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名古屋学芸大学短期大学部研究紀要第 10 号 2013 : 論文 * 聾学校生徒を対象としたアンケート調査 日本の聾学校間の比較 A Survey through a Questionnaire for the Students at Schools for the Deaf A Com

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Academic year: 2021

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聾学校生徒を対象としたアンケート調査

―日本の聾学校間の比較―

A Survey through a Questionnaire for the Students at Schools for the Deaf

― A Comparison of Schools in Japan ―

鈴 木   薫

**

SUZUKI Kaoru

Abstract

The purpose of the research is to reanalyze the data collected by Suzuki and Baba (2006) to clarify the status quo of the schools for the deaf in Japan. 183 students of 5 schools were asked to answer the questionnaire concerning their disabilities, English education, the use of sign language, etc. They presented the data by simple totaling, therefore, in this research those data were analyzed by χ2 test to find out

differences among 5 schools. As a result, several features of each school were observed as for the use of sign language, the setting of sign language acquisition, the English skills taught in the classes, the disclosure of the information on their disabilities, etc.

1 .はじめに 聴覚障がい者たちの学びの場である聾学校という環境は、彼らに何らかの影響を与えるに違いな い。どの聾学校も学校生活におけるコミュニケーションモードのバランスを考慮していると思われ るが、教育目標や在籍している生徒たちの障がいの状況や考え方によって、手話と口話を使用する バランスが微妙に変化することもあるであろう。さらにコミュニケーションモードのバランスの微 妙な違いが授業の内容に影響を与えることも否めない。鈴木1 )の聴き取り調査では、聴覚障がい の生徒が使用する手話表現も言語の方言と同様に地域によって違うという情報を得ている。 聴覚障がい者を対象とした英語に関する実験調査などを行う前に、まず障がい者のおかれている 現状について明らかにすることが必要となる。鈴木・馬場2 )は障がい・英語・手話などに関連し た様々な質問をしたアンケート調査を実施しているが、データを単純集計した結果について報告す ることに留まり、詳細な分析は行っていない。本研究では、データをもう一度集計し直すことで、 学校間での相違を見出すことを試みる。 2 .目的 本研究は、鈴木・馬場2 )のデータを違った視点から集計し直し、さらなる分析を行うことで新 たな発見をすることが目的である。聾学校間での相違点に着目することで、聴覚障がい者について 一般化できることとそうでないことを明らかにし、聾学校の教育方針や聾学校という学習コミュニ

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ティが生徒たちに与える影響について明らかにすることを目的とする。 3 .方法 日本の聾学校 5 校の高等部と中学部の生徒183名を対象に実施したアンケート調査の結果を、聾 学校ごとに集計し、χ2検定で分析を行う。アンケート調査の質問項目は、以下の15項目である。 1 ) が学年と性別についての質問、 2 )~ 6 )が障がいについての質問、 7 )~15)が英語や手話に関す る質問となっている。 1 )学年・性別 2 )聴力 3 )聴覚障がいの種類 4 )失聴年齢 5 )失聴の原因 6 )聾教育相談の開始時期と期間 7 )英語に対する興味の度合い 8 )英語学習の必要性 9 )英語授業の内容 10)英語学習で必要と思うスキル 11)手話の利用の有無と手話の習得法 12)アメリカ手話に対する認識 13)英語の資格(例えば英検など)の有無と取得している資格 14)質問13)以外の取得したい英語の資格の有無とその種類 15)海外へ行きたいかどうかとその目的 聾学校ごとのデータ数は、以下の通りである。 A 聾学校:52人  B 聾学校:39人  C 聾学校:37人  D 聾学校:30人  E 聾学校:25人 4 .結果 学校ごとに集計した結果を円グラフで示し、χ2検定による分析結果にもとづいて、学校間の有 意差の有無についてそれぞれ質問項目ごとに報告する。 4 - 1  学年・性別 調査協力者の学年(図 1 )の割合は同じではないので、中学部と高等部の 2 つのカテゴリーにし て検証した。E 聾学校の高等部が有意に多く、E 聾学校の中学部が有意に少ない(χ2=9.391,df=4, p< .01)という結果が得られた。 性別(図 2 )については、有意差は検出されていない(χ2=2.188,df=4,ns)。 4 - 2  聴力 聴力データは個人の障がいの程度を示すものであり個人情報であるので、具体的な数値を提示す ることは控える。そのため無回答者の割合も多いことがわかる。聴力(図 3 )については、回答者

