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特集第 3 回東方経済フォーラム開催東方経済フォーラムと北東アジア国際関係 イベント レポート 第 3 回東方経済フォーラム開催 はじめに 極東 : 新しい現実の創造 をテーマに 2017 年 9 月 6 日 7 日 ロシア極東のウラジオストクにおいて第 3 回東方経済フォーラムが開催された 先進社

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第3回東方経済フォーラム開催

第3回東方経済フォーラム開催

はじめに

「極東:新しい現実の創造」をテーマに、2017年9月6日、7日、ロシア極東のウラジオスト クにおいて第3回東方経済フォーラムが開催された。 先進社会経済発展区(新型特区)やウラジオストク自由港など、プーチン政権は極東開 発政策を積極的に進めている。進出件数は400件を超え、それなりの成果を出しつつある。 東方経済フォーラムは、そうした極東政策やそれに関連するプロジェクトを広く紹介し、ロシ ア国内外からの投資誘致を促進するとともに、政策の諸課題や地域開発の問題点を有識 者や企業関係者が議論し、次の政策につなげることを目的としている。 今回のフォーラムには、ロシア、日本、韓国、モンゴルの4ヵ国の首脳が顔をそろえた。フォ ーラム直前に北朝鮮が6回目の核実験を強行したことで、北朝鮮への対応をめぐり、各国首 脳がどのような言葉を発するのかに関心が集まった。 日ロ首脳会談では、北方4島での共同経済活動で優先的に取り組む事業として、海産物 の養殖、温室野菜の栽培など5つに絞り込むことで合意した。一方、ロシア側からは日本の 経済協力への不満が聞かれた。 昨年同様、日本からは数多くのハイレベルの企業関係者が本フォーラムに参加した。当 会は実業ロシアとともに日ロビジネスラウンドテーブルを開催した。 本稿では、第3回東方経済フォーラムの結果とともに、日ロ首脳会談の概要と日ロ間の合 意文書一覧を紹介する。 なお、プレナリー会合と日ロビジネスラウンドテーブルについては、本誌に別途レポートを掲 載しているので、そちらをご覧いただきたい。東方経済フォーラムについては専用サイトが開 設されているので、そちらも参照いただきたい。→ https://forumvostok.ru フォーラムで演説する安倍総理 イベント・レポート

特 集

東方経済フォーラムと北東アジア国際関係

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特集◆東方経済フォーラムと北東アジア国際関係

日ロ韓蒙4ヵ国首脳が集う

第3回東方経済フォーラムには、国内外か ら企業・政府・団体関係者5,000人、メディア関 係者1,000人、合わせて6,000人以上が参加した (2015年の参加者数は約2,500人、2016年は同 4,600人)。主催者側発表によれば、今回のフォ ーラムには60ヵ国以上(2015年は32ヵ国、2016 年は56ヵ国)から代表が出席した。 今回のフォーラムには、ロシアのプーチン 大統領、日本の安倍晋三総理大臣、韓国の文在 寅大統領、モンゴルのハルトマー・バトトルガ 大統領の4ヵ国の首脳が顔をそろえた。安倍 総理は昨年に続き2度目の参加となった。4 人の首脳は、9月7日のプレナリー会合にそ ろって参加したほか、6日には日蒙、韓ロ、7 日には日韓、日ロ、ロ蒙の首脳会談がフォーラ ム会場内にて行われた。 国際経済会議の場を利用して、首脳が集い、 トップ外交を展開するロシアのスタイルが定 着しつつある。ただし、今回はフォーラム直前 に北朝鮮が6回目の核実験を強行したことも あり、経済よりも北朝鮮への対応をめぐり、各 国首脳がどのような言葉を発するのかに関心 が集まった。 政府の閣僚クラスでは、ロシアからはシュ ヴァロフ第一副首相、トルトネフ副首相、ゴロ デツ副首相、オレシキン経済発展大臣、ガルシ カ極東発展大臣、ノヴァク・エネルギー大臣、 マントゥロフ産業商業大臣、スクヴォルツォ ヴァ保健大臣、スコロフ運輸大臣など3名の 副首相、15名の大臣、14名の連邦局・庁長官が 各セッションで報告を行った。地方からはシ ポルト・ハバロフスク地方知事、コジェミャ コ・サハリン州知事、アントゥフィエフ・スモ レンスク州知事など16名の首長が参加した。 6日夕方には、極東開発を議題としたプーチ ン大統領主宰の国家評議会幹部会がフォーラ ム会場内にて行われた。 外国からはベトナムのグエン・バン・ビン共 産党中央経済委員長、中国の汪洋副首相、イン ドのスシュマ・スワラージ外務大臣、北朝鮮の 金英才対外経済大臣、韓国の金東ヨン・経済副 首相兼企画財政大臣、康京和外務大臣など十 数人の政府要人が参加した。米国からは、ブラ ウン・カリフォルニア州知事が参加した。 日本からは、世耕経済産業大臣兼ロシア経 済分野協力担当大臣、河野外務大臣、加藤厚生 労働大臣、松山一億総活躍担当大臣の4閣僚 が安倍総理に帯同した。 世耕大臣は日ロ首脳会談および日ロビジネ スラウンドテーブルに出席したほか、シュヴ ァロフ第一副首相、オレシキン経済発展大臣 と会談を行い、ノヴァク・エネルギー大臣との 間で第4回エネルギー・イニシアティブ協議 会を開催した。オレシキン大臣との間では、 「デジタル経済に関する協力に係る共同声明」 および「労働生産性向上の分野における経験 の交換に関する相互理解に関する覚書」、マン トゥロフ産業商業大臣との間では、「IT技術の 導入によるロシア企業の生産性診断及び裾野 産業の人材育成の取組に関する相互理解に関 する覚書」の署名が行われた。 河野大臣はロシア、韓国、モンゴルとの首脳 会談に出席したほか、日韓外相会談を行った。 開会式で挨拶するトルトネフ副首相 (フォーラム主催者提供 以下すべて同じ)

