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雑誌名 同志社政策科学研究

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新たな交通政策の取組・モビリティ・マネジメント : かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト京

著者 村尾 俊道

雑誌名 同志社政策科学研究

巻 8

号 1

ページ 205‑207

発行年 2006‑07‑25

権利 同志社大学大学院総合政策科学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000010985

(2)

Graduate School of Policy and Management, Doshisha University 205

 京都都市圏における交通需要管理施策の導入 を志し、総合政策科学研究科の門をたたいてか ら 10 年、幸運に恵まれ、修士論文にまとめたこ と が 形 を 変 え な が ら も 、 京 都 府 の 政 策 ベ ン チャープロジェクトとして成果をあげつつある 状況を紹介させていただきます。

 自動車は 20 世紀の偉大な発明であり、我々を 好きな時間に好きなところへ快適に移動するこ とを可能にした。一方で自動車の増加は大気汚 染、温室効果ガスの排出、交通渋滞、交通事故な ど新たな問題も投げかけている。昨年来大型の 台風が次々と来襲し、雨の降り方も激しさを増 しており、地球温暖化の兆候が現れている。

 私たちは頭では環境問題に取り組まねばなら ないと理解しながらも、では何をすればいいの か?自分一人がやっても効果がないのではない のか?というところで行動に移せていない。

 渋滞を解消するための道路整備はますます自 動車利用の優位性を高め、渋滞を無くすと自動 車の総量を増加させ、郊外ではバス利用者の減 少を招き、気がつけばバスがなくなるなど様々 な社会的ジレンマを抱えている。

■都市構造・ライフスタイルの変化による クルマ利用の増加

 最近の調査※ 2によるとこの 10 年間に人々の移 動手段は徒歩から自動車への転換が進み、自動 車利用の目的では、出勤・業務目的の移動が減少 し、それ以外の昼間の買物や用事、子供の送迎と

いった目的が増えている。とりわけ女性と高齢 者の自動車利用の増加が顕著になっている。

 居住地の郊外化の進展と相まって大型店の郊 外化、ロードサイドショップの立地、そして冷蔵 庫の大型化によるまとめ買いの習慣など、郊外 の生活に自動車はなくてはならないものになっ ている。さらに、高齢者の免許保有率や自動車保 有率は高まる傾向にあり、ますます高齢者が自 動車で動き回ることが予想され、これからの人 口減少時代にあっても自動車利用は当面減少し ないと言われており、放置すればバスや鉄道利 用者は減少の一途をたどり、経営的に非常に厳 しい局面を迎えることが予想される。

 そもそも交通というのはそれ自体が目的では なく、人がどこかに用事があって動くことに よって生じるもので、交通を考える上では人々 がどこに住み、目的地がどこにあるかという都 市構造や都市計画の問題に立ち返って、この問 題に取り組まなければならない。図書館や病院、

商業施設が郊外にあれば、車で行かざるを得な い。つまり自動車を使わなくても快適で豊かな 生活ができるライフスタイルをまちづくりとし て考えて行くことが必要となる。

 郊外のニュータウンは自動車があることを前 提にしたものであり、自動車の運転が出来なく なれば非常に暮らしにくいもの。魅力ある商店 街と便利なバスがあれば、あるいは歩いて暮ら せる範囲に必要な施設が整っていれば自動車を 使わないもっと豊かな生活があるかもしれない。

 実際、自動車の保有には保険料や税金、ガソリ ン代、駐車場代など維持管理に必要な私的コス トを計算するとタクシーやバスを使う生活の方

新たな交通政策の取組・モビリティ・マネジメント

〜かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト京都〜

村 尾  俊 道

※ 1

  

※ 1  京都府企画環境部交通対策課 1998 年3月修了

※ 2  第4回京阪神都市圏パーソントリップ調査(平成 12 年調査)京阪神都市圏交通計画協議会

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村 尾  俊 道 206

※ 3  詳しくは「モビリティ・マネジメントの手引き」2005 土木学会 参照

がはるかに安いことがわかる。

■採算性だけで公共交通を語ることの限界

 これまで日本では鉄道が非常に発達し、私企 業としてきちんと運営されてきたが、道路整備 の進展と自動車の快適性の高まりの前にはもは や競争力を失いつつある。

 企業の採算性だけを考えると駅舎を整備した り、快適性を高めても必ずしも増収につながら ず、鉄道事業者としてはやりたくても手が出せ ないのが実情で、結果として自動車に対して相 対的な競争力を落としてきた。

