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(10) 片麻痺者の歩行パターンの違いによる歩行時の筋電図 運動力学的特徴 107 (10) 片麻痺者の歩行パターンの違いによる 歩行時の筋電図 運動力学的特徴 田中惣治 1 2, 山本澄子 1 中伊豆リハビリテーションセンター, 2 国際医療福祉大学大学院 要旨麻痺側立脚期の膝関節の動きにより片麻

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片麻痺者の歩行パターンの違いによる

歩行時の筋電図・運動力学的特徴

田中惣治

1

,山本澄子

2

1

中伊豆リハビリテーションセンター,

2

国際医療福祉大学大学院

要旨 麻痺側立脚期の膝関節の動きにより片麻痺者の歩行パターンを分類し,歩行パターンの違 いにより歩行時の下肢筋活動と運動力学的特徴が異なるか,三次元動作分析装置と表面筋電計を 用いて分析した.回復期片麻痺者 35 名を対象とし,歩行時の膝関節と下腿傾斜角度から,健常 者の膝の動きと近い健常膝群(15 名),荷重応答期と単脚支持期にそれぞれ膝関節が伸展する初 期膝伸展群(5 名)と中期膝伸展群(15 名)に分類した.結果,健常膝群は荷重応答期で腓腹筋 の筋活動を抑えながら前脛骨筋が働くため十分な背屈モーメントを発揮し,踵ロッカーが機能し た.中期膝伸展群は荷重応答期で腓腹筋の筋活動が大きいため背屈モーメントが十分に発揮され ず,踵ロッカー機能が低下しており,初期膝伸展群は荷重応答期で前脛骨筋の筋活動が小さく背 屈モーメントが発揮されないことから,踵ロッカーが機能しないことが明らかになった. キーワード:片麻痺者,歩行パターン,歩行分析,筋活動,関節モーメント

1 .はじめに

脳血管障害による脳損傷片麻痺者(以下,片麻痺 者)の患者数は国内で 124 万人以上であり,理学療 法士が生涯で片麻痺者のリハビリテーションに関わ る割合は 86.9 %と多くの疾患の中で最も高いとい われている 1).脳血管障害は歩行障害が予測される 疾患の中で最も多く,片麻痺者における歩行機能の 改善はリハビリテーションの重要な目標の一つとい える.片麻痺者の歩行能力改善のため,臨床では関 節可動域訓練や筋力強化訓練と併せて歩行訓練を行 っているが,歩行訓練において対象者の歩行能力の 評価や理学的所見との照合による歩行分析は欠かせ ない.対象となる片麻痺者がどのような歩き方でど のような点が問題となっているか,理学療法士が評 価をし,その評価に基づき治療や歩行訓練を行うこ とが必要である.臨床では片麻痺者の歩行を評価す るにあたり,理学療法士の観察による歩行分析が広 く行われている.しかし,観察による評価には明確 な基準がないことから,理学療法士の力量や経験に 委ねられているのが現状である.多種多様な歩容を 呈する片麻痺者の歩行を評価するにあたり,個々の 片麻痺者の歩行の特徴を捉えた客観的な指標が求め られる. 片麻痺者の歩行分析は多くの研究があるが,どの 研究でも共通する見解としてデータのばらつきが大 きいことがあげられる.片麻痺者はばらつきが大き