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数と無回答者数の間で検定を行った結果、左右の両方において D 聾学校の回答者数が有意に多く、 同時に無回答者数が有意に少なかった(右:χ2=14.763,df=4,p < .01、左:χ2=12.442,df=4,p < .05)。

図 1  学年

図 2  性別

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4 - 3  聴覚障がいの種類 聴覚障がいの種類(図 4 )についても前に取り上げた聴力と同様に、微妙な問題であるため無回 答者が多い。回答をした調査協力者のほとんどが、感音性難聴であることに注目したい。障がいの 種類についても回答者数と無回答者数の間の検定を行った結果、聴力と同様に D 聾学校の回答者 数が有意に多く、同時に無回答者数が有意に少なかった(χ2=14.861,df=4,p < .01)。有意差は検 出されていないが、B 聾学校の無回答者数が59%であることも注意したい。 図 4  聴覚障がいの種類 4 - 4  失聴年齢 失聴年齢(図 5 )については空欄に記入する方法で質問したので、様々な記述表現が得られた。 具体的な年齢以外に、「生まれたときから」・「生まれつき」・「生まれてから」など微妙な表現の違 いのある回答や「不明」という回答が多く記載されていた。「生まれたときから」と「生まれつき」 を出生時と判断し、「生まれてから」と「 0 歳」の回答は、出生時と出生後の両方の可能性を含む 表現であるため、検定する際に省くことにした。その結果、出生時と出生後というカテゴリー間で の検証では、有意な差は検出されなかった(χ2=6.855,df=4,ns)。 しかし、回答者数と無回答者数の間の検定により、A 聾学校の回答者数と B 聾学校の無回答者 数が有意に多く、A 聾学校の無回答者数と B 聾学校の回答者数が有意に少ないことが明らかとなっ た(χ2=11.283、df=4、p < .05)。 図 5  失聴年齢

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4 - 5  失聴の原因 失聴の原因(図 6 )についても空欄に記入する方法で質問したので、前述の失聴年齢と同じく様々 な表現となった。失聴の原因は先天性・妊娠中の母親の病気・出生後の病気などいろいろである。 この質問項目では「原因不明」の記載が多かったことや「無回答」も多いことにも注目するべきで あるので、「原因不明」や「無回答」の数と失聴原因の記載者数の間の検定を行った。B 聾学校の 無回答者数と、D 聾学校の「原因不明」回答者数が有意に多く、B 聾学校の「原因不明」回答者数 と D 聾学校の無回答者数が、有意に少なかった(χ2=29.223,df=8,p < .01)。 妊娠中の 母の病気 4% 高熱 8% 原因不明 29% 生まれつき 19% 無回答 36% 病気 2% 中耳炎 2% 無回答 76% 未熟児 3% 高熱 3% 原因不明 10% 妊娠中の 母の病気 8% 原因不明 40% 無回答 38% 妊娠中の 母の病気 5% 風邪の菌 が耳の鼓 膜に入っ たため 3% 生まれつ き 11% 鼓膜の内 側に水が 溜まった ため 3% 生まれつき 10% 妊娠中の 母の病気 13% 未熟児 3% 原因不明 57% 無回答 17% 原因不明 36% 無回答 44% 生まれつき 8% 高熱 4% 病気 4% 家族が怒 鳴って聞 こえなく なった 4% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図 6  失聴の原因 4 - 6  聾教育相談の開始時期と期間 聾教育相談の開始時期(図 7 )については、開始年齢を 0 ~ 1 歳・ 2 ~ 5 歳・ 6 歳以降との 3 つ のカテゴリーとし、「不明」を無回答のカテゴリーに入れ、「行っていない」との 5 つに分類し、聾 学校間での検定をした。その結果、A 聾学校の 0 ~ 1 歳・B 聾学校の無回答・D 聾学校の 6 歳以降 が有意に多く、B 聾学校の 0 ~ 1 歳と同じく B 聾学校の 2 ~ 5 歳が有意に少なかった(χ2=32.169 df=16,p < .01)。 0歳 8% 1歳 18% 2歳 10% 3歳 6% 2∼5歳 10% 無回答 34% 不明 8% 高校1年 2% 行って いない 4% 無回答 78% 不明 5% 2歳 3% 3歳 5% 2∼5歳 3% 行って いない 3% 1歳 3% 0歳 11% 1歳 8% 2歳 13% 3歳 11% 4歳 3% 無回答 40% 中学1年 3% 不明 8% 2∼5歳 3% 1歳 21% 2歳 20% 4歳 3% 6歳 3% 不明 34% 無回答 7% 3歳 3% 中学2年 3% 高校生に なってから 3% 行って いない 3% 0歳 4% 1歳12% 2歳 12% 3歳 20% 無回答 20% 不明 16% 4歳 4% 行って いない 4% 2∼5歳4% 中学1年 4% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図 7  聾教育相談の開始時期

