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長時間を要する上に年々延長し 管内医療機関における救急車収容率も平成 20 年の 80% から 24 年には 72% に低下した 管内での救急車受入れが困難な主たる理由の1つが 専門外 である その背景には 眼科医 非常勤医まで含めた一人当直体制や 高度専門医療のための転院が必要になった場合の遠方の

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(1)

医療過疎地域における医療サージ対応 ―茨城県鹿行地域における現状と今後の方向性―

茨城県潮来保健所 石田久美子 1.はじめに 医療過疎地域では平時から医療体制に課題があり、災害、感染症のアウトブレイクなどの医療サージ (医療機関収容力及び対応能力を超える緊急事態)においては、さらなる困難が予測される。 医師不足に悩む茨城県鹿行地域では、医療提供体制における課題と対応策について地域の関係機関と 協議を重ねてきたので、その検討結果を踏まえ、医療過疎地域の医療サージ対応について考察する。 2.茨城県鹿行地域の現状 (1)鹿行保健医療圏の概況 鹿行保健医療圏は茨城県南東部で、千葉県と隣接する地域であり、5市からなり、人口は 270,018 人(平 成 24 年人口動態統計)である(図 1)。

図1

(2)医師数 茨城県の人口10万人あたりの医師数は 166.8 人と、全国平均の 230.4 人を大きく下回り、都道府県 の中で低い方から2番目であり、鹿行保健医療圏については、茨城県の平均をさらに大きく下回る 96.4 人となっている(平成 22 年医師・歯科医師・薬剤師調査)。鹿行保健医療圏の診療所施設数は人口 10 万人あたり 41 と全国の 78、茨城県の 58 を大きく下回っている(日医総研ワーキングペーパー 2013 年度版) (3)救急医療の実情 鹿行保健医療圏の中でも南部地域(二次救急病院:4 病院)(図 2)は、特に医師不足が深刻であり、 当医療圏の災害拠点病院でもあった中核病院(許可病床 300 床)において、平成 24 年3月末に常勤医 師が 33 名から 23 名に、さらに平成 25 年3月末に 15 名が大量退職し、常勤医師が 8 名になるという事 態に陥り、また、他の二次救急病院においても医師不足が深刻な状況にある。鹿行南部地域の地元消防 本部による救急車の平均収容時間は平成 22 年に 49.5 分、平成 23 年に 51.8 分、平成 24 年に 54.2 分と 鹿行保健医療圏

(2)

長時間を要する上に年々延長し、管内医療機関における救急車収容率も平成 20 年の 80%から 24 年には 72%に低下した。管内での救急車受入れが困難な主たる理由の1つが「専門外」である。その背景には、 眼科医、非常勤医まで含めた一人当直体制や、高度専門医療のための転院が必要になった場合の遠方の 基幹病院との連携や搬送上の課題があげられる。

図2

3.茨城県鹿行地域の平時の医療提供体制における課題と対応 中核病院における医師の大量退職により、救急医療が困難な状況に陥った中で、県、市が、医科大学 への寄附講座設置等により医師確保に努めたことで一部診療科の医師が確保されたものの、医師不足解 消には至っていない。特に医師不足が深刻な鹿行保健医療圏の南部地域(鹿行南部地域)に関して、医 師会(県医師会、郡市医師会)、二次救急病院、消防本部、県、市、保健所で協議を重ねた結果を踏ま えた対応策について述べる。 (1)鹿行南部地域内での対応 1)地域の病院間・消防との情報共有 鹿行南部地域内における救急車収容率の改善につなげるために、二次救急病院及び消防本部の間で、 当直体制、当直医の専門科の情報を共有する。 2)救急隊との連携 救急隊が、傷病者の観察基準によりトリアージを行い、搬送基準外の軽症例とされたものは、地域内 の病院で受入れをするよう、救急隊と医療機関の連携を図る。 3)二次救急病院による役割分担 それぞれの病院が特徴を活かし、診療科ごとに集約、役割分担できるよう協議する。 4)かかりつけ医との連携 休日昼間・準夜帯等の診療所医師による支援体制などの方策を医師会とともに探る。 T 市 救命救急センター A 町 大学付属病院 隣接二次医療圏基幹病院 鹿行南部地域 (特に深刻な地域) 二次救急病院:4病院 N 市 鹿行北部中核病院 災害拠点病院

(3)

