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倒産手続における債権の劣後化について

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倒産手続における債権の劣後化について

著者 倉部 真由美

雑誌名 同志社法學

巻 58

号 6

ページ 1‑36

発行年 2007‑01‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011069

(2)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八

倒産手続における債権の劣後化について

倉  部  真 由 美

   目 第一章 はじめに 第一節 問題所在 第二節 本稿目的第二章 アメリカ連邦倒産法における衡平法上劣後化 第一節Deep Rock理論概観 第二節Deep Rock理論適用範囲拡大 第三節 小括

︵二一九一︶ 第三章 わが倒産手続における債権劣後化

第一節 本章目的 第二節 債権劣後化われた裁判例 第三節 事例のパターンにじた検討 第四節 小括第四章 おわりに

(3)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八︵二一九二︶

第一章  はじめに 第一節  問題の所在   倒産処理手続の目的は︑債務者の財産を最大化し︑各倒産処理法に定められた優先順位に従い

︑債権者の権利を平等 1

に実現するとともに︑清算手続の場合には︑適正かつ公平な清算を図り︑再建型手続の場合には︑債務者の経済生活・事業活動の更生を図ることにある︵破一条︑民再一条︑会更一条参照

確にの等平者権債るけお続手産倒︑けわりと︶︒ 2

保は︑手続に対する信頼の維持にもかかわる重要な原則である︒なぜなら︑実体法上同じ性質の権利を倒産処理手続において不平等に取り扱うことは︑実体法秩序を乱すことになり

︑また︑債権者の合理的な期待をも裏切ることになるか 3

らである

4︶

  しかしながら︑例えば︑親会社が子会社を不当経営︵搾取︶し︑子会社を倒産に至らしめた場合の親会社の債権の処 遇に見られるように

よ︑が定める債権の分類と優先順位にしたがってそのぞれの債権を行使することが必ずしも適切ではなく︑倒産処理法 それ︑債権債務者会社が倒産に至った原因︑そのの︑発生した原因や発生当時の状況に着目すると 5︶

り﹁実質的﹂な平等の確保を図ることが求められる場合もある︒

  わが国では︑﹁実質的﹂な平等を確保するための方法のひとつとして︑倒産手続における債権の劣後化が行われてきた︒ とくに︑会社更生手続では︑更生計画において︑公正・衡平な差等を設けることが明文をもって定められており︵会更一六八条一項但書・同条三項︶︑これを根拠に債権の劣後化を認めた裁判例がある

すに似類にれこは続手産破︑方他︒ 6

る条文はなく︑明文の根拠を欠くことを理由に劣後的な取扱いを退けた裁判例もある

︒ところが︑その一方で︑近時で 7︶

(4)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八 は︑信義則に反するとして債権の行使を否定した裁判例もあり

行債権いを取扱もそのような実務上︑となってきており有力が見解な肯定的について劣後化の︑は学説上︒にある状況 ︑すべき注目されていくのか踏襲が立場どちらの︑今後 8︶

う例が多いといわれている︒このような状況の下︑一九九七年に法務省より公表された﹃倒産法制に関する改正検討事項﹄では︑親会社および内部者の債権の劣後化の問題も取り上げられた

︒しかし︑概ね賛成の意見が多かったにもかか 9

わらず︑かかる提案は︑新法での実現には至らなかった

後述は債権の劣後化が問題とされる場面︑また内部者債権の劣後化に限られるわけではない︒︑︒われる思にあったと の理由は︑債権の要件化劣後化︒が困難であったという点その 10

のように︑メインバンクを例とするような内部者ではない債権者の貸付責任を問う場合も考えられうる

をの規律いかなる︑として方法るための図を平等な﹂実質的﹁債権者︑としており混沌だ未は議論をめぐる劣後化の権 債このように︒ 11

していくべきか︑さらなる議論の精緻化が求められているといえよう︒

  ところで︑倒産処理手続において貫かれるべき債権者平等原則とはいかなるものか︑従来より議論がなされてきた︒ 倒産処理手続においては︑﹁衡平の理念﹂に照らし︑個別的事案の性質に応じて︑必ずしも実体法が定める優先順位にとらわれずに︑倒産手続上の修正を行うべきであるとの見解もある

