博 士 ( 工 学 ) 平 野 史 生
学 位 論 文 題 名
軽水炉燃 料の高燃 焼度化お よびMOX 燃料の導入に伴い 発生する TRU 廃棄 物の地層 処分への影響
学位論文内容の要旨
経済性の向上と使 用済燃料の発生量削減の両面 から、軽水炉燃料の高燃焼 度化が進められてい る。 現在 、 最高 燃焼 度は55 GWd/THMに達し ているが、更叔る高燃焼度 化も視野に入れ、炉の安 全性や経済性に関す る検討が行われている。フランスやドイツ教どではウランとプルトニウムの混 合 酸 化 物 燃 料(MOX燃 料 )が 軽水 炉で 使用 さ れて いる が、 我 が国 にお いて も軽 水 炉へ のMOX燃 料の 導入を目指 して準備が進められている 。燃料の高燃焼度化やMOX燃 料の導入により、従来の U02燃料の場合 とは異をる特性を持つ放射性 廃棄物の発生が予想される 。しかし、炉の安全性や 燃料の健全性や経済 性に関する分野と比較して、核燃料サイクルのバックエンドヘの影響について は検 討が 進 んで い教 い。 特 に、高燃焼度化 やMOX燃料の導入による、TRU廃棄物(超ウラン元素 を含む廃棄物)の処 理処分とその安全評価に与える影響については殆ど検討されてい誼い。電気事 業連合会と核燃料サ イクル開発機構(当時)が2005年度に公表した「TRU廃棄物処分技術検討書―
第2次TRU廃棄物処分 研究開発取りまとめ‐」(以 下、TRU2次レポート)では 、対象とする廃棄物 は 、 燃 焼 度45 GWd/THMのU02使 用済 燃料 の再 処理 に 伴い 発生 する もの に 限ら れて いる 。 さら に高 燃焼 度 化が 進ん だU02使 用済 燃料 やMOX使 用 済燃 料の 再処 理で 発 生す る廃 棄物は対象とさ れて いをい。本 研究では、軽水炉での高燃 焼度燃料やMOX燃料の使用に よる地層処分への熱影響 を明 らかにする ことを目的とし、TRU廃棄物 で最も熱放出率の高いハル ・エンドピース圧縮廃棄 体を対象として評価 を行った。
本 論文 は5章か ら 構成 され る。 第1章で は、 軽 水炉 燃料の高燃焼度化 と軽水炉へのMOX燃料の 導入が進められてい る背景と、放射性廃棄物の地層処分に対するこれらの影響について概観し、今 後の核燃料サイクル を見直す上で、熱の影響について明らかにすることが極めて重要であることを 明確にした。
第2章 で は 、45、55、70 GWd/THMの 燃 焼 度 で のU02使 用 済 燃 料 お よ びMOX燃 料 を 想 定 し た燃焼計算を行い、TRU2次レポートの処分概念に 基づぃてハル・エンドピー ス圧縮廃棄体を収納 する キャ ニ スタ ー1本あ たり の熱 放出 率 の時 闇依 存性 を 評価 した 。燃 焼度45 GWd/THMのび〇2 使用 済燃 料 の結 果は 、TRU2次レ ポー トの 結果 と 良く 一致した。MOX使 用済燃料の場合は、半減 期432年 のa崩壊 核種 で あるAm‑241を はじ め とす るTRU元 素の 崩壊 熱の 寄 与が 大き いた め 、従 来型の廃棄体に比べ ると熱放出率は極めて緩やかに減少し、数百年から千年に渡る長時間経過後の 廃棄体や処分場に与 える熱影響が大きいことを明 らかにした。
更に、TRU2次レポ ートと同様に、キャニスター を廃棄体パッケージに収納 した後、円形断面の 坑道の内部に積み重 ねて処分する場合について、二次元熱伝導解析により坑道とその周辺領域の温 ー77ー
度分布を評価した。簡単のために、異をる熱放出率を持つ廃棄体パッケージを混在させて処分する ことは 想定せ ず、廃 棄体パ ッケー ジ内部の充填材であるセメントモルタル材の温度上限値を80℃ とした場合に、廃棄体パッケージに収納できるキャニスター本数の燃焼度依存性を決定した。燃焼 度45 GW( 灯HMの り 〇2燃 料の 場 合 は 、TRU2次レ ポ ー ト と同 様 に 、 廃棄体 パッケ ージに4本の キャニ スター を収納 できる 。しか し、MOX使 用済燃 料の場 合は、1本程度 に減少 すると 共に、複 数の坑 道を含 む領域 全体が 、1000年以 上の長期間に渡って60〜70℃の高い温度に曝されるとの結 果を得 た。て のこと から、 高燃焼 度化とMOX燃料の 導入に 伴い、坑道内部の廃棄物密度が低下す ると共に、極めて長期に及ぶ熱影響による地下水流動挙動の変化が生じ、安全評価手法の成立性が 懸念される。
