プレス成形時の板厚変化を考慮した振動騒音解析用有限要素モデルの精度向上
*
久保川 明輝)鍵山 恭彦)
Accuracy Enhancement of FE Model for NVH Analysis by Application of Stamping Effect
Haruki Kubokawa Yasuhiko Kagiyama
The accuracy and reliability of FE models become more important to realize the virtual engineering. Thus, the quality of structural FE models such as white-body models is also required to be enhanced. From the investigation, it showed that natural frequencies derived by the simulation results of the general FE models are higher than experiment data. The drawing information is the basis of normal FE models construction, and it have issue to represent the experiment. The information from the production process like stamping effect can enhance the quality of the FE models. This paper describes the calculation results of stamping simulation have been applied to the FE models for NVH analysis. As the results, the gaps of natural frequencies between NVH analysis and the experiment can be closer with small errors.
KEY WORDS: Vibration, noise, and ride comfort, Body structure/body material, Finite element method (FEM), stamping (B3)
.まえがき 昨今の自動車開発は,開発期間の短縮,試作品による実験 検証なしでの性能保証,燃費向上を背景とした車体軽量化と いった要求が高まっている.その一方,商品魅力の向上は常 に要求されており,振動騒音の低減においてはより正しい事 象解析と適切な仕様検討手法の実現が必要となる.そのため, 大規模有限要素モデルによる事象解析技術と性能予測技術の 重要性はさらに増している.これらの技術構築を行う上で, 大規模有限要素モデルそのものの精度,信頼性の向上は不可 欠であり,キャビン内の隙間に着目した音響モデル化手法(1) やシャシ部品の非線形性を考慮したモデル化手法(2),特性の ばらつきに対する解析手法(3)の提案などが行われている. 一方で,従来から一般的に解析が行われてきたホワイトボ デーのような有限要素モデルに関しても,精度,信頼性向上 の余地はあると考える.サスペンションやエンジンマウント の取付点近傍の自己応答は,個体ごとのばらつきが小さいに も関わらず,実験結果と有限要素モデルによる解析結果を比 較すると固有振動数に差異がみられることが経験的に知られ ている.自動車の振動騒音を低減するには,ホワイトボデー の固有モード及び固有振動数が支配的な因子の場合,これら に目標値を設定し構造検討する手法を採用することが多いた め,実験結果と解析結果の差異を是正することはより正しい 事象解析と適切な仕様検討の実現に直結する. この差異を是正するために,実験被験物に対し有限要素モ デルは固有振動数が高い傾向にある検証結果を得たことから *2016 年 6 月 2 日受理.2016 年 5 月 25 日自動車技術会春季学 術講演会において発表. ・)株本田技術研究所 栃木県芳賀郡芳賀町下高根沢 番地 考察し,部品加工過程,特にプレス加工の影響に着目した. 部品加工過程を考慮したモデル化技術は部品間締結に関する 研究報告(4)はあるが,プレス加工に着目した研究報告は少な い.一般的に有限要素モデルは設計寸法情報を元に作成され ており,プレス加工の影響はモデルに反映されていない. 本稿では,試作品による実験検証なしでの性能保証という 制約下での有限要素モデルの精度,信頼性向上を目的に,プ レス成形解析より得られた部品の詳細な板厚分布を有限要素 モデルに反映する手法を提案する. .設計寸法情報から作成した有限要素モデル ホワイトボデーモデルの精度検証 有限要素法による振動騒音解析以下 19+ 解析と呼ぶは離 散化による近似計算であるため,解析結果と実験結果を比較 すると一般的に一定の差異は生じるが,それはモデリングだ けでなく,実行するソフトウェアや計算パラメータの設定と いった計算環境に強く依存する.一辺 PP 程度の板状の試 験片の実験結果と 19+ 解析結果の比較を行うことで,本研究 における計算環境の検証を行った.比較には以下の理由から モードではなく自己応答を用いた.実験からモードを同定す るには,実験被験物に加速度センサーを複数個取り付ける必 要があるが,今回用いた試験片のような,加速度センサーに 対し相対的に質量が大きくない実験被験物の場合,加速度セ ンサーの質量が実験結果に大きく影響してしまう.また,加 速度センサーのケーブルや取り付けるための接着剤の影響も 無視できず,実験被験物が系として複雑になってしまい,試 験片を用いる意義が薄れてしまう.一方,自己応答の場合, 実験被験物に取り付ける必要のある加速度センサーは 個で
資料Fig. 12 Sound pressure responses on reflection field with optimized WFS
