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Preparation of Alkyl Benzyl Ketone

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324 油 脂 化 学 協 会 誌

ア ル キ ル ・ベ ン ジ ル ケ

ト ン の 合 成

三 * ・木

忠 雄 *

Preparation of Alkyl Benzyl Ketone Teruzo Asahara, Tadao Kimura

1. 緒 言 フ ェニル 酢 酸 を過 剰 の酸 無 水 物 と ピ リジ ン の存 在 の も とに加 熱 す る とア ル キル ベ ン ジル ケ トン を生 成 す る こ と は,1928年 す で にH.D. Dakinら1)が 報告 してい る. しか し本 報 告 は 非 常 に簡 単 な もの で,ケ トン の性 状,収 率 等 の こまか い 記載 は ない 。 この報 告 以 来,比 較 的 多 く の 報文 が発 表 され,フ ェニル 酢 酸 お よび そ の誘 導 体 と酸 無水 物(脂 肪 酸 無水 物 で は プ ロ ピオ ン酸 の場 合 が 最 高 級 で あ る)と の反 応 が述 べ られ て きた2)。 わ れわ れ は フ ェニ ル酢 酸 お よび そ の誘 導 体 と各 種 脂 肪 酸 無水 物 と の反 応 を検 討 し,そ の 反応 機 構 に も触 れ る こ と と した。 元 来,フ ェニ ル酢 酸 と酸 無水 物 と を ピ リジ ン 等 の塩 基 触 媒 の存 在 下 で120°∼140℃ に加 熱 す る と,つ ぎ の よ うに反 応 す る。 (I) (II) す なわ ち ア ルキ ル ・ベ ン ジル ケ トン(I)と そ の エ ノ ー ル 型 の エ ス テル(II)が 生 成 す る。 これ らの(I)お よび(II)は 減 圧蒸 留 で容 易 に 分 離 す る ことが で き る。 しか も この エ ノー ル ・エ ス テル は アル カ リで加 水 分 解 す る と簡 単 に アル キ ル ・ベ ン ジル ケ トン にな る。 ケ ト ン (I)は セ ミカル バ ゾ ンを形 成 させ て そ の 存在 を確 認 し た 。 エ ノ ール ・エ ス テ ル(II)は 元 素 分析 お よび赤 外 線 吸 収 ス ペ ク トル に よつ てそ の確 認 を 行 つ た 。 さ らに フ ェニ ル 酢酸,無 水 フ ェニ ル酢 酸,フ ェ ニル酢 酸 塩化 物,p-ニ トロ ・フ ェニ ル酢 酸 と酸 無 水 物 と の反 応 を検 討 した 。 と くに 酸 無水 物 と しては,無 水 カ プ ロ ン酸 無 水 カプ リル 酸 等 の 比 較 的 高 級 な も のに つ い て もそ の反 応 を検 討 した 。 酸 無 水 物 と して は,酪 酸 無水 物程 度 まで は,ア ル キル ・ベ ン ジル ケ トン を生 成 す るが,カ プ ロ ン 酸 以上 の高 級 の もの に な る と,目 的 とす るケ トンを 生成 せ ず,ジ フ ェ ニル ・アセ トンの みを 生 成 した。 2. 実 験 1) フ ェニ ル 酢 酸 と脂 肪 酸 無 水 物 との 反 応 実 験 に使 用 した フ ェニ ル酢 酸 は市 販 品 を 精 留 し,bp 143℃/11mmHgの 留 分 を とつた 。 供 試脂 肪 酸 無水 物 は, 酸 塩 化 物 と無 水 酢 酸 と の反 応 に よるSonntag3)の 方 法 に よつ て合 成 した 。 そ の 収 率 は それ ぞ れ 約90%で あつ た 。 この酸 無水 物 は 濃 ア ンモ ニ ア水 と反 応 して 容 易 に酸 ア ミ ドを形 成 す る。 表-1に 供 試酸 無 水 物 の沸 点 お よび そ の酸 ア ミ ドの融 点 を示 す 。 アル キ ル ・ベ ン ジル ケ トンの合 成 はつ ぎ の よ うに した 。 フ ェニル 酢 酸0.05mole,ピ コ リン(β-,γ-ピ コ リンの 混 合 物)0.25mole,酸 無 水 物0.2∼0.5moleを 三 つ 口 フ ラス コに と り,窒 素 ガ ス を通 じ なが ら120°∼150℃ に

東京大学生産技術研究所(千

葉市彌生町)

Institute of Industrial Science, University of Tokyo.

