J. of SJWS, Vol. 21 (No. 1), 2021 ―45―
第 13 回学術大会ハイブリッド開催報告
―現地会場およびウェブ配信同時開催会議のノウハウ―
板倉明子
1,2・石川稚佳子
1,3・近藤科江
1,4 1日本女性科学者の会,
2物質・材料研究機構,
3東邦大学,
4東京工業大学
要旨:日本女性科学者の会では 2020 年 9 月 13 日、第 13 回学術大会として、SJWS 奨励賞・功労賞贈呈式、 文部科学大臣賞伝達式、および受賞記念講演会を行った。東京工業大学での現地開催と、Zoom 機能を使っ て web 配信するハイブリッドミーティングとしたため、その準備状況とノウハウなどをまとめる。 KEYWORDS:ハイブリッドミーティング, Zoom, 双方向, プレゼンテーション 1.はじめに日本女性科学者の会(Society of Japanese Women Scientists 以下 SJWS)では例年、学術大会を行い、 その年の SJWS 奨励賞を受賞した方や会員の研究紹 介を行ってきた。ところが 2020 年の新型コロナウィ ルスの流行と、その感染拡大予防が必要であったた め、通常の現地開催が出来なくなった。一度は延期 し、その後、東京都の自粛要請が解除されてから 9 月 13 日 13:00 より、第 13 回学術大会として、SJWS 奨励賞、功労賞贈呈式および、SJWS 推薦の文部科 学大臣賞伝達式と、受賞記念講演会の開催を計画し た。しかしながら新型コロナウィルスの再流行も危 ぶまれていたため、参加人数を制限するために講演 会の web 配信を行い、会場に来なくても聴講・参加 ができるようにし、またすべてを web 開催に切り替 える可能性も考慮して、事前準備を行った。 幸い、感染拡大防止に万全を期しつつ、東京工業 大学蔵前会館 ロイアルブルーホールにて上記講演 会を開催し、また、その様子を Zoom での配信する こともできた(Fig.1 参照)。日曜日にも拘らず、会 場に来ていただいた方ばかりでなく、多くの方に web からのご参加をいただいた。 昨今、大学などでの Zoom 講義が頻繁に行われて いるため、SJWS 会員の多くは Zoom での講演や学 会に慣れているものの、現地開催と Zoom を併用し たいわゆるハイブリッド開催はあまり行われてお らず、ノウハウも確立していない。ハイブリッド会 合開催時の注意点などを記録しておくことにする。 2.ハイブリッド開催の準備と課題抽出 これまで SJWS の講演会の準備は開催地の地域ブ ロックが担当してきた。本開催に関しては、2019 Fig.1 東工大蔵前会館での記念撮影 後列左より文部科学大臣賞岡崎(高瀬)恵子氏、奨励 賞の坂田(柳元)麻実子氏、同じく服部梓氏、前列左 より来賓の国立女性会館内海房子理事長、功労賞の 大島範子氏、同じく森義仁氏、近藤科江 SJWS 会長。
開催報告
Journal of the Society of Japanese Women Scientists,
Vol. 21, 45-48, 2021
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― Corresponding: Akiko N. Itakura, National Institute for Materials Science. 1-2-1 Sengen, Tsukuba, Ibaraki 305-0047 Japan. 板倉明子, 物質材料研究機構 305-0047 茨城県つくば市千現 1-2-1
E-mail:[email protected] 掲載受理日:2020 年 10 月 4 日
J. of SJWS, Vol. 21 (No. 1), 2021 ―46― 年度末の理事会で関東ブロックが担当することが 決定した。この時点で新型コロナウィルスの流行は 始まっておらず、会場は東京工業大学に仮決定され た。その後、2020 年度 5 月の総会、6 月の理事会等 (いずれも web 開催)で開催日を決定し、授賞式や 伝達式等の対面が望まれるイベントは現地開催と し、遠方の会員をはじめとし、現地参加が難しい会 員については、web 配信を行うことが決定した。 Web 会議システムは関東ブロックの講演会担当 スタッフが慣れている Zoom のソフトを利用するこ ととし、関東ブロックの打ち合わせ会で担当スタッ フ等を決めた。例年とは異なる web 配信を併用する ことで追加準備が必要な項目として、以下が挙げら れた。 2.1 会場上映と web 配信の分類 2.1.1 開会式・閉会式・授賞式 開会・閉会の挨拶ほ か、受賞者に会場に来てもらい対面で行う授賞式及 び伝達式等、会場で行われる部分については、その 様子(映像と音声)を web 配信する。 2.1.2 賞選考経緯の会場上映 賞の選考経緯は、今期 の賞選考委員会委員長が東北・北海道ブロックから の web 参加となるため、その映像と音声を会場で上 映、放送する。 