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村部  敏彦

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Academic year: 2022

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1

ITS スポットプローブデータを用いた車両感知器 未整備区間における所要時間算定式構築

村部  敏彦

1

・木村  真也

2

・米川  英雄

3

1非会員  中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋(株)(〒460-0003 名古屋市中区錦1-8-11)

E-mail: t.murabe.a@c-nexco-hen.jp

2非会員  中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋(株)(〒460-0003 名古屋市中区錦1-8-11)

E-mail: s.kimura.a@c-nexco-hen.jp

3正会員  中日本高速道路(株)(〒460-0003 名古屋市中区錦2-18-19)

E-mail: h.yonekawa.aa@c-nexco.co.jp

リアルタイムに交通情報が収集できる環境が整っている現在、所要時間情報の正確性が問われている。

本稿では、車両感知器が2kmピッチに設置されていない区間における所要時間の問題を整理し、平成 23 年度から新たに導入されたITSスポットプローブのデータを用いて、所要時間情報の精度向上に向けた 新たな算定式の構築を報告する。

Key Words :necessary time, ITS Spot, probe, Vehicle detector, Dedicated Short Range Communications

1.

はじめに

近年スマートフォンに代表される携帯端末や、カーナ ビゲーションの普及により、リアルタイムに交通情報が 収集できる環境が整ってきた。それに伴い、従来以上に 情報提供内容の正確性が問われている。特に渋滞時の所 要時間情報は、一般道へ迂回するかどうかの判断材料と したり、到着時間が読めないことによるストレスの回避 など、重要な情報の一つと考えられている。

現在、東名・名神などの主要高速道路では、概ね2 kmピッチで設置されている車両感知器の速度データを 用いて、所要時間を算出している。しかし、車両感知器 が密に設置されていない地方部の路線では、一律の規定 値に基づいて算出しているのが実情である。

本稿は、所要時間情報の精度向上に向けて、ITSス ポットプローブの基本情報を用い、所要時間を算定する 式の構築を行った結果を報告するものである。

2.

現状と課題

中日本高速道路(株)名古屋支社管内における車両感 知器の整備状況を図-1に示す。都市近郊区間や、重交通 量区間では概ね2kmピッチに車両感知器が設置されて いるのに対し、地方部の路線では、インター間に1か所 のみの設置となっている。

車両感知器が 2kmピッチに設置されていない区間に おいても、目で見るハイウェイテレホンやVICS、I TSスポットの簡易図形で所要時間情報を提供している。

この区間の所要時間は、順調時は規制速度を基に算出し、

渋滞が発生している場合は、渋滞原因に関係なく渋滞領

域を一律 20km/hで走行したとして所要時間を算出して

いる。現状では、車線閉塞のない交通集中渋滞も、車線 閉塞のある事故渋滞や工事渋滞も一律の通過速度で所要 時間を算出していることから、実態の所要時間と乖離が 生じている。

図-1  車両感知器2kmピッチ未整備区間

車両感知器

2キロピッチ未整備区間

紀伊長島 亀山J 草津J

四日市J

豊田東J 米原J

土岐J

一宮J 小牧J 養老 J

亀山 伊勢関 木之本

郡上八幡

伊勢

三ヶ日

関広見 大垣西

恵那

伊北 白川郷

岐阜各務原

名古屋 高針J上社J 楠J 名古屋西J

豊田 東海北陸自動車道

北陸自動車道

名神高速道路

伊勢自動車道

紀勢自動車道

中央自動車道

東名阪自動車道 新名神高速道路

東名高速道路 東海環状自動車道

伊勢湾岸自動車道

(2)

2

3.

算定式構築方法

所要時間を算定する式の精度向上にあたっては、ITS スポットの双方向通信機能に着目し、プローブ情報の基 本情報を用いた。

(1) ITSスポットプローブ

ITSスポットとは、道路に設置された「ITSスポット 路側無線装置(以下「RSU」という)」と、車両側の

「ITSスポット対応カーナビ(以下「対応カーナビ」と いう)」との間で、高速・大容量通信を行ない、リアル タイムな情報をわかりやすく図形で提供するなど、様々 なサービスを提供している。図-2にその一例を示す。図 では、前方の右車線に落下物があることを図形を用いて 表現しており、事前に前方の情報を提供し、安全運転の 支援を行っている。

ITSスポットに用いられる通信の特色は双方向通信で あり、対応カーナビ搭載車両を 動くセンサー として 利用するためのプローブ情報の収集が可能である。図-3 にプローブデータの流れを示す。対応カーナビに蓄積さ れた走行履歴(速度、時刻等の情報)、挙動履歴(急ブ レーキ急ハンドルを想定した情報)及び基本情報(車載 器情報、直前に通過したITSスポットの情報)は、車両

