JAXAにおける地球観測衛星データの民間事業推進活動
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(2) JAXA における地球観測衛星データの民間事業推進活動. Mapping of Precipitation)として無償公開している(https : 2. 地球観測衛星データの民間利用推進. //sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm) 。国内損害保険会 社は GSMaP を含め衛星から得られる様々な環境情報と地. 2. 1. 衛星データプラットフォーム(Tellus)を利用した. 上データを複合的に用い,アジアのいくつかの国で農業分. 民間利用推進. 野における天候インデックス保険を開発して事業を行って. JAXA は,2021 年度打上げ予定の先進光学衛星「だいち. 。 いる(https : //www.eorc.jaxa.jp/earthview/2019/tp190325.html). 3 号」(ALOS-3)に向けたデータ利用促進策として,打ち. 同様に,衛星データ由来の気象データや有償・無償の光学. 上げ前から ALOS-3 相当データを閲覧,解析を試行できる. 衛星データ等を利用した営農支援,林業・漁業情報サービ. よう衛星データプラットフォーム(Tellus)上に準備し,昨. スを事業展開するスタートアップ企業がいくつか誕生し,. 年 9 月に公開した。高分解能な衛星データは有償ベースで. JAXA-G-Portal(https : //gportal.jaxa.jp/gpr/)や Tellus などを. あり,衛星データの利用を初めて試みるには,価格がハー. 介した JAXA 地球観測衛星データの利用推進をはかって. ドルとなる場合がある。また,現在,市場において ALOS-. いる。. 3 同等の空間分解能 80 cm の衛星データは無く,ALOS-3. もう一つは,ALOS-2 の SAR データを利用した地盤・イ. データの活用を具体的に検討できる材料が無い。これらを. ンフラモニタリングである。JAXA では内閣府戦略的イノ. 解決し,ALOS-3 データが社会課題の解決策に使えるのか,. ベーション創造プログラム(SIP)事業(2014 年度から. アプリケーションとして活用できるのか模索出来るように. 2018 年度)の一環で,河川堤防,港湾,空港を対象にイン. 空間分解能を ALOS-3 にそろえたデータを JAXA が準備す. フラ変位を高精度に検出可能なツール「ANATIS」を開発. ることとした。. した。ALOS-2 搭載の L バンド SAR のデータを用いるた. ALOS-3 相当データを搭載した Tellus は,経済産業省の. め,草木に覆われた堤防の変位等,植生を透過したインフ. 事業としてさくらインターネット株式会社が開発してい. ラの確認が可能である。ANATIS は,2019 年 7 月に国土交. る。衛星データはデータ容量が大きいため,解析リソース. 通省が公共工事等での新技術の利活用促進のために運用し. を 必 要 と す る が,Tellus を 利 用 す る こ と で 自 前 の コ ン. ている新技術情報提供システム(NETIS)に登録されると. ピューティングを準備する必要がないことは,ユーザ拡大. ともに,同年 8 月より,衛星データを使ったインフラ変位. につながる。陸域観測技術衛星 2 号「だいち 2 号」 (ALOS-. モニタリングの社会実装を進め,国・自治体等によるイン. 2)や気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)など複数. フラの調査・点検の効率化を実現することを目的に,商用. の地球観測衛星データも搭載されており,加えて人流デー. 利用事業者公募を行っており,JAXA と知財契約を結んだ. タ等の他のビッグデータも含まれていることも魅力的であ. 建設コンサルタント,測量,電力会社等での利用が進めら. る。. れている。. また,ALOS-3 の特徴である回帰日数 35 日をふまえる. (https : //www.eorc.jaxa.jp/news/2019/nw190830.html)。. と,ベースマップの更新頻度も高いと想定できる。この特 3. J-SPARC による新規事業開発. 徴を活かすためには,複数時期データから差分抽出し,そ の情報の付加価値を高めることが重要である。そのため, 3. 1. Tellus には,1 時期の観測データではなく,複数時期のデー. J-SPARC の紹介. JAXA は 2018 年,民間事業者等を主体とする事業を出. タを揃えた。 本事業をふまえ,ALOS-3 打ち上げ後,速やかにデータ. 口とした共創型研究開発プログラムとして「宇宙イノベー. 利用が促進されること,衛星データの複合的な活用が進む. ションパートナーシップ(J-SPARC) 」を始動した。宇宙ビ. こと,更に,ビッグデータや人工知能(AI)といった非リ. ジネスの実現を目指す民間事業者等と JAXA との対話か. モートセンシング企業も衛星データからの情報に価値を見. ら始まり,事業化に向けた双方のコミットメントを得て,. 出し,事業に取り込まれることを期待している。. 