第3章 では、 燃焼前 のM()X燃料の 初期組成 がび〇2使用済 燃料の 燃焼度 や冷却 期間あるいは MOX燃料 製 造 後 の貯 蔵期間 に依存 するこ とに着 目し、 様々をPuの富化 度と同 位体組 成比を持 つ MOX燃料 の使用 による 、ハル・ エンド ピース 圧縮廃 棄体の 地層処分に及ばす熱影響を評価した。
び〇2燃料の燃 焼計算 の結果 から求 めた富化度を持つMOX燃料を対象として再び燃焼計算を行い、
この結 果に基 づぃて キャニ スター の熱放 出率を 決定し た。さら に第2章と同様に、熱伝導解析に より地 層処分 後の坑 道とそ の周辺 の温度 分布を 求めた 。び〇2使用済燃料の燃焼度を28、45、70 GWd/THM、 冷 却 期 間 を4、30、50年 、MOX燃 料 の 照 射 前 の貯 蔵 期 間 を2、10年 と して 評 価 を 行 った 。 そ の 結果 、 燃 焼 度45GWd/THMのMOX使用 済 燃 料 の場 合 は 、 堆積 岩 の 熱 物性 値 を 用 い ると、廃棄体パッケージに収納できるキャニスターの数が0.7〜1.6本の範囲で変動した。しかし、
坑 道内 部 の 廃 棄物 密 度 が45GWdパHMの び 〇2使用済 燃料の 場合に比 べて大 幅に低 下する こと、
および坑道とその周辺において、1000年を超える長期間に渡って高い温度が維持されること教ど、
基 本 的 叔 結 果 は 第 2章 で 得 ら れ た も の と 変 わ ら 誼 い こ と を 明 ら か に し た 。 第4章 では、MOX使用済 燃料の 再処理 で発生 するハル ・エン ドピー ス圧縮 廃棄体 の合理的款処 分方法について検討した。ハル・エンドピース圧縮廃棄体の地上での冷却貯蔵期間の長期化、ハル に対す る燃料 付着率 の低下 、およ び処分 坑道の 離間距 離の拡大 、の3点に着目し、TRU2次レポー トの処分概念を前提とする場合の合理的教処分方法について検討した。その結果、ハルの燃料付着 率 の低 下 に よ り、 坑 道 内 部の 廃 棄 物 密度 を 燃焼度45GWd卩HMのび 〇2燃料 の場合 と同程 度にで きる可能性があること、および坑道周辺の温度を初期地温レベルまで下げるには、坑道離間距離を 十分に拡大することが合わせて必要であるてとを明らかにした。
第5章では、本論文の成果を総括する。
以上、軽水炉における高燃焼度燃料およびM(〕X燃料の使用とその後の再処理による、ハル・エ ンドピ ース圧 縮廃棄 体の地 層処分 への熱影響について評価を行い、TRU2次レポートの処分概念を 前提とする場合の合理的教処分方法について検討した。本論文の成果は、今後、軽水炉から高速炉 への移行期を迎えるにあたり、放射性廃棄物管理と整合性を持つ合理的款核燃料サイクルの枠組み を検討する上で役立っものである。
‑ 78 ‑
学位論文審査の要旨 主査 教授 佐藤正知 副査 教授 島津洋一郎 副査 教授 杉山憲一郎
学 位 論 文 題 名
軽 水炉燃料 の高燃焼 度化およ び MOX 燃料の導入に伴い 発生する TRU 廃棄物 の地層処 分への影 響
経済 性の向上と使用済燃料の発生量削減の両面から、軽水炉燃料の高燃焼度化が進めら れ てい る。 現 在、 最高 燃焼 度は55 GWd/THMに達しているが、さら教る高燃焼度化も 視 野に検 討が進められている。フランスやドイツ謡どではウランとプルトニウムの混合酸化 物 燃料(MOX燃 料) が軽 水炉 で使 用さ れて きた が、 我が 国に おい ても 軽水炉へのMOX燃 料 の導 入に 向 けて準備が進められている。燃料の高燃焼 度化やMOX燃料の導入により 、 従来と は異橡る特性を持つ放射性廃棄物の発生が予想される。しかし、炉の安全性や核燃 料の健 全性に関する分野と比較して、特にTRU廃棄物(超ウラン元素を含む廃棄物)の処 理処分 とその安全評価に与える影響については、ほとんど検討されていをい。電気事業連 合 会と 核燃 料 サイクル開発機構(当時)が2005年度に公 表した「TRU廃棄物処分技術 検 討書‐ 第2次TRU廃棄物処分研究開発取りまとめ−」(以下、TRU2次レポート)では、対象 と す る 廃 棄 物 は 、 燃 焼 度45 GWd/THMのU02使 用済 燃 料の 再処 理に 伴い 発生 する もの に 限 ら れ て い る。 