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第3回東方経済フォーラム開催 プレナリー会合で演説するプーチン大統領 7日にはフォーラム会場内において、世耕大 臣とともに,シュヴァロフ第一副首相と貿易 経済に関する日ロ政府間委員会共同議長間会 合を行った。 加藤大臣は、スクヴォルツォヴァ保健大臣 と会談を行ったほか、新たな健康づくり、予防 分野および高齢者医療保健分野で協力覚書を 締結し、国立循環器病研究センターおよび国 立長寿医療研究センターとロシア側による文 書交換式に立ち会った。厚生労働大臣がロシ アを訪問するのは、日ロ国交正常化後初めて だった。 松山大臣は、ロスコスモスのコマロフ総裁 と会談を行い、国際宇宙ステーションなど日 ロ宇宙政策分野の連携の在り方について意見 交換を行ったほか、極東連邦大学のアニシモ フ学長代行と会談した。加えて、東北大学と極 東連邦大学との共同研究拠点である国際燃 焼・エネルギー研究室を視察した。 企業関係では、トップマネージメントクラ スが参加した会社は、ロシアの会社が240人、 外国の会社が103人だった。ロシアの会社では ロシア鉄道、ズベルバンク、ガスプロム、ロス ネフチ、シブール、VTB、ロスナノ、ルスギド ロといったところがCEOを送り込んだ。 日本からは川崎重工、三井物産、丸紅、日揮、 千代田化工建設、大成建設、飯田グループHD、 北海道銀行、JOGMECなどが社長・会長クラス を派遣した。中小企業では、北海道総合商事や 伸和ホールディングスなどが参加した。企業・ 政府・関係団体を含む日本からの参加者は総 勢300名以上となった。 日本以外の外国からは、韓国の現代重工業、 現代自動車、サムスン重工業、ベトナム乳業3 位のTHグループ、東南アジアでカジノリゾー トを展開するNagaCorpなどがCEOを派遣した。

