コイルメーカーを用いた小学6年生の電磁石学習と授業評価
藤本登(生活健康講座),宮崎秀信(福岡県糟屋郡宇美町立桜原小学校),
石津朋顕(桜原小学校),宮田哲郎(桜原小学校)
1.はじめに
本小単元は,電磁石の性質を学び,生活への利用実態を知ることで,学習者が 身近な科学への理解を深めることをねらいとし,小学校6年生の理科における単 元「物質とエネルギー」の電磁石の学習内容を深めるために,電流の働きを多面
的に捉え,生活の中で活用されている科学技術への気づきと理解を促すために行 った。ここで,電磁石の性質とは,①電磁石の強さはコイルに流れる電流の強さ やコイルの巻き数によって変わること,②コイルに流れる電流の向きが変化する と電磁石の極が変わることを指す。しかし,実際に電磁石を製作する場合,コイ ルに使用する導線の太さや巻き数(長さ),芯材に使用する材料の種類と太さや熱 処理の有無によって,その強さは異なり,製作(学習)者はその特徴や科学的根 拠について幅広い知識を持っことが必要になってくる。一方,近年,子どものも のづくり離れによって,単純な電磁石の製作でさえ困難になっていることを考え ると,補助教具の開発も重要であると考えられる。
そこで,本研究では,福岡県糟屋郡宇美町にある宇美町立桜原小学校で行った 授業「めざせ!電磁石チャンピオン」(1)における児童の科学的思考について考察
し,学習活動との因果関係を探ることで,使用教具と授業形態の評価を行った。
2.対象児童
同校の6年生を対象にした調査では,永久磁石の性質として,「鉄を引きつける」,
「N極やS極がある」や「異極や同極は,引き付け合ったり退け合ったりする」
を挙げ,95%の児童がその性質を理解している。また,電気や電流の性質・特徴 として,「直列と並列」,「回路に電気を流せば,豆電球が明るく点灯する」や「電 池の数を増やすと豆電球は,より明るくなる」ことを挙げ,90%の児童がその性 質・特徴を理解している。この学習率の高さは,磁石が鉄を引き付ける時に味わ
った感動や興味,豆電球の明るさや回路のつなぎ方の実験で味わった「もっと明 るくしたい」,「なぜ,つなぎ方で明るさが違うのか」などの知的欲求や疑問によ って,科学的興味・関心が高められたためと考えられる。そして,授業前の調査 から,「磁石と電流は,関係があるのか」や「磁石の引き付ける力と電流を使った 実験をしたい」などの興味・関心があることが分かっている。一方で,自らの生 活の中で磁石と電気が密接にかかわり合い,活用されていることを意識し,理解
している児童はほとんどいない。
−147−
3 .
学 習 内 容こ の 小 単 元 の 目 標 と し て , 以 下 を 設 定 し , 表
1
に あ る 指 導 計 画 に 基 づ い て , 授 業実践を行った。1
. 電 磁 石 の 導 線 に 電 流 を 流 し , 電 磁 石 の 強 さ の 変 化 を 調 べ , 電 流 の 働 き に つ い て理解することができるO2.
も の づ く り 活 動 を 通 し て , 互 い の 見 方 や 考 え 方 を 交 流 し 合 う こ と で , 電 磁 石 の性質についての見方や考え方を深め,広げることができる。表 1 . 既 習 事 項 や 経 験 を 駆 使 し , 身 近 な 生 活 事 象 の 解 明 へ と 向 か う 単 元 計 画
過
程 知 る 段 階 (
2
時間) 調 べ る 段 階 (4時間)
広 げ る 段 階 (3
時間) 1 .電磁石について知る。12.
電 磁 石 の 働 き ( 強 さ ) に13.
