博 士 ( 医 学 ) フ マ ユ ン ・ カ マ ー ル ・ イ ス ラ ム
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Immunohistochemical analysis of expression of molecular biologic factors in intraductal papillary‑mucinous tumors of pancreas‑diagnostic and biologic significance
(粘 液 産生 膵 腫 瘍の 分 子 生物 学 的因 子発 現に関す る免疫組 織学的検討 ― 診 断 な ら び に 生 物 学 的 特 性 に お け る 重 要 性 )
学位論文内容の要旨
I.目的
粘液産生膵腫瘍(intraductal papillary‑mucinous tumors of pancreas、以下IPMT)は膵管上皮 の 乳頭状発 育、著明 な粘液産 生、膵管 拡張を特徴とする膵腫瘍のひとつで1982年に初めて 報 告 さ れた 。IPMTは浸 潤や転移 が少ないこ とから、 低悪性度 の膵腫瘍 と位置づ けされ、
通常膵管癌とは区別して考えられている。通常膵管癌にp53、rasp21、bcl‑2、c‑erbB‑2、Ki‑
67などの分子生物学的因子(molecular biologic factors、以下MBlOが発現していることは広 く 知 ら れた 事実で あるが、IPMTについての 報告は今 だ少なく 、一定の 見解は得 られてい な い 。 また 、IPMTは術 前の画像 所見から良 悪性の鑑 別をする ことが難 しいとい う臨床上 の問題点があり、また、段階的なadenomaーcarcinoma sequenceがIPMTに存在するかどうかに つ い て の結 諭 も 得ら れ てい な い 。そ こ で本研 究では、IPMTにおけるMBFの発現を 免疫組 織 学 的 手法 を 用 いて 調 ベ、MBF発 現の 差 異が良悪 性の鑑別 に役立っ かどうか 、あるい は IPMTに adenoma− carcinoma sequenceが 存 在 す る か ど う か を 検 討 し た 。 II.材料と方法
1.材料
1987年12月からか ら1997年12月ま でに北海 道大学医 学部第2外 科において膵切除がなさ れ 、WHO分類 に 基 づきIPMTと 病理 診 断 がなされ た28症例を 対象とし 、切除標 本のホル マ リ ン固定済 みパラフ イン包埋 組織プ口 ックを使 用した。IPMT28例 のうち4例には多発病変 が 存 在 し、 組織型の 異なる病 変部位から 切片を作 成した。 したがっ て、対象 としたIPMT の内訳はhyperplasia (n=6)、adenoma (n=15)、carcinoma血situ (n=2)、carcinoma (n=9)の28症 例32病 変 で あ り 、 本研 究 で はhyperplasiaとadenomaを 良 性IPMT、carcinoma泣situと caranomaを 悪 性IPMTと 定 義 し 検 討 し た 。 ま た、IPMT切 除標 本 か ら同 様 に、 正 常 膵管
(n=6)の切 片を作成 しコント 口ールと した。さらに同時期に切除された通常膵管癌症例
(n=20)をランダムに選択し、同様に切片を作成し比較検討した。
2.免疫組織染色
パ ラフイン 包埋プ口 ックから 作成した 組織切片を、脱バラフインした後、0.3%過酸化 水 素加ヌタ ノールに て内因性 ペルオキ シダーゼをブ口ッキングした。抗原性賦活のために p53、bcl‑2、K1‑67にはmicrowave照射を20分間、rasp21にはtrypsin処理を室温で10分間おこ な った。一 次抗体は抗P53モノク□ーナル抗体;D0‑7 (DACO社)、抗rasp21モノク口ーナル
抗体;Anti‑pan ras (Oncoge Science社)、抗bcl‑2モノクローナル抗体;Clone 124 (DACO社)、
抗c‑erbB‑2ポリク口ーナル抗体;Anti‑c‑erbB‑2(二チレイ社)、抗K1‑67モノクローナル抗体;
MIB‑1 (Immunotech社)を使用した。二次抗体にはHistofine kit(二チレイ社)を使用し、発色 にはdiaminobenzidineを用いた。Hematoxylinを用いて核染色させた後、脱水、透徹、封入し 検鏡した。
3.判定