80のセッションに217の合意文書

今回のフォーラムでは「ロシア東部エリア での経済政策、今後何をするか」、「極東でのビ ジネスをどう行うか」、「われわれは隣人:協力 を構築しよう」、「極東:新しい生活の質、要望 への回答」という4つのテーマにちなんだ約 80の様々なセッションが開催された。それ以 外に、5つの二国間ビジネス対話(①日ロ、② 韓ロ、③中ロ、④ロシア・インド、⑤ロシア・ ASEAN)が実施された。このほか、国際フォ ーラム「知的所有:地域発展のツール」、第2 回ロシア・ASEAN大学フォーラム、第6回 APEC国際教育会議、ベンチャー企業フォーラ ム「人を惹きつける場所:極東」などのイベン トや会議が行われた。 また、極東地域の投資プロジェクトや投資 誘致政策に関するプレゼンテーションが行わ れた。会場外では、”See Feel Taste”をテーマに ロシア極東の9つの連邦構成主体を紹介する 展示会「極東通り」(The Street of The Far East) が開催された。各地域の伝統文化・芸能が披露 されるとともに、自然、社会、産業などを紹介 するコーナーがあり、Fish Marketのコーナーで は、カニやイクラなど極東の特産物が振舞わ れた。展示会はフォーラム前後の5~10日の 6日間にわたって開かれ、フォーラム後の9 日と10日は一般市民にも公開された。6日間 の延べ入場者数は5万人以上にのぼった。

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特集◆東方経済フォーラムと北東アジア国際関係 ロシア側の発表によると、今回のフォーラ ムでは合計217の文書が調印され、それら案件 の推計投資額は2兆4,960億ルーブルになると いう。2015年の1兆8,500億ルーブルと比べて、 約6,500億ルーブル増えた。大型案件の例とし ては、①ロスネフチによる沿海地方のナホト カ郊外での石油精製・石油化学プラントに関 する極東開発コーポレーションとの間の投資 実現に関する協定(6,300億ルーブル)、②ナホ トカ化学肥料工場によるナホトカ郊外での化 学肥料製造プラントの建設に関する極東発展 省との協定(3,877億ルーブル)などがあげられ る。 日ロ間では、首脳会談に合わせて、政府間や 企業間などで56の合意文書や覚書が取り交わ された。日ロ間の成果文書は、昨年12月のプー チン大統領の訪日と今年4月の安倍総理の訪 ロの過去2回の首脳会談で合意したものを含 めて合計150件を超えた。重複を除くと案件の 数は約100件であり、日本政府によると、その うち約4割が成約に至ったとしている。政府 間では、現地に設立した子会社から受け取る 配当にかけている15%の税率を5%に引き下 げる租税条約の改正案が署名された。 企業間では、日揮と北斗病院によるウラジ オストク市でのリハビリテーション施設の建 設、北海道総合商事とサユリによるサハ共和 国のヤクーツク市における温室栽培施設の拡 張、JFEエンジニアリングによるサハ共和国の ポクロフスキー市における大規模温室栽培建 設、駒井ハルテックによるチュコト自治管区 やサハ共和国での風力発電施設の建設、丸紅 と東部鉱山会社によるサハリンでの石炭積出 ターミナルの建設協力、日立製作所とトラン スマシュホールディングスによる鉄道車両電 気品製造に関するJV設立、東芝とロシア郵便 による機材納入を含む戦略的協業などの案件 で合意文書が署名された。

協力多様化をテーマに日ロ対話

2日目の7日午前には、二国間ビジネス対 話「ロシアと日本」が開催された。本イベント のオーガナイザーを務めたロシアNIS貿易会 は、「ビジネスラウンドテーブル『ロシア極東 における日ロ協力の多様化』」を実業ロシアと ともに開催した。ラウンドテーブルでは昨年 に引き続き、村山滋ロシアNIS貿易会会長と、 レピク実業ロシア会長がモデレーターを務め た。本ラウンドテーブルはたいへんな盛況ぶ りで、約350人の参加を得た。 ラウンドテーブルでは、次の3つを論点に 据えた。①2016年5月に安倍総理からプーチ ン大統領に対し「8項目の協力プラン」が提案 され、2017年4月の安倍総理訪ロまでに日ロ 間で約100の合意文書が結ばれる中で、今後の 日ロ間の課題はこれらの合意文書を如何に実 際のビジネスとして実現していくかにあるこ と、②日本と近接するロシア極東地域での協 力プロジェクトの実現は日ロ双方の共通の利 益であり、その強化・拡大が期待されているこ と、③従来、ロシア極東での日ロ協力は石油・ 天然ガスといったエネルギー資源分野に限ら れてきたが、近年、ロシア政府による新型特区 やウラジオストク自由港などロシア極東への 投資誘致に向けた諸制度の整備にともない、 同地域での日ロ協力は農業、医療、自動車、再 生可能エネルギーなど多様性をみせつつある こと。このような論点を踏まえ、ロシア極東で の日ロ協力のさらなる多様化の実現に向けて、 日ロ双方の代表が活発な議論を交わし合った。 ラウンドテーブルでは、8項目の協力プラ ンの進捗状況、極東における医療協力、極東で のスモールビジネスの展開(日本式居酒屋の 展開)、郵便分野における協力などが話題にの ぼった。世耕大臣とオレシキン大臣が初めて 出席し、挨拶を行った。