︒しかしながら︑衡平の原則に基づく修正は︑アド 12

ホックなものであってはならず︑債権者や利害関係人の予測を可能とする程度の相当の基準をもって行うべきである

13

そういった意味でも︑債権の劣後化を原則とする範囲を明確にしておく必要がある︒

第二節  本稿の目的   債権の劣後化について︑アメリカ連邦倒産法では︑明文の定めをおいており︑わが国でも︑債権の劣後化を論ずる際

︵二一九三︶

(5)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八

には︑必ずといってよいほど紹介・検討されてきた

︒二〇〇五年アメリカ連邦倒産法 14

五一〇条⒞は︑衡平法上の劣後化 15

の原則︵

principles of equitable subordination

︶に従って︑倒産裁判所が債権の一部または全部を本来の順位よりも劣後した取扱いを命ずることができると定めている︒後述するように︑この規定は︑一九三九年の二つの判例をもとに形 成された︑いわゆる

Deep Rock

理論が︑一九七八年アメリカ連邦倒産法

子子会社︑となり問題が債権の支配株主︑債権の親会社における倒産手続のすわなち︑債権の内部者いわゆる︑では例 判これらの︒されたものである条文化において 16

会社の過小資本と親会社による子会社の不当経営︵搾取︶を根拠に劣後化が認められた︒そして︑内部者の債権が劣後化の対象であり︑かつ過小資本による経営や不当経営など不衡平な行為︵

inequitable conduct

︶がある場合には︑当該

債権を劣後化する理論が形成されたのである︒しかし︑この理論は︑当初︑内部者の債権について適用されていたが︑その後︑内部者の債権以外にも適用されるようになり︑また︑過小資本による経営や不当経営といった不衡平な行為を

必ずしも必要としない裁判例も示されている︒このように︑

Deep Rock

理論は︑当初考えられていた枠組みを超えて相当に広い範囲で適用されるようになってきているのである︒

  しかしながら︑実態に着目した判断に基づく﹁実質的﹂な債権者平等の実現は︑それほど容易なことではない︒実は︑それに成功しているかのように見えるアメリカ連邦倒産法においても︑五一〇条⒞に基づき︑衡平裁判所たる倒産裁判

所が常に明確に判断をしてきたわけではない︒現在でも︑劣後化を判断する際に考慮するファクターをめぐり︑議論が展開されている︒また︑内部者債権の劣後化に代替あるいは並存する方法として近時活用されているのが︑債権の

“ Recharacterization ”

である

こ資格性てしと﹂出け︑﹁にずめ認はと付を権等ういとう扱に同しと主株︑しおな﹂債あ付のでる場合︑そもそも﹁貸 する対にと倒産会社︑ばえが貸付債権読︑実質的には倒産会社への出資︒み替えるべきも例 17

とが行われているのである︒このような運用が行われるに至る過程では︑衡平法上の劣後化を判断する際のファクター ︵二一九四︶

(6)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八 となる事実の明確化やその限界について議論がなされる一方で︑債権の劣後化と

“ Recharacterization ”

という二つの手法の機能分担や︑そもそも

“ Recharacterization ”

に存在意義があるのかという点について議論がなされている︒このよ うな状況に至っている理由は︑連邦倒産法五一〇条⒞に基づく劣後化のカバーしうる範囲が広いにもかかわらず︑個別の事例パターンに応じた要件の検討が十分になされていない点にあるとの指摘がある

18

  そこで︑本稿では︑アメリカ連邦倒産法における衡平法上の劣後化とその代替的な役割を果たしている

“ Racharacteri- zation ”