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聾教育相談の期間(図 8 )については、 1 年未満・ 1 ~ 2 年・ 3 ~ 4 年・ 5 年以上・10年以 上の 5 つのカテゴリーに分類したが、有意な差は検出されなかった(χ2=18.828,df=16,ns)。次 に、聾教育相談期間を回答した者・「不明」と回答した者・無回答者との 3 つのカテゴリーに分類 して検定を行った。その結果、B 聾学校の無回答者と D 聾学校の聾教育相談期間を回答した者が 有意に多く、B 聾学校の「不明」と回答した者が有意に少なかった(χ2=15.649,df=8,p < .05)。 図 8  聾教育相談の期間 2年間 4% 不明 25% 無回答 55% 1年間 4% 16年間 2% 12年間 4% 3年間 2% 1年間半 2% 4年間 2% 不明 19% 無回答 64% 3ヶ月 3% 2ヶ月 3% 2年間 3% 1年間 3% 16年間 5% 2ヶ月 4% 不明 32% 無回答 56% 1年間 4% 1年間半 4% 4年間 3% 不明 4% 6年間 3% 12年間 3% 3年間 3% 無回答 84% 8年間 3% 不明 20% 無回答 51% 半年間 3% 1年間3% 4年間 7% 2年間 13% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 4 - 7  英語に対する興味の度合い 英語に対する興味(図 9 )についての質問では、「ある」・「少しある」・「普通」・「あまりない」・ 「ない」・「無回答」の 6 つに関して、有意な差は検出されていない(χ2=17.973,df=20,ns)。 ある 19% 少しある 21% 普通 37% あまり ない 8% ない 13% 無回答 2% ある 13% 少しある 21% 普通 40% あまり ない 13% ない 8% 無回答 5% ある8% 少しある 16% 普通 33% あまりない 19% ない 19% 無回答 5% ある 34% 少しある 23% 普通 23% あまり ない 7% ない 13% 無回答0% ある20% 少しある 12% 普通 32% あまり ない 16% ない 12% 無回答 8% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図 9  英語に対する興味の度合い 4 - 8  英語学習の必要性 英語学習の必要性(図10)に関しては、「ある」・「少し必要」・「普通」・「あまり必要ない」・「必 要ない」・「無回答」の 6 つに関して、有意な差は検出されていない(χ2=20.239,df=20,ns)。 4 - 9  英語授業の内容 英語の授業の内容(図11)について、「リーディング」・「ライティング」・「文法」・「リスニング」・ 「スピーキング」・「その他」に関する検定をした。B 聾学校の「ライティング」と E 聾学校の「そ の他」が有意に多く、A 聾学校の「ライティング」が有意に少ないことが検出された(χ2=45.116, df=20,p < .01)。E 聾学校の「その他」については、「ゲーム」・「単語を覚えること」・「オーラル コミュニケーション」の記載があった。