より強い電磁石を作る。ついて,調べる。
(1)磁石と電磁石①を使っ 1(1)乾電池の数を増やし,電 1(1)電磁石の性質を整理し,
た 「 魚 釣 り ゲ ー ム
J
をす│ 流 を 大 き く し た と き の 磁 │ よ り 強 力 な 電 磁 石 を 製 作 る。 1 力の強さを調べる。 1 す る た め の 方 法 を 考 え , 新O
永 久 磁 石 は , 常 に 鉄 を 引10
電 流 を 大 き く す る と 電 磁 │ たな課題に取り組む。き つ け る こ と を 理 解 さ せ │ 石 の 磁 力 が 強 く な る こ と
10
日 常 生 活 の 中 で 生 か さ れる。 が分かること。 て い る 電 磁 石 に つ い て 理
O
電 磁 石 は , 電 流 が 流 れ た1 ( 2 )
巻 き 数 の 違 う コ イ ル │ 解すること。; 1
と き だ け 鉄 を 引 き つ け る(100
回巻と200
@]巻)をω │
グ ル ー プ ご と に 最 強 電 磁~I
ことを理解させる。1
変 え た と き の 電 磁 石 ① , ② │ 石 を 製 作 す る 。 方 法 は 以 下 容1 ( 2 )
電磁石の特徴を知る。I
の強さを調べる。I
の3種類。
O
方 位 磁 石 を 使 い , 極 の 向1 0
巻 き 数 を 増 や す と 電 磁 石1 0
巻 き 数 , 芯 の 太 さ , 導 線 の き と 変 化 に つ い て 理 解 さ │ の 磁 力 が 強 く な る こ と が │ 太させる。
1
分かること。1 ( 3 )
製 作 し た 電 磁 石 を 用 い た‑ 方 位 磁 石 の 利 用 と 極 の 向 きが分かること。
・ 電 流 の 向 き で 極 が 変 化 す ることが分かること。
阪 グ ル ー プ 分 の 永 久 磁 石 と │ ※ 教 具 ・ 教 材 の 準 備
釘 の 吊 り 上 げ 「 重 さ 比 ベ コ ンテスト
J
の実施。‑ 巻 き 数 や 芯 , 導 線 の 関 係 で 電 磁 石 の 磁 力 が 変 化 す る
ことが分かること。
※ 課 題 の 追 求
電 磁 石 ①
(100
回巻), 電 │ ※ イ メ ー ジ 図 の 作 成 と 教 具 の 卜 基 礎 的 な こ と を よ り 確 か め 磁 石 ②(200
田 巻 ) を 準 │ 取 り 扱 い 方 法 の 説 明 。 ら れ る 電 磁 石 を 製 作 さ せ 言 │ 備 し , 全 員 が 活 動 で き る │ 表 や 絵 図 な ど の 活 用 を 促 す 。 │ る 。ようにする。 ‑実験器具の適切な使用を理│※GTの活用
解 さ せ , 見 通 し の あ る 活 動 卜 学 び の 価 値 付 け と 学 習 の 評
にするo 価(特に良い点,改善点)。
‑148‑
4 .
使 用 教 具 ( コ イ ル メ ー カ ー ) と 予 備 実 験4 . 1
コ イ ル メ ー カ ー の 仕 組 み と 実 験 手 順電 磁 石 に お け る 児 童 ・ 生 徒 の 学 習 で は , 従 来 か ら , ク リ ッ プ や 釘 に エ ナ メ ル 線 を 手 巻 き に よ り 巻 き 付 け て 児 童 が 製 作 し て い た 。 し か し , 近 年 , 子 ど も の も の づ く り 離 れ に よ っ て , こ の よ う な 電 磁 石 の 製 作 で さ え か な り の 時 聞 が 必 要 な こ と か ら , 補 助 教 具 の 開 発 が 求 め ら れ て い た 。 そ こ で , 市 販 の 材 料 を 用 い て , 一 般 教 員 で も 製 作 が 可 能 な コ イ ル 巻 き 機 ( コ イ ル メ ー カ ー と 称 す るo 図
1
) を 試 作 し , 授 業での使用と評価を行った。ここでは,その構成と使用方法について記す。まず,ギアボックス
1
((株)タミヤ製:遊星ギアボックスセットITEM72001)
は電源2
(単1
乾 電 池2
本 ) で 駆 動 さ れ , そ の 回 転 数 は 手 作 り の ス イ ッ チ4
とカウンタ ー3 (FORCE
製 : 万 歩 計 ) に よ っ て 計 測 さ れ る 。 そ し て , ギ ア ボ ッ ク ス に 付 属 さ れ た 真 録 棒 に は , 芯 材 固 定 用 の ピ ス12
とスイッチ駆動用の割ピン13
が取り付け られており,真銭棒が1