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第3回東方経済フォーラム開催 プレナリー会合に4首脳集う

北朝鮮に注目が集まったプレナリー会合

プレナリー会合は7日午後、ロシア、日本、 韓国、モンゴルの首脳が参加して行われた。 最初に演説したプーチン大統領は、新型特 区やウラジオストク自由港などロシア極東へ の投資誘致に向けた諸制度の整備に取り組ん だ結果、この3年間の極東地域の鉱工業生産 の伸び率はロシア平均を上回る年平均8.6%、 域内総生産は同4.2%増を達成したと強調。税 の優遇措置の期間延長や行政手続きの一層の 緩和など、ビジネスのしやすい環境づくりに 引き続き取り組む姿勢を示した。8月8日に スタートしたウラジオストクを訪れる外国人 に対する電子ビザについては、この4週間で 1,300人がこの制度を利用したとし、来年1月 1日からはカムチャッカやサハリンでも同様 の措置を導入することを明らかにした。 そのうえで、①特区だけでなく地域全体に ビジネスのしやすい環境を創出すること、② 地域の人々が将来に展望を持てるようにする ために、雇用創出だけでなく、病院や学校など 社会インフラの整備を進めること、③若者の 才能が生かされるよう、高度専門家の育成な ど人材開発に努めること、④極東地域の人口 増加に向けて積極的な施策を講じること、の 4つの方針を実現する必要性を訴えた。 続いて、韓国の文大統領は、ロシア極東を含 む北方地域との経済協力を推し進める固い意 志があるとし、韓国の北方政策とロシアの新 東方政策の考え方には相通ずるものがあると 指摘。北方政策の目的を達成するために極東 開発に積極的に参加すると表明。ガス、鉄道、 造船、農業などの分野で協力を推進するため に、両国間に「9つの橋」を架けることを提案 した。 モンゴルのバトトルガ大統領は、モンゴル 人にとって、極東は「遠い(ファー)」東では なく、ごく近い東であるとし、海に面していな いモンゴルにとって、自国製品を輸出するた めの海への出口の確保は重要であると述べた。 最後に、演説に立った安倍総理は、8項目の 協力プランの具体的な成果を、映像を使いな がら説明した。医療の向上と健康寿命の増進 では、大分大学とモスクワのピラゴフ国立医 学研究大学による内視鏡分野での協力、大塚 製薬とR-Pharm社との結核治療薬のライセン ス契約の締結などを事例として取り上げた。 都市環境では、プーチン大統領のリクエスト でモデル都市となったウラジオストクについ て、水辺に商業とリゾートが集積する憩いの 空間をつくる青写真を示した。もう1つのモ デル都市であるヴォロネジについては、信号 同士が交通量の情報をやり取りして、緑の点 灯時間を換える信号システムの導入、地面を 掘らずに下水管を交換する技術の導入、さら には鉄道や駅周辺の整備を通じて、新しい都 市のデザインを試みると述べた。 総理は「日本とロシアの間で、過去70年でき なかったことが、このたった1年で幾つも動 き出した。また1年、そのまた1年と歩みを続 けていったなら、その先に見えてくるのは、日 ロ関係が、その持てる潜在力を存分に開花さ せた輝かしい未来だ」と成果を強調した。 さらに総理はプーチン大統領に対し「今に 至るも平和条約がないという異常な事態に、

