Japan Advanced Institute of Science and Technology
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Title
離島振興におけるエコツーリズム : 島の未来をエコツ
ーリズムは担うのか
Author(s)
敷田, 麻実
Citation
観光, 482: 15-18
Issue Date
2006-11-20
Type
Article
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/10119/17266
Rights
本著作物は日本観光協会(2011年日本観光振興協会に
改称)の許可のもとに掲載するものです。Copyright
(C) 2006 日本観光協会. 敷田麻実, 観光, 482, 2006,
pp.15-18.
Description
特集 島の観光を考える
敷田麻実
金沢工業大学教授 し き だ あ さ み ワードです。そこで、離島におけ るエコツーリズムの可能性と問題 点について考えてみたいと思いま す。エコツーリズ
ムとは何か
エ
コ ツ ー リ ズ ム に 特 に 関 心 が な い 人 で も、 ﹁ エ コ ﹂ が つ い ているのでおそらく想像はつくで しょう。エコツーリズムを一言で 言 え ば 、﹁ 与 え る 負 荷 を 最 小 限 に 抑えながら自然環境を体験し、観 光の目的地である地元に対して何 ら か の 利 益 や 貢 献 の あ る 観 光 ﹂ で す。自然環境だけではなく、時に は 文 化 遺 産 も 観 光 対 象 に な り ま す 。 世 界 的 に は 1 9 8 0 年 代 後 半 か ら 、 日本でも 1990 年代後半から注 目を浴び、 最近では環境省から ﹁エ コ ツ ー リ ズ ム 憲 章 ﹂ も 出 さ れ て い ます。 し ゃ れ た 響 き の ﹁ エ コ ツ ー リ ズ ム ﹂ と い う 言 葉 を 使 う 時、 人 は 暗 に、 自 分 が ﹁ 自 然 環 境 保 全 の 理 解 者 ﹂ だ と い う メ ッ セ ー ジ を 込 め ま す。だからこの言葉に異を唱える ことは難しいのです。また、エコ ツ ー リ ズ ム は﹁ 観 光 ﹂だ と 認 識 す る ことも重要なポイントです。この 場合の観光とは、宿泊を伴う旅行 で あ り 、 日 帰 り が 基 本 の レ ク リ エ ー シ ョ ン と は 区 別 し た い も の で す。 観光は日常生活圏外にある観光目 的地まで行って活動することであ り 、 観 光 客 は 何 ら か の﹁ 非 日 常 ﹂を 期待しています。 エ コ ツ ー リ ズ ム を﹁ 観 光 ﹂と 呼 ぶ と、エコツーリズムは自然環境保 全の手段だ、観光ではなく環境学 習プログラムだ、と自然環境保全 側 か ら 反 論 さ れ る こ と が あ り ま す 。 それはもっともな主張ですが、観 光客が観光地に来て、そこで観光 関係者が ﹁エンターテインメント﹂ の機会を提供している限りは、エ コツーリズムも自然環境を対象と す る 観 光 の ス タ イ ル の ひ と つ で す 。 もちろん従来型の観光との違い はあります。従来型観光では地域 振興と観光振興に焦点が当てられエ
コ ツ ー リ ズ ム。 こ の 言 葉 が 紹 介 さ れ て か ら 15年 ほ ど の 間、観光・地域振興・自然保護に かかわる関係者はずっとこの言葉 に魅了されてきました。 日本では先進地と言われている 西 表 島や屋久島では、エコツーリ ズ ム が﹁ エ コ ツ ア ー ﹂と し て 現 実 に なり、国内各地でも実践が始まっ ています。もはやエコツーリズム は、離島で観光による地域振興を 考える際に切り離せないマジック離島振興における
