〈論 説 〉
半 乾燥 地 農 業 の社 会経済 的性 格
一 農 耕方 式,耕 地制 度 と村 落社 会 一一
後 藤 晃
は じめ に
昨年12月,日 本学 術 会 議地 域 農学 研 究連 絡 委員 会 の 主 催で,「 半 乾 燥 地農 業 と地 域 農学」 とい うテ ーマ に よる シ ソポジ ウ ムが 開かれ た 。地 域農 学 は,自 然 生態 系 と農 業 生産 の調和 をめ ざす学 際 的分 野 を対 象 とす る学 問 で あ り,委 員会 の任 務 とし ては次 の よ うな 内容 を もってい る。「人 間 が 経 済 的 な 生産 を続 け る 場 で あ る とと もに,生 活 の場 で もあ る地域 の 自然 環 境 を安全 に長 期 に亘 って維 持す るた めに,地 域 の 自然環 境 と農業 技術 の関係,地 域 の農 業 と人 との関係, お よび農業 を 構成 す る農 ・畜 ・林 ・水産 業 の相 互 関係 な どを グロー バル な見 地 お よび個別 の環境 条 件 の下 で 追求 す る 。」 この学 問 は多領 域 に また が る 研 究 の 綜 合 を要 す る と ともに,生 産 力主 義 に対 す る批判 を含 む もので あ り,す ぐれ て 今 日的 課題 に即 した もの と言Hる 。
半 乾燥 地 農業 は,今 日,こ の農 業 地域 で 砂漠 化 の進 行 に よるエ コ ロジー の破 壌が 問題 とされ て お り,そ こで の主 要 な生 業形 態 であ る農業 に 関 し て どの よ う に再 生 産 を長 期的 に維 持 し,さ らに発 展 の方 向性 を さ ぐってい くか とい うこ と が きわ め て大 きな テー マ とな って い る。 今 回 の シ ンポジ ウムで は,地 域 農学 の 観 点 か らこの課 題 に ど うせ まれ るかが 主要 な論点 とな った 。 した が って サ ブテ
ー マ として,こ の課 題 に沿 った 次 の6つ が 掲 げ られた 。 (1)土 壌 地 域性 か らみ た 乾燥 地 開発 とそ の問題 点
② 乾 燥 地に お け る水資 源 と水管 理に 関す る諸 問題 {3)半 乾 燥熱 帯 にお け る伝統農 業
(4)乾 燥地 におけ る園芸作物栽培 の諸 問題
⑤ 半乾燥 地帯の緑化造林 の問題点
㈲ 半乾燥地農業の社会経済的性格
筆 者 は この⑥ を担 当 し,半 乾 燥地 に お け る天 水農 業 の農 耕方 式 の特 徴 とそ の 問題 点,お よび村 落 の農 業 制度 につ い て,と くに 西 アジ アを 対象 に して報告 し た 。本 稿 は,こ の報 告 を 加筆 した もの であ る。農 耕方 式 や農 業 制度 は,諸 地域
の歴 史 を反 映 し てお り,社 会経 済 史 の視 点 か らの検討 が 必要 で あ る。 しか し こ こで は地域 農学 とい う研 究方 法 に即 したた め に,農 業に とって の 自然 条 件 か ら の検 討に 重点 が お かれ てい る。 した が って,自 然 決定 論 との批 判 が あ る と想 定
され るが この点 留 意を お願 い した い 。 なお本 論文 は,イ ラソ,ト ル コ農 村 の筆 者 に よる調 査(1973,197'7年)を 中 心 に,ま た 文末 の参 考文 献 に掲 げ た 研究 書 に 依 拠 してい る。
1.半 乾 燥 地 に お け る天 水 農業 の 特 質
1.半 乾 燥 地 の 定 義
国 連 の ユ ネ ス コで は,年 間 降 水 量 が100ミ リを 切 る 地 域 を 極 乾 燥 地 ・100〜300 ミ リを 乾 燥 地,300〜600ミ リを 半 乾 燥 地 と し て 区 分 し て い る。(Eckholm,13) こ の 区 分 は 自然 環 境 を 分 類 す るた め の 基 準 とな り得 る が,農 業 生 産 の 自然 条 件 とし て の 乾 燥 度 を あ らわ す に は 不 十 分 で あ りa降 水 量 に 気 温 と土 質 を フ ァ ク タ ー と し て 加}る 必 要 が あ る。 気 温 が 高 け れ ぽ 蒸 発,蒸 散 量 が 大 き くな り乾 燥 度 も高 ま る し,土 質 が 砂 質 の よ うに 水 は け が 良 け れ ば 降 雨 が 多 くて も作 物 に と っ て 水 不 足 を ひ き起 こす か ら で あ る 。 フ ラ ン ス の気 候 学 者 マ ル トソ ヌ は,乾 燥 度 を 表 わ す のYy次 の 式 を 使 用 した 。
1=P/T+10(P:年 間 降 水 量mm,T:年 平 均 気 温 。C)(Martonne,241〜
250}
農 業 条 件 とし て の 乾 燥 度 を あ らわ す の に,気 温 を フ ァ ク タ ー と し て 加 え る こ と で よ り正 確 な も の とな り得 る 。
(106) 半乾燥地農業の社会経済的性格3
西 アジ アを対 象 に,こ の一マル トソ ヌ指 数で 農業 生産 の態様 を 分類 す る と,お よそ次 の よ うにな る。た だ 西 アジ アで は,降 雨 が 晩秋 か ら春 に かけ た時 期 に集 中 し,初 夏 か ら秋 に かけ た季節 は乾 期 に あた りほ とん ど降雨 を み ない 。 した が って 同 じ乾 燥,半 乾 燥地 で も夏 季 に 降水 の あ る イ ソ ドや 中国北 西 部 とは条 件 を 異に してい る。
(1)マ ル トソ ヌ指 数 が5以 下
作 物 は天 水 のみ で は生 育せず,農 業 生産 に は人 工 的な 灌概 が不 可 避 で あ る。
地域 的に は,ア ラ ビア半 島 の南 西部 の一部 を 除 く地域,イ ラ ク南 部・ それ に イ ラ ソ,シ リア,ヨ ル ダソの砂 漠周 辺 が これ に 相 当す る。
(2)マ ル トソ ヌ指 数が5〜12
作 物 は降雨 期 に生 育す る麦 類が 生産 可 能 で あ る。 しか し生産 性 は著 し く低 く・
天 水農 業を 中心 とした 農業 は経営 的に な りた た ない 。 こ こで の農 業 も灌 概 農業 が主 体 で あ り,天 水農 業 は農 業経 営 上 補助 的 位 置を 占め るにす ぎない 。
(3)マ ル トン ヌ指数 が12以 上
天 水農 業主 体 の農 業経 営 が成 立 す る。 しか し,年 間 降水 量 に変 動が 大 き く農 図1西 アジアの降水量(mm)と 各都市 のマル トンヌ指数
イ鎚 づ一1V//
.㌦12.4・
153諺
36.9
噸 溝
%/%>600・m 巨 ヨ400〜599 1=コ<400
、∫ニ ニらy 34.0
'
■ リ ヤ ド.
.'2.3.'