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く個別性があるため,全体としてみると歩行速度の 低下や歩行の非対称性,底屈モーメントの減少など の情報を得るにとどまり,臨床で歩行分析を行う際 に有用な情報が得られているとは言い難い.計測器 を使用した片麻痺者の歩行の計測から,臨床で歩行 分析を行う際に役立つ情報を得るためには,どのよ うな歩き方の片麻痺者がどのような点が問題となっ ているかを知る必要がある.そのためには,片麻痺 者の歩行を分類し,歩行分類別に筋電図的・運動力 学的特徴を明らかにすることが重要と考える. 先行研究では歩行分析によって片麻痺者の歩行を 分類する試みが行われている.Quervain ら 2)は筋 力や痙性,バランス能力などの臨床評価との関連か ら分類を行い,結果として歩行速度が遅い片麻痺者 は立脚期に膝関節が伸展する歩行(以下,膝伸展パ ターン)や,膝関節が過剰に屈曲する歩行(以下, 膝屈曲パターン),立脚期に膝関節がほぼ固定され ている歩行(以下,固定膝パターン)に分類される としている(図 1).これらの歩行パターンは臨床 においても多くみられることから,片麻痺者の歩行 を麻痺側立脚期の膝関節で分類することは有用と考 える. 臨床では膝伸展パターンは片麻痺者麻痺側下肢の 接地直後から膝関節が伸展する歩容と,立脚中期以 降に膝関節が伸展する歩行がみられる.両者は同じ く膝関節が伸展する歩行であるが,身体能力や歩行 能力が大きく異なることが多く,これらを区別して 評価・治療を行うことが多い.しかし,膝関節が伸 展する片麻痺者を 2 つに分類する意義については議 論が十分にはなされておらず,それぞれの歩行の特 徴は明らかになっていない.臨床で多くみられる膝 伸展パターンの片麻痺者において,膝関節が伸展す るタイミングで膝伸展パターンを 2 つに分けるべき か,検証が必要である. そこで本研究の目的は以下とする. 目的 1:臨床現場で多くみられる麻痺側立脚期に 膝関節が伸展するパターンの片麻痺者を膝関節が伸 展するタイミングで 2 つに分けることが可能か,検 証する. 目的 2:片麻痺者の歩行パターン別に,歩行時の 運動力学的特徴と筋電図的特徴を明らかにする. 本研究では片麻痺者の歩行を分析するにあたり, 歩 行 で 重 要 で あ る ロ ッ カ ー 機 能 に 着 目 し た. Perry 3)は,正常歩行の理論として立脚期の下肢ロ ッカー機能を提唱した.歩行遊脚期から荷重応答期 に向けて下へ向かう身体重心は前方への動きに変換 されなければならない.そのため踵,足関節と中趾 指節間関節が対応する必要があり,変換の際の複合 的な行程を揺り椅子(ロッキングチェア)になぞら え,ロッカー機能と呼ぶ(図 2 左).ロッカー機能 には,荷重応答期の踵ロッカー,単脚支持期の足関 節ロッカー,立脚終期(観察肢の踵が離れた瞬間か ら反対側の初期接地まで)の前足部ロッカーがある. 踵ロッカーは踵,足関節ロッカーは足関節を,前足 部ロッカーは中足骨頭をそれぞれ支点とし回転する (図 2 右). 踵ロッカーで作用する筋として,遊脚期から起こ る前脛骨筋の収縮は踵の接地後には踵を中心に下腿 を前方に引っ張る力に変換される.踵を中心とし, 底屈運動と同時に下腿を前傾させることで前上方へ の推進力を形成する.この力と大腿四頭筋,大殿筋 図 1 麻痺側膝関節の動きによる歩行パターン分類(文献 2 より改変) 膝が過剰に伸展するパターン 膝が過剰に屈曲するパターン 膝屈曲位を歩行周期で 維持するパターン

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が同時に働くことで大腿・骨盤に力が伝達され,結 果的に身体重心を前方へ移動させるための推進力を 形成することになる.また,立脚中期に下腿三頭筋 の遠心性収縮が足関節を中心とした重心の移動をコ ントロールし,下腿の前傾を制御し前方移動を促す. これが足関節ロッカーで作用する筋である. 本研究では片麻痺者の歩行パターンの違いにより, ロッカー機能が作用するか分析することとした.

2 .方法

2.1 対象 2013 年 9 月から 2014 年 9 月まで,中伊豆リハビ リテーションセンターに入院した回復期片麻痺者で, 選定基準である,短下肢装具を装着しない場合でも 杖を使用して見守りで歩行が可能,感覚機能が脱失 していない,足関節背屈可動域が他動で 0°以上, 失調症状がない,を満たした者を対象とした.中伊 豆リハビリテーションセンターでは研究期間に合計 192 人の片麻痺者が入院し,その中から対象者の基 準に合わせて 45 人を選出した.参加する同意書を 得られたのは 45 人で,目視による歩行パターン分 類で膝屈曲パターンや固定膝パターンを除外した 35 人のデータを得た.対象者の年齢は 60.4±11.7 歳,身長 161.2±8.7 cm,体重 60.7±10.4 kg,性 別は男性 29 名,女性 6 名,麻痺側は右 6 名,左 29 名,発症後日数 97.1±54.5 日であった. なお,本研究はヘルシンキ宣言に従って行い,中 伊豆リハビリテーションセンター倫理審査委員会 (承認番号 24-002)と国際医療福祉大学倫理委員会 (承認番号 13-Ig-46)の承認を得て実施した.対象 者には研究の目的,方法などについて口頭と文章で 説明し同意が得られてから研究を実施した. 2.2 計測方法 計測環境は歩行路が 8m からなる計測空間で,そ の中央部に床反力計(AMTI 社製)を 6 枚配置し た (図 3). VICON 社製の三次元動作解析装置 VICON-NEXUS(カメラ 8 台)と床反力計を使用し た.床反力計の出力は VICON のアナログチャンネ ルに接続し,電気的に同期した.筋電計は有線コー ドで VICON のアナログチャンネルに接続し電気的 に同期した.各計測機器のサンプリング周波数は赤 外線カメラ(100 Hz),床反力計(1000 Hz),筋電 計(1000 Hz)とした. 三次元動作計測にあたって,身体に φ14 mm の 赤外線反射マーカーを,臨床歩行分析研究の推奨と 図 3 計測空間 図 2 歩行のロッカー機能(文献 3 より改変) 踵 ロッカー ロッカー足関節 ロッカー前足部 揺り椅子 ロッキングチェア