の運用を含めて最近の議論を踏まえた上で︑わが国の倒産手続における債権の劣後化のあり方を検討すること

にしたい︒

  以下では︑まず︑アメリカ連邦倒産法における衡平法上の劣後化と

Deep Rock

理論について概観した後に︑衡平法上 の劣後化と並び︑新たに利用されるようになった

“ Recharacterization ”

について紹介し︑衡平法上の劣後化との関係をめぐる議論についてフォローする︵第二章︶︒そして︑以上の紹介を踏まえた上で︑わが国の倒産手続における債権者

平等を債権の劣後化を通じてどのように実現することが可能かを模索することとしたい︵第三章︶︒

枠組みを前提先順位検討める 稿﹄︵ 1

2倒産処理手続第四版補訂版一五頁参照一二六年〇〇有斐閣︺﹄︵における伊藤眞について衡平平等公平破産法

りカスむしろ破産手続において一般債権者︑﹁同士いうよりも平等として機能するものであると 3﹁﹃ 4伊藤前掲注

2一三頁 5このようなとして福岡高決昭和五六年一二月二一日判時一四六号一二七頁後述

3事件参照

︵二一九五︶

(7)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八

6

1︶︑ 3︶︒

している判示 2 7東京地裁判決平成三年一二月一六日金判九三号三九頁後述

4事件︶︒

8広島地裁判決福山支部平成一年三月六日判時一六〇〇号一一三頁後述

5事件︶︒

9法務省民事局参事官室優先順位第二各種債権第四部倒産実体法一九九七年改正検討事項する倒産法制﹄︵

六五一号二四頁︶︒一九九八年 10︶﹂﹁﹃

︺﹄︵事訴訟法理論構築下巻たな有斐閣〇〇一年四六三頁 ︶︑債務者柏木昇一九九六年巻三号一二一頁する経営支配劣後化株主ではない債権者債権衡平法上号一三九頁新堂古稀 11︶︵︶﹂

12 井上治典債権者平等について四号七三頁七八頁一九九三年︶︒法政五九巻三 13

︶︒一九九八年 ︶︒ 2︶︑ 14Deep “―RockDeep Rock” Doctrine︶︵︶﹂︶︑︶︑﹄︵︶︑︶︵︶﹂︶︑﹄︵﹄︵西神田編集室一九八四年二七七頁二九八頁以下松下淳一結合企業倒産法的規制︶﹂法協一七巻一一号一頁一六頁以下前掲注

11論文柏木前掲注

11論文等参照 ︵二一九六︶

(8)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八

15The Bankruptcy Abuse Prevention and Consumer Protection Act of 2005, 119 Stat. 232005.

16The Bankruptcy Reform Act of 1978, 92 Stat. 25491978. 17Note, Nozemack, RecharacterizationSense Claims: of Recharacterization Courts’ Bankruptcy of out Making ”“Why として文献する not Use §510 (c) Equitable Subordination?, 56 WASH & LEE L. REV. 6891999, Brighton, Capital Contribution or a Loan? A Practical Guide to Analyzing Recharacterization Claims (or, When is Equitable Subordination the Appropriate Analysis?), 215 ABIJ 12002, id, Is It a Capital Contribution or a Loan? Update: Recent Cases Discussing Recharacterization of Debt to Equity, 224 ABIJ202003, id, Is It a Capital Contribution or a Loan? Update: Recharacterization---Practical Pointers in an Evolving Arena, 2210 ABIJ182003, White &

Medford, Debt-to-equity Recharactrization: Is It More than Equitable Subordination’s Evil Twin?, 239 ABIJ262004, Goehausen, You Said You Were Going to Do What to My Loan? The Inequitable Doctrine of Recharacterization, 4 DEPAUL BUS. & COMM. L. J. 1172005.