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4 -10 英語学習で必要と思うスキル 英語を学ぶ上で必要と思うスキル(図12)は、「単語力」・「文法力」・「リーディング能力」・「ラ イティング能力」・「リスニング能力」・「スピーキング能力」・「その他」について検定を行った結果、 A 聾学校の「リーディング能力」と B 聾学校の「ライティング能力」と E 聾学校の「その他」が 有意に多かった。E 聾学校の「その他」は「ゲーム」・「手話」・「国語力」と記載されていた。さら に、A 聾学校が「ライティング能力」と回答した者が全くいなかったことが、有意に少ないと判 定された(χ2=46.590,df=24,p < .01)。 4 -11 手話の利用の有無と手話の習得法 日常での手話の使用(図13)について、「はい」と「いいえ」について検定を行った。A 聾学校の「は い」と D 聾学校の「いいえ」が有意に多く、A 聾学校の「いいえ」と D 聾学校の「はい」が有意 に少なかった(χ2=18.432,df=4,p < .01)。すべての聾学校で手話の利用者の割合が大きいにも関 わらず、A 聾学校と D 聾学校は、他の 3 校に比べて有意な差があることを示している。 ある 25% 少し必要 19% 普通 29% あまり 必要ない 15% ない 6% 無回答 6% ある 18% 少し必要 23% 普通 31% 無回答 10% ない 8% あまり 必要ない 10% ある 21% 少し必要 8% 普通 40% あまり 必要ない 14% ない 3% 無回答 14% ある 27% 少し必要 36% 普通 10% ない 10% 無回答 7% あまり 必要ない 10% ある 20% 少し必要 20% 普通 28% あまり 必要ない 4% ない 12% 無回答 16% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図10 英語学習の必要性 リーディング 29% ライティング 2% 文法 36% リスニング 7% スピーキング 17% その他 4% 無回答5% リーディング 22% ライティング 20% 文法 26% リスニング 7% スピーキング 21% その他 1% 無回答 3% リーディング 22% ライティング 21% 文法 28% リスニング 6% スピーキング 13% 無回答 10% リーディング 29% ライティング 17% 文法 24% リスニング 8% スピーキング 21% その他 1% リーディング 23% ライティング 16% 文法 38% 無回答 5% その他 9% リスニング 2% スピーキング 7% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図11 英語授業の内容

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に」・「無回答」の 6 つのカテゴリー間で検定をした。B 聾学校の「幼稚園」は「学校」のカテゴリー として扱った。検定の結果、A 聾学校の「自然に」・B 聾学校の「手話サークル」・C 聾学校の「学 校」・D 聾学校の「無回答」が有意に多かった(χ2=41.138,df=20,p < .01)。 図12 英語学習で必要と思うスキル 単語力 25% 文法力 25% リーディ ング能力 26% その他 2% スピーキ ング能力 10% リスニン グ能力 7% 無回答 5% 単語力23% 文法力 17% リーディ ング能力 16% ライティン グ能力 17% リスニン グ能力 6% スピーキ ング能力 17% その他 2% 無回答 2% 単語力 31% 文法力 20% リーディ ング能力 13% ライティン グ能力 13% リスニン グ能力 5% スピーキ ング能力 12% その他 1% 無回答5% 単語力 27% 文法力 17% リーディ ング能力 13% ライティン グ能力 12% リスニン グ能力 9% スピーキ ング能力 18% その他 1% 無回答 3% 単語力 24% 文法力 30% ライティ ング能力 12% リスニン グ能力 2% 無回答 8% その他 6% スピーキ ング能力 8% リーディ ング能力 10% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図13 手話の利用の有無 はい 96% 無回答 2% いいえ 2% はい 92% 無回答 3% いいえ 5% はい 83% いいえ 14% 無回答 3% はい 70% いいえ 30% はい 72% いいえ 24% 無回答 4% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図14 手話の習得法 学校 37% 家族 14% 自然に 17% 友達 7% 手話 サークル 3% 手話の本 3% 無回答 19% 学校 37% 無回答 46% 手話の本 7% 手話 サークル 7% 複数機関 3% 手話 サークル 3% 自然に 5% 友達 5% 学校 63% 家族 3% 無回答 21% 学校 40% 家族 7% 友達 7% 自然に 17% 手話 サークル 3% 手話の 本 3% 無回答 23% 学校 21% 家族 15% 自然に 6% 幼稚園 24% 手話の本 2% 手話 サークル 15% 友達 2% 無回答 15% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校

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4 -12 アメリカ手話に対する認識 アメリカ手話(図15)を知っているかどうかについて、「はい」と「いいえ」で検定をした結果、 D 聾学校の「いいえ」と E 聾学校の「はい」が有意に多く、D 聾学校の「はい」と E 聾学校の「い いえ」が有意に少なかった(χ2=18.043,df=4,p < .01)。 はい 58% いいえ 38% 無回答 4% はい 49% いいえ 46% 無回答 5% はい 65% いいえ 32% 無回答 3% はい 27% いいえ 73% はい 76% いいえ 20% 無回答 4% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図15 アメリカ手話に対する認識 4 -13 英語の資格(例えば英検など)の有無と取得している資格 英語の資格を取得しているかどうか(図16)について、「はい」と「いいえ」で検定をした結果、 有意な差は検出されなかった(χ2=5.132,df=4,ns)。さらに、取得している資格(図17)について 「英検準 2 級」・「英検 3 級」・「英検 4 級」・「英検 5 級」の割合における有意な差も検出されていな い(χ2=14.801,df=12,ns)。 はい 35% いいえ 63% 無回答 2% はい26% いいえ 71% 無回答 3% はい 38% いいえ 59% 無回答 3% はい 17% いいえ 83% はい 24% いいえ 72% 無回答 4% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図16 英語の資格の有無

