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超高齢社会における医療介護政策の展望と理学療法士への期待

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 813 頁(2015 超高齢社会における医療介護政策の展望と理学療法士への期待 年). 813. 分科学会シンポジウム 10(日本地域理学療法学会). 超高齢社会における医療介護政策の展望と理学療法士への期待* 辻 哲 夫**. 世界に例のない超高齢化が日本で進行している。. 今後さらに重要となる虚弱(フレイル)予防に関しては,サル. 当面,急速に進む後期高齢者の急増への対応が試金石であ. コぺニアの早期の予防という視点が重要であり,現在の介護保. り,団塊の世代が後期高齢期に差し掛かる 2025 年がひとつの. 険の要支援より早期のサルコぺニアの兆候がなんであるかを明. 節目となる。そのあるべき方向は,生活習慣病の予防と虚弱. らかにする研究が進み,その場合の高齢者へのアプローチの仕. (フレイル)の予防をまず進め,健康寿命の延伸を図るととも. 方としては,栄養(口腔機能を含む),運動,社会参加の 3 つ. に,一方において,長生きの結果として誰もが大なり小なり虚. を総合的に捉える必要が大切であり,特に高齢者の社会性をど. 弱な状態を経て死に至るということが普通になる中で,生きて. う維持するかが重要であるということがわかってきている。こ. いてよかったと安心して地域の中で生き切れる社会システムを. のように,予防に関しても総合的なアプローチが必要であり,. つくることである。. 理学療法士は,単なる身体活動面だけの専門性にとどまらず幅. このための医療介護政策としては,先に導入された生活習慣. の広い専門性が問われることになってこよう。. 病予防対策に加えて,介護保険の分野からは介護予防政策が導. また,高齢化に対応するまちづくり(柏プロジェクト)の一. 入されるとともに,「住まい」,「生活支援」,「介護」,「医療」,. 環として,医師をはじめとする多職種のモデル的な連携による. 「予防」といった地域における在宅生活を支える諸要素からな. 地域包括ケアシステムの開発に取り組んでおり,多職種連携の. る「地域包括ケア」という概念が明らかにされ,さらには昨年. 協議の場の確立,在宅医療を行う医師のグループ化,在宅医療. の医療介護の総合改革において,地域において医療介護体制を. に関する相談や医師を含む多職種の斡旋機能の確立,多職種連. 総合的に確保するという方向の下で,在宅医療・介護連携推進. 携研修のシステム化,顔の見える関係会議の定期開催などのモ. 事業を全市町村で行うという改革が決まった。. デル的なシステムが稼働しはじめている。この取り組みの中. 健康寿命の延伸という意味では,「食べる」ということと合. で,明らかになったことは,在宅は,原則としてそれぞれの職. わせて「身体活動」がキーワードとなる。また,虚弱(フレイ. 種が単独で赴くので,多職種連携の中において,おのずから各. ル)の予防に関しては,今後は,「社会参加」ということが重. 職種のより深い専門性が問われるということである。在宅に訪. 要となるので,これら全体の総合的な取り組みが必要となる。. 問した際の高齢者の状況を的確に把握し,自ら行うべきこと,. 今後の医療の在り方に関しては,「治す医療」から「治し,. 他の職種へ情報提供すべきこと,多職種との連携の在り方など. 支える医療」に大きく転換し,医療・介護の連携が求められ,. が判断できることが必要であり,幅広い知識とともに,自らの. 政策は,地域における生活を支える在宅医療を含む多職種連携. 専門分野については,リーダーシップを発揮することが求めら. の確立に向けて動きはじめている。. れるのである。. このような中で,リハビリテーションの分野は,生活を支え. 以上のような状況の下で,理学療法士の専門性がより深い形. るという視点から見てきわめて重要である。今後の医療介護政. で問われつつある。. 策の展開の中で,各専門職のより踏みこんだ連携が必要とさ. 今,医療の在り方として,従来の病院中心の治す医療から,. れ,そのことを通してそれぞれの真の専門性が求められてい. 高齢者をはじめとする人々の地域における生活を支えることを. く。理学療法士もその専門性を確認しつつ,様々な関連分野と. 目的とし予防からケアまでを展望した医療にウイングを広げよ. の学際的な研究や連携を推進することが不可欠である。. うとしていることを重ねて強調したい。. 東京大学高齢社会総合研究機構では,虚弱化の構造とその早. もとより,理学療法士は,人々の生活を支えることを目的と. 期の予防に関する研究を行うとともに,民間活力を活用した健. して導入された専門職種であり,これからこそが注目される時. 康づくり・虚弱予防の取り組みを千葉県柏市で展開している。. 期を迎えるのであり,活躍を切に願うものである。. *. Medical Care Policy Prospects Expected Role of Physiotherapists in Super Aged Society 東京大学高齢社会総合研究機構 特任教授 (〒 113–8656 東京都文京区本郷 7–3–1 工学部 8 号館 713) Tetsuo Tsuji, Professor: The University of Tokyo Institute of Gerontology キーワード:超高齢社会,治す医療から治し支える医療へ,多職種 連携 **.

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