業 生 産 は 不 安 定 で あ り,ま た 生 産 性 が 低 い 。 指 数 が ほ ぼ15の ヨル ダ ンの ア ル ク ラ地 方 の 事 例 で み る と,1950年 代 の 年 間 降 水 量 は 次 の よ うに 変 化 し て い る。
1954/552$5mm195$/59323mm 1955/5655Smm1959/60205mm 1956/57595mm1964/61439mm 1957/58476mm
1959/60年 は 旱 魅 の年 で あ り,こ の地 方 の あ る村 で は 播 種 量 の 半 分 し か 収 穫 が な か った 。(Ant・un,8)半 乾 燥 地 の 天 水 農 業 地 帯 で は,5年 に1度 の 割 合 で 早 魑 が あ る とい わ れ て い る。 また 土 地 生 産 性 は,イ ラ ン の 事 例 で み る と,天 水 農 業 の 盛 ん な 地 方 で 灌 概 農 業 と比 べ て 小 麦 で4〜5割 に す ぎ な い 。(イ ラン統 計局 157〜8)こ の 生 産 の 不 安 定 と低 生 産 性 の ゆ え に,天 水 農 業 に お い て 農 業 経 営 は, 必 ず 牧 畜 また̲̲̲̲̲部に 灌 概 農 業 を 含 む 複 合 的 な 形 態 を と る こ とに よ っ て 安 定 化 が は か られ て い る 。 この 自然 条 件 下 で の 天 水 農 業 で は,耕 地 は 農 家 当 りの 規 模 が 大 き く,ま た 耕 地 周 辺 に 耕 作 可 能 な 劣 等 地 を もつ 。 乾 燥 度 の 高 い と こ ろ で は 耕 地 が 灌 概 条 件 を もつ 範 囲 に 限 定 され て い る の と比 べ 対 照 的 で あ る 。 地 域 的 に は レバ ノ ン,シ リア,パ レ ス チ ナ,ヨ ル ダ ン の い つ れ も地 中 海 に 近 い 地 方,ト ル コの ア ナ ト リア 山 地,イ ラ ソ北 西 部 と イ ラ クお よ び シ リア 北 部 の ザ ー グRス 山 地 が これ に 相 当 す る。
図1は,西 ア ジ ァ に お け る年 間 降 水 量 分 布 と主 要 都 市 に お け る マ ル トン ヌ指 数 を 示 し て あ る 。
農 業 生 産 の 諸 条 件 は,し た が っ て 乾 燥 度 に よ っ て 大 き く異 な る 。 半 乾 燥 地:::.・一 業 を,こ こで は 農 業 条 件 か らマ ル トソ ヌ指 数12以 上 の 天 水 農 業 を 主 体 と した 農 業 経 営 が 可 能 な 地 域 の 農 業 と し て 規 定 す る。
2.天 水農 業 の生 産 力
半 乾燥 地 の 天水農 業 は 土 地生産 性 が 著 し く低 位 であ る。表1は1960年 の イ ラ ンの農 業統 計 か ら,各 地 方 のマ ル トン ヌ指 数 と,灌 概 小麦 お よび非 灌概 小 麦 の 単収 との関 係 を示 した もの であ る。 灌概 小 麦で は,人 工 的 に灌{用 水 を施 す ご
(104) 半乾燥地農業の社会経済的性格5
表1イ ラン各地 に おける小麦 の単 位面積 当た り収量 と播種 量
東 ア ゼ ル パ イ ジ ヤ ソ テ ヘ ラ ン
ホ ラ ー サ ソ
ク ル デ ィ ス タ ー ン ケ ル マ ソ シ ャ ー・
ホ ー ラ ム ア ー パ ー ド フ ァ ー ル ス
ケ ル マ ソ イ ラ ン 全 土
主要 都市 の マル ト
ン ヌ指 数 13.4
7,8 10.2 16.0 18.4 15.6 10.6 5.1
灌 概 小 麦
覧書
986 1,274 1,199 1,193 1,241 1,403 1,x.47 1,662 ].,182
鷺讐
177
×71 130
×06 171 182 122 193
×59
天 水 小 麦
監/甚
424 294 505 550 487 69$
191 goo 482
難盤
101 64 6$
107 89 108 56 76 89
収量の対播種景比
4.2 4.6 7.4 5.1 5,5 6.5 3.4 2.6 5.4
出 所 ・ イ ラ ン 統 計 局,Nataijiamargzr[ekeshavar刎.Tehran ,1960P群157一 δ
とで 作 物 の 生 産 に 水 は 制 限 要 素 とな らな い た め に,マ ル トン ヌ指 数 と単 収 との 間 に 相 関 が な く,1960年 頃 の 技 術 水 準 下 で ヘ クタ ー ル 当 り平 均1 .2ト ン の 収 量 が あ った 。 し か し,非 灌 概 小 麦 で は 相 関 性 が 明 確 で あ る。 指 数 が 下 る に 従 っ て 単 収 が 下 り・ 指 数 が10を 切 る とヘ クタ ー ル 当 り0.3ト ン を 割 っ て い る
。 こ こで は 天 水 依 存 の 農 業 を 主 体 と し た 経 営 は 成 立 し な い。 指 数 が5を 越 え る と生 産 量 が0.5ト ン を 越 え,低 生 産 性 な が ら天 水 農 業 中 心 の 経 営 が な りた つ
。 し か し, い ず れ に して も灌 概 農 業 と比 ぺ て 生 産 性 は き わ だ っ て低 位 で あ る
。 天 水 農 業 で は ・ 水 は 農 業 生 産 に と っ て 制 限 要 素 と し て あ り,作 物 に と り適 時 の 水 が 不 足 す る こ とが この 主 要 な 理 由 で あ る 。
乾 燥 地,半 乾 燥 地 で は,天 水 小 麦 の 収 量 は,降 水 量 に 大 き く左 右 され,乾 燥 度 と逆 の 相 関 性 を もつ が ・ ま た 農 業 生 産 に 投 入 され る労 働 量 も,乾 燥 度 との 間 に 強 い 相 関 性 を も っ て い る 。 乾 燥 度 が 高 い 程 労 働 投 入 量 は 小 さ く労 働 粗 放 的 傾 向 が 強 ま る 。 イ ラ ソ の 事 例 で み る と,フ ァー ル ス と ホ ー ラ ム ア̲バ̲ド の2つ の 地 方 の そ れ ぞ れ 特 定 の 村 の 非 灌 概 小 麦 生 産 の 農 作 業 を 比 較 す る と
,次 の よ う に な る。
フ アー『ル ス で は・ 農 作 業 は き わ め て単 純 で あ る
。 晩 秋 に 最 初 の 雨 が あ る と播 種 を 行 な い ・ 続 い て,砕 土 が 行 な わ れ る 。 砕 土 は 今 日 トラ ク タ ー で デ ィス クハ
iマル トンヌ醐 糊 傭)単 収1 陣
・砕土淑 穫
耕 起,播 種,砕 土,施 肥,収 穫,耕 起
mを 索 引す る方 法 が とられ てお り,こ の作業 は土 を砕 くとと もに 種 を地 中 に 埋 め る役割 を もってい る。 機械 化 以 前 に は,雄 牛 に杷 を牽 引 させ る方 法が とら れ てい た。 この作業 後 は,収 穫 まで 労働 は一 切 投 入 されず,き わ め て粗 放 であ る。一 方 ホー ラ ムアー バー ドの場 合,農 作 業 は これ に2回 の耕起 と施肥 が 加わ る。耕 起 は,休 耕期 の 夏季 休 閑耕 と播種 前 の 耕起 で あ る。 これ は後 に 述べ るが・
土 壌 の水分 の保 持 を はか る保 水 と除草 を かね た作 業 で あ る。 耕起 に よって土 壌 か らの 水の蒸 発 を抑 制す る こ とが 可能 であ り,耕 地 の 草を除 くこ とがで き る。
この2つ の事例 にみ られ る差 はf追 加労 働 に伴 な う収穫 の増 加 に差 が あ る結 果で あ る。 乾燥 度 が 高 くな る程 労働 の追 加投 入 に よる増収 率 は急 激 に低 下す る。
この関 係 は労 働 の 限界 生産 力 曲線 として次 の よ うに描 け る。 天 水農 業で は,灌 概農 業 と比 べ て 限界 生産 力 曲線 は急 激 に低 下す るので あ り・ 乾 燥度 が 高 い程 そ の傾 向は顕 著 とな る。(後 藤,1981,24〜26)
降水量300ミ リ 降水量450ミ リ
A
0 B
A'
O B'追 力II労働 量
OA,OA'は 賃 金 水 準
OB,OB'は 経 済合理 的労働 集約度
西 ア ジ ア に お け る 天 水 農 業 は,後 に 詳 述 す る よ うに 休 閑 農 業 で あ る。 土 地 利 用 は作 付 け と休 閑 を 繰 り返 え す 。 休 閑 期 に 地 力 維 持 を は か り,除 草 し,保 水 を お こ な う。 これ は 日本 で み られ る よ うな 中 耕 農 業 と異 な る 。 飯 沼 二 郎 は,中 耕
(102) 半乾燥地農業の社会経済的性格7
農業 と比 べ て休 閑 農業 は労 働 粗放 的 で あ る と い う。 「夏 に よ り乾燥 な地 域 に成 立 した 休閑 農業 で は,夏 に 休閑地 を型 耕 す る こ とに よって保 水 あ るい は除 草に 有効 な 働 きを な し,地 力 を 回復す る。0方,夏 に,よ り湿潤 な 地域 に成 立 した 中耕農 業 で は,夏 に地 中 の有機 質 が 分解 し,も し夏 に休 閑 して地表 を覆 う作物 が ない な らば,そ れ らの有 機 質 は降 雨に よって流 出 し地 力 が劣 化す る。そ の上s 翌 年 か ら雑草 の 繁茂 が はげ し くな り,除 草 にお お くの労 力 を 要 す る よ うに な