18このような指摘をするものとして柏木前掲注

11四九二頁四九三頁注

74︶︒

第二章  アメリカ連邦倒産法における衡平法上の劣後化 第一節 

Deep Rock

理論の概観   いわゆる

Deep Rock

理論とは︑倒産裁判所の衡平裁判所としての権限に基づき

︑をにめたるす保確平衡の間者権債︑ 19

特定の債権を本来の優先順位よりも劣後する順位で扱うことを認める理論であり︑﹁衡平法上の劣後化︵

Equitable

Subordination

︶﹂と呼ばれる︒これは︑一九三九年の二つの判例を通じて形成された後︑一九七八年アメリカ連邦倒産 法の五一〇条⒞に明文化されており︑次のように定められている

20

︵二一九七︶

(9)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八

  五一〇条⒞

  本条⒜および⒝にかかわらず

︑通知と審問を経た後︑裁判所は以下のことをなすことができる︒ 21

  ⑴ 衡平法上の劣後化の原則︵

principles of equitable subordination

︶に従って︑配当について︑承認された債権の

全部もしくは一部を︑他の承認された債権の全部もしくは一部に対して劣後させ︑または承認された持分権の全部もしくは一部を︑他の承認された持分権の全部もしくは一部に対して劣後させること︑または

  ⑵ 劣後させられた上記債権を担保するリーエンの財団への移転を命じること︒   債権の劣後化については︑このような条文が定められたものの︑﹁衡平法上の劣後化の原則﹂が実際にどのような場合に適用されるのかという点については︑従来の判例法および後の判例法の展開に委ねられると︑立法過程の議事録に

記録されている

である判例な重要すべき言及も ので現在︑は判例連邦最高裁判所のアメリカ二件めた認を劣後化の衡平法上に一九三九年︑それゆえ︒ 22

︒もっとも︑これらの判例については︑すでに詳細な紹介がなされているので 23

︑以下で 24

は︑本稿の考察に必要な限りで簡潔に紹介する︒

Taylor v. Standard Gas & Electric Co.

事件

25

  この事件では︑子会社の倒産手続において親会社の債権の劣後化が扱われた︒子会社の

Deep Rock Oil Corporation

の名称にちなみ︑

Deep Rock

事件とも呼ばれている︒本件では︑子会社である

Deep Rock Oil Corporation

は︑当初︑レシーバーシップの手続に入ったが

年八邦連カリメア法三産九一︑後のそ︑倒 26

Chandler

︵いわゆるチャンドラー法︵ 27

Act

︶︶の七七B条

Deep Co. Electric & Gas Standard

てにおい続︑親会手の社︒︑更が定める会社生た手続に移行しは 28 ︵二一九八︶

(10)

倒産手続における債権の劣後化について 同志社法学五八

Rock

に対して取引上生じた債権を届け出たが︑アメリカ連邦最高裁判所は︑

Deep Rock

が初めから過小資本であった点︑

Standard

による不当経営︵搾取︶の事実を認定し︑

Standard

の債権は︑衡平の原則に基づき劣後的に扱われる旨を判

示した︒

Pepper v. Litton

事件

29

  さらに︑

Pepper v. Litton

事件では︑

Dixie Split Coal Co.

の破産手続において︑同社の支配株主の有する債権の劣後化 の問題が扱われた︒本件では︑支配株主は会社︑株主および債権者に対して信認義務︵

fiduciary obligations

︶を負っており︑そのような立場にある者が︑自らの権限を利用して︑破産会社の他の債権者による債権回収を逃れるような行為 は認められず︑支配株主の破産会社に対する賃料債権は劣後化されるべきであると判示された︒

Pepper v. Litton

事件では︑内部者である支配株主の信認義務違反を根拠に劣後化が認められた点に意義がある︒

  以上の二件の判例では︑①内部者債権が劣後化された点︑②過小資本︑不当経営︵搾取︶︑信認義務違反など︑不衡平な行為︵

inequitable conduct

︶がある場合に︑劣後化が認められている︒そこで︑後述のように︑以後の判例では︑

当該債権が内部者債権であるか否か︑不衡平な行為を認定したか否かという点が︑劣後化が認められる範囲と判断の際

のファクターをめぐって検討されている︒

Benjamin v. Diamond

In re  Mobile Steel Co.