(2)

第 4 巻 第 6 号 (1955) 325 表-1 加 熱 す る。 無 水酢 酸 の場 合 は120℃,炭 素 数 が増 加 す る と共 に 反 応 温 度 を上 昇 させ,無 水 カ プ ロ ン酸,無 水 カ プ リル 酸 の場 合 は150℃ 付 近 で反 応 させ た 。加 熱 と共 に炭 酸 ガ ス を放 出 しな が ら反 応 は 進 行 した 。 この炭 酸 ガ ス の 発 生 状 況 を 見 な が ら反 応 時 間を 調 節 した 。無 水 酢 酸 の場 合 は6∼8時 間,炭 素数 が増 加 す る とや や 反 応 時 間 も長 くな り,無 水 カ プ ロ ン酸,無 水 カ プ リル 酸 の 場 合 は10∼ 12時 間 を要 した 。 炭酸 ガ ス は ナ トロ ン アス ベ ス トに 吸収 さ せ,そ の重 量 の変 化 を 測 定 した 。 ナ トロ ン アス ベ ス ト と して は,水 酸 化 カ リウ ム200gを200ccの 水 に溶 解 し,こ れ に粉 末 状 の水 酸 化 ナ トリウ ム400gを 加 え,よ く混 和 して後 細 片 状 アス ベ ス トを少 量 ず つ よ くか き まぜ な が ら加 え,全 体 を 固 く練 り上 げ,乾 燥 後 細 片 と した も の を 使 用 した 。市 販 の アス カ ライ ト(Ascarite)の 製法 とや や 異 な るが,便 宜 上 これ を使 用 した 。 反 応 後 ピ リジ ン,脂 肪 酸,無 水 脂 肪 酸 等 を 回 収 し,最 後 に アル キ ル ・ ベ ン ジル ケ トン,エ ノー ル 型 エ ス テル を蒸 留 した 。 これ らは 明 瞭 に 分離 す る こ とが で き た。 (a) エ ノー ル型 エ ス テル の 確認 無水 酢 酸 とフ ェ ニル 酢 酸 との反 応 を行 うと (CH3CO)2O+C6H5・CH2・COOH→ C6H5CH2・CO・CH3+C6H5CH=C(CH3)・OCOCH3 (I) (II) の よ うに な り,(II)の よ うな エ ノ ール 型 エス テ ル が 生成 す る。 この も のの沸 点 は67°∼69℃/1mmHgで,ケ トン の沸 点60° ∼62℃/1mmHgと 明 らか に異 な る。 この も の の 元 素 分析 を行 つ て 見 る と,C:74.89%,H:6.85% で あつ て,理 論 値 のC:75.01%,H:6.87%と きわ め て よ く一 致 す る。 さ らに この もの の赤 外 線 吸収 ス ペ ク トル を うつ して見 た(図-1)。 も し(II)の よ うな構 造 を もつ な らオ レ フ ィ ン,エ ス テル に対 応 した 吸 収 を示 す 筈 で あ る。 オ レ フ ィ ンのC=Cの 吸 収 は6.17μ,5.95μ で あ り,エ ス テ ル のC=Oの 吸 収 は5.71μ で あ る。 も しケ トン の構 造 を と るな ら,そ の特 徴 あ る 吸収 が5.85μ の付 近 に 現 わ れ る ことに な る。 