る。」(飯 沼16〜7)つ ま り,休 閑農 業で は播種 か ら収 穫 まで のあ いだ に 農作 業 は な く,休 閑),rVLけ'る 黎耕 に農業 再 生産 の ため の 多 目的 な意 義 が果 せ られ て い るので あ る。 そ して この労 働 は容 易 に合 理 的集約 度 に達す る。半乾 燥地 の 天水 農業 で は と くに その傾 向が 大 き く,乾 燥 度 が 高 くな る とこの休 閑地 の作 業 が皆 無 に な るので あ る。
黎耕 の保 水効果 とい う点 で み る と,年 間 降水 量 が450ミ リを 越}る 地 域 で は, 透 水 性 のあ る土 壌 て 雨期 には1mの 深 さまで湿 気 を もつ。 しか し300ミ リ以下 で は雨 水 は土 壌 の深 層 に まで 至 らず,土 層 のせ いぜ い10〜20cm程 にす ぎない 。 土壌 に短期 的に 湿気 を与 え るだけ で あ り,夏 季 の 高温 乾燥 で容 易に 水 分を 失 う。
保 水 を 目的 とした翠 耕 は}し たが って,半 乾 燥 地 で は,0定 の効果 を もち 増収 を もた らすが,300ミ リを切 る乾 燥地 で は保 水効果 は小 さ く,労 働 費用 を上 ま わ る増 収 を この作 業 に期 待 し得 ない ので あ り,結 局 黎 耕 は行 なわ れ ない とい う
こ とに な る。
これ は肥 料 投 入に おい て も言 え る。 土 壌 の水 分が 恒 常 的に 少 ない ため肥 料効 率 は悪 い 。肥 料効 率 は土 壌 の 水分 との間 に 直接 的 な関 係が あ り,乾 燥度 が 高い 程効 率 は低 下す る。 天水 農業 地 帯 で は伝 統 的 に施 肥 は行 なわれ なか った 。化学 肥料 の普 及後 に一 部 で 施肥 が み られ るが 施肥 量 は 少 ない。 ホー ラ ムアー一バ ー ド
て は,ヘ クタール 当 り40kg程 で あ った 。灌 概農 業 に おい て 化学肥 料 投 入が一 般 化 し てい るの と対 照 的で あ る。
す なわ ち,半 乾 燥 地 にお い て伝 統的 農 耕方 式 の下 で は,労 働 お よび資本 の 限 界 生産 力 は急 激 に低 下す るの であ り,農 業 は粗放 的 で あ り粗 放 度 は乾燥 度 と相 関 性 を もち,集 約 化 の条 件 は農 耕 方式 の転 換 に よって しか ない 。 しか し,天 水
農業 で は この条件 が 著 し く乏 しい とい う問題 が あ る。
3.土 地 利 用 と 自然 条件
西 ア ジ アの半乾 燥 地 にお け る土 地利 用 の基 本 形態 は,冬 作穀 物 と くに小麦 と 大 麦 に重 点が お かれ て い る。 降雨量 は少 な く,雨 は 晩秋 か ら春 にか け て偏 って 降 り,夏 は乾 期 に 当 り高温 乾 燥 で作 物 生産 の条 件 は 著 し く悪 い 。 した が っ て, 作 物 は,天 水農業 では,秋 に 播種 され初 夏 に収 穫 され る作物 か,初 春 に 播種 さ れ 降 雨期 の終 る4,5月 に 収穫 され る作物 か,ま た夏季 に生 育す る作 物 で は耐早 性 のあ る特 殊 な作 物で な けれ ば な らな い。 一般 に乾燥 度 の 高い 地 方で は,土 地 利用 は小麦,大 麦 に限定 され,2年1作 で 生産 され て い る。 あ る年 に作 付 け さ れ る と翌年 この耕 地 は休 閑地 とな る。 条件 の悪 い劣 等地 で は3年1作 な い し数 年 に1作 とい う場 合 もあ る。
イラ ソの天 水農 業 は,降 水 量が450ミ リを切 る地 方 で は,ほ とん どが 小 麦, 大 麦 の単作 であ る。 表2は,イ ラ ンの天 水農 業 の盛 ん な2地 方 にお け る作 目別 の作 付面 積 と灌概 地 率 を示 してい る。 作 付面 積 で は圧 倒 的 に 麦が 大 き く,作 付 地 全 体 に 占め る割 合 は,い ず れ も90%で 圧 倒 的 で あ る。麦 のほか に 天水 で 作付 け られ る作物 として は工 芸 作 物,野 菜 が あ る。 前者 は主 に油 料用 作 物,後 者 は 豆 類 で あ る。 しか し作 付 面積 は 小 さい。 綿 はす べ て灌 概 に よ り,野 菜 も ウ リ類 な ど乾燥 に弱 い作 物 はすべ て灌 概 に よってい る。
表2イ ラ ンの2地 方 に おけ る土地利 用 東 ア ゼ ル バ イ ジ ャ ン
作 糠 )劃 灌 概 矯
麦(小 麦,大 麦) 綿
雑 穀
工 芸 作 物
野 菜
飼 料
959.7 6.6 2.0 10.5 35.3 44.6
23.4 goo.0
0.4 63.9
」IrG
SJ.9
ホ ー ラ ム ア ー バ...ド
作 糠 lh馴灘 矯
226.1 1.5 0.1 1.3
9.2
1
10,5
26.6 zoo.0 100.0 100.0 51.9 69.8 出 所 イ ラ ン 統 計 局,前 掲 書,p.59,60よ り作 成
Cloo) 半乾燥地農業の社会経済的性格9
天 水 に よ る工 芸 作 物 や 野 菜 は 一 般 に 麦 との 輪 作 で 作 付 け られ て い る。 作 物 と し て 主 要 な もの は,ヒ マ ワ リ,ト ウ モ ロ コシ,ゴ̀7,レ ソ ズ 豆 な どの 豆 類 で あ
り,い ず れ も耐 旱 性 の 作 物 で あ る。 トル コの ア ナ ト リア で は,降 水 量 が600ミ リ前 後 の 地 方 で ジ ャガ イ モ が み られ るが 生 産 性 は 高 くな い 。
土 地 利 用 形 態 を 降 水 量 との 関 係 で み る と,ヨ ル ダ ソの 場 合,降 水 量 が200ミ リ以 下 で は耐 早 性 の 大 麦 だ け が2年 ま た 数 年 に1作 で あ る 。 降 水 量 が 増 え る に 従 っ て これ に 小 麦 が 加 わ り,小 麦 と大 麦 の2年1作 に な る 。 さ ら に450ミ リを 越 え る と小 麦,大 麦 に 各 種 夏 作 物 が 加 わ り輪 作 体 系 を とる こ とが 可 能 とな る。
年 間 降 水 量 が 平 均 で450〜500ミ リ程 度 の ヨル ダ ソ 川 に 近 いkufral‑Ma村 の例 で み る と,土 地 利 用 は下 の 図 の よ うに な る。(Antoun・15)
図2Kufral‑Ma村 の輪作 地 小 麦 ・大 麦 豆 類
QX ppXp △ × △ △X△
一一 降雨期,△ 摯耕,× 砕土
小 麦,大 麦 は隔 年 で作付 け られ,中 間年 に レ ンズ豆 な どの豆 類,ト ウモ ロ コ シ,ゴ マ が 入 る。豆 類 は2月 に播 種 され,5月 頃に 収穫 され,降 雨 期に作 付 期 を合わ せ て い る。 ヨル ダ ソは平 均気 温 が高 いた め に輸 作体 系 を とる こ とが可 能 だが,ア ナ トリアで は冬 は寒 冷 で あ り,豆 類 の作 付 期は5月 以 降 の乾期 と重 な
り,麦 と夏作 の輪 作 は降 水 量 の相 対的 に 多 い地方 で の み可 能 とな る。
す なわ ち,西 ア ジアの半乾 燥 地 で は,降 雨期 が 晩秋 か ら春 にか け た期 間でf 夏 は厳 しい乾 燥 期で あ る こ とか ら,夏 作 生産 が 非 灌概 農業 で は きび し く制 限 さ れ,乾 燥 に比 較的 強 い作 物 が半 乾燥 地 の 中で も比 較 的乾 燥度 の低 い地方 で,部 分的 に土地 利 用体 系 に含 まれて い るにす ぎず,全 般 的 には冬 作 穀 物 の小麦 と大 麦,ま た 一部 で ラ イ麦 の単 作 が高 い割 合 を 占め て い る。
4.農 家 経済 におけ る牧 畜,家 畜 の飼 養 方式
半乾 燥 地 の天 水農 業 にお け るさ らに一つ の特 徴 として牧 畜 があ る。農 業経 営
は 一 般 に 農 耕 と牧 畜 の 複 合 形 態 を と る。 家 畜 は 羊 ・山 羊 が 中 心 で,こ れ に 雌 牛 が 加 わ る こ とが 多 い 。 頭 数 は 地 方 で ば らつ きが 大 き い がs羊 ・山 羊 が10〜15頭 , 雌 牛1〜 数 頭 が 農 家 当 りの 平 均 的 数 値 と思 わ れ る。 牧 畜 に 積 極 的 な 農 家 は30頭 以 上 の 羊 ・山 羊 を 所 有 す る 。19?2年 の イ ラ ンの 統 計 に よ る と イ ラ ン の 家 畜 数 は 羊 ・山 羊 が4,300万 頭,牛 が522万 頭 で あ っ た 。(イ ラン統 計局,182〜3)農 家 数 は お よそ300万 とい わ れ て い るか ら,計 算 上 は1農 家 平 均 羊 ・山 羊 を15頭,牛
を1.7頭 もつ こ と に な る。 こ の 他 に 役 畜 と し て 雄 牛 と ロバ が あ るが,雄 牛 は ト ラ ク タ ー の 普 及 に よ っ て1960年 代 以 降 急 激 に 減 少 した 。
牧 畜 は,西 ア ジ アで は,灌 概 農 業 に お い て も複 合 的 な 形 で 農 業 経 営 に 含 ま れ る こ とが 多 い 。 都 市 近 郊 農 業 な ど集 約 的 農 業 の営 ま れ て い る と こ ろ で は,通 常 農 耕 と牧 畜 は 分 離 し て い る 。 しか し麦 作 を 中 心 と した 休 閑 農 業 地 帯 で は,家 畜 は 放 牧 方 式 で 飼 養 され て い る。 南 イ ラ ン の フ ァー ル ス地 方 の 事 例 で み る と,土 地 利 用 は 灌 概 麦 の2年1作,ま た 麦 一 夏 作(綿 花,砂 糖だ い こん)一 一休 閑 の3 年2作 で あ る。 家 畜 は 麦 の 刈 跡 地 や 周 辺 草 地 で 放 牧 され,冬 か ら春 に か げ て は 乾 草 を 飼 料 に 舎 飼 す る か ま た 暖 い 地 方 に 移 牧 さ せ て い る。(後 藤,1981,27〜30)
