 推測される。また、高回転の円板型タ ーゲットを用いた電界紡糸によって、
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配向性の揃ったポリ L-乳酸のみおよ び、VPもしくはIK-VPとポリL-乳酸 との混合マイクロファイバーを作製 できた。印加電圧が±7.5kV以上 になると直径の細い配向の乱れたフ ァイバーが紡糸された。試料溶液の噴 射速度(電位差が大きい方が速く移動)
が速いと、ターゲットの最高回転速度
(1300rpm)では巻き取りが追 いつかないため、配向が乱れたと考え られる。
さらに、IK-VP とポリ L-乳酸と の混合マイクロファイバー上でのみ、
ラットDRGニューロンのファイバ ーの配向に沿った軸索の伸長が認め られた。一昨年度のPC12細胞を用 いた評価と比較して、軸索の伸長が大 きく促進され、かつその方向を制御す ることができた。末梢神経再生のため の足場として使用する場合、神経断面 間の長軸方向への軸索伸長が速い神 経再生に重要であり、本研究の配向型 IK-VP とポリ L-乳酸の混合マイクロ ファイバーがそれを実現できる可能 性が示唆される。
E.結論
初年度(平成25年度)は当初の予 定に準じ、既有していたAG-VP の大 量発現系を確立し、それとポリL-乳酸 との混合マイクロファイバーの作製 を完了できた。この AG-VP/ポリ L- 乳酸混合マイクロファイバーは、in vitro評価においてPC12細胞の接着 と突起伸長を有意に向上させたこと から、in vivo 評価(動物実験)を進
めるべきと判断した。初年度のうちに、
2年次に計画していたAG-VP/ポリL- 乳酸混合マイクロファイバーよりな る神経誘導チューブの作製とウサギ 脛骨神経欠損部(2cm)への移植に 着手できた。その移植2カ月後の電気 生理学的評価の結果、ポリL-乳酸マイ クロファイバーへの AG-VPの混合に よる末梢神経再生促進効果はごく僅 かであった。外観所見において神経切 断部とチューブとの吻合部で神経様 組織のチューブ外部への増殖が見ら れたため、平成26年度はチューブ内 径を2mmから3mmに拡張した。ま た、2カ月では神経の再生が完了して いなかったことを踏まえて、移植期間 を3ヶ月に延長した。その結果、神経 様組織のチューブ外部への増殖を阻 止することはできたものの、AG-VP の添加による顕著な神経再生の亢進 は認められず、期待を反するものであ った。この時点での結果から、AG-VP はin vitro評価系では高い突起伸長活 性を有しているものの、in vivo 評価 系ではその末梢神経再生促進能が乏 しいという結論に至った。また、当初 計画していた中枢神経系への適応も、
AG-VP の生理活性では期待するよう
な効果を発揮できないであろうと判 断した。
そこで、平成26年度後半からは、
エラスチン様繰り返し配列を骨格と し、ラミニン由来の神経再生促進配列
IKVAV よりなる新たな人工細胞外マ
トリクスの設計と生合成に着手した。
そして、エラスチン様繰り返し骨格配
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列((VPGIG)60;VP)に、6つのIKVAV 配列を挿入した IK-VP の発現系を確 立できた。初年度の経験を踏まえた発 現 条 件 の 最 適 化 に よ っ て 、VP と IK-VP 共に、100mg/1L 培養を 超す大量発現系を確立することがで きた。そのため、足場材料に用いるた めのVPおよびIK-VPを充分量、継続 的に確保できると考え、VP および
IK-VP のみでなるマイクロファイバ
ーの作製を検討した。いずれも電界紡 糸(エレクトロスピニング)によるマ イクロファイバー化には成功したも のの、PBSに浸漬した際の安定性が乏 しかった。特に、神経誘導チューブと して使用する際は、神経の再生が完了 する数か月間はファイバーの形状が 保持されねばならず、IK-VPのみでな るマイクロファイバーは適さないと 判断した。そのため、AG-VP と同じ く、ポリL-乳酸との混合化によるマイ クロファイバーの安定性の向上を計 った。同時に、末梢神経再生時におけ る軸索伸長を加速させることを目的 として、配向の揃ったマイクロファイ バーの作製を検討した。その結果、VP もしくはIK-VP を混合したポリL-乳 酸マイクロファイバーの配向化に成 功し、かついずれのマイクロファイバ ーも、PBSに24時間浸漬させた際に 形 状 を 維 持 し て い た 。 続 く ラ ッ ト DRGニューロンを用いた in vitro 評 価では、生理的環境下で72時間晒さ れた際もファイバーの形状が維持さ れ て い る こ と も 確 認 し た 。 ま た 、 IK-VP とポリ L-乳酸を混合したマイ