︶事件   このように︑一九三九年のアメリカ連邦最高裁判所の判例は︑条文化の基礎となるほどの重要な意義を有していたわ けであるが︑さらに︑一九七七年の

Benjamin v. Diamond

In re Mobile Steel Co.

︶事件

において︑劣後化を検討する 30

︵二一九九︶

(11)

倒産手続における債権の劣後化について 一〇同志社法学五八

場合のポイントがより明確に示された︒以下の三つの点が挙げられ︑

“ Three-points rule ”

と呼ばれている︒   ①当該債権を有する者が︑何らかの不衡平な行為︵

inequitable conduct

︶に関与していたこと︒   ②当該行為が︑倒産者の債権者に損害を与える結果となるか︑または当該債権者に不衡平な利益をもたらしたこと︒   ③債権の衡平法上の劣後化が︑倒産法の規定に反しないこと︒   まず︑一つめの﹁不衡平な行為﹂を要することは︑とくに判断が困難な要素であるといわれている︒なぜなら︑どのような行為類型が︑不衡平な行為とみなすのに必要とされるのか︑明確な定義が存在しないからである

︒もっとも︑こ 31

の点については見解が分かれており︑衡平法上の劣後化による救済は︑柔軟性を必要とするものであり︑定義があいまいであることによって︑かえって倒産裁判所は個々の事件に応じた適切な救済を見出すことができると唱える者もあ

れば

︑もある主張されると軽減とリスクが不安定の金融上ば者されれ示が指針な明確より︑する 32

33

  具体的な﹁不衡平な行為﹂の分類については︑学説上さまざまであるが︑

In re Mobile Steel Co.

事件では︑不衡平な 行為にあたる行為として次の三つのカテゴリーが提示されていた︒すなわち︑①過小資本︑②詐欺︑不当経営︑あるいは信認義務違反︑そして③道具性︵

instrumentality

︶または分身の理論︵

alter ego

︶である

34

  過小資本について︑

In re Mobile Steel Co.

事件では︑次の二つの指針が示されている︒すなわち︑第一に︑熟練した財務分析者が︑資本拠出時の状況に照らし︑当該事業の規模・性質を維持するのに明らかに不十分であるとの見解に達 する場合︑第二に︑事情に精通する外部の資金供給者からは同額の貸付を得られなかったであろう場合という基準である

支点を立場であるという不十分には劣後化の債権︑だけではという過小資本の設立当初︑くは多の判例︑しかし︒ 35

持しており︑過小資本に付随する何らかの違反行為︵

misconduct

︶を要求している

者に︒これは︑債務おの危機時期 36 ︵二二〇〇︶

(12)

倒産手続における債権の劣後化について 一一同志社法学五八 ける内部者による融資が萎縮することを避けるためである

37

  次に︑詐欺︑不当経営︵搾取︶︑信認義務違反の場合であるが︑これらの場合︑過小資本や内部者取引を伴うケース が多いので︑実際の詐欺︵

actual fraud

︶を認定する必要はない

38

  そして︑第三の道具性あるいは分身の理論については︑裁判所は親会社または内部者の関係が認められるというだけ で︑債権を劣後化はせず︑さらに別のファクターが存在しなくてはならないと判示している

39

  もっとも︑﹁不衡平な行為﹂があったことのみをもって劣後化することは認められない︒それを確認したのが

In re Mobile Steel Co.

事件の

Three-points test

の第二の要素である︒つまり︑不衡平な行為により他の債権者への損害が生じた場合に︑劣後化が認められている︒

  以上︑不衡平な行為を中心に︑判断の際のポイントと具体的な例を見てきたが︑債権の劣後化の判断をより困難なものとしているのは︑劣後化が問題となる債権者の分類︑すなわち︑倒産者の内部者であるか否かという点である︒次に︑

この点について見ていくこととする︒

第二節 

Deep Rock

理論の適用範囲の拡大

  