Fig. 13 Sound pressure distribution on reflection field with optimized WFS 4.2.4. 境界音場制御による反射制御 反射音場における境界音場制御のシミュレーションを行う. 対象とする空間は4.2.1 項の反射場と同条件とし,スピーカ位 置に4.2.2 項で得られた入力信号 A𝑓𝑓を入力した結果を図12, および図13 に示す.図 12 に示すように応答波形は反射によ る音圧の増加が抑制され,反射成分による収束の遅れも見ら れない.また図13 に示す音圧分布より,境界音場制御が適用 されたシミュレーションにおいては,合成された波面が受け る反射の影響が低減されており,原音場が再現されているこ とがわかる. 以上の結果より,境界音場制御によって壁面における反射 音が制御されたことが示された.同様の制御を行うことで, 自動車車室内のような反射環境においても反射による波面の 歪みや反響成分を除去できると考えられる. 5. ま と め 本研究では,車の周囲で発生した危険を波面合成による音 像定位を用いて自動車ドライバに知らせる認知支援を提案し, 以下のことを明らかにした. 1. 波面合成によって音像が提示可能であることを示し,ま た移動する音像を提示することでより高い認知性を有す る音像を提示できる可能性を示した. 2. 波面合成によって提示された音像が認知の支援に有効で あることを示した. 3. 指向性マイクロホンを用いた境界音場制御理論を適用す ることで,反射環境においても正確に波面を合成可能で あることを示した. 今後は移動する音源を模擬運転試験に適用することで反応 時間がどのように変化するかを検討していく.今回はシミュ レーションのみの検討だったが,今後は実際の自動車車室内 において境界音場制御を行い,どの程度反射の影響を低減す ることができるかを検討していく. また波面合成法は警報音のみならず,あらゆる音源に対し て適用が可能である.今後はサイン音などに対しても同様の 手法を適用することで認知性の向上を検討する. 参 考 文 献 (1) 警察庁交通局:平成 26 年中の交通事故の発生状況,政 府統計の総合窓口(e-Stat)(2015) (2) ASV 推進検討会:第 5 期 ASV 推進計画パンフレット, 国土交通省(2012) (3) 茂木勇祐ほか:生体情報に基づく音像定位による 情報音の認知性評価,日本音響学会春季講演論文集, p.1519-1520(2014) (4) 茂木勇祐ほか:脳活動計測に基づく情報音の音像定位 による方向認知支援,日本音響学会春季講演論文集, p. 1363-1366(2015) (5) 木村敏幸ほか:波面合成法による立体音場再生における マイクロホン及びスピーカの指向特性による波面の合成 精度への影響,日本バーチャルリアリティ学会論文誌, vol. 12,p. 191-198(2007) (6) 有光哲彦ほか:多チャンネルオーディオシステムによる車 室内の多領域音場制御,自動車技術会学術講演会前刷集, No. 101-14,p.11-14(2014) (7) 曺浣豪ほか:車室内の多領域音場制御,自動車技術会シン ポジウムテキスト,No. 6-11,p. 60-65(2011)
(8) W.-H. Cho, J.-G. Ih., M. M. Boone: Holographic design of a source array achieving a desired sound field, Journal of the Audio Engineering Society, Vol. 58, No. 4, p. 282-298(2010) (9) 太刀岡勇気ほか:CIP 法による時間領域音場解析-FDTD 法 との比較-,日本音響学会建築音響研究会講演論文集,p. 979-982(2007) -0.25 0 0.25 0 200 400 600 800 1000 So und pr es su re P a 1ch 2ch 3ch 4ch 5ch 6ch 7ch 8ch 9ch 10ch 11ch 12ch 13ch 14ch 15ch 16ch
Cenceled effects of reflection
So und 0.25 0 -0.25 20 15 10 5 20 15 10 5 5 10 15 20 X sample (b) t = 400 count 5 10 15 20 X sample (c) t = 600 count 20 15 10 5 20 15 10 5 5 10 15 20 X sample (d) t = 800 count So und pr es sur e P a Y s am pl e Y s am pl e Y s am pl e Y s am pl e 5 10 15 20 X sample (a) t = 200 count Timestep count 201340 20174059
あり,有限要素モデルによる系の再現が可能で,実験結果と 19+ 解析結果の比較を行う上で最も有効であると考えた. 結果を図 に示すが,実験結果と 19+ 解析結果は極めて高 い相関がみられた.この結果から本解析に用いたソフトウェ アと計算パラメータの信頼性は確保できていると考え,この 計算環境を肯定した上で有限要素モデルの精度検証を進めた. 次に,自動車開発で一般的に使用されている有限要素モデ ルによる 19+ 解析の精度と信頼性を検証する.ホワイトボデ ーに対しレーザドップラ振動計を用い計測することで得られ たフロアモードと図 に示すようなホワイトボデーモデルの 19+ 解析を実行することで得られたフロアモードを比較した. 図 にある特定のフロアモードの実験結果と解析結果の比 較を示す.実験結果のモードと解析結果のモードはモード信 頼性評価基準値以下 0$& 値と呼ぶが と非常に高い値で あることから,示されるモードは同一のモードであると考え られるが,固有振動数は実験結果に対し 19+ 解析結果が高い 値となった.