ク ロ フ ァ イ バ ー 上 で の み 、 ラ ッ ト DRG ニューロンはニューロフィラメ ント陽性の長い軸索をファイバーの 配向に沿って伸長した。その軸索の長 さは、一昨年度にPC12細胞で見られ た10μm程度のものとは違い、長い もので50μmにも達していた。細胞 種や培養期間が異なるため直接比較 することができないものの、5倍もの 軸索長の違いは大きな活性の向上と 期待される。
研究開始当初は、エラスチン繰り返 し骨格配列を持つ人工タンパク質の 温度凝集性を利用した細胞移植担体
(移植細胞の活性・保護剤)としての 利用も検討する計画であった。しかし、
平成24−25年度に、我々が既有し ていたAG-VPのin vivoにおける末梢 神経再生促進能力が乏しかったこと をうけて、新たな人工タンパク質の設 計と生合成に舵を振って研究を遂行 した。最終年度に得た IK-VP の水溶 液に4℃で PC12細胞を分散させた 後、37℃で IK-VP を凝集させるこ とで、細胞も同時に凝集されることを 確認している。移植細胞を IK-VP の 温度凝集性を利用して保護し、かつそ の神経細胞への分化もしくは軸索伸 長の促進が可能となるような新しい 移植補助担体としての有用性が期待 される。また、エラスチン様人工タン パク質を使ったバイオマテリアルの 動物実験の報告結果から、エラスチン 骨格配列は抗原性が低いことが予測 されており、生体安全性に優れた細胞 移植用担体になりうる。
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細胞移植用担体(補助材)としての 有用性の検証には至らなかったこと は、研究計画の不充分さを反省すべき 点である。しかし、本研究プロジェク トで得た貴重な知見をもととして、引 続き、人工タンパク質(IK-VP)の神 経再生性について評価したい。
F.健康危険情報
本研究課題では遺伝子組み換え大 腸菌を取り扱っているが、遺伝子組換 え生物等の使用等の規制による生物 の多様性の確保に関する法律」、「遺伝 子組換え生物等の使用等の規制によ る生物の多様性の確保に関する法律 施行規則」及び「研究開発等に係る遺 伝子組換え生物等の第二種使用等に 当たって執るべき拡散防止措置等を 定める省令」等に基づいて遂行してお り、研究者および第三者への健康被害 等は一切生じていない。
G.研究発表 1.論文発表
1)Sachiro Kakinoki, Tetsuji Yamaoka, Thermoresponsiv e elastin/laminin mimickin g artificial protein for mod ifying PLLA scaffolds in n erve regeneration, J. Mat.
Chem. B, 2, 5061-5067 (20 14).
2)Sachiro Kakinoki, Midori Nakayama, Toshiyuki Mori tan, Tetsuji Yamaoka, Thre
e-layer microfibrous periph eral nerve guide conduit c omposed of elastin-laminin mimetic artificial protein and poly(L-lactic acid), Fro ntiers in Chemistry, 2, Art icle 52 (2014).
2.総説・著書等
1)山岡哲二、柿木佐知朗: 再生 医療のための繊維材料修飾と その評価、繊維と工業, 68(11):
314-318, 2012.
2)柿木佐知朗、山岡哲二: 神経、
再生医療における臨床研究と 製品開発(技術情報協会編)
(2013)p35-40.
3)柿木佐知朗:ペプチド複合型 バイオアクティブバイオマテ リアル−ポリ乳酸スキャホー ルドへのペプチド修飾法の開 発と末梢神経再生への展開−、
PEPTIDE NEWSLETTER
JAPAN (日本ペプチド学会
編集)、No.90, p9-13 (2013).