 京都のLRT(軽量路面電車)の議論でも、採算 性を基本に据えた議論では、なかなか進展して いかない。しかし少し考えてみると、デパートの エスカレーターは無料で動いており、そのコス トは間接的に利用者が支払っている。河原町通 や四条通に水平に動く無料のエスカレーターが あってもなんの不思議もない。

 鉄道があることによる環境負荷の軽減や地域 の活性化など、その効果をきちんと検証し、それ を地域や行政が支え、費用を負担する枠組みを 考えれば、つまり採算性だけで議論することを 超えられれば、もう少し現実味を帯びてくる。

  これまで、交通行政と言えば道路整備が中心で あり、投資額も組織も道路偏重の傾向にあり、渋 滞解消のために道路容量の拡大を続けると道路 利用のサービス水準だけを高め、一時的に渋滞 は解消しても、新たな需要を誘発し、自動車総量 を増やしてしまうことになる。

 このように、都市の郊外化、鉄道の採算性、道 路渋滞の解消など、これまで進めてきた施策の 常識を見直す時期に来ている。

■一人ひとりの意識を変える取組の必要性

 私たち一人ひとりが「今」のこと、「自分」の ことだけを考え自動車を使い続けると、公共交 通の利用者が減り、サービス水準が低下し、気が つくと無くなっているだけに止まらず、自動車 ばかりを使うことで一日の運動量が低下し体力

が落ち、交通事故の危険性も高くなる。さらに、

自宅から目的地までエアコンをかけ窓を閉めて 自動車で移動していると、季節を感じられなく なったり、人とコミュニケーションをしなく なったり、失うものが幾つもあるという。

 100 m先のコンビニまでも自動車を使ってし まったり、何も考えずに半ば習慣的に自動車を 使っている現実に目を向け、一人ひとりが、過度 な自動車利用を抑制し、たまには自動車を置い て出かけることを心がけることで、健康・渋滞・

公共交通に良い影響をもたらし、結果として自 分も地域も得をするということを伝える事が必 要となっている。

 人々は意外と公共交通の情報を知っていない し、自分が使っていない交通手段はきっと余分 に時間がかかるものと勝手に思いこんでいると いう心理学的事実もあるといわれている。

■モビリティ・マネジメント

※ 3

 そこで、人々に公共交通の情報やクルマ利用 がもたらす影響などを提供し、コミュニケー ションを行う交通政策がモビリティ・マネジメ ントと呼ばれており、イギリスやオーストラリ アではこの取組がかなりの規模で始まっており、

日本でも、そして京都府でも本格的に取組を進 めている。これまでの交通分野のソフト施策は、

パークアンドライド(郊外で自動車を駐車し目 的地には公共交通へ乗り換える)や流入規制、交 通料金の割引といったものが大半であるが、こ れらの施策にはそれなりの費用が必要で、同時 に施策をやめると元に戻ってしまう性格のもの。

また、利用者には少しずつ不便を強いる面があ り、参加しない人の方が得をする構図がある。

 一方、このモビリティ・マネジメントでは、一 人ひとりが納得をして交通行動を変える結果、

施策効果が継続し、必ずしも参加者が損をしな いものと言える。

■かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト

京都 2005

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新たな交通政策の取組・モビリティ・マネジメント 207

 企業の通勤者の方々に自分たちの交通行動を 見つめ直してもらい、公共交通の情報を提供し、

自分が自動車以外で通勤するとしたらどのよう な方法があるかをアンケートを通じて考えても らう取組を、昨年9月に宇治市において実施し た。このコミュニケーションアンケートと情報 提供により、通勤時間帯の定期券外の鉄道利用 者が一時的に3割も増加し、事業所の通勤自動 車が大きく削減され、クルマ利用の意識も変化 したことが確認された。

 家庭の自動車利用を見直すためには、京都府 南部の6つの女性団体に協力いただき、お出か け専用のマップづくりの取組や久御山町立佐山

小学校では総合的学習の時間を利用し、子供た ちにバス交通を考えてもらい、地域を走るコ ミュニティバスの利用促進策を提案してもらう 取組など、企業・地域・学校と連携しながら、自 分たちの地域や交通を共に考える取組を進めて いる。

 都市部の公共交通の利用促進は、交通事業者 が大手の民間企業である、あるいは府県は責任 も権限も無いなどと言う議論もあり、これまで は十分には取り組まれてこなかった。

 地域にとって無くてはならない公共交通を都 市経営、地域経営の視点から、今こそ共に考える 時代になっている。

参照

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