しか るに エ ノ ール 型 エ ス テ ル と思 わ れ る部 分 の吸 収 は 5.69μ(エ ス テル のC=Oに 対 応),5.97μ(オ レ フ ィ ン C=Cに 対 応)に 現 わ れ て くる。 これ よ り見 て この 留 分 は エ ノー ル 型 エ ス テル と考 え て矛 盾 は ない 。 他 の脂 肪酸 無 水 物 の とき に も同 様 に確 認 で きた 。 (b) ア ル キ ル ・ベ ン ジル ケ トン ケ トンの確 認 は セ ミ カル バ ジ ド,2,4-ジ ニ トロ ・フ ェ ニル ヒ ドラ ジ ンに よる常 法 に した がつ て行 つ た 。 そ の うち と くに セ ミカル バ ゾ 図-1 エ ノ ー ル 型 エ ス テ ル の 赤 外 線 吸 収 ス ペ ク トル ンに つい て よ く検討 した 。セ ミカル バ ゾ ンはZelinskyの 方 法 に よ り生 成 させ た 。 す なわ ち塩 酸 セ ミカ ルバ ジ ド, 酢 酸 カ リウ ム,水 の1:1:3の 混 液 中 に 少量 の試 料 を 加 え,ア ル コール を 添 加 す る と白色 の沈 殿 が生 成 した 。 生成 直 後 十 分 水 洗 した もの,お よ び これ を水-ア ル コー ル で2回 再結 晶 した も のの 融 点 は表-2の よ うで あ る。 表-2 この 際文 献 値(2種 の値 の記 載 が あ る)と 大 きな 差異 が あ るの で丹 念 に検 討 し た 所,水-ア ル コー ル で再 結 晶 後 は顕 著 な融 点 の低 下 を 示 し,第2の 文献 値 と近 い 値 を 示 した。 これ は アル キ ル ・ベ ンジ ルケ トンを溶 剤 中 で 再 結 晶 した 際,そ の結 晶 構 造 に変 化 を生 じた の では な い か と思 わ れ るが,こ の点 に つ い て は な お検 討 中 で あ る。 ま た前 述 の よ うに エ ノール 型 エ ス テル は,加 水 分 解 す る と容 易 に ケ ト型 の アル キ ル ・ベ ンジル ケ トンに変 化 し, そ の セ ミカル バ ゾ ンは ケ トンのそ れ と よ く一 致 した 。 (C) 各 種 アル キ ル ・ベ ンジル ケ トンの合 成 C2∼C8の 脂 肪 酸 の無 水 物 と フ ェニル 酢 酸 との反 応 に よ る アル キ ル ・ベ ン ジル ケ トン生 成 の状 態 を 観察 した 。 炭 酸 ガ ス の発 生 量 を 測 定 した と ころ,脂 肪 酸 無 水 物 の 炭 素数 が大 き くな るに つ れ て反 応 速 度 は や や低 下 す る。 しか しそ の収 率 はC2∼C4で は ほ とん ど大 差 が ない 。 しか るに 無 水 カ プ ロ ン酸,無 水 カ プ リル酸 を反 応 させ る と,目 的 とす る アル キ ル ・ベ ン ジル ケ トンは得 られず ジ フ ェニ ル ア セ トンの み が生 成 した 。 これ らの結 果 を ま とめ る と表-3の よ うに な る。 33