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特集◆東方経済フォーラムと北東アジア国際関係 私たちは終止符を打たなければならない。ウ ラジーミル、私たち2人、その責務を果たして いこうではないか」と熱く語りかけた。そして、 最後に「日ロの新たな時代を、日本人とロシア 人、手を携え合って切り拓いていこうではな いか」と述べて、演説を締めくくった。 北朝鮮への対応をめぐっては、安倍総理と 文大統領は、北朝鮮は核実験の強行などによ って、国際社会に対する挑戦をエスカレート させているとして、国際社会が一致して、北朝 鮮に最大限の圧力を加えるべきだと訴えたの に対し、プーチン大統領は、北朝鮮の核・ミサ イル開発を非難する一方で、対話による問題 の解決を重視する姿勢を示し、対応への違い が鮮明になった。

肩すかしをくった日ロ首脳会談

プレナリー会合後の7日夕方から行われた 日ロ首脳会談では、北方4島での共同経済活 動で優先的に取り組む事業について、①海産 物の養殖、②温室野菜の栽培、③島の特性に応 じたツアーの開発、④風力発電の導入、⑤ゴミ の削減対策の5つに絞り込むことで合意した。 今回の首脳会談で、具体的なプロジェクト に合意するとみられていた。それだけに一歩 も二歩も腰が引けてしまったのではないかと の印象をロシア側に与えてしまう結果となっ た。 極東開発を統括するトルトネフ副首相はフ ォーラムでの記者会見で、「われわれは共同経 済活動に関する日本側の提案を尊重するが、 これは紙の上だけのものだ」と述べ、協力が何 も実現していないと不満を表明した。2ヵ月 間だけ待つが、その後はロシアや全世界で投 資家を探すとも述べ、協力実現に期限を区切 った。 今回のフォーラムで、プーチン大統領は、共 同経済活動だけでなく、日本の経済協力にも プレナリー会合での安倍総理 不満を示した。1年前に約束した8項目の協 力プランの具体的な成果を披露する場として 位置づけていた日本側からすると、「肩すかし」 をくった形となった。日本政府にとって、予想 外の反応だったはずである。日本政府は、領土 問題と経済協力を一体なものとして、経済協 力をテコに領土問題を動かすというシナリオ を描く。日本政府はこのシナリオに堅持して いる。ただ、プーチン政権は日本の経済協力へ の不満を理由に、強硬姿勢をとるようになっ ている。 共同経済活動で「本気度」を示せなかったこ とが、8項目の協力プランへの不満にもつな がったのではないか。私は、そう思っている。 8項目の協力プランに沿ったプロジェクトで、 成約に至った案件は日本政府によると、4割 程度であるが、これまでのエネルギーや自動 車関連だけでなく、医療、農業、都市開発など 多くの分野で協力を示すことができた。ただ、 現時点では8項目の協力プランもロシア側に は失望として伝わってしまった。領土交渉を 進展させるための8項目の協力プランだった が、逆に共同経済活動に足を引っ張られる形 となり、今後の展開が読めなくなった。 (構成:齋藤 大輔)

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第3回東方経済フォーラム開催 日ロ間の合意文書リスト 第3回東方経済フォーラムでは合計217の合意文書の署名が行われた。そのうち日 ロ間では「日ロ租税条約」を含む56文書が交わされた。昨年の東方経済フォーラムのプ レナリー会合で、安倍首相は、プーチン大統領に対し、「来年再びウラジオストクでお会 いし、8項目の進捗状況を確認しあいましょう」と呼びかけたが、今回署名された56文書 はその約束への回答のひとつと言える。以下に掲載するのは、これらの文書のリストであ る。

安倍総理大臣の訪ロの際の成果文書(政府・当局・地域間)

No. 署名文書名 署名当事者 (日本側) 署名当事者 (ロシア側) 【政府間】 1 所得に対する租税に関する二重課税の除去ならびに脱税および 租税回避の防止のための日本国政府とロシア連邦政府との間の 条約 駐露大使 財務次官 【8項目の協力プラン横断的分野】 2 デジタル経済に関する協力に係る共同声明 ロシア経済分野 協力担当大臣 経済発展大臣 【ロシア産業の多様化促進と生産性向上】 3 IT技術の導入によるロシア企業の生産性診断および裾野産業の 人材育成の取組に関する相互理解に関する覚書 経済産業大臣 産業商務大臣 4 労働生産性向上の分野における経験の交換に関する相互理解に 関する覚書 経済産業大臣 経済発展大臣 【日露の知恵を結集した先端技術協力】 5 日露科学技術共同研究に関する協力覚書 文部科学審議官 教育科学省次官 【両国間の重層的な人的交流の抜本的拡大】 6 日露高等教育に関する相互理解に関する覚書 文部科学審議官 教育科学省次官 7 日本国富山県とロシア連邦沿海地方の貿易・経済、人的および文 化交流・協力のための協定書 富山県知事 沿海地方知事 8 北海道知事(日本国)とサハリン州知事(ロシア連邦)との会談議 事録 北海道知事 サハリン州知事