1

非内部者/不衡平な行為   前述のように︑衡平法上の劣後化は︑本来は︑内部者の債権の取扱いを問題としていた

によってはにいたるまでの衡平法上︑が経緯や事実産劣後化非内部者に適用される場合もあるの 倒が債務者︑しかしながら︒ 40

︒このようなカテゴリ 41

ーの判例は︑詐欺︵

fraud

and domination control

︶︑優越的地位と支配︵ 42

︶︑そして︑その他の不衡平な行為 43

の三つのタ 44

︵二二〇一︶

(13)

倒産手続における債権の劣後化について 一二同志社法学五八

イプに分けることができる︒

  不衡平な行為があると判断するのに十分な証拠がある場合︑衡平の原則は︑必ずしも内部者の債権のみに適用されるわけではなく︑﹁裁判所の良心が衝撃を受けるような事実と状況がある場合︑︵

the facts and circumstances shock the conscience of the court

︶﹂内部者ではない者の債権も劣後化されるのである

45

  

2

非内部者/不衡平な行為が認定されない場合   近時︑とくに問題がある類型として取り上げられているのは︑債権者は倒産者の非内部者であり︑なおかつ︑不衡平

な行為に相当する行為が認定されない場合である︒この類型の判例のほとんどは︑内国歳入庁︵

IRS: Internal Revenue

Service

︶の債権が問題となっている

United Noland v. States

︑以下︵事件のリーディングケースである類型この︑に次︒ 46

Noland

事件︶について紹介しておく︒  

United States v. Noland

事件

Noland

事件において︑債務者会社である

First T ruck Lines, Inc.

は第一一章手続を申し立てたが︑その後︑手続は第 七章手続へと移行された︒第七章手続において︑

IRS

は︑未納の税︑利息および追徴金︵

tax penalty

︶を管理費用債権として届け出た︒ところが︑管財人は︑第一一章手続申立て後︑手続移行前の追徴金は︑倒産法上︑第一順位の管理費 用︵

administrative expense

︶として分類されているが︑追徴金は破産者を罰するものであり一般債権者に負担させるべきものではないという性質上︑一般債権者に劣後して取り扱われるべきであると異議を述べた︒倒産裁判所は︑管財

人の主張を認容したところ︑

IRS

が上訴した︒さらに︑オハイオ州南部地方裁判所も︑第六巡回区上訴裁判所も管財人 ︵二二〇二︶

(14)

倒産手続における債権の劣後化について 一三同志社法学五八 の主張を認容した︒その後︑連邦最高裁は︑裁量上訴︵

certiorari

︶を認め︑

IRS

の債権については︑議会が︹制定法上

筆者注︺定めた順位の枠組みを覆して︑︹追徴金を

筆者注︺ひとつの分類として劣後化することはできないと

判示した︒

  連邦最高裁は︑倒産裁判所は︑立法議会が倒産法に定めた順位を変更するために︑衡平法上の劣後化を適用してはな らないと述べる

につき点とになるかという することがえるこ超を限界の憲法上︑劣後化のクラスを一定において第一一章手続︑には判断の本件︒ 47

連したアメリカ︑つまり︒がある意義に点示を限界められないと認︑は劣後化そのような︑ 48

邦倒産法上︑租税および利息の債権は︑管理費用債権になると定められているにもかかわらず︵五〇三条⒝︑五〇七条⒜⑴および七二六条⒜⑴︶︑追徴金のみをその懲罰的な性質ゆえに別のカテゴリーとして分類し︑劣後化することはで

きないということが確認されたのである︒

  他方︑従来から問題とされていた衡平上の劣後化のために債権者の違反行為︵

misconduct

︶を必要とするのか否か という点については︑とくに判示されず

にばな行為を常者認定しなけれならないかどうかをの判断する必要はない﹂と述べている不当 化権債に前るす後わ劣邦最高裁判所は︑﹁われれ︑は︑倒産裁判所が債権を連 49