染色 の判定は 個々の症 例におい て最低300個の 腫瘍細胞 をカウン トし、染色陽性細胞が 5%未 満のもの を染色陰性、5%以上のものを染色陽性とした。さらに染色陽性率により5% 以上10%未満を(1+)、10%以上40010未満 を(2+)、40%以上を(3+)と定義した。統計学的解析 は 、2群 間 の 比 較 にFisher検 定 を 用 い てp値0.05未 満 を 有 意 差 あ り と 判 定 し た 。 III.結果
正 常膵 管 は 、5種 類 全 てのME3Fが 陰性で あった。 良性IPMTは、p53がadenomaの7%(1/ 15)に、rasp21がhyperplasiaの17% (116)、adenomaの27%(4/15)に、K1‑67がhyperplasiaの 33%(2/6)、adenomaの270/0(4/15)に陽性を示した。一方、悪性IPMTは、p53とrasp21がと もにcarcinoma血situの50%(1/2)、caranomaの67% (6/9)に陽性を示した。Ki‑67はcaranoma m situ (n=2)、carcinoma (n=9)の全例に陽性であった。なお、p53とK1‑67は腫瘍細胞の核に、
rasp21は 細胞質に染色された。bcl・2、c‑erbB‑2は良悪性いずれのIPMTにおいても陰性であ った。また、通常膵管癌においてはp53が55%(11/20)、rasp21が70% (14 /20)、bcl‑2が35%
(7 /20)、c‑erbB‑2が30%(6/20)、K1‑67が85%(17/20)に陽性であった。以上から、rasp21 は 正常膵管 の0%、IPMTにお いてはhyperplasiaの17%、adenomaの27%、carcinoma in situの 500/0、carcinomaの67u/oに陽性となり、細胞異型に比例して陽性例が多くなることが示され た 。 な お、通 常膵管癌 におけるrasp21陽 性率は70%で 、IPMT carClnomaとほぼ 同等であ っ た。
次 に、p53、Ki‑67、rasp21が 陽性であ ったIPMT症例の 個々の染 色陽性率 をみると 、p53 陽性例(n〓8)、Iくi‑67陽性例(n=18)は、良性IPMTでは、K1‑67が(2+)を示したhyperplasiaの1 例 を 除 き 他 は 全て(1+)で 、 悪性IPMTで は全 て(2+)ある い は(3+)であ っ た。 す な わち 、 p53な いしKi‑67が腫瘍細胞の10%以上に陽性を示したIPMT症例はいずれも悪性例であった。
rasp21は陽 性例(n〓12)のうち 良性IPMTの3例が(2+)を、悪性IPMTの3例が(1+)を 示し、
個々の染色陽性率と良悪性との関連はなかった。
染 色率(‐ )と(1+)を染 色陰性、(2+)と(3+)を染色陽性と新たに定義し、2群に分けて検 討 した。p53は 良性IPMT (n=21)にお いて全て 染色陰性 で、悪性IPMT (n=ll)では陰性4例、
陽 性7例 で あり 、 悪性IPMTに お いて 有意 にp53が陽性 となるこ とが示さ れたOく0.0001)。 Iくi‑67は良性IPMTで陰性20例、陽性1例に対し、悪性IPMTでは全例陽性であり、p53と同様、
悪 性IPMTに おい て 有意 にK1‑67が 陽 性と な るこ と が 示さ れ たOく0.0001)。rasp21は良 性 IPMTで 陰 性18例 、陽 性3例 、 悪性IPMTで 陰性7例 、 陽 性4例で 統 計学 的有意 差を認め なか った。
IV.考察
IPMTにお け る5っのMBFの発現を 免疫組織 学的手法 を用いて 調ベ、腫 瘍細胞の10% 以上 がp53あるいはIくi‑67陽性であれば、有意に悪性例の多いことが示された。このことは術前 に 膵 管鏡 下 の 生検 組織 を用いてp53、Ki‑67の発現 を調べる ことで、IPMTの良悪性鑑 別の 重 要 な 情 報 を 提 供 し 得 る た め 、 臨 床 上 の 診 断 的 価 値 が 高 い も の と 考 え ら れ た 。 近年、IPMTにおいてk‑rasのcodon 12点突然変異がみられたとの報告や、k‑ras遺伝子突然 変異 がIPMTの発癌 に関与し ているこ とを示す 報告がなされた。本研究においてrasp21の発 現がIPMTの細胞異 型に比例 して増加 すること が示された ことを合 わせて考 えると、k‑ras
の 間 にはrasp21の発 現 に 有意 差 はな く 、 両者 間 にsequenceは な い もの と考 えられた 。 V.結語