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4 -14 取得したい英語の資格の有無とその種類 現在取得している英語の資格以外で取得したいと思っている資格(図18)については、取得し たいと思うかどうかについては、「はい」と「いいえ」での有意差はなかった(χ2=12.650,df=8, ns)。また、取得したいと思っている英語の資格の種類(図19)についても、「英検 1 級」・「英検 2 級」・「英検準 2 級」・「英検 3 級」・「英検 4 級」・「英検 5 級」・「その他」のカテゴリーにして検定を 行ったが、有意な差は検出されていない(χ2=21.909,df=24,ns)。 図17 取得している資格 英検 5級 32% 4級 42% 3級 26% 英検 5級37% 4級 18% 3級 9% 準2級 9% 無回答 27% 英検 5級 38% 4級 31% 無回答 6% 英検 6% 3級 19% 英検 5級 80% 英検 20% 英検 5級 25% 4級 13% 3級 25% 無回答 37% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図18 取得したい英語の資格の有無 はい 45% いいえ 39% 無回答 16% はい 46% いいえ 49% 無回答 5% はい32% いいえ 60% 無回答 8% はい 33% いいえ 67% はい 40% いいえ 52% 無回答 8% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図19 取得したい英語の資格の種類 英検5級 23% 英検4級 9% 英検3級 23% 英検 5% その他 26% 英検準2級 5% 英検1級 9% 英検5級 18% 英検4級 18% 英検3級 22% その他 23% 英検 9% 英検 準2級 5% 英検2級 5% 英検5級 20% 英検4級 20% 英検3級 10% 英検1級 10% その他 30% 英検準2級 10% 英検5級 46% 英検4級 9% 英検3級 9% 英検 18% その他 18% 英検4級 9% 英検3級 28% 英検準2級 9% 英検2級 18% TOEFL 18% TOEIC 9% その他 9% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校

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4 -15 海外へ行きたいかどうかとその目的

海外に行きたいかどうか(図20)については、「はい」と「いいえ」で有意な差は検出されてい ない(χ2=5.368,df=4,ns)。海外へ行く目的(図21)については、C 聾学校の「観光」・D 聾学校の「無

回答」・E 聾学校の「勉強」と「無回答」が有意に多く、A 聾学校の「無回答」・E 聾学校の「観光」 が有意に少ないという結果となった(χ2=38.625,df=16,p < .01)。 はい 80% いいえ 12% 無回答 8% はい 87% いいえ 13% はい 86% いいえ 14% はい 70% いいえ 30% はい 76% いいえ 20% 無回答 4% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図20 海外へ行きたいかどうか 観光 55% 勉強 21% 仕事 12% その他 12% 観光 69% 仕事 5% 無回答 3% その他 8% 勉強 15% 観光 72% 勉強 14% 仕事 7% 無回答 2% その他 5% 観光 45% 勉強 23% 仕事 9% その他 3% 無回答 20% 観光 34% 勉強 33% 仕事 3% その他 12% 無回答 18% A聾学校 B聾学校 C聾学校 D聾学校 E聾学校 図21 海外へ行く目的 5 .考察 調査協力者となっている中学部と高等部の生徒の割合について、E 聾学校の高等部が有意に多 かったことが他の質問項目に影響を与えるかどうかを後で検討したい。性別については有意差が検 出されていないので、今回の調査では特に問題として取り上げない。 先にも述べたが、聴力データについては、個々の障がいの程度について触れることを控える。本 研究は、聾学校間の比較を目的としているが、無回答者の割合が多いので大量観察として有効な データとならなかった。したがって、結果にも示したが、聴力については、回答者数と無回答者数 の間で検定を行っている。左右の両方において D 聾学校の回答者数が多いことが判明した。