Fig.1 Comparison of FRF of a simple plate between experiment and CAE
Fig.2 CAE model of white-body
Fig.3 Comparison of floor mode between experiment and CAE
同様に,ホワイトボデーモデルのエンジンマウント取付点 近傍の自己応答に関して,実験結果と 19+ 解析結果の比較を 図 に示す.図 の結果と同様,実験結果に対し 19+ 解析結 果は固有振動数が最大 ほど高く,全周波数域でその傾向が みられた. Fig.4 Comparison of FRF at a frame of white body between
experiment and CAE before applying stamping effect
この結果から,19+ 解析結果の精度向上を図るには全周波数 域において固有振動数が低下するようにモデル化手法を改善 する必要がある.モデル化手法に関し,まずメッシュサイズ の検討を行った.メッシュサイズは部品の形状再現度に影響 し,計算結果に大きく影響を与えるパラメータである.本研 究ではプリポスト操作及び計算時間の観点で自動車開発にお いて実用的なメッシュサイズに対象を絞り,その変更により 固有振動数の一様な低減がみられるかに着目した.自己応答 で比較すると図 のような結果が得られた.一例として +] 近傍のピークに着目すると,メッシュサイズを詳細にするこ とによる固有振動数の低下傾向は確認できず,すなわちメッ シュサイズの詳細化は固有振動数を低下させる有効な手段で はないと考えられる. Experiment CAE 175.2Hz 201.6Hz プレス成形時の板厚変化を考慮した振動騒音解析用有限要素モデルの精度向上
あり,有限要素モデルによる系の再現が可能で,実験結果と 19+ 解析結果の比較を行う上で最も有効であると考えた. 結果を図 に示すが,実験結果と 19+ 解析結果は極めて高 い相関がみられた.この結果から本解析に用いたソフトウェ アと計算パラメータの信頼性は確保できていると考え,この 計算環境を肯定した上で有限要素モデルの精度検証を進めた. 次に,自動車開発で一般的に使用されている有限要素モデ ルによる 19+ 解析の精度と信頼性を検証する.ホワイトボデ ーに対しレーザドップラ振動計を用い計測することで得られ たフロアモードと図 に示すようなホワイトボデーモデルの 19+ 解析を実行することで得られたフロアモードを比較した. 図 にある特定のフロアモードの実験結果と解析結果の比 較を示す.実験結果のモードと解析結果のモードはモード信 頼性評価基準値以下 0$& 値と呼ぶが と非常に高い値で あることから,示されるモードは同一のモードであると考え られるが,固有振動数は実験結果に対し 19+ 解析結果が高い 値となった.