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先行研究にしたがって 4),頚骨切痕,胸骨柄,第 2 胸椎棘突起,第 7 胸椎棘突起,両肩峰,両上腕骨外 側上顆,両橈骨尺骨茎状突起中央,両上前腸骨棘, 両上後腸骨棘,両股関節(上前腸骨棘と大転子を結 ぶ遠位 1/3 点),両大腿部,両膝関節内外側(大腿 骨外側上顆の高さで膝蓋骨を除いた膝の前後径の中 央の内外側),両下腿部,両外果,両内果,両踵部, 両第 2 中足骨頭部,両第 5 中足骨頭部の計 34 点に 貼付した(図 4).

EMG 計測には表面筋電計 Power  Lab(4assist 社 製)を使用した.電極設置個所は,SENIAM(Sur-face  Electromyography  for  the  Non-Invasive  Assessment  of  Muscles)が推奨する位置を参考に した.被験筋は麻痺側前脛骨筋,腓腹筋外側頭,内 側広筋,大腿直筋,大腿二頭筋とし,図 5 のように 電極を設置した.筋電位の検出には 4assist 社製の アクティブ電極を用い,電極間距離は 1cm の範囲 内で一定に定めた.電極装着時は,電極抵抗を少な くするためアルコールおよびスキンピュア(日本光 電社製)で表面の角質層及び脂肪分を除去し十分な 処理を行った.歩行時のアーチファクトや高周波成 分の混入を避けるため,リード線は関節をまたがな いように短くしスキンテープで固定した. 2.3 歩行パターンの分類方法 三次元動作分析装置で得られた麻痺側立脚期の矢 状面における膝関節角度と下腿傾斜の角度(計測空 間上の絶対角度)から,片麻痺者の歩行を以下のよ うに定義し分類した. 健常膝群: 歩行時の麻痺側立脚期の荷重応答期で膝 屈曲がみられ,立脚期で下腿が常に前傾 し,下腿傾斜角度の極小値が存在しない 歩行を示す群 中期膝伸展 群:歩行時の麻痺側立脚期の荷重応答期 で膝屈曲がみられるが,荷重応答期から 単脚支持期で下腿が後傾し,単脚支持期 に下腿傾斜角度の極小値が存在する歩行 となる群 初期膝伸展 群:歩行時の麻痺側立脚期の荷重応答期 で膝屈曲がみられず,荷重応答期に下腿 が後傾し,荷重応答期に下腿傾斜角度の 極小値が存在する歩行となる群 上記の定義に従い,本研究の対象者 35 名は健常 膝群 15 名,中期膝伸展群 15 名,初期膝伸展群 5 名 に分類された.歩行パターン別の基礎情報を表 1 に 示す. 男 女 右 左 脳出血 脳梗塞 健常膝群 61.6 ± 10.1 158.9 ± 9.3 59.4 ± 7.3 93.9 ± 10.1 10 5 6 9 7 8 中期膝伸展群 58.1 ± 14.1 164.4 ± 8.4 64.2 ± 13.0 89.3 ± 52.8 14 1 1 14 5 10 初期膝伸展群 64.0 ± 6.3 158.3 ± 7.1 53.4 ± 7.1 130.2 ± 44.8 2 3 2 3 3 2 診断名(人) 年齢(歳) 身長(cm) 体重(kg) 発症からの日数(日) 性別(人) 麻痺側(人) 図 4 赤外線反射マーカー貼付位置 図 5 筋電図電極貼付位置 表 1 歩行パターン別の基礎情報