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た。D 聾学校は障がいに関する個人情報に対してオープンであることを意味する。B 聾学校の無回 答者数が59%であったことから、D 聾学校と B 聾学校とは情報公開についてのスタンスがかなり 違う傾向があると解釈できるであろう。障がいの種類についての回答は、すべての聾学校において 感音性難聴が多くを占めていることから、どの聾学校も感音声難聴の生徒がほとんどであると判断 できる。 失聴年齢については、出生時と出生後というカテゴリーでは、聾学校間での違いは無かったが、 やはり回答者数と無回答者数において B 聾学校の無回答者数が多かった。失聴の原因についても B 聾学校の無回答者数は多いと判定されている。B 聾学校の無回答数が多いことは、聾教育相談開 始年齢や聾教育相談期間でも検出されているので、障がいについての情報を積極的に公開しない生 徒が他の聾学校よりも多い傾向がみられる。 失聴年齢は、A 聾学校において記載者数が多かったが、聾教育相談期間の回答者数は D 聾学校 が多く、先に述べた聴力や障がいの種類についても D 聾学校は多かったことから、 D 聾学校は障 がいについての情報提供に対する抵抗があまり強くない傾向があると解釈できる。 聾教育相談の開始年齢は、A 聾学校の 0 ~ 1 歳・D 聾学校の 6 歳以降が多かったことから、開 始年齢の相違の背景にはいろいろな要因が考えられる。障がいの程度や種類や失調年齢以外に聾教 育相談の施設なども関連するため、さらなる実態調査を実施し、データをより詳細に分析する必要 があるので、この点については継続研究によって解明したい。 これまでは障がいに関する情報について考察してきたが、次に英語や手話に関するデータについ て検討する。 英語に対する興味の度合いや英語学習の必要性については、聾学校間での違いは無かったので、 一般的な傾向のあるデータと考えられる。 次に、英語の授業の内容と英語を学ぶ上で必要なことに関する質問について検討する。授業で学 習していることは、どの学校でも文法が一番多い。 A 聾学校は、授業の内容で「ライティング」が少なかった上に、生徒が必要だと思うスキルで「ラ イティング能力」と回答した者がいなかったことから、「ライティング」の指導が不足している様 子がわかる。 それとは逆に、B 聾学校では授業の内容で「ライティング」が多く、英語を学ぶ上で必要なこと は「ライティング能力」と回答するものが多いことから、他の聾学校に比べて「ライティング」を 強化している様子がわかる。 E 聾学校は、授業の内容について「その他」が多く、英語を学ぶ上で必要なことも E 聾学校の「そ の他」が多かった。それぞれに「ゲーム」・「手話」などの記載が含まれていることから、E 聾学校 の教育がユニークであることを示している。 次に手話に関する質問項目について考察する。 日常での手話の使用について、すべての聾学校で手話の利用者の割合が大きい。しかし、他の 3 校に比べて A 聾学校では手話の使用が多く D 聾学校では少ないという検定結果が、手話利用に関 する微妙な違いを示している。手話をどこで習ったかについては、A 聾学校は「自然に」がより 多く D 聾学校は「無回答」がより多かったことを考えると、A 聾学校では生徒たちが積極的に手 話を利用しているので、自然に手話を身につけている様子を伺うことができ、D 聾学校の生徒た ちは他の 4 校に比べて、手話に対する関心が若干低いと解釈できる。このことは、本研究の冒頭で 述べたコミュニケーションモードのバランスの微妙な違いを表している。C 聾学校の「学校」がよ り多いことは、 C 聾学校ではほとんどの生徒が学校生活の中で手話を習得していることを示してい る。B 聾学校の「手話サークル」がより多いことは、手話を学ぶことができる機会が一番多いのは 学校生活であるけれども、手話サークルの活動も積極的に行われていることを表している。