天 水 農 業 地 帯 に お い て,農 業 経 営 が 農 耕 と牧 畜 の 複 合 的 形 態 を と る 理 由 は 何 か。 これ に は 西 ア ジ ア に お け る 農 業 の 成 立 過 程 の 問 題,遊 牧 か ら農 耕 へ の 定 住 化 プ ロセ ス の 問 題 を 検 討 す る 必 要 が あ る だ ろ う。 しか し農 家 に とっ て の 経 済 的 役 割 に 限 っ て み て もお よそ 次 の4点 が あ げ られ る 。
{1}家 畜 お よび そ の 生 産 物 は,農 家 の 自給 的 な 消 費 生 活 に 欠 く こ とが で きな い 。 商 品 経 済 の 未 成 熟 な 時 代 は も と よ り,今 日に お い て もそ の役 割 は 大 きい 。 生 産 物 の 中 で,肉 はr農 村 で は 新 年 や 収 穫 後 の 村 の 儀 礼 ま た 結 婚 式 な ど 限 られ た 時 に し か 消 費 しな い 。 し か し乳 製 品,毛,皮,糞 は 日常 の食 生 活,住 生 活 に 不 可 欠 で あ る 。 家 畜 の 乳 は ヨー グル ト,チ ー ズ と し て ほ とん ど毎 日食 卓 に 並 びi毛 は じ ゅ うた ん や 荒 布,ま た 縄 に 加 工 され る 。 糞 は 団 子 に し て 燃 料 と して 利 用 す る 。
② し か し,自 家 消 費 以 上 に 重 要 な の は,家 畜 が 農 家 の 主 要 な 現 金 収 入 源 とな る 点 に あ る。 農 業 所 得 に 占 め る 家 畜 生 産 の 割 合 に つ い て は 統 計 が な い。 農 民 の
C98) 半乾燥地農業の社会経済的性格11
階層 に よって差 が大 きい。 た だお よそ の 計算 で は,平 均 的 な専 業農 家 で農 業所 得 の1/5〜1/3とi推 定 され る。 天水農 業 で は一般 耕 地 は通常 飼 料作 物 に利用 され る こ とが 少 ない た め),Y,例vぽ 農 業 革命後 の西 ヨmッ パ と飼 料 が限 られ ・ こ のた め比べ る と家畜 生 産 の 占め る比 重 は小 さい と考 え られ る。 また 粗末 な飼 料 で生 育す る関係上 牛で はな く羊 や 山羊 が 中心 とな り,こ の こ と も農 業所 得 に 占 め る家 畜生 産 の比重 を低 め てい る理 由 とな ってい る。
しか し これ は家畜 が重 要 な所 得 源で あ る こ とを 少 し もそ こな わ ない 。天 水 農 業 は土 地生 灘 が低 い こ とにカ・えて,先 に 述べ た よ うに ぎわ め て不 安定 で あ る 小麦 は旱 脚 年 に は幡 が播 櫨 を割 る こ ともしぽ しばで あ り・ この鰍 を 補 う意 味 で家 畜飼 育 膿 家 経灘 も唖 要 性 は濃 業 所 得 に 占め る比重 の{氏さ以 上 に大 きい とい え る。
(3)雄 牛,。 バ膿 具 輝 引 し,も の を運 ぶ役 靴 して・ トラ クタ̲̲.̲及 以前 膿 家 に とっ種 要 な家 畜で あ った.休 閑 農業 に とって鮒 眼 作業 中 最 種 要 な作 業 で あ るが,こ れ に 雌 を2頭 の雄 牛諒 た は ・ノミや 馬 に結 んで牽 弓1し た 。ai1コ脱 穀 も同様 に 牛,ロ バが 使 われ た 。 しか し トラ クター普 及後 は雄 牛
の数 は激減 した 。
(4)家 都 また休 膿 業 にお い て,刈 跡地 放 椥 こよ 噺 地 嘆 擁 し・ これ が 地 力維 持 に有 効 に はた ら く。 この効 果 につ い て は論議 のあ る ところだが・ 農 民 は この効果 を認 めて お り,農 民 か らの 聞 き と りて 確認 した。 半乾 燥 地土 壌 は, 湿潤 地 域 のfと 黙 り襟 物 の轍 力鋤 難 く・ 家 畜 の鄭 この議 捌 ≒給 に̲定 の働 きを してい る と考}て よい 。す なわ ち 農 耕 と牧畜 の複 合 経営 が・ 耕 地 で の放 牧 を通 して農耕 と牧畜 の有機 的 関係 を作 りあげ てい るので あ る。
牧 草生産 が な くまた 頗 の草地 に欠 け る こ とか ら・ 家 畜鱗 方 式 は季 節的 に 移牧 の形 態 を とるのが一 般 で あ る。F耕 地 を もつ ところで は・ 灌 概地 で クロ
̲バ̲や アル ファル フ ァを 栽培 し この飼 料で一 年 の0定 期 間舎 飼す る こ とが あ る。 しか し牧 草生産 のない ところで は,一 一年 を通 して放 牧 がお こなわれ る。つ ま り村 の麦 の刈跡 地 お よび周 辺 の草地 で 放 牧 し,こ の飼料 が不 足す る時 期に長 距離 の移 牧が行 なわれ る。 移牧 の時期 また 場所 は村 のお かれ た気 候 お よび地理
的条 件で 異 な る。 通常 冬季 寒 冷な 地方 で は,冬 に 暖か な地 方 に家 畜 を 移動 させ る し・ 温 暖 な地 方で は 夏季 に山地 へ 移動 させ る。 しか し この関係 は一一般 化 で き ない。 放 牧 に際 して村 の刈 跡地 や 周辺 草 地 の飼料 が 不足 す る時期 に 草 を求 め て 遠 方 へ 家畜 を移動 させ る とい うのが 移 牧 の特 徴 とい って よい。 放牧 は,企 業 家 的 経営 者 を除 く と・ 農民 の個h人 の仕事 で は な く,村 にお け る共 同 の作 業 で あ る。家 畜 所有 者 が輪 番で 牧 童 とな るか 共 同で 牧 童 を雇 い,共 同放 牧 の形 態 を と るのが=普通 で あ る。
皿.農 法
1.半 乾 燥地 天水 農業 に おけ る農 法
半 乾 燥地 にお け る天水 農 業 は,降 水 量が 少 な く,降 雨が 冬 か ら春 に かけた 季 節 に偏 り,ま た 夏 は 高温 乾 燥 で あ る とい う気候 に よ って,そ の農 耕方 式が 強 く 規 定 され て い る。そ して労 働 資 本 の集 約 化が この条 件 に よっ て強 く抑制 され, また作 付作 物 も限定 され て きた 。 この こ とは既 に 明 らか に した。 しか し この 天 水農 業 の もつ 特徴 も乾 燥 度 に よって差 が あ る。 降 水量 が300ミ リを 切 る乾 燥地 で は,農 業 は その 生産 性 が著 し く低 く不 安定 性 も高 いた め に生 産 力 を 高め る条 件 を 欠落 し,生 産 力 向上 の技術 面 で の 可能 性 を もた ない のに対 して,降 水 量 の 相対的 に 多い半 乾 燥 地 で は農 業 の再生 産 を はか り自然 の制約 を受 けなが ら も生 産 力 を高 め る努力 が払 われ,そ の技術 が伝 統 的 に形 成 され て きた 。す なわ ち農 法 が 存在 す る ので あ る。
農 法 とい う用 語 は人 に よって多 様 に使 われ て きた 。 つ ま り決 ま った 規 定概 念 が あ る訳で は な く,広 義 に は農業 の や り方 とい うよ うな曖 昧 な意 昧 を もつ にす ぎない。 しか し農法 論 として学 間 的 に議 論 され る場 合 に は一 定 の概 念 規定 が与 え られ て い る。 それ はあ る生産 力 水準 に おい て 自然 条 件 に対応 し て成 立す る農 業 の土 地経 営 方式 とい う意 味で使 わ れ てい る。 農 法 は した が っ て歴 史 的な発 展 的 な概 念 であ り生産 力水 準 が高 ま り技術 革 新が あれぽ 新 た な段 階 に飛躍 す る も の としてあ る。(加用,3〜10)こ の 飛躍 が きわ め て激 しい時 には これ は農 業 革命 とい われ,古 代 の 西 アジ アで は 山地 の天 水農 業 に 従事 してい た農 民が メ ソポ タ
tss} 半乾燥地農業の社会経済的性格13
ミアに下 り灌概 農 業 を開始 して 生産 力 を一 挙 に高 めた 変 化,ま た近 代 ヨmヅ パ にお い て二 圃式,三 圃 式 農法 か ら輪 栽式 に転 化 した変 化 は ま さにそ の 典型 的 な農 業革 命 で あ った 。
しか しいず れ に おい て も農 業 は安 定 して再 生産 可 能 な方 式 が と られ,一 定 の 技術 条件 下 で生 産 力 を な るべ く高 い 水準 に維 持す る努 力が 払わ れ て きた 。 これ は基 本 的 に農 業条 件 の 相違 に 関 りな く,再 生 産 の為 の地 力 を維持 す る こ と と, 作 物 の生 育 を 阻害 す る雑 草 の繁 茂 を抑 え る とい う,地 力維 持 と雑 草 防除 にお か れ た 。農業 そ の もの は,土 地 に種 を ま き管理 を行 な って生 活 資料 を 獲得 す る行 為 で あ る。 エ コ ロジ カル な視 点 か らみれ ば 農 業 は 自然 の破 壊 であ り地 力 収 奪的 な行 為で あ る。 した が って農 民 に とって優 良 な 可耕 地 が 限 りな くあ る場 合 を除 け ぽ,作 物 生産 に よ って減耗 した地 力 を 回復 させ て耕 地 の再生 産 を はか る こ と は基 本 的 な問題 で あ るQま た エ コ ロジー の破 壊 に と もない 繁 茂す る雑草 は作物 と競 合 関係 に あ り,こ の雑 草 を除 くこ とが 必要 とな る。 園芸 的 農業 で は労 力 的 な 手取 り除 草 が可 能 であ るが,よ り規模 の大 きな農地 の経 営 で は雑 草 防 除は土 地利 用 と黎 耕 の体 系 の中で果 され る こ とに な る。 しか しsこ れ は西 欧や モ ソス 0ソ ア ジ アの農業 で は認 め られ なが ら,乾 燥 地,半 乾 燥地 農 業 で は基 本 的 に重 要 な 問題 で は ない として無 視 され て きた 。 この 自然条 件下 で は 雑草 の生育 は 弱 く農 業 生産 に 直接 的影 響 は与 えず 雑草 防 除 の技術 的 蓄積 はない と考 え られ た か らであ る。 これ は天 水農 業 と灌 概 農業 の いずれ にお い て も正 しい とはい えない 。 天 水農業 では,雑 草 との競 合 の度合 い は湿 潤 地程 に は深 刻 で は ないがt乾 燥 に 強 く地 中 に根 を張 る耐旱 宿根 性 の雑 草 の生長 は農民 を して この 防除 の必 要 を認 識 させ て い るの であ る。
