〈心精神医学基礎講座〉自我意識の病理をとらえる
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(2) 近 畿 大 学 臨 床 心 理 セ ン タ ー紀 要. 134. [自 我 一生 命 性]ego-vitality:自. 第3巻2010年. 己 が 生 け る も の と し て 自 明 的 に 存 在 す る と い う体 験. [自 我 一活 動 性]ego-activity:自. 己 が す べ て の 求 心 的 ・遠 心 的 活 動 、 知 覚 、 思 考 、 感 情 、. 情 動 、 行 動 、 意 思 な ど の 自力 的 な 行 為 者 で あ り監 督 者 で あ る と い う意 識 と体 験 [自 我 一単 一 性]eg(}consistency:自. 己 が 単 一 で あ り、 一 つ の 全 体 を な し て い る と い う 意. 識 と確 信 。 一 人 の 人 間 の 感 情 の な か に た と え 矛 盾 し た も の 、 ス プ リ ッ ト し た も の 、 両 義 的 な傾 向 が 実 感 さ れ る場 合 で も、 自 己が 単 一 で 分 割 され え な い 個 体 で あ る とい う意 識 と 確信。 [自 我 一境 界 性]eg(>demarcation:自. 我 と非 自我 の 区 別 。 自 己 と 環 境 の あ い だ に 境 界 を た. て 、 同 時 に 監 督 す る 能 力 。 健 康 者 で は こ の 境 界 は 浸 透 的 で あ る た め に 、 自我 と 非 自 我 の 相 対 を 可 能 に す る 。 病 的 に な る と 、 こ の 境 界 は 絶 対 的 な も の と な り、 垣 根 や 城 壁 と な っ て 閉 じ込 め あ る い は 粉 砕 す る 。 [自 我 一同 一 性]ego-identity:人. 生 行 路 の さ ま ざ ま な伝 記 的 布 置 の な か で 自己 自身 で あ る. とい う 同一 性 と連 続 性 の意 識 。 これ に は現 存 在 が 固 有 の個 性 的 な 存 在 と して 時 熟 す る と い う体 験 が 属 す る 。. 皿.自. 我 意 識 障 害 の体 験. ChLScharfetter(1994)は PathologyInventory:EPI)を. 自 我 意 識 障 害 を 評 価 す る た め に 、 「自 我 病 理 評 価 尺 度 」(Ego 作 成 して お り. 5つ の基 本 的 次 元 の体 験 と して 以 下 の 項 目が. 取 り上 げ ら れ て い る 。. [自 我 一生 命 性 の 障 害] 「私 は 自分 の 命 が 崩 れ 去 りつ つ あ り、 死 に か け て い る よ う に 感 じ た 」 「私 は 命 が な く な り、 ミ イ ラ の よ う に 死 ん で い る と 感 じ た 」 「私 は 世 界 は 終 末 を 迎 え よ う と し て お り、 す べ て の 生 き物 が 死 ん で い く よ う に 感 じ た 」 「私 の 魂 、私 の 内 な る 命 が 自分 か ら奪 い 去 ら れ て し ま い 、絶 滅 させ ら れ た り、殺 さ れ て し ま っ た」 「あ る 人 々 や 何 か 異 様 な 力 が 私 を 破 壊 し殺 そ う と企 ん だ り、 そ の よ う に 計 画 し よ う と し た 」 [自 我 一活 動 性 の 障 害] 「何 か 神 秘 的 な 力 や 恐 ろ し い 力 が 私 に 働 き 、 活 動 、 会 話 を 妨 害 した 。 私 の 活 動 は 邪 魔 を さ れ て し ま い 、 私 は ノ ロ ノ ロ さ せ られ 、 麻 痺 さ せ ら れ た よ う に 感 じ た 」 「私 は ス パ イ さ れ 、 妨 害 さ れ 、 見 張 られ 、 追 跡 さ れ て い る よ う に 感 じ た 。 私 に は も は や 行 動 や 決 心 を す る とい う 自 由 は な く な っ た 」 「私 は 自 分 が し よ う と思 う こ と を も は や す る こ と が で き な く な り、 私 の 動 き や 活 動 は 支 配 さ れ て お り、 コ ン トロ ー ル さ れ て い た 。 私 は あ た か も道 具 や 操 り人 形 の よ う に 感 じ た 」.