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2.4 歩行パターンの分類の妥当性の検討 歩行パターン分類の妥当性の評価として,3 つの 歩行パターンにおいて身体機能と歩行能力を比較し, 歩行パターンにより身体機能と歩行能力が異なるか 検討した. 身体機能評価の項目は,麻痺の評価として下肢 Brunnstrom  Recovery  Stage(以下,BRS),筋緊張 の 評 価 と し て 足 関 節 底 屈 筋 Modified  Ashworth  Scale(以下,足底屈 MAS),バランスの評価として Fugel  Meyer  Assessment(以下,FMA)のバラン ス項目,歩行能力の評価として至適 10 m 歩行速度 を測定した. 2.5 歩行パターン別の運動力学的パラメータ と筋電図解析 (1)運動力学的特徴の解析方法 三次元動作解析装置によって得られたデータは, C-motion 社製の Visual3D を用いてマーカー座標に 遮断周波数 10Hz の Butterworth  filter をかけた. 同ソフトウェアを用いて,麻痺側足関節角度,下腿 傾斜角度,関節モーメント,麻痺側足圧中心(Cen-ter of Pressure:以下,COP)移動量を求めた.足 関節角度は,貼付したマーカーから足部と下腿の剛 体リンクモデルを作成し,足部と下腿のセグメント からオイラー角を用いて算出しした.関節モーメン トの値は同ソフトウェアを用いて計算し,身長と体 重で正規化した.また,COP 移動量は身長で正規 化した.運動力学的データは 3 ~ 5 試行分のデータ から平均値を求めた. 歩行の相分けについてはランチョ・ロス・アミー ゴ方式を採用し,歩行の立脚期を荷重応答期(観察 側初期接地~反対側つま先離れ),単脚支持期(反 対側つま先離れ~反対側初期接地),前遊脚期(反 対側初期接地~観察側つま先離れ),遊脚期(観察 側つま先離れ~観察側初期接地)に分類した. 解析項目に関して,膝伸展するパターンの片麻痺 者は膝関節が伸展する時期により初期膝伸展群と中 期膝伸展群に分類されたことから,本研究では膝関 節伸展運動が生じる荷重応答期と単脚支持期に着目 して分析することとした.荷重応答期と単脚支持期 に重要な機能である踵ロッカーと足関節ロッカーに 着目し,先行研究にならい以下の項目を解析した 5) 踵ロッカー機能の評価項目として,麻痺側初期接 地時の踵接地の有無を確認するため麻痺側初期接地 時の足関節角度を求め,荷重応答期の麻痺側足関節 背屈モーメント,膝関節伸展モーメント,股関節伸 展モーメントの最大値を分析した.本研究では,踵 接地がみられ荷重応答期において足関節背屈モーメ ントが十分に発揮されている状態を「踵ロッカーが 機能している」と定義した. また,足関節ロッカーの評価項目として単脚支持 期の麻痺側足関節底屈モーメント,膝関節伸展モー メント,股関節伸展モーメントの最大値,単脚支持 期の COP 前方移動量を分析した.本研究では,単 脚支持期において足関節底屈モーメントが十分に発 揮されている状態を「足関節ロッカーが機能してい る」と定義した. (2)筋電図解析 筋電計測機器で得られた EMG データの処理は, Matlab(Mathwork 社 製) を 使 用 し, 20Hz ~ 250Hz で Band-pass  filter をかけ,歩行中のアーチ ファクトや高周波ノイズの影響を除外した後に,床 反力計から得られたデータを基に歩行の立脚期を相 分けしたデータを解析データとして採用した.筋電 図の解析は 100 サンプル(0.1 秒)毎に RMS(Root  Mean Square:二乗平均平方根)値を求め,麻痺側 で 10 歩行周期分のデータを算出した.筋電図デー タの正規化方法に関しては,先行研究 6)から 1 歩行 周期の平均値で正規化する方法を採用した.本研究 では,個々の筋の歩行周期中の筋活動の大小をみる ため,筋電図データは荷重応答期,単脚支持期の各 期の RMS 値の平均を求め,これを 1 歩行周期の RMS 値の平均で除し筋活動 RMS 比とし,1 歩行周 期における筋活動パターンの指標とした. 2.6 統計処理 身体機能評価と歩行能力の評価,運動力学的特徴 の評価は歩行パターンの間で steel-Dwass の多重比 較検定を用いて比較した.

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筋活動の評価は歩行パターン間の比較が困難であ るため,歩行パターン別に Willcoxn の符号付順位 検定を用いて荷重応答期と単脚支持期の各筋の筋活 動を比較した. 統計処理には統計ソフト R2.8.1 を使用し,有意 水準は 5 %とした.

