51 近年,企業間における技術的水準が次第に同質的となり,製品やサービスにおける本質的な差 別化が困難になってきた。本論文では,激化する企業間競争から抜け出すためにはブランドが鍵 を握るとの考えから,ブランド論に着目した。
マーケティングの分野においては,理論,実務を問わず,ブランドに対して活発な議論が続け られてきた。特に企業ではいかに自社ブランドを有効的に管理するか,ブランド力を高めるには どうするべきか,ブランドを通して消費者との関係性をどう構築するか等,様々な取り組みが行 われてきている。その中でもブランドを通して消費者との関係性をどう構築するかが重要な点で あり,消費者とよい関係性を構築するために,消費者とブランドの関係を明らかにしたいと考え た。そのため,本論文においては消費者とブランドの関係の中でも,ブランドに対する知覚品質 と自己概念の関係に焦点を絞り,関係性を明らかにすることを目的とする。
まず,仮説を導出するために既存研究のレビューを行う。第1章の前半部分においては本研究 のメインテーマであるブランドについて,その起源,定義,機能,階層性を中心に整理する。第 1章の後半部分では様々な研究者が唱えるブランド・エクイティについて,大きく分けてマーケ ティング的視点で捉えたブランド・エクイティ論と財務・会計的視点で捉えたブランド・エクイ ティ論という2つの視点からレビューを行う。
第2章では,知覚品質に関するレビューを行う。ここでは主にZeithaml(1988)の知覚品質
の概念とSteenkamp(1990)の知覚品質の概念をレビューし,2つの概念を比較検討していく。
第3章では,自己概念に関する概念について,Jamesによる「自己の二重性」,Cooleyの鏡映 自己,Meadによる自己,Neisserによる「5つの自己」,Shavelsonらによる定義,Rogersによ る定義,Brackenによる定義,榎本・安藤・堀毛(2009)による自己概念を順にレビューしてい く。
第4章では,第3章までのレビューをもとに本論文のフレームワークと仮説を構築する。構築 された仮説は以下のようになった。
仮説1:自己概念は知覚品質に有意な影響を及ぼしている。
仮説2:自己概念のタイプによって,知覚品質に対する影響は異なる。
第5章では,前半でブランドに対する知覚,自己概念についてのアンケート設計を行い,後半 で分析を行う。後半ではアンケートの質問内容についての信頼性分析を行う。その上でブランド の知覚品質については平均分析,自己概念については因子分析を行う。因子分析によって因子が 抽出された場合には,ここで因子ごとに知覚品質に与える影響についての仮説を構築する。その 後,知覚品質と因子の関係について回帰分析を行い,関係性について考察する。
第6章においては,結論をまとめる。その際,今後の課題を考える。
ブランドに対する知覚品質と自己概念の関係について
野 口 大 輔 修士論文 アブストラクト