Fig.1 Comparison of FRF of a simple plate between experiment and CAE
Fig.2 CAE model of white-body
Fig.3 Comparison of floor mode between experiment and CAE
同様に,ホワイトボデーモデルのエンジンマウント取付点 近傍の自己応答に関して,実験結果と 19+ 解析結果の比較を 図 に示す.図 の結果と同様,実験結果に対し 19+ 解析結 果は固有振動数が最大 ほど高く,全周波数域でその傾向が みられた. Fig.4 Comparison of FRF at a frame of white body between
experiment and CAE before applying stamping effect
この結果から,19+ 解析結果の精度向上を図るには全周波数 域において固有振動数が低下するようにモデル化手法を改善 する必要がある.モデル化手法に関し,まずメッシュサイズ の検討を行った.メッシュサイズは部品の形状再現度に影響 し,計算結果に大きく影響を与えるパラメータである.本研 究ではプリポスト操作及び計算時間の観点で自動車開発にお いて実用的なメッシュサイズに対象を絞り,その変更により 固有振動数の一様な低減がみられるかに着目した.自己応答 で比較すると図 のような結果が得られた.一例として +] 近傍のピークに着目すると,メッシュサイズを詳細にするこ とによる固有振動数の低下傾向は確認できず,すなわちメッ シュサイズの詳細化は固有振動数を低下させる有効な手段で はないと考えられる. Experiment CAE 175.2Hz 201.6Hz
Fig.5 Comparison of FRF between different mesh size models
固有振動数差要因の考察 実験結果に対し 19+ 解析結果の固有振動数が高い傾向は, 複数の車種において共通して確認された.よって,この傾向 はデータのばらつきや車種特有の現象といった偶発的な要因 によるものではなく,必然的な要因によるものと考えられる. 固有振動数に差異がみられる理由として,剛性,質量,ある いはその両方が実験被験物と 19+ 有限要素モデル間で異なっ ていることが予測される.解析上は,材料物性値の変更で実 験結果に対し 19+ 解析結果を近づけることはできるが,材料 物性値を決定する根拠に乏しく,物理的に正しい手法ではな い. 本研究ではこの要因として,部品加工過程,特にプレス加 工によって部品の板厚が減少することに着目した.これは, プレス加工過程で塑性変形し,加工前に比べ板厚が減少して いる実験被験物に対し,有限要素モデルは一般的に設計寸法 情報をもとに一様な板厚が定義されているので,板厚違いに より剛性と質量に差が生じると予測されるためである. .プレス加工後の部品板厚の 19+ 有限要素モデルへの適用 ドアモジュールでの検証 プレス加工影響の検証をまず図 に示すようなドアモジュ ールを用いて検証した.本検証に使用したドアモジュールは, ガラスやスイッチ類,レギュレータ,内装材類などは一切取 り外しており,鉄部品と溶接,塗装,接着剤のみで構成した. 主要鉄部品であるドアスキンとドアパネルはプレス加工で成 形されている. Fig.6 Front door module
まず図 に示すように,ドアモジュール単体での実験結果 と 19+ 解析結果をドアパネルのスピーカ取付点近傍での自己 応答で比較した.ホワイトボデーでの検証結果と同様,ドア モジュールにおいても実験結果に対し 19+ 解析結果の固有振 動数が最大 ほど高く,全周波数域でこの傾向が確認できた. 特に +] 以上の周波数域では実験結果と 19+ 解析結果の固 有振動数の差の絶対量が大きくその傾向がより明確であった. Fig.7 Comparison of FRF at a door panel between experiment and
CAE before applying stamping effect
次に,プレス加工影響を有限要素モデルへ反映させる手法 について述べる.具体的には,塑性変形後の部品板厚以下, 板厚分布と呼ぶを有限要素モデルへ適用する.板厚分布の取 得には,試作品による実験検証なしでの性能保証という制約 に応えるという観点からシミュレーションによるプレス成形 解析結果を採用することとした.プレス成形解析は,従来, プレス加工過程に発生する可能性のあるしわや割れといった 欠陥,不具合の検出や,スプリングバック現象の検出など, 生産技術領域で主に使用されてきた技術であり,その解析精 度向上手法(5)も提案されている. ドアパネルのプレス成形解析により計算した板厚分布図を 図 に示す.19+ 解析を行った際に,応力集中が発生しやすい 複数の角部で,加工後に大きく板厚が減少していることがわ かる.またパネル挙動に影響が大きいビード形状付近でも加 工後の板厚減少が確認できた. 板厚分布を有限要素モデルへ反映させる具体的な手法につ いて述べる.図 からもわかるように,板厚分布を正確に有 限要素モデルに反映させるには,部位ごとに詳細に板厚を定 義していく必要がある.有限要素モデルに板厚を設定するに は領域を定義し,領域ごとに設定していく手法が一般的であ るが,本研究では詳細な板厚設定を実現するため,板厚値は 有限要素の節点ごとに設定する手法を採用した(6).概要は図 に示す通りである. Fig.8 Result of stamping simulation on a front door panel