3 .結果

3.1 歩行パターンの分類の妥当性の検討 片麻痺者の歩行パターンの間で比較した下肢 BRS と足底屈 MAS の結果を表 2 に,FMA の結果 と歩行速度の結果を表 3 に示した. 初期膝伸展群は健常膝群と比較して下肢 BRS, 下肢 FMA が有意に低かった.歩行速度は健常膝群 と中期膝伸展群と比較し,初期膝伸展群で有意に遅 かった.足底屈 MAS は 3 群間で有意差は認められ なかった. 3.2 歩行パターン別の運動力学的特徴の結果 片麻痺者の歩行パターンで比較した歩行時の麻痺 側初期接地時における足関節角度,荷重応答期の麻 痺側足関節・膝関節・股関節モーメント,単脚支持 期の麻痺側足関節・股関節モーメントと単脚支持期 の COP 前方移動量の結果を示す(図 6 a~g). 麻痺側接地時の足関節底屈角度は健常膝群と比較 し中期膝伸展群と初期膝伸展群で有意に大きかった. 荷重応答期の足関節背屈モーメントと膝関節伸展 モーメントは,健常膝群と比較し中期膝伸展群と初 期膝伸展群で有意に小さかった.初期膝伸展群は荷 重応答期で足関節背屈モーメントが生じなかった. 単脚支持期の足関節底屈モーメントは健常膝群と 比較し初期膝伸展群で有意に小さかった.単脚支持 期の膝関節伸展モーメントは健常膝群と比較し,中 期膝伸展群と初期膝伸展群で有意に小さかった.単 脚支持期の股関節伸展モーメントは健常膝群と比較 し中期膝伸展群で有意に大きかった.単脚支持期の COP 前方移動量は,健常膝群と比較し初期膝伸展 群で有意に小さかったが,健常膝群と中期膝伸展群 では有意差が認められなかった. Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ * 0 1 1+ 2 健常膝群 0 2 3 10 6 4 4 1 中期膝伸展群 3 4 3 5 5 6 2 2 初期膝伸展群 3 2 0 0 0 3 1 1 下肢BRS 足底屈MAS 健常膝群 12 ( 12 - 13 ) 0.79 ( 0.70 - 0.94 ) 中期膝伸展群 12 ( 11 - 12 ) 0.63 ( 0.37 - 0.7 ) 初期膝伸展群 10 ( 9 - 11 ) 0.26 ( 0.16 - 0.27 ) FMA(点) 歩行速度(m/sec) ** ** * 表 2 歩行パターン間の下肢 BRS と足底屈 MAS の比較 表 3 歩行パターン間の FMA と歩行速度の比較 *:p<0.05 **:p<0.01 第1列 第2列 第3列 箱ひげ図--1因子3群以上(中央値/四分位/範囲) * * 健常 膝群 膝伸展群中期 膝伸展群初期 足 関 節 角 度 ° 背 屈 + * 図 6a 歩行パターン別の麻痺側初期接地時の足関節角度

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** 第1列 第2列 第3列 箱ひげ図--1因子3群以上(中央値/四分位/範囲)** 関 節 モ ー メ ン ト : 底 屈 + 健常 膝群 膝伸展群中期 膝伸展群初期 ** 第1列 第2列 第3列 箱ひげ図--1因子3群以上(中央値/四分位/範囲) 健常 膝群 膝伸展群中期 膝伸展群初期 関 節 モ ー メ ン ト : 伸 展 + * 第1列 第2列 第3列 箱ひげ図--1因子3群以上(中央値/四分位/範囲) 健常 膝群 膝伸展群中期 膝伸展群初期 関 節 モ ー メ ン ト : 伸 展 + * ** 第1列 第2列 第3列 箱ひげ図--1因子3群以上(中央値/四分位/範囲)** 健常 膝群 膝伸展群中期 膝伸展群初期 関 節 モ ー メ ン ト : 伸 展 + ** ** 第1列 第2列 第3列 箱ひげ図--1因子3群以上(中央値/四分位/範囲) 健常 膝群 膝伸展群中期 膝伸展群初期 関 節 モ ー メ ン ト : 底 屈 + ** 第1列 第2列 第3列 箱ひげ図--1因子3群以上(中央値/四分位/範囲) 前 方 移 動 量 ** 健常 膝群 膝伸展群中期 膝伸展群初期 ** ** 図 6 b 歩行パターン別の荷重応答期における麻痺側足関節モ ーメント 図 6 d 歩行パターン別の荷重応答期における麻痺側股関節モ ーメント 図 6 f 歩行パターン別の単脚支持期における麻痺側股関節モ ーメント 図 6 c 歩行パターン別の荷重応答期における麻痺側膝関節モ ーメント 図 6 e 歩行パターン別の単脚支持期における麻痺側足関節モ ーメント 図 6 g 歩行パターン別の単脚支持期における COP 前方移動