︒本件の後も︑内部者で 50

はない者の債権を︑不衡平な行為がない場合でも︑劣後しうるという可能性は残されているため︑裁判所は明示的に不

衡平な行為が必要であると判示すべきであったとの批判がなされているところである

51

Noland

事件で扱われた問題は︑実は︑わが国ではすでに解決されている︒すなわち︑破産法においては︑破産手続 開始後の原因に基づく債権は財団債権とされ︑それ以外の債権については︑旧法下では︑その処遇について見解が分かれていた

︑者︑追徴金などは︑破産本費人に対する制裁であり用訟で訴かし︑現行法のもとは︒︑罰金︑科料︑刑事し 52

一般破産債権と同等に扱って︑一般破産債権者に負担を転嫁することは適切でないことから︑劣後的破産債権として取

︵二二〇三︶

(15)

倒産手続における債権の劣後化について 一四同志社法学五八

り扱われているのである︵破九九条一項一号︑九七条六項

︶︒ 53

  

3

内部者/不衡平な行為が認定されない場合   さらに︑アメリカにおいて特に議論の的となっているのが︑債権者が内部者である場合に︑不衡平な行為を認定せずに︑﹁債権﹂ではなく﹁出資︵

equity

︶﹂と認定する衡平法上の救済である︒

“ Recharacterization ”

は︑内部者による融資

を出資と事実認定することにより︑実質的に︑衡平法上の劣後化と同じ効果をもたらす︒このような

“ Recharacterization ”

は︑債権者が会社の内部者であり貸主である場合に︑債権者委員会や管財人によって主張されることが多い

︒しかしな 54

がら︑判例法上︑衡平法上の劣後化と

“ Recharacterization ”

という二つの救済は︑理論的には全く異なっていると指摘されており︑例えば︑次のように説明されている︒

  債権の出資としての性格付けのしなおしは︑主張されている債権が実際に債権なのか︑それとも︑実際には債権を 装った出資なのかという︑事実認定を必要とする︒他方︑衡平法上の劣後化は︑不衡平な行為をした正当な︵

legitimate

︶債権者に対して適用される衡平法上の救済である

55

  この説明でも述べられているように︑

“ Recharacterization ”

は︑届出債権そのものの発生原因や発生当時の背景など︑ 債権そのものの性質を判断するために︑事実認定を必要とするが︑倒産裁判所のこのような判断を根拠付ける明文の規定は︑連邦倒産法には︑特に存在しない

連︑めるアメリカ定を権限の倒産裁判所は裁判所くの多︑それにもかからず︒ 56

邦倒産法一〇五条⒜

を根拠に 57

な権い場合でも︑﹁債﹂さを﹁出資﹂と性けた付後︑衡平法上の劣化満のための要件を格 58 ︵二二〇四︶

(16)

倒産手続における債権の劣後化について 一五同志社法学五八 しなおす場合が多く見られる

損害のしなくてもよいからである判断を中心であり︑当該債権者やそれによる行為

Recharacterization ” “

判断ののそのものが性質債権られている出け届︑場合の︑なぜなら︒ 59

“ Recharacterization ”

︒の場合︑判例 60

法上︑対等な交渉のもとになされた取引であったかという点が判断され︑その際に着目すべきファクターが積み重ねられている

︒具体的には︑次の要素が指摘されている︒ 61

  ⑴ 借入れをした証明となる証書に記載されている名義   ⑵ 満期と弁済計画の有無   ⑶ 定められた利率と利息の支払いの有無   ⑷ 弁済のための財源   ⑸ 十分な資本の有無   ⑹ 債権者と株主の間の利益の特定   ⑺ 担保の設定の有無   ⑻ 債務者が外部の金融機関から融資を受ける可能性   ⑼ 融資に基づく債権が外部の債権者の債権に劣後する程度   ⑽ 資本資産︵

capital asset

︶を獲得するために会社が融資を利用した程度   ⑾ 弁済のための減債基金︵

sinking fund

︶の有無

62

  ⑿ 株主の資本への貸付の割合   ⒀ 株主の支配する額と程度

63

︵二二〇五︶

(17)