エコツーリズム
島の未来をエコツーリズムは担うのか
西表島船浦湾のエコツアーで休息するエコツーリスト観 光 0 6・ 1 2 がちでしたが、エコツーリズムで は、自然環境の保全と地域振興を 同時に進めながら、観光の振興も 図ることを目指します。それは上 図のように、自然環境保全と地域 振興、そして観光振興で示される 三 角 形 の バ ラ ン ス を と る こ と で す 。 ただし、どのように三角形のバラ ンスをとるかは、時と場合、地域 によって違いがあります。 またエコツアーとエコツーリズ ムの違いは、前者が個々のエコツ ア ー と い う﹁ 商 品 ﹂を 指 す の に 対 し 、 後 者 は そ れ を 支 え る﹁ 仕 組 み ﹂に よ っ て構成される考え方や実践を表し ているという点です。
離島観光における
エコツーリズ
ムの現状
国
内 6 8 0 0 あ ま り の 離 島 の 立 地 条 件 が 多 様 で あ る こ と を考えれ ば 、離島という前提で一 律に論ずることはできません。し かし、本土に比較して一般に開発 圧力が弱く、豊富な自然環境が残 さ れ た 離 島 は、 い わ ば ﹁ 残 さ れ た 楽 園 ﹂の イ メ ー ジ と と も に 、﹁ 手 付 か ず の 自 然 ﹂ を 求 め る エ コ ツ ー リ ストにとって格好のターゲットと なっています。 離島側にとっても、 地域資源を有効活用しながら地域 振興ができ、かつ環境保全可能と なれ ば 、エコツーリズムへの期待 が膨らむのも無理はありません。 エ コ ツ ー リ ズ ム の 事 例 と し て 、亜 熱帯林と周辺のサンゴ礁、またイ リ オ モ テ ヤ マ ネ コ と い う ﹁ ス タ ー 生 物 ﹂ を 擁 す る 沖 縄 の 西 表 島 を 挙 げることができます。人口約 23 00 人の西表島には、年間 35万人 の観光客が訪れます。地域外の資 本 に よ る 開 発 問 題 を 抱 え つ つ も、 カヤッキングやサンゴ礁域での ダ イビングで多くの観光客を呼び寄 せています。 ま た 東 京 都 の 小 笠 原 諸 島 で は 、 本 土から 1000 ㎞ 以上離れた亜熱 帯 の 立 地 を 生 か し て ホ エ ー ル ウ ォ ッ チングや島内のトレッキングが魅 力です。都は小笠原振興策のひと つ に エ コ ツ ー リ ズ ム を 位 置 づ け、 自然ガイド認定講習などエコツー リズムのための積極的な施策を進 めてきました。 さらに屋久島では、 1 9 9 3 年 の 世 界 自 然 遺 産 登 録 後 、 ﹁ 世 界 遺 産 の 島 ﹂の イ メ ー ジ と と も に﹁ 自 然 体 験 ツ ア ー ﹂が 拡 大 し ま し た 。 縄 文 杉 を 核 と し な が ら も 、 環 境 に や さ し い﹁ エ コ ﹂の イ メ ー ジ を 島全体で観光客に対して表現して います。 こ う し た、 も と も と 観 光 地 と し て知 名 度 の 高 い 、 い わ ば﹁ 主 流 ﹂と も言える離島以外でもエコツーリ ズムは広がっています。筆者の知 る島根県の隠岐の島の例では、地 域資源の再評価と学習活動に支え られた地道な取り組みが進められ ています。また長崎県の対馬や北 海道の礼文島をはじめ、離島振興 や離島観光の同義語のように、エ コ ツ ー リ ズ ム が 地 域 の テ ー マ に な っ ています。 このように従来型の観光地の離 島でも、 またそれ以外の離島でも、 エコツーリズムは確実に広がって います。 ここで重要なポイントは、 エコツーリズムという、海外で生 エコツーリズムの基本的性質を表す三角形のモデル 小笠原南島に上陸するエコツアー 西表島船浦湾のカヤックツアーま れ て 日 本 に 持 ち 込 ま れ た ﹁ 自 然 に 優 し い 観 光 ﹂ と い う イ メ ー ジ の エコツーリズムが、そのまま離島 で行われてはいないことです。