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3.3 歩行パターン別の筋電図学的特徴の結果 片麻痺者の歩行パターン別の麻痺側荷重応答期と 単脚支持期の下肢筋活動の結果である(表 4). 健常膝群と中期膝伸展群は,前脛骨筋,内側広筋, 大腿直筋,大腿二頭筋の筋活動比が単脚支持期と比 較し荷重応答期で有意に大きかった.初期膝伸展群 は前脛骨筋,内側広筋,大腿直筋,大腿二頭筋の筋 活動比に荷重応答期と単脚支持期で有意差を認めな かった. 健常膝群は,腓腹筋の筋活動比が荷重応答期と比 較し単脚支持期で有意に大きかったが,中期膝伸展 群と初期膝伸展群は腓腹筋の筋活動比が荷重応答期 と単脚支持期で有意差を認めなかった.

4 .考察

4.1 歩行パターン分類の妥当性の検討 下肢 BRS と FMA の結果から,初期膝伸展群は 健常膝群と比較し麻痺が重度で,バランス機能が低 いことがわかった.同様に,歩行速度においても初 期膝伸展群は健常膝群と比較し有意に遅くなった. 本研究の健常膝群は約 0.79 m/s の歩行速度であり, 中期膝伸展群は約 0.63 m/s の歩行速度であったが, こ れ は Perry ら 7)の speed-based  classification で

limited community ambulator(制限はあるが屋外歩 行が可能)に分類される.また,初期膝伸展群は約 0.26m/s となり,house  hold  ambulator(屋内のみ の歩行)に分類される.初期膝伸展群と中期膝伸展 群の間で麻痺の程度やバランス機能に有意差はみら れなかったが,初期膝伸展群は歩行速度が健常膝群 と中期膝伸展群と比較し明らかに遅く,歩行速度の 分類で異なる分類に属することから,膝伸展パター ンを中期膝伸展群と初期膝伸展群に分類することは 妥当であると考える. 4.2 歩行パターン別の運動力学的・筋電図的 特徴について (1)健常膝群の特徴(図 7) 健常膝群は,中期膝伸展群と初期伸展群と比較し 初期接地時の足関節底屈が小さく,荷重応答期の足 関節背屈モーメントと膝関節伸展モーメントが有意 に大きかった.荷重応答期における股関節伸展モー メントは 3 つの歩行パターンの間で有意差を認めな かったが,健常膝群は股関節伸展モーメントが最も 大きく発揮された.健常膝群は踵接地が可能であり, 荷重応答期で足関節背屈・膝関節伸展・股関節伸展 モーメントが発揮された.また,健常膝群は前脛骨 筋,大腿四頭筋の筋活動比が単脚支持期と比較し荷 重応答期の大きかったことから,荷重応答期におけ る足関節背屈モーメントと膝関節伸展モーメントの 発揮は,前脛骨筋と大腿四頭筋の筋活動によるもの と考えられる.健常膝群の片麻痺者は,健常者と同 様に荷重応答期で身体を前方へ移動させるための前 脛骨筋と大腿四頭筋の筋活動が十分に得られるため, 足関節背屈モーメントと膝関節伸展モーメントを十 分に発揮でき,踵ロッカーが機能しているといえる. 健常膝群は単脚支持期で腓腹筋の活動が大きく, 十分な足関節底屈モーメントが発揮でき,COP を 前方に移動させることができたことから,足関節ロ ッカーが機能していると考えられる. (2)中期膝伸展群の特徴(図 8) 中期膝伸展群は健常膝群と比較し底屈位で接地し, 表 4 歩行パターン別の歩行時の下肢筋活動の比較 腓腹筋 前脛骨筋 内側広筋 大腿直筋 大腿二頭筋 健常膝群 荷重応答期  95.1( 85.8-129.1)**111.5(100.6-134.3)**241.5(191.3-253.6)**217.2(179.5-237.3)**146.6(119.2-168.2)* 単脚支持期 129.6(111.8-150.3)  62.7( 41.3- 71.7) 111.3( 89.9-122.7)  89.8( 73.5- 98.5) 112.1(100.1-135.6) 中期膝伸展群 荷重応答期  97.7( 86.2-143.8)  80.5( 70.2- 96.3)**216.8(171.9-264.2)**149.5(120.7-191.1)* 168.2(151.0-221.9)** 単脚支持期 116.2(106.0-140.4)  46.1( 30.7- 57.1) 118.7( 99.5-149.9) 117.5( 93.5-148.0) 129.5( 99.9-148.1) 初期膝伸展群 荷重応答期 118.2(102.5-131.9)  95.3( 82.4-160.2) 128.6(104.9-160.2)  98.7( 96.2-156.8) 159.5(123.3-175.5) 単脚支持期 104.5(103.0-107.1) 100.8( 96.6-121.0) 151.5(110.2-231.4) 113.4( 93.8-230.1) 175.0(137.6-203.0) 表記は中央値(四部位範囲). *:p<0.05,**:p<0.01.

