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2K冷凍機による伝導冷却マグネットで世界最高の17.3Tを達成

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Academic year: 2021

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2K冷凍機による伝導冷却マグネットで世界最高の 17.3Tを達成 平成15年5月22日 独立行政法人物質・材料研究機構 [概 要] 独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS、理事長:岸 輝雄)強磁場研究センター 低温発生技術グループの佐藤明男グループリーダーらは、株式会社東芝と共同で開発した 超流動ヘリウム温度域(2K(ケルビン))まで冷却することができる高性能小型冷凍機を 用いて、伝導冷却マグネットとしては世界最高の 17.3T(テスラ)の磁場を発生すること に成功した。これまでの最高記録は、1998 年に東北大学と住友重機械工業株式会社が記録 した 15.1Tである。この結果は、将来的にNMR(核磁気共鳴)を含めた全ての強磁場マ グネットが伝導冷却で実現されるための端緒となることが期待される。 この成果は、産業技術総合研究所つくばセンター共用講堂で開催される低温工学・超伝 導学会(5月 21 日∼23 日)で、5月 23 日に発表される。 1.研究の背景 超伝導マグネットは、通常、液体ヘリウムで冷却される。しかしながら、最近の強磁場 マグネットでは、エポキシ樹脂(ある種の接着剤)などで含浸して安定性を強化したマグ ネットが多く、液体ヘリウムによる浸漬冷却は必ずしも必要としない。むしろ冷凍機など による伝導冷却の方が手軽で便利である(補足の比較表参照)。このような冷凍機伝導冷却 マグネットは、液体ヘリウムを必要としない簡便さから最近国内で急速に発達し、出荷台 数はすでに 240 台を超えている。商品構成では5T、10Tといった機器が中心になってい る。また、オープン型のNMRでは米国市場を中心に伝導冷却型のマグネットがすでに数 百台規模で出荷されている。 最近 12Tという強磁場マグネットも出始めたが、それ以上の 強磁場マグネットとなると、1998 年に東北大学と住友重機械工業株式会社が4K冷凍機で 記録した 15.1Tがあるだけである。 最近の強磁場マグネット開発で要求される 18Tを超える磁場を発生させるためには、現 状の技術では2K以下まで温度を下げて超伝導の諸特性を向上させないことには難しく、 一般的には超流動ヘリウム1)によって冷却される。NIMSで昨年開発した 920 MHz(メ ガヘルツ)のNMRマグネットもこの方式をとっている。しかし、超流動ヘリウムによる 冷却は以下の問題を抱えている。一つは、液体ヘリウムの補給を怠ることができないこと である。昨年米国の港湾ストで液体ヘリウムが欠乏した時は、液体ヘリウムの調達に奔走

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しなければならなかった。もう一つは、何かの拍子にマグネットの超伝導が壊れて常伝導 化した場合など異常時の対応である。920 MHz のマグネットは、1000 L(リットル)の超 流動ヘリウムに浸されている。このクラスのマグネットにおける蓄積エネルギー2)は 34 MJ (メガジュール)を超えるため、1000 L の超流動ヘリウムは一瞬のうちに蒸発する。しか も、超流動ヘリウムの容器は入熱を減らすためにタイトな構造になっているため、狭い流 路に蒸発ガスが集中するというきわめて危険な状態になる。以上のことから、液体ヘリウ ムを必要としない2K以下の伝導冷却マグネットの実現が望まれていた。 これまでNIMSでは、伝導冷却高磁界超伝導マグネットなどへの応用を目的とした2 K冷凍機の開発に取り組んできたが、その最初の成果として、2001 年7月に 1.8 K で 0.6 W、2.0 K で 1 W の冷凍パワーをもつ冷凍機を開発した。それまで数十 mW(ミリワット) でしかなかった2Kレベルの小型冷凍機の冷凍パワーを大きく向上させた(既プレス発表)。 これは、市販のギフォード・マクマフォン(GM)方式3)の小型冷凍機にジュールトムソン (JT)膨張4)回路を組み合わせた GM-JT 方式5)を採用することによって達成された(図1)。 2.今回の研究成果 NIMSでは、その後も JT 膨張回路の2段化などによる最適化や、JT 膨張回路のコン プレッサ増強などにより性能向上を図り、マグネットの冷却に必要と見積もられている 1.8 K で 1 W クラスまで冷凍能力を高めた。また、実際に強磁場マグネットにも応用でき ることを実証するため小型マグネットを製作した(図2)。 このマグネットは、外径が 254 mm、高さ 350 mm であり、3つのコイルより構成されてい る。最内径は 30 mm である。外側のマグネットが NbTi(ニオブ・チタン)線で、内側の二 つのマグネットが Nb3Sn(ニオブ・3・スズ)線で構成されている。2Kレベルでの冷却を 想定しているため、超伝導状態で流せる電流値が4K冷却の場合に比べて大きく、17Tク ラスのマグネットとしてはきわめて小型化されており、その分必要とする線材量が少ない (図3)。 マグネットは、2K冷凍機によって冷却された無酸素銅製の冷却ステージに取り付けら れている。それぞれのコイルは、冷却ステージと熱的に接続された純アルミ製の伝導板を 介して内側と外側から伝導で冷却した。また、2K冷却部への入熱を軽減するため高温超 伝導の電流リードを採用した。 マグネットは、励磁する際に交流損失により発熱するが、この冷却システムにより励磁 中もその温度を2Kレベルあるいはそれ以下に温度を保つことができた。17.3Tという今 回の記録は、2Kに冷却された状態で達成された。これは、これまでの記録である 15.1T を大きく上回るものである。