IPMTの免疫組織学的検討で、p53、lくi‑67はhyperplasia、adenomaと比較してcarcinoma洫 situ、intraductal carcinomaにおいて有意に発現が増強することが示され、良悪性の鑑別に有 用と考えられた。また、正常膵管、hyperplasia、adenoma、carcinoma血situ、intraductal carclnomaと 細胞異型が強くなるに従い、rasp21陽性率が高くなることから、IPMTにおいて は 段 階 的 な adenoma‑carcinoma sequenceが 存 在 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Immunohistochemical analysis of expression of molecular biologic factors in intraductal papillary‑muclnouStumorSOfpanCreaS‐ diagnOStiC andbiologiCSlgni丘CanCe
( 粘 液産 生膵 腫瘍 の分 子生 物学 的因 子発現 に関 する 免疫 組織 学的 検討 ― 診 断 な ら び に 生 物 学 的 特 性 に お け る 重 要 性 )
粘液産生膵腫瘍(血traductal papillary‑muclnous tumors of pancreas、以下IPMT)は浸潤や 転移 が 少 な い こ と か ら 、 通 常 膵 管 癌 と は 区 別 さ れ 低 悪 性 度腫 瘍 の 位 置 づけ がさ れて いる 。 通常膵 管癌 にp53、rasp21、bcl‑2、c‑erbB‑2、Ki‑67などのmolecular biologic factors(以下 MBF)が 発 現 し て い る こ と は 知 ら れ て い る が 、IPMTに つ い て は 一 定 の 見 解 は な い 。ま た 、 IPMTは 術 前 画 像 所 見 か ら 良 悪 性 の 鑑 別 が 困 難 で あ り 、 さ ら に 、IP MTに お け る 段階 的 な adenoma‑carc血oma sequenceの 存 在 に つ い て の 結 論 も 得 られ て い な い 。本 研究 では 、IPMT に お け るMBFの 発 現 を 免 疫 組 織 学 的 に 調 ぺ 、 そ の 差 異 と 良 悪 性 の 関 係 、IPMTに お け る adenoma‑carclnoma sequenceの 存 在 の 検 討 を し た 。 材 料 はIPMTと 病 理 診断 され た28症例 の 切除 標 本 の ホ ル マ リ ン 固 定 済 み ノ ヾ ラ フイ ン包 埋組 織ブ 口ッ クを 使用 した 。IP MT28例の う ち4例 に は 多 発 病 変 が 存 在 し 、組 織 型 の 異 なる 病変部 位か ら切 片を 作成 した 。し たが って 、 対象IPMTの内訳はhyperplasia (n=6)、adenoma (n= 15)、carclnoma in situ (n〓2)、
carcinoma (n=9)の28症 例32病変 であ り、hyperplasiaとadenomaを 良性IPMT、Car clnomain situとcarclnomaを 悪 性IPMTと定 義 し た 。 また 、IPMT切除 標本 から 、正 常膵 管(n=6)の 切 片を 作 成 し コ ン 卜 □ ー ル と し た 。 さ ら に 同 時 期 に 切 除 さ れた 通 常 膵 管 癌症 例(n=20)を ラ ンダ ム に 選 択 し 、 同 様 に 切 片 を 作 成 し 比 較 検 討 し た 。 方 法は 組 織 切 片 を、 脱バ ラフ イン の 後 、 内 因 性 ベ ル オ キ シ ダ ー ゼ の ブ 口 ッ キ ン グ 、 抗 原 性 の 賦 活 を 行 い 、 各MBFに 対す る 一 次抗体と二次抗体としてHis to fine kitを用い、発色にはdiaminobenzidineを、核染色には
敬寛 之 雅紘 木村 藤 吉今 加 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
5%以上10%未満を(1十)、10%以上40%未満を(2十)、40%以上を(3十)と定義した。統計学的 解 析 は 、2群 間 の 比 較 にFisher検 定 を 用い てpく0.05を有 意 差あ り と 判定 し た 。結 果 であ る が 、 正 常 膵 管 は5種 類 全 て のMBFが 陰 性 で あ っ た 。 良 性IP MTで は 、p53がadenomaの7% 、 rasp21がhyperplasiaの17%、adenomaの27%、Ki‑ 67がhyperpLasiaの33%、adenomaの27U/0で 陽1生だった。悪´l生IPMTは、p53、ras p21ともcarclnoma in situの50010、carclnomaの67c70に 陽 性 を示 し た 。Ki‑ 67はcarclnomain situ、carclnomaの 全 例が 陽 性で あ っ た。bcl‑2、C‐ erbB‑2は 良 悪 性 い ず れ のIP MTに お い て も 陰 性 で あ っ た 。 通 常 膵 管 癌 で はp53が55% 、 rasp21が7() % 、bcl‑2が35%、c‑erbB‑2が30% 、Ki‑67が85%に 陽性であ った。以上 から、