回 転 す る ご と に 割 ピ ン が ス イ ッ チ の 鋼 板 ( 厚 さ0 . 5
の板 を 加 工 ) を 叩 い て , ス テ ン レ ス 製 の フ ッ ク に 接 触 す る こ と で , カ ウ ン タ ー ( 図1
の よ う に 内 部 の ス イ ッ チ か ら リ ー ド 線 を 出 し , ス イ ッ チ に 結 線 し で あ る ) が 起 動 す る 仕 組 み に な っ て い るoそして,先端の真織には芯材である釘1 1 (
外径3.8mm
, 長さ90mm)
が 固 定 ネ ジ12
で固定できるまで差し込んであり 他 端 に 切 り 込 み を 入 れ た 赤 ゴ ム 栓6
を介してボールベアリング(日本鋼管(株)製,6001CM
, 内径12mm)
に固定されているD な お , 芯 材 に ボ ル ト ( 外 径6 " ' ‑ '12mm)
を使用 す る と き は , そ の 頭 の 中 心 に3.8mm
の ド リ ル で 穴 あ け 加 工 ( 深 さ10mm)
後, 長さ15mm
程 の 釘 を 蝋 接 し た 。 そ し て , ボ ル ト 外 径 が12mm
未 満 の 場 合 は , ボ ル ト 固 定 後 に ボ ー ル ベ ア リ ン グ の 位 置 に く る ボ ル ト の 外 周 に テ ー プ を 巻 き 付 け る こ と で , ベ ア リ ン グ と の が た つ き を 防 止 し た 。 そ し て , こ の ベ ア リ ン グ よ り 左 側 に 突 き 出 し た 芯 材 の 部 分 に ド ラ ム10
よ り 引 き 出 し た エ ナ メ ル 線 を 数 回 巻 き 付 け て , エ ナ メ ル 線 の 固 定 を 行 っ た 。 ま た , 金 属 丸 棒8
に は , 滑 り を 良 く す る た め の ワ ッ ク ス が 塗 布 し た 。 こ れ ら の 部 材 は 市 販 の 木 材 ( 板 材 厚 さ20mm
,角柱の一辺 は25mm
を使用)に木ねじで固定されているo なお,小学4
年生でも1
度の説明1.ギアボックス
2 .
電 源3 .カ ウ ン タ ー
4 .カ ウ ン タ ー ス イ ッ チ 5 .防 震 ゴ ム
6 .赤 ゴ ム 栓 o
番図 1. コ イ ル メ ー カ ー 概 観 図
7 .
ポ } ル ベ ア リ ン グ8 . 12mm
丸 棒9 .
ボ デ ィ ー1 0 .
エ ナ メ ル 線 11.芯材1 2 .
芯 材 固 定 ネ ジ1 3 .割 ピ ン
と練習で,使いこなせることを確認した。
こ の コ イ ル メ ー カ ー を 用 い て , 以 下 の 方 法 で , 電 磁 石 の 製 作 と そ の 電 磁 石 を 用
いた評価実験を行った。評価方法は,決められた乾電池を用いて,釘(長さ
19mm)
の 吊 り 上 げ 実 験 を 行 い , 吊 り 上 げ ら れ た 釘 の 重 量 を 測 定 し た 。
【実験手順】
① 芯 材 を コ イ ル メ ー カ ー に 取 り 付 け , カ ウ ン タ ー の 動 作 確 認 を す るo
② エ ナ メ ル 線 を 空 回 り し な い よ う に 取 り 付 け るo (芯材に両面テープを巻くなど の工夫)
③ コ イ ル メ ー カ ー を 起 動 し 目 的 の 巻 き 数 ま で エ ナ メ ル 線 を 巻 き , 終 わ っ た ら , コ イ ル メ ー カ ー か ら 電 磁 石 を 外 し ( エ ナ メ ル 線 を 折 り 返 す と き は , セ ロ ハ ン テープなどで固定・補強するとよし、),エナメル線の両端の被服を剥ぐ。
④ 釘 の 入 っ た ト レ イ に 電 磁 石 を 置 き , そ の 上 に 釘 を 均 等 に 載 せ , 電 池 ボ ッ ク ス と 結 線 ・ 通 電 す る 。 ( 検 流 計 等 を 使 用 し て 導 通 を 確 認 す る こ と )
⑤ そ の 状 態 で 電 磁 石 を 持 ち 上 げ , 別 の ト レ イ に 静 置 後 , 電 気 を 切 り , 電 磁 石 を 取り除く。(注意:コイルの巻き数が少ない程,導線の発熱量が増加するため,
事 前 確 認 が 必 要 )
⑥ ト レ イ に 残 っ た 釘 を 計 量 カ ッ プ に 移 し , 電 子 天 秤 等 で 計 量 す る 。
⑦ ④ か ら ⑥ を
3
回 以 上 繰 り 返 し , 吊 り 上 げ た 釘 の 重 量 の 平 均 値 を 算 出 す るo図
2.