(a) Setting the thickness to each area
(b) Setting the thickness to each grid
Fig.9 Two methods of setting thickness divided by area and grid
板厚設定作業は汎用 &$( プリ処理ソフトウェアの標準機能 を用いて行い(7),プレス成形解析から得た板厚分布を図 に示すように,有限要素モデルへと反映した.これまでの手 順の概要を図 に示す. 板厚分布反映後の効果を確認するために,まず質量の比較 を行った.表 に示す通り,実験被験物の質量に対し板厚分 布反映前の有限要素モデルの質量はであったが,反映後 はとなり,有限要素モデルの実験再現度は向上した.有 限要素モデルは板厚分布反映前に対し反映後で質量が減少し ていることから,質量限定の効果としては板厚分布を反映す ると固有振動数は高くなる. ドアモジュール単体での実験結果と 19+ 解析結果の自己応 答の比較を行った結果を図 に示す.図 の結果と比較する と,解析結果の精度は明らかに向上したことが確認できる. 19+ 解析結果の固有振動数は全周波数域で から 程度の低 下傾向を示しており,固有振動数の絶対的な低下量としては 高周波域ほど顕著である.特に +] 以下に関しては実験結 果との差異はほとんどみられなくなった.よって 19+ 解析結 果における固有振動数の低下は,質量影響ではなく,応力集 中の発生しやすい箇所の板厚減少による,剛性低下によるも のと推測される. Fig.10 Result of applying map of thickness to NVH model
次に,プレス加工影響を有限要素モデルへ反映させる手法 について述べる.具体的には,塑性変形後の部品板厚以下, 板厚分布と呼ぶを有限要素モデルへ適用する.板厚分布の取 得には,試作品による実験検証なしでの性能保証という制約 に応えるという観点からシミュレーションによるプレス成形 解析結果を採用することとした.プレス成形解析は,従来, プレス加工過程に発生する可能性のあるしわや割れといった 欠陥,不具合の検出や,スプリングバック現象の検出など, 生産技術領域で主に使用されてきた技術であり,その解析精 度向上手法(5)も提案されている. ドアパネルのプレス成形解析により計算した板厚分布図を 図 に示す.19+ 解析を行った際に,応力集中が発生しやすい 複数の角部で,加工後に大きく板厚が減少していることがわ かる.またパネル挙動に影響が大きいビード形状付近でも加 工後の板厚減少が確認できた. 板厚分布を有限要素モデルへ反映させる具体的な手法につ いて述べる.図 からもわかるように,板厚分布を正確に有 限要素モデルに反映させるには,部位ごとに詳細に板厚を定 義していく必要がある.有限要素モデルに板厚を設定するに は領域を定義し,領域ごとに設定していく手法が一般的であ るが,本研究では詳細な板厚設定を実現するため,板厚値は 有限要素の節点ごとに設定する手法を採用した(6).概要は図 に示す通りである. Fig.8 Result of stamping simulation on a front door panel
(a) Setting the thickness to each area
(b) Setting the thickness to each grid
Fig.9 Two methods of setting thickness divided by area and grid
板厚設定作業は汎用 &$( プリ処理ソフトウェアの標準機能 を用いて行い(7),プレス成形解析から得た板厚分布を図 に示すように,有限要素モデルへと反映した.これまでの手 順の概要を図 に示す. 板厚分布反映後の効果を確認するために,まず質量の比較 を行った.表 に示す通り,実験被験物の質量に対し板厚分 布反映前の有限要素モデルの質量はであったが,反映後 はとなり,有限要素モデルの実験再現度は向上した.有 限要素モデルは板厚分布反映前に対し反映後で質量が減少し ていることから,質量限定の効果としては板厚分布を反映す ると固有振動数は高くなる. ドアモジュール単体での実験結果と 19+ 解析結果の自己応 答の比較を行った結果を図 に示す.図 の結果と比較する と,解析結果の精度は明らかに向上したことが確認できる. 19+ 解析結果の固有振動数は全周波数域で から 程度の低 下傾向を示しており,固有振動数の絶対的な低下量としては 高周波域ほど顕著である.特に +] 以下に関しては実験結 果との差異はほとんどみられなくなった.よって 19+ 解析結 果における固有振動数の低下は,質量影響ではなく,応力集 中の発生しやすい箇所の板厚減少による,剛性低下によるも のと推測される. Fig.10 Result of applying map of thickness to NVH model