2.1.3 受賞記念講演の web 配信 受賞記念講演は会場 で行われるため、発表のパワーポイントスライドを 会場スクリーンで上映し、講演の音声を会場に放送 する。同時に、web 配信を行う必要がある。また、 質疑応答については、web 参加者からも出る可能性 があるため、それらを会場参加者と共有する必要が ある。 2.1.4 来賓のビデオ祝辞の上映 来賓のお一人が急遽 会場にいらっしゃれなくなり、ビデオで祝辞を送っ てくださった。会場での上映と web 配信を行う。 2.1.5 会場準備中・記念写真撮影中 会場では受賞者 や来賓者の記念撮影を行う時間を取っており、その 時間に Zoom 参加者は休憩時間とするか、何か情報 を発信するかを検討する。 2.1.6 その他 会場であれば署名と名札の配布など で、参加者の人数把握がたやすいが、事前登録して もらった web 参加者についても人数把握を行う必 要がある。また、記念講演に対して web からの質問 者がいた場合の web 参加者から会場への意思表示 方法、会場から web 参加者への諸情報の伝達方法を 決めておくことも必要である。 2.2 機器準備とリハーサル 受け付け、カメラ、web 配信などの各担当者は、 二回の実行委員会(開催日 2 週間前と一週間前)に て決定し、またプログラムに合わせたタイムチャー トを作り、会場上映やマイク、web 配信の手順を確 認した。事前にリハーサルを行うことや会場の下見 が検討されたが、実際の移動や対面の集まりは極力 制限されておりスタッフの日程調整もできなかっ たため、会場のプロジェクターやマイクなどの機器 がどのようなものであっても、対応するだけの準備 を行ったうえで、東京工業大学所属のスタッフが機 器の確認を行った。Zoom 配信される画面とプロ ジェクターの連動、発表者と質問者の切り替えに関 しては、担当者ごとに練習した。 会場のマイクはプレゼンテーター用、司会用、会 場用の 3 本以上とし、会場全体を移せる固定カメラ を確保した。また、会場上映のプロジェクターへの 接続用の上映 PC、会場カメラへの接続と web 配信 用のホスト PC、参加者確認用のモニターPC の 3 台 のノートパソコンを準備し、前記のタイムチャート を用いて各時間での作業区分けを行った。 3.実際の対応および配信 2020 年 9 月 13 日第 13 回学術大会として第 25 回 SJWS 奨励賞・功労賞贈呈式、記念講演会を行った。 以下は、講演会のハイブリッド開催手順のまとめを 目的とし、発表者の所在と配信手順を場合分けして まとめる。 3.1 開会前(ホスト PC⇒web 参加者) 開催前にホスト PC からの Zoom の画面共有とし て web 参加者に向けた注意事項(Fig.2 のミュート とビデオ停止の依頼)を配信した。また、質問があ るときは Zoom のチャット機能でその旨を伝えて座 長の指名を待つこと、禁止事項として個人での写 Fig.2 開会前配信スライド
J. of SJWS, Vol. 21 (No. 1), 2021 ―47― 真・動画撮影・音声録音・スクリーンショット発表 終了時にミュート解除して拍手を送ることなどを 配信した。(これは他学会の注意事項に倣ったもの だが、web 参加者が少なく、回線に余裕のある場合 には、拍手音の共有があっても良いとは思う) 3.1 中継(会場カメラ⇒ホスト PC⇒web 参加者) 授賞式など会場の様子を伝える時には、会場カメ ラの映像を配信用のホスト PC に繋ぎ Zoom の共有 を用いて配信した(Fig.3 参照)。授賞式中、会場の スクリーン上映は不要なため、壇上の背景として講 演会名称の横断幕を投影した。同時にホスト PC で 会場音声を集音して配信した。この時、会場参加者 や配信モニターを行っている PC のスピーカーを切 り、雑音を排除する必要がある。 3.2 会場発表者のプレゼンテーション(会場発表者 ⇒web 配信⇒上映 PC⇒会場スクリーン) 通常の学会時、発表者は PC をプロジェクターに 繋ぎ、パワーポイントのスライドショー等を用いて で講演を行う。しかし、ハイブリッド開催の場合は 会場での講演と同時に web 配信の必要がある。その ため、発表者には Zoom 画面共有にてプレゼンテー ションを行っていただき、Zoom 配信された映像を 会場の上映 PC で受けてプロジェクターに繋ぎ、会 場スクリーンに投影する方法とした(Fig.4 (b)参 照)。講演時、発表者はレーザーポインターでスク リーンを照らすのではなく、web 配信参加者たちも 伝わるようパワーポイント内のポインターを使っ て指示することを徹底してもらった。 一方、音声に関しては画面共有をしている発表 者 PC からの音声では十分ではないので、発表者に は壇上のマイクを使って話していただいた。その音 声を会場カメラの近くにあるホスト PC で拾って web 配信した。