作 業 風 景4 . 2
電 磁 石 製 作 で の 留 意 点電 磁 石 の 強 さ :Fは,コイノレの巻き数
n
とそのコイノレ盈渡役五震渡良ょ1(f)鼠.iE三
n I )
で 表 さ れ る の で , 単 純 に , 巻 き 数 を 増 や す か 電 流 を 大 き く す る た め に 接 続 す る 乾 電 池 数 を 増 や す こ と が 考 え ら れ るD し か し , 導 線 の 抵 抗R
[Q ]は,ρを 抵 抗 率
[Qmm
2/m]
,L
を長さ[m]
,S
を 断 面 積[mm
2] とすると,R=ρXL/S
で 表 さ れ る の で , 長 く な る ほ ど , 或 い は 線 径 が 細 く な る ほ ど 抵 抗 が 大 き く な るo
従 っ て , オ ー ム の 法 則 よ り , 電 圧 が 一 定 な ら ば , 抵 抗 が 大 き く な る ほ ど , 電 流 は 小 さ く な る の で , 磁 力 は 低 下 す るo例えば,図
3
は,外径12mm
のボルト(850
0C
で1
時 間 の 熱 処 理 を 行 っ た も の と な い も の ) に , 素 線 形0.5mm
の エ ナ メ ル 線 を5 0 ‑ ‑ ‑ 9 0 0
回 巻 き 付 け た 場 合 の 釘 に お け る 吊 り 上 げ 実 験 結 果 を 示 す 。o
印 が 熱 処 理な し , ・ 印 が 熱 処 理 あ り , 実 践 が 実 際 に 吊 り 上 げ た 釘 の 重 さ , 破 線 が そ の 時 の コ イ ル の 巻 き 数
n
と電流値I
の 積 を 示 す 。 図 か ら 分 か る よ う に , 計 算 値 と 実 測 値 に600
500
~ 400
恨J
制 300
e
原 200
匂『
ベ
100
。 。
一 ︑
﹄
﹃ 一 4F・ ﹄
. 戸
F 芯 材
12mm ボルト
上げた釘長さ
19mm
,重さ0.29g 850
0C 1
時 間 の 加 熱 実 験 結 果 同 一 無 し ー ト 有 り 電 流X巻き数卜……無し一一一一有り400
、600
巻き数(回)
図
3 .
コ イ ル 巻 き 数 が 電 磁 石 の 強 さ に 与 え る 影 響1000
200
800差 は あ る も の の 磁 力 が 最 大 と な る 巻 き 数 が 存 在 す る こ と が 分 か るo これは,導線
を巻くほど抵抗が増加するため電流が低下したためであるo
また,芯材に使用する材料も材質により透磁率が異なり,また熱処理の有無(キ ュ リ ー 温 度 以 上 に 事 前 加 熱 を 行 う こ と で 常 磁 性 化 を 図 る か ど う か ) に よ っ て , 電 磁石の性能も異なるo例えば,芯材には直径
3.8mm
,長さ90mm
の釘に直径0.5mm
のエナメル線を
200回 巻 い た 場 合 , そ の 芯 材 の 熱 処 理 (850
0C
で1
時 間 加 熱 : 釘 のキュリー温度は 7700C)の有無によって,図 4のように,熱処理を施していな い図 (a) のように,電源、を切っても電磁石の釘は強磁性のために錘の釘が引っ 付 い た ま ま に な っ て い る が , 熱 処 理 を 施 し た 図 (b) の 方 は , 電 源 を 切 る と 電 磁 石 に は 釘 は 引 っ 付 い て い な い 。 従 っ て , 今 回 と 同 様 に , 芯 材 に 金 属 を 用 い た 電 磁 石の実験を行う場合は,芯材の熱処理を行う必要があることが分かる。従って,本授業で芯材と使用する釘やボルトは,電気炉を用いて,
850
0C
で1
時 間 の 加 熱 を施した。通電中 非 通 電 通電中 非 通 電
(a)熱 処 理 な し の 場 合
( b )
熱 処 理 あ り の 場 合 図4 .
熱 処 理 の 有 無 に よ る 磁 化 の 違 い5 .