実 際には、地域文化や多様な自然環 境の設定の差から、さまざまなタ イプのエコツーリズムが離島では 成立しています。 こうした離島独自のエコツーリ ズ ム を﹁ 本 来 の ﹂エ コ ツ ー リ ズ ム で はない、と批判することはたやす いでしょう。しかし、そもそも地 域の持つ固有の自然環境や文化を 観光資源にしている以上、原生自 然を 愛 で、極力影響を与えないと いう、欧米で生まれたエコツーリ ズムがそのまま成立するかどうか は疑わしいものです。特に離島で は、地域住民の生活と自然環境の 距離は近く、人と自然の関係性は 豊 か で す 。 そ の﹁ 島 暮 ら し ﹂こ そ 島 の重要な資産であり、維持する努 力 を 必 要 と し ま す。 そ の た め ﹁ 本 当 の ﹂ エ コ ツ ー リ ズ ム に こ だ わ る あまり、離島のエコツーリズムが その視点を失ってはなりません。
エコツーリズ
ムにより
離島観光は振興するか
さ
て、 エ コ ツ ー リ ズ ム で 離 島 振 興 が 実 現 す る か と い う 問 い に は、 批 判 を 承 知 で ﹁ 短 期 的 な 実 現 ﹂ な ら 可 能 と 回 答 で き ま す。 エ コ ツ ー リ ズ ム は、 運 輸・ 外 食・ 宿泊などかかわる地域関係者が多 い ﹁ 観 光 ﹂ で あ り、 域 内 の 産 業 連 関が強く、メリットを広く地域に 還元できる乗数効果の高い地域振 興 手 法 だ と 考 え ら れ る か ら で す。 エ コ ツ ー リ ズ ム で は 前 者 に 加 え、 自然解説ガイドや環境教育関係者 まで関与するので、効果はより大 きくなります。 しかし、資源や環境容量の限ら れた離島で地域振興という目標だ けを追求すれ ば 、たちまち持続可 能な観光ではなくなることは目に 見えています。逆に、離島の特性 や立地を考えるなら ば 、地域がエ コツーリズムをマネジメント可能 な 範 囲 で﹁ う ま く 使 う ﹂よ う な 、 持 続可能なエコツーリズムを実現し たいものです。 でも、自然環境を保全しながら 観光を振興し、さらに地域も豊か になるという、そんなことが本当 にエコツーリズムで可能でしょう か。仮に、観光や地域振興だけを 求 め、 自 然 環 境 保 全 を 忘 れ れ ば 、 エ コ ツ ー リ ズ ム の 理 想 か ら は 外 れ、持続可能な観光ではなくなり ます。 この点でエコツーリズムは、 飼い慣らされていない荒馬に乗る ようなものです。乗りこなせ ば 駿 馬となるでしょうが、馬の勢いに 負 け 落 馬 す れ ば 自 ら が 傷 つ き ま す。 一方、離島の貴重な自然環境に ま っ た く 手 を つ け ず に﹁ 保 護 ﹂す る ことも極端な選択です。島外の自 然 保 護 関 係 者 は、 ﹁ 自 然 保 護 意 識 が 高 い 島 だ ﹂ と そ れ を 歓 迎 す る か もしれませんが、一方的な保護は 採集や漁業なども含めた離島の歴 史的、民俗的な自然環境とのかか わりまで否定しがちです。 それは、 島 の 住 民 が﹁ 地 域 外 の 論 理 ﹂に 他 律 的に従うことであり、外部者によ る開発と本質的な差は少ないので す。 こうした保護か利用かという二 者択一の 隘 路 に、エコツーリズム は島の自然環境の利用と保全の両 立、 つまり ﹁持続可能な利用﹂ とい う新たな道を示しています。その ためには、地域が自律的に地域資 源 を 管 理 で き な け れ ば な り ま せ ん 。 小笠原のエコツアーの「シンボル」ザトウクジラのバイオロゴをバックに観 光 0 6・ 1 2 またそのメリットを最大化したい のであれ ば 、観光施策自体のマネ ジメントも必要です。