共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証等. 2.2. を行い,新しい発想の宇宙関連事業の創出を目指す。2020. JAXA プロダクト・技術の民間利用推進. 現在,JAXA の地球観測衛星は,GCOM シリーズ衛星な. 年 12 月現在,約 20 プロジェクトを進めている。事業コン. ど全球観測を目的とした地球環境観測衛星と,高空間分解. セプト共創フェーズではマーケット調査,事業のコンセプ. 能で災害監視,地盤変動の解析を行うための ALOS-2 で構. トの検討などの活動を,事業共同実証フェーズでは事業化. 成される。いずれの衛星も政府機関,国際機関でのデータ. 手前の共同フィージビリティスタディ,共同技術開発・実. 利用が主であったが,民間事業者による衛星データ利用が. 証などの活動を行う。. 2 3.. 進む中,JAXA の技術,プロダクトの民間利用に努めてい. J-SPARC における衛星データ利用分野の共創事例. 現在,J-SPARC プログラムとして共創活動を行っている. る。 一つは,地球観測衛星データの民間利用である。JAXA. 事例を 2 つ紹介する。. では欧米の宇宙機関,気象機関等と連携して,全世界の降. 株式会社 Synspective とともに「小型 SAR 衛星によるソ. 水データを衛星全球降水マップ(GSMaP:Global Satellite. リューション事業」の事業化に向けて取り組んでいる。具. ─ 30 ─.
(3) 日本リモートセンシング学会誌. 体的には,夜間・荒天時であっても地上データ取得が可能. Table 1. Vol. 41. No. 1 (2021). J-SPARC partners as of December 2020. である小型 SAR 衛星のコンステレーション形成及び機械 学習なども活用したソリューション提供の事業化を目指し ている。このうち JAXA は,内閣府・革新的研究開発推進 プログラム(ImPACT)にて JAXA が開発した小型 SAR 技 術の活用のほか,SAR コンステレーション技術を活用した ソリューション検討等に取り組んでいる。 ANA ホールディングス株式会社とともに「ドップラー ライダーによる飛行経路・高度最適化事業」の事業化に向 けて取り組んでいる。具体的には,衛星による広域かつ高 精度・高頻度な風速観測データによって予測風の精度を向 上させ,航空機飛行経路や高度の最適化情報サービスの事 業化を目指すものである。このうち JAXA は,乱気流事故 防止機体技術の研究成果を活用したドップラーライダー衛 星システムの検討等を行なっている。 3.3. J-SPARC におけるその他の共創事例. Table 1 に J-SPARC における現在活動中のその他の共創 事例についてまとめる。 4. 地方・自治体連携の取り組み 政府は, 「スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク (S-NET)」活動の一環として,衛星データを活用した宇宙 ビジネスの創出を主体的・積極的に推進する地方自治体を 支援する取り組みを行っている。そのうち,2020 年 9 月に 「宇宙ビジネス創出推進自治体」に選定された福岡県での 取り組みや今後計画している福岡市での活動を紹介する。 4.1. ふくおか宇宙共創ワークショップ 2020〜ONLINE TRIAL〜の開催. 宇宙市場・プレイヤーの裾野拡大,オープンイノベー ション創出に向け,JAXA では各種ワークショップを実施 して来ているところであるが,宇宙と接点の少ない参加者 対象のアイデアソン運営効率化の一助として,「衛星デー タ活用事例カード」(以下,「カード」という。)を開発し, 2020 年 10 月から β 版を希望者に提供している。カードの 例を Fig. 1 に示す。昨今のコロナ禍において,オンライン でのワークショップ開催が一般的になっているため,2020 年 8∼9 月にかけてオンライン開催時での本カードの有用 性検証をかねて,標題のアイデアソンを九州経済産業局後 援のもと,福岡県と共催した。 本カードに採用した衛星利活用事例が農林水産,防災等,. は発想し得ない提案が各グループから行われた。 本ワークショップ実施後,参加者に実施したアンケート. 主として地域課題解決を扱うものであり,自治体経由で参 加者を募ったため,参加者 41 名,8 チームのうち半数強が. では 95.5 % がカードが有効もしくは参考になったと回答. 自治体職員もしくは 3 セク職員で,残りが企業,大学関係. し,81.8 % がワークショップ参加により衛星データ利用に. 者等である。ワークショップは,8 月 24 日(月),9 月 4 日. 関する理解が深まったと回答している。一方,77.3 % が良. (金)の 2 回の全体会合(Zoom 利用)とその間のグループ. い成果が出せたと評価しているもの,オンラインでのビル. ワークから構成され,カードを参加者に提供するとともに,. ドアップについては,4 割弱がなんらかの問題を感じてお. 全体会合間のグループワーク時に Slack 経由で JAXA 職員. り,参加者のリテラシー要因も考えられるものの,参加者. によるメンタリングを実施した。2 回目の全体会合では,. 支援方法について検討が必要であると認識している。この. 農林業,防災,教育から政策評価まで,宇宙関係者だけで. ため,β 版カードの提供とそのフィードバック収集等を通. ─ 31 ─.