(3) 人見 一 彦:自 我 意 識 の病 理 を と らえ る. 135. 「私 は 異 様 な 力 、 権 力 あ る い は 人 々 に 乗 り移 ら れ て 圧 倒 さ れ て し ま っ た よ う に 感 じ た 」 [自 我 一単 一 性 の 障 害] 「私 は 内 的 な 分 裂(い. く つ か の 分 裂)を. 感 じた り、 私 は 人 間 と して 引 き裂 か れ て バ ラ バ ラ. に さ れ た よ う に 感 じ た り、 私 は 分 解 し て し ま い 粉 々 に な っ て い く よ う に 感 じ た 」 「私 は 世 界 全 体 が 爆 発 して お り、 粉 々 に な っ て い く よ う な 感 覚 を 抱 い た 」 「私 の 感 情 は 自 分 の 考 え や 体 験 や 行 動 と一 致 し な く な っ た 。 私 の 人 生 経 験 は 矛 盾 した も の に な り混 乱 して し ま っ た 」 「私 は 二 つ の 力/対. 立 す る も の(善/悪)に. 引 き 裂 か れ た よ う に 感 じた 。 対 立 す る 感 情 や. 相 い れ な い 感 情 が 私 を引 き裂 い て しま った 」 「私 は 誰 も い な い に も か か わ ら ず 内 か ら の 声 や 外 か ら の 声 を 聞 い た 」 [自 我 一境 界 性 の 障 害] 「私 は 自 分 の コ ン ト ロ ー ル を 超 え た 力 の な す が ま ま に な り、 無 防 備 に な っ て し ま っ た と 感 じた。 私 は 自分 自身 を守 る こ とが で きな くな っ て し まい 、 も はや 自分 自身 の 境 界 さえ わ か らな くな っ た」 「私 は 自 分 自 身 を 守 る た め に 、 他 の 人 々 か ら 身 体 的 に も精 神 的 に も退 却 し な け れ ば な ら な か っ た 。 私 は誰 に対 して もあ ま りに も近 づ き過 ぎる こ と を許 さ な か っ た。 私 は他 人 か ら 自分 自 身 を シ ャ ッ タ ア ウ ト し た 」 「私 は 他 の 生 き 物 や 対 象 と 一 体 に な っ て し ま っ た 。 私 は 自分 自 身 の 境 目 の 感 覚 を 失 っ て し ま った 」 「私 が あ る 体 験 を し た と き、 私 は し ば し ば そ れ が 自 分 の 体 験 で あ る の か 、 誰 か 別 の 人 の 体 験 で あ るの か わか らな くな った 」 [自 我 一同 一 性 の 障 害] 「私 は も は や 自 分 が 以 前 と 同 じ 人 間 で あ る と確 信 で き な く な り、 私 は 自 分 が 別 の 誰 か に 変 わ っ て し ま っ た の で は な い か と 感 じた 」 「私 は 以 前 に そ う で あ っ た よ り頻 回 に 鏡 の な か の 自 分 の 姿 を チ ェ ッ ク し た 」 「私 は 何 回 も 自 分 に 言 っ て 聞 か せ た:私 は 私 で あ り、 私 は 人 間 で あ る 」 「私 の 性 は 変 わ っ て し ま っ た 。 私 は 男(女)に. な っ た よ う に 感 じた 」. 「私 は 以 前 に 信 じ て い た こ と と比 較 し て 、 私 の 家 族 は 違 っ た も の に な っ て し ま い 、 別 の 生 活 史 を 生 き て い る と思 っ た 」. 「自我 病 理 評 価 尺 度 」 で は 、 こ れ ら の5つ 項 目(6)、. 身 体 体 験 の 項 目(10)、. の 基 本 的 次 元 の 項 目(23)に. 思 考 障 害 の 項 目(7)お. 加 えて、過代償 の. よ び 精 神 運 動 性 行 為 の 項 目(7). が 用 意 さ れ て い る 。 そ の 目的 は 、 こ の よ う な 患 者 の 体 験 と行 動 様 式 を 自我 の 非 統 合 の 脅 威 に さ ら さ れ た 人 格 が そ れ を 克 服 し よ う とす る 試 み と し て 理 解 し よ う とす る か らで あ る 。.