(2)二次医療圏を越えた連携 1)隣接二次医療圏の基幹病院との連携 高度専門医療等については、診療科毎に連携会議を開催するなど、隣接する二次医療圏と密接に連携 するための体制を構築する。 2)IT を活用した顔の見える関係構築による二次医療圏を越えた連携 現在、小児・周産期医療の充実を目的に隣接医療圏の 基幹病院に多地点接続制御サーバーを配備、鹿行医療圏 の4病院を含めた関連病院(10病院)にビデオ会議シ ステムを配備した遠隔医療支援映像システムが整備さ れ、病院間で症例検討会や研修会が行われている(図 3)。 今後、小児・周産期領域に限定せず、また診療所等にも ビデオ会議への参加を呼びかけることにより、多施設間 の顔の見える関係の構築、情報共有、連携促進を図って いく。さらに、診療映像などを共有することにより、基 幹病院への症例照会や専門医からの助言、指導に活用し、 地域での患者受入れ支援及び人材育成を行うことを目 指す。 3)救急隊との連携による搬送体制の確保 鹿行南部地域内の病院で救急車を受け入れたものの診察の結果、高度専門医療が必要と判断された場 合、医療スタッフの体制等により当該病院による転院搬送が困難なことが多い。そこで、地域の病院が 受入れの可否を見極めるための診察・検査等が終了するまでは、救急隊が待機し、当該病院での対応が 困難と判断される場合は、必要な処置を施した上で救急隊が隣接二次医療圏の基幹病院等への転院搬送 を行う等、救急隊との連携・協力体制を強化する。 4)ポスト急性期の後方転送 救命救急センター等基幹病院では、回復期医療施設等への転院調整に苦労していることから、隣接二 次医療圏の救命救急センター等と鹿行南部地域内の病院の間で、ポスト急性期の医療連携体制の可能性 について検討する。 (3)住民参加の促進 地域医療の実情を市民に正しく理解してもらい、地域医療を守るための住民参加を促進するために、 住民教育を繰り返し行う。そのための啓発資料(資料1)を作成し、県、市、医師会とともにあらゆる 機会を捉えて住民教育に取り組む。今年度は、民生委員協議会等の各種研修会での普及啓発を行い、今 後、啓発資料の全戸配付なども検討している。 4.医療過疎地域における医療サージ対応 医療過疎地域では、医療サージ発生時において、平時から過重な負担がかかっている医療機関へのさ らなる負荷を回避し、医療機関が診療に専念できるような環境整備に努めることが必要である。 (1)保健所管轄区域(二次医療圏)等の関係機関からなる医療対策チームによる対応 医療サージ発生時に、医療機関へのさらなる負荷を回避するためには、保健所管轄区域(二次医療圏) 等の病院、医師会、消防、保健所、市町村等、地域の関係機関からなる医療対策チームが情報を共有し て一丸となって対応する。医療機能が十分であれば医療機関が自ら行える医療機関の役割分担、患者の 遠隔 会議 遠隔 会議遠隔 会議 遠隔 会議 基幹病院

図3

(4)

受入調整についても、医療機関の負担を軽減し診療に専念できるよう、医療以外の調整的役割について は他のチームメンバーが分担する体制をつくる必要がある。 平成 24 年度 厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)「地域健康安全・ 危機管理システムの機能評価及び質の改善に関する研究 医療・介護等安全分野研究(分野研究責任 者:古屋好美)」において、災害時の医療サージでは、災害拠点病院、医師会、消防、薬剤師会、保健 所、基礎自治体等が、保健所管轄区域(二次医療圏)等の圏域ごとにチームとして対応し、情報収集、 評価、企画、意思決定を連携して行うことにより、地域の実情に即した機動的な対応が可能となると報 告した(図 4、図 5)。 鹿行保健医療圏では、現在、災害拠点病院が十分な機能を果たせない状況にあるが、圏域内の関係機 関からなる医療対策チームによるネットワーク会議の開催、訓練の実施に向けた体制を整備していきた いと考えている。 図 4

図 5

平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)「地域健康安全・危 機管理システムの機能評価及び質の改善に関する研究 医療・介護等安全分野研究」より引用 (2)圏域の収容力・対応能力を超えた場合の広域連携 保健所管轄区域(二次医療圏)等の圏域チームは、医療サージにおいて、どれくらいのサージが起き ているのか初期評価を速やかに行い、サージのレベルが圏域の対応能力を超えていると判断された場合

消防本部

医師会

薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等

保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム

消防本部

医師会

薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等

消防本部

医師会

薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等

保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム

インシデント

フィードバックとコントロール 決定事項の実行 連携と情報共有の場 医師会等関係団体 保健所 市 救急病院 企画の連携 連携による 現況と予想評価 連携による 意思決定と共有 連携した 情報収集と共有 連携を強化した複数の組織のコマンドとコントロールによる 医療安全体制確保プロセス図(ISO 22320 Societal security - Emergency management - Requirements for incident response

(社会セキュリティー危機管理-危機対応に関する要求事項) Circular chart for multiple hierarchical command and control process

with enhanced relevance of coordinationを参考に作成) 消防

インシデント

フィードバックとコントロール 決定事項の実行 連携と情報共有の場 医師会等関係団体 保健所 市 救急病院 企画の連携 連携による 現況と予想評価 連携による 意思決定と共有 連携した 情報収集と共有 連携を強化した複数の組織のコマンドとコントロールによる 医療安全体制確保プロセス図(ISO 22320 Societal security - Emergency management - Requirements for incident response

(社会セキュリティー危機管理-危機対応に関する要求事項) Circular chart for multiple hierarchical command and control process

with enhanced relevance of coordinationを参考に作成) 消防

インシデント

フィードバックとコントロール 決定事項の実行 連携と情報共有の場 医師会等関係団体 保健所 市 救急病院 企画の連携 連携による 現況と予想評価 連携による 意思決定と共有 連携した 情報収集と共有 連携を強化した複数の組織のコマンドとコントロールによる 医療安全体制確保プロセス図(ISO 22320 Societal security - Emergency management - Requirements for incident response

(社会セキュリティー危機管理-危機対応に関する要求事項) Circular chart for multiple hierarchical command and control process

with enhanced relevance of coordinationを参考に作成) 消防

(5)

は、医療支援チームの調整、患者の受入れ調整等において、都道府県対策本部、隣接二次医療圏との間 で、広域にわたる調整に関わり、医療機関が診療に専念できるよう努める(図 6)。

圏域の収容力・対応能力を超えた場合の広域連携のイメージ

図 6

都道府県本部

消防本部 医師会 薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等 消防本部 医師会 薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等 消防本部 医師会 薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等 消防本部 医師会 薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等 消防本部 医師会 薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等 消防本部 医師会 薬剤師会 市 保健・医療担当 保健所 保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム 救急病院 災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等

消防本部

医師会

薬剤師会

保健・医療担当

保健所

救急病院

災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等

保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム

消防本部

医師会

薬剤師会

保健・医療担当

保健所

救急病院

災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等

消防本部

医師会

薬剤師会

保健・医療担当

保健所

救急病院

災害拠点病院 ・ 感染症指定医療機関 等

保健所管轄区域(二次医療圏)医療対策チーム

医療サージ

広域連携 広域連携 広域連携

(6)

資料1

茨 城 県

茨城県医師会

(7)

はじめに、

鹿行地域の医療の現状は?