Fig.11 Process for applying stamping effect to the FE model for NVH analysis
Table.1 Comparison of mass of a door module between experiment and CAE
Fig.12 Comparison of FRF at door panel between experiment and
CAE after applying stamping effect ホワイトボデーでの検証 ドアモジュールでの検証結果を踏まえ,19+ 解析用ホワイト ボデーモデルへの板厚分布の反映を行った.ホワイトボデー モデルへ適用したプレス成形解析結果の一例を図 に示す. 本検証では,データが入手可能であったパネル部品を中心に 板厚分布を有限要素モデルへ適用した. Fig.13 Results of stamping simulation of white-body model ドアモジュールと同様,ビード形状やディンプル形状など の部位に板厚減少がみられ,フロアトンネル部といった車体 全体モードに影響が大きい部位でも顕著な板厚減少が確認で きる. ホワイトボデーの実験結果と板厚分布反映後の 19+ 解析結 果の比較を図 に示す.図 の板厚分布反映前の結果と図 を比較すると,ホワイトボデーでもドアモジュールと同様に 解析結果の精度,信頼性向上を図ることができている.解析 結果は板厚分布反映後に固有振動数が低下し,実験結果との 固有振動数の差が最大 から に改善した. Fig.14 Comparison of FRF at a frame of white-body between
experiment and CAE after applying stamping effect
(a) MAC between experiment and CAE before applying stamping
effect
(b) MAC between experiment and CAE after applying stamping effect
Fig.15 MAC at rear floor between experiment and CAE
Table.2 Comparison of natural frequencies at rear floor between experiment and CAE
また,図 にホワイトボデーのリアフロアにおける 0$& 値 を示す.この図より,板厚分布を反映することで解析結果の モードの順番が入れ替わり,実験結果の再現度が向上してい ることが確認できた.固有振動数の観点でも表 に示す通り, 板厚分布を反映することで実験結果に対し解析結果の値が近 づいた. このように,プレス加工後の板厚分布を有限要素モデルに 反映することで,自動車の振動騒音において固体伝播音及び 車体振動の観点で重要視される ~+] 周波数域の解析精度, 信頼性の向上が確認できた. 解析精度,信頼性をさらに向上するために,部品加工過程 で発生するひずみや溶接による熱ひずみ,スプリングバック, 加工硬化,塗装をモデルに反映すること,全てのプレス加工 部品に対し板厚分布の反映を行うこと,また製造ばらつきを 考慮した計算手法の構築などが今後の課題として挙げられる. .ま と め 試作品による実験検証なしで性能保証できる精度,信頼性 がある有限要素モデルを実現することを目的に,プレス成形 解析より得られた部品の詳細な板厚分布を有限要素モデルに 反映する手法を検討した結果,下記の結論を得た. (1)設計寸法情報のみから作成した有限要素モデルの解 析結果は,実験結果に対し固有振動数が高くなる傾向がある ことがわかった. (2)ドアモジュールとホワイトボデーに対し,プレス成 形解析結果の板厚分布を有限要素モデルに適用することで解 析結果の固有振動数が低下し,実験結果との固有振動数の差 がホワイトボデーでは最大 から に改善した.これは応力 集中の発生しやすい箇所の板厚減少による,剛性低下による ものと推測される. 参 考 文 献 丸山新一,ほか:車室音場解析のための音響隙間要素の 開発,自動車技術会学術講演会前刷集,1R,S() 山岡裕生:-0$&&21)(5(1&(,今後の自動車振動騒 音 &$( について,S 斎藤浩司,ほか:部品の不確定性を考慮した車体 19+ 特 性のロバスト性の向上,自動車技術会 年春季大会学術講 演会講演予稿集,1R,S 横山翔一,ほか:635 で締結した構造物の動特性を予測す るためのモデル化手法の提案,機械力学・計測制御講演論文 集,S– 吉田亨:板材成形シミュレーションの精度向上と実用化, 塑性と加工,第 巻第 号,S 06&6RIWZDUH:06&1DVWUDQ4XLFN5HIHUHQFH*XLGH, S
%(7$ &$( 6\VWHPV : $16$ Y[ 8VHU’V *XLGH , S