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巻頭言:共生社会の扉を開く

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Academic year: 2021

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2019 年から 2020 年にかけて国内外で節目となる出来事がみられる。国内で は、2019 年の皇位継承、消費税率の引き上げがあった。2020 年にはオリンピ ック・パラリンピックが開催される。また、国際的には米国の大統領選挙、 イギリスの EU 離脱が挙げられる。そうした 2019 年末から 2020 年初頭にかけ て、寒空の下、ぬかるみの中でテント生活を送るシリア難民の姿が何度か報 じられた。 シリアでは 2011 年からの内戦で、25 万人以上の死者が出ており、約 650 万 人が国外難民、ほぼ同数が国内避難民となっている。世界各地で、シリアと 同様に紛争や自然災害により人間の尊厳を保つことができない状況に追い込 まれている人びとが多数存在する。シリア内戦のはじまりと同時期、日本で は東北地方太平洋沖地震が起き、それ以降も日本各地で地震災害が多発して いる。また、2019 年の巨大台風や大雨がもたらした被害の大きさは記憶に新 しい。先進国である日本においても、極限状態におかれた被災者の生活復興 は容易ではない。 平穏無事にみえる日常を送っている人の中にも、精神的に行き詰まり苦境 に陥っている人びともいる。人間は、死や様々な困難に直面したとき、それ まで確実だと思っていたものが崩れ去ったような感覚に陥ることがある。そ うしたとき、人間はどのように行動してきただろうか。 これまで人間は、協力することで信頼関係を構築し、危機を乗り越えてき た。人間は社会的動物である。サミュエル・ボウルズとハーバート・ギンタ スは『協力する種』(2011=2017)で、人間の利他性の進化を検証し、共生社 会への扉を大きく開いた。彼らは、集団で生きる限り、人びとの間や個人と 社会との間には利益の葛藤が存在するが、それを乗り越え、相互の利益をど のように尊重するかを再考すべきだと指摘する。 相互依存度が高まり、その複雑性が増している現代の国際社会においては、 信頼関係にもとづく共生社会をさらに深化・拡大する必要に迫られている。 2008 年のリーマンショックが与えた影響範囲や 2020 年の新型コロナウィルス 感染の拡大スピードは、一地域や一ヵ国で起きた危機の連鎖のあり様を物語 総 合 地 域 研 究 第 10 号   2 0 2 0 年 3 月 1 [巻 頭 言]

水 口 章

敬愛大学総合地域研究所所長

共生社会の扉を開く

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っている。 では、どのようにして共生社会の深化・拡大をはかっていくのか。行動の 出発点は、1972 年にローマクラブが人口増加や環境汚染の状況から提示した 「100 年以内に地球上の成長は限界に達する」という結論、つまり「地球は有 限である」との共通認識を持つことだろう。その上で、スウェーデンの環境 活動家グレタ・トゥーンベリ(2003 年生まれ)が示したように、個人が行動を 変えることで地域社会を変え、人間の未来を変えるというボトムアップ型の 社会行動を生むことである。こうした社会行動の成果はすでにあらわれてお り、消費スタイルも企業活動も環境に配慮したものへと変化している。 本研究所では、これまで国連が決議した地球キャンペーン「国連ミレニア ム開発目標」(2000 年)、「持続可能な開発目標(SDGs)」(2015 年)などの行動 目標に関連した研究にも取り組んできた。しかし、その成果は学内や限られ た地域にとどまる傾向にあった。その課題を克服するために、目標として、 第 1 に産官学の連携を強化し地域社会の問題を解決すること、第 2 に他大学、 公益法人などと連携し草の根の教育活動を強化することを掲げ、学部・学科 の壁を超えた研究体制の整備を進めている。具体的な研究テーマとしては、 近年、日本各地で自然災害による被害が多発している状況を踏まえて、「災害 に強いまちづくり」や「被災者に対する基礎自治体の取り組み」を取り上げ る。その成果については、本年の秋に予定している公開シンポジウムなどを 通し、地域の人びとと共有をはかりたいと考えている。このような試みによ り、減災につながり、被災後の生活の困難の緩和に資することができればと 思う。 本学園が 2020 年より SDGs 達成をこれまで以上に推進するとの方針を打ち 出していることと合わせて、本研究所も、2020 年を節目の年として、地域社 会において、身近な問題のみならず地球規模問題の解決に向けた協働の輪を 広げる行動をとる所存である。そして、人と人、人と自然の共生の扉をさら に開くことに寄与したいと考えている。 総 合 地 域 研 究 2 みずぐち・あきら Akira Mizuguchi

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