茨城県の人口10万人あたりの医師数は 166.8 人と、全国平均の 230.4 人

を大きく下回っています。これは、都道府県の中で多い方から46番目、つ

まり下から2番目です。さらに、鹿行保健医療圏については、茨城県の平均

を大きく下回る 96.4 人となっています。

県と鹿行地域の市では、あらゆる方法で医師の確保に努めていますが、地

域医療を守るためには、同時に、市民の皆様のご理解とご協力が何より大切

です。

このパンフレットでは、地域医療を守るために市民の皆様ができることをお

示しします。皆様のご協力をお願いいたします。

資料: 茨城県保健医療指標(平成 25 年 1 月 30 日) http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/hoken/koso/statistics/download/250801health_med.xls 茨城県保健医療計画 平成22年医師・歯科医師・薬剤師調査 http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/hoken/koso/health_med_plan/health_med_plan11.pdf

(8)

お医者さんって、どのくらい忙しいの?

ところで

鹿行地域の皆様を守るために医療スタッフが毎日奮闘しています。

鹿行地域南部では、夜間・休日の診療を、数少ない病院が担っています。

1つの病院の常勤医師数は、眼科や皮膚科などすべての診療科を合わせて

10数人のところもあります。様々な事情で当直勤務ができない医師もいま

すので、この中から、さらに限られた人数で、土曜・日曜・祝祭日も含めた

当直を回すことになります。当直の翌日は通常勤務になりますので、まる 2

日間、連続勤務になることもあります。

いかに大変な職場であるか、おわかりいただけるでしょう。

大都市では、1つの病院で同時に複数の医師が当直していることが多いの

ですが、この地域では、1人の医師が入院患者、外来患者、救急車の対応を

します。1人の医師が重い責任のある長時間勤務を行うことになるわけです。

厳しい労働条件から体調を崩し辞めざるを得ない医師もいます。医師の数が

減ると、負担はますます重く、悪循環になります。

鹿行地域の医療スタッフは、このような過酷な条件の中で、必死に市民の

皆様の健康と命を守るために戦っているのです。

(9)

上手な救急のかかりかた

そこで

・夜中に急に具合が悪くなった,病院は開いていないし,困ったなぁ・・

こんな時どうしますか?

・夜間・休日は、大病院であっても日中とは診療体制が異なり、スタッフ

も少なく、できる検査や治療が限られてしまいます。

・救急病院では、患者さんの重症度や緊急度によって診察の優先順位をつ

ける「トリアージ」をしています。夜間・休日の診療は、重症の方が優

先です。たとえ,救急車で搬送されても軽症の患者さんは後回しにされ

ることがあります。

では,どのようにすればよいでしょう

ポイント

かかりつけ医を持ちましょう。

ポイント

通常の診療時間(平日の昼間)の受診を心がけ

ましょう。

(10)

ポイント1:

かかりつけ医を持ちましょう

かかりつけのお医者さんを持ち、気になることがあったら、まずは相談し

ましょう。必要なときに、高度な医療が受けられる病院に紹介状を書いても

らうことができます。特に持病がある方は、夜間や休日等に具合が悪くなっ

た時の対処法について、あらかじめかかりつけ医に相談しておきましょう。

また、持病の有無、内服薬、かかりつけ医療機関名、連絡先、薬のアレル

ギーの有無等を記入したカードを財布などにいれておくとよいでしょう。

かかりつけ医は、あなたの生活習慣、家族背景も分かったうえで、あなた

に一番あった治療方法について、相談にのってもらえる強い味方です。

あなたと相性が合い、あなたの話を良く聴いてくれ、治療方針やその効果

などを納得いくまで説明してくれる、かかりつけ医と信頼関係を築くことが

大切です。

(11)

かかりつけ医の役割は、治療するだけではありません

患者さんと専門医との橋渡しをします。

・何科を受診すればよいかアドバイスします。

・紹介先の担当医に情報を提供します。

・専門病院で受けた検査の結果や治療方針について説明をします。

保健、福祉、介護に関する情報提供やコーディネートをします。

あなたにピッタリの

「かかりつけ医」

見つけましょう!

大病院は医師の専門分野毎に医療が細かく分かれ、専門医が緊急性

の高い患者さんに高度な医療を提供するところです。軽い病気の時に

最初から受診して、

「長時間待たされたのに、診察時間が短くて親身に

話を聞いてもらえない」と感じる患者さんもいるようです。また、曜

日によって担当医が違ってしまったり、医師の転勤により主治医が変

わってしまうことがあります。

その点、地域の開業医は、幅広く病気を診てくれて、生涯にわたっ

て健康の相談相手になってくれる、長くつきあえるので、かかりつけ

医に適しています。そんなかかりつけ医を探すには、近隣の口コミ情

報を集めたり、健診や軽い病気の時に受診してみて、雰囲気を確かめ

ておきましょう。

「話しやすい」「話をよく聴いてくれる」「よく説明してくれる」な

ど「信頼できそう」と思えたらおつきあいしてみると良いでしょう。

「家族みんなの相談相手」になってくれる「かかりつけ医」がみつ

かると良いですね。

(12)