授 業 実 践 結 果5 . 1
授 業 実 践 の 概 略表
1
の 授 業 案 に 沿 っ た 実 践 授 業 の 概 略 を , 図5
に授業風景を示す。まず,知る 段 階 で は , 磁 石 と 電 磁 石 ① ( 表1
参 照 ) を 使 っ た 「 魚 釣 り ゲ ー ムJ
(図 (a))を 行 っ た 。 こ の 活 動 を 通 し て 児 童 は , 永 久 徽 石 が 常 に 鉄 を 引 き つ け る こ と , 電 磁 石 は 電 流 が 流 れ た と き だ け 鉄 を 引 き つ け る こ と を 理 解 し , 電 磁 石 学 習 へ の 意 欲 と 関 心 を 高 め た 。 そ し て , 電 磁 石 の 特 徴 を 知 る た め に , 方 位 磁 石 を 使 い ( 図( b ))
, 永 久 磁 石 に はS
極とN
極があることを復習し,電磁石は電流の向きを変えること で 極 の 向 き が 逆 転 ( 図( c )
, (d)) す る こ と を 理 解 し た 。 次 い で 、 調 べ る 段 階 で は , 乾 電 池 の 数 を1
本 か ら 増 や す こ と で , 電 流 が 大 き く な り , 電 磁 石 の 磁 力 が 強 く な る こ と を 釘 の 吊 り 上 げ 実 験 で 学 習 し た 。 そ し て , 巻 き 数 の 違 う 電 磁 石(100
回巻と200
回 巻 ) を 用 い た 同 様 の 実 験 か ら , 児 童 は 巻 き 数 を 増 や す と 電 磁 石 の 磁 力が強くなることを理解した。更に,広げる段階では,電磁石の性質を整理し,よ り 強 力 な 電 磁 石 を 製 作 す る た め の 方 法 を 考 え る 最 強 磁 石 を 製 作 す る 課 題 に 児 童 を 取 り 組 ま せ た 。 ま ず , 児 童 の 課 題 へ の 興 味 ・ 関 心 を 高 め る た め に , 図
6
のよう な 画 像 資 料 を 用 い て , 日 常 生 活 の 中 で 使 用 さ れ て い る 電 磁 石 を 紹 介 し , 世 の 中 に は 非 常 に 強 い 電 磁 石 が 存 在 し , そ れ が 私 た ち の 生 活 に 役 立 っ て い る こ と を 学 習 し( a )
魚 釣 り ゲ ー ム( b )
方 位 磁 石 の 利 用( c )
電 磁 石 と 永 久 磁 石( d )
検 流 計 の 利 用( e )
釘 の 吊 り 上 げ 実 験風 景 と 製 作 さ れ た 電 磁 石 の 例 図
5 .
授 業 風 景み
吋虫丸、臨
b… ‑ d j み !
( b )
食 品 工 場( c )
モ ー タ ー( d )
自動選別機(e)MRI
図6 .
身 近 な 電 磁 石 の 活 用 例たo そして
r
巻 き 数J
,r
芯の太さJ
,r
導線の太さ j をパラメータとして,14
グ ル ー プ 毎 に 最 強 電 磁 石 を 製 作 さ せ , 製 作 し た 電 磁 石 を 用 い た 釘 の 吊 り 上 げ 「 重 さ 比 べ コ ン テ ス ト 」 を 実 施 し た ( 図5 ( f ) )
。 こ の 製 作 過 程 で は , 製 作 の 練 習 を 兼 ね た 予 備 実 験 ( 芯 材 の 熱 処 理 な し ) と 本 製 作 の 予 備 実 験 ( 芯 材 の 熱 処 理 あ り ) を 行 っ た 。 そ し て , 本 製 作 し た 電 磁 石 を 用 い て , 釘 の 釣 り 上 げ 実 験 を3
回行い,その平均値を実験結果とした。最後に,学習のまとめとして,各グノレープが
3
パラメー タ の 選 択 理 由 と 実 験 結 果 を 発 表 し , そ れ ら を 比 較 検 討 ・ ま と め る こ と で , 巻 き 数や芯,導線の関係で電磁石の磁力が変化することを理解した。
な お , こ こ で 扱 っ た 電 磁 石 の 身 近 な 例 (2)は , 電 磁 石 の 特 長 ( 小 学 校 の 内 容 ) を活かしたものや電流と磁界の関係を利用したもの(中学校の内容),渦電流を利 用 し た も の ( 高 等 学 校 の 内 容 ) が あ る 。 例 え ば , 自 動 車 の 解 体 工 場 や 食 品 工 場 な どで見られる搬送クレーン(図
6 ( a )
,( b ) )
やスイッチ,MRI
(図( e ) )
やCT
スキャン,リニアモーターカーの軌道などは電磁石の直接的な使用であるo一方,モ ー タ ー ( 図 (c))や 変 圧 器 , テ レ ビ の ブ ラ ウ ン 管 な ど は フ レ ミ ン グ の 左 手 の 法 則を,電磁波が少ないとされるホットカ}ペットは右ネジの法則を利用しており,