(4) JAXA における地球観測衛星データの民間事業推進活動. 活用できるのか注目している。福岡市では,少子高齢化な どの様々な課題を解決しながら持続的に発展していくた め,最先端の技術革新の導入などによる快適で質の高いラ イフスタイルと都市空間を創出し,未来に誇れるモデル都 市を創造していく「FUKUOKA Smart EAST」を掲げ,九州 大学等と連携したスマートシティづくりが進められてい る。そのような背景を踏まえ,2.1 項で準備した衛星デー タから福岡市域のデータを抽出し,福岡市や九州大学等で 推進されているスマートシティづくりを踏まえたアイデア ソンを本年 2∼3 月に開催することを計画している。まず は,スマートシティをテーマに市や企業とのアイデアソン を通して地域課題やニーズに対し衛星データの可能性を検 討する予定である。 5. お問い合わせ窓口 本稿で紹介した技術,プロダクト,サービス等へのお問 い合わせは JAXA 第一宇宙技術部門 衛星利用運用セン ター(SAOC),または新事業促進部までお願いいたします。 ・本稿に関する全般的なこと: 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター(SAOC) 担当. 松尾尚子(Email:[email protected]). ・J-SPARC ならびに自治体連携に関すること: 新事業促進部 HP サイト Fig. 1. https : //aerospacebiz.jaxa.jp/contact/. A satellite data utilization example card. 担当. じて,引き続きワークショップ運営手法,ツールの改善を. 藤平耕一(Email:[email protected]) 参考資料. 図っていく予定である。 4.2. 宇宙×スマートシティ. アイデアソンの計画. 衛星データの利活用を考える際に,特に ALOS-3 のよう な高分解能衛星データは,都市での活用に可能性があると 考えられる。都市開発では,昨今,スマートシティという キーワードが目立つ。安全,健康,移動,防災など多様な. 1)Space Foundation, 2020, “The SpaceReport Online”, https : // www.thespacereport.org/ (参照 2020-12-10) 2)European Union (EU), 2019, “Copernicus Market Report 2019”, https : //www.copernicus.eu/sites/default/files/ PwC_Copernicus_ Market_Report_2019.pdf(参照 2020-12-10). 面が含まれているスマートシティにおいて,衛星データが. ─ 32 ─.
(5) 日本リモートセンシング学会誌. Vol. 41. No. 1 (2021). 〔著者紹介〕 ●松尾. 尚子(マツオ ナオコ) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 衛星利用運用 センター E-mail:[email protected]. ●上村. 俊作(カミムラ シュンサク) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 E-mail:[email protected]. 耕一(フジヒラ コウイチ) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 E-mail:[email protected]. ●冨井 直弥(トミイ ナオヤ) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 衛星システム 開発統括付 E-mail:[email protected]. ●平松. ●佐々木. ●藤平. 崇(ヒラマツ タカシ) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 E-mail:[email protected] ●越智 士郎(オチ シロウ) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 E-mail:[email protected] ●中西. 悦子(ナカニシ エツコ) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 E-mail:[email protected]. 善信(ササキ ヨシノブ) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 地球観測研究 センター E-mail:[email protected] ●山地 萌果(ヤマジ モエカ) 所属:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 地球観測研究 センター E-mail:[email protected]. ─ 33 ─.
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