ポイント2:

できるだけ診療体制が整っている通常

の診療時間帯(平日の昼間)に受診しましょう。

それでは

平日・昼間の通常の診療時間帯は、医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師、

放射線技師など多くのスタッフがそろっていて、より充実した診療がスムーズ

にできます。緊急ではない時は、できるだけ昼間の診療時間に受診しましょう。

日頃から、かかりつけ医を持って、通常の診療時間帯に、いろいろなことを相

談しておくことが大事です。

コンビニ受診(自分の都合で診療時間外に受診すること)は、本当に緊急を

要する患者さんの迷惑にもなります。また、休日や深夜に受診すると休日加算

や深夜加算で診療費が高くなることがあります。あなた自身のためにも、地域

の皆様のためにも、平日・昼間の受診にご協力をお願いします。

(13)

的確な診断をうけるために、あなたにできる

マル秘テクニック

教えます

それでは

医師は、現在の

症状、身体所見

だけでなく、

過去の病歴、家族関係、食生活、

仕事や趣味

などから、患者を総合的に診断します。医師が診断をするとき、

「問

診」は、とても大事です。あなたが、自分の症状、病歴をきちんと説明できる

ことが正しい診断につながります。さあ、そこで、「あなた」を伝える大切な

病歴を、要領よく説明するために、

メモ

を作ってみませんか。メモを用意する

ことで、正しくきちんと伝えることができます。あなたが聞きたいこともメモ

にしておきましょう。

一回にすべてのことを確認できるとは限りません。その時に聞くこと、日時

を改めて聞くこと等、優先順位をつけておくと良いでしょう。

NHK の「総合診療医ドクターG」という番組で、ドクターGは患者さんの症

状過去の病歴、生活習慣など様々な情報から診断しています。

(14)

問診

では次のようなことをお聞きします

それでは、次のようなことを

メモ

にまとめてみましょう

症状:

いつから、体のどこに、どのような症状がでたのか、診察まで

にどのように変化があったのか、発生順に整理しておきましょう。

病歴(既往歴)

現在治療中の病気と飲んでいる薬、あるいは過去に治

療した病気を説明できるようにしておきましょう。

「おくすり手帳」な

どがあれば、用意しておきましょう。

その他:

薬のアレルギー、家族の病気、生活習慣(喫煙、飲酒)など

も説明できるように。健康診断や人間ドックの結果も役に立ちます。

今回の症状は

いつごろから (例:1ヶ月くらい前から)

こんなときに (例:空腹時に)

体のどこが (例:胃のあたり)

こんな自覚症状がでる(例:キリキリ痛む。痛みは1∼2時間くらい続く)

こんなことが気になる(例:父が胃がんだったが、がんだったらどうしよう)

こんなことを聞きたい(例:どんな病気が考えられる?

検査はしなくてはダメ?)

今までにかかった病気 (例:平成 20 年頃( 50才頃) 胃炎

昨年職場の健診でコレステロールが高いと言われた )

現在飲んでいる薬(例:○○錠を毎食後2錠 )

アレルギーの有無(例:そばアレルギーあり。ペ二シリン系抗生物質で薬疹が

でたことあり )

生活習慣 (例:たばこを1日20本、日本酒を1日 1 合くらい飲む)

家族の病気(例:父が胃がん、母が高血圧)

(15)

診察を受けるときの3つのポイント

信頼関係を築くために、大切なのはコミュニケーション!

信頼関係は、患者さんと診療する側の双方で築くものです。きちんと挨

拶や事後報告をしたり、相手の都合を考えた言動に心がけるなど、短い診

療時間を有効に使うように努力しましょう。じっくりお話をすることで気

心も知れてくるでしょう。

患者さんにも、『伝える』『聞く・確認する』『情報を集める』『時間・場所

を選ぶ』『良い関係を作る』努力が必要です。

医師の説明、大事なことはメモしましょう!

メモしたら医師を疑っているようで悪い?→ NO

自分の体です。あなたも主体的に取り組んで下さい。

家に帰ったらもう一度メモを見て、おさらいしましょう。

・医師の指示はさっそく実行します。

・わからないことがあれば書き出して整理しておきます。

次の診察で医師に確認をしましょう。

わからないことを医師に質問したら、悪い? →NO!

医師の説明を理解していないのに、あいまいなままに返事を

していませんか?説明の内容がわからない時は、

「わからないの

でもう一度説明してください。」と正直に言ってください。それ

があなたにあった治療につながります。

(16)

病院へ行けば病気が治る?

診療において、医師の義務は、患者さんのために最善を尽くすこと

(そのときの医療水準以上の治療を行うこと)です。

ただ、医療の分野も完全ではありません。

そのときの医療水準では、症状の悪化を遅らせることが最善の場合も

あります。病気がすべて治ることが保証されているわけではありません。

だからこそ、あなた自身が

納得

して受診することが必要

です

コミュニケーションの基本はあいさつから より良い関係作りはあなたにも責任が・・ 診察室に入ってから、黙って椅子に座って いませんか?

(17)

救急医療の役割分担

◆救急医療を行う医療機関の役割は主に次の3つに分かれます。

○ 比較的軽症に対応する「初期救急」

○ 入院治療を必要とする「二次救急」

○ 重篤な患者に対応する「三次救急」(主に高度医療が必要な場合)

最初から高度な医療を担う病院に多くの方が受診してしまうと、本当に高

度医療が必要な方に適切な医療を提供することができなくなります。

救急医療のしくみをご理解いただくようお願いします。

(例)鹿嶋市夜間小児救急診療所は「初期救急」を担っています。

救急で受診した医療機関で、より専門的な診療が必要と判断された場合

に、他の病院に転送される場合があります。

(18)

「地域医療連携」って知っていますか?