西 アジ アの半乾 燥 地農 業 で は,農 法 上 の課 題 は,地 力 維持 と雑 草 防除 に 加}
て さ らに2つ あ る。1つ は土壌 か らの水 分 の蒸発 を な るべ く抑 えて 湿潤 状態 を 維 持す る保水 の 問題 で あ りsさ らに1つ は土 壌 に塩 類 が 蓄積 され るの を抑}, 塩 類 化土 壌 で な るべ くこれ が 作物 の生),rYw‑一影響 を与}な い よ うにす る技 術上 の 問 題 で あ る。後 者 は主iY灌 慨 農業 に お け る問題 で あ り,検 討を こ こで は割愛 す る。保 水 の問題 は天 水農 業 にお い て農 法上 の重要 課 題 として あ る。作 物 の収 穫
は生 育お よび稔 実期 の適 時 の降 水量 の多 寡 に大 き く左 右 され るが,降 雨 の変 動 に よる影響 をな るべ く受 け ないた め の,ま た 少 ない 降 水 を有 効 に利 用 す る技 術 が必 要 とな るので あ り,こ れ が 保 水 の技 術 として農 法 の重 要部 分 をな してい る の てあ る◎
西 アジ ァの農 法 を検 討す る前 に,休 閑農 業 と中耕 農 業 の区 別 を 明確 に して お か な けれ ぽ な らない 。飯 沼二 郎 は世界 の気 候 を類 型化 し,乾 燥 度が 高 い冬 雨地 帯 にお い て休 閑農 業 がみ られ,乾 燥 度 が 高 くて も夏 雨 地帯,ま た 乾 燥 度 の低 い 非乾 燥 地帯 て は 中耕 農業 が 成 立す る とした 。(飯沼s9〜19)中 耕 農 業 とは,作 付 期 間 中 に作 物 の畝 間 を耕 す こ とで 除 草,ま た乾 燥 度 の高 い と ころ で は保 水 の役 割 を 果 し,外 部 的 に獲 得 した 肥 料 を施 す こ とで 地 力維 持 を はか る農 業 て あ る。
一 方 休 閑農 業 は これ らの作 業 が 休 閑期?y果 され る。作 付 期 間中 はめ ぼ しい農作 業 はな く,休 閑期 の作 業 に 以上3つ の課 題 が果 され る。 した が って前 者 で は休 閑 は とらない が,後 者 は土 地利 用 に休 閑を 含 め る こ とが 不可 避 で あ る。 この休 閑農 業 は地 域的 に は西 ア ジ ァ と地 中海 岸 の地 中海 性気 候 下 で通 常み られ る。 西 ヨー ッロバ で は農業 革 命 を経 過 して休 閑農 業 か ら中耕農 業 へ と移行 した。 中 耕 農 業 は 明 らか に休 閑農 業 よ り生 産 性 が 高い 。 しか し西 アジ ァで は この移 行 は 今 日まで 起 ってい ない 。 この理 由は ど こにあ るか,西 アジ ァ の天 水農業 に お け る 農 法 を具体 的事例 か ら検 討す る こ とで 明 らか に したい と思 う。
2.イ ラ ンの事例
ホ ー ラ ムアー パー ドは イ ラ ソの 西部 に位 置す る。ザ ー グ ロス山地 の一地 方 で, 年 間降 水量 は450ミ リ前後,天 水農 業 の盛 んな ところであ る。
この地 方 にお け る天 水農 業 の土 地利 用 を み る と,冬 作 穀 物 の小 麦,大 麦 の2 年1作 が一 般 的 でf冬 作 と休 閑 を2年 周期 で繰 返 してい る。 限界 地 に近 い 劣等 地や 降水量 の相 対 的に 少 ない ところで3年1作 ない し数年 に1作 の形態 が あ り,
また2年1作 の土地 利用 も降 水量 の少 ない 年 が続 く場 合 一 時 的 に休 閑期 間 を延 長す る こ とが あ る。 降 雨 の時 期 は毎 年変 動 が あ るが,ほ ぼ11月 か ら4月 の6カ
月で あ り,小 麦,大 麦 の作 付 期 間 はほ ぼ この降雨 期 に一 致 してい る。
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農作 業 の過 程 を概 略 説 明す る と,ま ず 雨 期 に入 る前に 耕起 が行 われ る。1950 年 代後 半 トラ クターが普 及 しは じめた が,伝 統 的 に は雄 牛2頭 で 牽 引す る黎が 使 わ れた 。 黎耕 後 に播 種 がお こなわ れ る。 播 種法 はば らま きであ り条播 は ま っ た くみ られ ない 。播 種 後す ぐ砕 土 作 業 に入 る。 これ は耕 起 に よって起 こされた 土 塊 を砕 き耕地 を な らす と ともに,覆 土 の役割 も果た す 。 この作 業 に使 う農 具 は地 方で 形態 が 異 な り,一 赦 の矩 形 の木 板 に刻み をいれ た ものや,木 板 に 木釘 を数 多 く打 ちつ け た ものが あ り,こ れ に人 が 乗 り雄 牛2頭 で牽 引す る。
この時 期 に施 肥が あ る。 しか し,こ れ は化学 肥 料 が普 及 してか ら後 の こ とで, そ れ 以前 に堆 厩 肥 を施す こ とは一 般 に はな か った 。 この播種 期 の諸 作業 の後 は, 7月 の収 穫作 業 ま で農作 業 は 行わ な い。 開 花,稔 実期 に 施肥 をす る こ ともあ る が これ も化学 肥 料 の普 及後 の傾 向 であ る。
図3ホ ーラムアーバー ドにおける農事暦(麦 単作地)
101112123456789ユ01112123456
鱗纏
(施肥) L耕起・刈跡地放牧
ノ刈取・脱毅 耕起
7月 に 収穫 作 業が あ る。 刈 取 りは麦 桿 の 中程 で 刈 り,根 刈 りで は ない 。刈 跡 地 は そ の ま ま家 畜(羊 ・山羊 ・牛)の 放 牧地 と な り刈 り残 した ワラが 飼 料 とさ れ る。 刈跡 地放 牧 の期 間 は7,8月 か ら11月 初 め まで続 く。 この時期 の家畜 放牧 は刈跡 地 だ けで は な く耕地 周 辺 の草 地 も利用 す るが,家 畜 の肥 育期 で あ る夏季 の飼料 基 盤 として の 刈跡 地 の役割 りは大 きい 。
11月 に 入 り黎 耕が あ る。 そ の後 は耕 起 した状 態 で冬 か ら春 に か けて の雨 季 を 経過 す る。 雨季が 終 わ り,夏 の乾 季 に 入 る5月 頃 に再 び黎耕 が お こなわ れ,以 降そ の ま まの状 態 で夏 を経 過 し,10月 に次 の播 種 期 に 入 る。
この ホー ラムア ーバ ー ドの 天水 農業 に 関 して土 地 利用 お よび 農作 業 のサ イ ク ル の特 徴 を簡 単 に次 の よ うに 整理 で き るで あ ろ う。
第一・に,土 地 利用 は2年 ない し数年 に1回 必ず 休 閑が 入 るい わ ゆ る休 閑農 業 で あ る。 ホー ラム アー バー ドに限 らず イ ラ ソで は 天水 農 業 で の連作 はほ とん ど み られ ない 。 農作 業 は播種 期 と収 穫 期 を除 く と休 閑期 に集 中 し,作 付期 間 中に は基本 的に ない 。
これ は播 種 が条 播 で はな くぽ らま きで あ るた め に 立毛 中 に耕 地 に 入 って作 業 をす る こ とが 実 質 的 に困...・Nであ る こ と,お よび地 力 回 復が 休 閑 を介 して実 現 さ れ る こ とが主 た る理 由 としてあ る。 したが って,休 閑 と休 閑 期 の作業 に農 法上 の重 要 な意 義が 果 せ られ るので あ る。
第 二 に,こ の休 閑期 の作業 の中心 は黎耕 で あ り,2年 のサ イ クル の中で 播 種 前 に1回 と休閑 期 に2回 お こなわ れ てい る。 イ ラ ソの灌概 農 業 の場 合,黎 耕 は わず か1回 で あ る こ とが 多 く,天 水農 業 に お け る黎 耕 の もつ 土 地経 営 上 の意 義 は よ り大 きい と考 え られ る。
第 三 に,収 穫 後 の刈跡 地 で は 家畜 の放 牧 がお こなわ れ てい る。 放 牧 には 刈跡 地 だけ で は な く周辺 の草地 も利用 され るが,こ の放 牧 に家 畜 の糞 を 媒介 に した 農 耕 と牧畜 の有 機 的 関連 が み て とれ る。
以 上 ホー ラム アーバ ー ドの天 水 農業 は 休 閑農 業 で あ り,休 閑 お よび 休 閑期 の 作 業,休 閑地 放 牧 の 中で農 業 再 生産 に必 要 な課 題が 果 され てい る。