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荷重応答期で足関節背屈モーメント,膝関節伸展モ ーメントが有意に小さかった.筋活動に関しては, 中期膝伸展群は健常膝群と同様に,前脛骨筋,大腿 四頭筋の筋活動比が単脚支持期と比較し荷重応答期 で大きかったが,腓腹筋の筋活動比は荷重応答期と 単脚支持期で有意差がみられなかった.健常膝群で は前脛骨筋は荷重応答期で筋活動比が大きく,腓腹 筋は単脚支持期で筋活動比が大きい.そのため,健 常膝群では背屈モーメントが十分に発揮されると考 える.一方,中期膝伸展群では前脛骨筋は荷重応答 期で筋活動比が大きいが,腓腹筋では荷重応答期の 筋活動比が単脚支持期のと同程度に大きく,荷重応 答期には前脛骨筋と腓腹筋の同時収縮が生じている と考える.そのため,中期膝伸展群では荷重応答期 の背屈モーメントが小さかったと考える. 中期膝伸展群は健常膝群と比較し底屈位で接地し 荷重応答期で足関節背屈モーメント,膝関節伸展モ ーメントが有意に小さかったことから,踵ロッカー 機能が低下しているのが特徴である. 中期膝伸展群は健常膝群と比較し,単脚支持期で 股関節伸展モーメントが大きかった.また,筋活動 の結果から,荷重応答期と比較し単脚支持期の大腿 二頭筋の筋活動比は小さかった.つまり,単脚支持 期での股関節伸展モーメントは大腿二頭筋の活動で はなく股関節伸展筋である大殿筋の活動であると推 測できる.これは,荷重応答期における足関節背屈 モーメントと膝関節伸展モーメントによる前方への 推進力の不足を股関節伸展モーメントで代償してい るためと考えられる.健常者であれば単脚支持期以 降は股関節屈曲モーメントに切り替わるが,中期膝 伸展群は荷重応答期から単脚支持期において,股関 節伸展筋群が大きく活動することにより大腿骨を後 方に引く力が働き,大腿骨が前傾する.結果,床反 力が膝関節軸の前方を通り,床反力による膝関節伸 展モーメントが発生する.この床反力による膝関節 伸展モーメントに抗することができず,麻痺側膝関 節が伸展すると考えられる. (3)初期期膝伸展群の特徴(図 9) 初期膝伸展群は健常膝群と比較し荷重応答期で膝 関節伸展モーメントが有意に小さかった.初期膝伸 展群は底屈位で接地し,足関節背屈モーメントが生 じずに底屈モーメントが生じた.筋活動の結果より, 初期膝伸展群は前脛骨筋,大腿四頭筋の筋活動比が 荷重応答期と単脚支持期で有意差を認めなかった. つまり,初期膝伸展群は荷重応答期において前脛骨 図 7 健常膝群の運動力学的・筋電図的特徴 図 8 中期膝伸展群の運動力学的・筋電図的特徴 図 9 初期膝伸展群の運動力学的・筋電図的特徴 荷重応答期 単脚支持期 前脛骨筋の 活動大 腓腹筋の 活動小 足背屈 モーメント大 大 四頭筋 筋活動 大 腓腹筋 筋活動 大 足底屈 モーメント大 膝伸展 モーメント大 荷重応答期 腓腹筋の 活動大 前脛骨筋の 活動大 足背屈 モーメント小 単脚支持期 足底屈 モーメント大 大 四頭筋 筋活動 大 足底屈 モーメントが発揮 膝伸展 モーメント 小 大 四頭筋 筋活動 小 前脛骨筋 筋活動 小 足底屈 モーメント小 単脚支持期 荷重応答期 腓腹筋 筋活動 小