ア ル ミ 缶 の 選 別 機 ( 図 (d)) や 電 力 計 は 渦 電 流 が 使 用 さ れ て い るo ここでは,こ れらの詳しい説明は省略して,単に電磁石の身近な活用例として紹介した。
5 . 2
児 童 の 学 習 結 果一 般 に , 授 業 実 践 の 調 べ る 段 階 ま で は , 電 磁 石 の 小 単 元 で 行 わ れ て い る と 考 え ら れ る こ と か ら , こ こ で は 広 げ る 段 階 に つ い て の み 考 察 す るD 表 2に児童のパラ メータ選択理由と実験結果,図
7
に パ ラ メ ー タ 毎 の 傾 向 を 示 す 。 児 童 は 最 強 磁 石 を作るために,巻き数を増やしたが,芯材は太(外径12mm)
を選ぶグループ(理 由 : 面 積 が 大 き く な る か ら ) と 中 (10mm)
を 選 ぶ グ ル ー プ ( 理 由 : 最 適 値 が あ る と 考 え た ) が あ っ た 。 ま た , 導 線 径 は1
割 が 細(O.3mm)
を(理由:電気を流 れやすくするため),2
割 が 中(O.5mm)
を ( 理 由 : 細 い と 流 れ に く く , 太 い と 無駄・流れ方が分からない・最適値だと思う),7
割 が 太(O.8mm)
を ( 理 由 : 電 線 や ホ ー ス を 例 と し て 挙 げ , 電 流 が 流 れ や す い と 考 え た ) 選 択 し て い る 。 こ れ ら の 結 果 か ら , 基 礎 的 な 学 習 内 容 で あ る 電 磁 石 の 強 さ と 巻 き 数 の 関 係 は 良 く 理 解 し て い る が , 巻 き 数 の 最 適 値 の 有 無 を 意 識 し て い る 児 童 と そ う で な い 児 童 が い る ことが分かるoこのことは,他の芯材や導線の太さの選択でも言えることであり,表
2 .
児 童 の パ ラ メ ー タ 決 定 理 由 と 実 験 結 果(A
クラス)巻き数 芯の太さ 線の太さ 理由
4・
平(均巨)値予備実験(g)1
No. 巻き数 芯の太さ 線の太さ 古 釘 新 釘 │
中 中
今までより多くするため
│う付同かくじ面巻ら積きを数多でくあ…れば変わ太らなにい同と思太さF胃とW思7っ考たえかたらとき.悶じくらいの
3491
1 300 329 426
今までの学が習増です.か巻らき数を増やす 付く面積を大きくすると磁力が増す
遅全ムーてくながズっで大たなきりくか.な余っるた計からなら.所電に気行のっ回てりスが 320
2 500 太 細 ほど磁力 と怒ったから 365 296
3 500 中 中 今ほまどで磁の力学が習培です.か巻らき数を治やす 小さくても大きくても付〈場所は閉じ 細がでいてと電しま流うがか流られにくく.太いトムだだから 318 315 280
4 400 太 中
r 3 善ι r
3ま0ま0極意問固ででE予で力肢よよをははりdりM宿刈多輪多少p〈やt〈な〈zすすなすuいるるるとといたた恩,思J電凡めめつっ認肉.が.たたたが2体か8だ子同斗ら雷SL しし,d,hでA
付れ〈る面と積思をった大かきくらすると沢山釘が吊
寸細友思実い3っ0たるとっ電かかた誌AらbiAが早倒く流て3をれ電ほにZ1く;t拍ーに高ス温太mりいに71<.流く)‑いれ闘と 474 385 493
5 450 中 細
銭 付 れ
会λ〈俸はるり面変とと岡積思わ同山をっじらこ官たでな《いかきい適の〈らとす当?.恩るまfラE冒とたカ太沢涜らさ3山kで#と釘回な中がいl・l5本と扇‑
299 329 329 細竃い気との電通流るの道遜l本る分道かがら狭な<.太いと
6 400 細 中 いから 247 273 284
太 太
│巻けば巻くほど磁力が強くなるから
永どン付も久広け磁いる石かカとらが同強じでい,。函電積磁が石大のきクいレほー 水太の道方いとのがなホ水がーのれス流るとれ電伺る気じ量でのが.量太多がいい増ホのえーでるス. と
7 550 492 502 487
B 500 太 太 巻けば巻くほど磁力が強くなるから 付〈面積を広くするため 短いた気めをなるべく多く流さないといけな 501 544 558 も『か巻.っ磁きTこ数力かをがら増強やくなするとと電い流うが事同がじ分で 引きつける面積が広い分.磁力が 細、Jとい思よっりた太かい方らが電流が流れやす
9 500 太 太 沢山あるから 455 401 497
も『巻き磁数力をが増強やくなするとと電い流うが性同質じかでら 強『引くきなつるけ」とる思面っ積たがか広らい分.滋カも