倒産手続における債権の劣後化について 一六同志社法学五八

  これらの要素は︑大別すると以下の三つのカテゴリーに分けられる

64

(1ʼ)

  主張されている貸付契約の合意の形式

(2ʼ)

  債権者が貸付をした際の会社の経済的な状況

(3ʼ)

  債権者と債務者の関係   これらのファクターをどのように判断するかという点については︑倒産裁判所は︑すべてのファクターをグループとして総合的に検討し︑債務者の過小資本あるいは外部の金融機関から融資を得られないことのみをもって︑債権を劣後

化したり︑あるいは︑出資へと性格付けをしなおすようなことを避けるべきであるという見解がある

への内部者道するための保護けから性格付する出資をった模索行を付必要があると述べる者もあるを 貸の善意︑また︒ 65

︒その一方で︑立 66

法の趣旨によれば︑議会は︑倒産裁判所に債権の性格付けをしなおす権限を与えてはいないとの批判もある

Recharacterization ” “

す︑︒もある者する指摘すると矛盾と同条同項︑はに根拠を存在の⒞条〇連邦倒産法五一アメリカ ︑にらさ︒ 67

なわち︑

“ Recharacterization ”

によって得られる効果は︑債権の劣後化と同じであり︑劣後化は︑本来︑五一〇条⒞の明文の定めに従ってなされるものであるにもかかわらず︑裁判所の衡平法上の権限により︑異なる基準のもとでそのよう な判断を認めるのは︑倒産法の規定に反するという批判がなされているのである

68

第三節  小括

  以上︑アメリカ連邦倒産法における衡平法上の劣後化について︑その起源となった判例から近時の動向まで概観して ︵二二〇六︶

(18)

倒産手続における債権の劣後化について 一七同志社法学五八 きた︒当初は︑不衡平な行為を行った内部者の債権の劣後化が典型的なケースであったが︑その後︑内部者ではない者の債権や不衡平な行為を行っていない場合にも

Deep Rock

理論が適用されるようになり︑衡平法上の劣後化のカバーす

る範囲が広くなっていった︒

  もちろん︑その過程では︑何をもって劣後化すべきと判断するのか︑そこで考慮すべきファクターをめぐり議論がな

され︑とくに﹁不衡平な行為﹂があったことという点が重視されていたことが明らかとなった︒しかし︑﹁不衡平な行為﹂の有無は︑判断が困難であり︑とくに︑内部者の債権を出資と読み替えて劣後化する場合には︑﹁不衡平な行為﹂の判

断を避けて︑

“ Recharacterization ”

という新たな方法による実質的な平等の実現がなされているのである︒   次章では︑本章の分析を踏まえて︑わが国の倒産手続における倒産債権の劣後化について検討を加える︒

119see Corley v. Cozart, 115. 2d F, 5 Cir. 1940121th債権劣後化ずることができるとべるものとして︶︒平裁判所として 19Loan 292see Local Co. v. Hunt, U.S. 234, 2401934詳細衡平裁判所としての倒産裁判所性質べるものとして︶︒倒産裁判所 20 商事法務前掲注松下五五六頁一九九六年連邦倒産法﹄︵アメリカ高木新二郎にあたり邦訳条文

14二八頁注

参考にした 23︶︵一九九

ずるまたは出資請求権といった証券取引から債権しくは劣後化についてめている償還請求権 21

22124.De Concini1978998,33; id. at Edward1978 Cong. Rec. 32398,︶︵上院議員発言下院議員発言

v. Litton, 1939295 U.S. 308されている引用 23Standard 306H.R.Rep.No 595, 95 Cong., 1 Sess. 359Pepper 19481977 U.S. 307Co., aylor & . Gas TElec. v. thstでは下院議会議事録この 24LittonTaylor v. Standard Gas & Electric Co.Pepper v.

14︶︵ 14二九二頁以下片木前掲注

14︶︵論文四七頁以下田村前掲注

14一九九頁以下など参照 25Taylor v. Standard Gas & Elec. Co., 306 U.S. 3071948.

︵二二〇七︶

参照

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