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筋と大腿四頭筋の筋活動が不足し,膝関節モーメン トと足関節背屈モーメントが発揮できない.Bur-ridge 8)や Perry 9)らは片麻痺者では荷重応答期にお ける前脛骨筋の筋活動が不足するとしているが,本 研究の初期膝伸展群は先行研究の内容と一致するも のである.荷重応答期の前脛骨筋の筋活動は,踵ロ ッカーにおいて前方への推進力を得るために重要で あることから,初期膝伸展群は荷重応答期で前脛骨 筋の筋活動が不足することで,前方への推進力を生 み出すことができず,踵ロッカーが機能していない といえる. また,初期膝伸展群は下腿三頭筋の筋活動比が荷 重応答期と単脚支持期で差がみられなかったことか ら,下腿三頭筋の筋活動を単脚支持期で高めること ができない.したがって,足関節底屈モーメントが 小さく,下腿前傾の制御が行えず,COP を前方に 移動させることができない.これは足関節ロッカー が機能していないことを意味する. 本研究により,麻痺側立脚期の膝関節と下腿の動 きで片麻痺者の歩行パターン別に分類し,歩行時の 運動力学的・筋電図的特徴を明らかにしたことで, 経験に左右されやすい歩行分析の着眼点を明確にす ることができた.本研究のよる歩行パターン分類は, 麻痺側立脚期の膝関節と下腿傾斜の動きに着目する ため,臨床現場で観察による歩行分析を行う上で実 用性は高いと考えられ,理学療法評価や治療に有益 な情報となる. 参考文献   1)  財団法人日本理学療法士協会:  理学療法白書 ,  30-44,  アイペック ,(2005).   2)  De Quervain IA, Simon SR, Leurqans S, Pease WS and  McAllister  D :  Gait  pattern  in  the  recovery  period  after  stroke,  J Bone Joint Surg Am,  78,  1506-1514, (1996).

  3)  P e r r y   J ,   B u r n f i e l d   J M .   :  G a i t   a n a l y s i s : Fundamentals,Normal  gait.  2nd  ed.,  33-120,  Slack, (2010).

  4)  Wu  G,  Siegler  S,  Allard  P,  Wu,  Allard  P,  Kirtley  C,  Leardini A, Rosenbaum D, Whittle M, D’Lima DD, Cris- tofolini L, Witte H, Schmid O and Stokes I.: ISB recom-mendation  on  definitions  of  joint  coordinate  system  of  various joints for the reporting of human joint motion-part Ⅰ:  ankle,hip,and  spine,  J Biomech,  35,  543-548, (2002).

  5)  Yamamoto S, Fuchi M and Yasui T.: Change of rocker  function  in  the  gait  of  stroke  patients  using  an  ankle  foot  orthosis  with  an  oil  damper:  immediate  changes  and  the  short-term  effects.,  Prosthet Orthot Int,  35,  350-359,(2011).

  6)  Yang  JF  and  Winter  DA.:Electromyographic  ampli- tude normalization methods:Improving their sensitiv-ity as diagnostic tools in gait analysis, Arch Phys Med Rehabil, 65, 517-521,(1984).

  7)  Perry J, Garrett M, Gronley JK and Mulroy SJ.: Classi-fication  of  walking  handicap  in  the  stroke  population.,  Stroke, 26, 982-989,(1995).

  8)  Burridge  JH,  Wood  DE  and  Taylor  PN.:  Indices  to  describe different muscle activation patterns indentified  during  tredmill  walking  in  people  with  spastic  drop  foot, Med Eng Phys, 23, 427-434,(2001).

  9)  Perry J.: Determinants of muscle function in the spas-tic lower extremity, Clin Orthp, 288:10-26,(1993).

(11)

Kinetics and Electromyographic Analysis

of Hemiparetic Gait Patterns in Patients

Soji TANAKA

1

, Sumiko YAMAMOTO

2

1

Department of Rehabilitation, Nakaizu Rehabilitation center,

2

Department of Assistive Technological Science, International University of Health

and Welfare, Graduate School

Abstract This study aimed to classify hemiparetic gait according to knee joint motion of the paretic limb

during the stance phase. Knee joint angle and shank vertical angle in the sagittal plane were used to clas-sify 35 hemiparetic patients into one of three groups: normal knee pattern(NKP, 15 patients), extension thrust pattern in loading response(ETP-LR, 15 patients), and extension thrust pattern in single stance (ETP-SS, 5 patients). Gait and electromyography were measured and groups were compared. Results

showed that the NKP group had sufficient activity in the tibia anterior and sufficient dorsiflexor moment in loading response, and thus had heel rocker function. The ETP-SS group had excessive gastrocnemius mus-cle activity, which reduced dorsiflexion moment in the loading response. Lastly, the ETP-LR group did not show tibia anterior muscle activity in the loading response and thus had no heel rocker function.

参照

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