がRSUを通過した際に、自動的にRSUにアップリンク

され、プローブ処理装置(以下「C2サーバー」という)

に集積する。C2サーバーに集積したプローブ情報は、

5分毎に一括してプローブ統合サーバ(以下「C1サー バー」という)に送信する1)。本分析は、C1サーバー への基本情報送信ログデータを使用した。

(2) 基本情報送信ログデータの活用

ITSスポットプローブデータを利用して所要時間を算 出するのであれば、100m毎(又は200m毎)に速度デ ータが蓄積された走行履歴を利用し、所要時間を算出し たい。しかし、走行履歴は対応カーナビの設定で「UP リンク許可」をしていないとデータが収集されず、分析 対象としたサービス開始当初は、データ総数の約3割の みが「UPリンク許可」となっており、サンプル数が期 待できない。よって本分析においては、全ての車載器

(ナビ付車載器及び、発話型車載器)が必ず送信する基 本情報を用いることとした。

なお、分析に用いる基本情報の時刻は、RSUを通過 しUPリンクした時刻ではなく、図-3のC2サーバーか らC1サーバーに送信した5分毎の時刻となる。よって、

実際に RSUを通過した時刻と、分析に用いる基本情報 の時刻には、最大で5分の差が生じる。

また、図-4に示すとおり、RSUはインターチェンジ の概ね 3km手前に設置されており、RSU間の所要時間 とインター間所要時間とでは、距離にして約 3km程度 のズレが生じる。

図-3 ITSスポットの双方向通信とデータの流れ

道路交通情報 安全運転支援etc 走行履歴と挙動履歴を蓄積

100m毎に 走行履歴を蓄積

路側無線装置 (RSU) プローブ情報

急ハンドル、

ブレーキにより 挙動履歴を蓄積

プローブをUPリンク 基本情報(全ての対応カーナビが送信)

走行履歴(UPリンク許可車両のみ送信)

挙動履歴(UPリンク許可車両のみ送信)

プロ―ブ処理装置 C2サーバ

プロ―ブ総合サーバ C1サーバ ITSスポット

対応カーナビ

東 海 北 陸 道 清 須 IC 岐 阜 中 央 道

5分毎に送信 リアルタイム

図-2 ITSスポット簡易図形(注意警戒)表示例 図-4  基本情報を用いた所要時間

(B) IC

RSU

(A) IC

RSU

概ね3km 概ね3km

インター間所要時間 基本情報を用いた所要時間

進行方向

(3)

3 (3) 算定式構築方法

渋滞領域を通過した対応カーナビ搭載車の基本情報か ら、渋滞時の所要時間と規制速度で走行したときの所要 時間の差である「遅延時間」と、交通状況図から「渋滞 通過延長」を算出し、原因別に回帰分析をした。

図-5に、対応カーナビ搭載車の走行状況と、渋滞や事 故等の事象を時空間上に図示した交通状況図を示す。図 は横軸にキロポスト、縦軸に時刻をとり、桃色の範囲が 渋滞領域を示している。青丸の打点は、RSUで基本情 報をUPリンクした箇所を示しており、青線は対応カー ナビ搭載車の走行を示している。

図より、対応カーナビが渋滞領域を示す桃色線の範囲 内を通過している距離を算出し、「渋滞通過延長」とし た。また対応カーナビ搭載車が、渋滞前後のRSUでUP リンクした時刻の差から渋滞時のRSU間所要時間を算 出し、規制速度で走行した時と比較し増加した時間を

「遅延時間」とした。

今回の分析対象期間は、ITSスポットサービスが導入 された平成23年4月から1年間とした(但し4月〜6月 はデータ欠損のため、実質9か月間のデータとなった)。

4.

分析結果

車両感知器未整備区間における遅延時間と渋滞通過延 長との関係を、図-6〜図-8に示す。

図-6は、交通集中渋滞のみの渋滞通過延長と遅延時間 との直線回帰結果である。図を見ると、渋滞通過延長が 2〜40kmの範囲に分布し、図中の打点は回帰直線から概 ね誤差15分の範囲にある。また図中Rで示す相関係数 は 0.84と強い正の相関を持っていることから、回帰の 精度は高いといえる。

図-7は工事渋滞のみを図-6と同様に直線回帰をした結 果であり、相関係数は0.81と強い正の相関を持ってお り、回帰の精度は高い。なお、普段は、工事規制で渋滞

を起こさないよう、曜日や時間帯を厳選して工事を実施 している。しかし実際には緊急工事などによる工事渋滞 が発生しており、この渋滞を通行した対応カーナビ車が 19台存在した。渋滞通過延長は最大で8.1kmであった。

図-8は同様に、事故渋滞のみを直線回帰した結果であ る。図をみると、回帰直線からの乖離が大きくなってい る打点が存在する。これは、事故状況(軽い接触か、横 転事故かなど)により通行車の脇見の度合いが変わり、