安倍総理大臣の訪ロの際の成果文書(民間機関等)

No. 署名文書名 署名当事者 (日本側) 署名当事者 (ロシア側) 【健康寿命の伸長に役立つ協力】 1 携帯型感染症診断システムの実用化開発に係る協力覚書 理化学研究所、ダ ナフォーム EIDOS 2 日本国厚生労働省とロシア鉄道と、極東投資誘致・輸出支援 エージェンシーとの間の医療・保健分野における協力覚書 厚生労働省 ロシア鉄道、極東 投資誘致・輸出支 援エージェンシー 3 日本国大分大学、オリンパス株式会社および国立連邦高等 教育機関ロシア連邦保健省管轄「ピラゴフ名称ロシア国立医 学研究大学」との間の内視鏡分野の協力に関する合意文書 大分大学、オリン パス ピラゴフ名称ロシア 国立医学研究大学 3 ロシアにおける多剤耐性肺結核治療薬「デラマニド」の商業化 に関するライセンス契約 大塚製薬 R-Pharm

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特集◆東方経済フォーラムと北東アジア国際関係 5 国立大学法人滋賀医科大学,公益財団法人愛知県健康づくり 振興事業団および国立研究開発法人国立循環器病研究セン ターとロシア国立予防医療科学研究センターとの間の医療・保 健分野における協力覚書 国立大学法人滋賀 医科大学、公益財 団法人愛知県健康 づくり振興事業団、 国立研究開発法人 国立循環器病研究 センター ロシア国立予防医 療科学研究センタ ー 6 独立研究開発法人国立長寿医療研究センターおよびロシア老 年医学センターとの間の医療・保健分野における協力覚書 独立研究開発法人 国立長寿医療研究 センター ロシア老年医学セ ンター 【良好な居住環境の創出に向けた都市作り】 7 ウラジオストク都市圏の都市開発コンセプト策定に向けた更な る協力覚書 日建設計 住宅信用担保機構 8 廃棄物処理技術分野に関する本技術実証に関する課題共有 に向けた意向表明書 NEDO ブリヤート共和国 9 ヴォロネジ市におけるSPR工法(非開削管路更生工法)の導入 に向けた部材供給契約 積水化学工業(欧 州現法) メタプラスト社 10 サハ共和国ヤクーツク市において無煙ごみ焼却炉を試験導入 し、環境適合調査を行う覚書 北海道総合商事 ヤクーツク市 11 ウラジオストク市「スペザボートNo1」の施設改善について、情 報交換、調査のための相互訪問を実施することに関する覚書 三光 「スペザボートNo 1」 【日露中小企業の交流と協力の抜本的拡大】 12 JETROとロシア中小企業発展公社の中小企業分野での協力 覚書に基づく、日本企業の部品現地調達推進のための具体的 な協力にかかる覚書(アクションプラン) JETRO 中小企業発展公社 13 一般社団法人「ロシアNIS貿易会(ROTOBO)」と株式会社「連 邦中小企業発展公社」の間の相互理解についての覚書 ROTOBO 中小企業発展公社 【石油・ガス等のエネルギー開発協力、生産能力の拡充】 14 東シベリア地域における共同探鉱プロジェクトに関する枠組み 合意 JOGMEC イルクーツク石油 15 小規模LNG事業に於ける協力に関する枠組合意書 三井物産 ガスプロム 16 サハ共和国ティクシにおける実証前調査の開始に関する意向 宣言書 NEDO サハ共和国政府、 ルスギドロ 17 チュコトカ自治共和国ラブレンチア村風力案件についての 覚書 三井物産、駒井ハ ルテック チュコトカ自治共和 国、ルスギドロ 18 ウストカムチャッカ拡張案件についての覚書 三井物産、駒井ハ ルテック カムチャッカ地方政 府、ルスギドロ 19 水素製造・輸出事業のF/S調査(プレFSアップデート)に関す る契約 川崎重工 ルスギドロ 20 放射性廃棄物の処理および管理のためのマイナーアクチノイ ドの核変換のための炉物理試験に関する情報交換のための 覚書 日本原子力研究開 発機構(JAEA) ロスアトム 21 カムチャッカ地方における公共施設のエネルギー効率向上協 力に関する意向表明書 省エネルギーセン ター カムチャツカエネル ギー開発・省エネ ルギー地域センタ ー 【ロシア産業の多様化促進と生産性向上】 22 JBICとRDIF間での共同投資枠組みの創設のための出資契約 および共同投資契約 JBIC RDIF 23 8項目協力支援ファシリティの設定 NEXI、SMBC アルファバンク 24 ガスプロムとの業務協力協定 JBIC ガスプロム 25 ケメロボ・SBU Azot社のガス化学プラント建設に関する協力 覚書 双日、三菱重工業 ケメロヴォ・アゾー ト社

