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被災者のための屋台と場のデザイン

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Academic year: 2022

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(1)

岩手県大槌町における

被災者のための屋台と場のデザイン

尾崎 信

1

・中井 祐

2

・南雲 勝志

3

1正会員 工修 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 景観研究室(〒113-8656 東京都文京 区本郷7-3-1,E-mail:osaki@keikan.t.u-tokyo.ac.jp)

2正会員 工博 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 景観研究室(〒113-8656 東京都文京 区本郷7-3-1E-mail:yu@keikantu-tokyoacjp

3正会員 ナグモデザイン事務所(〒151-0072 東京都渋谷区幡ヶ谷1-10-3 2階,E- mail:nagumo@nagumo-design.com)

東日本大震災で甚大な被害を被った岩手県大槌町において,東京大学大槌復興支援チームによる支援活 動の一環として屋台を用いた広場づくりを実施した.広場は被災した民有地に設けられ,屋台の材料は地 元企業から無償提供され,住民によって施工され,住民が運営している.つまり,住民が全面的に関与し た広場づくりである.中心市街地の大部分が壊滅した都市において,土木施設そのものではなく,人が集 まることができる“場”,すなわち人と人の繋がりを助ける“場”のデザインを実践した.

キーワード :東日本大震災,復興,広場,パブリックスペース,オープンスペース,住民主導

1.背景

(1)大槌町の状況

大槌町は,岩手県中部の太平洋に面した自治体である.

面積200平方キロメートル,被災前の人口1,5000人であ り,平地が沿岸部ないし大槌湾に流れ込む大槌川,小鎚 川沿岸に限られることから,可住地面積あたりの人口密 度が680人/平方キロメートルと比較的高く,東日本大震 災では約1,400人の死亡者・行方不明者(9月2日時点)

を出した.岩手県による被害状況区分では,壊滅型に分 類されている.

大槌町の被害の特徴のひとつに,役場の人的被害が挙 げられる.町長や多くの役場職員が津波によって亡くな られた.そのため,行政による復興まちづくり機能が不 全状態に陥った.つまり,復興計画の目途も立たず,一 方で住民の思いを汲みとる機会も不足した状況である.

廃墟と化した市街地中心部では,商店はおろか,夜にな っても灯り一つ灯らない.このような状況のままに,本 プロジェクト発足当時,震災から70日余りが過ぎていた.

(2)東京大学大槌復興支援チームの発足

大槌町の赤浜地区には,東京大学海洋研究所の国際沿 岸海洋研究センターが立地し,この施設も被災した.学 内ではキャンパス計画の一環として事態への対応を検討

しており.5月にキャンパス計画室長である都市工学専 攻の西村幸夫教授の所属する都市デザイン研究室,室員 である社会基盤学専攻の中井教授の所属する景観研究室 をはじめとした都市,土木,漁業,海洋の専門家らによ り,大槌復興支援チームが発足した.

当チームでは主にまちづくりの観点から地元住民への 支援を検討し,一支援策として地元住民が集まって語り 合える場のデザインを決めた.大槌では商業機能がほと んど壊滅していたため,屋台と広場を併せてデザインす ることとした.

(3)地元住民との交渉

5月,大槌町では「ゆいっこ大槌」という地元住民組 織が立ち上がった.目的は,住民同士の意見交換の場と して,大槌復興まちづくり住民会議を開催することであ った.

第1回大槌復興まちづくり住民会議の直後,主要メン バーである赤崎友弘氏と柏崎浩美氏に屋台を用いた広場 づくりのアイデアを説明したところ,その場で合意に至 った.メールで意見交換を行った後,安渡小学校にて打 ち合わせを持ち,屋台のデザインを南雲勝志氏にお願い することと,7月中に広場を実現することを決めた.そ の時点では,敷地,材料調達先や加工場所,運営方法な どは全て未定であったものの,企画を進めることとした.

景観・デザイン研究講演集 No.7 December 2011

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(2)

2.屋台広場のデザイン

(1)屋台

屋台デザインのねらいは三点に集約される。一点目は,

住民が自分たちで組み上げることが出来るよう,難しい 加工を必要としない点である.つまり,骨格となる部材 は,接合部を重ね合わせるだけの単純なホゾを用い,そ の他の部材は釘で留める仕様となっている.二点目は,

装飾性を抑え,シンプルな形状とし,今後,屋台の増産 が必要となった時に,住民が自分たちで作ることが出来 るように配慮した点である.三点目は,サイズである.

住民が自分たちで移動させやすいように軽トラックの荷 台に積み込むことのできるサイズとした.

(2)敷地

敷地は小鎚神社前が相応しいと考えた.少子高齢化の 避けられない今後の社会構造を考えると,市街地が低密 にスプロールすることを避け,中心市街地にコンパクト に住むことが良いと考えられる.小鎚神社は,そのへそ とも言える立地であった.神社前の土地所有者が無償貸 与してくれることとなり,本敷地での開催が実現した.

(3)材料と施工

材料は地元製材所の協力により無償提供を受けること ができた.また,材の加工作業や加工機器・場所の提供 に至るまで協力があり,本プロジェクトに多大に貢献さ れた.

屋台やテーブル、椅子等の組み上げは,地元の大工,

柏崎氏,赤崎氏,東京大学大槌復興支援チーム,南雲勝 志氏らによって施工が行われた.

3.まとめ

広場は民有地に設けられ,屋台の材料は地元企業から 無償提供され,住民によって施工され,住民が運営して いる.つまり,住民が全面的に関与した広場づくりであ る.中心市街地の大部分が壊滅した都市において,土木 施設そのものではなく,人が集まることができる“場”,

すなわち人と人の繋がりを助ける“場”のデザインを実 践した.

謝辞:屋台広場の実現には,多くの大槌町民にご協力を 頂いた.特に屋台を運営する柏崎浩美氏と奥さま,木材 を無償提供して頂いた上田製材所,上田康広専務,終始 サポートして頂いた赤崎友洋氏には多大なご協力を頂い た.厚く謝意を表する.

図-2 組み上げ作業の様子

図-1 屋台,テーブル,椅子,小屋の模型

図-3 屋台広場全景

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