まず 地 力維 持 に 関 して は,化 学 肥 料 が 普及 す る以 前は,休 閑 に よる地 力 回復 が は か られ た。 連作 を避 け る こ とに よ って一 定 の地 力 回復 が可 能 だが,す で に 述 べ た よ うに これ が 休 閑地 放牧 と結 びつ い て家 畜 のお とす 糞 を 媒介 に 地 力 の再 生産 が はか られ てい る。 しか し家 畜 の数 は耕 地 に十 分 な肥 料 を 施す 程 に は多 く ない 。 移牧 の時 期 を 除い て家畜 は夜 間 は舎 飼 い され るた め畜 舎 に残 され た 糞 は 厩 肥 として利 用 され る。 ただ これ は量が 少 ないた め に 野菜 な どを栽 培す る集 落 周 辺 の 園芸 的 な灌 概 夏作 地 に施 されs一 般 耕地 へ は施用 され な い。 したが って 天 水農 業 に お け る地力 水 準 は低 い◎1ヘ クタール 当 り500kg前 後 の小麦 の収量 は,水 不足 の影 響 で あ る と ともに地 力 の低 さが そ の 要因 とな って い る。
地 力 維持 に 加 え て保 水お よび雑 草 防 除 も,乾 燥 地 の天 水農 業 で は 休閑 と休 閑 期 の農作 業 を通 し て果 され た。 化学 肥 料 の 導入 で外 部 か ら肥料 が 供 給 され,農
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業 経営 にお い て 内部 的 に地力 維 持を は か る必要 が な くな った後 も土 地 利用 に 休 閑が解 消 され ていな い の は,こ の保 水 と雑 草 防 除の二 つ の 面で 休 閑 の果 たす 役 割 が 継続 し て残 った こ とに理 由が あ る。
保 水 に は土壌 の水分 の喪失 をで き るだ け抑},さ らに土 壌 の湿 潤度 を高 め て い く技術 が 必要 で あ る。連 作 を避 け,土 地 利用 に休 閑 を は さむ こ との保 水面 で の効 果 は,休 閑期 の降 雨 に よっ て土壌 の湿潤 水 準 を高 め る こ とに あ る。2年1 作 の場 合 に は,2年 分 の 降 水の 冬穀1作 へ の利 用 に あ る。 よ り乾 燥度 の高 い と
ころで は,2年 連 続 で 休 閑す る3年1作 で 土地 利用 をお こな う場 合が あ るが, これ も作 付 け期 の 土壌 の 湿潤 水 準 を高 め る同様 の 目的 に よる。
この保 水 もまた 休 閑 とと もに 休 閑耕 が技 術 的 に結合 してそ の役 割 を果 して い る。 冬 か ら春 にか け て降 った水 が夏 期 の 高温 乾燥 に よ って土壌 か ら蒸発 す るの を 防 ぐこ とが夏 期 休 閑耕 の 目的 で あ る。耕 地 を 耕す こ とに よって地 中 か ら地表 に向 け ての びた 毛細 管 を切 り土壌 の水分 の蒸発 を 抑}る 。 この作 業 の ため の摯 耕 は,深 耕で はな く浅 耕 で あ る こ とが望 ま し く,ま た 表 土 を切 る よ うに耕 す こ
とが蒸 発 を 防 ぎ保 水 の効 果 が 大 きい。深 耕 で は 水分 を含 んだ 土を 表 に さ らす こ とに な りか え って 蒸発 を 促進 しかね ない。 イラ ンの天 水農 業地 帯 で使 わ れ たr一 をみ る と この保 水 作業 に有効 な形状 をな し てい る。 黎 先 は30度 前後 の鋭 角 で土 を切 り分 け る のに 適 し てお り,ま た 耕す 深 さ は5〜7cm程 で浅 い 。1回 の黎 耕 作 業 は耕 地 片が 短冊 状 で あ る場 合 を 除 いて縦 と横 に2度 お こなわ れ る こ とが 多 い 。た だ イ ランで は黎 先 が鋭 角 て浅 耕用 の黎 が灌 概 農業 にお い て も広 くみ られ る が,こ れ は天 水農 業用 の摯 が 灌概 農業 地 の拡 大 に 伴 っ て広が った もの と考}
られ る。(後 藤,1981,23〜27)
保水 を 目的 とした黎 耕 は 休 閑耕 とし てお こなわ れ るが,5月 のf耕 に保 水 の 効果 が 最 も大 きい。 冬 か ら春 にか け て降 った雨 水で 湿潤 化 した土 壌 を夏 期 の 高 温 ・乾燥 に よ る蒸 発 か ら防 ぐこ とがで き るか らであ る。
刈 跡地 放牧 後 の11月 の黎 耕 は 雨季 の前 に当 り,こ れ は雨水 の流 出 を避 け,土 壌 へ の浸透 を促 進 す る効果 が大 きい。 播 種前 の9〜10月 の黎 耕 は,土 壌 を粉砕
して播 種 の準 備 をす る こ とを主 な 目的 とし てい るが,こ れ は生 育 期 の土壌 の湿
潤 状態 を 高 め る効果 も もって い る。
この夏 期 休閑 耕 は,保 水 と同時 に雑草 防 除 の役割 も もつ 。降 雨期 に 湿潤 化 し た 土壌 には 春か ら夏 にか け て雑 草が 繁 茂す る。雑 草 は大 き く二 つ の種 類 に分 け られ る。一 つ は乾燥 に強 く,地 中 に深 く根 を張 る耐 乾 宿 根性 の雑草 で あ り,地 元 で は ブー テ ハル,ハ ー レシ ョ トル,ダ ル マー ネ,バ ー デ アー ワル ドと呼ぽ れ,
土壌 の乾燥 で 枯 死 し ない 種類 の もので あ る。 また一 つ は湿 潤 な土 壌 で生長 す る 種 類で あ る。
水 の制 限性 は播 種量 を も規 定 してい る。 灌概 小 麦 で は,ヘ ク ター ル 当 りの播 種量 は イラ ン平 均 で159kgで あ る。 これ に対 して天 水 小麦 で は そ の半 分近 い89 kgに す ぎない 。 また 同 じ天 水小 麦 で は,地 方 で 差 が あ る。ヘ クタール 当 り生産 量 が550kgを 越 え る地方 で は平 均 の播 種量 が104kgで あ るが,200kgを 割 る地 方 では66kgと 少 ない 。乾 燥度 が高 い ところ程 薄 播 きで あ る。 これ は,乾 燥 地 で は密 植 に よ る作 物 の 土壌 中 の水 分 の過剰 な吸 収 と蒸散 を避 け る必 要 性が あ る こ とに よ って い る。
休 閑農 業 て の播 種 法 はぼ らまき で条 播 はほ とん どみ られ な いが,条 播 を 行 え ぽ 立 毛 の状 態 で条 の間 を 耕す こ とが で き る。つ ま り中耕 を行 うこ とで,作 付 け 期 間中 に保 水 お よび 雑 草 防除作 業 が 可能 とな り,外 部 か ら肥料 を施 す こ とて 地 力 問題 が解 決 すれ ば 休 閑 は理 論上 必要 な くな るので あ る。比 較 的乾 燥 した地 方 の 天水 農 業 で も,例 えぽ 中 国の華 北 や イ ソ ドで は条播 一 中 耕 と連 年作 付け が技 術 の体 系 としてみ られ る。 この体 系 で地 力 維 持,雑 草 防除,保 水が果 た され て い る。
しか し イ ラソで は,休 閑農 業 が 化学 肥料 の導 入 以 降 も依 然 として続 きf農 法 上 の新 た な展 開が 生 じてい ない 。 これ は イ ラソで 農 業 の技 術 革新 が遅 れ てい る こ とに原 因が あ るので は な くsま して農 村 に半 封建 的制度 が 残 存 し てい るた め で は ない 。乾 燥 度 が高 くr農 業 生産 に と って 水が きび しい制 限要 素 とし てあ る
こ とと関 係 してい るので あ る。つ ま り,第 一一に,水 が不足 す るため に 肥料 を十 分 に施 す こ とが で きない 。先 に述 べ た よ うに,肥 料 の限 界 生産 力 は急 激 に低 下 し施 肥 効率 が悪 い こ との結果 で あ る。 そ し て第二 には,連 作 をお こな えぽ 土壌
(so) 半 乾 燥地 農業 の 社 会経 済 的 性 格19
水分 の 消耗 が大 き く,黎 耕に よ る中 耕で は十 分 で な く,ど うして も2年 分 の降 水を作 物 生産 に利 用す る必要 性 が あ り,休 閑 を解 消す るわ けに はい か ない。つ ま り限 られ た 水 の有 効利用 が土 地利用 方 式 を大 き く規 定 し てい る。 水 は農業 生 産 の制 限 因子 として農法 を 規定 してお り,人 工 的灌溜iが不 可 能 な条 件下 で は半 乾燥 地農 業 は農 法上 の発 展 が起 りに くい農 業 で あ る と結 論づ け る こ とがで きる の で あ る。
3.ヨ ル ダ ン,ト ル コ の 事 例
半 乾 燥 地 に お け る 農 耕 方 式 につ い て の イ ラ ソ の 事 例 か ら の 結 論 を 補 足 し,さ らに 西 ア ジ ア の 他 の 地 域 に お い て も これ が 妥 当 性 を もつ こ とを 証 明す るた め に, ヨル ダ ソ と トル コの 事 例 を2つ の農 村 調 査 報 告 書 に も とつ い て 若 干 追 加 的 に 記 述 を し よ う。
ヨル ダ ソの 天 水 農 業 村 落 に つ い て は,R.ア ソ トソ に よ る ヨル ダ ソ川 に 近 い kufral‑Ma村 の 調 査 が あ る 。 調 査 は社 会 人 類 学 を 軸 と し た もの で 農 業 関 係 の 詳 細 な 記 述 が あ る訳 で は な い が,ア ソ トソ の観 察 し た 記 述 の 中 か ら再 構 成 す る。
{Antoun,‑113)
この 村 の年 間 降 水 量 は4ペ ー ジ に 記 し た よ うに 毎 年 大 き く変 動 す る が,早 魅 時 を 除 く とほ ぼ500ミ リ前 後 で あ る 。 村 の 耕 地 は そ の9割 が 非 灌 概 の 天 水 耕 地 で あ り,天 水 作 物 とし て 小 麦 ・大 麦 の 他 に トウモ ロ コシ,レ ン ズ 翌,ひ よ こ豆, そ ら豆,ゴ マ な どが あ る 。 土 地 利 用 は,小 麦 ・大 麦 の2年1作 と,優 良 地 で は, 豆 科 植 物 や トウモRコ シ,ゴ マ が 小 麦 ・大 麦 と隔 年 で 作 付 け られ 輪 作 体 系 を 作