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3.研究の意義と今後の展開 今回、マグネットを2K以下まで冷却することで、線材量を少なくした小型のマグネッ トでも 15Tを超える強磁場が発生できることをはじめて実証した。今後、さらにこの研究 を推進することで、NMRマグネットあるいはその他の 20Tを超える強磁場マグネットが 2K冷凍機による冷却で実現することが可能になれば、大型あるいは、強磁場のマグネッ トも液体ヘリウムの補給なしで運転することが可能となり、運転コストが大幅に削減され る。 また、15T以下の磁場も超伝導線材の量を減らした小型のマグネットで発生することが 可能となり、超伝導マグネットの低価格化が推進されるだろう。 今回の成果は、これからの超伝導マグネットおよび強磁場の研究開発に大きなインパク トを与えるものと期待される。 <用語説明> 1)超流動ヘリウム 液体ヘリウムの温度は、1気圧の下で絶対温度 4.2K(摂氏-269℃)である。圧力を下げ るとヘリウムの温度は下がる。温度が 2.2K以下になると、ヘリウムは超流動という状態に なる。この超流動ヘリウムは、熱伝導、熱伝達が極めて優れていることから、超伝導マグ ネットを効率的かつ安定に冷却するための冷媒として使われている。 2)マグネットの蓄積エネルギー マグネットの蓄積エネルギーは、 (マグネットのインダクタンス) x (マグネットに流れる電流)の2乗/2 で表される。 920 MHz NMR のような大型のマグネットになると、これが 34 MJ(メガジュール)にも 達する。これに対して、1.8Kの 1000 L の液体ヘリウムを 4.2Kまで温度上昇させて蒸発 させるのに要するエネルギーは 2 MJ である。したがって、マグネットがクエンチすると 1000 L の超流動ヘリウムは一瞬のうちに蒸発する。 3)ギフォード・マクマフォン(GM)冷凍機 GM 冷凍機は、蓄冷材を低温部にもち、ヘリウムガスが膨張と収縮を繰り返すことにより 温度を下げるという特徴がある。取り扱いが簡便であることから真空のクライオポンプ、 4Kレベルの冷凍機冷却型マグネットなどで一般的によく使われている。

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4)ジュールトムソン(JT)膨張 ある温度以下で気体を膨張させると、気体の温度が下がる現象である。 5)GM-JT 冷凍機 ジュールトムソン膨張回路を流れる高圧のヘリウムガスを GM 冷凍機で、ある温度以下ま で冷却し、ジュールトムソン弁で膨張させて低温を得る方式の冷凍機。今回は 10Kレベル まで冷却した後、2段に膨張させる方式を採っている。 問い合わせ先 独立行政法人物質・材料研究機構 広報室 電話:029-859-2026 研究内容に関すること 独立行政法人物質・材料研究機構 強磁場研究センター 低温発生技術グループ グループリーダー 佐藤明男 電話:029-863-5453

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<補足> 液体ヘリウム浸漬冷却と冷凍機伝導冷却の比較表 項目 液体ヘリウム浸漬 冷却冷凍機伝導冷却 運転の簡便さ 液体ヘリウムを定期的に供給す る必要がある。 スイッチ一つで運転が可能であ る。 運転経費 液体ヘリウムの購入経費+人件 費 ヘリウム圧縮機の電気代 冷却温度 通常の液体ヘリウム(一気圧)で は冷却温度が4.2 K で一定 超流動ヘリウムの場合は、冷却 温度の制御が必要 冷却温度は冷凍機の性能で左右 される。 冷却の均一性 マグネット全体が均一に冷却さ れる。 冷却面から遠い場所で冷却温度 が高くなるおそれがある。特に 接続部の冷却が問題となる。 マグネットへの入熱 超流動ヘリウムの超熱伝導性に より、4.2 K のヘリウムからマグ ネットが収納される超流動ヘリ ウム槽への入熱が大きい。 通常の伝導による入熱のみ マグネットクエンチ (なんらかのトラブ ルによる常伝導転移) マグネットの蓄積エネルギーが 一挙に放出され、周りの液体ヘ リウムが急激に蒸発・膨張する。 超流動ヘリウム冷却の場合は、 容器の出口が狭いため特に大型 の強磁場マグネットの場合きわ めて危険である。 マグネットの蓄積エネルギーに 応じてマグネットの温度が上昇 する。

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図3

4.2 K から 1.8 K まで冷却温度を下げた時の発生磁場の変化

0 50 100 150 200 250 300 0 5 10 15 20 Nb3Sn_innermost (4.2 K) Nb3Sn (4.2 K) NbTi (4.2 K) Nb3Sn_innermost (1.8K) Nb3Sn (1.8K) NbTi (1.8K)

Cu

rr

ent

, A

Magnetic Field, T

磁場(T)

参照

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