:磁な『ま慣U電電I同細たも涜偲源力E四じいのがががが嘆よ電が強大2涜千きKり使UU線き太数れ〈となわ〈合のるでいエなる唱仇と方もでナ』るて思電こがメと文いっと涜ル思鴛たをてけ銀をっ誌学札大たはが太んはきか同涜いだ多〈らじ方れすか〈よやるがのうとら. す
10 500 太 太 540 831 675
11 500 太 太
も『『も巻巻き磁き磁数歓力力をを前が却増強翰やや《〈ななすするるとと砕と電電為いZ涜市誌弓がが件性同両留質じしかかででらら
I
強太「引〈けきなれつるばけ!と磁る照力面っが積た多がかく広らたいま分る.と磁思力っもた 335 375 50012 500 太 太 ので 479 335
も「巻磁き数力をが増強やくなするとと電い流うが性同質じかでら太い方が磁力が強いと考えたから
線電か話がら.機太太いはくと電す芦磁るがと石強良をい〈使聞電っこ磁てえい右るるがとので思できう,
13 500 太 太 528 501
14 500 中 太 巻学き習数したを地かやらすと.よくくっつくことを 生さが活あにる役か立らつ電磁石も適当な大き 電柱の電線も太いから 354 401 399
」 ー
注 ) 電 源 は 単 三 乾 電 池
2
個 に 統 一500 600
芯の太さ
、・回~
400 ̲ 500
凶
恨J
300
制S 200
局100
‑ 400
机J 酬
300
~ 200
属
100
』 〆,
。 。
300 400 500
細 中
太巻き数 芯の太さ
(a)
巻 き 数 の 影 響(b)
芯 の 太 さ の 影 響500
~ 400
パラメータ祇J
300
刷e 200 局 100
。
細
中 太線の太さ ( c )
祖 先 の 太 さ の 影 響図
7 .
パ ラ メ ー タ が 釘 の 吊 り 下 げ 重 さ に 与 え る 影 響(A
クラス)表
3 .
ク ラ ス 間 の 成 績 の 有 意 差(a)評 価 項 目 別 の 成 績 の 平 均 値 と 標 準 偏 差
(b)評 価 項 目 別 の t検 定 結 果
組 知識・理解 表現・処理 思考・判断
A‑B A‑C B‑C A‑B A‑C B‑C A‑B A‑C B‑C F値
0 . 2 8 0 . 9 2 2 . 3 6 0 . 0 2 9.36 1 0 . 7 0 2 . 2 5 9 . 8 7 3 3 . 7 0
有 意 確 率0 . 6 0 0 . 3 4 O . 1 3 0 . 8 9 0.00 0 . 0 0 O . 1 4 0 . 0 0 0 . 0 0
t 11直 ‑1. 66 ‑ 2 . 5 0
一O .7 0 2 . 1 6 ‑ 2 . 6 8 ‑ 5 . 4 0 0 . 9 6 ‑ 1 . 5 2 ‑ 2 . 5 0
自由度5 5 5 3 5 2 5 5 42.4 5 2 5 5 3 5 . 5 5 2
有 意 確 率0 . 1 0 0 . 0 2 0 . 4 9 0 . 0 4 0 . 0 1 0 . 0 0 O . 3 4 O . 1 4 0 . 0 2
(両側)有 意 差 傾向有り 有り なし 有り 有り 有り なし なし 有り
日 常 生 活 で の 経 験 ( 水 道 の ホ ー ス の 例 ) や 観 察 内 容 ( 電 線 や 電 話 機 の 例 ) を 科 学 的 に 分 析 し よ う と 試 み て い る か い な い か の 違 い と 考 え ら れ るo
こ れ ら の 電 磁 石 を 用 い た 釘 の 吊 り 上 げ 実 験 結 果 を 図
7
に 示 す 。 授 業 で は , 各 グ ノレーフ。が3
パ ラ メ ー タ の 選 択 理 由 と 実 験 結 果 を 発 表 し , そ れ ら を 比 較 し た が , 一 般 的 な 傾 向 を 数 値 か ら 児 童 が 読 み 取 る こ と は 困 難 で あ っ たo そこで,TT
である 学 習 支 援 者 が , そ れ ら の 結 果 を 図7
の よ う に グ ラ フ 化 す る こ と で , 科 学 的 な 物 事 の 考 え 方 や 表 現 の 仕 方 を 児 童 は 学 ん だ 。 更 に , 図3の よ う な 結 果 ( ・ 印 の み の デ
ー タ ) や 砂 鉄 を 用 い た 磁 力 線 の 可 視 化 の 様 子 を 写 し た 写 真 や 導 線 や 芯 材 で の 電 流 や 磁 力 の 流 れ や す さ を 表 し た 模 式 図 な ど を 活 用 す る こ と で 本 単 元 の ま と め が 行 われた。こ れ ら の 授 業 を 評 価 す る た め に , 期 末 テ ス ト の 結 果 を 分 析
(SPSS13.0
を 使 用 :t