医療は 1 つの病院内ですべて完結するのではなく、地域の病院・診療所全

体で支える時代になりました。発病から診断・治療・リハビリ・在宅療養ま

で、複数の医療機関が役割分担し、ひとりの患者さんに継続的な治療を行っ

ています。

病院の機能も様々です。急性期の治療が専門の病院、リハビリが専門の病

院、在宅に戻るための準備について専門的におこなってくれる病院など、治

療の段階に応じて病院を移っていただくこともあります。段階に応じて適切

な医療をより多くの方に提供するために必要なことです。

そして多くの方に必要な医療が行きわたるよう皆様

のご理解と協力をお願いいたします。

(19)
(20)

茨城県医療対策課のホームページからダウンロードできます

http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/hoken/isei/div/system/emergency/pdf/kodomobook.pdf 症状別の対処法や受診の目安

(21)

鹿嶋市夜間小児救急診療所

診療日:毎日

診療時間:20:00∼23:00(受付は 22:45 まで)

場所:鹿嶋市鹿島保健センター内

鹿嶋市宮中 1198 番地2

電話:0299(82)3817

対象:中学生以下、 急な発熱、腹痛などに対する応急診療

* 外科的な診療はできません

問い合わせ:鹿嶋市役所健康増進課 0299(82)2911

内線 360、361

かかりつけ医

医療機関名:

電話:

メモ:治療中の疾患:

飲んでいる薬:

アレルギーの有無:

既往歴(過去にかかった病気):

救急の場合の対応

(かかりつけ医と相談しておいて下さい)

あなたが記入する欄です

監修 平成 25 年 12 月

茨城県医師会

茨城県保健福祉部医療対策課

茨城県潮来保健所

(22)

北海道宗谷地方における医療課題と医療サージ有事対応能力強化のための 平時連携のあり方について 北海道稚内保健所長 古畑雅一 A.目的 北海道宗谷地方においては、医療機関は量的及び機能的に十分ではなく、医療従事者の不足も深刻である。 現状の課題を明らかにし、その状況の中で自然災害等が発生した際に、医療ニーズに応えるための平時からの 連携のあり方を検討することを目的とする。 B.方法 宗谷地方の医療資源の現状、医療自給率、救急外来受診者の状況、ドクターヘリの運航状況等を明らかにす ることにより、宗谷地方の医療が抱える課題を検討し、災害発生に備えた平時の準備態勢のあり方を考察する。 C.結果 1. 宗谷地方の基本データ 宗谷地方は、北海道最北端の地域である。(図 1) 面積は 4,625 平方キロメートルで、47 都道府県の中で第 31 位の京都府より少し大きい。東西に 148km、南北 に 100km の拡がりである。 管内は 10 市町村からなり、人口は 69,934 人(平成 25 年 9 月末住民基本台帳)であり、年々減少し続けている。 人口密度は、15.1 人/km である。 2.宗谷地方の医療の現状 (1)医療従事者数 平成 22 年の医師・歯科医師・薬剤師調査によると、宗谷管内を従業地とする医師数は合計 69 人で、人 口 10 万人あたり 93.9 人で、道内 14 か所の(総合)振興局の中で最低である。(全道は 229.0 人) 医師 69 人のうち、48 人の従業地は稚内である。稚内市及び利尻町以外の 8 町村では医師数が 1 ないし 2 人である。 歯科医師は 34 人で人口 10 万人あたり 46.7 人(全道は 81.3 人)、薬剤師は 99 人で人口 10 万人あたり 136.1 人(全道は 192.8 人)である。看護師などの医療従事者も全道と比較して大幅に少ない。 図 1

(23)

(2)医療機関 管内の病院数は 9 か所、有床診療所数は 3 か所である。(図 2) 稚内市内の市立稚内病院及び稚内禎心会病院以外の病院の病床数は、50 床以下である。 常勤医師数が 2 人以下の病院が多く、管外からの非常勤医師に頼らざるを得ない。そのため、常勤医師 は専門科目以外の患者も診療せざるを得ない状況にある。 管内の病院間の距離は稚内市内以外では約 30km以上は離れており、患者は地元の医療機関以外を 受診する場合のアクセシビリティが悪い。(図 3)内科、外科、小児科以外を受診する場合は、非常勤医師 が担当する診療日を待つか、稚内市、名寄市等の病院を受診するしかない。 図 2 図 3

(24)