(4) 近 畿 大 学 臨床 心 理 セ ン タ ー 紀 要. 136. 第3巻2010年. 統 合 失 調 症 者 で は5つ の す べ て の 次 元 にお い て55%か. ら81%の. 出現 率 が 見 られ、 境 界 例. 患 者 で は5つ の 次 元 の すべ て に経 験 あ りとす る 回 答 が 認 め られ た が 、特 に 自我 単 一性 、 自我 境 界 性 の 障 害 に お い て 高 く認 め られ た。 うつ 病患 者 で は 自我 生命 性 と 自我 活 動性 の 障 害 が 顕 著 で あ っ た。. 1V.自. 我 機 能 と家 族 の 機 能 領 域. Chr.Scharfetter(1995)は ま と め て い る(図)。. 自我 意 識 の 発 達 と障 害 に 及 ぼす 家 族 作 用 の 機 能 領 域 につ い て. そ れ に よ れ ば 自我 意 識 の 発 達 は ま ず 身 体 領 域 に お け る 呼 吸 す る こ と 、. 温 か さ 、 支 え ら れ る こ と(触. 覚 的 接 触)、 栄 養 、 持 ち 上 げ ら れ る こ と、 受 け 入 れ ら れ る こ と. な ど の 経 験 を 通 じ て 、 身 体 感 、 生 命 感 、 自我 生 命 性 、 自我 活 動 性 、 自我 単 一 性 、 感 情 性(基 本 的 信 頼/不. 安)と. い う機 能 を獲 得 す る 。 そ し て 間 主 観 的 関 係(対. 人 関 係)の. 共 生 、 分 離 、 自 ・他 境 界 設 定 、 共 同 体 、 取 る こ と と 与 え る こ と 、 安 全/安. 領域 にお け る. 全 で ない こ と な ど. の 経 験 を 通 じ て 、 自我 境 界 、 自我 同 一 性 、 自我 強 度 、 自 己 像 、 自律 、 自 由 、 社 会 化 の 結 果 と し て の 人 格 化 、関 係 能 力 と い う 機 能 を 獲 得 す る 。 さ ら に 道 具 的 世 界 関 連(人. 間 一事 物 一 関 係). 領域. 経験. 「機 能 」(抽 象 概 念). 障害領域. 身体領域. 呼吸 温かさ 支 え られ る (触覚 的 接 触) 栄養 持 ち上 げ、 受 け 入 れ られ る こ と. 身体 感 生命 感 自我生命性 自我活動性 自我単一性 感情性: 基 本的信頼/不 安. 自我 生命性 の障害 自我 活動性 の障害 自我 単一性 の障害 身体 感覚障害 感情性. 間主観的 関係. 共生 分離 自 ・他 境 界 設 定 共 同体 取 る こ と と与 え る こ と 安 全/安 全 で な い こ と. 自我 境 界 自我 同一 性 自我 強 度 自己像 自律 自由 社 会 化 の結 果 と して の 人格 化 関係 能力. 自我 境 界性 の 障 害 自我 同 一性 の 障 害 境 界性 、 自己 愛性 人格 受 動 的 依存 性 人 格 自閉 的 、 ス キ ゾ イ ド性 人格 社 会 的 非 感 受性 非 適応 的情 動. 道 具 的 世 界 関連 (人 間 一事 物 一関係). 知覚、認知 意味賦与 共 同世 界(「 現 実 」) の命 名 意 思 の疎 通 に 関す る 思 考 と言 語. 現実意識 常識. 現 実意識の障害 自閉 的 ・無 規律 的 世界 体 験. 思考、論理 象徴化 言語. 個 人的思考、 言語 ス タイ ル 個 人 的 象徴. 自我意 識 の発 達 と障 害 に影響 を及 ぼす家 族 作用 の 機能 領域(シ ャルフ ェ ッテル よ り引用 、1995).
(5) 人 見 一 彦:自 我 意 識 の 病 理 を と らえ る. 137. の 領 域 にお け る知 覚 、 認 知 、 意 味 賦 与 、 共 同世 界(「 現 実 」)の 命 名 、 意 思 の疎 通 に 関す る思 考 と言 語 とい う経 験 を通 じて、 現 実 意 識 、 常 識 、 思 考 、 論 理 、 象 徴 化 、 言 語 とい う機 能 を獲 得 す る。 自我 意 識 の 発 達 にか か わ る これ らの 領 域 は家 族 作 用 の機 能 領 域 で もあ る。 身 体 領 域 に お け る障 害 は 自我 生 命 性 、 自我 活 動 性 、 自我 単 一 性 の障 害 、 身体 感 覚 障 害 、 感 情 性 の障 害 につ な が り、 問主 観 的 関 係(対 人 関係)の 領 域 に お け る障 害 は 自我 境 界性 、 自我 同 一性 、境 界 性 、 自己 愛性 人格 、 ス キ ゾ イ ド性 人格 、 社 会 的 非 感受 性 、 非 適 応 的情 動 につ なが る可 能性 が あ る。 道 具 的 世 界 関 連(人 間 一事 物 一 関 係)の 領 域 にお け る障 害 は現 実 意 識 の 障 害 、 自 閉 的 ・無 規 律 的 世 界 体験 、 個 人 的 思 考 な ど につ なが る。 この 図 式 か ら障 害 領 域 の 理 解 と と も に、 自我 意 識 障 害 を呈 す る患 者 へ の ア プ ロー チ を試 み る際 に、 心 身 両 面 に わ た りどの よ う な経 験 の 領 域 に働 きか け る必 要 が あ るか を考 え る ヒ ン ト が与 え られ る で あ ろ う。. 文. 献. 人 見 一 彦(1986):チ. ュ ー リ ッヒ学 派 の 分 裂 病 論. 人 見 一 彦(1997):分. 裂 病 概 念 の源 流. Ch.シ. ャ ル フ ェ ッ テ ル(1994):分. 金 剛 出版. 金 原 出版. 裂 病 の 自 我 精 神 病 理 学(翻. 訳:人. 理20(1),3-19 ScharfetterCh。(1995):SchizophreneMenschen.PsychologieVerlagsUnion,Weinheim. 見 一 彦 、 向 井 泰 二 郎),臨. 床精神病.
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