検 定 の 有 意 確 率 が0 . 0 5
以 下 は95%
有意水準で,0.05
よ り 大 き い 場 合 は90%
有 意 水 準 で 評 価 ) し た 。 表3
に,3
ク ラ ス の 児 童 の 観 点 別 評 価 を 示 す 。 こ こ で , 授 業 は , ク ラ スB
,C
,A
の 順 で 行 わ れ たo また,観点別評価は, ["知識・理解J,["表 現・処理j, ["思考・判断」の3
項 目 で あ り , 各 々30
,30
,40
点 満 点 で あ るo そ して, B ク ラ ス は コ イ ル メ ー カ ー を 使 用 せ ず , 調 べ る 段 階 ま で の 授 業 ( 一 般 的 な 授 業 に 相 当 ) を 教 員 の み でC . A
クラスはコイノレメーカーを使用して広げる段 階 ま で の 授 業 ( 表2
の 結 果 の 授 業 ) をTT
で 行 っ たD 表より,B
とC
の ク ラ ス 聞 の 「 知 識 ・ 理 解J
,A
とB
及 びA
とC
の ク ラ ス 間 の 「 思 考 ・ 判 断 」 で は , 有 意 な 差 が 認 め ら れ な か っ た が , 他 で は 有 意 な 差 が 確 認 で き た こ と か ら ,TT
で あ る 学 習支援者が授業に加わることで, ["表現・処理J
に 良 い 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ るo一 方 知 識 ・ 理 解
J
,["思考・判断J
に 対 し て は , 学 習 支 援 者 の 効 果 は 判 定 で き な か っ た 。 な お , こ の 成 績 評 価 に つ い て は , 分 散 統 計 も 行 っ た が , 同 様 の 結 果 を 得 た こ と か ら , こ こ で は 結 果 を 省 略 す るo 今 回 の 授 業 で は3ク ラ ス の 人 数 が A
からC
の順で少なくなっており,授業を行った教員の感想、では,少ないクラスほど授 業 が 行 い や す く , 指 導 も ス ム ー ズ に 行 え た こ と が 分 か っ た 。 そ の よ う な 影 響 が , 平 均 点 に も 現 れ て い る と 推 察 さ れ るo 一 方 , 今 回 使 用 し た コ イ ル メ ー カ ー は , 製 作 時 間 の 短 縮 が 図 れ , 調 べ 学 習 や 測 定 の 時 間 を 確 保 す る 上 で , 有 効 な 教 具 で あ っ たO しかし,A
とB
ク ラ ス の 「 知 識 ・ 理 解 」 の 結 果 か ら , コ イ ル メ ー カ ー は 「 知 識 ・ 理 解 」 に 大 き な 影 響 を 与 え な い が , 広 げ る 段 階 の 「 重 さ 比 べ コ ン テ ス ト 」 で の 学 習 プ リ ン ト を 見 る と 「 表 現 ・ 処 理 J と 「 思 考 ・ 判 断 」 に 良 い 影 響 を 与 え て い ることが分かるD6 .
おわり小 学 6年 生 の 電 磁 石 の 学 習 単 元 で , 補 助 教 具 と し て コ イ ル メ ー カ ー を 試 作 し , 大 学 教 員 に よ る 学 習 支 援 を 行 っ たo その結果,以下のことが明らかになった。
1 )
大 学 教 員 が 学 習 支 援 者 と し て 授 業 に 加 わ る こ と で 表 現 ・ 処 理 J に 良 い 影 響 を 与 え るo2 )
コ イ ル メ ー カ ー を 使 用 す る こ と でr
知 識 ・ 理 解J
に 有 意 な 差 は 認 め ら れ ない。3 )
コ イ ル メ ー カ ー は , 製 作 時 間 の 短 縮 が 図 れ , 調 べ 学 習 や 測 定 の 時 間 を 確 保謝 辞
す る 上 で , 有 効 な 教 具 で あ り , 学 び を 広 げ る 段 階 で の 使 用 に 効 果 が あ る と 考えられる。
本 教 育 活 動 に は , 宇 美 町 立 桜 原 小 学 校 ( 福 岡 県 糟 屋 郡 ) の 理 科 部 の 先 生 方 に 協 力を頂いた。また,授業実践や教材開発の一部は, 日 産 科 学 振 興 財 団 理 科 / 環 境 教 育 助 成 の 支 援 を 受 け た 。 さ ら に , 教 材 製 作 で は , 福 岡 教 育 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 技 術 教 育 専 攻 森 岡 亮 氏 の 支 援 を 受 け た 。 こ こ に 記 し , 謝 意 を 表 す 。
参 考 文 献