これは壇上のマイクから直接配信す る機構がなかったためで、壇上マイクから会場ス ピーカーおよび web 配信するホスト PC に直接つな ぐことができれば、より良い音質を配信できたと考 える。 3.3 Web 参加者のプレゼンテーション(web 発表者 ⇒web 配信⇒上映 PC⇒会場スクリーン) 発表者が web 参加者である場合は 3.2 よりもシン プルである。Web 参加者がプレゼンテーションスラ イドを Zoom 画面共有して発表を行う。会場の上映 PC で配信画面をプロジェクターに繋いで上映する。 同時に発表者が配信してきた 音声を会場ス ピー カーに繋いで放送する。本講演会では web 参加者か らの画面共有はなかったので、Zoom のスピーカー Fig.3 功労者受賞者挨拶 功労賞受賞者のお茶の水女子大学森教授と、司会の 近藤会長。森教授はコロナウィルス対策のマスクを、 一時的に顎部分まで外し、近藤会長とは十分な距離 を取って挨拶の原稿を読まれている。 Fig.4 プレゼンテーションの仕方の模式図 (a)通常の現地会場の発表 (b)ハイブリッド プレゼンの会場発表と配信方法
J. of SJWS, Vol. 21 (No. 1), 2021 ―48― ビューを用いて発表者をスクリーンに投影した。ま た、web 参加者に質問者がいた場合も、同様の会場 と共有した。事前に発表者の動画がある場合も、こ の配信手順に準じた。ホスト PC から動画とその音 声を web 配信し、上映 PC で会場スクリーンに上映 した。 3.4 休憩時間(準備映像⇒ホスト PC⇒web 参加者) 会場での写真撮影や、その準備時間、あるいは休 憩時間などは、会場風景を web 配信するのではな く、開場前と同様にホスト PC から web 参加者への 注意事項や、当日プログラム他 SJWS の紹介の自動 スライドショーを Zoom 画面共有にて配信した。 3.5 会場機器の位置関係など 最終的には現場で対応せざるを得なかったこと を追加しておく。会場で使用した PC のうち、接続 ケーブル長の関係で、ホスト PC は聴講席中央の会 場カメラの近く、上映 PC は会場前方のプロジェク ター接続端子の近くという場所の制限があった。事 前に会場の配置図で把握し、最終的には機器テーブ ル等を動かすことで対応した。 ハウリングを抑えるためにそれぞれのマイクの スイッチングや、可動範囲を調整する必要もあった が、これは通常の学会でも同様のため、その場で修 正しながら進行した。 3.6 新型コロナウィルス感染防止対策 本講演会で最も気を使 ったものが新型コ ロナ ウィルス感染防止対策である。受付にマスクやフェ イスガード、消毒用のアルコールを準備することは もちろん、発表者、座長のマイクに関しても、人が 交代するごとにアルコールで拭くことで消毒した。 聴講席は十分な間隔を取るために座席数を減ら し、また、すべての参加者に事前登録を促した。記 念撮影もマスク着用を基本とし、広報用にマスクを 外して撮影する場合も、その間は無言を貫くなど徹 底していただいた(Fig.5)。例年、学術大会後には 軽食と飲み物を囲んで懇親会を行うのだが、今年は 行わなかった。同様に学術大会で行われることの多 い会員のポスターセッションも、発表者と質問者が 入り乱れることから、今年は行わず、授賞式、来賓 挨拶、受賞記念講演など、三密を避けることができ るもののみを開催した。開催後、会場参加者からの 体調不良等の連絡もなく、十分な感染対策が出来た と考えている。 4.まとめ 新型コロナウィルス流行下で SJWS 第 13 回学術 大会を開催した。東京工業大学の蔵前会館での現地 開催と、Zoom による web 配信のハイブリッド開催 とし、その配信プロセスなどを記録した。ハイブ リッド開催では、発表者の居場所がさまざまである ため、それぞれの場合の配信方法と会場スクリーン の調整など、事前に対応しておかなければならない ことが多々あった。もちろん、配信と上映用の機材 が十分にそろっていて、事前にそれを確認すること ができていれば、こんな苦労はしないで済んだと思 う。しかしながら、スタッフが持ち運ぶノート PC で接続端子の数も限られていた状況での、苦肉の策 としての対応として、準備をさせていただいた。 web 配信ソフトの違いや、会場・機器設備などで 異なる面もあるとは思うが、今後の講演会開催時に 役立てて欲しいと考える。 謝辞 準備段階から中心的にご協力いただいた SJWS 賞 選考担当理事の東北大学梅津理恵先生、賞選考委員 かつ司会をしていただいた青山学院大学長谷川美 貴先生、金沢大学後藤典子先生に感謝いたします。 受付・会場準備・会場撮影・広報を担当いただいた SJWS 関東ブロックの先生方、細かな気配りとご対 応に深く感謝いたします。会場カメラや音響担当を してくださった東京工業大学近藤研究室の峯岸美 紗様、平野龍一郎様、矢野容子様、事前準備から当 日の雑務まですべてをお引き受けいただき、ありが とうございました。