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第3回東方経済フォーラム開催 26 鉄道車両電気品製造JVの設立に関する覚書 日立製作所 トランスマッシュホ ールディングス 27 ウリヤノフスク州におけるいすゞ製シャシーを用いたバスの生 産に係る覚書 いすゞRUS SIMAZ、ウリヤノフ スク州政府 28 融資契約書(ユーロケム向けクラブローン) みずほ銀行ほか ユーロケム 【極東における産業振興、アジア太平洋地域に向けた輸出基地化】 29 サハ(ヤク-チア)共和国・ヤクーツク市区における「一年中利 用可能な温室施設」の第二期工事の覚書 北海道総合商事 サユリ 30 ロシア極東における投資協力に関する合意文書 日揮、社会医療法 人北斗 極東人材開発エー ジェンシー、沿海地 方政府 31 ポクロフスキー市における大規模温室建設プロジェクトの実施 に関する協力覚書 JFEエンジニアリン グ サハ共和国、サハ 共和国開発公社 32 ウラジオストク漁業港における冷却施設の導入に関する 契約 前川製作所 ウラジオストク漁業 港 33 サハリン州におけるたまねぎ栽培の技術協力に関する覚書 新篠津つちから農 場、北海道総合商 事 チプリチニィ 34 ルドナヤ・プリスタン港における硫酸ターミナル建設に関する 覚書 丸紅 Dalnegorsk Mining and Concentrating Company 35 サハリン石炭コンベアープロジェクト並びにサハリン石炭ターミ ナルプロジェクトでの協力に関する覚書 丸紅 East Mining Company 36 ヴォストーチヌィ港の今後の発展に関する協力に関する 覚書 丸紅 Vostochny Port、 Port Management Company 【日露の知恵を結集した先端技術協力】 37 人工知能に基づく多言語文書処理ソリューションに関する覚書 富士通、PFU ABBYY 38 スコルコヴォ・イノベーションセンターにおける土地リース契約 ファナック・ロシア スコルコヴォ財団 39 農業・穀物・畜産・油脂・砂糖分野における協業に関わる文書 三井物産 ロスアグロ 40 協力内容の実施に係る具体的事項を定める合意書 日本郵便 ロシア郵便 41 カザン局向け機材の納入契約 東芝 ロシア郵便 42 戦略的協業に関する覚書 東芝インフラシステ ムズ ロシア郵便 43 地震研究分野での科学技術協力 国立研究開発法人 防災科学技術研究 所 ロシア科学アカデミ ー地球物理調査所 連邦研究センター 44 情報・システム研究機構国立極地研究所(NIPR)とロシア北極 南極研究所(AARI)間の共同観測および物流に関する基本合 意書 NIPR AARI 45 施設園芸等に関する人材育成推進および協力に関する覚書 千葉大学 沿海地方農業アカ デミー 46 農業分野における大学間の技術交流の推進に関する覚書 山口大学 ロシア国立農業大 学 【両国間の重層的な人的交流の抜本的拡大】 47 柔道教育分野の協力に係るNPO柔道教育ソリダリティーと極 東連邦大学との間の協定 NPO柔道教育ソリ ダリティー 極東連邦大学 48 一般社団法人ロシアNIS貿易会とロスコングレス基金の間の協 力意思についての覚書 ROTOBO ロスコングレス

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