(3) 医療自給率 北海道では、平成 22 年 4 月から 12 月の間に医療機関を受診した患者のレセプトデータを集計し受療動 向の把握を行った。 宗谷の入院自給率は 67.8%で、全道の中で日高振興局についで 2 番目に低い。13.7%の患者が札幌へ、 8.2%の患者が旭川方面に流れている。全道平均は 91.2%である。(図 4) 外来自給率は 83.4%で、全道の中で檜山そして日高振興局についで 3 番目に低い。5.4%の患者が札 幌に、4.6%の患者が名寄方面に、3.2%の患者が旭川方面に流れている。全道平均は 96.3%である。(図 5) 救急医療自給率は 69.5%で、全道の中で日高、檜山、根室振興局についで低い。これらの振興局での 搬送距離は宗谷と比較して 40km程度短く宗谷よりはアクセシビリティが良い。15.5%の患者が名寄方面に、 7.6%の患者が札幌に、6.6%の患者が旭川方面に搬送されている。全道平均は 92.6%である。(図 6) 特に入院自給率を市町村別に見ると、稚内市と稚内市に近い豊富町、幌延町、猿払村以外の 6 町では、 稚内市内に入院する者よりも、二次医療圏外の名寄市、旭川市、札幌市に入院する者の方が多い。 稚内から、名寄までが約 160km、旭川までが約 240km、札幌までが約 300kmと離れているにも関わらず、 入院、外来、救急患者それぞれが他の圏域の医療に依存していることがわかる。 3. 4. 5. (4)救急外来受診者の状況 宗谷地方では、医師不足などのために平日の外来の待ち時間が長いこと、そして稚内市内では土曜日 や日曜日の時間外の救急外来受診者が多いことが問題となっている。 平成 24 年 9 月 21 日から 10 日間、北海道は「二次救急医療機関における時間外受診実態調査」を実施 した。その結果によると、1 医療機関あたりの受診者数が最も多かったのが、宗谷地方で 235 人であった。 (全道平均は 88 人)(図 7) 今回、本研究では上記実態調査で収集した宗谷地方の個別データを集計し、宗谷における時間外受診 の実態を分析した。土曜・日曜日と平日の時間帯別受診者数を比較すると、土曜・日曜日の午前 8 時から 12 時までの時間帯に受診者が集中していることが分かる。(図 8) 時間外外来受診者の症状の程度を見ると、宗谷地方では、一度の処置で治療が終了する「特に軽症」が 6 割を占める。(図 9) 年齢階層別に全道と宗谷を比較すると、全道の受診者は高齢層に多いのに対して、宗谷の受診者は若 年層に多い。(図 10) 二次救急医療機関に軽症者が受診する理由のひとつとして、一次救急医療機関や輪番制がないことが 宗谷 名寄 旭川 札幌 その他

救急搬送先

宗谷 名寄 旭川 札幌 その他

入院先

宗谷 名寄 旭川 札幌 その他

外来受診先

図 5 図 6 図 4

(25)

要因として考えられる。土曜日に診療をしている他の医療機関が非常に少なく、日曜日には二次救急医療 機関以外診療をしていない。 (平日の 9 時から 17 時までが診療時間)

235

0 50 100 150 200 250 二次医療圏別1病院あたり時間外受入患者数 全道平均 88人 図7

9.3

12.0

宗谷の受診時間帯別1日あたり平均受診者数 図 8 平日 土日 特に軽症, 60.9 特に軽症, 26.2 軽症, 20.0 軽症, 51.4 8.5 16.0 4.3 8.1 宗谷 全道 時間外外来受診患者の症状の程度 特に軽症 軽症 中等症 重症 死亡 その他 不明 図 9

(26)

図 10 (5)ドクターヘリの運航状況 平成 23 年 3 月に、宗谷地方の常勤の循環器内科医がすべて引き上げた。そのため、4 月以降は出張医 による週に 3 回の半日の外来のみとなり、心疾患及び循環器系の救急処置ができない状況が続いている。 そのため、心疾患及び循環器系の急患が発生した場合、ドクターヘリなどで主に名寄市立総合病院に搬 送している。 表 1 は、稚内地区消防事務組合(宗谷北部である稚内市、豊富町、そして猿払村を管轄)が開催した平 成 25 年度救急業務高度化推進協議会で公表されたドクターヘリ搬送実績を集計したものである。搬送件 数は、稚内地区から名寄、旭川等にドクターヘリで患者数の合計である。因果関係のエビデンスは認めら れていないが、常勤の循環器内科医がいなくなるのと同時期から「心疾患及び循環器系疾患」の患者の搬 送数が増加していることが分かる。 表 1 稚内地区からドクヘリで搬送された患者数推移 年 月 搬送 件数 心疾患及び 循環器系疾患 その他 の傷病 22 10∼12 1 (0%) 1 23 1∼3 1 (0%) 1 23 4∼6 6 5 (83.3%) 1 23 7∼9 1 1 (100.0%) 0 23 10∼12 7 5 (71.4%) 2 24 1∼3 3 2 (66.7%) 1 24 4∼6 7 2 (28.6%) 5 24 7∼9 13 7 (53.8%) 6 24 10∼12 5 3 (60.0%) 2 0∼14歳 0∼14歳 15∼64歳 15∼64歳 65歳∼ 65歳∼ 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 宗谷 全道 年齢層別受診割合

(27)