っ て い る 。 輪 作 が 可 能 で あ る こ とは,水 の 条 件 が イ ラ ソ の 天 水 農 業 よ りも良 い こ とを あ らわ し て い る 。
村 の 耕 地 は3つ の 状 態 に 区 分 さ れ て表 現 され て い る。 これ は 土 地 利 用 形 態 の 特 徴 を 映 し て い る と思 わ れ る 。
(1)Bur一 黎 耕 され て な い 休 閑 地 ま た は 黎 耕 され な い ま ま で 数 年 間 放 置 され て あ る 休 閑 地 。
(2)Hasid小 麦 の収 穫 後 の 刈 跡 地 で あ り,株 が そ の ま ま の 状 態 に お か れ て
い る土 地 。 この土 地 は消耗 した とされ て,9月 か ら6月 まで の6ヵ 月間 休 閑 の 状態 で おかれ る。
(3)Krab一 しか し,こ の休 閑期 に2回 黎耕 され,そ の後 地 力 を高 め る作 物 と して ゴマや豆 科 植 物が 作 付 け られ る。 この地 力 回復 作物 の作 付 け られた 土 地 は,穀 物 生産 のた め の土壌 の肥 沃度 を増 す 準 備段 階 とされ てい る。
輪作 形態 を もつ 耕地 の中で,と くに豆 科植 物 と小 麦 ・大 麦 の輪 作 地 の土 地利 用 方 式 を図示 した のが 図2で あ る。 これ をみ る と小 麦 ・大 麦 と豆 科 植 物が 交 互 に作 付 け られ てい る。 麦 は6月 か ら7月 に か け て刈取 られ,刈 跡 地(Hasid)は 家畜 の放 牧場 として利 用 され る。 この放 牧期 間 は3ヵ 月程 で,9月 か ら10月 に か けた 時 期 に翠 耕 され る。 耕 され た 状態 で 雨期 に入 り,翌 春 の2月 か ら3月 に か け て各 種 の豆 が播 種 され,3ヵ 月程 で 収穫 され る。 この収 穫 時 はす で に乾 季 に入 って お り,収 穫 後 熱耕 を お こない 晩秋 に再 び麦 が播 か れ る。
この土地 利用 は,し か し永続 的 で はな く,時 々数年 間 の休 閑が 入 る と考 え ら れ る。 この休 閑 が どれ 程 の頻度 で 入 るか は定 かで は な いがfお そ ら く降 水量 の 少 な いFの 時 期 には 豆科 植 物 の作 付 けは不 可 能 とな るので あ り,降 雨 量 の変 動 に応 じ て適時 休閑が長 期 に とられ る と想 定 され る。
こ の土地利 用 で は,豆 類 の作 付 期 間が 春で あ り時 期 的に 早 い。 これ は作 付期 を降 雨 期 に合わ せた た め で あ り,ヨ ル ダ ソは気 温 が 高い た め に これ が 可能 とな る。 トル コの ア ナ トリアで は冬 は寒 冷 で降 雪 があ りf播 種 は5月 で あ る。 した が って,乾 燥 度 の よ り低 い ところに 豆 類生 産 の 限界 地 があ る。
このkufral‑Ma村 の 農業 で は,農 業 の再 生 産 を はか る農 法 的特 徴 は,イ ラ ソの場 合 とほぼ 同 じで あ る とい って よい。 地 力維 持で は土地 利用 方式 か ら3つ の点 が あげ られ る。1つ は,豆 科 植物 の導 入 であ る。 この植 物 の もつ 窒 素 固定 能 力 を利用 して地 力 収奪 的 な麦 作 の 間 に隔年 で 豆 を作 付 け る。1つ は,小 麦 の 収穫 後 約6ヵ 月 間の 休 閑で あ る。 この期 間 の前半3ヵ 月間 刈跡 地放 牧 がお こな わ れ る。放 牧時 の糞 を秋 の黎 耕 で土 壌 にす き込む 。 糞 は続 く降雨 期 に分 解 し作 物 に 吸収 可 能 な状 態 とな る。 そ して1つ は,定 期,不 定 期 の長 期 の 休閑 で あ る。
保 水 は ここで は 休 閑 と休 閑耕 に よる。た だ イ ラ ンの 事例 と比 べ る とs降 水量
.. 半乾燥地農業の社会経済的性格21
が 相 対 的 に 多 い た め に 連 年 作 付 け が 可 能 とな って い る 。 この 地 方 の 黎 も,摯 先 が 鋭 角 に とが った い わ ゆ るnailploughで あ り,耕 深 は浅 い 。Yの 時 期 は 図 2に み る よ うに,播 種 の 前 と雨 季 の 前 後 で あ る。 雨 季 前 の 黎 耕 は 雨 水 の 土 壌 へ の 浸 透 を 良 くす る 効 果 が あ り,雨 季 後 は 毛 管 現 象 に よ る蒸 発 を 妨 ぐ効 果 が あ り, 夏 の 高 温 乾 燥 期 に 入 る 前 に 行 な わ れ る。
黎 耕 が 保 水 に 有 効 で あ る こ とは,農 民 自身 が 確 信 し て い る と こ ろ で あ る。 ヨ ル ダ ン の 農 民 の 間 に は 「2回 の 黎 耕 は1回 の 灌 慨 に 相 当 す る」 とい う こ とわ ざ が あ る 。(Antoun,8)ま た ア ソ トン は 「水 は 作 物 生 産 全 体 に と っ て 制 限 要 素 と し て あ り,農 民 の 努 力 は 土 壌 の 湿 気 を 保 持 す る こ とに 集 中 され る 。 黎 耕 と休 閑 と除 草 が この 努 力 の3つ の 側 面 で あ る 。」 と の べ て い る。 除 草 は 休 閑 期 の 黎 耕 で 果 され る の で あ り,基 本 的 に 休 閑 と適 時 の 禦 耕 が 重 要 とな る 。
トル コの 場 合 も半 乾 燥 地 の 天 水 農 業 で は,農 耕 方 式 は基 本 的 に イ ラ ン,ヨ ル ダ ン と同 じ で あ る。 ア ナ ト リア 山 地 は 東 部 を 除 くほ ぼ 全 域 が 年 間 降 水 量 が600
ミ リ以 下 で,そ の 中 央 部 の ア ン カ ラ を 囲 む 地 域 で400ミ リを切 る 。 こ の ア ナ ト リア 地 方 の 主 要 作 物 は 冬 作 の 穀 物 で,小 麦,ラ イ 麦,大 麦 で あ る。 土 地 利 用 方 式 を み る と,降 水 量 との 関 係 で い くつ か の パ タ ー ン が あ り,類 型 化 が 可 能 で あ
る。 乾 燥 度 が 高 い マ ル トン ヌ指 数13の ア ン カ ラ地 方 で は,麦 の 単 作 の2年1作 が 普 通 で あ る 。 しか し 南 に 下 った マ ル トソ ヌ指 数15前 後 の 地 方 で は,こ れ に 夏 作 と し て トウ モ ロ コ シや ヒマ ワ リが 加 わ り,耕 地 の 一 部 で 麦 と これ ら夏 作 との 輪 作 が お こ な わ れ て い る。 そ し て さ ら に 乾 燥 度 の 低 い 降 水 量 が600ミ リ前 後 で は ジ ャガ イ モ,タ マ ネ ギ,ま た 多 様 な 豆 類 が 加 わ る。 さ ら に 降 水 量 が 多 くな る と夏 作 の み の 輪 作 が 行 な わ れ,こ こへ く る とす で に 半 乾 燥 地 農 業 とし て の 性 格 を 失 な う。 水 が 制 限 要 素 と し て 農 耕 を 強 く規 定 し な くな る 。
1950年 代 に カ イ セ リ近 郊 の 村 落 調 査 が ス タ ー リソ グに よ っ て お こな わ れ て い る 。 これ も農 耕 に 関 す る 記 述 が 少 な い が,こ の 資 料 か ら若 干 の 農 耕 の様 子 を 整 理 して み る と,こ こで の土 地 利 用 は 麦 の2年1作 が 伝 統 的 形 態 で あ っ た 。 村 の 耕 地 は 集 落 に 近 い と こ ろ が 肥 沃 で,周 辺 は 劣 等 地 とな っ て い る 。 農 民 は 一般 に こ の 相 方 に利 用 地 を 分 散 し て 保 有 し て い る。 麦 の 単 収 は お よ そ1 ,000kg/haで
イ ラ ン と比ぺ て高い が これ は乾 燥 度 が 相対 的 に低 い こ とに よって い る。50年 代 に カ イセ リの都 市市 場 向 けの 野菜 類 の生産 が増 え,灌 概 地 で は ス イ カな どが作 られ,天 水地 で は ジ ャガイモ,タ マ ネギ の作 付 けが は じ ま った 。 これ は 麦 との 輪作 で あ る。夏 作 は村 の規制 は存在 せず 自由な作 付 が可 能 で あ る。 これ は イ ラ ン,ヨ ル ダ ンの場 合 も同様 で あ り,冬 作穀 物 と比 べ て 耕作 規 制 は夏作 に おい て 弱 い のが普 通 で あ る。 しか し,こ の村 で も冬作 の後 の 休 閑は 農民全 体 で 耕区 ご と同 時的 に とられ てい る。 これ は村 の家 畜 の共 同放 牧 が行 な われ る結果 で あ り, 刈 跡 地放 牧 のた め の耕 地 規制 を 必要 とす るた めで あ る。
以上,天 水農 業 にお け る農法 上 の特徴 を示 し て きた が,こ れ は あ くまで 年 間 降水 量 が400ミ リを越 え,天 水農 業 を軸 に農業 経 営が 成 立す る地方 に 妥 当す る もので あ る。 乾燥が よ りきび しい ところで は,少 な くと も図3に 示 した農 作 業 の プ ロセ スは み られ ない 。乾 燥 度が 増 す に従 って農 業 は粗 放化 し,保 水や雑 草 防 除の た めの 労働 も投入 され ない 。す で にみ た よ うに マル トン ヌ指 数が10前 後 の イ ランの南 部 地方 で は土 地利 用 は 小麦 ・大麦 の2年1作 で ホ ー ラ ムアー バ ー ド地方 と同 じだ が,農 作 業 は よ り単純 で,2年 の 土地 利用 のサ イ クル の問 に播 種 と砕 土 と刈取 りの3過 程 が あ るにす ぎな い。 播 種前 の耕地 は雑 草が 生 え,周 囲の 未利 用地 とほ とん ど区 別 がつ か な い。10月 に播 種 した後,砕 土作 業で 浅 く 土地 を砕 く。あ とは雨 を待 ち,7月 に 刈 り取 りをお こな う。つ ま り休 閑期 の作 業 を全 く欠い て い る。