本研 究で は、 軽水 炉で の高 燃焼 度 燃料 やMOX燃 料の 使用 によ るTRU 廃 棄物 の地 層 処分への熱影響を明らかにすることを目的 とし、TRU廃棄物の中で最も 熱 放 出 率 の 高 い ハ ル . エ ン ド ピ ー ス 圧 縮 廃 棄 体 を 対 象 と し て 評 価 を 行 っ た 。 本論 文は5つの章から構成されて いる。第1章では、軽水炉燃 料の高燃焼度化と軽水炉 へ のMOX燃 料 の導 入が 進 めら れて いる 背景 と、 高レ ベル 放射 性廃 棄物 やTRU廃棄 物の 地 層 処 分 に お け る 熱 影 響 の 評 価 が 極 め て 重 要 で あ る こ と を 明 確 に し て い る 。 第2章 で は 、45、55、70GWdパHMの 燃 焼 度 で の ぴ 〇2使 用 済 燃 料 お よ びMOX燃 料 につい て燃焼計算を行い、ハル・エンドピース圧縮廃棄体を収納するキャニスター1本あ た り の 熱 放 出 率の 時間 依存 性を 評価 して いる 。燃 焼 度45GWd門HMのぴ 〇2使 用済 燃料 の 結果 は、TRU2次 レポ ート の結 果と 良く 一致 する こと を確 認し てい る。MOX使用済 燃 料 の場 合は 、TRU元素の崩壊 熱の寄与が大きく、従来型の廃棄体に比べると熱放出率 は 極めて 緩やかに減少することを明らかにしている。さらに、TRU2次レポートと同様に、
― 79−
キャニスターを廃 棄体パッケージにした後、円形断面の深地中の坑道内部に積み重ねて処 分する場合につい て、有限要素法による二次元熱伝導解析により坑道とその周辺領域の温 度分布を評価して いる。廃棄体パッケージ内部のセメント充填材の上限温 度を80℃とし た場合について、 廃棄体パッケージに収納できるキャニスター本数の燃焼度依存性を評価 し て い る 。 燃 焼 度45 GWd/THMの り 〇2燃 料 の 場 合は 、TRU2次レ ポー トに 示さ れて い る 結果 と同 様に 、4本 のキャニスターを収納できる。一方 、MOX使用済燃料の場合は、1 本 程度 に減 少す ると 共に 、処 分領 域 が1000年 以上の長期 間に渡って60〜70℃の高い温 度に曝されるとの 結果を示している。このことから、TRU2次レポートの処 分概念を採用 すると、坑道内部 の廃棄物密度が大幅に低下するとともに、極めて長期に及ぶ熱影響に伴 う 地 下 水 流 動 挙 動 の 変化 が生 じ、 安全 評価 手法 の成 立 性が 懸念 され ると して いる 。 第3章 で は 、 燃 焼 前 のMOX燃 料 の 初 期 組 成 がU02使 用 済燃 料の 燃焼 度や 冷却 期間 あ る いはMOX燃 料製 造後 の貯 蔵期 間に 依存 する こと に着 目し 、様 々 をPuの富 化度と同位 体 組成 比を 持つMOX燃 料の 使用 によ る、 ハル ・エ ンド ピー ス圧 縮 廃棄 体の 地層処分に 及 ば す 熱 影 響 を 評 価 した 。U02燃料 の燃 焼計 算の 結果 から 求め た富 化度 を持 つMOX燃 料について再ぴ燃 焼計算を行い、キャニスターの熱放出率を評価し、熱伝 導解析により 地 層処 分後 の温 度分 布を 求め てい る 。そ の結 果、坑道内 部の廃棄物密度が45 GWd/THM のり〇2使用済燃料の場合に比べて大幅に低下すること、および坑道とその周辺において、
1000年 を 超 え る 長 期 間 に 渡 っ て 高 い 温 度 が 維 持 さ れ る こ と を 明 ら か に し て いる 。 第4章 では 、MOX使 用済 燃料 の再 処 理で 発生 するハル・ エンドピース圧縮廃棄体の合 理的橡処分方法に ついて検討した。ハル・エンドピース圧縮廃棄体の地上での冷却貯蔵期 間 、ハ ルに 対す る燃 料付 着率 、お よ び処 分坑 道の 離間 距離 の3点 に着 目し 、TRU2次レ ポ ート の処 分概 念を 前提 とす る場 合 のよ り合 理的教処分 方法について検討している。
第5章では、本論文の成果を総括している。
これ を要 する に、 著者は、 軽水炉における使用済み高燃焼度燃料および使用済みMOX 燃料の再処理によ り発生するハル・エンドピース圧縮廃棄体の地層処分への熱影響につい て、燃焼計算と、 有限要素法による二次元熱伝導解析により、はじめて評価を行った。本 論文の成果は、核 燃料サイクル・バックエンド分野の進歩に寄与するところ大をるものが あり、博士(工学 )を授与される資格あるものと認める。
− 80 ‑