(3)

326 油 脂 化 学 協 会 誌 表-3 (* は理 論 値 を 示 す) 表-4 2) フ ェニル 酢 酸 お よび そ の誘 導 体 と酸 無 水物,酸 塩 化 物 との 反 応 フ ェニ ル酢 酸 のか わ りに 無水 フ ェニル 酢 酸,フ ェニル 酢 酸塩 化 物,p-ニ トロ ・フ ェニ ル酢 酸 を用 い,酸 無 水 物,酸 塩 化 物 と反 応 させ て も同様 に して 対応 す る ケ トン が 得 られ る。 無 水 フ ェニ ル酢 酸,フ ェ ニル酢 酸 塩 化 物 を 用 い る と反 応 速 度 は 増 加 す る が,収 量 に は ほ とん ど差 異 を 認 め なか つ た 。 そ の 結 果 を示 す と表-4の よ うに な る。 3. 考 察 フ ェニル 酢 酸 と酸 無水 物 との反 応 に よ るア ル キル ・ベ ン ジル ケ トンの 生成 機 構 と しては 従 来 種 々 の提 案 が な さ れ て い るが,King, McMillan2)の 考 え 方 は最 も妥 当で は ない か と考 え られ る。 こ の際,フ ェニ ル酢 酸,フ ェニ ル酢 酸 塩 化 物,脂 肪 酸塩 化 物 等 は す べ て 酸 無水 物 の形 を 経 て反 応 す る もの と考 え て い る。 これ を一 般 式 で表 わ す とつ ぎ の よ うで あ る。 た だ しArはC6H5お よび そ の誘 導体, Bは ピ リジ ン等 の塩 基 性 触 媒, R1,R2,R3,R4はH,CH3,C2H5,C3H7,C6H5, C6H5CH2等 で あ る。 無 水 フ ェニル 酢 酸 と無水 酢 酸 の場 合 は も ち ろ んR1= H1,R2=C6H5CH2,R3=R4=CH3で あ る。 この 際Bと い う塩 基 性触 媒 は求 核 性 で あ るか ら,電 子 吸 引 性 の フ ェニル 基(Ar)と カル ボ ニル 基 との間 に は さ まれ たC(I)は,こ れ に結 合 し てい る水 素 を プ ロ トン と して 放 出 しや す い 。 この た めC(I)は カル ボ ニ ウ ム イオ ン と して はた ら き,結 局 上 の 関 係式 で分 る よ うな 電 子 の 移 動 を生 じ,炭 酸 ガ スを 放 出 し,R2とR3と の交 換 が 行 わ れ る の で あ る。 さてR3が メチル 基 の とき,こ れ の隣 に あ るC(II)の 陽性 は 最 もつ よい。 これ は メ チル 基 の超 共役 性 お よび+ I効 果 の 強 さを考 え る と容 易 に判 断 され る と こ ろ で あ る。R3と い うアル キル 基 の炭 素 数 が 増 加 す るに つれ て, このC(II)の 陽 性 は 弱 くな り,と くに炭 素 数 が6以 上 に な る と,こ の陽性 が 極 度 に低 下 す る。 このた め,炭 素 数 が6以 上 に な る とC(I),C(II)の 間 の電 子 の授 受 は 行 わ れ な くな る。 そ こで無 水 フ ェニ ル酢 酸 二 分 子 間 にお け る反 応 が起 り,主 反応 生 成 物 は ジ フ ェニル アセ トン のみ とな る の で あ る。 34

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第 4 巻 第 6 号 (1955) 327 4. 総 括 1) ピ コ リンの 存 在 下 に各 種 の脂 肪 酸 無水 物 とフ ェニ ル酢 酢 との反 応 を 行 い,ア ル キル ・ベ ン ジル ケ トン を合 成 した。 炭素 数4の 無 水 酪酸 ま では,こ れ に 該 当 す る アル キル ベ ン ジル ケ トンが 約60%の 収 率(エ ノール 型 エ ス テル を も含 め て)で 得 られ た。 エ ノール 型 エ ス テ ルは ケ トン とほ ぼ 同量 得 られ た 。 2) 炭 素 数6以 上 の脂 肪 酸 無 水 物 を 用 い る と,そ の反 応 性 が極 度 に よわ く,フ ェニル 酢 酸 間 の反 応 に よ る ジ フ ェニ ル ケ トン のみ が生 成 し,目 的 とす る アル キル ・ベ ン ジル ケ トン は全 然 得 られ なか つ た 。 3) フ ェ ニル酢 酸 の代 りに 無 水 フ ェニ ル酢 酸,フ ェニ ル 酢 酸 塩 化 物,p-ニ トロ ・フ ェニル酢 酸 を用 い,脂 肪 酸 無 水 物,脂 肪 酸 塩 化 物 と反 応 させ て も同様 に対 応 す るベ ン ジル ケ トンが得 られ た 。 この 際 反応 速 度 は 早 くな るが 収率 には 大 した差 異 が 認 め られ な か つ た。 本研 究 の一 部 は 文部 省 科 学 研 究 費 で 行つ た 。 な お赤 外 線 吸収 ス ペ ク トル を撮 るに 当 つ て 便 宜 を計 つ て 頂 いた 東 京大 学 工 学 部 田中 誠之 君 に 謝 意 を 表 す。 (昭和30年7月,油 脂 化 学 協 会 第4回 関西 講 演 会講 演) (昭和30年8月17日 受理) 文 献

1) H.D. Dakin,

R. West, J. Biol. Chem., 78, 91

(1928)

2) O.

Magidson, J. Gen. Chem. (U.S.S.R.),

11,

339 (1941); J. King, F.H. McMillan, J. Am.

Chem. Soc., 68,

525 (1946); 73,

4911 (1951)

Buchmann,

J. Chem. Soc., 1952, 2944; G.

Smith, J. Am. Chem. Soc., 75, 1134 (1953)

3)

N.O. Sonntag, J. Am. Oil Chemist's

Soc., 31,

151 (1954)

参照

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