この よ うに乾 燥 度が 高 い とこ ろで 粗 放な の は,単 収が 低 く安 定 性 に欠 け る こ と,ま た 農 業経 営者 に とって も天 水農 業 自体 が灌 概 農業 や 牧畜 に 付随 的 で重 要 性が 低 い こ とが 理 由 として あ る。 しか し,同 時 に乾 燥 度が 高 くな るに従 って労 働 の限界 生産 力 は急激 に低 下 し,天 水 農業 は集約 化 の経 済 的条 件 を全 く もた な い こ とも一つ の理 由で あ る。(後 藤i,1981,25)
保 水作 業 の欠如 につ い てみ る と,降 水は 土壌 に 短期 的 に湿 気 を与 え るだ けで, 夏季 の高 温乾燥 で 容 易 に 水分 を失 う。 した が って保 水 作業 の効 果 は非常 に 小 さ
く,労 働 費用 にみ あ う収 益増 を この作業 に よ って全 く期 待 し得 な い ので あ る。
(86} 半乾燥地農業の社会経済的性格23
田.耕 地 制度 と村 落 社 会
西 ア ジアの半 乾燥 地 の 天水 農業 地帯 に 最 も典 型 的 な耕地 制 度は,開 放 耕 地制 で あ る とい って よい 。西 欧 で は開放 耕地 制は,封 建 制 の解 体 と農 業 革命 に よっ
てほ とん ど消 滅 した。 しか し 西 アジ アで は商 品経 済 が農 業社 会 を包 み,土 地 の 商 品 化が 進 んだ こ とで 村落 の共 同体 的関 係 が希薄 化 してい る今 日にお い て もな
お広 範 に 存在す る。
開放 耕地 制 とこれ に関 わ る農 耕 の諸 制度 は,そ の契 機 が共 同体 的諸 関係 にあ るか,ま た農 業 の生産 力=技 術 の形 態 にあ るか につ い て は議論 の あ る ところで あ る。(Orwin,3〜23)西 アジ アで は,一 部 の 地 方 で 今 世紀 にお いて なお 共 同体 的土 地所 有 が確 認 され てい る。例}ぽ,パ レスチ ナで は1930年 代 まで部 族共 同 体 所有 の村落 が み られ た。(Gran・tt,225〜227)村 落住 民 は村社 会 を構i成す る2,3 の親族 ・家族 グル ー一プに属 し,強 い血 縁 共 同体 を形 成 してい た。 グルー プの メ ンバ ー は土地 の被配 分 権 を もち,こ れ は村 に よ り男子 が権 利者 とな る場合 と, 耕作 能 力を もつ 者,つ ま り雄 牛 を もつ 成 人 男 子に 限 っ て権 利 を認 め られ る場 合
とがあ るが,い ず れ の場 合も均 等な 耕地 が 配分 され,定 期 的な割 替 え慣 行 があ った。 この共 同体 的土地 所 有 の下 で,農 民 の保 有地 は 耕区 に分 散す る地条 とし てあ り,耕 区 は村 の耕 地 の条 件 に応 じ て優 等 地 の耕 区,劣 等地 の 耕区,傾 斜 地 の耕 区 な どに 分かれ,農 民 はそれ ぞ れ の耕 区 に地条 を もった 。す なわ ち,こ の 耕地 制 度 に よって形 式的 な 平等 が 制度 的 には か られ てい た。 また この耕 区制 は, 強 い 耕地 規制 を 伴い,各 耕 区 の土 地利 用 は全 体 で決 ま り,麦 の耕地 は収 穫 後共
同放 牧場 とし て開放 され た 。 この共 同体 的諸 制度 は歴 史 的 に は イ ラ ン,ト ル コ に も存在 した 。 ラム トソは,イ ランの村 落 の原初 形 態 は共 同体 的 な もの で あ り, 個人 の 権利 は共 同体 の上 級 権利 か ら派 生 した と述べ てお り,耕 地 は農 民 間で 均 等 に配 分 され た ので あ る。(Lambt・n,2〜6)遊 牧 民 の定 住 村で はs今 世 紀 に至 っ てな お 同様 の制 度 が存在 した 。す なわ ち西 アジ ア の村落 は,地 主 に よって建設 され た新 村 を除 け ぽ本 来共 同体 的 な もので あ り,開 放耕 地 制 は村落 共 同体 に お け る耕地 制度 として あ った ので あ る。
しか し,今 日西 アジ アで み られ る開放 耕 地制 は,村 落 共 同体 の 制度 として理 解 す る こ とは で きな い。 天水 農 業村 落 は,商 品経 済 化,土 地 の商 品 化が すす み ,
農 業経 済 の全 般 的 な展 開がみ られ る。農 民 は商 品 生産 者 で あ り,土 地 は地主 ま た は耕作 農民 の私 的所 有地 であ る。 この 現在 の農 業社会 に おい て 開放 耕地 制 が 存在 してい る。 とい うよ り半 乾 燥地 で は 主要 な 耕地 制 度 として あ るの で あ り, したが って,開 放 耕 地 制 の契機 を,村 落 社 会 の共 同体 的 関 係 に 求め る こ とは で きな いだ ろ う。 む しろ村落 の共 同体 的 な 制度が,今 日,耕 地 制度 に よって逆 に 規定 を受 けて い る とい え るの で あ る。耕 地 規制,耕 作 規 制 は,村 落 の農 民 間 の 秩 序 として社 会 関 係 を性 格づ け て い る。
で は 開放 耕地 制 を 存続 させ てい る主た る契機 は 何か。 前 章 にお い て示 した 農 業 生産 の方式 にお け る特 徴 か ら推 論 で きる と思 われ るが,半 乾 燥地 農 業 のお か れ た 自然 条件,さ らに この条 件 に規 定 され た 農 業技 術 の特 質 が大 き く関 係 して い る。 言 い換 えれ ば,半 乾 燥地 の農 業生 産 の条 件 下 で生 活 の か てを 土地 か ら引 き出 し農 業経営 を成 立 させ る技 術 の形 態 が,開 放 耕 地 制を解 消 し得ず 今 日まで 残 して きた主要 な理 由で あ る とい って よい 。半 乾 燥 地農 業 は 自然 か らの様 々な 制 約 を受 け て きた。 技 術 的発 展 の可能 性 も制 約 され た。 西 欧で 農 業革 命 に よっ て消}y/L.た休閑 農業 は,西 ア ジ アの半 乾燥地 の天 水農 業 の条 件 下 で は,こ れ を 技 術 面 で克 服す る こ とが 著 し く困難 で あ る。 牧 畜 は農 耕 と結 合 し,放 牧 の方 式 で 家 畜が 飼養 され,休 閑 地が 放 牧 地 として重 要 な役 割 を果 せ られ た 。作 物 に不 足 す る水 は保 水 技術 で 獲得 す るが,こ の技 術 は休 閑 耕 としてお こな われ た 。 休閑 は・ いず れ に して も農 業 再 生産 の媒 介 の 役 を 果 し,休 閑 地 放 牧 は,耕 区一一地 条制 の下で 開放 耕 地制 を もって合 理 的 にな し得 た の で あ る。
開 放耕 地 制が 自然=技 術 の形 態 と関 連 を もつ こ とは,西 ア ジ アの 開放耕 地 制 の分 布状 況 か ら もわ か る。 トル コの天 水 農業 でみ る と,ア ナ トリア山 地 の降 水 量 が お よそ500ミ リを 切る ところで 開放 耕地制 が広 範 にみ られ る。 しか し600
ミ リを越 え る と,休 閑農 業 は ほぼ 消 え,土 地利用 は複雑 化 しr耕 地 規制 は 著 し く弱 ま る。 農 民 の所有 地 また小 作 地 は 自由な土 地利 用 が 認 め られ る。 夏作 の選 択 の幅 が広 くな り家 畜飼 養 の方 式 は牧 草 生産 に よ る舎 飼 が 中心 に な り,羊 ・山
(s4) 半乾燥地農業の社会経済的性格25
a.
図4西 アジア半乾燥地の天水農業における開放耕地構造図
耕 区 集 落 と庭 畑
.一=函L===
一虻=ご=
lof
f 地 条
ぐ 、
b
グルー プA 耕 地
羊 に代 って牛 が増 え る。保 水 作業 は必 要な くな り,放 牧 も必要 としない ため に 休閑 を解 消 して,よ り集 約 的な 農 業が 営 まれ る よ うに な る。 この相違 は 景観 か ら もは っ き りみ て とれ る。要 す るに,半 乾 燥 地 の天水 農業 は 自然 に 規定 され, 農 業 技術 の発 展 に よる集 約化 の可 能性 を 閉 され てお り,こ れ が伝 統 的農 耕 方式
と ともに 開放 耕 地制 を 存続 させ て きた ので あ る。
開 放耕 地制 を とる村 落 の耕地 の形態 は多様 で あ る。 村 に よって は部 分 的 にか な り崩 れ て い る。 しか しあ}て 類 型 化 を試 みれ ば 図4の よ うにな る。Aは 村 落 耕地 が2つ の耕 圃 に分 か れ,各 耕 圃 はい くつ か の耕 区 に分 割 され る。各 耕 区 は 農民 の地 条 で構 成 され,各 農 民 は 耕区 に 分散 した 地条 を利 用す る。 この形態 は 麦 の 単作地 に み られ る。 毎年 村 落 の 耕地 の半 分 に 当 る1耕 圃が 休 閑地 とな り家 畜 放 牧 のた めに 農民 に一様 に 開放 され る。 アナ トリア のア ン カ ラ周 辺や イ ラ ソ