ras p21は 正常 膵 管の0% 、IPMTに おけ るhyperplasiaの17% 、adenomaの27c70、carcinomain situの50% 、carclnomaの67% に 陽性 と なり 、 細 胞異 型 に 比例 し て陽 性 例 が多 く なっ た 。通 常 膵 管 癌 に お け るras p21陽 性 率 は70%で 、IPMTのcarclnomaと ほ ぼ 同 等 で あ っ た 。p53、 Ki‑67、rasp21陽 性 のIPMT症 例 の 個 々 の 染 色 陽 性 率 は 、p53陽 性 例 、Ki‑ 67陽 性 例 で は 、 良 性IPMTでは1例 を 除き 全 て (1+) で、 悪 性IPMTで は 全 て(2+) 以 上 であ っ た。 す な わち、
p53な い しKi‑67が 腫 瘍 細 胞 の10% 以 上 に 陽 性 を 示 し た 【PMT症 例 は いず れ も 悪性 例 であ っ た。rasp21は染色陽性率と良悪性との関連はなかった。染色率(.)と(1+)を染色陰性、(2+) と (3十 ) を 染 色 陽 性 と 新 たに 定 義 する と 、p53は 良 性IPMTで は 全て 染 色 陰性 で 、悪 性IPMT で は 陰性4例 、 陽性7例 と 、 悪性IP MTで 有意にp53が 陽性となっ た(pく0.0001)。Ki‑67は良 性IP MTで 陰 性20例 、 陽 性1例 に 対し 、 悪性IP MTで は 全 例陽 性 であ り 、 悪性IP MTに お いて 有 意 にKi‑ 67が 陽 性 と な った (pく0.0001)。rasp21は良 性 ・ 悪性IPMT間 の染 色 陽 性率 に 統 計 学 的 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 以 上 よ りIPMTの 免 疫 組 織 学 的 検 査 で 、 腫 瘍 細 胞 の10% 以 上 でp53あ る い はKi‑ 67が陽 性 で あれ ば 、有 意 に 悪性 例 の多 い こ とが 示 さ れ、 術 前に 膵 管鏡 下 生 検 組 織 で のp53、Ki‑ 67の 発 現 を 調 ぺ る こ と で 、IPMTの良 悪 性 の術 前 鑑 別診 断 が可 能 と な り 、 臨 床 的 価 値 が 高 い も の と 考 え ら れ た 。 さ ら にrasp21の 発 現 がIPMTの 細 胞 異 型 に 比 例 し て 増 加 す る こ と を 考 え る と 、 正 常 膵 管 か らhyperplasia.adenomaへ 、 さ ら に carcinoma in situ.intraductal carcinomaへ と進行す るadenoma‑carcmoma sequenceがIPMT に存在することが示唆された。
口 頭 発 表 に お い て 今 村 雅 寛 教 授 よ りIPMTのadenoma‑carc血oma sequenceと 各MBFの 染 色 率 の 違 い の 関 係 、IPMTが 術 前 に 良 性 と 診 断 で き る 様 に な っ た 場 合 の 治 療 法 の 展 望 に つ い て 、 そ の 後 、 吉 木 敬 教 授 よ り 今 回 の5種 類 以 外 の マ ー カ ー の 染 色 性 、c‑erbB2が 染 色 さ れ な か っ た 理 由 、 一 切 片 の 中 で の細 胞 異型 度 の 違い と 染色 性 の 違い の 関 係に 関 して 質 問 が あ っ た 。 次 い で 、 加 藤 紘 之 教 授 から 同 様に 一 個 体内 で の異 型 性 と染 色 性 の関 連 と術 前 生 検 診 断 にお け る 診断 精 度の 問 題 、IPMTの 治 療法 の 選 択・follow upに 対 する 質 問が あ っ たが、
申請者は概ね妥当な回答をした。
審 査 員 一 同 は 、 こ の 研 究 成 果を 高 く評 価 し 、大 学 院 過程 に おけ る 研 鑽や 単 位取 得 な ども 併 せ 、 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る の に 充 分 値 す る も の と 判 定 し た 。
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