D.結論 (1)現在抱えている問題点と有事の際に求められること 宗谷地方では、上述したように、各自治体において最小限の数の医療機関で最小限の医療従事者が最小限 の診療科目で診療を行っている状態である。加えて、入院自給率や外来自給率が低かったり、時間外の医療 現場への負担が大きかったり、ドクターヘリの出動回数が大きく増加していることからも分かるように、平常時に おいても医療を維持することに困難が伴っている。 宗谷地方は特に冬場に天候が荒れることが多く、フェリーや航空機の欠航、道路封鎖などで移送手段が寸断 されて地域が孤立することが日常茶飯事である。気象警報の発令時、地震発生時等、停電発生時など異常事 態が発生した場合、それが軽度であっても、人的被害の有無、医療機関の機能が保たれているか等について 速やかに情報収集を行うことが求められる。 万一、災害規模が大きく地域内で医療問題が解決できないような医療サージが発生した場合は、保健所は必 要な情報収集を速やかに行うとともに、北海道庁と協議をしながら、防災ヘリ、海上保安庁、自衛隊をはじめとし た札幌、旭川等からの応援をいかに求めるかの迅速・的確な判断が必要となる。 (2)平時からの対応 平時から、医療機関、福祉施設、消防署、市町村担当部署、交通機関、道路管理者、電力会社、自治体水道 部門等との密な連携と各機関からの情報収集が不可欠である。 ア 病院の立入検査のあり方 医療機関との具体的連携については、定期の立入検査が重要な機会であり、次の項目などを確認する必要 がある。 ① 災害時でも、院内感染や医療事故が発生するリスクを高めることなく通常どおりの業務を継続するため、日 頃からの医療安全対策と安全に対する文化の醸成を徹底することが基本的に重要である。 ② 防災に関して確認が必要な事項は、避難のための必要なスタッフの確保は確実か(特に夜間)、具体的な避 難誘導方法が決まっているか、停電でも患者と職員への情報と指示の伝達方法は確保されているか、停電時の 非常電源と燃料は確保されているか、避難経路に避難を妨げる要因はないか、効果的な避難訓練が行われて いるかなどである。 ③ 地震等の発災時に二次災害の発生を防止するために、毒劇物の適切な管理、酸素ボンベの転倒防止、感 染性廃棄物の離散防止、放射性同位元素の適切な管理と汚染防止対策、病原体の適切な保管などについて 平時から徹底していることを確認することが重要である。 イ ライフライン等の情報収集 道路の安全性、航空機やフェリーなどの交通機関の運航状況、水道や電力供給などについては、担当部署 から常に最新の情報が入手する手段を確保し、相互の信頼関係を構築しておく必要がある。 ウ 関連する地域における協議会との連携 地域によっては名称が異なるが、救急活動については救急業務高度化推進協議会、ドクターヘリについては ドクターヘリ運航協議会、そして防災ヘリについては防災航空隊から最新の情報を得て、定期的な会議で意見 交換を行うなど、地域の医療の現状と課題等の情報共有を図ることが重要である。

(28)

【参考】ISO(国際標準化機構) 規格の動向から、今必要な保健所の準備態勢を考える 山梨県中北保健所 古屋好美 【概要】ISO による社会セキュリティに関する国際標準化が始まっており、2003 年米国提案により 2006 年から社会セキュリティに関する専門委員会 ISO TC223 が本格稼働し、危機管理−危機対応に関する要 求事項や事業継続マネジメントシステムに関する要求事項等が発行済みである。いずれも官民問わずあ らゆる種類の危機に対処する能力を高めることを目的としている。今後はわが国の行政への影響も当然 考えられるので、保健所の健康危機管理業務における準備態勢を考察した。今後の動向も注目したい。 【ISO による社会セキュリティに関する国際標準化が始まっている】 ISO(国際標準化機構) 規格は、品質マネジメントシステム(ISO9000 シリーズ)や環境マネジメン トシステム(ISO14000 シリーズ)などで、すでに国内でも馴染みが深い。ISO TC2231)は危機管理の国 際標準化を進める ISO の社会セキュリティに関する専門委員会である。2011 年 11 月に ISO22320(危機 管理−危機対応に関する要求事項)2)を発行した。また、2012 年 5 月には、事故や災害時における企業 の事業継続を達成させるための、 日常的な事業継続マネジメントのあり方をまとめた ISO22301(事業 継続マネジメントシステムに関する要求事項)3)も発行し、2012 年 12 月 24 日現在、国内 12 企業がすで に認証を取得したという。 【ISO の社会セキュリティに関する専門委員会 ISO TC223 の活動】 2001 年 9 月 11 日の同時多発テロ発生を受けて、米国はインシデント・コマンド・システム ICS の考 え方に基づきこれを国際標準とするため、2003 年に ISO に対してセキュリティに関する標準化の提案を 行った。ISO TC223 では、2006 年から本格的に活動し、現在 6 つのワーキンググループにおいて「緊急 事態や災害に対する社会及び組織の対応能力向上と、人命、財産、社会機能の保護に資する規格」の開 発を続けており、上述のように最近、危機管理−危機対応に関する要求事項や事業継続マネジメントシ ステムに関する要求事項等を相次いで発行した2−6)。これらはいずれも特定の災害や事故を想定したも のではなく、あらゆる種類の危機に対処する能力を高めることを目的としていることが特徴である。日 本語による解説書も発行されてきている7,8) 【国際標準規格による仕様と指針及び行政への影響】 国際標準規格は仕様/要求事項 (Specification/Requirements)及び指針/実践規範 (Guideline/Code of Practice)という 2 つの側面があり、いずれも任意規格であるものの、官民を問わず適用されるとの ことである。特に、ISO 22320 Societal security-Emergency management-Requirements for incident response(社会セキュリティ−危機管理−危機対応に関する要求事項)は前述の規格のうち要求事項に 該当する規格である。危機対応において必要となるさまざまな機能は、民間のみならず、基礎自治体か ら国までさまざまなレベルの公共団体によって分担される。危機対応の如何によって、組織の存亡に関 わることも少なくないことはすでに多くの事例がある。ISO 22320 は、緊急時の単一組織の指揮調整の あり方、危機対応にあたって情報処理のあり方、組織間協力連携のあり方について規定している。これ は、あくまでも民間の規格であり、規格を採用するかどうかは各組織の決定ではあるが、世界中の多く の国や公的機関、多くの民間企業や組織がこれを採用するようになれば、保健所を含む地方自治体にお いても、危機管理の内容と共に事業継続マネジメントを含めて影響を受けることが考えられる。例えば、

(29)