捌け交通量が変動することに起因すると考察する。相関

係数は0.80と強い正の相関を持っている。

図-6〜図-8のいずれも、分析対象区間における対応カ ーナビの普及率が低く、かつ交通量が比較的少ない路線 を分析対象としたため、サンプル数が少ない。しかし、

いずれの場合にも相関係数は 0.8以上であり、強い正の 相関を持った精度の高い回帰式が得られた。

図-6  渋滞通過延長と遅延時間(交通集中渋滞)

図-7  渋滞通過延長と遅延時間(工事渋滞)

図-8  渋滞延長と遅延時間(事故渋滞)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 5 10 15 20 25 30 35 40

遅延時間

(分)

渋滞 通過延長

(km)

交通集中渋滞

N = 26 y = 0.8413x + 11 R = 0.8426

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0.0 2.5 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 20.0

遅延時間

(分)

渋滞 通過延長

(km)

工事渋滞

N = 19 y = 3.0278x + 5.5881 R = 0.8123

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0.0 2.5 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 20.0

遅延時間

(分)

渋滞 通過延長

(km)

N = 25 事故渋滞

y = 2.4065x + 11.352 R = 0.8090

図-5  プローブデータと交通状況図

00:00 01:00 02:00 03:00 04:00 05:00 06:00 07:00 08:00 09:00 10:00 11:00

12:00

200

205

210

215

220

225

230

235

240

渋滞 事故 故障車 路上障害物

刻)

(KP)

渋滞領域 事故

進行方向

RSU RSU RSU

14.9km 12.5km

4.8km

(交通状況図 凡例)

: 基本情報UPリンク

: 対応カーナビ車走行状況

(4)

4 以上の図-6から図-8までの回帰直線のみを同時に再掲し たのが図-9である。なお、図中の点線は、現在の所要時 間の算出方法である、渋滞領域を一律20km/hとした場 合の渋滞通過延長と遅延時間の関係を示したものである。

図を見ると、車線が閉塞している工事渋滞及び事故渋滞 の場合は、現在提供中の所要時間よりも、多くの時間が かかっていることが判った。また車線が閉塞していない 交通集中渋滞では、渋滞延長 8km以上の場合において、

現在提供中の所要時間よりも、実際の所要時間は小さい ことが判った。

今後は、今回作成した渋滞原因別の回帰式を用いるこ とにより、従来より精度の高い所要時間を提供すること が可能となる。

5.

おわりに

本分析では、ITSスポットサービスの導入直後から9 か月間のデータを使用したが、前述のとおりサンプル数 が少ない。現在は対応カーナビが7社から発売され、近 い将来、VICS(2.4GHz)による情報提供がITSスポット サービスに移行される 2)。よって今後対応カーナビの普 及が見込まれ、対象サンプル数が増加し、回帰式の精度 向上が図れる。

また、渋滞原因別のみで区分した回帰分析としたが、

例えば工事渋滞では、規制延長の長短やラバコーンの配 置(はみ出し規制か、通常規制か)により、渋滞の捌け 交通量が変化することが既往研究 3) 4)で明らかとなって おり、捌け交通量が変化することは渋滞通過時間も変化 することと考えられる。このことから、回帰分析を区分 して行うカテゴリをより細分化する必要がある。今後、

データが豊富に収集出来たところで再度分析を行いたい と考える。

なお、中日本高速道路(株)名古屋支社では、2014 年度の新東名高速道路 愛知県区間の開通に向け、一宮 交通管制中央システムの改修を実施しており、改修時に は本機能を搭載する予定である。

参考文献 

1) 村部敏彦,綿内忠昭,上水一路,米川英雄:ITSス ポットプローブデータによる高速道路における経路 選択の試行分析,第 32回交通工学研究発表会論文 集, pp.297-300,2012.

2) 国土交通省:ホームページ ITS スポットサービス,

http://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-

html/spot_dsrc/index.html(アクセス:2013年7月 13 日).

3) 森田綽之,安井一彦,大谷修,佐藤亨貴:高速道路 における工事区間長と交通容量の関係,平成14年度 日本大学理工学部交通土木工学科 卒業論文概要集,

pp.87-88

4) 飯田克弘,東佳史:工事規制区間におけるラバーコ ーン配置が車両挙動に及ぼす影響の分析,高速道路 と自動車 第52巻 第5号 2009年5月

(2013. 7. 30 受付) 図-9  渋滞原因別渋滞通過延長と遅延時間

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 5 10 15 20 25 30 35 40

遅延時間

(分)

渋滞 通過延長

(km)

現在の算出

(渋滞時20km/h)

事故渋滞

工事渋滞 交通集中渋滞

参照

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