3.学会発表
1)柿木佐知朗、山岡哲二、ポリ 乳酸/人工細胞外マトリクス 複合型機能性神経誘導管を用 いた末梢神経再生、第11回 日本再生医療学会総会(20 12年6月13日、横浜)[国 内学会、口頭発表]
21
2)柿木佐知朗、山岡哲二、人工 ペプチド・人工タンパク質を 用いたポリ乳酸スキャホール ドの機能化と末梢神経再生医 療への応用、第61回高分子 討論会(2012年9月21 日、名古屋)[国内学会、口頭 発表]
3)柿木佐知朗、中山みどり、森 反俊幸、山岡哲二、神経疾患 治療用担体を志向したエラス チン様人工タンパク質の機能 評価、日本バイオマテリアル 学 会 シ ン ポ ジ ウ ム 2 0 1 2
(2012年11月27日、
仙台)[国内学会、ポスター発 表]
4)中山みどり、柿木佐知朗、森 反俊幸、山岡哲二、ラミニン/ エラスチン模倣人工細胞外マ トリクスとポリ乳酸を複合化 したマイクロファイバーの神 経誘導管への応用、第12回 日本再生医療学会総会(20 12年3月22日、横浜)[国 内学会、ポスター発表]
5)柿木佐知朗、中山みどり、森 反俊幸、山岡哲二、ポリ乳酸 と人工タンパク質の複合マイ クロファイバーよりなる神経 誘導管の機能評価、第59回高 分子研究発表会(2013年
7月12日、神戸[国内学会、
口頭発表]
6)Sachiro Kakinoki, Midori Nakayama, Toshiyuki Mori tan, Tetsuji Yamaoka, Nan o-fibrous conduit composed of elastin-laminin mimicki ng artificial protein and po ly (L-lactic acid) for periph eral nerve regeneration, A dvanced Materials World C ongress (September 16-19, 2013, Izumir, Turkey) [国 際学会、ポスター発表]
7)柿木佐知朗、中山みどり、森 反俊幸、山岡哲二、人工細胞 外基質よりなる神経誘導管を 用いた末梢神経再生、第51回 日本人工臓器学会大会 / 第 5 回国際人工臓器学術大会(2 013年9月27−29日、
横浜)[国内学会、口頭発表]
8)柿木佐知朗、中山みどり、森 反俊幸、山岡哲二、エラスチ ン-ラミニン人工タンパク質 を複合したポリ乳酸マイクロ ファイバーの作製と神経再生 誘導管への応用、第35回日本 バ イ オ マ テ リ ア ル 学 会 大 会
(2013年11月25−2 6日、船堀)[国内学会、口頭 発表]
22
9)柿木佐知朗、中山みどり、森 反俊幸、山岡哲二、ECM模倣 マトリクスとポリ乳酸との複 合マイクロファイバーを用い た末梢神経再生、平成26年度 繊維学会年次大会(2014 年6月11−13日、船堀)
[国内学会、口頭発表]
10)柿木佐知朗、中山みどり、
森反俊幸、山岡哲二、エラス チン‐ラミニン模倣人工タン パク質/ポリ乳酸マイクロファ イバーよりなる神経誘導チュ ーブによる末梢神経再生、第5 2回日本人工臓器学会大会(2 014年10月17−19日、
札幌)[国内学会、口頭発表] 11)Sachiro Kakinoki, Midori
Nakayama, Toshiyuki Moritan, Tetsuji Yamaoka, Electrospun Micro-Fibrous Conduits Composed of Poly(l-lactic Acid) and Elastin-Laminin Mimicking Protein for Peripheral Nerve Regeneration, 2014 TERMIS-AM Conference (December 13-16, 2014, Washington D.C., USA) [国 際学会、口頭発表]
12)柿木佐知朗、中山みどり、
森反俊幸、山岡哲二、エラス チン-ラミニン模倣人工細胞
外マトリクス混合ポリ乳酸フ ァイバーよりなる神経再生用 スキャホールドの開発、日本 化学会第95回春季年会(2 015年3月29日、日大船 橋[国内学会、口頭発表] H.知的財産権の出願・登録情報
該当なし
図1.様々なイミダゾール濃度のリン酸緩衝溶液を用いて 図1.様々なイミダゾール濃度のリン酸緩衝溶液を用いて
ィーカラムから溶出させた
図1.様々なイミダゾール濃度のリン酸緩衝溶液を用いて ィーカラムから溶出させた
図1.様々なイミダゾール濃度のリン酸緩衝溶液を用いて ィーカラムから溶出させた
23
図1.様々なイミダゾール濃度のリン酸緩衝溶液を用いて ィーカラムから溶出させたAG
図1.様々なイミダゾール濃度のリン酸緩衝溶液を用いて AG-VPのSDS
図1.様々なイミダゾール濃度のリン酸緩衝溶液を用いてHisタグアフィニテ SDS−PAGE
タグアフィニテ PAGE
タグアフィニテ
図2.最適化した条件で精製した 図2.最適化した条件で精製した 図2.最適化した条件で精製した
24
図2.最適化した条件で精製した
図2.最適化した条件で精製したAG-VPののSDS−PAGEPAGE
図3.限外濾過後に得た高純度 図3.限外濾過後に得た高純度 図3.限外濾過後に得た高純度
25
図3.限外濾過後に得た高純度AGAG-VPののSDS−PAGEPAGE
図4.様々な組成で電界紡糸したエラスチン 図4.様々な組成で電界紡糸したエラスチン 図4.様々な組成で電界紡糸したエラスチン 図4.様々な組成で電界紡糸したエラスチン
イバーの走査型電子顕微鏡像
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図4.様々な組成で電界紡糸したエラスチン
の走査型電子顕微鏡像 図4.様々な組成で電界紡糸したエラスチンC―ポリ
の走査型電子顕微鏡像
―ポリL-乳酸複合マイクロファ乳酸複合マイクロファ