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アメリカ手話を知っているかどうかについて、D 聾学校の「いいえ」がより多いのは、先に述べ た手話に対する関心が若干少ないことと関連付けることができる。E 聾学校の「はい」がより多い ことは、英語の指導がユニークであることに関連していて、アメリカ手話と出会う場面があること を意味している。E 聾学校は北米の聾学校と姉妹提携をしているので、国際交流活動で海外研修に 参加する機会を得る生徒がいることが影響していると推測できる。 英語の資格については、すべての質問項目において有意な差が検出されていないことから、これ らに関しては、聾学校ごとに違いのない一般的な傾向であることを示している。 海外に行きたいかどうかについては、有意な差は検出されていないので、海外に関心のある生徒 が 7-8 割という傾向は共通している。海外へ行く目的で、C 聾学校の「観光」・D 聾学校の「無回 答」・E 聾学校の「勉強」と「無回答」が有意に多かったことや、A 聾学校の「無回答」・E 聾学校 の「観光」が有意に少ないという結果については、E 聾学校の生徒たちの留学に対する関心の強さ に注意したい。 以上それぞれの質問項目の流れに沿って考察してきたが、最初に触れた調査協力者の中学部と高 等部の生徒の割合の影響があるとすれば、E 聾学校の生徒たちの留学に対する関心の強さである。 高等部の生徒の割合が多いので、自立心の強さから海外での勉強と回答する者が多かったのかもし れない。しかし、E 聾学校については、学年の割合ではなく、北米に交流校があることも原因とし て考えられる。ゆえに、クロス集計などにより、海外へ行く目的と学年との間での検証をする必要 があるため、今後の研究によって明らかにしたい。 6 .結論 今回の調査で明らかになった聾学校ごとの大まかな特徴をまとめてみる。 A 聾学校は、手話の利用が多く、生徒たちは自然に手話を身につけている。しかし、「ライティ ング」の指導が不足している。 B 聾学校は障がいについての情報について積極的に公開しない生徒の数がより多い傾向があり、 授業の内容では、他の聾学校に比べて「ライティング」が強化されている。さらに手話サークルの 活動も積極的に行われている。 C 聾学校ではほとんどの生徒が学校で手話を習得している。海外へ行く目的は「観光」が多い。 D 聾学校は障がいについての情報提供に対する抵抗が他の聾学校よりも強くなく、手話に対する 関心が若干少ない。 E 聾学校は授業の内容や英語を学ぶ上で必要なことに「ゲーム」や「手話」が含まれていたこと から、他の聾学校とは違うユニークな手法が取り入れられている様子がわかる。英語圏に交流校が あり、アメリカ手話を学ぶ機会がある。留学に関心を持つ生徒が多い。 以上のようにそれぞれの聾学校には特色があり、授業の内容や教育活動が生徒たちの学習に対す る考え方に影響を与えていることが明らかとなった。 さらに、英語に対する興味の度合い・英語学習の必要性・英語の資格に関わることについては聾 学校ごとの違いはなく、一般的な傾向があることが判明した。これらは全て生徒の自発的な問題意 識や学習の目標設定に関することであるということに注目したい。 本研究では、聾学校の教育方針や学習コミュティが与える影響と、聾学校という枠組みを越えて 共通している学習者の意識について検証を行ったが、今後さらにデータを増やすことによって、こ れらの検証結果に違いを見出すこともありうる。また、継続的調査を必要とする問題もいくつか見 つかっているので、今後の研究によって明らかにしていきたい。

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引用文献 1 ) 鈴木薫:聾学校教員を対象とした英語教育に関する聴き取り調査,平成16年度~平成17年度科学研究費補助金 基盤研究 C 研究成果報告書16520370, 聴覚障害学生の音声分析と体感音響システムを活用した ASL の習得に 関しての研究, 1-16,2006. 2 ) 鈴木薫・馬場景子:聾学校生徒を対象としたアンケート調査,平成16年度~平成17年度科学研究費補助金 基盤 研究 C 研究成果報告書16520370, 聴覚障害学生の音声分析と体感音響システムを活用した ASL の習得に関し ての研究,31-46,2006. 参考文献 石部元雄,杉本雄次 :障害学入門,福村出版社,1998. 小浜明,宮本友弘:簡単にできるスポーツ・健康データの有意差検定と活用,学事出版,2006. 小川克正,藤本文朗:障害児教育学の現状・課題・将来,培風館,1996. 芝祐順,渡部洋,石塚智一:統計用語辞典,新曜社,1984. 住田幸次郎:初歩の心理・教育統計法,ナカニシヤ出版,1988.

Strong, M.: Language Learning and Deafness. Cambridge University Press, 1988.

* 本研究は、平成16-17年度科学研究費補助金(基盤研究 C・16520370・「聴覚障害学生の音声分析と体感音響シス テムを活用した ASL の習得に関しての研究」)、及び、平成22-24年度科学研究費補助金(基盤研究 C・22520606・「聴 覚障害者の英語音声習得における骨伝導スピーカーの活用」)を利用した研究である。

* 本稿は、日本英語音声学会関東支部第12回研究大会(2012年10月29日)における研究発表「聴覚障がい者を対象 とした英語学習に関するアンケート分析 ―聾学校間の比較―」の内容の一部に、加筆・修正した研究論文である。

図 1  学年

参照

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