緊急時に実施すべき危機対応業務が単一組織だけで遂行できるとは限らないので、関係機関すべてに対 して共通の指針として示し、危機対応時には、組織間協力連携、組織内指揮調整、効果的情報処理が実 現することを目指すためには、どのような事前準備と有事対応が必要か、保健所が地域の健康危機管理 に当たって考える必要性が生じることとなる。 【今、保健所に必要な準備態勢】 そこで、今、もし、ISO 223202)のキーワード(表)を参考にして保健所に必要な準備を考えてみると、 次のような項目が挙げられるのではないだろうか。 (1) 保健所内“指揮調整”系統検討(例:平時から重大な健康危機管理時の体制を話し合っておく) (2) 保健所内、関係団体、関係機関の役割確認及び有事における“指揮・調整システム”確立(例: 本庁主管課と有事に必要な機能の確認及び役割分担の確認等) (3) 平時協定に基づく有事における地域内組織間“協力”(例:医師会・歯科医師会・薬剤師会、病院 連合体等協力) (4) 共通目的達成のための組織間または組織内“連携”(例:大規模な災害や食中毒の際などの有事に 保健所間連携等が円滑に行える) (5) 平時の予防・準備・有事・事後を含む“危機管理”(例:多田羅班作成の ICS/IAP/AC を健康危機 管理訓練や有事において活用) (6) 「危機管理中に展開する指揮調整構造の中で実行されるプロセスであるインシデント・コマンド (指揮調整)」を“危機における指揮調整”として位置付ける。(例:インシデント・コマンドの概念を 保健所内に定着させる) (7) “危機への備え”においても ICS を取り入れる。(例:保健所内・地域内シミュレーション訓練 に ICS を取り入れる、医師会等に対しても ICS について情報提供する等) (8) 有事の“危機対応”が確実にできるようにする。(例:有事に ICS を使用する) (9) “情報”の有効な収集・系統化・関連付けにより意味付けを行う。(例:地域感染症サーベイラン スからの流行予測) (10) 得られた情報を分析し実際起きていることを読み取って、“活動情報”として、そこから状況把 握と展開予測を行う。(断片的な情報をもとに意味を見出す過程を指しており、本来“intelligence 諜 報活動”の意味であると言う7)。)(例:普段から地域の“組織”と顔の見える関係を築き、多くの情報 チャンネルを得るよう努める) (11) 官民を問わず、地域の組織・団体・企業・機関・施設等を“組織”として捉える。(例:地域資 源としてグループを形成する人々や施設等機関をその責任の度合いや関係性から機能を把握し、組織と して捉えておく) 【ISO TC223 の今後の動向】 わが国においては、内閣府や経済産業省が、企業を対象とした事業継続に関するガイドライン 9,10) を策定しているが、自治体を対象としたガイドラインはまだ見られない。あらゆる緊急事態に対する危 機管理危機対応要求事項及び事業継続マネジメントシステム要求事項について公共団体への適用があ るならば、現状の公的機関業務継続計画や地域防災計画への影響もあるかもしれない。ISO TC223 では、 危機事態発生時及びその前後に発する警報準備及び発令の一般原則並びに警報の開発・管理・実施の指 針、防災警報危険度色表示標準化、組織の緊急時対応能力アセスメント方法ガイドライン等、今後も発 行が予定されており、その動向を注目したい。

(30)

表:ISO 223202)参照。また、( )内の和訳は文献 7)による。

用語定義

3.1 command and control (指揮・調整)

3.2 command and control system (指揮・調整システム) 3.3 cooperation (協力) 3.4 coordination (連携) 3.5 emergency management (危機管理) 3.6 incident command (危機における指揮調整) 3.7 incident preparedness (危機への備え) 3.8 incident response (危機対応) 3.9 information (情報) 3.10 operational information (活動情報) 3.11 organization (組織) 【文献】 1) TC 223 Societal security. http://www.iso.org/iso/standards_development/technical_committees/list_of_iso_technical_com mittees/iso_technical_committee.htm?commid=295786

2) ISO 22320 Societal security - Emergency management - Requirements for incident response(社会セキュリティ‐危機管理‐危機対応に関する要求事項). The International Organization for Standardization, 2011.

3) ISO 22301 Societal security - Business continuity management systems - Requirements(社会セキュリティ‐事業継続マネジメントシステム- 要求事項).

The International Organization for Standardization, 2012.

4) ISO/TR 22312:2011 Societal security - Technological capabilities (社会セキュリテ ィ - 技術的能力). The International Organization for Standardization, 2011.

5) ISO/PAS 22399:2007 Societal security - Guideline for incident preparedness and operational continuity management (社会セキュリティ - 緊急事態準備と業務継続マネジメ ントガイドライン). The International Organization for Standardization, 2007. 6) ISO 22300 Societal security - Terminology (社会セキュリティ- 用語). The International Organization for Standardization, 2012.

7) 林晴男.シリーズ ISO 22320 について学ぶ(1). リスク対策.com2012;32(7):84-89. 8) 勝俣良介.ISO 22301 徹底解説.オーム社(東京)2012 年 7 月. 9) 内閣府「事業継続ガイドライン第二版」. http://www.jsa.or.jp/stdz/mngment/pdf/guideline02.pdf 10) 経済産業省「事業継続計画策定ガイドライン」. http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/downloadfiles/6_bcpguide.pdf

図 10                                                                                            (5)ドクターヘリの運航状況    平成 23 年 3 月に、宗谷地方の常勤の循環器内科医がすべて引き上げた。そのため、4 月以降は出張医 による週に 3 回の半日の外来のみとなり、心疾患及び循環器系の救急処置ができない状況が続いている。 そのため、心疾患及び循環器系の急患が発生した場合、ドクターヘリなどで主に名寄市立

参照

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